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1992年9月発行の書籍

人気の作品

      誰彼

      法月綸太郎

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!
      • この作品は、パズラーの中のパズラーという感じ。
        複雑すぎて法月作者本人すら同じようなものは書けない、と巻末に記している。
        若干24歳でこの作品を書き上げた法月は、この時点で新本格の第一人者としての地位を確かなものにしている。
        作中で使用されている小道具から、コリン・デクスタ「ニコラス・クインの静かな世界」の影響を受けているのは明らかである(僕はこの作品がデクスタの最高傑作と思っている)。
        >> 続きを読む

        2018/12/31 by tygkun

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      孔明の野望 異説「柴堆三国志」

      加来耕三

      二見書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 五丈原の戦いにて、孔明、命運尽きる。
        しかし、ここからが始まりである。
        時は群雄割拠の時代
        転生を迎えた孔明の魂は再び
        劉備と出会う前の草盧へと誘われる。
        若干、前にいた世界と違いがあるものの
        ここで、孔明の野望、、もとい
        漢王朝の復興を目指すべく、天下統一に向けて
        孔明の戦いが始まる。
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        2015/08/09 by トマズン

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      イリアス

      Homerus , 松平千秋

      岩波書店
      カテゴリー:ギリシア文学
      4.0
      いいね!
      • 「ああ、なんたる厚顔、何たる強欲なお人か。いかなるアカイア人(ギリシャ人)があなたの命(めい)のままに唯々諾々と、使いに立ったり敵と戦ったりするであろう。そもそもわたしがこの地に兵をすすめたのは、勇名高きトロイエ人に怨みあってのことではない。彼等はわたしになんの仇(あだ)もしておらぬ。……わたしはもうプティエに帰る、船団を率いて国許に引き上げるほうが遥かにまだしだからな。恥辱をうけながらこの地にとどまり、あなたのためにせっせと富を蓄えてやるつもりはないのだ。」

        「おお、おお、どうしてもそうしたければ逃げて帰るがよい……そなたごときは眼中にない。わしを恨もうが意には介さぬ。」
        アガメムノンがこう言うと、ペレウスの子(アキレウス)は怒りがこみ上げ、毛深い胸の内では、心が二途に思い迷った……あわや大太刀の鞘を払おうとしたとき、アテネ(女神)が天空から舞い下りてきた。……(アテネは)背後から歩み寄ると、ペレウスの子の黄金色の髪の毛を掴んだ。女神の姿はアキレウスのみに現れて、他の者の目には映らない。驚いて振り向いたアキレウスは、すさまじいばかりに輝く女神の両眼を見て、すぐにパレス・アテネをそれと識った。女神に向かって翼ある言葉をかけていうには、
        「ゼウスの姫君よ、どうしてまたこんなところにおいでなされた。アガメムノンの非道な振る舞いをご覧になろうというおつもりですか……」

        *****
        冒頭から、ギリシャ軍の総大将アガメムノンと、ギリシャ軍屈指の英雄アキレウスとの舌鋒鋭い内輪もめが始まっています!
        「あらら……いい大人がどうしたのかいな?」と思って読み進めているうちに、あっという間に物語の渦中に溺れていきます。本好きにはたまらない歓喜の瞬間です(^^♪

        今回は、誰もが知っているホメロスの大叙事詩「イリアス」。
        この作品は、トロイヤ伝説をもとに紀元前750年ころに書かれ、そのタイトルを訳しますと、「イリオスの歌」。イリオスは、トロイヤ(現在のトルコ領)の都で、海岸から5キロ程の高台には、美しい城壁に囲まれた城があり、神アポロンと海の神ポセイドンの庇護をうけた聖都のようです。

        「イリアス」は、10年にもおよんだギリシャ軍vsトロイヤ軍のトロイヤ戦争末期を描いた作品です。戦争勃発の直接の原因は、トロイヤ王の王子パリスが、ギリシャのアガメムノン王の弟メネラオスの妻ヘレネを自国に拉致したことに端を発しています(実はこの男女、相思相愛になってトロイヤに駆け落ちしたようなのですが……? やれやれ、まことにお騒がせです)。最後まで両軍の一進一退の攻防戦で、クライマックスは、両軍の英雄となるギリシャ軍アキレウスとトロイヤ軍ヘクトルとの壮絶な一騎打ちになります。
        ちなみに、「イリアス」では、有名な「トロヤの木馬」のくだりは描かれていません。それは、トロイヤ戦争後を描いたホメロスの「オデュッセイア」の中で回想録として登場しますので、ぜひセットでお楽しみください。

