こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


1985年8月発行の書籍

人気の作品

      利腕

      ディック・フランシス , 菊池光

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 最後の一文を読み終えた時の深い満足感
        小手先のトリックやどんでん返しなどでなく、本当に良質の小説だけが持つ、ため息のような感動をミステリーでも得たいと思う人は、この小説を読みなさい。
        文学的な基礎知識も特別な読解力も不要
        ただハラハラさせるストーリーを追うだけでいいのです。

        人は獲得し、そして失う。生きるという事はその繰り返し。
        主人公シッド・ハレーはそれを体現した存在です。
        だからこの物語はあなたの物語でもある。
        シッドのように振る舞えなくても、シッドに寄り添う事は出来ます。

        プロローグから壮絶な喪失感で幕を開け、
        乾いた語り口と骨太なストーリーでぐいぐい読者を引き込みます。

        「勝つことがすべてである。勝つことが私の役目だ……そのために自分は生まれてきたのだ」
        シッド・ハレーは元チャンピオンジョッキー。自他ともに認める最高の騎手でした。
        愛する女性と結婚し、たたき上げで築いた財産もあり、天職と思える職業で成功をおさめ、有名になり…
        …そしてすべてを失いました。
        彼ほどの喪失を経験した人はほとんどいないのではないかと思うほどの悲惨な運命。

        運命に弄ばれ事件に巻き込まれ、という典型的なハードボイルド小説ともいえるのですが
        それだけでは語りつくせない魅力と深さがこの小説にはあります。

        「恐怖」を追求している点もその一つでしょう。
        (もちろんホラーとは全く別です)

        「人がなんといおうと、恐怖というものを私は充分に承知している。それは、馬そのもの、レース、落馬、あるいはふつうの肉体的苦痛に対する恐怖ではない。そうではなくて、屈辱、疎外、無力感、失敗……それらすべてに対する恐怖である。」
        「自身に対する自分の見方が幻覚にすぎなかったことをむりやり知らされることは、地震にも似た精神的激変であった」

        一人称小説なので「私」シッドは、その時々の状況を赤裸々に、時に情けなさ丸出しで語りかけてきます。
        その真実と切実さといったら…。
        彼は決して鉄の精神を持った男ではないのです。
        ただ、自分に対する誇りの為に、外にそれを漏らさない。自分から逃げない道しか歩めない、そういう性分なのですね。
        それでも生きていくという選択をすることのしんどさと当り前さ。

        相棒のチコ、元妻のジェニー、その父のチャールズ、ジェニーの女友達のルイーズ他の登場人物造形の素晴らしさのみならず、本作では悪役さえも血の通った人物として納得できる描かれ方をします。
        敵は、前作「大穴」の悪役の怪物的異常性とは異なり、人間が他者に与えうる脅威という形で現れます。
        暴力そのもの以上に脅迫の方を人間は苦しむものなのです。

        フランシスの小説の主人公はみな、素晴らしく魅力的なのですが、中でも最高に愛されているのはこの「シッド・ハレー」です。
        彼の描くのは、悪と闘う正義の味方ではなく、内的な動機に基づくアイデンティティの獲得、維持の為に闘う男の姿です。

        一話完結の作品がほとんどですが、例外が2つあり、その一つがシッドの出演(もはや実在人物^_^)作品です。
        負けず嫌いで頑固で自尊心が高くてめちゃくちゃタフな男でありながら、一方で大きな弱点を持っています。
        彼は、身体が不具であると言うハンデを背負っているのです。
        それは単に肉体的な不自由さではなく、アイデンティティを決定的に損なう類の障害です。
        愚痴も言えば弱気にもなる。内面では怯えも怠惰も嫉妬も抱えている事を自ら認め、端的に語るのがシッド。

        フランシスの主人公の多くは精神力の強い、抑制のきく一見クールな男性が多いので、
        見ようによってはシッドはフランシス作品中最も情けない主人公なのかもしれません。
        しかしだからこそ、人は彼を愛するのでしょう。
        彼のように、人からは、タフな男に思われたい。
        仮に自分自身の目には、そう映らなかったとしても。
        そう夢を描くことでしょう。
        そして彼が立ち直り、再び自分の人生を歩みだす姿を見たいがために、繰り返しこの本を読むのです。

