こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


1994年4月発行の書籍

人気の作品

      きらきらひかる

      江國香織

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! chao gavin tadahiko caramel momomeiai karamomo
      • 別世界の出来事のような不思議さを感じる江國さんらしい文章、そしておしゃれな雰囲気

        アルコール中毒の笑子、同性愛の睦月、その恋人紺。
        笑子と睦月はすべてを許し合って結婚したはずだったが・・・と、普通の結婚とは変わった夫婦のストーリー。

        正直、理解できませんでした。
        終始居心地の悪さががつきまとっていて、これでいいんだ、と絶句するようなラストでした。
        同性愛云々ではなく、恋人がいるのを許容して結婚生活を送るというのが理解できなかったんです。
        アル中と恋人ありって全く違うのに、
        「僕と笑子は似たもの夫婦だね」
        と平然と言ってしまえる睦月は、ひどく無神経だと思いました。
        睦月は優しいというより、何も考えていないだけなのでは。

        世間体を優先して結婚したのなら、世間体を貫くべきだと思うのです。
        笑子の親友に話したこと、そもそも昔の恋人引っ張り出して遊園地計画自体やってはいけないことでしょう。
        義理の両親に同性愛のことを黙って結婚したにも関わらず不用意すぎる。

        と、完全に睦月批判で読んでしまいました。
        彼がもう少ししっかりしていれば、いびつは夫婦ではあるけれど、そこにもっと純粋さを感じることができたのに、と思いました。
        >> 続きを読む

        2018/08/01 by あすか

      • コメント 6件
    • 他12人がレビュー登録、 59人が本棚登録しています
      深夜特急 - 5 トルコ・ギリシャ・地中海 新潮文庫

      沢木耕太郎

      新潮社
      カテゴリー:地理、地誌、紀行
      4.2
      いいね!
      • トルコのお爺さん2人がゲームに興じる場面を読んで、少しだけトルコ語に興味が湧きました。

        この巻に関わらず全編を通し、作者は人との関わりも含め、目の前で起きていることに自ら深くは入り込んでいかないように思えます。まるで、日本人の感覚というフィルターだけを通して、1つ1つの景色を写しとっているようです。それだからこそ、その国らしさが感じられ、そこへ行ってみたいという気持ちにもなるように思います。
        >> 続きを読む

        2019/11/02 by たけのこ

    • 他5人がレビュー登録、 20人が本棚登録しています
      深夜特急 - 6 南ヨーロッパ・ロンドン 新潮文庫

      沢木耕太郎

      新潮社
      カテゴリー:地理、地誌、紀行
      4.5
      いいね!
      • 飽きずに最後まで読むことができた。各刊ごとにストーリーが異なるので、ただダラダラと自伝が書かれているわけではなく、毎回面白いストーリーがあった。 >> 続きを読む

        2017/06/21 by よしりよ

    • 他3人がレビュー登録、 18人が本棚登録しています
      シュガータイム

      小川洋子

      中央公論新社
      カテゴリー:小説、物語
      1.0
      いいね!
      • >sunflowerさん
        コメントありがとうございます。
        評価を低くつけたのは私がこの手のもやもや恋愛話が苦手だからです。
        だからこそ、食べ物の描写に目がいってしまったのかも(笑
        雰囲気は好きなのですが、ウジウジするなー!と叫びたくなるところもありました。
        >> 続きを読む

        2012/05/09 by sky

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      ムーミン谷への旅 トーベ・ヤンソンとムーミンの世界
      講談社
      4.0
      いいね!
      • ムーミンを何の疑いもなくカバだと思っていた私は幼い頃「ムーミン・アニメ」(岸田今日子さんの声のムーミン)で育った世代です。
        その後、トーベ・ヤンソンの漫画を読み(親が買ってきたものと思われる)、
        アニメと原画のギャップに驚き、皮肉を含んだ内容とちょっとブラックなユーモアに、不可思議な魅力を感じつつも理解しきれないままにムーミンよりもスヌーピーへと関心と愛は向かい、ムーミンとは縁を切ったのでした。
        そしてムーミン・カフェにできる行列やさまざまなグッズなど、近年のムーミンブームをちょっとした違和感をもって眺めている今日この頃。

