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1995年5月発行の書籍

人気の作品

      動物農場

      ジョージ・オーウェルGeorge Orwell

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 概要
        ジョージ・オーウェルの出世作である『動物農場』を文庫化したもの。「動物農場」本編に加えて「象を射つ」「絞首刑」の3作も掲載されている。今回は「動物農場」を読むことが目的だったため、他の3編は読んでいない。解説は訳者の高畠文夫のものに加え、芥川賞作家の開高健の解説「24金の率直 ジョージ・オーウェル瞥見」が収録されている。

        評価
        今回4つ星と高評価にしたのは解説によるところが大きい。芥川賞作家の開高健は解説の中で「動物農場」をソ連の人物だけでなく、ナチスドイツの人物に当てはめて読む方法を提案している。「動物農場」はスターリンによる独裁期のソ連を風刺した寓話であることは有名であるが、寓話であるからこそ読者によって違った見方ができる。これこそが「動物農場」が長年読み告がれている理由ではないだろうか?本編訳もやさしく書かれており一日で読め、オーウェルの入門としては申し分ないだろう。

        感想
        注目すべき点はオーウェルが社会主義者であったという点だと思う。社会主義者が社会主義国を批判するというのは一見不可解であるが、私はオーウェルはあくまで自由主義社会主義者であったというのがポイントではないかと思う。オーウェルが風刺したかったのは社会主義そのものではなく、社会主義の振りをし国民を隷従させる全体主義・独裁政治を批判したかったのだろう。
        翻って、今、日本の隣では社会主義国である中国が力を強め、さらに中国国内では習近平国家主席が独裁を強めている。いまこそ「動物農場」を読み直すときだと思う。
        >> 続きを読む

        2018/02/05 by sizuokajin

    • 他3人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      不連続殺人事件

      坂口安吾

      双葉社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 坂口安吾の「不連続殺人事件」を読了。これがおそらく四度目ぐらいの再読だ。

        やはり、この小説は、まさしく傑作としか言いようがない。
        パズルやゲームとしての本格探偵小説を愛した坂口安吾は、読むだけではおさまらず、この作品をはじめとして、いくつかの探偵小説を残しているが、やはりその中にあっても「不連続殺人事件」は、別格だ。

        山中深くで酒造業を営む歌川家。
        その跡取り息子にして、詩人の歌川一馬が、ある時、東京を訪れ、私(友人の作家・矢代)に、一夏をこちらで過ごさないかと声をかけてきた。

        もともと歌川家には、疎開だったり、何かと親交のある者が集まってはいたが、それに応じられない理由が私にはあった。
        私の妻・京子は、もともと一馬の父・多聞の妾であり、それを強奪する形で結婚していたからだ。

        しかし、数日後、一馬から犯罪を予期させるような不吉な手紙が届き、止むを得ず私は京子、そして素人探偵として仲間内で知られる巨勢博士を伴い、歌川家を訪れる。

        だが、そこに集まっていたのは、日頃からトラブルの種を播いてばかりいるような、素行不良の文人画人の面々。
        果たして、悲劇の幕が開くのだった-------。

        読めば読むほど、面白くなる探偵小説もそうそうないが、この作品は、その数少ない例外中の例外だ。

        初めて読んだ時こそ、登場人物たちの多さと、彼らの言動の破天荒さ・淫猥さに辟易したものだが、読むたびにその真価がわかり、凄い作品であることを実感できるのだ。

        だいたい、今挙げた登場人物云々にしても、それ自体がまさしく安吾の狙いであったのに、そこを汲み取れないこちらの甘さ、加えて、それを楽しめない人生経験の未熟さがあった。

        何より凄いのは、安吾があくまで謎解きゲームとして、この作品を書き、犯人当ての懸賞までやっている作品だというのに、ゲームゲームしたところがなく、むしろ、そういうところを超越した、愛憎邪淫のドラマとしての面白さを持っているところだろう。

        それなのに、最後にはきっちり本格探偵小説として、全てをクリアにさせる。
        まさにオールタイムベストテン級の傑作なのだ。

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        2021/06/04 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      時計館の殺人

      綾辻行人

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!

