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1994年1月発行の書籍

人気の作品

      犯人のいない殺人の夜

      東野圭吾

      光文社
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね! ooitee
      • もう今はこういう類いは書かないという意味で、東野圭吾の本来のミステリが見れる7編の短編集。

        初期のころはラストに切れ味の有るミステリをよく書いていて、この作品もラストで実はという話が多い。

        「踊り子」のような本人知らずというパターンも面白いし、「さよならコーチ」のような覆りの話も印象に残る。

        「白い凶器」のミスディレクションも楽しい。

        寧ろ短編の方がオチがしっかりと付けられている感じも受ける。
        とにかくバラエティに富んでいるので、短編ミステリとしてはかなり出来の良い作品。
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        2018/07/31 by オーウェン

    • 他3人がレビュー登録、 21人が本棚登録しています
      そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート

      はやみねかおる

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 大好きだったはやみねかおる、はやみねさんの赤い夢で希望をもらい育ったと言っても過言ではない私にとって夢水清志郎事件ノートシリーズはバイブルです。しかし、持ってないんですね。笛吹男と卒業以外。ずっと思い出の中にいたこの本を先日私が出演したラジオにて紹介する機会がありました。もう何年も読み返していないにも関わらず思いは溢れ、ずっともう児童書を借りる年ではないからとためらっていたこの本を読み返す事にしました。

        この本を読んでいた小学生から時は経ち、亜衣ちゃんたちの年を追い越してしまいましたが。赤い夢の世界は色あせない。むしろ当時よりトリックが理解できるようになった分色々な事が見えてきました。

        教授と伯爵が子ども達を守るために解いた謎、守った謎。それがどれほどすごいことでどれほどかっこいいことなのか今ならわかります。
        そしてそれに気づきながら子供達のために見送った上越警部。この作品にはこうなりたいというかっこいい大人がいっぱいです。私はこうなれるだろうか、来年社会に出る今だからこそシリーズをもう一度読み返そうと思います。
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        2017/12/17 by kaoru-yuzu

    • 他1人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      天使の卵

      村山由佳

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      •  けっこう面白かったです。
        真っ直ぐに一人の女性を愛する一浪人生の物語。
         
         単なる恋愛話ではなく
        主人公を取り巻く家庭環境や
        登場人物たちとの人間関係など構成が上手で、
        多重に進む内容の中に
        なかなか深い一言を投げかけてきたりします。
         
         実は知人にこの作品の続編が良かったとすすめられ、
        ではまずその前作から と思って読んでみたのですが
        久しぶりに触れた上品な世界観で楽しめました。
        (内容は必ずしもキレイごとばかりではありません。念のため)
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        2015/02/03 by kengo

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      エトロフ発緊急電

      佐々木譲

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 今回、再読した佐々木譲の「エトロフ発緊急電」は、彼の"第二次世界大戦三部作"と言われる、「ベルリン飛行指令」「ストックホルムの密使」の中で二作目の作品で、第43回日本推理作家協会賞(長編賞部門)と、第3回山本周五郎賞を受賞している傑作です。

        零戦をベルリンまで運ぶという途方もない計画を描いた1作目の「ベルリン飛行指令」も彫りの深いキャラクターを造形した点では傑作だと思いますが、物語の後半部がやや駆け足になったのが少し残念な気がしていて、開戦前夜の状況ドラマと同じ比重で大空の冒険のエビソードをもっと書き込んで欲しかったなという印象を持ちました。

        その前作に比べて、この2作目の「エトロフ発緊急電」は、文句のつけようがないくらいに素晴らしい傑作だと思います。

        とにかくこの作品には、実に膨大な人物が登場してくるのです。日系移民の子で、スペイン内戦に国際義勇軍として参加した後、アメリカの闇社会で生きている男。ロシア青年と日本娘の間に生まれ、数奇な運命を生きる択捉島出身の娘。北の島までアメリカのスパイを追って来る軍曹。