        私も再びシッドに逢いに行くでしょう。
        もしも人生で打ちひしがれる事があったなら、自分が生きていくための勇気をもらうためにも。きっと。
        >> 続きを読む

        2019/05/16 by 月うさぎ

      • コメント 15件
    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      月光のさす場所 (角川文庫 (6135))

      眉村 卓

      5.0
      いいね!
      • 表題作ほか全6編を収録した短編集。

        眉村卓氏の作品は一時期"サラリーマンSF と呼ばれていたそうですが、本書のも普通に社会で働く主人公たちが遭遇する出来事を描いています。

        街全体がある会社に管理された世界を描いた「鳳凰傘下」。エリート組織に属さない"裏学校"出身者が経営する謎の会社を描く表題作などなど。

        正直どの作品も後味が良いとはいえない余韻が残り残こりますが、その分読みごたえがある短編集だと思います。

        なかでも「霧に還る」の切なさと「剥落の冬」の底知れぬ怖さは、本書のなかでもというより、個人的にはこれまで読んできた眉村卓氏の短編のなかでも、この2作は傑作だと思いますし、ほんまに読み逃さなくて良かったです。

        というわけで、オススメの短編集です。
        >> 続きを読む

        2018/10/18 by アーチャー

    • 1人が本棚登録しています
      死体は眠らない

      赤川次郎

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 気の弱い主人公が決死の覚悟で「鬼嫁」を殺害。
        誘拐されたことにして妻の不在を誤魔化そうとするが、
        隠したはずの死体が消えたり、謎の死体が増えたり、、とトラブルが続出する。
        「おばか」な登場人物たちが織り成すドタバタコメディ。

        10数年ぶりに再読。
        前回読んだのは中学生だったか、小学生だったか。。

        人生で初めて読んだユーモア小説。
        殺人、誘拐、裏切り、、などなど、ブラックな要素満載にも関わらず、
        悲壮感が一切漂わないのは作者の手腕によるものか。

        まるで舞台劇を見ているようなテンポの良さで
        一気に読み終えてしまった。

        肩肘張らずに読めるおすすめの一冊。
        >> 続きを読む

        2012/02/15 by po1415

    • 2人が本棚登録しています
      BE-BOP-HIGHSCHOOL - 4

      きうちかずひろ

      講談社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • BE―BOP―HIGHSCHOOL 第4/全48巻

        立花の菊永も登場し、更に役者が揃う。

        ケンカと女。言ってしまえばBE-BOPの世界観はこれに尽きるが、今回繰り広げられている世界も見事。

        強烈な印象を残しているヘビ次、ネコ次の兄弟が登場。

        兄のヘビ次は、本名が竜次。弟のネコ次は、本名が虎次。
        竜が蛇に、虎が猫にと、格下げされたあだ名なのだが、いかにも不良っぽくて笑える。

        結構強く記憶に残っていたのだが、実際はほんのチョイ役と言って良いくらいで、記憶のいい加減さに驚かされた。

        (この巻では、まだそう呼ばれていないが)キクリンこと、立花の菊永も登場し、愛徳VS立花の抗争勃発か!?
        と思わせるも、実際には抗争どころかお笑いエピソードで決着する。

        思えば、いつもキクリンはマジメなのに、気付くと爆笑の的になっている可哀想なキャラで有る。

        他は、鬼島こと、元マル暴の島崎巡査部長の登場なども有るも、女路線全開。

        とても高校生とは思えないシンゴの絶倫エピソード(オットセイのエキスとか...)で笑わせるのは毎度の通りだが、シンゴとヒロシに煽られて鬼姫と付き合う寸前まで行くトオルも珍しく頑張っている。

