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1988年3月発行の書籍

人気の作品

      手ぶくろを買いに

      新美南吉 , 黒井健

      偕成社
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! kimiyasu
      • こぎつねのためにがんばってお店を探して、帽子屋さんで手袋をもらえたので良かったね >> 続きを読む

        2015/11/21 by れおっち8

      • コメント 1件
    • 他4人がレビュー登録、 14人が本棚登録しています
      ガラスの動物園

      テネシー・ウィリアムズ , 小田島雄志

      新潮社
      カテゴリー:戯曲
      4.7
      いいね!
      • 「欲望という名の電車」などの戯曲でアメリカを代表する劇作家テネシー・ウィリアムズは、チェーホフと並んで、日本では異様に人気の高い劇作家であるような気がします。

        それはなぜかと考えてみると、滅びゆくものとか儚いものの側に立って描いている、作家としての創作の姿勢が、判官贔屓の日本人の心情にフィットするからだと思う。

        それから、少女とか女性が主人公の作品が多いというのも、演劇を観るために劇場に足を運ぶ多くが女性の日本では、そういうところも受ける要因なのかもしれませんね。

        しかも、彼が描く作品世界は、圧倒的に新しい。
        彼は「演劇的なリアリズムと写実のリアリズムは違う」ということを明確に意識している作家だし、そこが時代を経ても決して古びない戯曲になり得ているのだと思う。

        ポール・ニューマン監督、ジョアン・ウッドワード主演の映画化作品を観て、それで原作の戯曲を無性に読みたくなり、シェークスピアものの戯曲の翻訳で定評のある小田島雄志訳の「ガラスの動物園」を読みました。

        この「ガラスの動物園」には、しょっぱなにその新しさを象徴するセリフがあります。
        語り手のトムが、いきなり観客に向かって「そう、ぼくは種も仕掛けもちゃんと用意してあります」と語りかけるんですね。

        続けて「だが手品師とはまるで正反対。手品師は真実と見せかけた幻想を作り出しますが、ぼくは楽しい幻想に装われた真実をお見せします」と。
        初手から、この芝居の核心を突くセリフを提示するんですね。

        古き良き時代のアメリカ南部の価値観そのままに、落ちぶれた現在の生活からの脱出を目指して、娘の縁談に躍起になっている母親。
        その期待に応えられず、どんどん自分の殻に閉じこもっていく足の不自由なローラ。
        姉を愛していながら、こんな家から早く出ていきたいと夢見ているトム。

        テネシー・ウィリアムズの凄いところは、ローラに代表される儚くて弱々しい魂に共感しながらも、ローラ側の虚飾やら無力さに対する、突き放すような視点も同時に備えているとこだと思う。
        そして、最後の最後、ローラ的なものを決して救わない。
        無惨な結論から目をそらさないんですね。

        絶望のぎりぎりのところで踏み留まっているローラを、ほんの指のひと押しで奈落の底へと突き落とすのは、トムの同僚で、かつてローラの通う高校で人気者だったジム。

        このジムがローラの家に訪ねてきて、ローラにさんざっぱら思わせぶりなことを言うシーンがあります。
        それで、ローラが天にも昇る心地の頂点にいるところで、「つきあってる娘がいる」なんて話をする。
        その時のローラの気持ちを思いやると、つらくて、たまらなくなるんですね。
        とにかく、きつい芝居ですよね-------。

        この作品は、ローラがコレクションにしているガラス細工の動物の使い方が、実にうまいんですね。
        ジムのせいで、一番大切にしてたユニコーンの角が折れるシーンがあります。
        あそこでローラは、「角をとってもらって、この子もやっと----ふつうになれたと思ってるでしょう! 角のないほかの馬たちと、これからはもっと気楽につきあえることでしょう」と言うのですが、つまりユニコーンは、ローラのメタファーであり、角が折れるという変化が、そのままローラの底知れない失意にも対応しているのだと思うんですね。
        >> 続きを読む

        2018/06/28 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      ゴ-ルデンボ-イ 恐怖の四季春夏編