        更には、日本で諜報活動に従事する宣教師。日本に憧れ、講師として来日後は幻滅し、海軍情報部に勤務するアメリカ女性。情報部の極東課に勤務し、地下工作専従者を日本に送り込む巨漢の少佐などなど----。

        そして、アメリカのスパイとなって日本に潜入して来る男を中心に、その一人一人のドラマが丁寧に、こと細かく描かれ、やがてそれらが渾然一体となって、真珠湾奇襲作戦をめぐって緊迫したドラマが展開していくのです。

        アメリカ海軍情報部が日本に送り込んだスパイ、ケニー斉藤は真珠湾攻撃の真実を本国に打電出来るのか?----というサスペンスを核に展開するこの長編小説は、過不足なく北の島の冒険の行方を描いていて、我々読者をハラハラ、ドキドキさせながら、たっぷりと楽しませてくれるのです。

        この作品は「ベルリン飛行指令」に続く、"第二次世界大戦三部作"の第二部にあたりますが、物語自体は前作とは全く別物なので、この作品だけでも独立して十分に読む事が出来ます。

        連作の匂いは、前作の登場人物の数人がこの作品にもだぶって登場する事だけです。例えば、前作の作戦を指揮した大貫中佐と山脇書記官は、この「エトロフ発緊急電」にも登場しています。

        ベルリンに飛んだパイロットの安藤大尉の妹、真理子と前作で知り合った山脇書記官は、この作品で彼女と結婚する事になりますが、その結婚式が行われる教会の宣教師が、潜入したアメリカのスパイの連絡係という関連もあったりしますし、安藤大尉の馴染みだったシンガーの消息がちらっと出て来るなどの"芸"も非常に細かいなと感心させられます。

        再読して思う事は、とにかく、全編を通して静かな物語ではありますが、彫りの深いキャラクター、テンポのいいスピーディーな展開と、全く言う事がありません。

        北の島で交錯する、手に汗握る日米開戦前夜の諜報戦を、迫真のディテールで描き切った傑作だと断言してもいいと思います。
        >> 続きを読む

        2016/09/15 by dreamer

      • コメント 4件
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      行きずりの街

      志水辰夫

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね!
      • 数年前に一度読んでいるが、内容をすっかり忘れてしまい、あらためて読んでみました。ミステリよりハードボイルドに近い感じがします。女生徒との恋愛がスキャンダルとなり、名門校を追放された元教師。退職後、故郷で塾講師をしていた波多野は、失踪した教え子を捜しに、事件に巻き込まれる。前いた学園がどうも関係している事を突き止める。その裏には、色々な陰謀が・・・。           感想に困る作品です。でも面白いことには間違いなしです。究極の恋愛物語です。 >> 続きを読む

        2018/04/02 by rock-man

    • 他1人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      妊娠カレンダ-

      小川洋子

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      3.2
      いいね!
      • 妊娠した姉を見守る妹の淡々とした叙述の中に、きわめて周到な悪意を仕込んでみせている。 >> 続きを読む

        2015/10/15 by aaa

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      うずらちゃんのかくれんぼ

      きもとももこ

      福音館書店
      4.0
      いいね!
      • うずらちゃんとひよこちゃんがかくれんぼ。

        隠れているのを見つけるのが楽しいかくれんぼ絵本です。「きんぎょがにげた」よりも難易度高め、でもしっかりと見つけて指さしてます。そしてカエルが「ぴょーん」と飛び出すところで娘、いつも爆笑。(一般的には全く笑うポイントではない笑。)

        カラフルなイラストがとにかく可愛いらしい。この絵本もお気に入りのようで持ってくる頻度高めです。

        あと、最近は絵本を読んでいる時に次の絵本を持ってきたからそっちが読みたいのかと思って読んであげると嫌がり、何かと思ったら、隣で並んでそれぞれの絵本を読む、ということがしたい様子。和みます。

        改めて思うと、うちには福音館書店の絵本がたくさん。良い絵本を出版していますね、福音館書店。
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        2017/04/28 by chao-mum

      • コメント 2件
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      海鳴りやまず 八丈流人群像

      藤井素介

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!

