こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


1995年4月発行の書籍

人気の作品

      パラサイト・イヴ

      瀬名秀明

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね! watawata
      • 第二回日本ホラー小説大賞受賞作の瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」を再読。

        この作品はホラー小説やSF小説のファン層だけにとどまらず、より幅広い読者層にアピールするだけの魅力があったので、ベストセラー小説になったのだと思う。

        特に、バイオ・テクノロジーや臓器移植といった新奇な素材を、実に手際よく、理科系の人間だけに限らず、文科系の人間にも分かりやすい形で盛り込み、ホラーの本筋とは別のところで読む者の知的好奇心を刺激するあたり、著者のしたたかな計算とホラー小説というジャンルへの造詣の深さをうかがわせますね。

        明晰かつ沈着な語り口も、実にうまいと思いますね。
        しかも、そうした用意周到さで設定された舞台で展開される物語たるや、人の体内のミトコンドリアが知性を持ち、人間と交配することによって最終進化を画策し、人類打倒の野望に燃える-----。

        このように、パルプ・マガジン時代の怪作SFホラーを彷彿とさせるような、人を喰ったものなのだから、まったくもって嬉しくなってしまいます。

        とりわけ後半のミトコンドリア=Eve 1(このイヴちゃん、人類を上回る知性体というわりには、結構オマヌケで愛嬌がある)が、実験室を飛び出してからの展開は、それまでのお行儀のよいSFタッチをかなぐり捨てて、エログロ怪物ホラーの粘液魔界へとなだれ込んで、まさに圧巻だ。
        >> 続きを読む

        2018/09/06 by dreamer

      • コメント 3件
    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      そして夜は甦る

      原尞

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!

      • 西新宿で開業する私立探偵・沢崎は、海部と名乗る謎の男の訪問を受け、ルポ・ライターの佐伯直樹について聞かれるが、心当たりはなかった。

        依頼料を置いて男が去った後、美術評論家で東神グループの前相談役の更科修蔵から、佐伯の居所を捜して欲しいとの依頼がくる。
        佐伯は、更科の娘婿で、沢崎の連絡先のメモを残したきり、前日から行方不明だというのだ。

        佐伯のマンションに向かった沢崎は、そこで八王子警察署の刑事の死体を発見する。
        失踪前の言動から、佐伯が東神グループと縁の深い新都知事・向坂晨哉を中傷した怪文書事件と、選挙演説中の狙撃事件を調べていたことが判明し、海部と名乗る人物がどうやら事件の鍵を握っているらしいのだ。

        姿を消した二人の男の足取りを追う沢崎の前に、やがて、様々な思惑が絡んだ熾烈な陰謀劇の構図が浮かび上がってくる。

        レイモンド・チャンドラーに限りなきオマージュを捧げた、原尞の「そして夜は甦る」は、正統ハードボイルド・シリーズの第1作目の作品だ。

        主人公の沢崎の造形はもちろん、脇役陣の配置もツボを押さえ、このデビュー作からして、すでに完成した風格を持っていると思う。

        その一方で、当時の冒険小説ブームからは一定の距離を置き、突出した「先祖返り」性を示しながら、レイモンド・チャンドラーの本歌取りに徹したマニアックな著者のスタンスは、先行のハードボイルド小説のフレームをなぞることによって、自己の作品世界を重層的に構築する「新本格」のそれと、同時代的なミステリ観を共有している側面もあると思う。

        この「そして夜は甦る」の特色は、隠された真相を追う主体が、三重に設定され、その解明をバトンタッチしていくメタ化の過程で、事件の構図が変形し、より込み入った謎を生じていくところにあると思う。

        黒幕捜しのフーダニットにトリッキーな逆転を仕掛け、緻密に練り込んだプロットは、ロス・マクドナルドの初期の作品を思わせ、理路整然とした沢崎の謎解きは、本格物の大団円で名探偵が披露する、推理の予定調和的なカタルシスに近いと思う。

