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1997年6月発行の書籍

人気の作品

      ロシア紅茶の謎

      有栖川有栖

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね!
      • 【新本格派の作家によるクイーンを意識した短編集】
         有栖川有栖は、エラリー・クイーンのファンであると公言していますが、本書のタイトルはまさにクイーンの国名シリーズをインスパイアしているのは一目瞭然。
         その意気や善し!
         ではそのお手並みを拝見といきましょうか。

        ○ 動物園の暗号
         ダイイング・メッセージものです。
         クイーンもダイイング・メッセージは得意ですから、これもオマージュなのでしょう。
         ただ、私はかねてよりダイイング・メッセージについては懐疑的なのです。
         というのは、被害者は瀕死の状態にあるというのにそんなに凝ったダイイング・メッセージなど残せるものかと常々思っているからなのです。
         やるとしても筆記用具があれば、ストレートに犯人の名前を書いてしまうのがせいぜいでしょう。
         もちろん、「そんなことをすれば現場に残っているかもしれない犯人に見つかって始末されてしまうかもしれないから一見何を書いているのか分からないような物を書き残すのだ」と、ミステリ作家は理屈づけようとしますが、私が犯人だとしたら、何であれ殺害行為をした後に被害者が書き残した(あるいは取り出した、指し示した)物を見つけたならそれは意味が分からなくてもその物を廃棄等しますけれどね。
        また、瀕死の被害者がそんなことをできる余力があるかいな?という根元的疑問もあるのですが、まぁ、そこは良しとしましょう。
         本作の場合は、予め別の目的で作っておいた物を取り出してダイイング・メッセージとして利用したというプロットにしてあるので問題点は多少緩和されていますね。
         ただ、このメッセージの謎を解ける人は、ある分野に詳しくないと辛いんじゃないかな~。

        ○ 屋根裏の散歩者
         タイトルはまさに江戸川乱歩の名作のままですし、乱歩作品のとおり、平屋建てのアパートの大家が屋根裏から各室の様子を覗き見してとんでもないものを見てしまったというストーリーです。
         謎は、その大家が殺されてしまうのですが、大家がつけていた各部屋を覗き見たことを書いた日記の略号の意味を解くことです。
         その略号は各室の間借り人を表していることは分かるのですが、どれが誰を指しているのかが謎なのですね。
         着眼点は面白いのですが、その略号が表している状態は普通は固定的なものではないように思えますし(少なくとも私の場合、その略号一つで私を表すことは困難でしょう)、また必ずしもその状態が見えるかどうか怪しいところもあるのでトリックとしてはどうでしょうか?

        ○ 赤い稲妻
         密室殺人ものです。
         クイーンは、実は密室ものはあまり書いていないのですよね(『チャイナ・オレンジの秘密』とあともう一作何かあったな……)。
         これは犯人を見破る手掛かり(主として女性に関することです)が果たして本当にそう言い切れるのか?という疑問を私に抱かせました。
         私は必ずしもそうとは言い切れないのではないか?と思ったのです。
         おそらく、有栖川さんはこの点は女性に聞いて確認していると思うので、私も今嫁に質問してきたら、「有栖川さんの言っている通りじゃないの?」と言い返されてしまった。
         勉強になります(女性に関することについてはまだまだ弱いですなぁ)。
         注目すべきは、作中の有栖川有栖に「最近の推理小説では、なんで現場が密室になっていたのかというその必然性が問われることになっている」と言わせているところなんですよね。
         こういう意識をしっかり持って書いているのが新本格派なのでしょう。

        ○ ルーンの導き
         これもダイイング・メッセージものです。
         着眼点は面白いし、世間一般ではこれを知らない人の方がおそらく多いと思うのですが(「本が好き!」を読んでいる人は知っている人の方が多いかもしれません)、被害者が何故それを知っていたかについても無理なく説明しています。
         ダイイング・メッセージの難しいところは、ミステリですから注意深い読者には分かるものでなければ興を殺いでしまうという弱点があるのですね。
         あまりにも凝ったものにしてしまうと、「そんなの分かるか~!」となってしまうので、そのバランスがまた難しい。

