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1997年9月発行の書籍

人気の作品

      本を読む本

      外山滋比古 , AdlerMortimer Jerome , 槙未知子 , Van DorenCharles Lincoln

      講談社
      カテゴリー:読書、読書法
      4.3
      いいね!
      • 本を読む本。J・モーティマー・アドラー先生、V・チャールズ・ドーレン先生の著書。本の読み方、正しい読書の仕方が学べる良書です。読書好きや読書博士、本の虫であることを自覚している人にとってはもちろんのこと、そうでない人にも参考になる点がたくさん。この本を読むと読書好きや読書博士、本の虫になってしまうかもしれません。 >> 続きを読む

        2019/05/23 by 香菜子

    • 他5人がレビュー登録、 21人が本棚登録しています
      ムーン・パレス

      AusterPaul , 柴田元幸

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Tukiwami
      • 【あらすじ】
        この小説の主人公マーコ・スタンリー・フォッグは生まれた時から父親はおらず、母は少年時代に他界している。その後、母方の兄である伯父のビクター・フォッグに育てられる。フォッグは学業のほうは優秀だったらしく、やがてコロンビア大学に進学し周囲から変わり者とみられながらも大学生活を謳歌していた。

        在学中に伯父が亡くなると、フォッグは絶望する。悲しみを紛らわせるために金遣いが荒くなり経済状況が逼迫するが、そのことを分かっていながらフォッグはなんら手を打たない。やがて家賃すら払えなくなり、アパートを追い出され浮浪者になってしまう。放浪生活の果てに友人のジンマーと放浪生活中に一度会っただけのキティに救いだされる。フォッグはキティと結ばれて、再び世界との繋がりを取り戻す。


        【感想】
        人が生きる理由は生存本能に過ぎないのかもしれないが、人がよりよく生きようとするのは他者が存在するからだろう。他人からよく見られたいがために、あるいは役立ちたいがために知識を蓄え、礼儀作法や技能を身につけ、身だしなみに気を遣う。ジャック・ラカンは「人間の欲望は他者の欲望である」と言った。人は他者の存在によって向上しようとする意志――よりよい未来を目指すことができるのだ。わが身ひとりのためだけに、毎日気合をいれて料理を作ることのできる人間がどれだけいるだろう。

        フォッグは浮浪者になったことで、絶望するわけでもなければ焦燥感に駆られるわけでもない。むしろ、この生活を試練のようなものとして受け入れているようなモノローグすらある。だが、これは後付けの自己正当化だろう。フォッグが悪化している経済状況への対策を打たなかったのも、浮浪者としての生活から抜けだそうとしなかったのもつまるところ、それらをするだけの動機を持たなかったにすぎない。伯父を失ったフォッグは世界との唯一の繋がりを断たれて孤独となり、未来を切り開く意志をも失ったのである。

        この作品からは『ガラスの街』と共通するもの、例えば父の存在や著者の言語への興味、あるいは執着――そして、孤独を感じた。孤独といっても『ガラスの街』のそれとは種類が違う。あちらの作品の主人公には恋人や友人はおろか知人と言える人間すらいない、まさにガラスのように冷たく透明な孤独だ。

        一方、フォッグには友人や恋人のキティがおり、愛情をそそいで育ててくれた伯父だっていた。しかし、フォッグには自分と繋がっていると感じることのできた他者は伯父とキティしかおらず、それだけが世界との繋がりだった。そのほかの人間――友人、雇用主、他の使用人――とは繋がっていると感じられなかった。他者がそこにいるのに繋がることのできない寂しさ。無限に思える星々がきらめく空間に浮かぶ月より、むしろ1つ1つの星のほうこそ孤独なのかもしれない。

        「――ちょっと考えてみたまえ。神も見捨てたこの街に何かが大量にあるとしたら、まさしくその、名もない他人というやつじゃないかね。街中にあふれておる。我々のまわりに何百万といる」(p295)。
        >> 続きを読む