      • 綾辻行人の「館シリーズ」5作目の「時計館の殺人」を読了。
        この作品は、オーソドックスな本格謎解きミステリで、安心して読む事ができました。

        今回は、シリーズ1作目の「十角館の殺人」の続篇とも言える、"陸の孤島"の惨劇が描かれている。
        この"陸の孤島"というのは、舞台となる鎌倉郊外の「時計屋敷」の旧館のこと。

        この屋敷の周辺に、少女の幽霊が徘徊するという噂を聞きつけた、オカルト雑誌の編集部が、そこで交霊会を催すべく、霊能者やオカルトマニアの学生たちを集め、この旧館に閉じ籠るが、その密室ならぬ蜜館で、次々とメンバーが惨殺されていくというのが、この作品の趣向だ。

        問題の時計館の内部構造が、凝りに凝っているのはいつも通りで、旧館の内で惨劇が、外で推理作家の鹿谷門実こと名探偵・島田潔の活動が描かれていくのも「十角館の殺人」を髣髴とさせるが、さすがに5作目ともなると、からくり趣味を交えた謎解き趣向も、堂に入ったものだ。

        今回は、それに加えて著者好みのスプラッタ趣向というか、「サイコ」的なホラー趣向も随所で発揮されており、最終章の衝撃の真相解明まで一気に読ませてくれる。

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        2019/06/25 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      螺子式少年

      長野まゆみ

      河出書房新社
      5.0
      いいね! panda1130
      • 夏至が近づくと読みたくなるのが長野まゆみ。
        名作『テレヴィジョン・シティ』が最近新装丁で出ましたが、一目で長野さんとわかる長瀬典子さん挿画に慣れている私です。

        久しぶりに読みたくなった長野まゆみですが、とりあえずブックオフに行って、108円の棚で昔読んだなぁと懐かしがりながら手に取ったのがこれです。しかし読み返してびっくりしました。初めて読んだのは中学か高校か、それくらいでしたが、これ、ものすごい名作です。読み返してよかった。

        長野まゆみといえば、少年たちが出てきて、なんだかBLっぽくて、あの独特の耽美派っぽい世界観に慣れない人もいるようです。しかしあえていいますが、これらはみんな長野ワールドにいざなうための装置にすぎません。漢字に片仮名のフリガナも、会話文の末尾を「、」でくくるのも、女はすべて「大人の女」や「母親」であり、少女が一切出てこないのも、あの長野ワールドの異世界に連れて行くための舞台装置なのだと思っています。そしてうまく波に乗って世界観に身を沈めることができたとき、その世界に魅了されることでしょう。
        その世界はジャンル分けするなら耽美派ですが、ただの耽美ではないですよ。長野まゆみはそれで終わらせはしません。

        今読み終わったばかりなので大分興奮しながらこの文章を書いているので、ちょっと読みにくいと思いますがすみません。

        この『螺子式少年(レプリカ・キット)』のすごさを私は今すぐにうまくまとめることができないのですが、たとえば家族が外見そっくりな人形にすり替わったとして、すり替わったことにあなたが気づかないのであれば、生身でも人形でも構わないだろうか?すり替わったと気づくまであなたはその彼を彼自身として認識しているはず。それって「ほんとうは人形」であることをわざわざ知る必要もないのでは?
        あるいはたとえば、長い間会わずにいた親しい人と久しぶりに再会した時、本当にその相手が「長い間会わずにいた親しい人」そのものだということを、私たちはどうやって判断するのだろうか?そもそも判別できるのか?仮に違う人だったとして、「長い間会わずにいた親しい人」の訳をその偽物が全うしてくれるなら、本人であるかどうかが一体どれだけ重要なのか?
        レプリカでない生身の人を「オリジナル」と呼ぶとします。しかし自分をオリジナルだと思っているのは複製されたレプリカの意識かもしれません。自分がオリジナルであること、あるいはレプリカであることは重要なのか?まぁ見分けがつかないくらい同じ外見をしていたら、言った言わないでややこしいことになりそうではありますが。

        連想したのは、映画『ブレードランナー』と、谷山浩子の曲「そっくり人形展覧会」です。





        ここから、話の結末に触れる点を話します。未読の方はご注意ください。




        ラストで葡萄丸のレプリカが家にやってくる訳ですが、じゃあ本人はどこに行っちゃったの?という恐ろしさもあります。<夜警>はレプリカを回収しているのか?オリジナルを回収しているのか?手話の部分から回収しているのはレプリカっぽいが、そうなると<夜警>は反レプリカ派なのだろうか。ではレプリカらしき父親と出かけた葡萄丸がレプリカとして帰ってきたのは、リカライト社はレプリカで世界を回そうとしているんだろうか。オリジナルが足りなくなっているのかも。
        などと考えればきりがない楽しさ。
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        2016/05/15 by ワルツ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      猫町 他十七篇 (岩波文庫)

