読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)
島田荘司
1クリック登録
変な館に集められる、という雰囲気はとてもすき。ただ、御手洗さんより警察の操作の方が長いし、御手洗さんはさっときて、変人扱いの間にさっさと解決してしまうし、、、トリックが壮大すぎるのもいまいちかな。 >> 続きを読む
2016/03/02 by NACO
小野不由美
異世界十二国に渡った陽子。隠されたその意味が明かされる。消化不良だった上巻だったが、下巻に至りやっとストーリーが展開し始めた印象。まだシリーズ第1巻(上下)を読んだに過ぎないが、十二国記と言うだけに12x上下の24巻構成なのか?と思ったがそうでもなく、そもそもまだ完結していないらしい。これくらいの規模のストーリーになると、まだ導入部分なのだろうと思うのだが、上下巻を読んだところで一応世界観が理解できた気でいる。王と麒麟の関係などは、オリジナリティが有って面白い。また、現実世界とのオーバーラップについても上巻ほどの拒否反応は感じなかった。ここまで読んだからには全巻制覇することは決めたのだが、現時点で違和感を感じる個所が有る。それは、あまりにも幾何学的にキッチリ整備された世界(国境)。そもそも陸と海が最初に存在し、そこに人間の都合で境界線を引いたのが国家で有ろう。最初から線引きされた世界が与えられ、そこを各国の王が統治するという世界観にリアリティを感じろと言う方が無理だと思う。とは言え、そこはファンタジー。細かいことに違和感を表明するよりも、その世界観にドップリ浸りたいと思う。正直聞いたことが無かったのだが、調べれば調べるほど人気シリーズなのだと言う印象を深めている。 >> 続きを読む
2012/09/29 by ice
長野まゆみ
夜の学校に現れた迷いの園、中庭の噴水で季節がすれ違う時、秋の使者が運んできた。群青天鵞絨色のメルヘン。第25回文芸賞受賞作。 >> 続きを読む
2013/12/09 by books
García LorcaFederico , 牛島信明
今年の九月、昭和の名女優として人びとの記憶に刻まれていた原節子さんがお亡くなりになりました。おそらく哀悼の意を込めてでしょう、今月のプレミアムシネマは小津安二郎の作品が並んでいる。念のため列記すると『彼岸花』、『お早う』、『東京物語』、『秋刀魚の味』、そして昨日は『秋日和』だったらしい。「らしい」とつい口を滑らしましたが、じつは録画して観ました。もちろん『彼岸花』も。小津映画といえば、ローアングルや役者の棒演技、飲み食いの場面がやたら多い、おなじ役者がよく出る(これは有名監督の特徴だが)、大事なシーンで唱歌が入る、そして何といっても話の筋が似たり寄ったりでどの作品も娘を嫁にやる親の心境がテーマ。急いで付記するけれど例外もありますよ。ただ、このテーマを好んでいたに相違ない。 小津映画にかぎらず「結婚」は藝術作品のモチーフとして欠かせません。たしかバルザックが結婚に関する著作を残していて、あらゆる人類の叡智のなかで最も遅れをとっているのが結婚についての知恵だと断言していた。たぶん真理でしょうね、だって実験不可能ですもの(笑)。こんなぼくですら、何度でも再試行できるなら一度や二度は成功しますよ。もっとも、相手がいればの話ですが。 ということで、結婚に材を取った戯曲『血の婚礼』を紹介します。著者はガルシア・ロルカ。戦後になって劇作品が好評を博したらしく、現在でも人気は高い(だろう)。ちょっとまえだったかな、常盤貴子さんがナビゲーターのBS番組があったけれど、そんなに熱心に観ませんでした。なるほど常盤さんが美人なのは大いに認めます、しかし目元が情熱的すぎる。そう、あれはまさにラテンの血、まるでロルカの作品の女のよう。 あらすじを書き殴るまえに男性諸君に一言。「女心」を研究するテクストとして、ガルシア・ロルカの戯曲より打ってつけのものはないと聞いたことがある。言うまでもなく「女性心理(原理)」を理解するためのテクストではなく、それに触れる、というより感じることができるらしい。このたび再読致しましてこの教訓の真意をお風呂のなかで考えました。