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1989年8月発行の書籍

人気の作品

      青い花

      Novalis, 1772-1801 , 青山隆夫

      岩波書店
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • ――その花弁が青いゆったりとしたえりを広げると、中にほっそりとした顔がほのかにゆらいで見えた。

        29歳で夭折したドイツ初期ロマン派の詩人、ノヴァ―リスによる未完の長編。
        二部構成となっているが、作者逝去のため第二部第一章までしか書かれていない。
        その後に予定されていた展開については遺稿にて窺うことができる。

        乱暴に推察すれば、ノヴァーリスは詩と愛に満ちた永遠の理想郷へ至ることを夢見ていたのだろう。
        それを中二病のようなものとして捉えるか、詩人の繊細な感受性の発露と捉えるかは人それぞれだと思う。
        だが、何にせよノヴァーリスは大真面目に詩の精神を説き、あらゆる時代のロマン的なものの融合を指向し、失われた黄金時代が詩と愛によって新たに再来するというモチーフを繰り返しながら物語を紡ぎ続けたのだ。すごい。
        作中でも言われるように、「詩人は純粋な鋼であり、もろいガラス繊維のように感じやすく、しかも欠けない火打石のように固くもある」ということなのかもしれない。

        ストーリー自体はシンプルで、夢で見た青い花に心奪われた主人公、ハインリヒが母の故郷へと旅をしながら詩人としてあるべき姿を学ぶというものだ。
        いかにも教養小説らしい対話は、いささか真面目臭く感じる向きもあるかもしれない。
        構想メモを見ると、第二部ではもっと活発なストーリー展開が予定されていたようだが、残念ながら書かれるには至らなかった。

        しかし、作品の構造は少々複雑だ。
        詩や伝説、メールヒェンが入れ子のように挿入され、ポリフォニックに響きあう。それが作品に奥行を生み、テーマを浮かび上がらせる。
        例えば、ハインリヒは出立時に「いつかまた故国へもどってくるだろう、つまり自分はそもそも故郷へ向かって旅をしているのだ」と思うが、旅の道中に商人が語るアトランティス物語では、失踪した王女が一年後に嬰児と夫を伴って帰還する。そしてこの夫は詩人である。
        また、このアトランティス物語中に挿しこまれた歌は、王女の帰還を予告する役割を担っている。
        これらは全て、新たなる黄金時代の再来という円環状のモチーフの変奏曲に思える。
        同様に、クリングゾール・メールヒェンでは、ファーベルの活躍により黄金時代が再来する。
        ちなみにファーベルは詩の象徴であり、その父は感性を、母は想像を象徴している。一方、遺稿には「ハインリヒの母は想像である。父は感性である。」と記されている。
        このように本作では作中の様々な次元が共鳴しあい、作品世界に彩りを与えているのだ。
        第二部では、これらの次元がの垣根が崩れ融合し、ストーリーに反映される計画だったようだ。

        この作品のテーマは詩、愛、喪失と再生なのだと思う。
        黄金時代は太古の昔に失われているし、ハインリヒは第一部から第二部の間に最愛の女性を失っている。
        ノヴァーリス自身、婚約者ゾフィーとの死別というショッキングな体験をしている。
        しかし、「期待」と銘打たれた第一部の最後にクリングゾールが語るメールヒェンでは、ファーベル(詩)が活躍し、エロス(愛)はフライア(平和)と結ばれて新王として君臨し、万物が息を吹き返し、長い苦しみの夢は過ぎ去り、永遠の国が打ち立てられる。
        この「期待」を受けて綴られる第二部の表題が「実現」だ。作中のあらゆる次元が溶けあって、期待が実現されるはずだった。
        遺稿には「ハインリヒに関しては心情の内面的浄化が詳細に描写される。ハインリヒは、ゾフィーの国――あらまほしき自然――寓意の国へおもむく。」とある。
        読んでみたかった。

        もしあなたが辛い別れに悩んだり、失われた過去に囚われているなら、この本を手に取るのも一つだと思う。
        読んだところで問題が解決したり、悩みが軽くなったり、生きるヒントが得られるわけではない。
        だが、数世紀も前に生きた異国の詩人が死の間際まで追い求めた理想郷に思いを馳せたとき、己の心情との共鳴を感じ、少しだけ勇気づけられるかもしれない。
        もちろん、詩やロマン的なもの、教養小説、寓意に満ち想像力豊かなメールヒェンなどを求める向きには打ってつけの一冊だ。

