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1995年7月発行の書籍

人気の作品

      天使の耳

      東野圭吾

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • 表題のストーリーを始め、すべてのストーリーが交通事故をテーマにした短編集。表題では、事故を起こしたクルマに同乗していた盲目の少女が、事故で亡くなった兄の正当性を示すために、自身の持つ特異な聴力を活かして警察の事故捜査をリードしていく・・・
        2、3時間の読書を楽しみたいならぴったりの短編集。すべて交通事故をテーマにしているが、物語のバリエーションは広いので飽きることなく一気に読める作品。
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        2015/10/31 by kenji

    • 他5人がレビュー登録、 24人が本棚登録しています
      探偵はバ-にいる

      東直己

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      3.1
      いいね!
      • 匿名

        ススキノにいる、一人の男探偵の小説。アンダーグラウンド感満載。

        2018/04/16 by 匿名

    • 他5人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      本所深川ふしぎ草紙

      宮部みゆき

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 2000年10月に購入してから何度読んだかわからない。
        今回読んで初めて気がついたのは、回向院の親分は本書では脇役だったのだということ。

        それでも初読みで強烈な印象を受けたから、茂七が捕り物をする『初ものがたり』を手にしたときはうれしかった。同書に関しては完本を買うくらい茂七親分に惚れ込んでいる。そのすべては本書から始まったんだなと思うと、また『初ものがたり』を読みたくなった。

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        2017/08/29 by Kira

    • 他3人がレビュー登録、 24人が本棚登録しています
      代表的日本人

      内村鑑三 , 鈴木範久

      岩波書店
      カテゴリー:日本
      4.3
      いいね!
      • 【総括】
        日本人とは何なのか、どういった考え、宗教観、行動規範で生きているのかを日本人が外国語で著作し、欧米の人達に向けて書かれた本。著者はその中で5名の日本人、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人を紹介し、日本人とはこういう人種、というものを伝えています。グローバル化が進む中、海外の方々とコミュニケーションをとることも多くなってきましたが、今一度、日本人とはどのようなアイデンティティを持っていたのか振り返り、学び直すのに最適な良書だと思います。個人的には二宮尊徳と中江藤樹の人柄が素晴らしく、感銘を受けました。昔の話だとは思わず、現代にも通用する“生き方”を教えてくれる一冊だと思うので、是非読んでみてください。

        【心に残った一節】
        1.西郷隆盛
        「人の成功は自分に克つにあり、失敗は自分を愛するにある。八分どおり成功していながら残り二分のところで失敗する人が多いのは何故か。それは成功が見えるとともに自己愛が生じ、慎みが消え、楽を望み、仕事を厭うから失敗するのである。」
        →「敬天愛人」に西郷さんの人柄がよく出ています。天を敬い、人を愛する。
        自分自身の欲を出してしまえば、物事は失敗に終わってしまう。そうではなく、物事、人に対し誠実にまごころをもって接していれば何事も成すことができると、そう理解しました。

        2.西郷隆盛の詩
        私に千糸の髪がある
        墨よりも黒い
        私に一片の心がある
        雪よりも白い
        髪は断ち切ることができても
        心は断ち切ることはできない

        3.上杉鷹山
        東洋思想の一つの美点は、経済と道徳とをわけない考え方であります。東洋の思想家たちは富は常に徳の結果であり、両者は木と実との相互の関係と同じであるとみます。木によく肥料を施すならば、労せずして確実に結果は実ります。民を愛するならば、富は当然もたらされるでしょう。故に賢者は木を考えて実を得る。小人は実を考えて実を得ない。このような儒教の教えを、鷹山は授かりました。
        →深いですねー。自分の望む「実」ばかりを考えていれば「実」は得れず、そうではなくてその養分たる「徳」を積むことが「実」を得るための最短ルートであると言っています。

        4.上杉鷹山(孫娘にあてた言葉)
        年若い女性である以上、着物のことに心がとらわれやすいのは当然である。しかし教えられた倹約の習慣を忘れるではない。養蚕をはじめ女の仕事に励み、同時に和歌や歌書に接して、心を磨くがよい。文化や教養は、それだけを目的にしてはならない。
        すべての学問の目的は徳を修めることに通じている。