      浅倉久志 , スティーヴン・キング

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! kimiyasu
      • 『刑務所のリタ・ヘイワース』
        ラストシーンは鳥肌が立つほどの爽快感。
        集中しすぎていたせいか、電車を一駅乗り過ごしました。 >> 続きを読む

        2016/03/17 by one

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      アイデアのつくり方

      今井茂雄 , YoungJames Webb

      阪急コミュニケーションズ
      4.0
      いいね!
      • さまざまな資料を取り入れ、それを項目ごとに整理して、そしてその資料が重なり合って新しいアイデアが生まれる。

        この本から大事なことを教わりました。
        >> 続きを読む

        2017/03/17 by atsu

    • 他2人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      死都ブリュージュ (岩波文庫)

      G. ローデンバック

      4.0
      いいね!
      • 高校時代にたまたまクラス図書で見つけて読んだ本です。

        愛する奥さんを亡くした男が奥さんに似た女性を見つけ恋に落ちていく話です。
        男の気持ちが移り変わる様子がとても印象的でした。
        明るい話ではありませんが私が好きな雰囲気でお気に入りの一冊です。
        >> 続きを読む

        2015/04/28 by yo24

      • コメント 2件
    • 2人が本棚登録しています
      お母さん、ぼくが生まれてごめんなさい

      向野 幾世

      旺文社
      カテゴリー:障害児教育
      4.0
      いいね!
      • 重度の障害児とその母親の共に成長する姿を描く。

        まだまだ人間としての優しさが足りないと反省させられた。

        障害者の方々に対してのスタンスは人それぞれ違うと思うが、健常者と同様に扱うべきと考えている人が多いように思う。

        具体的には、好奇の眼という誤解を与えないようにハンディの有る部分を注視しないとか、声をかけられるまでは、こちらからお手伝いを申し出たりしないなどで有る。

        本作品を読んで、これは言わば受動的な態度ではないかと考えさせられた。

        もしかしたら気を悪くされてしまうかもしれないが、先方だって頼み辛いはずなので、こちらから何かできることは無いかをお声かけさせていただく勇気を持った方が暖かい社会になると思う。

        本書で取り上げられている障害者の方は、出生時よりハンディを抱えられている。
        自分自身に障害は無かったとしても、自分に子供を授かるときのことをイメージすると、もしかしたら、その瞬間から障害児とともに生活することも有り得るわけである。

        もっと能動的に障害者の方々に対して向き合うべきだと思う。

        タイトル通り重く感動的な作品で有る。
        >> 続きを読む

        2012/01/26 by ice

    • 1人が本棚登録しています
      黄金拍車 異次元騎士カズマ

      王領寺静

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 少年が中世ヨーロッパにタイムスリップし、波乱万丈の冒険活劇を繰り広げるファンタジー。物語の後半、騎士団中のスパイの正体が判明してから、話がぐっと面白くなります。

        中学生時の人生に対する期待や高揚を思い出し、ちょっとわくわくします。昔の純な気持ちを思い出し、「今日も元気に仕事を頑張ろう!」と思える本です(笑)。
        >> 続きを読む

        2015/01/03 by こいこい

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    • 1人が本棚登録しています
      徳川家康 - 23 蕭風城の巻

      山岡荘八

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 大坂夏の陣に向かい高まる緊張感。

        緩やかに上ってはいるものの中弛み感は否めない。

        大坂を軟化させるべく何度も謎をかける家康。
        大坂側の窓口である片桐且元は、この謎を解けずおろおろするばかり。

        結局のところ、言わずとも気持ちを汲み取って欲しい家康に対して、それに全く気付かない且元という図式になる。

        これは現代社会のビジネスシーンでも良く見られる気がする。

        客先交渉に立つようになってから、または部下を持つようになってから、急に上手く立ち回ろうと振舞い失敗する人がいる。

        やはり、こういうスキルの習得は必要になった時点で努力しても遅く、普段から上司や顧客そして部下の気持ちを察するべくアンテナを張り、適切なタイミングと強さでアプローチする訓練をしていく必要が有るのでは無かろうか。

        そろそろ最終巻が近づいている。達成感とともに喪失感を味わうのが怖い。
        >> 続きを読む

        2012/07/19 by ice

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    • 3人が本棚登録しています
      徳川家康 - 24 戦争と平和の巻