        未完の作なので星を四つにしたが、四点満点という気持ちで星をつけた。
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        2018/01/10 by solnian

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      BE-BOP-HIGHSCHOOL - 12 BE—BOP—HIGHSCHOOL

      きうちかずひろ

      講談社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
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      • BE―BOP―HIGHSCHOOL 第12/全48巻

        ノブオの勇気から学ぶべき点は意外に多いように思う。

        やっと1/4に到達。正直今更Be-Bop...と思わんでも無いが、読み返してみるとスゲー(笑)面白い♪

        ひょんなことから菊永の額を割り、返す刀でその報復として自分も割られたノブオ。
        翌日の学校では、「菊永の鉢を割った男」的な英雄視で完全に調子に乗る。

        このどこか微笑ましい光景を整理してみると、大物(強敵)相手の場合、結果勝利に至らなかったにしても、挑むだけで名前が売れたりという効果が有るのがわかる。

        すぐに反撃を食らい、自分も額を割られたことは、単に不名誉なのにも関わらず、ややもすると「勲章」みたいな扱いにならないとも限らない。

        大物食いを薦めるつもりではないのだが、勝って当たり前の環境でひたすらスライムを倒し続けるよりは、次の町を求めて、ドラキーと遭遇するくらいのリスクはドンドン取るべきなんだと改めて思った。

        リスクを恐れて行動しないことは、中長期で見れば、実は最大のリスクを背負わされていることを自覚すべきだろう。


        少し前にボコボコにした遠方の高校、白山のチャッピーからの刺客。

        求めに応じて再度電車に乗り込む、ヒロシとトオルだが、途中、天保工業高校、副番のパクによりインターセプトが入る。

        苦戦はしたものの、トオルの気合いで窮地を逃れることができたと思うもつかの間、天保工業のトップ、ガチャピンが登場。

        激闘の末、ガチャピンをも退けた2人は、傷だらけになりながら、当初の目的である白山高校のチャッピーの元を訪ねるが、ガチャピンをも倒したその実力に慄くチャッピーは復讐を完全に忘れ懐柔策に切り替える。

        敵の敵は味方と言う言葉も有るが、日和見に見えるチャッピーの振る舞いが、白山高校のトップとしては合理的に思える。
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        2013/06/12 by ice

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      ペット・セマタリー

      スティーヴン・キング , 深町真理子

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 「怖い」というより「哀しい」話。

        愛する息子が交通事故で、死んでしまった。
        その死を受け入れられない、受け入れたくないために「ある力」に手を出してしまう。

        ペット霊園のそのまた奥、近づく者さえいない深い深い森の中の「ある力」に。
        それが「呪われた力」だと知りながら・・・。

        しかも、何度も同じ過ちを繰り返す、という点が愚かしくもあり、哀しくもある。

        「呪われた力」は、決して完全な形では、家族を返さない。
        愚鈍になったというレベルから、中身は完全に別の(そして邪悪な)「何か」に入れ替わってしまったというレベルまで。

        (決して完全ではないが)良い結果が出る可能性があるからこそだろうか、「呪われた力」には中毒性がある。

        「前の奴は失敗したかもしれないが、自分は、うまくやれるさ。」と。
        ただ、実際は「リスク」を過小に、「リターン」を過大に評価しているだけ。

        そして、この「呪われた力」には、伝染性も。

        「あの人の悲しむ姿を見たくない」
        「あの人は悲しみに耐えられないのではないか」
        という思いから、知る者は、知らない者に「呪われた力」の事を伝えてしまう。

        が、それこそ「呪われた力」の狙い。
        大きな「悲しみ」を抱えた者を自分の所に呼び寄せ、その「悲しみ」を糧とする。

        そして、一度、「力」を利用すると、いずれ再び利用しなくてはいられなくなる。
        得てして新たな「犠牲者」を連れて・・・。

        ただ、この「呪われた力」そのものは、本書のメインではなく、「死」(裏返せば、「生」もしくは「愛」)がテーマ。

        文庫本で上下巻に分かれていて、上巻では飼い猫のチャーチにまつわる奇怪な話(それが下巻の前フリになる)があるものの、概ね主人公の幸せな様子が描かれる。
        特に上巻の最後の方の仲睦まじい父と子の様子の描写が印象的。

        そして「悲劇」は下巻の冒頭に起きる。
        ・・・というか、下巻は、いきなり「悲劇」が起きた後から始まる。

        主人公が半ば自動で動きながら、息子の葬儀の準備をしつつ、「悲劇」の瞬間を思い出していく、という形式。
        その記憶の中では、ラスト、間一髪で息子を救うが、現実に戻った時、息子はいない。