        それにしても、ホメロスの描く世界は想像を絶するほど壮大で華麗です。人間界とオリュンポスの神々の両方が何の違和感もなく描かれています。冒頭でもご紹介したように、女神アテネがするりと登場してきました。アガメムノンとの口論で、怒り心頭に発したアキレウスが、さながら殿中で吉良(きら)に向かって刀を抜かんとする浅野内匠頭のように、大太刀を抜きかけたその刹那、舞い下りてきたアテナがアキレウスの後ろ髪をひっつかんで制止します。でもその姿はアキレウス以外には見えません。女神とアキレウスが普通に喋りだします。こうして、読者はあっという間にホメロスワールドに引き込まれていきます(笑)。

        この作品では、両軍の英雄や神々が沢山登場します。よくぞこれだけの人物の性格描写をしたものだとほとほと感心します。ありがたいことに、この本の末尾には、地図や両軍の家系図がついていますよ♪
        そこで、登場人物中でどうしても抑えておく必要があるのは、冒頭でもご紹介した、ギリシャ軍の激情型英雄アキレウスと、奸智に長けた雄弁家オデュッセウス。そのアキレウスを女神アテネとゼウスの妻ヘラが支援します。ちなみに、アキレウスは、心優しい海の女神テティスと王族父との間の貴公子。
        それに対するトロイヤ軍は、トロイヤ王の王子、豪勇ヘクトル。そしてヘクトルの従弟にあたる聡明なアエネーアス。彼らを男神アポロンと女神アプロディーテが支援します。ちなみに、アエネーアスは、愛の女神アプロディーテと王族父との間の貴公子。

        物語の筋はいたってシンプルですが、シンプルなだけあって冗漫になりがちな戦記物をホメロスは卓越した筆さばきで見せてくれます。両軍の臨場感溢れる凄絶な闘いのさまが、まるで映像のように浮かび上がってきます。素晴らしい観察眼、描写力、流れる様な言葉と美しい比喩の力で、人間の数奇な運命や悲劇を余すところなく描いています。
        いつの世も、洋の東西問わず、人間とはまことに愚かな殺りくや破壊を繰り返しているものだな……と切なくなるほどですが、かたや全知の神ゼウスは、奸計巡らす嫉妬深い妻ヘラと、犬も食わない夫婦喧嘩をしながら、その一方では、死屍累々とした戦場で死闘を繰り広げる憐れな人間を翻弄し、あざ笑うかのようにもてあそんでいます。もはや悲劇の中の喜劇です。

        ちなみに「オデュッセイア」は、トロイヤ陥落後、おごり高ぶったギリシャ軍に対する神々の怒りに巻き込まれたオデュッセウスの苦難の彷徨を描いた物語です。この作品では、オデュッセウスという男、そして彼を健気に待ち続ける賢妻ペネロペイアという女に興味を抱けるかどうかに尽きます。

        それに対し、「イリアス」は、様々な人間の生死や情感を鳥瞰的に眺める壮大な作品です。読者は、まるで永劫の神ゼウスの立場から、束の間の人間存在の不毛で無常に満ちた様を俯瞰していくことになります。内面描写を極力排したハードボイルドな筆致で淡々と描いていますが、その卓越した描写により、著者ホメロスの人間というものに対する残酷なまでの諦観と深い哀切の念が、行間に滲み出しているようです。

        さて、この作品から700年後、古代ローマの詩人ウェルギリウスは、大叙事詩「アエネーイス」を書いています。前半部のアエネーアスの冒険譚は、ホメロスの「オデュッセイア」、そして後半部の戦記は、「イリアス」にインスパイアされたものです。時代は下り、1300年代、そのウェルギリウスに感化されたダンテが「神曲」を、さらに1800年代には、ギリシャ芸術を讃嘆したゲーテが「ファウスト」を誕生させます。
        西洋文学界の礎とも称されるホメロスの深遠な世界を覗いてみてくださいね♪
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        2015/11/23 by アテナイエ