そしてポツリと呟く、肯定することも否定することもしません、ただ、後ろから見守るだけです。 <夫と息子をナイフで殺された母親ともうひとりの息子の会話からはじまる。その母親はナイフと自分の家族を殺した犯人を憎んでいて、その憎悪がつのればつのるほど息子が心配で仕方がなかった。その息子もそろそろ結婚する年ごろ。相手はもう決まっている。しかし、その娘は美人で人柄もいいのが有名である反面、かつて深い仲になった男がいるばかりか、あの憎い犯人と血の繋がりがあるので母親のほうは虫が好かなかった。 その母親の勘があたり、憂慮が現実のものとなる。じつは娘は結婚にためらいの心があり、すでに縁を切ったはずのレオナルドが結婚式に現れ、その娘をさらって行く。娘のほうも彼に身を任せてしまう。母親が叫び声をあげる最中急いでふたりを追いかける息子。そうして、月夜の下でとうとう三人が顔を合わせることになって……>追記 おまけにロルカの詩でぼくが好きなものをひとつ引用します。角川書店の世界の詩集19「ロルカ詩集」より(58ページ)。 覚え書わたしが死んだら、埋めてください わたしのギターといっしょに砂の下に。 わたしが死んだら、オレンジの木々と薄荷の間に。 わたしが死んだら、埋めてください お望みならば風見の中に。 わたしが死んだら! 次回は宇野千代の『おはん』を取り上げます。余分な小エッセイもたぶん付けます。今回は無駄に長かったですね、書きたいことがまだまだある(苦笑い)。いけない、いけない。簡潔に、簡勁に。そんなの無理、無理。 >> 続きを読む
2015/12/10 by 素頓狂
木村栄一 , CortázarJulio
内容紹介-------------------------------------------------------夕暮れの公園で何気なく撮った一枚の写真から、現実と非現実の交錯する不可思議な世界が生まれる「悪魔の涎」。薬物への耽溺とジャズの即興演奏のうちに彼岸を垣間見るサックス奏者を描いた「追い求める男」。斬新な実験性と幻想的な作風で、ラテンアメリカ文学界に独自の位置を占めるコルタサルの代表作10篇を収録。---------------------------------------------------------------知人にお勧めされた本。国連加盟193か国の本を可能な限り読んでみたいというのが最近私が抱いている夢で、本書はアルゼンチンの作家の本。一昔前にラテンアメリカ文学のブームがあったらしく、そのときに注目された作品だそう。特にラテンアメリカ文学に注目して読んだことはなかったが、『百年の孤独』が私の読みたい本リストにあって、著者のガルシア・マルケスもその分類に属するという。「続いている公園」☆☆☆「世にも奇妙な物語」にありそうと言ってしまったらレビューとして負けな気がするけれど、実際そうだから仕方ない。「パリにいる若い女性に宛てた手紙」☆☆☆口からウサギを生み出してしまう男の話。最後は自分の中で納得していたものの許容範囲を超えてしまったのか。解説によれば、いろいろとモチーフとして受け取れる小道具があったようだが、文学的な教養に乏しい私にはそこまで読み取ることができなかった。「占拠された屋敷」☆☆☆兄妹で暮らしている屋敷が何者かに少しずつ占拠されていってしまう。それがどういう存在なのかはわからず、兄妹も確かめようとしない奇妙な話。兄妹の距離がなんとなく近いなくらいには思っていたが、解説を読んで少し納得。「夜、あおむけにされて」☆☆☆夢の世界と現実の行き来を繰り返して、どちらが現実かわからなくなってしまう男の話。似たコンセプトの話としては最近読んだエドモンド・ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』に収録されている短編「夢見る者の世界」の方が面白かったかな。ただ、コルタサルの方は改行や段落の変更がかなり少ないので、同じ段落中で場面転換が発生する。そのせいで、知らぬ間に夢の世界に入ってしまった(あるいは現実に戻ってきた)ような錯覚を覚えるのが面白い。「悪魔の涎」(原題"Las babas del diablo")☆☆☆コルタサルの作品の中で1、2を争う有名な作品で、イタリアの映画監督ミケランジェロ・アントニオーニによって『欲望』のタイトルで映画化されている。