      萩原 朔太郎

      3.0
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      • 【図書館、文庫本】以前読んだ作品の中に『猫町』が紹介されたことがきっかけ。最初の小説3つは不思議なことがおきています。続きが気になる作品です。 >> 続きを読む

        2014/09/14 by おれんじ

      • コメント 1件
    • 2人が本棚登録しています
      あしたからは名探偵

      杉山亮 , 中川大輔

      偕成社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • かめのコーラ水でうすめただけ、おいしくなさそう・・・。

        2016/12/26 by Na-chan

    • 4人が本棚登録しています
      総員玉砕せよ!

      水木しげる

      講談社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.5
      いいね!
      • 水木氏の実体験を基にした長編の戦記マンガです。

        「自分の死ぬ場所を得たい」という将校の面子を保つために、水木氏の隊は玉砕を決行します。上陸してきた敵めがけて突撃をしますが、生き残る人もいました。

        その生き残った人たちには、「敵前逃亡」ということで上官から自決や再突撃が命ぜられます。「玉砕命令」という命令が出た以上、生き残ってはいけないという理由です。

        内容の90%は事実と言うことです。軍隊とはなんと理不尽なことが多いのだろうと思いました。
        >> 続きを読む

        2012/08/20 by montitti

      • コメント 3件
    • 5人が本棚登録しています
      学校の怪談

      岡崎弘明

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 夏休み前日――終業式の日、数人の小学生たちが旧校舎にとじこめられる。彼らは無事に脱出できるのか。

        去年のナツイチで買ったものの積読になっていた1冊。
        ようやく読めました。
        20年くらい前の映画のノベライズです。ちなみに映画版は見てません。

        それなりには面白いんですが、ホラーとしても青春小説としても何か足りない印象を受けました。
        ドキドキもワクワクもあまりしないまま1時間程度で読み終わってしまいました。

        集英社文庫から発売されてますが、集英社みらい文庫から発売した方が無難なんじゃ?と思う話でした。
        多分、私が映画を見ていないからそう思うんだろうな、と。映画を見た人ならもっと楽しめるのでは?と思います。

        【http://futekikansou.blog.shinobi.jp/Entry/1744/】
        に感想をアップしています。
        >> 続きを読む

        2014/08/23 by hrg_knm

      • コメント 3件
    • 1人が本棚登録しています
      真っ白でいるよりも

      谷川 俊太郎

      5.0
      いいね!
      • やはり、谷川さんは凄い。
        谷川さんは谷川さん以外のものではなく、誰も谷川さんにはなれない。
        ここまでストレートな表現ができるのかというものがたくさんある。
        単にストレートなばかりでなく、いろんな側面もあり、まるで万華鏡のような世界だ。
        それにしても、どんな場面であっても、詩で表現するのが一番だという言葉が素晴らしい。
        生まれながらの詩人の証だろう。
        >> 続きを読む

        2014/07/13 by けんとまん

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    • 1人が本棚登録しています
      花より男子(だんご) (10) (マーガレットコミックス (2343))

      神尾 葉子

      3.0
      いいね!
      • 花より男子10巻。

        天草くんから熱烈なラブコール。
        ヤキモチを妬いた道明寺と殴り合い。

        一方でつくしの父親が会社をクビになり、サラ金に手を出してしまう。
        どうしても現金が欲しいつくしは道明寺に100万円借り、賞金100万のティーンオブジャパンに出場することを決意する。

        美しくて知性もあり、良妻賢母の女性を選ぶ大会。
        無謀とも思われる挑戦だが、つくしは優勝できるのか!?


        天草くんも道明寺もカッコイイけど、私はやっぱり花沢類が好きだなぁ。でもきっと一緒にいて楽しいのは道明寺なんだろうなぁ。私が悩んだところでどうにもならないが、感情移入しまくって悩んでしまう。うーむ。
        >> 続きを読む

        2014/08/15 by sunflower

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    • 1人が本棚登録しています
      永沢君

      さくらももこ

      小学館
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • ちびまる子ちゃんの愛すべき憎まれキャラ永沢君を主人公にした短編集。