    • 5人が本棚登録しています
      新ビジネスエリートの理論武装

      高橋文利

      講談社
      4.0
      いいね!
      • ただ流されて仕事をしているサラリーマンへの警鐘。

        主張が自分の考えに似ていたため考え方の整理が出来た。

        海外のビジネス環境との比較の中で、豊かさをテーマにしたような記述が多い。

        まず諸手を挙げて賛成なのが、労働価値を高めようという部分。
        (サービス)残業を、自らの労働のダンピングだと糾弾しているのは、当たり前の話だが、気付いていない人が多いので明文化した点で価値が有る。

        IT業界という派遣形態も存在する業界に身を置いているため、時には、自社以外の環境で勤務することも有り、割合事情に通じているつもりだが、まず、意味の無い残業をしている会社が多い。

        シンプルに残業を悪として定時時間内の生産性を高め、更に付加価値をどれだけ生み出せるかが、プロとしての腕の見せ所で有ることを認識している人が極端に少ないように思う。

        確かに「考えない」人間は、「時間」というリソースを提供するしか対価を得る手段が無いのだろう。

        極めて不快なのだが、そういう考える努力を放棄した人間達が、徒党を組んで、残業を出来るだけ抑えようとしている人間に冷たい視線を送っているような環境が、最悪の環境だと思うし、実際にそういう環境は多く存在する。

        全員が胸を張って定時退社できるように全力で考え、しっかりリフレッシュして、翌日の勤務に臨む。そういう文化を創ることこそ、管理職の使命と考えたい。

        格差社会の明暗は「考えるか考えないか」に尽きると思う。
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        2012/11/11 by ice

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    • 1人が本棚登録しています
      ひねくれ一茶

      田辺聖子

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!

      • 「感傷旅行」で第50回芥川賞を受賞し、今回読了した「ひねくれ一茶」で第27回吉川英治文学書を受賞した、作家の田辺聖子。

        軽妙洒脱な筆致で現代風俗を描いた作品を数多く発表しつつ、並行して歴史、エッセイ、評論、随筆にも活動の場を広げ、また「古事記」「源氏物語」など古典の独自な解釈をもとに創作した幻想的な作品や、俳人、川柳作家の作品と生涯に取材した評伝も発表されていて、その作品のひとつひとつが実に味わい深い作品になっていて、彼女の作品をずっと愛読し続けています。

        俳句を作った時の状況を考えずに鑑賞しても、その一句、一句が秀句であり得る与謝蕪村の作品とは対照的に、小林一茶の遺した2万句は、経歴のあらましを知っていないと、大多数がつまらないものになってしまうとも言われていますが、視点を変えれば、それほど一茶の生涯は波乱万丈な起伏に富んでいるということになると思うんですね。

        その入り組んだ一茶の生涯と作品を理解するために、この田辺聖子の「ひねくれ一茶」は、この上ない入門書になるのではないかと思う。

        随所にというより、適所に一茶の句をはめ込みつつ語られる小説は、躍動感に富み、軽妙洒脱な文体に一茶の撒き散らす俗臭を包んで、なめらかに展開していくんですね。

        だが、そのそのあまりに心地良いリズムに気を取られていると、一茶の生涯をかけた"怨念"が遠慮会釈なく、目の前に突きつけられることになる。

        そして、その合間には、豊麗な女弟子や江戸の著名な俳人たちと歌仙を巻く時の、一茶の素朴な喜びや劣等感やほのかな恋がはめ込まれて、面白うて物がなしく、尋常ならざる評伝が形成されているのだと思う。


        >> 続きを読む

        2018/03/20 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      殺戮にいたる病

      我孫子武丸

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • はぁ!・・

        作者がこの人だからある程度予想ついてたけど。
        まぁね〜
        >> 続きを読む

        2015/10/25 by 降りる人

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      アメリカの肖像 久保田博二写真集

      久保田博二

      集英社
      カテゴリー:写真集
      4.0
      いいね!
      • 二十年ぐらいの、アメリカのいろんな様子の写真集。
        とても面白かった。
        今も変わらぬ風景も多いだろう。
        いろんな人種や民族や歴史を抱えるアメリカの活力をあらためて感じた。
        あらためて、アメリカの歴史や現在はとても魅力的で興味深いと思う。
        >> 続きを読む

        2013/10/05 by atsushi

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    • 1人が本棚登録しています
      河童

      芥川龍之介

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「河童」「桃太郎」「雛」「点鬼簿」「蜃気楼」「歯車」「或阿呆の一生」「或旧友へ送る書記」の8編収録。