        ○ ロシア紅茶の謎
         表題作であり、国名シリーズばりばりの名前をつけているので思わず微笑んでしまいます。
         これは毒殺もので、タイトル通り、ロシアンティーに毒物が入れられて被害者が中毒死するのですが、その毒物を入れたのは誰か、飲む人は複数いるという状態で確実に被害者にその毒物が入ったロシアンティーを渡せたのは誰かという謎です。
         ちょっと、クイーンの『災厄の町』を彷彿とさせるプロットですね。
         このトリックを成立させるために『ある物』を使うのですが、それは私にも気付きましたがあんまり現実的ではないように思いました(これを使うと手間もかかるしね)。
         私なら同じことをするならもっと別の物を使うな~と思った一作でした。

        ○ 八角形の罠
         なんと、『読者への挑戦』も挿入しちゃっている毒殺テーマの作品です。
         演劇の練習中に突然停電となり、役者の一人が毒殺されてしまいます。
         また、その少し後に、もう一人の役者も毒殺されます。
         手段は、最初の役者は首筋に青酸カリ入りの液体を注射され、2人目の役者は煙草に青酸カリ入りの液体を注入されそれを吸ったというものでした。
         誰がやったか?というフーダニット物ですが、鍵となるのは毒薬を注入するのに使った注射器の処分方法です。
         役者達は1階の練習室におり、そこで事件も発生しているのですが、注射器は2階の鉢植えの中から発見されます。
         どうやって2階に隠すことができたのか、それができるのは誰か?が問題となるのですね。
         著者は一つのトリックを考案していますが、これは可能なのか?
         私の勘違いや読み落としがなければ、この方法で注射器を処分しようとしても、そこは通常閉まっており、開けるためにはそばに行かなければムリだと思うのですが、著者は近づかずに処分できるとして書いています。
         そうかなぁ?

         どの作品もなかなか面白い着眼点で書かれておりそこは評価できると思うのですが、れビュー中で触れたとおり、いくつかの点についてはできないんじゃないか?という疑問も抱いてしまいました。
         実はできるのかもしれませんが、そうであるならば説明が不十分なのかもしれません。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2020/03/19 by ef177

    • 他5人がレビュー登録、 19人が本棚登録しています
      もの食う人びと

      辺見庸

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:地理、地誌、紀行
      3.8
      いいね!
      • 一気読み。
        食べるって何だろう、生きるって何だろう。
        飽食って怖い。自分の中の常識が少し崩れた本。
        >> 続きを読む

        2016/06/13 by one

      • コメント 2件
    • 他3人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      ポプラの秋

      湯本香樹実

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 友人にすすめられて読んで見ました。
        とても薄い本で読みやすいです。(内容の欄を見るとそうは思えないですが・・・)

        どこか風や陽の自然を感じる場所でゆっくりと大切によみたい本です。
        >> 続きを読む

        2015/03/16 by kenyuu

      • コメント 1件
    • 他3人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      黒い家

      貴志祐介

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • 引き続き貴志さんの本。
        恐怖が迫ってくる感覚に、本を手放せなくなりました。
        途中から、モンスター化してきたなと思いましたが、、

        会社を舞台に逃げ惑う場面が特に恐ろしかったです。
        サイコパスは先天性のものなのか、形成されていくものなのかという
        問いかけが印象的でした。
        きっとこんな怖い目にあうと、同じ人間とは思えなくなってしまうのでしょうが‥
        心の傷によって犯罪を平気でする人間がいるのも確か。

        答えの出せない問いかけを残された気分ですね。
        >> 続きを読む

        2016/12/30 by Akane

      • コメント 1件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      天使に見捨てられた夜

      桐野夏生

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!
      • 主人公のミロの心情がメインになりすぎて、依頼内容の結末が取って付けた感が印象に残ってしまいました。
        話の展開には、引き込まれていたので、少し残念ではあります。
        >> 続きを読む

        2017/11/25 by rojin

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      虹を操る少年

      東野圭吾

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね!
      • 評価はあまり高くないですが、個人的には結構すきです。
        非日常なのに、引き込まれました。
        十代の頃に読んだので、特にこういうカリスマ性のある人間の話は無意識に共感できたのかも知れません。
        今読むとどんな感情になるのか、ちょっと興味深いです。
        >> 続きを読む