      山岡荘八

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 大坂冬の陣。そして夏の陣へ。

        家康を持ってしても止められない潮流に人間の業を感じる

        大坂冬の陣を回避した後、家康に頭を垂れる秀頼。

        大きな愛情で包み取るつもりの家康からすれば、一生を賭けて臨んできた天下太平に大きく近づく一歩で有り、晩年に苦労が報われたような気分だったはず。

        しかし、まさに雪解けムードも漂い始めた中で、強硬に対抗勢力の排除に乗り出す秀忠。
        将軍職は譲りながらも、これまで圧倒的な権力を振るって来た家康だが、未来を託す秀忠と重臣に、揃って強硬論を唱えられると我を通せなかったのも頷ける。

        そんな中で大坂側では、郡山に火を放ち自らの運命を決定付けてしまう。
        ここに来て哀れに思うのは、やはり秀頼。

        淀君に関しては、ある程度は自分で選択を続けて来た結果と言えるが、秀頼は生まれた時から運命が決定付けられており、幾ら担がれる立場とは言え、ここで責任を負わされるのは哀れである。

        ついに残すところ2巻。読み終えるのが何だかもったいなく思う。
        >> 続きを読む

        2012/07/20 by ice

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    • 3人が本棚登録しています
      徳川家康 - 25 孤城落月の巻

      山岡荘八

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 大坂夏の陣。豊臣家の崩壊を目の当たりにし落涙する家康。

        秀頼/淀君の最後には大きな感慨に包まれた。

        何とか豊臣家の存続を図るべく様々な手を打つ家康だが、徳川/豊臣それぞれの家臣の思惑に捻じ曲げられ功を奏さず。

        大阪城が落ちた後も秀頼/淀君が実を隠すところまではある意味で、家康の思惑通りだったと思われるが、あと一歩のところで結局生きて救い出すことは出来ず大きな衝撃を受ける。

        何故救いきれなかったかと考えると、秀吉の全盛期から既に代替わりしており、徳川執行部には、家康ほど豊臣家に対する思い入れが無いで有ろうことと、大坂攻めに参加した武将への恩賞という大きな問題が存在しており、仮に秀頼を転封させたとしても解決はできないため、生かしておくわけには行かなかったのだろうということが浮かぶ。

        いよいよ次回が最終巻。読み終えた際にはどんな気持ちになるのだろう。
        >> 続きを読む

        2012/07/25 by ice

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    • 3人が本棚登録しています
      徳川家康 - 26 立命往生の巻

      山岡荘八

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • ついに完結。家康大往生。波乱万丈の生涯を締め括る。

        10,000ページを超える大著だけに、読後の感動も大きかった。

        「泰平の鬼」一見矛盾していそうな言葉だが、全身全霊を賭けて、天下泰平を目指した家康を表現するには的を射た言葉だと思う。

        目立った対抗勢力も既に無く、もはや日本一の実力者としての地位を揺ぎ無いものにしているにも関わらず、臨終の間際まで緻密な計算で、自らの行動を律し続ける生真面目さと隙の無さは驚異的ですら有る。

        結果的に江戸時代はその後264年続くことになり、彼の偉大さは証明されるのだが、あえて指摘したいのが、公私のバランス。
        公の部分では全く突っ込みどころが無いほどの偉人で有るが、私の部分では過度に自分を律し過ぎたのではなかろうか。

        どれだけ偉業を成したとしても、自分のためにも相手のためにも愛すべき人々を真正面から愛せないような生き方をしてはならないと思う。

        小説として印象に残ったのは、松平忠輝の存在。
        強烈な個性を発揮しつつも伊達政宗の傀儡として描かれ、取り立てて大きな役目を果たしているわけではなかったが、最終巻の最後の最後で、一気に主役級まで駆け上がって来るのが強く印象に残った。

        徳川家康、松平忠輝、伊達政宗、徳川秀忠。最後は彼らに泣かされた。
        >> 続きを読む

        2012/09/13 by ice

      • コメント 3件
    • 3人が本棚登録しています
      らんま1/2

      高橋留美子

      小学館
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • 小学生くらいの時にハマっていたけど、今になって実写化するってことにビックリ‼ ピーちゃんとか、らんまのお父さんのパンダとか、どんな感じになるんだろう…?観たいとは思わないけど、でもやっぱり怖いもの見たさみたいな感じで観たい気もする…