        北欧をテーマにした小説を読み映画をみるなどするうちに、北欧についての無知を反省する気持ちになりました。
        ムーミンを思いついたのはそこには北欧特有の自然がふんだんに描かれているからです。
        そこで手にとったのがまずこの本。
        ムーミン童話を読む前に、北欧についての無知とムーミンへの先入観をリセットするためです。

        まず、地球儀を北極を中心とする上から見下ろしたとき、メルカトル図法の地図では考えられないことですが、実はフィンランドは日本から「最も近いヨーロッパ」だったんですね。
        そして北欧のトロール伝説や精霊たちの存在や伝承は日本のつくも神に近いと思います。
        ムーミンはそんな世界観の中でトーベの心に自然発生したトロールなんですね
        トーベが女性だったことも初めて知った事実でした。
        トーベに全然女性を感じていませんでしたが、それは彼女が自立した人間で孤独と自然の中で一人で生きる術を身につけていることとつながっているのかもしれません。

        何よりも一番の「誤解」はムーミントロールたちはとても小さいサイズだということでした。
        コロポックルとかボロワーズみたいな感じだったんです。
        う~ん。ほぼ等身大の着ぐるみのイメージだったぞ…。

        ムーミンになんとなくダークなイメージがあったのは、この物語を最初に構想したのが第二次大戦中のフィンランドだったという状況を考えれば納得できます。
        小国の例に漏れずフィンランドもナチスドイツに席巻され、自由を脅かされていたのでした。
        トーベの批判精神は戦争下でも折れることのない強いものでした。むしろそのせいで強くなったのかもしれません。

        この本はムーミン世界を愉しむファンブックではなく、ムーミンを中心にトーベの80年の人生を総括し(この本出版時点で存命でした)、ムーミン童話の世界をその誕生から掘り起こし再検証し、歴史の中で大人が鑑賞するに足る視点の提供をしているといえます。
        その真面目な姿勢とはまた別に北欧の美しい風景や風習といった旅心を誘うような作りにもなっていて、遠いと思っていた北欧の国々がぐんと近づいた気持ちになれるでしょう。


        小さなヘムルは、ムーミン一家にききました。「あてさきは、なんと送ったらいいのかしら」
        「ムーミン谷と書くだけで、いいですよ」と、ムーミンパパがいいました。

        【おまけのデータ】
        日本でのアニメーション放送は2度 1969-1972、1990-1992
        トーベの訪日2度

        ムーミンを訪ねてフィンランドへ行くなら外せない 
        〈ムーミン谷〉美術館(タンペレ)
        ムーミンワールド(ナーンタリ)

        2017年日本にムーミンのテーマ・パーク「メッツア」が誕生予定!
        どんなパークになるのか、とっても楽しみです!
        待ちきれない方は「あけぼの子どもの森公園」をまずは訪問してみてはいかが?
        >> 続きを読む

        2016/01/03 by 月うさぎ

      • コメント 8件
    • 1人が本棚登録しています
      悪夢の棲む家 ゴースト・ハント

      小野不由美

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • こっちは霊現象も出てくるけど
        あまり怖くなかった。

        しかし、ラノベ感覚でさくさく読める。 >> 続きを読む

        2014/12/09 by ayumi

      • コメント 2件
    • 2人が本棚登録しています
      ドリーム・ラッシュ!

      藤田和子

      小学館
      3.0
      いいね!
      • 女優を目指す女の子の成長の物語。女優としていくつもの困難にぶつかりながら、小さな事務所を経営する男性と共に歩んでいく。大手事務所との対立や人気子役との主役争い、映画のオーディション…チャレンジしながら、悩みながら、夢を叶えていく主人公。

        そしてお決まりの感じで主人公はその事務所経営の若い男性と恋をしていたような…

        女の子ってほとんどの子がアイドルとか歌手とか女優さんに憧れる時があると思うけど、そういった女の子の憧れをそのままマンガにしたような感じ。
        >> 続きを読む

        2012/03/29 by sunflower

    • 1人が本棚登録しています
      マンハッタン・ダークサイド (新潮文庫)

      スティーヴン ソロミタ

      4.0
      いいね!