        春を得て花すり衣重ぬとも
        我ふる里の寒さ忘るな

        →現代の女性に読んでほしい一節ですね。化粧やおしゃればかりに時間を費やすのではなく、心を磨き、徳を高めるためにしっかりした教養・勉強をするべきではないでしょうか。はやりものや他人の意見なんかに惑わされることなく、筋の通ったしっかりとした一人前の人間になるには、やはり勉学を通した徳の積み重ねが必要に思います。
        昔から若い女性はやはり着物の色やかわいさに目が向いてしまっていたのですね、現代と何も変わらないことに驚きました笑

        5.二宮尊徳
        「キュウリを植えれば、キュウリとは別のものが収穫できると思うな。人は自分の植えたものを収穫するのである。」
        「誠実にして、初めて禍を福に変えることができる。施術は役に立たない。」
        →徳を積めばその分だけ収穫が出きる。それ以上には絶対に返ってこないし、別のものも収穫できない。解釈が少し難しいとは思いますが、自分の努力した分の結果しかリターンは返ってきませんよ、といったよな感じと理解しました。

        6.二宮尊徳
        植物の根には花も実もことごとく含まれているではありませんか
        →ある一大事業を興す際に一番初めにやるべきはメンバーの道徳を正すことから始めることが一番の近道だと説いています。あれこれ小手先のことをやるより長い時間かけてメンバーの気持ちを一つにして道徳をそろえることが先決であると言っています。メンバーの気持ち(道徳)が一つ「になればあとはしめたもの。そのあとはスムーズに事業を成すことができる。道徳が「根」であり、しっかりとした根があれば、その先の花も実も結ぶことができるということ。素晴らしいたとえです。

        7.中江藤樹
        人は誰でも悪名を嫌い名声を好む。小善が積もらなければ名はあらわれないが小人は小善のことを考えない。だが君子は日々自分に訪れる小善をゆるがせにしない。大善も出会いが行う。ただ求めようとしないだけである。大善は少なく小善は多い。大善は名声をもたらすが小善は徳をもたらす。世の人は名を好むために大善を求める。しかしながら、名のためになされるならば、いかなる大善も小さくなる。君主は多くの小善から徳をもたらす。実に特に優る善事はないと。徳はあらゆる大善の源である。
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        2018/12/29 by べるさん

    • 4人が本棚登録しています
      山びこ学校

      無着成恭

      岩波書店
      カテゴリー:文章、文体、作文
      4.0
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      • 戦争は終わったものの農家の暮らしは楽にならず、学校を休んで農作業をすることが親孝行と呼ばれた昭和30年代。山形県にある山間部の中学校では、生活綴方という作文を通して、農村の厳しい暮らしの生きづらさについて考えている。親から「家の恥だから書くな」と叱られた貧しい暮らしの実態をみんなで調べて話し合い、「これは家の問題でなく、歴史の問題であって、国の問題だ」と目覚めていく。そして、「自分たちはこう生きたい」と志を立てる。その過程は生きる力をつける学びそのもの。自由とは、ただ野放しにさせることではなく、自由が守られる環境を大人が整えないといかんのだな~と感じた。これらの実践記録を60年前の過去のことと片付けられない。だって、子どもの貧困やいじめ、虐待などの生きづらさは、今だって解決できていないから。 >> 続きを読む

        2019/10/10 by かんぞ~

    • 1人が本棚登録しています
      戦後の日本経済 (岩波新書)

      橋本 寿朗

      4.0
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      • そのタイトルに違わず、戦後の日本経済についての概論である。刊行が20年以上前と古い本であるため、時代が近くなればなるほど内容の不安定さを露出していくが、それは仕方のない事といえる。なにせ当時はバブル崩壊直後という先を見据える事が非常に難しい時勢であったし、著者は2002年に他界しているため改訂を行う事も成しえなかった。むしろこの本が刊行された90年代以外についての著述は非常に堅実かつ明快と言う部分が高い評価に値するのではないだろうか。
         
         序章「私の経験からみた戦後経済」は著者の思い出話を絡めた日本の情勢変化を語っている。客観的な現実を著者の主観からぼんやりと眺めているといった印象で、学術書としては非常に入りやすい内容となっている。(『新書』的な掴みというのはこういう事なのだろうか?)