男が公園でのふとした光景を写真に撮り、それを家に帰って眺めていると写真が動き出し……という話。評価が高いようだが、コルタサルは個人の内面について描く作品が多い中で、本作ではあまり触れられず、私はあまり好みではなかった。空中に浮遊する蜘蛛の糸のことを悪魔の涎と呼ぶということがためになったくらいか。「追い求める男」☆☆天才的なサックスの才能を持ちながら精神を患い薬物に溺れてしまう男と、彼に振り回される人々の話。改行と段落変更のない構成と、詩的にかつ断片的に語られるサックスマンの内面を読むのがひたすらに辛かった。本書の複数の短編を読めば、コルタサルがかなり個人の内面の描写に寄せている作家だということはよくわかるが、この作品はその傾向がかなり強い。周囲の世界との関わり方から個人を描くのではなく、ただただ個人の内面を語る本作はコルタサルらしいとも言えるのかもしれない。しかし、薬物に侵され前後不覚の男の非現実的な話を続けられると気が滅入ってくる。人によって好みが極端に分かれそうだ。「南部高速道路」(原題"La autopista del sur")☆☆☆☆フランスの高速道路で深刻な渋滞が発生した。すぐに解消するかに思われた渋滞は長引き、日をまたぎ季節をまたいでいく。いつしか人々はグループを作り、役割を決め、水や食料を集め、路上でサバイバルをする。本書を勧めてくれた知人が一番推しており、私も最も気に入った作品。とんでもない奇想小説だが、グループの形成・運営などがリアル(現実でこうなるわけはないのだが)で、かつ文体が他の作品よりも読みやすいので万人がとっつきやすいと思う。ラストも皮肉っぽくて面白い。「正午の島」☆☆飛行機の中で働く男はいつも窓から見える島に行くことにあこがれており、とうとうその島に行くことを決意する。正直何を描きたいのかよくわからなかった。「ジョン・ハウエルへの指示」☆☆演劇を鑑賞しに来た男が突然舞台裏に呼ばれ、主人公役を演じることになってしまう話。演劇に口を挟む素人に対する皮肉だろうか。「すべての火は火」☆☆コロシアムが行われる古代と現代の話とが混ざりリンクする。夢と現実を行き来する「夜、あおむけにされて」を読んでいるので真新しさを感じられず。 >> 続きを読む
2020/02/14 by しでのん
定広美香
劇団キャラメルボックスで上映されている作品ですね。この作品大好きです。舞台の演目として作られて、その後本になったので、ストーリーの展開に動きがあり、面白かったです。半分略奪愛のような感じになっていますが、タイムトラベルを通しての略奪愛はこれが最初じゃないかと勝手に思ってます(笑)私はアリマのとぼけたような天然がすごく好きです。そして、春山はるかは音楽部の顧問なのに、国語担当という…(音楽担当じゃないのか)。サルマルと柿本の互いのタイムトラベルのせいで、はるかの愛はあっちへ行ったりこっちへ行ったりという感じで、所々頭の中で整理が必要ですが、読み終えた後は満足感でした。 >> 続きを読む
2013/08/08 by kurumin
相原真理子 , CornwellPatricia Daniels
このパトリシア・コーンウェルの「証拠死体」は、私の大好きな"女性検視官ケイ"シリーズの「検視官」に次ぐ2作目の作品です。前作に続いて、重厚にして、ディテールの豊富さ、人物描写の的確さで、グイグイ読ませます。この作品は、最近大流行の"警察小説"のジャンルの一変種だと思いますが、犯罪を追いつめる組織のメカニズムを提示するヒロイン、ケイの視点は、今までにないユニークさだと思います。美人の売れっ子作家の惨殺に始まり、彼女が遺した本の草稿をめぐって、事件は複雑に錯綜していきます。プロットはこの二つの謎解きを絡ませながら、結末まで引っ張っていきます。そして、作家の過去を探っていくうちに、死体はさらに三つ。一つは連続した殺人、二人は明らかな自殺。いずれも関係者ですが、パズルの空白が増大するのみです。一方、原稿の行方をめぐって、ヒロインの昔の恋人が15年ぶりに現われます。これが謎の男------。この線から出版エージェントを食い物にする悪徳弁護士が登場してきます。グラン・マルニェを飲み過ぎて、ろれつが回らなくなるフリをするこの弁護士が、いやあゾクゾクするほどの圧巻の悪漢なのです。この男がヒロインを破滅に引きずり込もうとするのです。こうした些細なことから、ヒロインあるいはヒーローが破滅の危機に立たされるという展開は、定番ながらワクワクしてしまいますね。連続殺人犯に狙われるよりも、こうした状況のほうがずっとスリリングで怖いなとつくづく思います。 >> 続きを読む