      • 本棚の奥で眠っていたスティーヴン・ソロミタの「マンハッタン・ダークサイド」を取り出し、再読してみましたが、いやあ、何度読み返しても面白い小説です。

        とにかく、このスティーヴン・ソロミタという作家は、目の離せない警察小説の書き手だと思いますね。メーンプロットは、月並みと言えば、月並みです。また、いつものこの手のお話かと思わせるような話です。

        警官殺しのジャンキーの殺人鬼。その殺人鬼を追いつめるのは、退職間近のはみ出し暴力刑事。そして、彼の相棒には正義感あふれる新米刑事。

        殺人鬼のバックには、彼を情報屋として使っている悪徳警官がいて、捜査は秘密のものにならざるを得ないのだった。

        それに加えて内部捜査班が動きを出せば、ヘタな活動はこちらの命取りになる。その背後には、当然、上層部の権力抗争がある。

        そこで、まず内通者を割り出してから、犯人を追いつめる必要がある。敵はまず警察の内部だ。新米刑事は、一歩一歩パートナーの教育を受け、また恋に落ちる役得もある。

        こうした映画化を想像したくなるようなシンプルな骨組みに、ディテールがたっぷりと描きこまれていて、とにかく読ませてくれる。

        チューブにつながれ、余命いくばくもないマフィアのボス、これがヒーローの幼馴染だときている。エイズに感染し、絶望の日々を麻薬の陶酔で埋めようとするジャンキー、不運に見舞われて不正への階段を転げ落ちていく初老の警官など、脇役の造型も実に手堅い。




        >> 続きを読む

        2018/01/19 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      第三の眼 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

      ケイ・ノルティ スミス

      3.0
      いいね!

      • 1980年度のアメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞受賞のケイ・ノルティ・スミスの「第三の眼」を読了。

        アメリカ屈指の社会科学者が、研究所のバルコニーから転落して死に、その殺害容疑が同席した女性記者にかかる。

        彼女は無実を主張するが、警察は逮捕する。かつての恋人が彼女の弁護人となって、法廷ですべての真相を明らかにするという法廷スリラーで、なかなか起伏に富んだ面白いストーリーなのですが、書き方がひどくもったいぶっているのが、読んでいる間中、気になりましたね。

        「法律は人間を拘束・監禁するという醜悪な面とも結ばれている。まるで、聖人が娼婦とカップルを組んでいるように」などというキザな調子で、社会や人生や愛についての哲学的なゴタクが、しつこく語られるために、お話の盛り上がりが著しく妨げられているんですね。

        新人の映画監督が映画を作ると、カメラをやたらと動かしたり、スローモーションを乱発したりするために、全体がひどく見にくいものになってしまう、ということがよくありますが、あれに似た感じなんですね。

        ただし、これだけ力のこもった法廷ミステリはなかなかないので、文章力の欠如を抜きにすれば、そこそこ堪能できるミステリではありましたね。



        >> 続きを読む

        2018/04/07 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      どろろ

      手塚治虫

      秋田書店
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
      いいね!
      • 天下を取りたいという父親の欲望のために、目、口、耳、鼻、手足など体の48カ所を48の妖怪に奪われた姿で生まれ、捨てられた百鬼丸。
        拾って育ててくれたやさしい医者は、義眼義足などあらゆる物をつくり見た目はふつうの人間とかわらないようにしてくれた。しかし、妖怪に狙われるようになり一人旅に出ることに。

        「おれが目も見えねえ耳も聞こえねえとバカにしやがって・・・
        見えなくったって 心の目ってもんがあらあ」

        妖怪を倒せばひとつずつ取り戻せると知った百鬼丸は、
        幼くして両親と死に別れ一人で盗人をしながら必死に生きてきたどろろと出会い、
        ともに妖怪を退治しながら旅を続ける。

        「今の世の中はな シアワセなんてありゃしねえや ただ 自分だけを頼りにしてりゃそれでいいのさ」
        盲目のびわ法師。何者!?