        そうした印象を受けるのは、パズラー顔負けの巧妙な伏線と、ハタと膝を打つ、切れのいい推理が物語のツボを押さえているからだと思う。

        >> 続きを読む

        2019/05/16 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      この国のかたち

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      3.5
      いいね!
      • 歴史のトピックが幅広く語られているので、読み手としては当然興味深いものとそうでないものがあるのだが、一章は短いし、司馬さんの考察が面白かったりするから飽きずに読める。

        でも三巻まで読んで、文庫より毎月「文藝春秋」で読みたかったなぁと思った。
        文庫本でまとまっているとサラッと読め過ぎて、一冊読み終わった頃には半分くらい忘れちゃうのがもったいないと。

        だからと言ってもう一度読むことは多分ないのだが。
        >> 続きを読む

        2014/02/08 by freaks004

      • コメント 3件
    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      長崎の鐘

      永井隆

      サンパウロ(聖パウロ修道会)
      4.5
      いいね!
      • 歌は耳にしたことがあったのに原作は読んだことがなかった。

        終戦目前の八月九日午前十一時二分。人類二発目となる原子爆弾が長崎に投下された。

        終戦の象徴として何度も流されるキノコ雲の映像は見慣れたが、雲の中で何が起きていたのかを想像する力をなくしていたことを、70年経ったいまこの本が教えてくれた。

        爆心地からわずか七百メートルの長崎医科大学(現長崎大学医学部)で助教授を務めていた医学博士・永井隆氏が重傷を負いながらも、生き残った医師や看護スタッフたちとともに救護活動を行なった壮絶な体験を克明に記した手記だ。

        突然「ぴかり」と閃いた静かな閃光に人々は一瞬「?」と静止。その直後、辺りは夕暮れのような闇に包まれる。

        雲の中に発生した強烈なエネルギーは、一瞬に人も建物も、自然も圧し潰し、吹き飛ばす。いったい何が起きたのか?「太陽が爆発したのでは?」と驚愕する未曾有の恐怖が、その後も人々を容赦なく襲い続ける。

        雲の中にできた真空は、全てを上空に吸い上げ、投下。高熱がすべてを焼き尽くし、空からは火の玉が降りそそぎ、大地は灼熱地獄と化した。

        パニックを起こす間もない殺傷力と熱傷力を持つ原子爆弾の破壊力。大粒の黒い雨、投下後米軍機がばらまいたビラ。

        救護にあたりながら、じわじわと人々の身体を蝕む放射能の被爆症状も医師の目で記録、観察を続け、混乱の中でいち早く有効な治療法も実践している。

        屍しかない絶望の「原子の野」に生き残った人々の地獄のような苦しみが時間軸にそって、目をつむりたくなるほど鮮明に描かれている。

        終盤で博士として、書き残した原子力の平和利用への想いや、浦上天主堂に投下された奇遇に関する著者の見解も現代とつながるミステリアスに感じた。

        著者は闘病の中、精力的に執筆活動を行い、被爆6年後に白血病で他界している。
         
        ひと夏を謳歌するようにひびく蝉の合唱を聞きながら、

        見慣れたキノコ雲は、終戦の象徴ではなく、大地に存在する生命を根こそぎ消滅させるために利用した大量殺戮兵器と再認識したいと思った。




        >> 続きを読む

        2015/08/15 by まきたろう

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      藤村詩抄 島崎藤村自選

      島崎藤村

      岩波書店
      カテゴリー:詩歌
      5.0
      いいね!
      • 高校生の頃、というから、もう早いもので、十数年以上前、藤村の詩を読んで、ところどころとても好きだったことがある。