        どれも変に笑えちゃうんですが、なかでも深夜放送のリクエストハガキのエピソードはあまりのバカらしさに爆笑&涙が流れました。

        ちびまる子ちゃんでは相変わらず好かれてないみたいですが、永沢君は家が火事になったとき、片手にロボットのオモチャを持って逃げ出す可愛らしい面もあることを、ぼくはけっして忘れませんよ。
        >> 続きを読む

        2017/08/14 by アーチャー

    • 1人が本棚登録しています
      男が女を愛する時 (新潮文庫)

      柴門 ふみ

      3.0
      いいね!
      • 柴門ふみが、対談、対談するなら、いい男にしてくださいと選んだ9人。

        モテる男の秘訣を探る・・・読み取って生かさなければ・・・。

        最後に各人の特徴を柴門さんが書いているので引用すると。

        既知の糸井重里、耽美の久世光彦、エネルギーの三枝成彰、芸の中村勘九郎、
        ヤンチャの大多亮、狂気のテリー伊藤、抒情の安西水丸、フェロモンの藤井フミヤ、
        エンタテインメントの秋元康。

        すべての方に共通しているのが、“少年性”いつまでも自らがおもしろいと
        感じるものにまっしぐらに進む、その魅力、パワーが女性にモテる秘訣なのか。

        何事にも、情熱をそそぐ・・・・・
        それでいて、謙虚で、穏やかな物腰、神経質さと、優しさ漂う雰囲気

        ああ、だんだん、難しく難易度が高くなりそうなので、このへんで。

        >> 続きを読む

        2016/05/02 by ごまめ

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      こうばしい日々

      江國香織

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 読みました。

        対比的に描かれている少年と少女の成長の過程を見ているようで、切ないような嬉しいような色々な気持ちにさせてくれるお話でした。

        この本の中に登場する人物はみんないいところばかりではないけど、どこか憎めない感じがしました。

        それにダイたちは自分というものを持っているような気がして、自分より年下ですが憧れました。

        一番好きなのはダイとそのガールフレンドの可愛らしいお付き合いです。
        >> 続きを読む

        2015/03/23 by カラモモ

      • コメント 2件
    • 13人が本棚登録しています
      この日本における少数異見ノート (中公文庫)

      諸井 薫

      3.0
      いいね!
      • この日本における少数異見と違った角度からの辛口エッセイと期待して購読。

        発刊が1995年と今から、20年前だが、現代に相通じるものはないかと
        探りながら読むが、時代の流れは激しいものでものの考え方もギャップを感じる。

        政治の世界も混沌としているのは同じだが、その当時の主役、脇役さんは、
        細川、羽田、小沢、河野、橋本、さん達だが、薄れれいくのは功績が無かったからか・・・。


        20年、近いようで遠い昔。

        当時、モトローラ社の移動電話が日本に上陸してきた年。

        著者は、移動電話なるものそれ自体の普及を苦々しく思うと、

        既に2001年に亡くなられていますが、
        現在の皆が街中で手に持って歩いている姿を見られると、
        主体性の自由を放棄してまで、何に束縛されているのかと
        憂憤されるでしょうな。

        題材が、古びて見えるのは、元々「夕刊フジ」に連載されたもの、
        今日の出来事として書かれたもので、20年前のある一日を切り取れば、
        やむえないものなのか・・・・あの当時はと、懐かしむにはと、・・・・でおます。

        >> 続きを読む

        2016/03/24 by ごまめ

    • 1人が本棚登録しています
      本をつんだ小舟

      宮本輝

      文藝春秋
      3.0
      いいね!
      • 作者の人生がそこそこ波乱万丈で紹介されている本の内容がすっと入ってこない…。
        両手両足がなくなって意識はある青年の話が興味深いので探して読んでみようかな。
        大好きな作家だったらこういうのすごく嬉しいと思う。ルーツに触れることができるようで。
        >> 続きを読む

        2018/12/02 by aki

    • 2人が本棚登録しています
      鳴風荘事件 殺人方程式2

      綾辻行人

      光文社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 「明日香井叶」と「深雪」が初めて出会うきっかけになった、殺人事件。

        深雪の友人「夕海」の姉が、自宅で殺害された。
        その遺体は、彼女の長い黒髪を切られて。

        それから6年の月日がたち。
        深雪は同級生と再会する場所で、夕海と事件以来の再開をするが、夕海はすっかり変わっていて、まるで死んだ姉にそっくりになっていた。