2017/08/28 by dreamer
森茉莉
森茉莉は森鴎外の娘である。読んで思ったけどすごい自由な人である。この本は先日読んだ「れんげ荘」で言及してた本だったので気になって(;´Д`) >> 続きを読む
2018/08/23 by motti
小池 一夫
オークション・ハウス 第4/全34巻新婚間もない今、愛妻キャサリンの生命を奪われ、完全に復讐の鬼と化すリュウ。結婚して幸福が訪れるかに見えたリュウだが、むしろ陰惨さを増して行くとは予想外だった。幼少の頃の両親に加え、ついには愛妻までをも暗殺者の手により殺害されるリュウ。復讐に燃えると言うか、復讐に執念を燃やさないと生きる意味を見失うような、心理状態に陥る気持ちも分からなくはない。ミケランジェロのクレオパトラの贋作で、裏で糸を引くユミを引き摺り出し、800億もの損害を与えることに成功するも、ユミから差し向けられる殺し屋に対抗するため、最強のガードウーマンと名高いシアラを刑務所から金で買い取りに向かう。言葉にしてしまうと薄っぺらくなってしまうが、今回は以降の展開のための布石を打つような回だったように思う。前回キャサリンとの結婚で絶頂期に突入したように思ったのだが、まさかそれが更なる地獄へと向かうための演出だったとは。マンガでは有るものの、後味の悪さを禁じ得ない。宿敵ユミを破滅させることに成功したように見える状況だが、今後の敵は誰になるのだろうか。 >> 続きを読む
2012/12/04 by ice
塩野七生
古代の大国ローマの創成期の出来事が書かれています。分かりやすい言葉と読みやすい文章で歴史上の人物が生き生きと描かられています。面白いだけでなく人生のヒントも詰まった作品です。歴史が好きな人にお勧めです。 >> 続きを読む
2012/05/16 by KATTS
小池真理子
情事とゆう言葉で不倫ものかなぁと想像していたけど、「見えない情事」は事件もの?でした。ただ、情事ではないからこそ、「見えない情事」だったのかな?と・・全部で7つお話が入っているのですが、読んでいてそれぞれちょっと怖いところが「世にも奇妙な物語」の原作になりそうでした。特に、「ディオリッシモ」と「車影」と「寂しがる男」が・・・「寂しがる男」が心霊的で怖かったです。一人暮らしに憧れてるのに、もし新築の部屋を見に行ったりしたらこの話を思い出してしまいそうで・・・お店に入った時に、もし人数を間違えられたら・・と思うと怖いです。あとがきに小池真理子さんも書かれてますが、確かにミステリー集ではなく、サスペンス集だなぁと感じました。 >> 続きを読む
2012/05/09 by uspn
寺田 寅彦
ちくま日本文学全集035。寺田寅彦。夏目漱石の弟子で、物理学者ということだけは知っていました。理知的で啓発的な作品を書く人、面白くないだろうなあという先入観があったんですが、冒頭の「団栗」というエッセイを読んでイメージがかわりました。ああ、こういう哀切なことを書ける人なんだ。一番面白いのは「自画像」という、油絵を描き始め、自画像に取り組んだときのことを綴った作品。吹き出しそうになるところもありますそれにしても、どの作品も端正な文章です。学校の教科書にふさわしいぐらい模範的といったら悪口になるのかな。やはり、頭の良い真面目な人だったんだろうと思う。寺田寅彦は明治11年に生まれて昭和10年に亡くなりますが、巻の後半に進むに従って、戦争に突き進む世相を反映した言葉が作品の端々に出てきますね。次は中島敦。 >> 続きを読む
2017/11/09 by Raven
中島 敦