        2014/01/07 by ほそやん

      • コメント 3件
    • 他1人がレビュー登録、 14人が本棚登録しています
      でんしゃにのって

      とよたかずひこ

      アリス館
      3.0
      いいね!
      • 展開は喜んでいたものの、淡白な絵だからか?苦手な人間らしさ全開の動物が出てくるからなのか?好きになれなかった様子。 >> 続きを読む

        2015/02/01 by ぶぶか

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      あすはきっと

      SchwerinDoris , GundersheimerKaren , 木島始

      童話館出版
      5.0
      いいね!
      • 私の本棚にたくさん並んである絵本の中でも、本当に大切な思い入れのある1冊です。絵も可愛らしくてほのぼのします。今日できなかった事も、明日はきっと。子供たちはそうやって少しずつ成長して行きます。大人だって、心が疲れたら眠って・・・・。あすは きっと。 >> 続きを読む

        2017/11/02 by yuki09

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      人獣細工

      小林泰三

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  人獣細工、吸血狩り、本の3つの短中編の作品で構成される人獣細工。特に面白かったのは最後の本だ。
         表題作の人獣細工は受精部分をぼやかしているがどうであっても胸糞悪い、いやな話だと思う。何をもって人は人と言えるのか?遺伝子工学等のバイオテクノロジーが発達し、実用化もなされている今こそ考えるベースとしてよいのかなと思った。なんにせよ、父親が人間の尊厳を踏みにじるためだけに子を作ったと考えると非常に胸糞悪いが。
         本に出てくる、芸術に対する狂気が面白かった。演奏中に指がなくなった代わりをコンパスでまかなうという発想!ソフトウェアとしての芸術が、人間の脳内にインストールされるという発想が非常に面白かったし、それがコンピュータウイルスのようにふるまうという部分が怖い。完全なインストールがなされ、適合できれば人格は残るのか?
         長さも読みやすかったし、恐怖を感じたい、ぞわぞわしたい人にはお勧めです。
        >> 続きを読む

        2018/10/11 by tnp

    • 2人が本棚登録しています
      気まずい二人

      三谷幸喜

      角川グループパブリッシング
      2.5
      いいね!
      • 三谷幸喜さんの二人シリーズと思い、それも清水ミチコさんとの掛け合いと
        思い買えば、・・・・・・・・三谷さんの人見知り、話下手を克服するために、
        日頃気になるゲスト(女性オンリイ)をお呼びしての対談集。

        でも、気持ちの悪いぐらいの沈黙、突拍子もない話題の振り、
        仕事でなければ、用事思いだしたと、皆さっさと帰ってしまいそうな雰囲気。

        初対面の方とは、緊張もするものですが三谷さんのは酷すぎる・・・・・・
        三谷さんの緊張がこちらまで伝わってきて、心地悪く、最悪。

        早々に、お口直しに、清水ミチコさんとの、二人シリーズを読まなければで・・・・・。

        (今、「むかつく二人」読書中でおます)
        >> 続きを読む

        2015/08/26 by ごまめ

      • コメント 1件
    • 2人が本棚登録しています
      素晴らしいアレキサンダ-と、空飛び猫たち

      Schindler, S. D , Le GuinUrsula K , 村上春樹

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • ル=グインの『空飛び猫シリーズ』第3弾

        お金持ちの別荘に生まれ大切に飼われている猫のファービー家の子猫
        いちばん年上でいちばん大きくいちばん強いアレキサンダーは「僕は素晴らしいアレキサンダーなんだ」と自分でもそう思うくらい、
        怖いもの知らずな男の子です。

        ある時、素晴らしいことをしてやろうと思い立ち、
        庭の柵を越えて外の世界を探検しに出かけます。

        ところが初めて見る世界は怖いものばかり。
        ちっぽけな自分を思い知ります。
        迷子になって高い木の上に取り残されたアレキサンダーを助けたのは、
        翼を持った黒猫ジェーンでした。


        今までの2作に比べ、メッセージが強く押し出された感がある本作です。

        子猫たちが他者と出会い成長する姿を描きます。

        お互いの違い故に相手の役に立てるのだということ。
        暖かく美しい心が他者を救うこと。
        本当に「素晴らしい」というのは、どういうことなのか。

        春樹さんの訳注も後書きもむしろコメントとレビューになってしまっていて、
        翻訳者のそれでは、もはやありません。
        ああ、やっぱり語らずにはいられない人なのね…(^^;;