        所謂「死亡フラグ」を使った展開。
        それに加えて、妻の養父との不仲による修羅場の話も交えて、主人公の喪失感が浮き彫りになる。

        さらに上下巻の分かれ目もうまく利用しているのでは、と思った。。
        (単行本の時は、どうなっていたか知らないので、単に偶然かもしれない。
        が、キングならやりそうなので。)

        ただ、子供の描写が生き生きとしている分、同じくらいの年頃の子供がいる人には、読むのがツライかもしれない。
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        2014/04/19 by Tucker

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      源氏物語人殺し絵巻 (文春文庫)

      長尾 誠夫

      4.0
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      • 第4回サントリーミステリー大賞読者賞受賞の長尾誠夫の「源氏物語人殺し絵巻」を、手間取りながらも読了。

        何しろ「源氏物語」である。
        今様の陰謀サスペンス風に、生々しくアレンジされているとはいえ、平安時代の時代背景や、当時の恋愛スタイル、独自の物語展開にはスンナリと溶け込みいくいところがあるんですね。

        当世のギャルのごとき紫式部が登場する"夕顔"の第三章以降から、ようやくエンジンがかかり出しましたね。

        桐壺帝の御代。事件は宮中で起きた。桐壺更衣が死亡したのだ。惨死状態で。
        喉を掻きむしり、血を吐いての死だった。何者かに毒殺されたようなのだ。

        桐壺更衣は、帝の寵愛を一身に受けていた。
        その関係を妬んだ者の犯行か?----とすれば弘徽殿女御?------。

        帝には二人の子供がいた。弘徽殿との間に一子、桐壺との間に一子。
        桐壺の子が東宮になれば、弘徽殿一族の栄達は絶たれてしまう。
        弘徽殿にとって、桐壺抹殺は至上命令だった。

        それから約二十年後。第二の事件が起きた。
        殺害されたのは夕顔。桐壺の一子、光源氏の愛する女性だった-------。

        おどろおどろしい、魑魅魍魎の跋扈する平安京の闇のゆらめきが、私を妖しい悪夢の世界に引きずりこんでいく。

        意外な人に意外な才能。優美な中にも怖さを秘めた作品なんですね。

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        2018/05/04 by dreamer

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      名前のない人

      村上春樹 , クリス・ヴァン・オールズバーグ

      河出書房新社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
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      • 絵もお話しもとても独特で素晴らしい。
        物語は語られるためにある。
        絵本は観られるためにある。
        それを感じる絵本です。

        表紙の絵の表情にちょっとぎょっとしますが、でも、不気味な話ではありません。
        ご安心を。
        とにかくとてもきれいな青い目で非常に豊かな表情をしている人なんです。

        ある秋の終りの日、ベイリーさんが運転する車が
        何かをはねてしまった感触に大慌てで飛び出すと、
        そこには不思議な革の服を着た男の人が倒れていました。
        家に連れ帰りましたが…

        〝記憶を失っているようだな とお医者は言った”

        その男の人は言葉をまったく話さないのでした。

        家族は「名前のない人」に親しみを覚え、農場で一緒に働きながら、
        楽しく日々は過ぎていきます。
        しかし、ある異変が起こっていることに気づいてしまいました。


        「名前のない人」は、本当は誰なのか?



        それは、最後までわかりません。

        それこそが、物語らしさなのです。

        けれど、温かい確信をもって、「名前のないひと」の存在を信じることができるでしょう。
        この本を読んだ誰でも。


        「また 来年の秋にね」 


        村上春樹翻訳絵本シリーズ
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        2012/10/09 by 月うさぎ

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      諸葛孔明に学ぶ

      松本一男

      新人物往来社
      カテゴリー:個人伝記
      3.0
      いいね!
      • 孔明を例に社会を見る。
        リーダーとしての振る舞い
        部下に対する接し方等
        会社にまつわる話が多く
        かなり前の本だからか、松下幸之助がよくでてくる。
        >> 続きを読む

        2015/09/01 by トマズン

    • 1人が本棚登録しています
      天―天和通りの快男児 (1) (近代麻雀コミックス)

      福本 伸行

      竹書房
      いいね!
      • この本の名言をご紹介します。

        ***
        責任をとる道は
        身投げのような行為の中にはない
        責任をとる道は…
        もっとずーっと地味で全うな道……
        >> 続きを読む

        2012/10/15 by 本の名言

      • コメント 1件
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