        怪物くんとか、るろうに剣心とか、漫画の実写化がホント流行ってるなー。
        >> 続きを読む

        2012/01/20 by sunflower

    • 6人が本棚登録しています
      Cryingフリーマン - 八

      池上遼一

      小学館
      4.0
      いいね!
      • Cryingフリーマン 第8/全9巻

        軍隊レベルの敵に因われたフリーマン。救出に向かう姉妹。

        後半の溢れる優しさが染みる。やっぱり強いだけでは人はついていかないことを思い知らされる。

        前半は、退役軍人を中心に組織された擬似軍隊からの逃避行。

        村正使いの妻と、百貫デブの義妹が救出に来るものの、もはや特別見るべき所はない。
        今回も見事だが、毎回あまりにも見事なので、良い意味でスルー。

        後半は雄首冬獄の忘れ形見たる母子へのフォロー。

        母の匂い立つような美しさと、凛とした立ち振舞いが印象的。

        雄首冬獄との約束を果たすべく救いの手を差し伸べるフリーマンだったが、縋るのを良しとしない彼女との間に擦れ違いが起こる。

        本来なら、このまま袂を分かって何の問題も無いはずだが、さすがはフリーマン。
        自らを窮地に立たせることになるにも関わらず、彼女の気持ちを溶かしにかかる。

        こうして、また1人フリーマンに心の底から惚れてしまう女性が増えた。
        罪な男で有る。そして、あまりにも罪が無い、生真面目な男で有る。

        次回最終巻だが、そこに続くような終わり方では無かった。さぁ最終回、どういう風に締めくくるのかが楽しみで仕方が無い。
        >> 続きを読む

        2012/10/25 by ice

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    • 1人が本棚登録しています
      日本語表と裏

      森本哲郎

      新潮社
      3.0
      いいね!
      • 日本では、あいまいな言葉が一番優れた言葉で、もっとも重んじられている。
        「よろしく」、「どうせ」、「お世話さま」、「まあまあ」、「どうも」など、
        「ええじゃないか」、「さっくばらん」、「もったいない」と24の言葉をあげながら
        そこに、潜む、日本人特有の、かくされた気持を解き明かす。

        「しとしと」のところでは、水も音を表現した、擬態語、擬声語の多さは世界的に
        みても稀であり、その微妙な音をさまざまにつたえている。

        春の小川は「さらさら」流れ、水で布などを洗う音は「ざぶざぶ」であり、
        涙が流れる様子は「さめざめ」、水気をふくんださまは「しっとり」、
        それが外ににじめば「じっとり」であり、湿気が過度であれば「じめじめ」
        水が絶えず流れ出る状態は「じゃーじゃー」であり、
        水が揺れ動けば「じゃぶじゃぶ」、水滴が垂れる音は「ぽたぽた」
        水が跳ねる有様は「びちゃびちゃ」である。
        水にひどく濡れる形容は「びしょびしょ」であり、水に何かが浮かべば「ぷかぷか」
        水に沈むさまは「ぶくぶく」、雨が降り出せば「ぽつぽつ」、
        水中からの泡は「ぽこぽこ」水を一気に飲み干せば「がぶがぶ」、
        水に何かが吸いこまれれば「ごぼごぼ」、滝は「ごうごう」と落ち
        石は水中に「どぶん」、夕立は「ざーつ」と襲い、
        梅雨は「しとしと」と降りつづく。・・・・ああ、なんと多彩な水の表現なこと。

        ただ、作者は、こうした多彩なオトマトペ(擬態語、擬声語)の発達は、
        あくまで感覚的な言語であって、日本という小さな国で、同一民族がなせる
        同質社会だこそ、伝達機能ととしてなりえたことと・・。

        そろそろ歩くは忍びやかで、ぞろぞろ歩くは大勢で騒がしい。
        こんな、言葉のおもしろさは、落語の中の言葉遊びにも通じる。

        日本人の心の裏が、日常使う表の言葉に表れているとすれば、
        日頃のひとつひとつの言葉が更に、興味あるものにみえてくる。
        >> 続きを読む