        芥川の晩年の作品を集めた作品集。ご存じのとおりこれらの作品を書いた後、芥川は35歳で自殺をする。

        実は、私は芥川が大好きなのです(笑)そして、もちろん初期の「蜘蛛の糸」や代表作「羅生門」などもよいですが、ファンとしては、悪趣味だと言われようと(笑)たとえ不出来であったとしても、これらのような晩年の作品の圧倒的な存在感にノックアウトされるのです(笑)

        以前、「河童」が学校の読書感想文の課題図書になっていてビックリしたことを覚えている。「河童」をはじめこれらの作品は芥川が精神的にかなり追い詰められている状態で書かれているし、「点鬼簿」は彼の実母、および複雑な家庭事情を知っているととても考え深く、いたたまれない気持ちになる。「歯車」は、研ぎ澄まされた神経が痛々しいほどだし、「或阿呆の一生」に関しては、死を前にした最後の一閃という気がして、まさに雷のよう(笑)

        決して一般向けではないですが(笑)ファンとしては涙なしでは読めない一冊
        >> 続きを読む

        2015/07/07 by ao-ao

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      高瀬舟

      森鴎外

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • くっくっく・・・暗い。

        色々考えさせられる作品です。
        高校生の頃、教科書に載ってて、大人になってもう一度
        読んでみました。



        自分が同じ立場になったら、楽にしてあげられるかな・・
        無理だろうな・・とか・・
        主人公と同じ様に楽にしてあげたとして、やっぱり苦しむんだろうなぁと・・・。

        だからこその、罰を受けて安心するって言う心理なのかな・・・

        読んだ後、高校生の時以上に色々考えました^^;
        >> 続きを読む

        2014/04/16 by ♪玉音♪

      • コメント 7件
    • 4人が本棚登録しています
      ロマノフ家の金塊〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

      ブライアン ガーフィールド

      4.0
      いいね!
      • 「ホップスコッチ」という、とてつもなく面白い小説と出会い、作者のブライアン・ガーフィールドという名前が記憶の中にインプットされ、いつも気になっていた作家でした。

        そのブライアン・ガーフィールドの「ロマノフ家の金塊」を読み始めたらやめられず、朝までかかって一気に読了してしまいました。とにかく、面白かった。

        ロシア革命直後の混乱期に姿を消した皇帝の財宝、500トンの金塊をめぐる物語で、読み初めの段階では、このような筋だてはよくある話に思え、最初、食指が動きませんでした。豊臣秀吉の隠し財宝からパーレビ国王の隠し財産に至るまで、今まで多くの作家が書いていて、その都度、期待を裏切られる事が多く、今度はロシアの皇帝か----との印象が脳裏をよぎったからでした。

        にもかかわらず、読み進めたのは、作者が「ホップスコッチ」のブライアン・ガーフィルドだったからで、彼の作品だったら、絶対、期待を裏切らないだろうと思っていたら、もういけません。圧倒的な面白さに打ちのめされました。

        まずそのひとつは、この作品の巧みな構成にあると思うのです。主人公の小説、あるいは手紙で構成するというのは、ことさら珍しい事ではありませんが、この「ロマノフ家の金塊」に限っては、絶妙ともいえる効果を挙げていると思うのです。

        主人公は歴史研究家のハリス・ブリストウで、この小説の出だしは、彼が出版社に宛てた手紙から始まります。同封の手記を出版してくれないか、というのです。世界中の諜報機関から追われていて、明日の命も知れないから、今のうちに書いて送っておく、というこのプロローグはよくあるハッタリで別に驚く事でもなく、どうしてそうなったのかという顛末が続いていくんだろうと、余裕を持って読み進めていました。

        ところが、ガーフィールドのうまいのは、実はこのあとの構成なんです。手記が一部、二部、三部と続くのですが、その間に"コルチャーク国内戦記"と、"ナチの金塊奪取計画"という二本の原稿がはさまれているのです。これは主人公ハリス・ブリストウの手記に足りない部分を、彼の要請通り、オフィスのファイルから原稿化したり、手記を整理して、つまり編集者が構成した章ということになっているのです。そして、この二つの章は時代背景の説明部分なのです。