        とはいえ、長い間読んでなかったので、好きな詩のタイトルすら忘れていた。

        今日、ふと読みたくなり、この『藤村詩抄』を読んでいたら、「林の歌」というタイトルの詩だったとわかった。

        わりと長い詩なのだけれど、その中の一部分。

          「山精

          ひとにしられぬ
          たのしみの
          ふかきはやしを
          たれかしる

          ひとにしられぬ
          はるのひの
          かすみのおくを
          たれかしる

           木精

          はなのむらさき
          はのみどり
          うらわかぐさの
          のべのいと

          たくみをつくす
          大機(おおはた)の
          梭(おさ)のはやしに
          きたれかし

           山精

          かのもえいづる
          くさをふみ
          かのわきいづる
          みづをのみ

          かのあたらしき
          はなにゑひ
          はるのおもひの
          なからずや

           木精

          ふるきころもを
          ぬぎすてて
          はるのかすみを
          まとへかし

          なくうぐひすの
          ねにいでて
          ふかきはやしに
          うたへかし」


        なんだか、大和言葉で、音もリズミカルで楽しく、良い詩だとあらためて思う。

        その他、「白磁花瓶賦」や「門田にいでて」「めぐり逢う君やいくたび」「ああさなり君のごとくに」「ふと目はさめぬ」などの詩の数々は、すばらしいと思った。

        最近、疲れて、心も枯れ果てた気がしていたが、そんな時に、林の奥の清らかな小川のように、藤村の詩は人に優しさや雅やかな心を取り戻させてくれると思う。

        また、時折、繰り返し読みたいものだと思う。
        >> 続きを読む

        2013/07/12 by atsushi

      • コメント 4件
    • 1人が本棚登録しています
      狂骨の夢

      京極夏彦

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • この「狂骨の夢」は、「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」に続く、京極夏彦の"京極堂シリーズ"の第3作目の作品ですが、とにかく京極夏彦という作家は、他の作家と比較する事が出来ない、超絶的な異能の持ち主で、現代の混沌とした国内ミステリーの世界において、その中から飛び出して来た"最強の作家"だと思います。

        彼の小説は、本格ミステリーとしての緻密な構成力は、余人の追随を許さないほどの凄さだが、"京極堂シリーズ"に関して言えば、レギュラーのキャラクターたちの魅力的な人物の造型、文章での表現力、また、民俗学、宗教学、フェミニズムなど多岐に渡る圧倒的な情報量の凄さなど、様々な角度から我々読者を楽しませてくれる、エンターテインメントとしての重層性だろうと思います。

        そして、必ずページの最終行で文章を終わらせるなどのこだわりも、彼の大きな個性だろうと思うのです。とにかく、京極夏彦という作家は、知れば知るほど、興味の尽きない作家です。

        「姑獲鳥の夏」が密室殺人、「魍魎の匣」がサイバーパンク風、と進んで来て、この「狂骨の夢」はサイコ・ミステリーと言えるかも知れない。

        しかし、この作品も前2作と同様に、あまりに様々な雑多の要素を力づくで詰め込んで、怒涛のように押しまくってくるスタイルは、更に狂的な要素を帯びてきていると思います。

        "京極堂シリーズ"に毎回、出現する妖怪たち。その出典は「百物語」。今回は「狂骨」です。井戸の中から出る白骨のお化けです。イラストを見ると、手拭いの先にドクロがついたみたいな愛嬌のある奴だ。

        昔、夏の風物詩で、縁台に座って毎晩、化け物の話をしてくれるお年寄りがいたそうだが、きっと作者の京極夏彦は、このお年寄りのような"現代の語り部"なのだろう。

        とっかえひっかえ奇怪な話を聞かせてくれて、そして一向に喋りやめない。そして、話のタネが無尽蔵のようで飽きさせない----。

        時代は、昭和27年。博覧強記の陰陽師で古本屋の京極堂こと中禅寺秋彦を探偵役として、鬱病気味の小説家・関口巽、他人には視えないものが視える私立探偵の榎木津礼二郎、刑事の木場修太郎が絡んできて、今回は、記憶が過剰に溢れてしまった女と、首なしの殺人事件を巡って展開していきます。

        謎解きの部分に至っても、"伝奇小説的要素"が自己増殖してきて、小説自体が肥大していくような感じがしてくるのです。

        フロイトとユングの論争から、密教の秘儀、熊沢天皇の史実まで、京極夏彦の妖しい筆は、何もかも大風呂敷に包み込もうとするかのようだ。

        この作品の中での好きなセリフ。「宗教は信じられているうちは何も問題はないのだ。信じていたものが壊れてしまった時が怖い」----。
        >> 続きを読む