        まあ、読んでみてください。(^^)
        >> 続きを読む

        2013/07/12 by 月うさぎ

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    • 1人が本棚登録しています
      本家スバラ式世界

      原田宗典

      集英社
      4.0
      いいね!
      • 私の「スバラ式世界」シリーズも3冊目
        「そうそう 私はハラダ教信者だった」と借りてきました。



        なぜにハラダ君のところには、こんなにタイヘンな、ヒサンなことが次々とやってくるのでしょう。

        まあ、きっと私も色々あったんだろうけど、常に平常心、気にしない動じない大らかな性格(多分・・・)からか?すぐ忘れるからか?・・ 
        こんな風に、日常のちょっとした事をドラマチックに表現できるなんて、ちょっとうらやましい気もします。(ハラダ君は疲れるでしょうが・・・)

        疲れたな~ 力抜きたいな~って時に!!
        >> 続きを読む

        2013/01/11 by バカボン

      • コメント 2件
    • 2人が本棚登録しています
      ももこの世界あっちこっちめぐり

      さくらももこ

      集英社
      カテゴリー:日記、書簡、紀行
      3.0
      いいね!
      • 読んでて飽きずに、グングン進んでいく感じが良い、旅行記として面白かった。

        2015/07/02 by kazenooto

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    • 6人が本棚登録しています
      みどりのマキバオ-

      つの丸

      集英社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
      いいね!
      • (当時の呼称で)4歳時のグランプリ。
        第一部の最終巻となるのがこれですが、
        幻の黒い風は何度読んでも涙を誘います。

        ・・・正直、ここで燃え尽きました。
        第二部以降は魅力的なライバルを創作できずに
        自滅した感があります。
        >> 続きを読む

        2011/06/23 by RZ350

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    • 1人が本棚登録しています
      リヴィエラを撃て

      高村薫

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • 極上の国際スパイ小説。
        カタカナの登場人物に慣れないけれど、IRA、ベルファスト、ロンドンと、まるで映画の世界です。
        これが舞台が歌舞伎町なら、まるで違う印象でしょう。
        冒頭から驚きですが、下巻でどう収束されるのか楽しみです!
        >> 続きを読む

        2014/01/18 by Hiropika

      • コメント 4件
    • 5人が本棚登録しています
      リヴィエラを撃て

      高村薫

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 元IRAテロリストのジャック・モーガンは東京で斃れる際、誰と会い何を見たのだろう。伝書鳩ことケリー・マッカン、ギリアム、キム・バーキン、手島、皆があれほど惹きつけられ、全力疾走の後、みなが消えた闇は何だったのだろう。そして、ジャックの遺児はどんな人生を歩むのだろう。終章で、手島をして、この静けさは平和ではなく苦しみの沈黙だと語らしめ、たちまち辺りを覆い隠すような春の雨が降る大地。アイルランドの歴史を学ばないと、この小説の本当のところは理解できないかもしれませんね。
        それにしても、映画化されないのでしょうか。大ヒット間違いなしですよ!
        >> 続きを読む

        2014/02/18 by Hiropika

      • コメント 2件
    • 4人が本棚登録しています
      秘伝香港街歩き術

      藤木弘子

      新潮社
      カテゴリー:アジア
      4.0
      いいね! momomeiai
      • 自称 香港の達人が語る香港の楽しみ方。

        深さ加減がちょうど良い香港ガイドブック。

        香港好きの自身としては、観光客のみをターゲットとしたガイドブックでは物足りない。
        かと言って、香港の歴史と本気で向き合うような学術書では無味乾燥でつまらない。

        類似の作品では、結局のところ、食文化や変な香港人の描写など、どこかにフォーカスしていくものが多い中で、本書は、わずかながらも香港に住み、現地での暮らしも語りつつ、友人の日本人旅行者の観光に付き合うことで、要所も押さえており、お得感が有る。

        香港庶民の暮らしぶりの描写では、行間から滲み出る香港のパワーは絶大で、いつもながら有る意味で望郷の思いを感じるのは何故なのだろうか。

        巻末の香港映画俳優のカラー写真もなかなか楽しめた。
        >> 続きを読む

        2012/04/04 by ice

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    • 1人が本棚登録しています
      嗤う伊右衛門