        この部分を手記に組み入れたら、恐らく小説としての盛り上がりを損ねただろうと思いますが、こういう構成にしたために、時代背景と主人公の謎の探索の過程が渾然となって、浮き彫りされる結果になっているのだと思います。更に、随所に、編集者の注が入るのだから念が入っています。これは小手先のテクニックではなく、この小説を支える大きなキーポイントだろうと思います。

        それと、もちろん、この時代のロシアに興味と感心があったので、面白さが倍増したのかも知れません。

        次は主人公が現在の時点から推理して、消えた金塊を捜す方法というのが、実にいいんですね。公文書館の資料をひもとき、その中から探し出すというアイディアが卓越しているのです。もっともこれは、老イスラエル人の話がなければ成立しないので、リアリティがあるとの意味ではなく、あくまで小説としてのアイディアとしてですけれども。しかも、歴史研究家が主人公になる必然性をも支えているのだから、やっぱりガーフィールドはうまいですねえ。

        そして、最後は、登場人物の一人一人が生き生きと描かれている事で、特にイスラエル人・ハイムの回想は、一度も行った事のない土地の景色が、まるで旧知の国のように浮かんでくるから、作者の筆力の高さを感じてしまいます。そういう、ディテールが群を抜いているので、知らず知らずのうちに、この、ある意味、"大ホラ話"に引きずり込まれていくのだろうと思います。

        とにかく、この長編の「ロマノフ家の金塊」を読み終えて思うのは、記述のアイディアの秀逸さと謎のアイディアの面白さ、そういう"細かい芸"が支えている事で、いかにもプロの作家だな、との印象を強く持ちました。現代のスパイ戦を背景にちらつかせながら、こういう形にまとめるとは、本当に、ブライアン・ガーフィールドは職人作家の鑑だなとあらためて思い、続けて彼の作品を読みたいとの強い衝動にかられました。
        >> 続きを読む

        2016/09/10 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      三屋清左衛門残日録

      藤沢周平

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • この本も読書ログにおいて“課長代理”さんにお奨め頂いた本。


        なかなか読み応えがありながら、いっきに読んでしまった。

        最初は、すべての噺が最後の完結までいかず、起承転結の転で終わってしまったようで、
        何かやり残したような気になっていたのだが、次々読み進める内に、
        前の噺の続きではないのですが、すべてが線で連なっていって、
        最後に主人公が、いぶし銀のごとく、どっしりと存在感をあらわす。

        主人公の、三屋清左衛門、隠居の身でありながら、藩の執政府の紛糾の中で
        中立公正の人柄と思慮に満ちた熱き思いで関わりあっていく。

        行きつけの呑み屋があったり、昔取った杵柄で子供を教えに剣道場に通ったり、
        かつての同僚と行き来を再開したり、そして引退後もお殿様から頼りにされるとは・・。

        リタイヤ後は、この様にして過ごしたいなと憧れる日々。


        でも、多少の名誉とお金と体力があってのこと、現役の時の活動がすべてですな。

        >> 続きを読む

        2015/10/19 by ごまめ

      • コメント 2件
    • 3人が本棚登録しています
      松風の家

      宮尾登美子

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • さすが宮尾登美子さん!素晴らしい・・・

        長い間宮尾作品から離れていましたが
        このぐいぐいひっぱられる感はさすがだなぁ

        本書は、茶道・裏千家をモデルにした
        明治・大正期の物語だということですが
        宮尾さんが本当に見てきたように書かれていて
        爪に火をともすような生活の描写は
        宮尾さんご自身の経験がものをいうのか
        リアルですね。身につまされます
        どこまでが史実で
        どこが虚構なのかはわかりませんが
        それを超えて面白い小説になってると思います

        それにしても裏千家(小説の中では後伴家)は
        一時、とても困窮したのですね
        高校で裏千家の茶道を少し習いましたが
        まーーーったく知らなかったです

        ああ、宮尾作品がまた読みたくなってきました
        >> 続きを読む

        2017/04/07 by bluepopy

    • 1人が本棚登録しています
      また、嘘八百!!―広告ノ神髄トハ何ゾヤ?〈明治篇〉 (文春文庫―ビジュアル版)

      天野 祐吉

      3.0
      いいね!
      • ▶しゃんしゃん
        おおらかでおおまかな明治の嘘八百の広告。どうも当時の人たちは神がかり的なスケールの大きな嘘を信じていたようだ。個別には書ききれないほど種々雑多な商品群(特にクスリと化粧品)。大笑いすることは保証。天野さんのコメントが絶妙。時間のタッブリある午後に最適。 >> 続きを読む