      • 読み終わるのが惜しいという本が、たまにあります。それは、波瀾万丈の物語よりも、静かな物語に感じることが多いような気がします。

        もちろん、波瀾万丈の物語が嫌いなわけではありません。だが、起伏の多い物語の場合には、結末を知りたいという気持ちが先走り、余韻に浸っていることが出来ないのです。

        当然のことながら、それも本を読むことの悦びのひとつではあるのですが、そればかりでは何か疲れてしまって、たまには静かな話を読みたくなってくるのです。

        そして、たまたま、それがその時の私の情感にフィットすると、読み終えるのがとても惜しくなってしまうのかも知れません。

        藤井素介の「海鳴りやまず」は、そんな本なのです。第四回時代小説大賞の受賞作です。

        この物語の舞台は八丈島。かの流人の島として有名な島です。主人公は、流罪の父に付き添ってきた少年。その少年の成長の日々を、島の生活の中に描いた長編小説です。

        流人となって島にやってくる、様々な人間たちのドラマがあるのです。札付きのワルもいれば、微罪で流されてくる者もいる。島の人間との衝突もある。恋があり、裏切りがあり、憎しみがあり、和解があるのです。

        そして、そのドラマを背景に少年が育っていくのです。少年の恋と希望と苦悩と成長が、隔離された島の生活の中で、実にくっきりと鮮やかに描かれていきます。

        つまり、この本は青春小説なのです。"八丈流人群像"という副題が付いている通り、恐らく著者の意図は、八丈島に流された流人の全体像を描くことにあるのだと思う。

        少年はそのために選ばれたキャラクターに過ぎないだろう。そして、その著者の意図は、充分に果たされていると思われるが、少年を主人公に選んだことで、結果的には青春小説の傑作にもなったのだと思う。

        この小説を読みながら、私は少年の日々を共に生きることができるのです。まったくうまい。この小説は、例えるなら、時代小説の名手である藤沢周平の「蝉しぐれ」を読み終えた時の清涼感と似たものを感じる、と言えばいいかも知れません。


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        2018/01/30 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      チベットの死者の書―経典『バルドゥ・トェ・ドル』 (講談社プラスアルファ文庫)
      3.0
      いいね!
      • 読書しながら世界一周!
        現在もインド北部のチベット仏教圏ラダックにおります。アルチ村のホームステイ宿の仏間になぜか置いてあり、読まねば!と思い翌朝チェックアウトだったので徹夜で読みました。

        ※僕は仏教の専門家ではないので仏教用語の使い方が間違っていたり教義を誤解しているかもしれません。ご容赦ください。

        仏教では人が死んだら四十九日間弔うことは多くの人が知っていると思うが、その四十九日間に何が故人に起きているのかを知る人は多くないのではなかろうか。本書は誰もが関心を寄せる死後の世界について、仏教的な死後の世界、とりわけ原典に近いチベット仏教におけるそれを紹介する。

        さて、死後の世界を要約しようと思うのだが、実に超自然的かつ眠気を誘う内容であったため、うまく短い文章に纏め上げる手腕を僕は持ち合わせていない。仕方ないので顔文字でお送りします。(なんJノリが苦手な方はご容赦ください)

        ・解脱できない場合
        彡(゚)(゚)「ファッ!ワイ、死んでもうたんか!」
        大日如来「こっち来るやでー(光ピカー)」
        彡()()「ヒェッ怖!何やあれ!逃げたろ!」
        こんな感じのを四十九日間いろんな仏様と繰り返していきます。逃げたり、仏様の光を認識できないでいると、再び輪廻に取り込まれて六道(天、阿修羅、人間、畜生、餓鬼、地獄界)のどれかに生まれて苦しまねばなりません。