        2016/12/07 by dreamer

    • 5人が本棚登録しています
      源氏たまゆら (講談社文庫)

      田辺 聖子

      4.0
      いいね!
      • 何度目かの再読。
        『源氏物語』を光源氏と薫の視点から描いた絵物語。第一章では光源氏が自らの女性遍歴と栄枯盛衰を「おれ」という一人称で、第二章では薫がはかない愛を一人称「ぼく」で語る。

        『源氏物語』の原書はおろか、いくつかある現代語訳さえも読んだことがないというのに、その物語のあらましを知ることができたのは本書のおかげである。それほどエッセンスが凝縮されている。しかも、おもしろい。『源氏物語』を知り尽くした田辺氏ならではの語りで、光源氏と薫の心理がよくわかる。第一章と第二章で語り口が変わることで、二人の性格の違いが浮き彫りになる。

        加えてすばらしいのは、千代紙を思わせる華麗な絵である。絵師さんは岡田嘉夫氏で、ほとんどすべてのページになにかしら描かれ、絵と絵の間に文章が綴られた豪華な絵物語になっている。個人的に好みの絵なので、しばしば見とれながら読み終えた。

        >> 続きを読む

        2017/11/10 by Kira

    • 3人が本棚登録しています
      スクールバスは渋滞中

      赤川次郎

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      1.0
      いいね!
      • 【読了日不明】

        ご存知、南条家の双子姉妹。
        外見は瓜ふたつ、ライフ・スタイルと性格は正反対。
        姉の麗子は純粋培養型箱入り奥さま。妹の美知は「暗黒通り」の女ボス。
        4歳になった麗子の娘サッちゃんが通う名門幼稚園のスクールバスに爆弾がしかけられた。
        裏で糸を引くのは学園の土地乗っ取りを企む悪いヤツ。
        南条家のプリンセスの無事救出をめぐって一家が大活躍する、シリーズ第三弾。
        >> 続きを読む

        2013/12/12 by books

    • 2人が本棚登録しています
      るろうに剣心 - 明治剣客浪漫譚 - 巻之四 二つの結末

      和月伸宏

      集英社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • るろうに剣心 第4/28巻

        四乃森蒼紫率いる御庭番衆との決戦。

        期待に応える四乃森蒼紫。これで一気にストーリーに深みが出たように思う。

        幕末が終わり、廃刀令が発布されたことで、「侍商法」という言葉も示す通り、それまで剣で生計を立てていた武士達が路頭に迷ったのは想像に難くない。

        そんな中でもいわゆる剣術バカに至っては、生きていく術が無い状態に追い込まれたのではないかと思われる。

        御庭番衆という、裏の世界でのみ力を発揮できるような、際立った個性を束ねる組織長で有った四乃森蒼紫の苦慮には共感するものの、物語としては面白いが、結局は裏の仕事を探し続けることに道を求めた点については賛同できない。

        世の中の流れを個人の力で変えることはできないものの、情勢を見て、流れに沿うような努力を続けていれば、ある日突然食いっぱぐれるような事態は十分回避できるように思う。

        現状が、今後もずっと続くと考えること自体が甘え、もしくは驕りで有るように感じる。
        変化を前提として、可能な限り未来を予測し、そこに向かって今できること、やるべきことを選択することの重要性は、現代のビジネス社会でも全く同じでは無かろうか。