        2018/05/29 by rikugyo33

    • 1人が本棚登録しています
      語りかける花

      志村ふくみ

      人文書院
      カテゴリー:染織工芸
      4.0
      いいね!
      • 著者は重要無形文化財保持者の染織家。
        特別に興味や関心を持った分野の方ではないのだが、読んでいて文章に上品さや知性をものすごく感じる。命をかけて一生の仕事に真摯に取り組む姿勢が読み取れて、読んでいて背筋が伸びる思いだった。 >> 続きを読む

        2013/06/27 by freaks004

      • コメント 5件
    • 1人が本棚登録しています
      好物漫遊記

      種村季弘

      筑摩書房
      5.0
      いいね! momomeiai
      • 好みのタイプすぎてテンションがうなぎ上りでした。お名前だけは存じ上げておりましたが、こんなに素敵な文章をお書きになる方だったとは!もっと早くに読めばよかった!

        吉田篤弘のエッセイに名前が出てきたので、ちょっと気が向いて読んでみたのですが、書き出しからニヤリとしました。吉田篤弘の某作品が、非常に似ているんですよね。ざっとググってみたかぎり、一字一句同じというわけではなさそうですが、明らかにオマージュでしょう。

        ちくま文庫は総じてレベルが高く、装丁がおしゃれですが、本作も例外ではありません。カバーは安野光雅。解説は赤瀬川原平。猥談もちゃっかり入っているのですが、なんだか澄ました顔で馴染んでいます。不思議な本です。艶のある話も多々あって下品ではなく、知的な話題が衒いもなく語られていて、嫌味ではない。
        一つの小題は10ページに満たないので、すこしずつ読むのにも最適です。本棚に常備して、湯船にでもつかりながらゆっくり読みたい作品です。

        そういえば穂村さんもタルホがお好きなようですね。タルホにかぎらず、いろんな本や人や物事があっちからこっちから出てきてとても面白いですが。
        >> 続きを読む

        2015/10/06 by ワルツ

    • 1人が本棚登録しています
      自己愛人間 (ちくま学芸文庫)

      小此木 啓吾

      5.0
      いいね!
      • 自己愛人間。小此木啓吾先生の著書。健全な自己愛はとても大切な一方で、自己愛が必要以上に肥大してしまうと自己愛過剰の自己愛人間になってしまう。そんなの自己愛人間の定義や特徴、自己愛人間の精神構造、自己愛人間ができる背景などをわかりやすい言葉で丁寧に解説している良書。 >> 続きを読む

        2018/07/29 by 香菜子

    • 1人が本棚登録しています
      中野重治 (ちくま日本文学全集)

      中野 重治

      5.0
      いいね!
      • ちくま日本文学全集039 中野重治。

        中野重治の作品から感じられるのは、まず「まごころ」ということです。そうして作者のその姿勢に打たれます。

        「まごころ」というと、いかにも右翼的な人々が用いそうな言葉で、それを有名な左翼作家である中野重治の読後感に用いるのはおかしな気もしますが、人の世や文芸に対するとても真摯で真剣な姿勢をあらわすには、この言葉がもっともふさわしいように思います。

        かれの真摯さは、なんだか石川啄木の生き方にも繋がるような気がします。中野重治は啄木のような破天荒な生き方ではなく、戦前からの共産党の活動家として、またその後の共産党批判者として、そして文学者として、それぞれの時点でその活動が国家からみて合法非合法であるかは別として、終始一環して社会の構成員としての生き方をしてきた人物だと思います。

        もし啄木にもう少し社会的な適応能力があり、健康と機会にめぐまれ、長生きできていたなら、ひょっとしたら中野重治のような作家になっていたのかもしれません。晩年の啄木は、思想的にはかなり左翼的な事柄に関心を寄せていたようですから。

        もちろん啄木には、大衆活動の地道や実践力や、人々の無知謬見に対する忍耐力や、組織内活動に伴う個人への統制に対する耐性があったとはとうてい思えませんから、共産党への入党なんてことは考えられませんが、その点、中野重治という人は、愚直なまでに誠実で、しかもタフな人ではなかったかと思います。