         Ⅰ章「日本経済はいま」についてはバブル崩壊直後(93~94年)の日本の現状について書かれているが、この章についての評価は割愛したい。上述の状況より、この時期に考察を行うには余りにも時間的余裕がなく、現状の数字を羅列するのが精いっぱいであったのだろう。むしろ現在出版されているバブル崩壊以後の現代日本経済史の書籍と合わせて読み込むことで知識の深化に繋がるのではないだろうか。資料としては後々価値が出てくる(もしくは現在進行形で出ている)可能性があると思われる。

         Ⅱ~Ⅳ章については戦後からバブル経済に至るまで日本の経済がどのように動いてきたかが非常に良く纏められており、戦後日本経済史の入門書としてはかなりのものではないかと思う。政府主導の復興を果たした終戦~1950年代、そこから各企業が脱却し成長を始めた高度成長期、世界経済が激動した1970年代からバブル期までと時期・内容ともに充実していると言えるだろう。また大店法や日本の大企業の不正会計の原因など、現状から見えてくる当時の日本経済の影の部分についても所々ながら語られており、興味深い。

         自分にとっては大学時代に学んだ戦後日本経済史についての復習となるとともに、現代について書かれた歴史書が正当な評価を問われるのは何年後からなのだろうか?という疑問を持つなど、様々な面から考えさせられた本であった。また、自分がいかに「専門」ではなく「概論」的な考えが水に合うかを改めて痛感もさせられた。やはり自分にとって「歴史」とは「趣味」なのである。
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        2017/01/17 by aokaze

    • 1人が本棚登録しています
      街道をゆく

      司馬遼太郎

      朝日新聞出版
      カテゴリー:日記、書簡、紀行
      4.0
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      •  東京下町生まれの幕末の偉人 勝海舟とその父 勝小吉の話しや豪商として有名な「奈良茂」や神田明神と平将門の話、また、江戸が当時の大都市の大坂や京都と比べてなぜ火事が多かったのか?等の話し等も興味深い。 >> 続きを読む

        2010/11/01 by toshi

    • 1人が本棚登録しています
      能の物語

      白洲正子

      講談社
      カテゴリー:戯曲
      4.0
      いいね!
      • ▶「BOOK」データベースより)

        紀有常の娘が業平との永久の愛を語り清絶に舞う「井筒」、一ノ谷の合戦で討たれた平敦盛と今は僧となり弔う直実が夢のごとき人生と無常を語る「敦盛」、ほか「隅田川」等。最大限に省略された舞台空間で無限の表現を可能にした能、視覚聴覚に訴えるその“間”と、幽玄と美を文章に写す。創造的な独自の解釈を加え物語る能の名作二十一篇。 >> 続きを読む

        2018/05/29 by rikugyo33

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      神の名のもとに

      矢沢聖子 , WalkerMary Willis.

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 1990年代に読んだおもしろい本は、まだまだあった。ということでこの本を思い出した。女性ジャーナリストが活躍するシリーズ物で、4~5作あったと思うが、どれもおもしろかった。それなのにあるときからぱったりと続きが出なくなった。なぜ? 著者のメアリーWウォーカーさんはどうされているのか。連作最後の内容は、女性ジャーナリストが敬愛した、亡くなったお父さんに関わるもので、事実を知った彼女は……のような感じだった。もしや現実の著者にも同様の体験が起こり、本を書くことにくぎりがついたのだろうか。ファンとしては、ひじょうに惜しい。もっと読みたかったです。 >> 続きを読む

        2016/05/15 by まるち

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      オークション・ハウス

      叶精作

      集英社
      4.0
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      • オークション・ハウス 第13/全34巻

        幼少の頃、目前で両親を惨殺した犯人一味のうち1人との対決。そして新たなる旅。

        目的のための手段としての結婚。リュウが縁(えにし)と表現した通り、それでも大切にすべきものなのかも知れない。

        おびき寄せた宿敵との対決。
        簡単ではなかったものの、ほぼ半生を賭けてやっと捕まえたことと比較すれば直接対決はイージーに感じたのではないかと思う。

        そして更なる宿敵の残党を求め、一端ロンドンに帰るリュウ。
        唯一ヒントを持っていると思われるものの、当時リュウの両親の殺害指示を出した可能性も有る老婆と正面から向き合い、男として認められることで、次のヒントとともに、その娘を妻として得ることになる。