        とは言え、架空の世界のお話。

        現実ではどんな剣豪でも、ガトリングガンには歯が立たないとは思うものの、何かしらの奥義を使って、対等に渡り合うようなシーンが見たかった。

        一段強くなって再登場する四乃森蒼紫が待ち遠しい。
        >> 続きを読む

        2012/09/11 by ice

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      働きざかりの心理学

      河合隼雄

      新潮社
      カテゴリー:発達心理学
      5.0
      いいね!
      •  本書の初出は昭和56年ということだから、1981年。私は7歳。高度経済成長で豊かになった日本人のあり方が、かつてのあり方から変更を迫られているという時代を背景としている。親の世代はたくさんの兄弟に囲まれ、親は仕事や家事に忙しく、一人一人のこどもに構う時間がなかった。貧しく苦労して育った親世代は、自分の子どもには苦労はさせまいと多くのモノを与え、要求を満たし、快適な生活を提供してきた。それなのに子どもが不登校になったり非行に走ったり、理解できないことが頻発しているという現象が起こり始めた時代である。著者はこのような時代には、「出来ることをしない愛」が必要だと説く。そしてそれは出来ることをするよりも多くの心のエネルギーを使うのだと。このようなことは長谷川博一氏も指摘している。しつけはしないと思って今の時代はちょうどよいと。

         本書は「働きざかりの心理学」「働きざかりの親子学」「働きざかりの夫婦学」「働きざかりの若者学」「働きざかりの社会学」の5章に渡っている。「働きざかりの」とあるとおり、話題の中心は中年世代である。子どもの問題、高齢化の問題、思春期の問題は語られるようになってきたが、社会の中核を担う中年に関する研究は極めて少ないと筆者は指摘する。

         会社での人間関係、昇進、評価、劣等感、夫婦の関係、子どもとの関係、中年が背負う課題は多い。しかもそれが前時代を参考にできないというのが苦しいところだ。それぞれのテーマに関して、筆者のカウンセラーとして経験した豊富な事例を引用しながら、具体的に解き明かしていく。自分のことに当てはめて指針とするべき金言があちこちに転がっている。生身の人間に接し続けた人の言葉は重い。「こう生きるべきだ」というような啓発本は数多くあるが、本書はいわゆる「答え」を呈示しない。生きるということはどういうことかを考える上での、ちょっと違った視点を与えてくれる本である。

         3・11を経験して、いよいよ西欧的な文明の行き詰まりを感じている現在、ふり返りにはちょうど良い時期なのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2012/10/23 by nekotaka

      • コメント 5件
    • 1人が本棚登録しています
      そこに僕はいた

      辻仁成

      新潮社
      4.0
      いいね!
      • 青春エッセイは大抵どんな人のものも面白い。
        みんな馬鹿だからね。

        子供の頃って、もっと変な子達が多かった気がする。
        原色で、ばらばらで、感情剥き出しで、自分勝手で、喧嘩も絶えないけれど、面白い。

        歳をとると、本来の色の上に他の色を重ねて、自分を偽っていく。
        その色で見られた方が都合がいいから。
        さらに、他の人の色と混ざりあって、見分けがつかなくなっていく。
        悪いことではない。
        それが成長だと思う。
        重ねた色を剥がしていけば、みんな子供の頃の鮮やかな色が出てくるはずだ。

        たまに、ずっと原色な奴もいる。
        そういう人には、出来ればこれからも同じ色でいて欲しい。

        以上、この本の感想。
        >> 続きを読む

        2011/08/25 by Iris

      • コメント 1件
    • 3人が本棚登録しています
      西行花伝

      辻 邦生

      5.0
      いいね!
      • 花の季節に、長い間気になっていた、西行墳のある弘川寺を訪ねようと思っていた。今年になって梅を見に鳥羽の城南宮を尋ねた帰り、桜の季節までに評伝を読んでおこうと思いたって、辻邦生著のこの本を選んだ。

        佐藤義清(西行)は 藤原鎌足を祖とする裕福な領主の家に生まれたが、母の願いで官職を得るために京都に出た。
        馬術、弓道、蹴鞠、貴族社会の中で身につけなくてはならないものは寝食を惜しんでその道を極めた。
        流鏑馬では一矢も外さない腕を見せ、蹴鞠は高く蹴り上げた鞠を足でぴたりと止めて見せた。
        当時の社会で歌の会に連なることも立身出世の道だった。武芸が認められて鳥羽院の北面の武士になり、歌の道でも知られてきた。