        戦後、第1回目の参議院選挙に共産党から立候補してしばらく国会議員を務めたり、党の中央委員として活動したりということも、その愚直さと強さのあらわれであると思えます。またそういう逞しさがあるからこそ、啄木のような生活上の乱脈さに陥らず、ねばり強い文学活動ができたのだろうと思われます。

        彼の作品を読んだのは初めてですが、共産党の元幹部が書いた作品なんて、ひからびた味気のない政治スローガンみたいなツマラナイものだろうと思ってたんですが、これがまったくの誤解で、じつにみずみずしく、文学的香気に溢れています。

        彼の作品から感じられる二つ目は、文学作品としての充実ぶり、質の高さです。
        たとえば田舎の冬の暮らしを子どもの目から描いた物語「梨の花」は、まるで宮沢賢治の作品を思い起こさせます。

        そういう豊かな文学的才能と、政治と革命への真摯さを持った人のたどった軌跡が、中野重治の作品なのだろうと思います。
        それはこの若いときの詩に込めたメッセージを、小説、評論、政治的実践と、姿や形は変えながらも、一生涯追求した軌跡であったのだろうと思います。



        おまえは歌うな
        おまえは赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな
        風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな
        すべてのひよわなもの
        すべてのうそうそとしたもの
        すべてのものうげなものを撥き去れ
        すべてのその風情を擯斥せよ
        もっぱら正直のところを
        腹の足しになるところを
        胸さきを突きあげてくるぎりぎりのところを歌え
        たたかれることによつて弾ねかえる歌を
        恥辱の底から勇気を汲みくる歌を
        それらの歌々を
        咽喉をふくらまして厳しい韻律に歌いあげよ
        それらの歌々を
        行く行く人々の胸郭にたたきこめ

        これほどの作家の発見は、この全集では、尾崎葵、金子光晴につづき三番目です。
        思想的に賛同できるかどうかは別として、全作品を読んでみたくなる作家です。

        あとがきの加藤典洋という人の文章もすばらしい。
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        2017/11/15 by Raven

    • 1人が本棚登録しています
      木山捷平 (ちくま日本文学全集)

      木山 捷平

      4.0
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      • ちくま日本文学全集040

        2017/10/27 by Raven

    • 1人が本棚登録しています
      アイス・ウォリアー (創元ノヴェルズ)

      リチャード パリー

      4.0
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      • 久し振りに冒険小説が読みたくなり、いつものように本棚の奥からこれはと思う作品を引っ張り出してきて、一気呵成に読了しました。

        その作品とは、リチャード・G・パリーの「アイス・ウォリアー」です。

        時は1983年、主人公のリック・ベンスンの娘で八歳になるメイが誘拐される。彼はアラスカで形成外科医の仕事についているが、ベトナム戦争時代は、暗殺を得意とする凄腕の工作員だったのだ。

        今になって、そのつけが回ってきたのか。敵の勢力は、思いのほか強大で、彼が協力を要請した相手は次々と殺されてしまった。

        そして、その殺人の濡れ衣まで着せられて四面楚歌の状況に陥ったリックは、愛する娘を奪回するために旧知のエスキモーの老人の助力を仰ぐのです。

        これに、折しも開催されていた犬ぞりレースの参加者や、その取材にやって来た女性ジャーナリストが巻き込まれていくのです。

        その背後には、過去の化学兵器の帰趨をめぐる暗闘や、ベトナム将校の私怨が潜んでいたのです。かくして、極寒の地を舞台とする壮絶な闘いが始まっていくのです------。うーん、やっぱり冒険小説はこうでなくちゃいけません。

        確かに、物語の運び方はやや粗雑ですが、この作品の最大の見どころは、この舞台設定なのだと思います。

        例えば、犬ぞりレースは、アラスカで発達したスポーツで、こうした、あまり知られていない特有の風物を織り込んだことで、一層、この作品が興味深いものになっていると思いますね。

        また、アザラシの捕獲など、エスキモーの民族文化が描かれているのも見逃せないんですね。

        主人公リックの冒険活劇がもたらす緊迫感もさることながら、むしろ舞台そのものの魅力によって読ませる作品なんだと思いますね。


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        2018/02/06 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      黄色い蜃気楼

      船戸 与一

      4.0
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      • 墜落した飛行機に乗ってて助かった主人公が機密資料を持ってて、命を狙われる。
        ドキドキしながら読んだ。
        船戸与一の中で好きな方。
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        2014/11/14 by bob

    • 1人が本棚登録しています

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