        言ってみれば完全なら押し付け妻では有るが、リュウは愛そうとしているらしい。
        幾ら好きでも一緒になれない男女もいれば、こうして双方の当事者の意向を全く無視して伴侶になる場合も有る。

        もしかするとリュウが縁(えにし)と言う言葉で表現したように、結婚にはなにか運命めいたものが必要で、いかなる経緯で有ろうと結婚に至ったのなら、それを受け入れるという考え方にも一理有ると思った。

        次の宿敵が潜伏しているのはインド。ハネムーンでも有るので、良い形で展開すれば良いのだが。
        >> 続きを読む

        2013/09/30 by ice

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      感動ドキュメント あしたは元気!!―ぼくらの阪神大震災

      綾野 まさる

      4.0
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      • あれから16年。
        当時小学校6年生であれば今は28歳、時の流れを感じてしまう。
        そんな当時の暮らしの中で、子ども達も精いっぱい生きていたし、生きてきた。
        そんな暮らしの様子が描かれていて、人というものを改めて考えてみないといけないなと思う。
        >> 続きを読む

        2015/06/15 by けんとまん

    • 1人が本棚登録しています
      狂気の果て (新潮文庫)

      デイヴィッド・L. リンジー

      4.0
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      • デイヴィッド・L・リンジーという作家の小説は、サイコ連続殺人ものの印象が強かったのですが、この「狂気の果て」は全く違った内容の作品になっていました。ひと言で言うなら、グアテマラを舞台にした暗殺と裏切りの"思想小説"とでもいうべき作品なのです。

        なぜ思想小説という風に思ったのかというと、謀略ものでもないし、麻薬戦争が絡む活劇でもない。この作品は、その全編にわたって、アメリカとその属国である中央アメリカの小国の地政学的な関係への、結論の出ない考察に満ち満ちているからなのです。それでいて、ストーリーを引っ張る力は、類をみないほど圧倒的に強いのです。

        グアテマラ反体制派のシンパの若い女性が現地で、謎の失踪をする。彼女と親しいジャーナリストと彼女の身辺を探っていた雇われ探偵も姿を消してしまった。

        そこで、主人公のヒューストン警察のヘイドン刑事の出番となって現地入りするが、虚偽と裏切りが常態であるその国では為すすべもなく、出口のない迷路にはまっていくのだった-------。

        この作品の根幹の謎は、この女性の行方を突き止めること、それだけのシンプルな物語なのです。そこに、軍事独裁者の秘密警察、それを上方でコントロールするCIA、CIAから独立して稼ぐ情報屋、個人的に彼女を助けたいという正体不明の女、反体制のゲリラなどが絡んでくるのです。

        だが、全ての関係者が真実の一部か、まるきりの嘘しか語らないのです。そして、その渦の中に放り込まれた主人公のヘイドン刑事が、こうした隠蔽の輪舞するゲームに翻弄されていくディテールは、実に圧倒的な迫真性に満ちあふれているのです。

        グアテマラの都市の汚濁、悪臭、不快な熱波、裏切りを培養する病根。作者のデイヴィッド・L・リンジーは、それらをまのあたりに投げ出し、我々読者を引きずり回すのです。

        やがて主人公は、自分が狂言回しに過ぎず、全ての敵対勢力が互いに依存し合っているシステムがあることに理解するのです。

        とにかく、この作品の登場人物が皆一様に、過度に己の位置を哲学的に語ってやまないのです。

        そして、暴力と裏切りの際限のない連鎖は、一つの事象に帰着します。ここはアメリカの裏庭だ、自国の繁栄とデモクラシーを維持するためには、汚物の捨て場所が必要なのだ、と-------。

        この苦い認識と結末の徒労感は、この作品を単なる娯楽作の域を、遥かに超えたものにしていると思います。
        >> 続きを読む

        2018/01/10 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      巣鴨プリズン13号鉄扉 BC級戦犯とその遺族