        「おれは目も見えず・・・耳も口も鼻も手も足も みんなだめなんだよ。おれにはなんにもできやしない・・・」という百鬼丸を、盲目の琵琶法師がいくさで焼けた村の焼け跡に連れて行き、手のない子、足のない子、目の見えない子、焼けただれた子たちが明るく元気に生きている姿を見せる。

        「この子たちは気の毒だ。だれもかまっちゃくれねえんだ。
        だがよ 見なせえよ この子たちが一生懸命生きようとがんばってるかを・・・・  
        おまえさんは・・・なぜひとりでがんばってみねえんだい?」

        「人間のしあわせちゅうのは「いきがい」ってこった・・・

        おめえさんが妖怪を倒す・・・
        手が生え足が生え、目があいてふつうの人間になれるときがくる
        それからあと おめえさんはどうする?
        何を目標にくらす?

        ・・・今度はおめえさんは はっきり目的をもって そいつらを倒していくんだ」

        「おめえさんにかかっちゃ 天上天下四方八方死に神だらけだ
        死に神だろうが びんぼう神だろうが いたっていなくたって 関係ねえこったろうに・・・

        な おめえさん 人間ってえのは くよくよしていちゃ 小便すら満足にできねえよ」

        お釈迦さん?



        生きる勇気。全ての生命へのやさしさ。

        権力者の欲。ゴーマン。

        異形者、よそ者を排除しようとする村人の愚かさ。

        手塚さんらしいユーモアもある。(水木しげるに対抗していたらしい) 

        1967年~1969年の作品。だが、現代にも通じるものが多い。
        全3巻。一気に読めた。とてもおもしろかった。
        >> 続きを読む

        2013/05/12 by バカボン

      • コメント 4件
    • 1人が本棚登録しています
      エムデンの戦い

      LochnerR. K , 難波清史

      朝日ソノラマ
      カテゴリー:海軍
      4.0
      いいね!
      • 第一次大戦で活躍したドイツの軽巡洋艦・エムデン号とその乗組員たちのことを描いた作品。
        さまざまな証言や回想録から、とてもわかりやすく、具体的にエムデン号の戦いとエムデン号が敗れたあとの乗組員たちの冒険が描いてあった。
        しばしば、心震え、本当に心躍るような気持ちで読むことができる、とても面白い本だった。

        エムデン号は、たった一隻で、ドイツが劣勢という圧倒的に不利なアジアの海の状況の中で、イギリス・フランス・ロシアなどの連合国の艦船を三十隻以上拿捕、あるいは撃沈し、インド洋や東南アジア近海の連合国に一大脅威と打撃を与え、しかも大胆不敵にもマラッカとペナンの二つの港湾にまで侵入し、石油タンカーを破壊したり、巡洋艦を撃沈するなど、まさに神出鬼没の活躍をした。

        多くの商船を拿捕したが、エムデン号の艦長のカール・フォン・ミュラーは、常に国際法を遵守し、拿捕した商船の乗組員たちの身柄は常に丁重に保護し、必ず生きて帰れるようにはからった。
        そのため、解放された拿捕船の乗組員たちから、エムデン号やミュラー艦長に万歳の声があがることも再三あったという。
        戦いにおいても非常にフェアだったという。

        エムデン号がたった一隻で敢然とインド洋での戦いに赴き、信じられない戦果を挙げたことは、本当に二十世紀初頭の奇跡というか、最後の英雄的な艦船の活躍だったような気もする。
        そして、このような任務を敢然と行える艦長以下の人材のすごさを見ていると、人間は本当にすごいとあらためて思った。

        また、この本は、活躍のみでなく、その裏側で、いかに艦長以下、補給の問題や日々の生活に頭を悩まし、苦労をしていたかもよく描かれていた。
        エムデン号も、華々しい活躍は表面で、いつも補給の問題に頭を悩ませ、地道に石炭の補給や食料補給、掃除や洗濯などがけっこう大変だったらしい。
        石炭の積み替えは特に重労働だったらしい。
        そういう具体的な地道な努力や苦労があったうえでの、あの赫々たる武勲だったのだろう。

        この本に描かれる、エムデン号のドイツ海軍軍人たち、および敵のイギリス海軍軍人たちは、非常にフェアで、互いに敬意を持ちあい、本当にすがすがしかった。
        二次大戦の仁義なき戦いと違い、一次の頃は、わずかながらこういう事もあったんだなぁと感心させられた。
        エムデン号は最後はイギリスに撃破され、艦長以下降伏するが、イギリスは非常に丁寧に礼節を尽くして迎え、コロンボに寄港した時も、恒例だと勝利を祝う万歳をあげるのを、エムデンに敬意を払い、万歳を自粛したという。