        ・修行を積んで解脱できる場合
        彡(゚)(゚)「ファッ!ワイ、死んでもうたんか!」
        大日如来「こっち来るやでー(光ピカー)」
        (゚)(゚)ミ「あ、大日如来様や!そっち行きます!」
        大日如来「汝は我とひとつとなって輪廻の輪から解脱した」
        彡(^)(^)「やったぜ」
        四十九日のどこかのタイミングで仏様を恐れずに認識し、その方向へ進むと輪廻から解脱して、仏様とひとつになれる。この仏様を認識するということが修行を積んだ人でも難しいんだそうです。

        と、まあだいたいこんな感じでした(?) 注釈の曼荼羅や仏画の解説も実に興味深かった。そのおかげでゴンパ(僧院)の壁画やマニ車のサンスクリット語の意味がわかって面白い。ホームステイ宿のおじいさんが家で黙々と手持ちのマニ車を回していたのを思い出した。ラダックの人々の根幹をより深く知れることができたように思う。謎に包まれたチベット仏教は知れば知るほど面白くなっていく。

        余談だが、ユングは本書の原典『バルドゥ・トェ・ドル』の英訳から集合的無意識の原案を思いついたらしい。集合的無意識は僕の大好きなSFに掻かせないキーワードであり、僕がチベット仏教に得体の知れない魅力を感じたことも不思議な縁が関わったように思える。
        >> 続きを読む

        2016/08/30 by 旅する葦

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    • 1人が本棚登録しています
      君に読んで欲しかった。

      秋元康

      集英社
      3.0
      いいね!
      • サンデー毎日に連載されたエッセイ。

        肩の力を抜いてサラッと読める気分転換に向いた作品集。

        印象に残ったのは、美空ひばり氏とのエピソード。

        昭和を代表するビッグスターなのは言うまでも無いが、実態はほとんど知らないため、素直にすごい人だと思うことが出来た。

        「川の流れのように」は秋元氏の代表作だが、それまでは「セーラー服を脱がさないで」だったわけで、彼のその後の評価に大きな影響を及ぼした作品だったのは間違いない。
        その仕事を受注するまでに彼が示したコンセプトは、非常に興味深かった。

        収録された作品のほとんどは、読んだ傍から忘れていくようなものが多いが、読んだ瞬間は、確かに何か考えさせられたり、感動したりという心の動きがあり、才能を感じさせられるものばかりである。

        短い言葉で多くを表現するいうエッセイという形態は作詞家に向いているのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2012/01/24 by ice

    • 1人が本棚登録しています
      花盛りの庭

      坂井久仁江

      集英社
      4.0
      いいね! anko
      • 再読。初めて読んだ坂井(国枝)さんの本。
        この本で坂井さんに惚れた(〃艸〃)ムフッ  
        昼ドラ真っ青の超シリアスな話で衝撃的だったよ~\(◎o◎)/

        ホント下手なドラマより面白い!!w( ̄o ̄)w オオー!
        >> 続きを読む

        2012/05/12 by あんコ

    • 1人が本棚登録しています
      史記

      横山光輝

      小学館
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • 史記 第1/全15巻

        三国志など、とくに中国史関連のマンガで有名な横山光輝による史記。

        これほど有名な史料の成立過程さえ知らなかったことを恥ずかしく思った。

        貧しいながらも父の代から宮仕えの学者という家系に生まれた司馬遷。
        20歳にして国内漫遊の旅に出させて貰うことで見聞を広め、戻るとすぐに任官し父と同じ道を歩む。

        父の後を継ぎ、歴史から学びつつ新しいものを模索する職に就いた彼に最初に巡って来たのは、新暦の暦を作ることだった。
        期待に応える結果を出した彼は、更に上位に取り立てられ、帝の取り巻きに入ることを許される。