      上坂冬子

      中央公論新社
      5.0
      いいね! Tukiwami
      • 上坂冬子『巣鴨プリズン13号鉄扉 BC級戦犯とその遺族』を読み終わった。

        どの話も、どれも重く、貴重な話だとは思うが、中でも特に、福岡の嘉穂の人だった、石垣島事件で死刑となった藤中松雄という方の家族に宛てた遺書の中の以下の平和を願う言葉は、後世は忘れてはならないものなのではないかと思えてならない。
        (引用タイピングにあたり、読みやすいように若干かなづかい等を変えた。原文は同書当該ページ数参照。)

        「父が忘れることのできないかわいい孝一と孝幸に、最後の言葉として最も強く残して置きたいのは、
        『父はなぜ死んでゆかねばならいか』
        ということであります。
        (中略)それは全世界人類がこぞって嫌う、いまいましい戦争のせいなのです。
        父は今となって上官の命令云々などと言ふ時間の余裕がありません。
        戦争さえなかったら命令する人もなく、父が処刑されるような事件も起らなかったたはずです。
        そして、戦場で幾千幾百万という多くの人が戦死もせず、またその家族の人たちが夫を、子を奪われ、父を、兄を、弟を奪われて泣き悲しむ必要もなかったのです。
        だから、父は孝一・孝幸ちゃんに願ってやまないことは、いかなることがあっても
        『戦争絶対反対』
        を生命のある限り、そして子にも孫にも叫んでいただくと共に、
        全人類がこぞって願う
        『世界永遠の平和』
        のために貢献していただきたいことであります。
        (中略)そればかりじゃ世界は平和にならないのです。
        肉親の兄弟を愛し合うように他人も愛していかねばなりません。
        家内が親密なように、それを他の家にも、さらに他の国にも及ぼしてゆかねば平和建設はできないのです。」(286-7頁)


        戦争から七十年経った今、「戦争絶対反対」や「世界永遠の平和」という言葉はともすればだいぶうすれて薄まってしまったように思えることもあるけれど、もともとは戦争で亡くなった人々、およびBC級戦犯として不条理な裁判の中で死んでいった人々の、血反吐を吐くような思いの中からつむがれた言葉だったことを、本書を読んであらためて思わずにはいれなかった。

        また、この本を読んで、命令に従っただけなのに、死刑となっていった人々や、食料や医薬品が不足した戦争末期の状況の中で、できることは精一杯していたのではないかと読めば読むほど思われる人々が、捕虜虐待ということで死刑になっていった様子に、なんとも言えぬ気持になった。

        そうした捕虜虐待の罪で死刑となった人の中でも、『世紀の遺書』の中で、人類愛の必要を主張したり、やや皮肉めいて敗戦後の日本を批判していて、一際個性的な文章を残していて印象に残る水上安俊という人物についても、本書で詳しく記してあった。
        本書によれば、その状況下ではできる限り以上の医療に従事したにもかかわらず、ある一部の米軍人の非常に感情的な思いこみや私怨によって死刑となったようである。

        水上安俊は、『世紀の遺書』収録の遺書の中では一言も妻について言及されていないので、私もてっきり独身だったのだろうかと思っていたが、本書により、巣鴨の獄中で、本人は深く妻を愛し日記にもそのことを縷々綴っていたつもりが、ある日突然離婚届が届けられ、それから日記にも遺書にも全く妻に対する言及がなくなったのだと知った。
        ほとんど筋違いな罪状で戦犯として捕まっただけでも絶望的だったろうに、その上、唐突に離婚届までつきつけられて、その心中は察するにあまりあるものがあったと思う。
        もし戦争がなく、また戦犯指定もなければ、おそらくは仲睦まじい夫婦であり続けたのかもしれない。
        敗戦後の生活難の中で、結婚して間もなかった相手にこれからの生活のことを考えれば離婚しようと思った女性の側の事情や心情も、なんとも哀れなものがあったのだろう。
        徴兵される前は、医師としてらい病の治療に従事し、クラシックを愛し、一際すぐれた知性の持ち主だったようなので、このような時代に巻き込まれなければ、きっともっと良い人生だったろうに、本当に気の毒に思えた。
        戦争というものの酷さは、言語を絶するとしか言いようがない。