        そんな夕海が、何者かに殺害された。
        それも、姉の様に、長い黒髪を切られて-。

        「明日香井兄弟シリーズ」と言ってもいいような、この「殺人方程式シリーズ」の、続編です。

        こうしてまた、双子の「響・叶」の活躍を読めて、嬉しいです。

        今回も、なかなかの長編で、読み応え抜群で、面白かったです。
        >> 続きを読む

        2018/09/11 by ゆずの

    • 1人が本棚登録しています
      カストラートの世界

      アンガス ヘリオット

      4.0
      いいね!
      • 【時代のあだ花だったんでしょうか】
         女声パートを歌える去勢した男性歌手、カストラートについて綴った一冊です。
         そもそも、何故カストラートが生まれたのかから説き起こしていきます。

         その理由の一つは、厳格な教会の規則でした。
         教会内では、女性は話すことを禁じられていたのですね。
         そうなると、当然賛美歌を歌うことも禁止です。
         賛美歌には女声のパートもあるというのに、歌えないという大矛盾。
         仕方なく、女声パートを歌ったのが少年だったわけです。
         しかし、いかんせん少年では声量が足りず、また、子供達は長時間そんなにお行儀良くしていませんから、統率するのにも困りものでした。
         ちゃんとお行儀良くできるような年齢になった頃には声変わりしてしまっているというわけです。

         舞台ではオペラが大人気でしたが、こちらも舞台に女性が出ることが禁止されていました。
         それは完全に偏見なのですが、女性は不浄なもの、娼婦などを連想させる汚らわしい存在として舞台に上ってはいけないとされていたのですね。
         こちらでも女声パートを歌うために当初は少年が使われたのですが、教会の賛美歌と同様の問題がありました。

         そこで登場したのがカストラートというわけです。
         カストラートの多くは、貧しい過程に生まれた少年で、その中から音楽的資質があると認められた者が金で買われて行き、手術を受けさせられてカストラートにされたというわけです。
         まるでショッカーの改造人間(!)のようですらあります。

         しかし、教会はおかしなところで、カストラートを禁止したのです。
         そのようなおぞましい自然に反するような手術をすることはけしからんというわけです。
         でも、他方では賛美歌を歌うのにカストラートも必要で、手術は禁じたものの、カストラートになってしまった者を使うことは大目に見るという、ダブル・スタンダードだったんですねぇ。

         さて、カストラートの歌声は現在には残されていないので(唯一、モレスキの歌声を録音した盤が一枚だけあるそうですが、録音状態が悪く、蚊の泣くような声で録音されているだけなんですって)、一体どのような美声だったのかはなかなか分からないのです。
         現在では、カウンター・テナーがカストラート達が歌っていたパートを歌ってくれたりはしますが、カウンター・テナーとカストラートは本質的に違うものなので、これでは実際にカストラートがどのような声をしていたのかは分かりません。

         本書によれば、多くのカストラートは、過剰とも言える装飾音符を駆使し、テクニックを前面に押し出した技巧的な歌い方を得意としていたようです。
         しかも、子供の頃から徹底的な教育を受けたため、その音楽的才能は大変高かったのだとか。
         ですから、カストラート達はかなり高額の収入を得て歌を歌っていたようです。
         また、それだけ尊重されたので、中には傲慢に振る舞い、人間的にどうよという人もいたのだとか。

         しかし、徐々にカストラートに変わって女声が公で歌うようになり、また、カストラートにされる手術が痛ましいこともあり、カストラートは廃れていくのですね。
         時代の仇花ということなのでしょうか。

         本書には、そのようなカストラート全般にまつわる歴史やその生活が描かれ、また、個々の歴史に名を残したカストラート達の小伝も併録されています。
         興味深い一冊でした。
        >> 続きを読む

        2019/12/19 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      カント入門

      石川文康

      筑摩書房
      5.0
      いいね!
      •  『純粋理性批判』を読み、その難解さに打ちひしがれていたとき、学科の先輩からおすすめされた一冊。結果として、『純粋理性批判』をはじめ、カントの諸作品をなんとか通読することができたのはこの一冊あってこそであった。
         この作品は、日本のカント研究者である石川文康が、カントの三批判書や、『道徳の形而上学的基礎づけ』について時系列を追って解説し、カント哲学の諸概念を丁寧に嚙み砕いてくれている。この数か月、いくつかの哲学書やその解説書を読んだが、結局、この本を一番読み返した。おかげで、カント関連の話を誰かがしている際、そこで用いられている言葉の意味まではなんとか理解できるようになった。しかし、このような素晴らしい本が20世紀の段階で、出ている日本の哲学研究の先進性に驚嘆するばかりである。先人たちに感謝である。もちろん、解説書は玉石混交であるが、この一冊はぜひ読んでみてほしい。
        >> 続きを読む