        しかし...
        隣国との戦争に対しての用兵に対し、帝を否定するような意見を述べたことで幽閉されてしまう。

        彼に下った判決は死刑。
        ただし、多額の金を納めること、または宦官となることで回避することも許される。

        悩む彼だが、これまで調べ上げた中国史を、特定権力者によるバイアスがかからない状態で、史料を遺すというライフワークに賭けるため、宦官になることを選択する。

        こうして彼が書き残した様々な中国史をまとめて史記(太史公書)と呼ぶ。

        他に3編含まれているものの、とにかく司馬遷の情熱や史記という史料の位置付けや成立過程が印象に残った。

        マンガとは言えとても示唆に富んでいる。彼が遺してくれた歴史から少しでも多く学び取りたいと思う。
        >> 続きを読む

        2014/01/01 by ice

      • コメント 2件
    • 2人が本棚登録しています
      孤独の歌声

      天童荒太

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • この天童荒太の「孤独の歌声」は、連続強盗事件と、女性誘拐監禁事件とを絡ませたサイコ・サスペンス小説だ。

        探偵役の女性警察官、強盗事件に巻き込まれた音楽に情熱を注ぐ青年、犯人のそれぞれの視点を入念に書き分けていると思う。

        特に、彼女たちの追った心の傷から現代社会の病理を上手く引き出した点は、見事としか言いようがない。

        他者からの愛を得ようとするには、自分がまず他者を愛さなければならない。
        だが、愛されたと自分が感じたことのない者に、それができるはずがない。

        この孤独な葛藤に打ち震える青年の青春像を描く一方、他者からの愛を受け入れることが、愛を得る手段でもあると、強い肯定的なメッセージ性も備えている。

        サイコ・サスペンスという体裁を採る一方、そこに隠された動機を探る骨太の構成は、天童荒太の才能を十分に物語っていると思う。

        >> 続きを読む

        2018/06/11 by dreamer

    • 3人が本棚登録しています
      散華 紫式部の生涯

      杉本苑子

      中央公論新社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! Tukiwami
      • 永井路子と共に長年に渡って、愛読する女性作家に杉本苑子がいます。

        彼女は吉川英治の愛弟子として有名ですが、彼女が紡ぎ出す歴史小説の数々は、永井路子とはまた違った角度から、歴史とその歴史のうねりの中で翻弄される人間像を描く事にアプローチしていて、その確かな史眼と歴史解釈には胸を打たれるものがあり、暇を見つけては彼女の作品世界に浸るようにしています。

        杉本苑子の作品には、「孤愁の岸」のように自らの戦中体験を軸に、時代の権力構造を剔抉するダイナミックな作品もあれば、第12回吉川英治文学賞を受賞した名作「滝沢馬琴」を初めとして、世阿弥を主人公にした「華の碑文」、近松門左衛門を描いた「埋み火」など、作家や芸術家の作品創造の過程に自らの作家的姿勢を投影させた一連の作品があり、繰り返し何度でも熟読しては、歴史小説の醍醐味、素晴らしさを満喫しています。

        そして、今回読了した彼女の作品は「散華 紫式部の生涯」で、その内容はと言えばこうです。

        三十六歌仙の一人であった祖父の、風雅の血を受け継ぎ、知識や教養を重んじる藤原為時。しかし彼は、その生来、無欲恬淡な人柄のため、時の政治の中枢から外されていました。

        皇位継承をめぐる内紛や、娘たちを政治の道具にして、権勢拡大に明け暮れる藤原一門。栄華のための権謀術数がはりめぐらされる世相にあって、為時の娘、小市、後の紫式部は、父の影響から、好きな読書に興じる日々を送っていました。

        そして、ある日、本の貸し借りで友人となった橘為義の娘、万奈児から、時を超え読み継がれていく、"書物の普遍性"というものを説かれるのです----。

        その後、小市は、藤原宣孝と結婚をしますが、夫は浮気性で、しかも結婚三年目に病死します。心に傷を負った小市は、「蜻蛉日記」に触発されて、理想の男性像を希求した物語「源氏物語」の執筆を決意するのです----。