        あと、この本ですごいと思ったのは、エムデン号の後日談。
        エムデン号が敵艦船にやられて大破し降伏した時、乗組員の一部はディレクション島に上陸していた。
        このミュッケ大尉以下の五十名は、エムデン号が敵艦船に急襲を受けて海戦の末、大破し降伏したのを知ると、自分たちだけは島にあったボロボロの小舟に乗って中立国だったオランダ領まで渡り、そこでドイツ領事の協力のもと新たなドイツ商船に乗り込んでイエメンに渡航、イエメンから沙漠を駱駝に載って渡り、ベドウィンの襲撃を受けながら北上し、ついにドイツまで帰国したというのだからすごい。

        ミュラー艦長やミュッケ大尉を見ていると、人間は己の任務に忠実に、そして精魂を傾けて奮励努力すれば、普通では考えられないことをやり遂げることができるということを本当に思わされる。
        そして、その過程において、正々堂々とフェアであれば、敵味方を問わず敬意を持たれ、はるか後世の人にまで語り継がれるようになるということも、よくわかる気がする。

        とても良い一冊だった。
        >> 続きを読む

        2012/12/22 by atsushi

    • 1人が本棚登録しています
      雲なす証言

      浅羽莢子 , SayersDorothy Leigh

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 【古典ミステリ作家の中で最も文学的な作品を書いたと言われるセイヤーズのミステリを読んでみませんか?】
         冒頭のリードで書いた通り、ドロシー・L・セイヤーズ女史はミステリでありながら最も文学的な作品を書いたと評価されています。
         ミステリに文学性は必要かという論争がかつてありましたが、それを両立してしまった作家と言っても良いのかもしれません。

         セイヤーズは、同じ女流作家ということでクリスティともよく比較されますが、クリスティが意表を突くトリックを得意とするミステリらしいミステリ作家なのに対して、セイヤーズの作品はトリックに重きがあるというよりは、作品全体から醸し出される雰囲気、物語展開の面白さという、一般の小説的な魅力があるように思われます。
         本作は、そんなセイヤーズの第2作目に当たります。

         探偵役は、貴族でありながら抜群の推理力を誇るピーター・ウィムジイ卿です(シリーズ探偵として活躍します)。
         今回は、なんと、ウィムジイ卿の実の兄であるデンヴァー公爵が殺人の嫌疑をかけられて起訴されてしまうというお話です。

         事件はある日の深夜に起きました。
         ウィムジイ卿やデンヴァー公爵の妹であるレディ・メアリは、デニス・キャスカート大尉と婚約していました。
         ところが、デンヴァー公爵の友人から、キャスカートはパリでいかさま賭博をしているようなとんでもない奴だからこの結婚には注意した方が良いと書かれた忠告の手紙が届いたというのです。
         捨ておくわけにはいかなくなったデンヴァー公爵は、別荘に泊まりに来ていたキャスカートに事の真偽を確かめたところ、明確に否定しないばかりか、激高してメアリとの婚約も破棄すると言い捨て、雨の中、外へ飛び出して行ってしまったと言います(デンヴァー公爵の供述ですよ)。

         寝付けなくなったデンヴァー公爵は、雨の中だというのに散歩をするために外に出て、数時間経った午前3時過ぎ頃に別荘に戻ってきたところ、温室の入り口に倒れて死んでいたキャスカートを発見したと言うのです。
         キャスカートは胸を拳銃で打ち抜かれて絶命していたと言います。
         そこへ銃声を聞いて目が覚めたというメアリが出てきて、死体の上にうずくまっていたデンヴァー公爵を見てしまったのです。
         別荘は大騒ぎとなり、キャスカートの胸を撃った拳銃がデンヴァー公爵のものだったこともあって、デンヴァー公爵は殺人罪で逮捕、起訴されてしまったのです。

         自分の兄が逮捕されたと知ったウィムジイ卿は、従者のバンターと共に別荘に駆け付け、昵懇の仲であるスコットランドヤードの警部のパーカーと共に捜査に乗り出し、兄の無実を証明しようとする展開になります。