        鳥羽上皇の寵愛を失った待賢門院を慕ったことや、突然従兄の憲康を亡くし、その失意から出家したといわれてはいるが、辻邦生著の「西行花伝」は著者の想像力と、残る史実を基にした壮大な芸術論で、西行が歌の中で見出した世界が、語りつくされている。
        そんな中で出家の動機がなんであろうと、その後、この世を浮世と見て、自然の移り変わりを過ぎ行くものとして受け止める心境を抱く切っ掛けが、出家ということだった。

        「惜しむとて 惜しまれぬべき此の世かな身を捨ててこそ身をも助けめ」

        引用ーーー人間の性には、どこか可愛いところがある。そうした性の自然らしさを大切に生きることが歌の心を生きることでもある。肩肘張って生きることなど、歌とは関係がないーーー

        「はかなくて過ぎにしかたを思ふにも今もさこそは朝顔の露」

        時代は院政から武家に政がうつっていき、保元・平治の乱が起き、地方領主は領地境で争っていた。
        西行は、待賢門院の子、崇徳帝の乱を鎮めるために力を尽くし、高野山に寺院を建立し、東大寺再建の勧進行のために遠く陸奥の藤原秀衡を訪ねたのは70歳の時だった。

        「年たけてまた越ゆべしと思ひきやいのちなりけり小夜の中山」

        こうして出家したとはいえ時代の流れに関わり続けながら、それを現世の姿に捕らえ、歌は広く宇宙の心にあるとして、四季の移り変わり、人の世の儚さを越えた者になっていった。森羅万象のなかで、花や月を愛で、草庵を吹く風の音を聴いて歌を読み人の世も定まったものではないと思い定めた。
        そうした西行の人生を、辻邦生という作家の筆を通して静にすがすがしく感じ取ることが出来た。

        「仏には桜の花をたてまつれわが後の世を人とぶらはば」


        「なげけとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな 」(百人一首86番)



        「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」 

        と詠んだ時期、春桜が満開の時に900年の後西行墳を訪れ、遠い平安・鎌倉の時代の境に生きた人の心が少し実感になって感じられた。
        >> 続きを読む

        2015/04/25 by 空耳よ

      • コメント 5件
    • 1人が本棚登録しています
      社会学講義―人と社会の学 (中公新書)

      富永 健一

      4.0
      いいね!
      •  教科書。カッチリとした構成が素晴らしかった。

        2015/04/28 by huisclos

    • 1人が本棚登録しています
      残像に口紅を

      筒井康隆

      中央公論新社
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! ooitee
      • 究極の実験小説と書かれていたが、その言葉に嘘偽りなし。
        言葉が一つずつ消えていくと同時に、自分の周りにある物も失われていく。

        進んでいくと同時に使える文字が限られていく。
        ここらへんは作家の腕の見せ所であり、出てくる人物たちも言葉の語彙力が試される。

        例えば目という文字がなくなった場合、瞼という単語に置き換えて使うという方法。
        言葉の豊かさと同時に、いかに言葉が重要なのかを痛感させてくれる。

        筒井さんのようなベテラン作家がこういう挑戦に意欲的なことは驚く。
        一回限りという意味でも中々の出来。
        >> 続きを読む

        2018/12/15 by オーウェン

    • 13人が本棚登録しています
      今昔物語

      水木しげる

      中央公論新社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.0
      いいね!
      • 『今昔物語』を水木しげるが漫画化したもの。

        今も昔も、日本人ってのは、色欲と迷信に満ちていたんだなぁと、半ば呆れ果てながらも笑える、面白い漫画だった。

        おかしいやら、見苦しいやら、なんといえばいいのだろう。

        いつの世も、人間というのは、このようにおかしく、見苦しく、滑稽な、愛すべきものなのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2014/02/19 by atsushi

      • コメント 5件
    • 2人が本棚登録しています
      遥かなり神々の座

      谷甲州

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • 谷甲州の「遥かなり神々の座」は、ヒマラヤを舞台にした迫真の登攀シーンが描かれるとともに、ゲリラによる武装闘争が絡む活劇としての面白さが加わった、本格的な山岳冒険小説の傑作だ。