        2018/08/03 by shinshi

    • 2人が本棚登録しています
      ベローナ・クラブの不愉快な事件 (創元推理文庫)

      ドロシー・L. セイヤーズ

      3.0
      いいね!
      • 【お茶(お酒)とおしゃべり】
         ピーター・ウィムジイ卿シリーズの第4作に当たる作品です。
         ウィムジイ卿がベローナ・クラブにやって来た時、クラブ会員のフェンティマン将軍が暖炉の前で死亡しているのを発見してしまいます。
         医者を呼びはするのですが、御臨終です。
         まあ、かなりの高齢でしたし、身体も弱っていたようなので大往生ということでしょうか。
         ただ、死後硬直はまだ解けていなかったのに、片足だけが硬直が解けてだらんとなっていたのが不思議と言えば不思議なのですが。

         で、ここでややこしい事態が発生してしまうんです。
         大富豪である将軍の妹も丁度この頃亡くなっていたんです。
         もし、将軍の死亡時刻が妹よりも先だった場合、将軍には相続権がなくなるので、将軍が死んでもその孫息子たちには将軍の妹の莫大な遺産は渡りません。
         将軍の死亡時刻が妹より後であれば、将軍がまず妹の財産を相続し、それが将軍の死により将軍の孫息子たちに渡るということになります。
         ただ、医師の見立てだけでは将軍の死亡時刻は大まかな推定でしか言えないため、非常に微妙な状態になってしまうのですね。

         既に4作目ともなると、ウィムジイ卿の名探偵としての声望も確立しており、ここは第一発見者でもあることだし、是非、将軍がいつ亡くなったのかを調べて欲しいという依頼が来るのです。
         ウィムジイ卿は、さっそくクラブの従業員などに聞き込みを始めるのですが、将軍はいつも時間にうるさく、必ず決まった時間にクラブに来るはずなのに、どういうわけか、その日、将軍がクラブに来た姿を誰も見ていないと言うのです。

         将軍はクラブで亡くなっているのですから、クラブに来たのは間違いないのに、何故誰も将軍が来た姿に気付いていないのでしょうか?
         うむ、確かに謎だ。

         ということで、本作は、ミステリ定番の殺人が出てこない死亡時刻を巡る謎なのかな?と思いながら読み進めていくと……
         いや、さすがにそれだけで一本書くわけにもいかないか。
        ウィムジイ卿が将軍の行動を洗っていくうちに、どうもおかしな人物が浮上してくるのです。

         ウィムジイ卿の友人であり、将軍の孫息子の一人でもあるフェンティマン少佐は、オリヴァーなる謎の人物がクラブを探っているようだと言うのです。
         これは将軍の死と何か関係があるのではないかということで、少佐が目撃したという店や駅などに探偵を張り込ませたりするのですが、話はどんどんおかしな方向に進んでいきます。

         また、将軍の行動で分かった範囲で考えると、やはり妹の死と将軍の死はかなり接着していそうで、もうこうなったら相続人の間で遺産を平等に分割したらどうか?とウィムジイ卿が提案するのですが、相続人は誰一人としてそれに賛成しないのです。
         あくまでも白黒つけたいと。
         ちょっと欲張り過ぎじゃないですか~?

         と言っても、本当にどちらが先に死んだか分からない場合ってあり得ますよね。
         イギリスの法律ではそういう場合どうなっているんでしょう?
         日本の民法には、どちらが先に死んだか不明の場合には同時に死んだと推定するという規定があるんですけれどねぇ。

         で、すったもんだしているうちに、将軍は自然死ではなく、殺された疑いが浮上してくるのです。
         おぉ、やはりミステリの王道は殺人事件だ!
         というわけで、他殺でもいつ殺されたのかは相続の関係では依然問題になるわけですが、それに加えて誰がどうやって殺したかが問題になって来るのです。

         将軍の遺体を墓から掘り返して解剖してみたところ、毒殺されたことが判明します。
        しかし、将軍の分かっている行動から考えると、かなり遅い効き目の毒薬じゃなければいつ飲ませたのかが分からなくなってしまうという問題が出てきます。
         飲ませられたのはジキタリンという即効性の薬物なのですが、どうやってその効き目を遅らせたのでしょうか?
         ウィムジイ卿、どうする?