         そもそもデンヴァー公爵は、何故雨の夜中に外出し、何時間もほっつき歩いていたというのでしょうか?
         デンヴァー公爵はただムア(荒地)を歩いていただけだと言い張り、納得いく説明をしようとしません。
         また、そもそものきっかけとなった友人からの忠告の手紙についても処分してしまったと言うのですが、何故処分しなければならなかったのでしょうか?
         とにかく満足な説明も、納得できる弁解もしないデンヴァー公爵は窮地に陥ります。
         加えて、捜査を進めていく過程でメアリが「キャスカートを殺したのは私です」と名乗り出てくる始末です。
         実兄は起訴されるわ、妹は真犯人は自分だと自白するわでウィムジイ卿大ピンチというお話になってきます。

         ミステリとして見た場合、本作にはクリスティのような目を見張るようなトリックがあるわけではありません。
         また、カーのような不可能犯罪が提示されることもありません。
         はたまた、クイーンのような数学的・論理的な精緻な推理が見られるわけでもなく、読者に対してすべての手がかりを与えると言ったフェア・プレイが行われるわけでもありません。
         ですから、本来ならミステリとして読んだときにはさほど高い評価はできない作品になりそうなのですが、不思議と独特の魅力があるんですね。
         ただし、とあるミステリ書評によれば、残念ながら本作はセイヤーズの作品としては最も失敗してしまった作品だと評価されていますが。

         本作の魅力とは、ウィムジイ卿と従者バンターのユーモラスな掛け合いがあったり(この二人、捜査の途中でドジを踏んで二人揃って死にかけたりもします)、貴族階級の妙な意地やプロレタリアートとの確執が描かれたり、いくつかのロマンスが背景に見え隠れしたり、貴族を裁判にかけるとどういう手続きが必要なのかが描かれたり、裁判が終盤に近付いているという緊迫した状況の中で決定的証拠をつかんだウィムジイ卿が嵐の中飛行機を飛ばすというサスペンスがあったりで、小説として面白いのです。

         ですから、殺人事件とその解決は描かれるものの、ミステリとしてではなく、一般の(ちょっとユーモラスな味もある)小説としても十分に楽しめる作品になっていると思います。
         最後の最後では、泥酔して議事堂広場にあるパルマーストン卿の銅像によじ登り、醜態を晒すウィムジイ卿とパーカー警部なんていう笑ってしまうような場面まで出てきたりしますよ。
         セイヤーズの魅力ってこういうところにあるんだなぁと実感できた作品でした。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2020/06/20 by ef177

    • 2人が本棚登録しています
      書斎の博物誌―作家のいる風景

      海野 弘

      2.0
      いいね!
      • 【タイトルから想像できる内容から離れすぎているんじゃないでしょうかね?】
         先日レビューした『秘密結社の時代』もそうだったのですが、どうも海野氏の著作の中にはタイトルからかなり離れた内容を詰め込んだ(そのため内容とタイトルが齟齬している)と思われる本が散見されるようです。
         本書もそんな一冊で、タイトルを見て、「さて、書斎に関する本を読もうか」と思っている読者にとっては、「この内容のどこが書斎の博物誌なんだ?」とがっかりしてしまうことが多いのではないかと感じました。

         もちろん、書斎やその周辺について書いているところもあるんです。
         例えば、文豪は自作をどのような環境で書いたのか。
         マルセル・プルーストは、ベッドに仰向けに寝そべって、あまり身体を起こさない姿勢のまま『失われた時を求めて』を書いたのだとか。
         よくもまあ、そんな窮屈な姿勢であの長い作品を書いたものだ。
         そこがプルーストにとっての書斎だったのだろうとは了解できますので、この辺りのエピソードは良いでしょう。

         しかし、第二部の『書斎と旅』に入ると、この内容のどこが書斎なのか?と首を傾げたくなる度合いが高まります。
         パリのポンピドゥーセンターで演じられている大道芸の話、エリザベス女王は民衆の前によく姿を現した女王であり、それは年が女王を迎えるための祝祭であるページェントとも関連していて、そのような女王の姿勢が結局スペインの無敵艦隊を破る一因になったかもしれないという考察、松尾芭蕉の旅とそれはワンダリング・スカラー(放浪学者)と捉えることもできるのではないかという考察……
         このような話が続くのですが、どこが書斎?