中島敦の作品を最初に読んだのは、高校の国語の教科書に載っていた「名人伝」だったと思います。以来、これまで何回読んだでしょうか。今回読んでみて思ったのは、「名人伝」は、「少林サッカー」とか「カンフーハッスル」とかいった中国製娯楽映画の味わいがありますね。誇張の仕方やギャグの感覚がですね。たとえば、主人公紀昌の修行の最初の頃の逸話。二月の後、たまたま家に帰って妻といさかいをした紀昌がこれを威そうとて烏号の弓に綦衛の矢をつがえきりりと引絞って妻の目を射た。矢は妻の睫毛三本を射切ってかなたへ飛び去ったが、射られた本人は一向に気づかず、まばたきもしないで亭主を罵り続けた。けだし、彼の至芸による矢の速度と狙いの精妙さとは、実にこの域にまで達していたのである。(p12-13)この「名人伝」の有名な、そして不思議な結末は、なにか道徳的な教訓が込められているようでもあり、単なる手の込んだ冗談のようでもあり、いまだに意図がわかりませんが、たぶん、そういう宙ぶらりんの状態も含めて楽しむのがこの作品なんではないでしょうか。でもやっぱり、作者にからかわれているような気がするなあ。「山月記」冒頭の2ページは名文中の名文。あんまりカッコいいんで、同級生の間でこの文章を暗記するのが流行ったことを思い出します。隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に帰臥し、人と交を絶って、ひたすら詩作に耽った。下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。李徴はようやく焦躁に駆られて来た。この頃からその容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみ徒らに炯々として、かつて進士に登第した頃の豊頬の美少年の俤は、何処に求めようもない。数年の後、貧窮に堪えず、妻子の衣食のために遂に節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになった。一方、これは、己の詩業に半ば絶望したためでもある。かつての同輩は既に遥か高位に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にもかけなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の儁才李徴の自尊心を如何に傷けたかは、想像に難くない。彼は怏々として楽しまず、狂悖の性はいよいよ抑え難くなった。一年の後、公用で旅に出、汝水のほとりに宿った時、遂に発狂した。ある夜半、急に顔色を変えて寝床から起上ると、何か訳の分らぬことを叫びつつそのまま下にとび下りて、闇の中へ駈出した。彼は二度と戻って来なかった。附近の山野を捜索しても、何の手掛りもない。その後李徴がどうなったかを知る者は、誰もなかった。(p22-23)後半、ちょっと中だるみもあるけど、「山月記」は読み始めたら止まらない。「名人伝」も「山月記」も傑作中の傑作です。中島敦は33歳で病死しますが、この2つの作品は、32-3歳の頃の作品。つまり遺作に近い。これだけのクオリティの作品を生み出しはじめた矢先に亡くなったのは、まったく惜しい話です。ただ、同じく有名な「弟子」とか「李陵」とかは、昔読んだんですが、あまり記憶に残っていません。今回もあまり関心は惹かれず、それよりも、「悟浄出世」とか「沙悟浄歎異」の方がよっぽど面白いと思いました。晩年の作品しか知らなかったので、中国の話ばかり書く人かと思っていたら、ごく一部なんですね。若い頃の作品、たとえば「かめれおん日記」なんかを読むと、非常に現代的な感受性の作家だと思います。池澤夏樹の解説もとてもいい。解説者の中でも、カッコつけて自分の方が目立とうとする人をよく見かけますが、この全集の中でもそういう人が散見されるけど、池澤夏樹の解説は一歩引いていて、中島敦の熱心なファンであることが伝わってきてとても好ましいです。中島敦については書くことがたくさんあるような気がするけれども、私なんかがウダウダいってても時間のムダですね。彼の素晴らしい作品群を、とにかく読んでみて! そういうしかない作家です。 >> 続きを読む
2017/11/10 by Raven
J・R・R・トールキン , 瀬田貞二 , 田中明子