        杉本苑子の作品には、作家・芸術家の作品創造の過程に自らの作家的姿勢を投影させた一連の作品があり、このような試みが、古典との対応の中で、一つの頂点を極めたものが、力作「新とはずがたり」を経て執筆された、この「散華 紫式部の生涯」なのだと思います。

        「新とはずがたり」は、自身の性の遍歴を赤裸々に記した、鎌倉時代後期の女流文学の傑作と言われる「とはずがたり」を、原典とは違った立場から再構成し、併せて、後深草院と亀山院の抗争から南北朝迭立の問題をも活写する事に成功した、"歴史と文学の問題"に迫った力作だったと思います。

        一方、この「散華 紫式部の生涯」は、それを更に発展継承させた形で、日本文学史上最大のヒーローである、"光源氏誕生の秘密"を自己の文学観と二重写しにしながら、解き明かしていった渾身の一作だと思います。

        藤原氏の一門にありながら、無欲な漢学者を父に持ち、"理想と現実の落差"を文学によって超克しようとした紫式部----。

        三年にも満たぬ不幸な結婚や皇位継承をめぐる権力抗争を見据えつつ、「源氏物語」の完成に執念を燃やす彼女の胸に去来していたものとは何なのか? ----。

        紫式部は「蜻蛉日記」に触発され、叔母の周防の「難のない人間はいないはず、不条理や不公平を伴わない愛もない。それが現実ならば、せめて物語の中ででも、理想の男性像を求めるしかないわね」という言葉に動かされるまま創作に踏み切りますが、それは「宇治十帖」執筆のくだりで、「もともと自分の生き身の証を求めて、自分に課した『書く』という孤独な作業に、賞讃なり、他の声を期待するのがまちがいなのだ。自分の内面とだけ向かい合って、生みの苦しみに喘ぐ作者の姿勢に、もし共感する人がいたら、たとえ一人でも二人でもいい。そういう読者の無言の励ましを支えに書きぬくほかはない」という確固たる信念へと変わっていくのです。

        "永遠に読み継がれていく文学の力"に較べれば、一つの時を支配する権力などは、"一抹の儚い夢"にすぎない----。この事は紛れもなく、作家・杉本苑子自身の祈りであり、戦中派の感慨を胸に作品を紡ぐ事によって、戦後を生きてきた、杉本苑子という作家の"強固で揺るぎのない信念"なのかも知れません。

        この小説の題名にもある「散華」とは、恐らく、そうした思いを抱きつつ、生き、散っていった多くの人々に捧げられたものなのではないかと思います。
        >> 続きを読む

        2016/10/10 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      地獄の季節

      HigginsJack , 田口俊樹

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • ご贔屓、ジャック・ヒギンズの「地獄の季節」。この作品は、まさにヒギンズ貫禄のパワープレイでぐいぐい読ませてくれる。華やかな男と女が燃え上がる冒険アクション小説の傑作だ。