         第四部の『作家たち』も同様で、ここはほとんど作家論や代表的な作品論になっています。
         もちろん、書斎は本を読むところでもあるのだから、作家論、作品論のどこが悪いというのか、ということかもしれませんが、タイトルはあくまでも『書斎の博物誌』なのですから、作家を書斎との関連で論じているのならともかく、そうでもない以上、やはりこれはどうだろうと思わざるを得ません。

         その他、文具に関する話題、都市論、映画と文学など、強引に考えればまぁ、書斎と掠らないでもないということなのかもしれませんが、やはり本書のようなタイトルをつけた本にはそぐわない内容であると感じてしまいました。

        本書は、著者がこれまでに様々な媒体に書いてきた文章をまとめた一冊のようですが、重複的な内容の文章もありますし、もう少しタイトルと内容の整合を図った方が読者に誤解を与えなくてよいのではないかと思いました。
         書かれている内容は興味深いものもあるのですが、タイトルで『書斎』と前面に打ち出されてしまっているために、「これは書斎の話じゃないよね~」という残念感の方が強く感じてしまったのです。

         本の内容は悪くはないのですが、著者には2冊続けてタイトルと内容が必ずしも合致していない本を読まされてしまったというのが私の素直な感想なので、その辺りで辛い点になってしまいました(なお、私は著者の本をこれらの他にも読んでおり、ちゃんとタイトルと内容が整合している本もありますので念のため付言します)。


        読了時間メーター
        □□      楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)
        >> 続きを読む

        2021/02/02 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      阿片

      ジャン コクトー

      5.0
      いいね!
      • 写真がないのが残念
        金ぴかの装丁、図書館の書庫から出たときに驚いた
        断片的記憶で
        熟考のすえ絞り出された言葉で
        風のようなふとこぼれ落ちたような言葉
        そしてデッサンの叫び
        思想の混沌に埋もれて息ができないが
        良い
        >> 続きを読む

        2019/12/29 by kotori

    • 1人が本棚登録しています
      クエーカー信仰の本質―創始者ジョージ・フォックスのメッセージ

      ルイス ベンスン

      5.0
      いいね!
      • クエーカーは、名前はよく聞くけれど、いまいちその中身がわからないので、知りたいと思って読んでみたけど、想像以上に過激(?)といえばいいのか、17世紀にできた当時のクエーカーはこんな感じだったのかとちょっと驚きがあった。

        一般的には、クエーカーはプロテスタントやピューリタンの一派のようなイメージがあるけれど、クエーカーの自己認識では全然そうではないことがこの本でよくわかった。
        クエーカーの創始者のジョージ・フォックスは、カトリックとプロテスタントという二つの根をどちらも拒否し、それとは違うものとしてクエーカーを考えていたらしい。
        フォックスは、原始キリスト教の使徒の時代のあと、十七世紀まで、千六百年ぐらいの間、福音は失われており、ずっと「背信」の時代が続いていたという。
        「永遠の福音」(everlasting gospel)、つまり今も働き続けているキリストの働きを感じ、声に耳を傾け、「内なる光」つまり聖霊の導きに従い生きることを説き、当時は急速に何万人もの信徒を得たそうだ。

        フォックスの教えで興味深いのは、カトリックもプロテスタントも、救いと正義が分裂しているという指摘である。
        フォックスによれば、特にプロテスタントやカルヴァン主義に見られる、人間の罪の結果は十字架の贖いにより救われるけれども人間の罪はそのままという説は誤りであり、キリストは救いと正義の両方を人類に伝えたという。
        つまり、キリストは、今も働いて我々に何が正しいか何が悪かを教え続けており、内なる光に従い、正しく生きることにより、徐々に罪を克服し、完全に向かって向上していけるし、そうするのが正しい生き方ということである。
        こうした考えから、当時、ピューリタンたちと激しく論争し続けたそうである。

        以前読んだイクイアーノ自伝では、黒人や奴隷に対しても、クエーカーは非常に人道的で優しく、イクイアーノも彼らこそが本当のキリスト者だったと証言していた。
        まだこの本だけでは十分には私にはわからなかったけれど、クエーカーは非常に興味深い教えだと思う。
        >> 続きを読む