        また、本書を読んでいて、朝鮮半島出身のBC級戦犯の人々の話の、あまりにも気の毒な重い歴史に、絶句せざるを得なかった。
        二十六歳で処刑された趙文相という方の、以下の言葉は、著者の上坂さんも「愕然とさせられる数行」と記しているけれど、本当にそう思う。

         「『あの世ではまさか朝鮮人とか、日本人とかいう区別はないでしょうね』と金子の詠嘆(の)声。
        浮世のはかなき時間になぜ相反し、相憎まねばならないのだろう。
        日本人も朝鮮人もないものだ。
        皆東洋人じゃないか。
        いや西洋人だって同じだ」(353頁)


        だが、これらの人々の思いや願いとは裏腹に、サンフランシスコ講和条約発効後、BC級戦犯とされた朝鮮半島出身の人々は、刑罰はそのまま続きながら、日本国民と異なり遺族に補償も年金もないという状態になった。
        死刑を免れた人々も、刑期を終えて出獄しても、なんのあてもない悲惨な状況で、中には自殺する人々もいたという。
        その中で、タクシー会社を創立し逞しく生き抜いた本書に出てくる人々の姿には胸打たれるし、日本政府が極めて冷淡な中で、個人として朝鮮出身のBC級戦犯の人々がタクシー会社をつくろうという時に、私財をはたいて当時のお金で三百万円を援助したという今井知文という日本人の医師の方の話は、あまりにも重い歴史の中で、数少ない救われる話だったと思う。

        その他、あまりにも重い歴史に、時として言葉を失うしかないが、本書は今となってはおそらく物故者も多くなり、再現できない、忘れてはならない言葉や事柄が多く含まれた貴重な証言と思う。

        本書を読んでいて、国家というものの非情さや、民族や人種というものの馬鹿馬鹿しさをあらためて思わざるを得なかった。
        国家や民族などというものに対しては、いささか冷めた目を持つのが、庶民が身を守るためには本当に必要だし、多くの正直者が馬鹿を見たこれらの歴史を思うと、しみじみそのことを思わざるを得ないのではないか。
        そして、これらの人々がどん底でつかんだように、国家や民族を超えた人類愛や平和への願いというものがどれだけ大切なことか。
        BC級戦犯として処刑されていった人々が強く願ったように、もう二度とこのような戦争は繰り返してはならないし、それは理屈を超えた、悲願なのだと、本書を読んで思った。
        『世紀の遺書』とともに、多くの人に読まれるべき一冊と思う。

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        2016/04/09 by atsushi

    • 2人が本棚登録しています
      今宵、銀河を杯にして  ハヤカワ文庫JA

      神林 長平

      3.0
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      • 読書しながら世界一周!
        現在もインド北部の秘境、ラダックにいます。

        マヘル-シャラル-ハシ-バスは戦車である。マヘル-シャラル-ハシ-バスというパーソナルネームは「戦利品のところへ急げ」という意味であり、名付け親は操縦士であるアムジ・アイラ一等兵だ。マヘル-シャラル-ハシ-バスの乗員はアムジの他に火器管制士クアッシュ・ミンゴ二等兵、若き戦車長カレブ・シャーマン少尉。マヘル-シャラル-ハシ-バスと3人の乗員は、惑星ドーピアで繰り広げられる人間、バシアン、アコマディアン、ドールロイドゲリラによる泥沼の四つ巴の戦争に身を投じ、マヘル-シャラル-ハシ-バスの中で階級を超えた友情と連帯を結んでいく。今宵、銀河を杯にして。

        著者は異星での未知なる敵との戦争では、軍事戦力差以前に生命種としての環境適応力の差が勝敗を分かつと本作で考察している。戦争も生存競争の一種と位置付けた、異環境に適応した種が生き残る(勝利する)という進化論だ。

        秘境と言われるここラダックにも3人の日本人女性が移り住んでいる。日本の常識が通じないこの土地に適応して、家族や友人というコミュニティーを作り、今もこの土地でそれぞれの仕事をして暮らしている。それはアムジやミンゴたちのように苦労や喜びを分かち合うものだったのだろう。