        主人公の滝沢育夫は、技術、体力ともに優れた登山家だった。
        にもかかわらず、山仲間からは「死神」というあだ名をつけられていた。
        なぜなら、彼が遠征に行くと必ず誰かが死ぬからだ。

        そんな滝沢のもとへ、新たな計画をもちかける男がいた。マナスル遠征の隊長になって欲しいというのだ。
        滝沢は、弱みをつきつけられ、引き受けざるを得なかった。

        こうして、正体不明の一行を引き連れ、カトマンドゥの街をあとにしたのだが-------。

        山岳小説にとって、まず登山のシーンの描写が命だろう。
        険しい雪壁、激しい強風などの自然描写と、そのあまりに過酷な状況に立ち向かう人間の生々しい皮膚感覚や精神状態が、克明に描かれていなくては、何の意味もない。

        その点、この作品は登山経験のない者ですら興奮するほどの迫力に満ちている。
        また人間ドラマも含め、辺境を舞台の見事な冒険小説になっていると思う。

        この謎めいた遠征は、やがて意外な展開から凄まじい逃避行へと変化していく。
        そして、中盤からは、まったく読む手を休めることができない。

        >> 続きを読む

        2018/11/03 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      海がきこえる

      氷室冴子

      徳間書店
      4.0
      いいね!
      • 再読2回目。「海がきこえる」の続編。これも以前文庫版を持っていたが、図書館に単行本があったので借りて読んだ。こんなモテモテな学生生活送ってみたかったわ。いいなあ。(女性に振り回されたいという意味ではありません。)。あと、高知から帰ってから里伽子が拓のことを「杜崎くん」から「拓」と名前で読むようになったことも、二人の仲の進展が感じられてよいなと思います。劇中、ある程度の対立も経て、これからもケンカはするだろうけど、拓と里伽子も恋人同士という感じになっていくのかなと思います。感想はこんなところです。
        >> 続きを読む

        2017/09/25 by おにけん

    • 1人が本棚登録しています
      八月六日上々天気

      長野 まゆみ

      4.0
      いいね!
      • 八月六日。
        毎年、この日が近くなると考えてしまう。
        十五日ではなく、やはり六日。
        九日も同じだ。

        そんな六日の朝は、いい天気だったとか、どこかで耳にした記憶がある。
        そんな朝までの、数年間の物語が、淡々と、そして、どこか古風な文章で綴られる物語。

        読み進めながら、その日に近づいていくに従い、切なさも色濃くなってくる。
        この季節だけでなく、常日頃から考えるべきことであるのだが、なかなかそれができない。

        明日がある、そんな国にしたいと思う。
        >> 続きを読む

        2015/08/15 by けんとまん

    • 2人が本棚登録しています
      妖伝・三国志―諸葛孔明の正体とは!? (カッパ・ノベルス)

      辻 真先

      5.0
      いいね!
      • 狙われた孔明
        ある男の死が引き込む
        異色の活劇ファンタジーアクション
        孔明の命運はいかに !?

        オリジナルキャラに溢れた
        物語は三国志と平行に進んでいく。
        >> 続きを読む

        2015/08/25 by トマズン

    • 1人が本棚登録しています
      まっ黒なおべんとう 絵本

      長沢靖 , 児玉辰春

      新日本出版社
      4.0
      いいね!
      • 朝、お弁当をよろこんで楽しみに持って、出かけて行った息子。

        広島の原爆で、戻ってこなかった。

        母は、必死に街を探すが、白骨の死体ばかり。

        どれが息子なのかわからないが、どうも呼んでいる気がする白骨があり、いったんは結局わからないと思って立ち去りかけるが、もう一度戻ってよく探してみると、あの朝、持っていった弁当箱が、中が黒く焼け焦げてそこにあった。

        あまりに悲しい、哀れな物語だが、この弁当箱の背景にある思いを、決して後世のものは忘れてはならないのだと思う。
        >> 続きを読む

        2013/05/14 by atsushi

      • コメント 5件
    • 1人が本棚登録しています

出版年月 - 1995年4月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本