        2014/10/11 by atsushi

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      サー・エドワード・バーン=ジョーンズ

      エドワード バーン・ジョーンズ

      4.0
      いいね!
      • 【ここで問題です。この絵は水彩でしょうか?油彩でしょうか?/大変美麗でロマンティックなバーン=ジョーンズの画集】
         バーン=ジョーンズのことは以前から知っていましたが、過日、『ラファエル前派』を読んで火がついてしまい、そのレビューの際にも書いたとおり、バーン=ジョーンズの画集が欲しくなり、やっぱり本書を買ってしまいました(あ゛~、ぽちっとなしてしまった)。

         バーン=ジョーンズの画集はいくつか出ていますが、画集なのでやはり大きな版のものが良いなぁと考え、本書を選びました。

         本書は、冒頭で著者によるバーン=ジョーンズの生い立ちが掲載され、その後に大判1ページに1作という構成で作品が紹介されています(見開き左ページに作品解説、右ページに作品という構成です)。

         バーン=ジョーンズの作品を改めて通覧して感じたことの一つは、「水彩が水彩らしくなく、油彩が油彩らしくない」ということでした。
         ちょっと乱暴な言い方をすれば、水彩でも油彩でも同じようなタッチに仕上がっているとも言えるかもしれません(収録されている絵だけを見て、水彩か油彩かを当てるのは結構難しいのですよ)。
         作品の中には、水彩と油彩を併用しているものもある位です。

         作品解説でもちょっと触れられていますが、バーン=ジョーンズの水彩画は、水彩ならではの透明感を生かそう(それに頼ろう)とはしておらず、下塗りをし、その上に水彩絵の具を塗り重ねているそうです(その後、アルブレヒト・デューラーの本を読んだのですが、確かに下塗りは重要らしい……こちらの本もいずれレビューさせていただきます)。

         ですから、水彩なのですが(油彩とまでは言いませんが)どこかしっかりとした質感を感じます。
         少なくとも、いかにも水彩、水彩したような絵にはなっていません(下地に滲ませないということなのかもしれないねぇ)。

         逆に油彩の方は油彩らしからぬ透明感や滑らかさを感じるのです。
         『ヴィーナスの鏡』という作品があるのですが、これはヴィーナスや乙女たちが水溜まりに映る自分たちの姿を見ているという絵です。
         この絵の製作途中のものを見たラスキンは、てっきり水彩画だと思い込んだとか。
         特に水に映る乙女たちの姿なんかがそう感じさせたのではないかなぁと想像してしまいました。
         また、滑らかさの方は、そういった効果を出すために平筆を多く使っているそうです。

         また、バーン=ジョーンズの作品に描かれる女性や男性はみんな美形ですよね。
         女性に関しては、ロセッティがモデルに使った女性をやはりモデルにした作品もあるということなので、当然似たような容姿になっているものもあるのですが、バーン=ジョーンズの作品の方が私的には好みに描かれています(でも、このモデルの女性に関しては色々な話があるようで、本書にも彼女の写真が掲載されていますが、さて、これがあの絵になるのだろうか……なるとも思うし、どうだろう?という方もいる?)。

         ロセッティも相当に繊細に女性を描きますが、バーン=ジョーンズはさらにその上を行っているように私には感じられるのです。
         それは、ある種、理想化している肖像と言えばそうなのかもしれませんが、そこがまたラファエル前派らしいと言えばらしい。

         バーン=ジョーンズの作品は、非常に耽美的、ロマンティックに感じ、また、現代のイラストにも通じる様式美のようなものも感じます。
         私は個人的に、騎士などの武具の表現に魅かれるものがあります。
         当たっているかどうか分かりませんが、東逸子さんなんて、バーン=ジョーンズがお好きなんじゃないかなぁと想像してしまいましたし、作品に似ているところがあるように思えました。

         好きな画家の大判画集ですので、大変楽しんで鑑賞することができました。


        読了時間メーター
        □□      楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)
        >> 続きを読む

        2020/10/31 by ef177

    • 1人が本棚登録しています

出版年月 - 1994年4月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本