同行の仲間を増やし、旅を進めるフロド。ストーリー展開に直接影響しない世界観の描写が多く閉口気味。旅を続ける一行に立ちはだかる脅威と差し伸べられる救いの手。魅力的なキャラクタが次々と登場するも、ストーリー展開が遅い印象が有り、正直読み進めるのに苦痛を伴う。おそらく世界観を事細かに描写することで、子供の想像力を掻き立てるのが目的では無いかと邪推してしまったが、大人向けのファンタジーとしては、多分に冗長と感じざるを得ない。ストーリーを追って行くことだけを良しとせず、その世界観をイメージの中で可視化しながら読み進めるのがファンタジー小説のお作法と考えなくも無いが、あいにく、そのような方法を取り入れるつもりは無い。大きく展開するところで本作は終了するため、次巻が待ち遠しい。 >> 続きを読む
2012/03/12 by ice
瀬田貞二 , 田中明子 , J・R・R・トールキン
エルフの里を出て、更に度を続ける一行。少しずつキャラが立ってきたものの、まだ引き込まれることは無い。指輪物語が世界三大ファンタジーに必ずクレジットされるのは、きっと世界観を整理したからなのだと思う。作者が構築した言語体系は、ほぼ完全で有るというし、エルフ、ホビット、ドワーフなど、きっちりと整理したことで、後世のロールプレイングゲームにまで影響を与えるファンタジーの定番となったと思われる。確かに冒険行はつまらなくは無いのだが、いまひとつ入り込めず、冷めた目で字を追っているのが否めない。きっと欧米人の神話的バックボーンを持った状態で、原書を手に取れば、全く異なる印象になることは頷ける。正直、話題作なので話の種に頑張って先を読んでいる。 >> 続きを読む
2012/03/27 by ice
仲間とともに旅を進めるフロドに訪れる様々な別れ。予想していなかった展開を受け、少し読み進めたい気持ちになった。世界三大ファンタジーとか、映画ロードオブザリングの原作だとか、激しく大きな期待を抱いた状態で接した点も原因だと思うが、ガッカリ感が強い。アドベンチャーゲームブックやRPGで育って来た人間で、ホビットやらエルフやらに全く抵抗が無いため、世界観を受け入れられないわけではない。微妙に子供向けの文体がどうもしっくりと来ないのと、個々のキャラクターが立っていないため、感情移入することが出来ない点が原因と思われる。そんな状況では有るが、着手した以上は全9巻読破に向けて苦行を重ねている。そこで本作品だが、様々な別れにドラマが有り、これまでとは違う印象を受けた。とくに終盤の別れは、予想していなかった展開だったので、新鮮な驚きとともに、以降の作品を読み進める気持ちにさせてくれた。ガンダルフ。きっとこれで終わりではないように思う。 >> 続きを読む
2012/06/23 by ice
下村澄
東洋思想の超大物と言える安岡正篤氏に心酔し、師事する著名人も大変多いのですが、本書の著者の下村澄氏もその中の一人です。安岡正篤氏から学ばれた様々な内容を端的にかつ掘り下げ紹介されている好著だと思います。 特に「知識と見識の違い」や胆識(胆力のある見識のこと)について、とか『「四耐」の実践』、六中観等、所謂人物としての「器」を大きくしていく、また人間として成長していく指針としても非常に参考になると思います。 私のような「少人物」がこれらを読むと、逆に反省させられることばかりや、自分の至らない点が多く浮き彫りになり、精神衛生上良くない面もありましたが、少しでもこの中の内容を身につけられたら…と思う次第です。 >> 続きを読む
2013/11/12 by toshi
内田春菊
ギャンブルを取り扱った漫画を読むことで博打欲を満たしていた頃に買った本。破天荒で奔放なのに時々含蓄ある言葉というか人生経験豊富でかつ学習能力が無いと出て来ないようなことを言う「くるくるぱーのくるみ」が面白い。ギャンブルといっても取り扱っているのはパチンコなので、アカギやカイジのような頭脳戦はナシ。ギャンブル漫画というよりパチンコ屋で繰り広げられる恋愛漫画といった感じの作品。 >> 続きを読む
2017/06/18 by kikima
出版年月 - 1992年7月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
ページの先頭に戻る
会員登録(無料)
レビューのある本