        2013/05/30 by ごまめ

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    • 1人が本棚登録しています
      倉橋由美子の怪奇掌篇 (新潮文庫)

      倉橋 由美子

      3.0
      いいね!
      • 倉橋さんといえば、エロスと残酷さがちりばめられたダークさが彼女の持ち味。
        そんな彼女の怪奇短編20篇を集めた一冊。
        この作品集。かなり異色です。

        新潮社のこの本はどうやら絶版で「新潮オンデマンドブックス」としてウェブで買えるらしいです。
        宝島社から「大人のための怪奇掌篇」に改題されて出ていますが、
        でもこのブックデザインのほうが素敵なんです。
        東逸子さんの美しいイラストの表紙&本文扉裏の挿絵がはいって華麗です。
        購入するなら中古であってもこちらがお勧めかもしれません。

        さて内容ですが、基本、ホラーです。
        不気味だったり残酷だったり隠微だったり…なのですが、
        倉橋さんの知的でうっとりするような文体と押さえていながらなお湧き上がるユーモアに
        怖いというよりも面白いと感じてしまうはず。

        現代のミステリーや漫画を中心に読書している方には高尚すぎて刺激がなさすぎるかも。
        これは、描写によって見せる小説ではなくて、想像力を掻き立てるというタイプの怪奇小説なのです。
        現実と非現実、常識と錯乱、自我と異界の境界線の喪失感からくる酩酊するような恐怖。
        怖くて目を背けたくなるのではなく、脂汗が滲み、背筋が涼しくなるような。
        そして、頭の片隅に、この小説のモチーフが住み着いてしまうという、おまけつきの…。

        どの話にもオチがついているのも興味深いところです。
        オチといっても落語のような笑わせるものではありません。
        生首やら仮面やら、モチーフや共通のアイテムは見出せますが、
        各作品のテイストも趣向も様々に異なるため、一括りにはできません。
        味わってみるのが手っ取り早いかと思います。

        この文庫版には北杜夫さんが解説を書かれていますが、
        彼は倉橋氏の短篇には「サキ」に似た味わいがあるとおっしゃっています。
        私としては、自由奔放な想像力からきた「壊れっぷり」と
        博識な知的な味わいと広い日本語の語彙力の点でも筒井康隆を思わされました。
        (作風が似ている訳ではないです)

        しかし、その文学的な教養が、知性ひけらかしみたいに感じられ、
        でついていけない人からは倉橋さんはあまり喜ばれないようです。
        万人向けでは、ないことは確かですね。

        【目次:内容】
        ヴァンピールの会: 木原氏が経営する湘南の高級レストランで開かれる月一度の謎の集会の実態を知った時。
           *ヴァンピールってヴァンパイアのことでした。

        革命:体の中から革命を叫ぶ声が聞こえだした。
           精神の病なのか?それとも謎の生命体なのか?
           彼らは自らの組織を「蟹」と呼んでいた。

        首の飛ぶ女:ほぼ怪談。でも具体的に想像するととてもエログロです。
          あなたは美を感じますか?笑いますか?それとも吐き気を催すでしょうか?

        事故: お風呂に長湯していると肉が溶けちゃう病気。骸骨になっちゃった勉くんは…。
           シュールだけれど、実はとても皮肉なお話し。

        獣の夢: 旅の夢のなかに現れる人々は皆、一見それとわからないが本性は獣だった。

        幽霊屋敷: 有閑紳士の木原氏が若き美女に誘われて訪れた古式ゆかしいお屋敷。
          そこには知的なセレブが集い美しくも異なる空間が展開していた。
          こんなゾンビならなってもいい?