        十一月、雨と霧にけぶるパリに始まり、雨と霧のロンドンに終わる。

        十一月は残酷な月、秋と冬の裂け目。すべてが月並みな道具立ての復讐物語なのだが、ヒギンズが描けば、華になる。

        人生の偶然から一人の男と女が、同じ復讐の的を持つ。それが、レディーとヒーロー、ヒギンズの世界に特有のきらびやかな男と女の物語になるのだ。相変わらず、パワフルだ。

        私のようなヒギンズファンに、彼の傑作「エグゾセを狙え」を彷彿とさせ、思わずニヤリとさせる仕掛けが施されている。ヒギンズ、実に憎い男だ。

        フォークランド戦争を舞台に、イギリスの特殊部隊将校と、アルゼンチン空軍の伊達男との恋のさやあてを主軸にした傑作の、続篇とも言えるのだ。

        登場人物の一部が連続して出てくるだけではない。年代的に、直接続いているのだ。しかし、基調はあくまで暗い。ヒギンズにあるまじき暗さ。

        復讐は地獄の季節、血で血を洗う残酷な結末が待っている。これはイギリスとアイルランドの骨肉の暗さだ。

        主役が華ならば、脇役は棘のように。復讐劇の裏で、それを追跡する屈折した殺し屋の存在感が、見事に残ってくる。これはこれで、また格別に、華やかなのだ。


        >> 続きを読む

        2018/01/19 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      武士の娘

      杉本鉞子 , 大岩美代

      筑摩書房
      カテゴリー:個人伝記
      4.0
      いいね!
      • 途中まて読んで積ん読中。日本国の美しさに驚いてばかり。明治維新を新しい角度で見ることができる本。 >> 続きを読む

        2015/10/11 by KTH

    • 2人が本棚登録しています
      星のふる夜に

      千住博

      (有)冨山房
      5.0
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      • 星のふる夜に─When Stardust Falls─は
        言葉の無いアート絵本です

        ある晩、森の中で流れ星を見つけた小鹿。
        星を追いかけていくと、そこは知らない世界でした。
        道に迷った小鹿の一夜の夢のような冒険物語。


        この絵本は詩情とデザイン性に富んだすばらしいアート作品でありながら、
        とてもかわいらしい絵本になっていて、
        大人も子供も魅了されるすばらしい一冊。

        星降る夜空、町の明かり、水面の輝き、夜明けの空の色
        なんとも美しく、画面に見入ってしまいます。
        言葉のない絵の世界には音楽が流れているようにも思われます。

        左のページに地図が、右のページには絵が描かれていて、
        小鹿がどの道を歩いてきて、今どこの場所にいるのか。
        絵はどの角度から見た景色なのかがわかるように工夫されていてこの点も面白いです。



        『深い森のなかに、親子のシカが住んでいました。ある晩、子ジカが流れ星を追いかけて、見知らぬ世界に迷いこみます。
        それは、一夜の出来事とは思えないくらいふしぎな冒険でした。』

        書かれているのは、冒頭のこの文章だけです。


        「軽井沢千住博美術館」に行くと、絵本の原画が見られるらしいです。
        http://www.senju-museum.jp/
        彼のファンになりました。ぜひ小鹿に会いに行ってみたいと思います。


        【うんちく】
        作者の 千住博さんは国際的にアクティヴに活躍している日本画家で
        ヴェネツィアビエンナーレ絵画部門で東洋人として初めて名誉賞を受賞。
        空間造形も手掛けている実力のあるアーティスト。
        代表作品は「ザ・フォールズ」でしょうか。
        けんぶち絵本の里大賞受賞。
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        2013/05/15 by 月うさぎ

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      虚像の兵団 <バーチャル戦史>幻影の帝国軍隊

      荒巻義雄

      ベストセラーズ
      カテゴリー:日本史
      3.0
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      • 第二次大戦で大敗した日本軍。歴史のif。

        どんな歴史のifが有ったとしても日本軍は負けていたという主張が的確に思える。

        東京大空襲。特攻。原子爆弾。日本にも戦争は多くの悲劇を生んだ。

        物量で圧倒的なアドバンテージを持つアメリカに対し、技術と勤勉性、そしてマインドコントロールされているかのような強い精神力で立ち向かう日本。
        非常に善戦したものの最初から結果は見えていたと言えなくもない。

        もし、当時の日本に歴史のifが訪れていたら・・・。
        日本人として心情的には大東亜共栄圏を構築し、いずれは欧米と睨み合うという筋書きに魅力を感じないではないが、結局のところ少々のフィクションでは、どうにもならないほどの物量差はいかんともし難い。