        旅をしながら異文化を、異世界を感じて、そこに根差した人々に出会ってそんなことを思う。今の自分では到底考えられないことだ。世界は途方に暮れるほど圧倒的に広くて奥深い。キングフィッシャー(インドのビール)を開けて、標高4000メートルと宇宙に近いラダックの満天の星空を見ながら呑もう、今宵、銀河を杯にして。

        ↓ラダックの圧巻の星空の写真はブログにて公開中!
        http://k-agohige.link/811%e3%83%ac%e3%83%bc%ef%bd%9e%e3%83%91%e3%83%b3%e3%82%b4%e3%83%b3%e6%b9%96%ef%bd%9e%e3%83%a1%e3%83%a9%e3%82%af%e6%9d%91
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        2016/08/22 by 旅する葦

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      昭和天皇独白録

      MillerMariko Terasaki , 寺崎英成

      文藝春秋
      カテゴリー:系譜、家史、皇室
      5.0
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      • 太平洋戦争を考えるうえで大変貴重な資料。もちろん全てが真実ではないかもしれない。しかし、最高責任者たる昭和天皇の国民に対する思い、戦争に向かう軍首脳部に対する怒りなどが伝わってくる。戦争にむかう中、軍首脳部には驚くほど国民にたいする思いは感じられない。それよりも軍の対面、プライドが最優先される当時の意思決定過程に戦慄を覚えた。 >> 続きを読む

        2018/01/22 by MT1985

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      回想―20世紀最大のメモワール (下) (文春文庫)

      レニ・リーフェンシュタール

      4.0
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      • 匿名

        長かったー。上巻を読んだのはもう一年以上前だろうか。
        戦前、戦後にまたがって活躍したダンサー、女優、映画監督、写真家等々…ドイツのレニ・リーフェンシュタールの回想録。戦後のレニは、ナチスに傾倒した映画監督という誹謗中傷と闘いながら新たな挑戦を続ける。彼女が歩んできた壮絶な戦いの人生は一読の価値あり。
        つい最近までご存命だったということにびっくり。改めて歴史はつながっていると感じる。
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        2014/07/23 by 匿名

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      新学期

      長野 まゆみ

      3.0
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      •  17歳差の兄が弟を引き取り、妙な時期に転校させる。
         弟が割りを食いつつ、妙なクラスメイトと交流を持っていく。
         途中で入ってくる者にとって、旧知の仲、ほど歯噛みするものは無い。が、新参者が急になじむとそれはそれでやきもきする者もいて・・・・。
         少年らしく勝手に、しかして問題を抱えつ、次第次第に打ち解けるそれぞれの世界。
         美しい、青年、少年の交流
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        2014/07/10 by B612

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      龍の契り

      服部 真澄

      4.0
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      • 香港返還に密約があるのか? 機密文書をめぐるノンストップ・サスペンスの服部真澄原作の国際謀略小説「龍の契り」をハラハラ、ドキドキしながら一気に読了しました。

        この小説は、作者の服部真澄によると、1997年7月1日に香港が中国に返還されたが、いくら99年間の咀嚼契約が前世紀に交わされていたとはいえ、どうしてイギリスはかくもあっさり香港の租借権を放棄したのだろう?----と大多数の人々が抱えているであろう、この素朴な疑問からこの物語を発想したと述べています。

        日本人の女流作家としては、高村薫以来のスケールの大きな、国際謀略小説の書き手として、興味を覚えて手に取った作品「龍の契り」。

        1982年8月のある日。ロンドンの一角にあるフォトスタジオで二つの撮影が同時進行していた。一つは、モデルを使った化粧品の新商品の撮影で、もう一つは、イギリス情報部が機密文書の写真の複製を撮ろうというものだった。

        ところが、そのスタジオで火災が発生してしまった。生存者がいないと思われるほどの大火災だったが、こっそりフォトスタジオに潜り込んでいたモデルのダヴィナは運よく助かることに----。

        彼女は、本来この建物にいるはずのない人間なので、トラブルを避けようと、黙って現場を立ち去ってしまうのだ。ただ、彼女の手元には必死に逃げる途中、瀕死のイギリス人から手渡されたフィルムがあった----。