        アポロンの首: 美青年の生首を見つけ、それに魅せられた女のお話し。

        発狂: 神々が滅ぶとき。
            ギリシャ神話の神々から目線はいきなり唐突なSF的終末論へ。
            とっても反宗教的な香りがします。

        オーグル国渡航記: 「ガリバー旅行記」のパロディです。
            主人公カニバーはカニバリストから取ったものです。
            非常にダークで気味が悪いですが、人間性への皮肉に満ちた告発でもあります。
            なんとなく非常に納得してしまう。

        鬼女の面:ビジュアル的にも猟奇的で怖い話。能面って怖いですよね?
           「仮面」の本当の怖さと、性的なものを含む「タブー」の強烈な誘惑という心理的な怖さ。
           不気味さと、それゆえの滑稽さがあり、ぞっとさせます。

        聖家族: 子供が親の性交を観てしまうことから、関係性が崩壊していくのだが…
            どんでん返しがもう一回。これは、笑い話なのか?そうともいえる。

        生還:冥府に行って戻ってきた男の話。

        交換: これもある意味、仮面のお話し。人間の弱さというものを突いています。
            美男も楽じゃないです。桃源郷にご用心。

        瓶の中の恋人たち: 蜃気楼の中から現れた瓶の中には…?
          心中を目論む旅の男女はどうやら双子の兄妹らしい。

        月の都:中国の伝説、故事をモチーフに。
          ある文学者が仙人ごとき呉氏に月に連れて行ってもらう話。

        カニバリスト夫妻: テレビ番組の企画で登場した美男美女の夫婦は、自らグルメ的食人主義者(ガスタトリー・エクソカニバリスト)だという。
          そしてタレントのQ子がパリで失踪する。
          *作中にでてくるパリのS君というのは、実在人物の佐川君のことです。
           
        夕顔: 源氏物語現代版です。そうか、古典でなければ源氏物語ってホラーになるんですね。

        無鬼論: 「幽霊」「鬼」なんている訳がない。と話している当のお相手が「鬼」だった。という故事から。
           乱交パーティーの中に鬼がいたという怖~いお話。

        カボチャ綺譚: 「判決。生前の愚行の罪により、あなたをカボチャ化する」
          元宰相ボーブラ氏の判決だ。さて、故人を偲んでカボチャをいただきましょう。
          *元宰相ボーブラ氏ってモデルはオーヒラさん。なのか?  

        イフリートの復讐: アラビアンナイトをモチーフにした残酷物語。  
           不貞の罰を受けイフリートに惨殺される美女の話。

        どの話が一番怖いか?
        「首の飛ぶ女」と「鬼女の面」かしら。
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        2014/08/04 by 月うさぎ

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      レイチェル・ウォレスを捜せ

      ParkerRobert B , 菊池光

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 「スペンサー小説と呼んでくれ」----これは作者のロバート・B・パーカー自身が語っている言葉だ。

        ハードボイルド・ミステリは話が錯綜していて、なかなか全体像をつかみきれないものですが、過去のスペンサー小説は、いつもシンプルだった。

        この作品「レイチェル・ウォレスを捜せ」で私立探偵スペンサーが依頼されたのは、過激な女性解放活動家レイチェル・ウォレスのボディガード。

        レズビアン差別者を名指しで非難する著作を出そうとしたレイチェルは、何者かから脅迫を受けていた。

        非常に優れた思想家だが、神経質で気難しくユーモアを解さないレズビアン、レイチェルのガードは生易しいことではなかった。

        講演会場の図書館、サイン会場の書店、TV局、保険会社と、レイチェルの出向く先々で軋轢が生じるのだった。

        だが、事件に遭う前にスペンサーとレイチェルの間の相剋が決定的になってしまい、スペンサーはクビを言い渡される。

        ここまでが物語の前半で、後半は脅迫通り、彼女を誘拐したRAM(アメリカの道義復興)に肉迫していくスペンサーの活躍が描かれていく。

        このシンプルな二部構成は、一見物足りなく感じますが、各シーンにおける人物描写が圧巻なので、それほど気にならないんですね。

        とりわけ、スペンサーの誇り高き騎士ぶりは、マーロウ型ヒーローの面目躍如たるものがありますね。



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        2018/04/07 by dreamer

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      南総里見八犬伝 (日本古典文庫)

      滝沢 馬琴

      4.0
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      •  日本古典文庫の 19 です。
        母親の蔵書の中にあったため、
        そういえば八犬伝ってちゃんと読んだことがなかったなぁと思い
        挑戦してみました。
         