      京極夏彦

      中央公論新社
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 岩を裏切り、毒を飲ませ
        別の娘と婚礼しようとする極悪人である南北版の伊右衛門を、著者は大胆にも、
        不器用で実直な侍として描く。
        また、疱瘡(ほうそう)を患い、顔は崩れ、髪も抜け落ち、腰も曲がるほど醜くなっていると表現されている
        岩の人間としての凛とした美しさが際立つ作品です。

        自分はこの著者とは相性の良い作品とそうでない作品の差が激しいので
        好きな作品と苦手な作品に分かれるのですが

        この作品も作中、前半部は大好きなんです(笑)
        特にこの“伊右衛門”と“岩”双方の登場人物が・・・
        不器用な二人のやりとり。
        「あの作品をこう料理するか・・・」と本当にびっくりします。

        岩というある意味、被害者として百数十年も描かれてきた人間を
        そうではなく、その病気・外見すら受容して生きていく強い人間として描き
        (そのなかで、垣間見える女心がとても可愛らしい)

        ・・・自分は頑なな女性が大好きなんですよ(笑)

        タイトルにもなっている
        伊右衛門が“嗤う”のはどこなのか。
        様々な人間の情と欲と愛を動かせながら
        後半はどうしても本家の話の大きな流れを変えずに進行していきます。

        (・・・ただ、ラストはなぁ・・・ああいう方法しかないとはいえ・・・)
        なんか、悲しいです。

        読んでいくうちに、妖怪・怪異の類でなく
        きちんとした人間の業によってすべての悲劇が解かれる
        推理小説にもなっているのに
        気がつくのに時間がかかりました。
        >> 続きを読む

        2013/09/04 by きみやす

      • コメント 5件
    • 3人が本棚登録しています
      物語フィリピンの歴史 「盗まれた楽園」と抵抗の500年

      鈴木静夫

      中央公論新社
      カテゴリー:インドネシア
      5.0
      いいね!
      • とても面白かった。

        恥ずかしながら、私は今までフィリピンの歴史にはほとんど無知だったのだけれど、この一冊でだいぶいろんな歴史の物語を知ることができた。

        抵抗五百年の歴史。
        スペインやアメリカの植民地支配を受けながら、その時々に、一身をかえりみずに祖国の独立に尽くした人たちの姿に胸を打たれる。

        そういえば、私が小さい頃、アキノさんの暗殺事件があった。
        空港での暗殺の様子が、繰り返しテレビに映っていたのを見て印象的だった記憶がある。
        その頃は、ぜんぜんアキノさんがどんな人か知らなかった。
        というか、この本を読むまでほとんどよく知らなかったのだけれど、とても魅力的な、立派な人だったんだなぁと胸打たれた。

        アキノさんを死に追いやったマルコス独裁政権は、ひどいもんだとはしばしば聴いていたが、聞きしにまさるひどさだとこの本を読んでいて驚いた。
        やっぱり、適当にろくでもない指導者を選ぶと、本当にひどいことになってしまうんだなぁとあらためて思う。

        また、この本の前半で記されているスペイン支配のあまりのひどさには、ただただ絶句した。
        秀吉や家康が鎖国と切支丹弾圧の政策をとったことも、あの時代では妥当だったのかもなぁという気がしてきた。
        仮に、開国が続き切支丹勢力の増大があった場合、日本もフィリピンのような状況になる危険性はある程度はあったろう。

        スペイン統治下のフィリピンは、貢税・奴隷化・強制労働の三重苦に苦しみ、精神的にもキリスト教によって支配され、現地の文化は見下され破壊されていった。
        教会は巨大な権力や財産を持ち、現地人への差別は横行し、聖職者の腐敗も甚だしかった。日本の切支丹の夢とは裏腹な現実があった。
        日本の中だけで見ると、切支丹の人々はとても気の毒な気がするが、家康はかなり冷静に国際情勢を正確に見たうえで、政策を決めていたのだろうと思えた。

        また、しばしば第二次大戦を日本によるアジア解放の戦争だったという人の主張を聞くけれど、この本を読んでいると、どう考えてもフィリピンの場合はあてはまらないと思えた。

        1916年のジョーンズ法で、アメリカはフィリピンの将来の独立を認め、行政権は握り続けていたが、立法権の自治はすでに認めていた。
        1934年のフィリピン独立法で、すでに十年後の独立が決まり、独立準備政府ができていた。日本は、この程度のことも、自国の植民地に認めていただろうかと考えさせられる。
        ことフィリピンに関しては、日本の侵攻は、別に独立とは関係ない、迷惑至極なことだったのかもしれない。