        今回も岩本が見せ場を作った。

        イマイチかわいくない娘から告白されて迷う彼だが、存在しない姉としてモデルの写真を見せ、彼女は将来カワイクなるダイヤの原石だと吹き込まれ、交際に踏み切る。

        彼の場合は異性とのお付き合いで学ぶところが多そうなので、結果はとても良かったと思うのだが、完全に面白がっている外野の気持ちもわかる。

        キクリンにしろ、彼にしろ、本人は大マジメなところが、爆笑を誘うのだろう。

        そう言えばBE-BOP用語?の「シャバい」が、たぶんまだ登場していない。ますます記憶なんて怪しいものだと痛感。
        >> 続きを読む

        2012/11/03 by ice

      • コメント 1件
    • 1人が本棚登録しています
      軍師二人

      司馬遼太郎

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 歴史短編8編。

        それぞれ印象深い短編集。プライドが一貫してテーマだったように思う。

        ギリギリまで追い込まれ、最後に一花咲かせたいと死地に臨む。

        最善手を知りつつも、様々なしがらみで悪手しか選択することを許されず、せめて最後を飾れる死地を模索する。
        武将または侍達の死が迫る中での潔さが、美しさにまで昇華しており、ある種の感動に包まれるかのようなシーンが多かった。

        また、侍に相対する女性の立場が描かれたものも有る。

        自身の体を通った男性の行く末を案じてしまう女性。
        獣のような強さに惹かれ、気付けば自身も獣のような欲望を抑えがたくなる女性。

        男女間の話は詰まるところ、恋愛感情になるのだが、様々な愛の形は有れど、
        現代でも似たような男女は、そこかしこに存在することに気付くかされる。

        死を美化するのは良くないが、生命を賭して守るべき何かを持つ人生は美しいと思う。
        >> 続きを読む

        2012/01/04 by ice

    • 1人が本棚登録しています
      盗賊会社

      星新一

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 星さんのショート・ショートを読むときの、ドキドキ・ワクワク感は別格だと思います。
        新しいものに触れるような感覚をくれます。
        『盗賊会社』はタイトル通り、ビジネスやお金に関するお話が多かったように感じました。


        *新しい社長
        数字にやたら正確で、どんな小さなことも記憶している社長。
        こんな社長がいたら嫌だけれど、会社の方針ならしかたないのか。
        息が詰まりますね。

        *盗賊会社
        盗賊会社の社員は、泥棒そのものが営業。
        変わった企業で日々満足しながら仕事に励んでいると思いきや、まさかの転職話???
        転職を促すCMを思い出しました。

        *やっかいな装置
        ひとつの物体が宇宙から飛来し、地球の上へと着陸。
        税金の仕組みを客観的に見つめ直せる、不快で複雑なお話でした。
        普段気にしていない(当たり前のものとし考えなくなっていた)ことを突き付けられました。

        *あるノイローゼ
        コンピューター社会になったからこその、病とビジネス。
        自らの病を通して稼ぐことを思いついた主人公にニヤリとさせてもらいました。


        本書ではこれ!といったお話はなかったのですが、全てが粒ぞろいだったと思います。
        クオリティの高さはさすがです。
        新潮文庫夏のフェアで、星さん枠が一番楽しみ。
        >> 続きを読む

        2018/07/08 by あすか

      • コメント 2件
    • 5人が本棚登録しています
      植村直己・地球冒険62万キロ (文学の扉)

      岡本 文良

      5.0
      いいね!
      • すごく勇気のある人で、性格がすごくかっこいい!!

        2017/02/15 by Na-chan

    • 1人が本棚登録しています
      確率2/2の死 長編推理小説

      島田荘司

      光文社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 綿密に練られた誘拐計画。成功寸前だったにも関わらず身代金も受け取らずに人質を解放した誘拐事件。

        冒頭より走らされる吉敷刑事。
        用意周到に仕組まれた誘拐事件の犯人探しのつもりで読み進めたが
        容疑者自宅付近を周回する謎の車両が出現した辺りから島田ワールドに引き込まれた。

        地域住民のほとんどが野球賭博の経験者だったという設定に無理を感じたため
        島田氏作品としては低評価だったが、そこに目をつぶれば十分に楽しめる作品である。

        誘拐事件のはずなのに川口投手は完全な脇役。
        この辺りにも島田氏の読者の裏をかこうとする姿勢が読み取れる気がする。
        >> 続きを読む

        2010/12/25 by ice

    • 1人が本棚登録しています

出版年月 - 1985年8月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本

星の王子さま