         本作では、こういう謎が解き明かされることになるのですが、取り立てて刮目するようなトリックがあるというほどではないように思います。
         やはり、セイヤーズの作品の長所は、豊かな会話、登場人物たちの掛け合い辺りにあるように思えます。
         本作でも、ウィムジイ卿が聞き込み先でお茶を飲んだり、お酒を頂いたりしながら、軽妙な会話を繰り広げていく辺りがひとつの読みどころでしょう。

         コージー・ミステリではないのですが、緩やかな空気感をたたえた、セイヤーズならではの作風になっています。
         セイヤーズfanってこういう雰囲気が好きなんだろうなぁ。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2021/04/12 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      バイバイ、エンジェル ラルース家殺人事件

      笠井潔

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 3回目くらいの再読。
        マイ本格ミステリベスト10に入る逸品。
        「他人たちのことを、ただわずらわしいだけの存在であると心底感じ、核戦争でただ一人だけ生き残った時、初めてやすらかな気持ちになれるような青年」の探偵役・矢吹駆と「青年たちが自分を巡って競争心や嫉妬心を燃やすことほど面白く、自尊心を満足させることはない」と考えている若い娘・ナディア・モガールが織りなす本格ミステリ。
        矢吹シリーズは哲学と本格ミステリを融合させた極めて珍しいタイプの小説であり、本格ミステリ的には「サマー・アポカリプス」や「哲学者の密室」の方が優れているかもしれないが、哲学部分に関しての強度は本作がずば抜けていると思う。
        初っ端から矢吹が「認識論的還元を超えて、私の生そのものの還元を企てること。すなわち実存的自己還元の企て・・」というセリフを言う(普通の人からはビョーキ扱いされるかもしれない)。
        矢吹によると「現象学的な方法で犯罪現象を扱うという時、まず諸現象の複雑に絡み合った総体からその中心的な位置を占めているひとつの現象を選び出し、それの本質を変更作用によって直観し、直観された本質を導きの糸にして事件を構成している無数の諸事実を論理的に配列してみること、この一連の思考過程の結果として、犯人の名はたまたま、まるでついでのように判明してくるに過ぎない」とのことである。
        中盤で矢吹が犯人の名前を聞かれた時に「ルシファ」と答え、ローリング・ストーンズ「シンパシ・フォ・ザ・デヴィル」の歌詞を引き合いに出す(ラストでその意味が判明する)。
        ナディアとその仲間・アントワーヌ、マチルド、ジルベールが歩いている時若い女浮浪者に小銭をせびられた際に、アントワーヌは彼女を突き飛ばしジルベールに対し「君が一匹の虫けらと一緒に全民衆に敵対することを選ぶのでなければ、君は慈善を憎まなければならない。慈善心は君の決意を鈍らせる蜜の誘惑だからだ。すべての愛の実現を求めて、この現実を憎悪するか、この現実にちっぽけで惨めな愛を注ぐことによって憎悪に満ちた世界の現実を許容するか、いつだってどちらしかないんだ」と言い、ジルベールは「あの娘を愛せなくて、どうして全人類を愛せるだろう。あの娘を突き飛ばした君は、いつか全人類を突き飛ばすことになるんだ」と返す(濃すぎるやりとりだが、ラストの矢吹と犯人の対決シーンの濃密さは上記の比ではない)。
        矢吹は、かの有名なゼノンのパラドックスについても「真理への道を生活世界に見出しえない理論家、論理のアナーキに身を売った詭弁家にたいする処罰は、彼自身が魂の奥深い場所で自分の論理を信じていない、むしろ信じられなくなる点にあり、ここからは不毛なニヒリズムが発生するだけだ」と論ずる。
        小説家の西尾維新は本作を「比類なき精度で描かれた、孤高にして至高の探偵小説」と紹介しているが、まったく大げさではない。
        話は変わるが昼食を共にする会社の先輩でとても知識が豊富な人がいて、そのことを指摘したところ「それは別に僕が博識とか衒学的ということではなく、単に君が無知というか物を知らなさすぎるだけです」という意味のことを言われ、恥ずかしい思いをしたことがある(確かにグーグルで調べれば、わかるようなことばかりであった)。




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        2021/08/06 by tygkun

    • 4人が本棚登録しています

出版年月 - 1995年5月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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