        そして、それから10年の時が流れ、あと5年で香港返還が迫った1992年。

        火災の際のもう一人の生存者が、脳機能の損傷による長い長い眠りから覚醒したのだ。そして、彼は思い出す。秘密のフィルムは燃えていない。そう、彼こそはダヴィナにフィルムを手渡した、瀕死のイギリス人だったのだ。

        あの女がどこかへ持っていったのだ。それさえ見つかれば、香港問題に新たな重大局面を生むことが出来る----。

        こうして、中国、イギリス、アメリカの各国の情報機関、秘密結社、日本の外務省職員、オスカー女優の協力を得て中国進出を目論む日本人実業家などが入り乱れての謀略戦が始まっていくことになる。

        物語を支える軸を"機密文書の奪回"に単純化させ、個性的なキャラクターの人間たちを、跳梁跋扈させる手腕は、実に剛腕とも言えるほどのスケールの大きさもあり、見事だと思う。

        この服部真澄という作家は、「水滸伝」のような物語を書くのが夢だそうだが、彼女のこのデビュー作を読み終えて思うのは、いずれそんな壮大な物語を書けそうな予感すら感じてしまいます。

        この優れた国際謀略小説の書き手は、第2作目の「鷲の驕り」で国際特許をめぐる物語を書いて、早くも吉川英治賞の新人賞を受賞しているということなので、この2作目も引き続き、読んでみたいと思っています。
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        2017/03/02 by dreamer

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      左手のパズル

      東逸子 , 萩尾望都

      新書館
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 【幻想的だなぁ】
         萩尾望都さん:文、東逸子さん:絵の美麗な本です。
         音楽学校に通う16歳のジョシュアとソフィアのお話。
         二人は恋人で、ジョシュアは大変上手にチェロを弾くのですが、左と右の区別ができない男の子なんです。
         左利きなんですが、何度教えても左と右が分からないんですね。
         それはどうして? というお話。

         ジョシュアは、幼い頃両親が離婚してしまい、その後伯父の下で育てられ、そこで様々な音楽に触れ、色々な楽器を覚えるのですが、ある日、伯父はジョシュアを伯母に預けてどこかへ行ってしまいました。
         そんな幼少時の出来事に、右と左の区別ができなくなった原因があるのですが……

         萩尾さんのストーリーは、ややキレに欠けるかなぁというのが正直な感想なのですが、東さんの絵の美麗さ、幻想的なところが補ってあまりあります。
         大変美しい絵です。
         まるで絵本のような印象を与えます。

         大変短いお話なので、これ以上の粗筋紹介はご勘弁を。
         一度手に取ってご覧頂きたいと思います。

         ところで、余談ですが……。
         ジョシュアは左利きと言うことですが、チェロの弾き方は右手で弓を操っているようで、右利きの人と同じ弾き方をしていますね。
         まぁ、左利き用の楽器は高いので、左利きの方でも右利き用の楽器で演奏する方もいらっしゃいますが。
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        2019/11/24 by ef177

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      森鴎外全集

      森鴎外

      筑摩書房
      カテゴリー:作品集
      4.0
      いいね!
      • 『森鴎外全集2』(森鴎外) <ちくま文庫> 読了です。

        小品ですが、「電車の窓」「里芋の芽と不動の目」「桟橋」「花子」「あそび」「身上話」のような作品が私には好みです。

        文壇を攻撃する「杯」「ル・パルナス・アンビュラン」等の作品は、ちょっとあからさま過ぎて、なかなかうけがうことが難しいように感じました。こういうのを読むと、森鴎外は頑固で激しい人だったんだな、と思ってしまいます。

        長編「青年」が収録されています。
        これはなかなかの傑作で、とても面白く読むことができました。
        森鴎外といえば「舞姫」だとか「山椒大夫」だとか「高瀬舟」だとかがすぐ出てきますが、「青年」も代表作と言っていいのではないでしょうか。

        解説では「必ずしも評判がよいとはいえない作品」と書かれていますが、私には、「もし森鴎外が「青年」しか残さなかったとしても、文学史上に名を遺すことになったのではないだろうか」とすら思えました。
        もし森鴎外の諸作品が好きなでもまだこれを読まれていない方がおられたら、ぜひ一読をおすすめしたいです。
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        2017/08/13 by IKUNO

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出版年月 - 1995年7月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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