        せいぜい一矢報いるのが関の山で、どう転んでも日本は負けていたという主張に説得力を感じた。

        現代を生きる日本人として感じるのは、アメリカという国の影響力。
        あのときアメリカという国に負け、アメリカという国に占領されたから、現在の日本の繁栄が有るのは間違いないと思う。

        卑屈になる必要も無いし、遠慮する必要も無いが、アメリカへの感謝の気持ちを忘れてはならないだろう。

        日本が戦争に勝利し、現代も軍事政権だったらと考えると心からゾッとする。
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        2012/05/19 by ice

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      奇妙な人生 (扶桑社ミステリー)

      スティーブン ドビンズ

      4.0
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      • このスティーブン・ドビンズの「奇妙な人生」は、かなり手の込んだ心理ドラマだ。

        ミステリだと言えるのかどうか? 表面的に現われる意外な結末は、ちっともそれらしくない。交通事故で植物人間になってしまった男がいて、その原因が特定されるというもの。

        どこか素人のミステリの書き手が、自分だけウットリして、さあどうだ、びっくりする結末だろう? などと大見得を切っているみたいなところがあるんですね。

        しかし、これはただ見せかけの"謎解き"にすぎないと思うんですね。ドラマの幹線からいうとどうでもいいことだと思う。

        本当のミステリの鍵は、ここまでテーマの前面でさんざんいじくられてきたイビツな愛の行方にある。その解釈。こういう愛の形をどう判断しますかと作者のスティーブン・ドビンズは問うているのだと思う。

        無粋な突きつけ方はしていないが、確かに問いを強要している。ここに答えを出さないと、これをミステリとして読み終われないように描いているんですね。

        こういう謎のかけ方もあるということなのかと、ある意味、驚いてしまう。解決は読者に委ねるという方式だ。解決篇を省略するのではない。ここまで読んでくれば、読者はそれぞれの感受性によって一定の判断を下せるはずだから、それが解決なのだという仕掛けだ。

        そして、ここに描かれたのは愛なのか? どうしてもそれに答えなければならない。いわば心理ドラマの一員となることによって、読者はこれまで読んできた小説を、自分の手で完結させるという作業を求められるわけなのだ。

        イビツな愛も丹精込めて描けば美しいというのは、文学的な常識だ。読み終えて、この小説と同じような題材を谷崎潤一郎なんかが、大阪弁でシンネリと描いたら、さぞや面白い小説になったのではないかと思いましたね。


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        2018/03/20 by dreamer

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      新約聖書の世界

      高橋三郎

      教文館
      カテゴリー:聖書
      5.0
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      • これはすばらしい名著だった。
        新約聖書の成立過程を丹念に解きあかし、「使徒」と呼ばれる人自身が執筆したテキストは新約聖書の中で実はパウロ書簡のみであり、福音書や二次的に福音の背景を明らかにするために成立したことを明らかにしている。

        しかも、福音書の成立過程を解き明かし、編集者の意図によって諸資料の断片が構成されている以上、福音書をいくら読んでも確定的な事実は明らかにしえないことを指摘している。

        その上で、真理の複数証言ということが重要であり、どれか単一の福音書のみ重視したり単一のものをつくるのではなく、複数の福音書があることこそ、そして複数の真理証言から全体としての真理をつかむことこそ重要であることを指摘している。

        また、パウロの課題が「律法からの解放」であり、律法によるイスラエルから信仰によるイスラエルへの移行こそパウロらによって行われた決定的に重要な出来事だったのであり、それに比べればルターの宗教改革や内村鑑三の無教会主義はそれほど断絶的な契機を持たず、カトリック・プロテスタント・無教会はどれも信仰によるイスラエル=神の民の内部のことであるという指摘もなるほどと思った。

        また、カトリックはマタイ的教会観を、無教会はヨハネ的エクレシア観を継承しており、これはもともと福音書においても併存していたものであって、真理の複数性として一方を排除すべきではないというのは、なるほどと思った。

        繰り返し読まれべき名著と思う。
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        2017/03/31 by atsushi

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