         文庫本 数冊分にあたるであろうボリューム、
        さすがに読み応えがありました!
        そして読者をあきさせないストーリー。
        さすがに古典の名作といわれるだけのことはあると思います。
        よくぞこれだけスケールの大きな作品を
        描ききったものだと感心させられます。
         
         読んでいて失敗したなぁと感じたのは、
        相関図をつくりながら読みすすめればよかったということ。
        登場人物たちが非常に多く
        かつ複雑に絡み合っている上に、
        名前がおぼえにくいため
        物語がすすむにつれ全体像が分かりにくくなってしまうのです。
         
         それでも大筋は里見家に縁ある八犬士が
        活躍していく物語なので困ることなく読めるのですが、
        登場人物たちの葛藤や心の機微を
        より面白く、より深く感じるためには
        やはり背景や関係性をしっかり理解している必要性があると思われ、
        そこに悔いを残してしまいました。
         
         一応 満足するだけに楽しませてはもらったのですが、
        将来時間がたっぷりできた暁には
        もう一度 相関をしっかり把握しながら
        読んでみるのもいいかなぁと思っています。
        (そういった意味では三国志なんかもそうですね)
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        2015/12/29 by kengo

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      ぼくんちひっこし

      山本省三 , 鈴木まもる

      金の星社
      4.0
      いいね!
      • 引越しを控えているチビッコにお勧め。漫画のようなコマの絵で、引越しを1から10まで分かり易く説明。引越し終了後に懐かしんで読むのもいいかも。 >> 続きを読む

        2011/12/05 by kumahachi

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      まちがったっていいじゃないか

      森毅

      筑摩書房
      5.0
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      • 良い意味で拘りがなくなる本です。

        中学生向けに書かれている本ですが、大人になって読んでも学ぶことがたくさんあります。

        私も中学生のときにこの本に出会ってたらまた違った人生だっただろうなぁと感じたりもしました。

        大人になった今、世間を知り、現実を知ります。
        でもそれって本当に世間なの?現実なの?と自分の思考を改めさせてくれます。

        人それぞれ、これが世の中だと思って生きていますが、実はそうではなくただの思い込みだったり…。

        そういうことを気づかせてくれました。

        そして人にとって何が大事なのかというのも書いてあり、表面ばかりを取り繕おうと必死になっていた自分に反省しました。
        そういう、肩書きだとか、過去に自分がやってきた栄光とかそういうことに拘る人、それで人を判断する人がいますが、それよりももっと人間として大事なことを学びました。

        誰でも、自分の生きてきた人生、捨てたもんじゃないと納得させられました。
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        2014/11/17 by snoopo

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      寺島町奇譚

      滝田ゆう

      筑摩書房
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.0
      いいね!
      • 田ゆうの落語劇場に感激、代表作の「寺島町奇譚」を買って読む。
        戦前、戦中の東京の下町、色街の風景を優しく、ほのぼのと描く。

        人の哀しみ、笑い、憂いなど、人々の心のいとなみが、日常の生活の中に映しだされる。
        貧乏長屋や、吉原は、落語の世界であるが、70年前の昭和の時代には、
        この寺島町のような世界が、身近にあったのだ。

        戦後の梅田で育った私でも、見たことが有るような懐かしさを感じる。
        登場人物が、貧乏しながらも、活き活きと毎日、精一杯生きている。

        例のごとく、吹き出しは、意味不明のもあるが、一息ついて、考えるのもまた楽しい。
        また、頁いっぱいに描かれている、街の風景は、どれもが木版画のようであり、
        電柱の陰、家の中の様子まで、興味深く眺めることができる。

        子供は、家のお手伝いをし、学校から帰っても、近所の子と泥んこになって一緒に遊ぶ。
        街の探検家として、どんどん興味と知識を拡げていく。

        商売の街で働く人と、そこに住んでいる人が混在していた梅田で、
        そんな時代に育った私には、貧しくも、ごまめが活き活きと活躍したことを
        遠く離れた東京下町ではあるが、思いださせてくれる懐かしさの溢れる絵本である。、
        >> 続きを読む

        2013/05/24 by ごまめ

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