        そういえば、昔、何の本だったろうか、日本はわりと開戦の直前になってから、フィリピンの詳しい地理もそれまでわかっていなかったので、急遽地図や資料を集めて、南方作戦を樹立したと読んだ記憶がある。
        確かな話かどうかはわからないけれど、もし本当ならば、なんとも準備不足な気がする。

        一方、この本によれば、フィリピン側では、かなり早い段階から日本の侵攻について懸念を持っていたらしく、ケソンとマッカーサーはたびたびそのことを話し合っていたらしい。
        また、フィリピンの社会党と共産党は、対米独立より日本に対抗することを優先して協力関係を1938年には確立している。

        バターン死の行進も、前々からきちんと事態を想定して準備していれば避けられたかもしれないし、どうも日本軍は南方作戦に関して、あまりにも準備不足だった気がする。
        緒戦で勝ちまくればいいというわけではなく、戦争は終結まで含めて準備が必要だったはずだ。

        良くも悪くも、その点、アメリカはいろいろとやり方が上手だなぁと思えた。

        スペインによる精神の奴隷化と身体の奴隷化。
        アメリカは、また別の巧妙な形で、精神の奴隷化を進めたこと。
        それらに、いかにフィリピンの人々が抵抗し、闘い、紆余曲折を経ながら、今もそのことがテーマであること。

        この本は、そのことをとてもわかりやすく書いてくれていて、とてもためになった。
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        2013/05/16 by atsushi

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      坊っちゃん殺人事件

      内田康夫

      中央公論新社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 【登場人物】
        浅見光彦……ルポライター。四国松山に漱石、子規、山頭火の足跡をたどる取材に出かけたところ、2つの殺人事件に巻き込まれ、容疑者扱いされる。浅見家の「坊っちゃん」。
        稲本敦子(マドンナ)……美熟女。有能なクラブの経営者で、支店を幾つも持っており、東京にも進出予定。光彦をストーカーと思い込んで警官に通報するが、その夜、死体で発見される。
        中田刑事(トンカツ)……年のころ35、6。トンカツに目鼻をつけたような面長。熱血漢の短気で、光彦をマドンナ殺害の容疑者として付け狙う。
        丸山登(山嵐)……巡査部長。丸坊主の頑丈そうな男。意外に物分りのいい人物で、光彦を信頼して協力する。
             
        水沼哲男(鶴)……73歳。松山市の俳句結社・青山社を主催。句会の最中、毒物を注射されて死亡する。
        水沼真理子(撫子)……水沼哲男の孫娘。
        波戸雄二郎(狸)……波戸船舶興業株式会社専務。青山社のスポンサーとなった縁で幹部として収まっている
        武田健夫(野だいこ)……華奢な感じの男。青山社の同人。幹部クラスだが、「雑用係を務めさせていただいております」と謙遜している。
        五十崎銀治(いか銀)……水沼老人が殺害された内子座の管理人。
        畑野(バッタ)……役場の職員。水沼真理子の恋人。水沼老人殺害容疑者として逮捕される。
        (うらなり)……水沼老人殺害事件を担当する主任警部。痩せて青白い顔をした秀才タイプ。顔の下半分が妙に膨れている。
        副署長(赤シャツ)……松山東警察署副署長。オールバックに金縁眼鏡、チョビ髭に金歯。
              
        【読後コメント】
         キャラ設定は夏目漱石『坊っちゃん』にちなんでいますが、物語そのものはオリジナルです。
         浅見光彦が語り手となっています。
             
         辻真先『四国・坊っちゃん列車殺人号』
          http://sfkid.seesaa.net/article/416187941.html
        の主人公・瓜生慎もトラベルライターの素人探偵です。
         瓜生慎の方は早い段階から面が割れて、名探偵ということで警察官から頼られていますが、浅見光彦の方は正体を明かさないので、警官達から目の敵にされ、挙げ句の果てには容疑者扱いされます。
         でも結局正体が明らかになって恐縮されるところは、水戸黄門の印籠パターンです。
           http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150531/p1
        >> 続きを読む

        2015/05/31 by 荒馬紹介

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出版年月 - 1997年6月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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