        2016/09/14 by けやきー

    • 他3人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      マクベス

      野上豊一郎 , ウィリアム・シェイクスピア

      岩波書店
      カテゴリー:戯曲
      4.3
      いいね!
      • 昔読んだ時はマクベスやその夫人や三人の魔女が印象的だったんだけど、今回読み直してみると、マクベスに対して果敢に挑戦しついに打倒に成功するマルコムとマクダフが印象的だった。

        マルコムとマクダフは、マクベスが王位を簒奪するとすぐに亡命し、マクベス打倒のために冷静沈着に行動し、果敢に挙兵し、激戦の末にマクベスを倒すことに成功する。
        そのようにありたいものだと読んでいて思った。

        それにしても、人の運命というのは結局なんなのだろうか。
        他の者にそそのかされたとしても、結局行為を選択した責任は自分にある、ということなのだろう。
        >> 続きを読む

        2014/09/07 by atsushi

      • コメント 3件
    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      ラヴ・ユー・フォーエバー

      乃木りか , 梅田俊作 , MunschRobertN

      岩崎書店
      カテゴリー:芸術、美術
      4.5
      いいね! hanagon
      • 私が最も愛する絵本で、友人にプレゼントしている絵本。

        この絵本との出逢いは、かれこれ、もう10年以上前の話。上の子供の幼稚園で講演会があり、その先生がこの本を勧めてくれました。

        我が子が、どんなにやんちゃで叱っても、我が子が、どんなにヤンキーで手が付けられなくなっても、夜になって我が子が眠りにつくと、お母さんがベッドでギュっと抱きしめる。どんなことになっても、私はあなたの味方よ・・・って、伝えているかのように。
        子供はそれをちゃんとわかってる。

        初めて読んだ時、涙が出ました。この絵本に出逢えて良かった。
        >> 続きを読む

        2017/02/11 by はなぴょん

      • コメント 4件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      砂粒の私記

      秋山 駿

      4.0
      いいね!
      • 雑誌連載時に何回か読んだことがあります。
        秋山が石を拾ってきてひたすら石を観察して、その考察を書いてあったりしますが、私は素直に「変わっている(^_^;)」と思いました。
        変わってはいますが非常にユニークで頑丈な精神の持ち主です。読んで損はないと思います。(いや、本当は肌のあわない人が多いかもしれませんね)
        あと、〝貨幣は社会が出す舌のようなものだ〟という鋭い発言もしています。
        >> 続きを読む

        2017/01/19 by とりゴロー

    • 1人が本棚登録しています
      『深い河』創作日記

      遠藤周作

      講談社
      カテゴリー:日記、書簡、紀行
      4.0
      いいね!
      • 『深い河』を書き上げるまでの三年間の遠藤周作の日記。

        これを読むと、最初の頃の設定とかなり出来上がりは変わっていったことに驚く。

        また、登場人物の設定や、それらの登場人物を実際に小説によく描くためにはかなり苦労したみたいで、かなり経ってから、「固かった氷塊がとける」ような思いがして、やっと自由に書けるようになったという記述も興味深かった。

        「人間の哀しさが滲む小説を書きたい。それでなければ祈りは出てこない。」
        (55頁)

        という言葉も、心に響いた。

        また、日記だけでなく、この本には、「宗教の根本にあるもの」という短い文章も収録されており、それもとても興味深かった。

        遠藤周作が言うには、宗教とは無意識のものであり、自分を生かしている大きな生命を意識することだという。
        何かしら人生において見えない働きとなって、自分の人生を後押しししてくれるもの。
        その無意識的なものへの意識が宗教だという。
        それは、歴史や文化によってさまざまな形をとるが、その点ではどの宗教も同じであるという。
        そして、復活とは蘇生と異なり、自分を生かしている大きな命に戻ることだという。

        『深い河』を読んだ後で読むと、興味深く読める一冊だと思う。
        >> 続きを読む

        2013/06/06 by atsushi

      • コメント 3件
    • 1人が本棚登録しています
      カ-ル・セ-ガン科学と悪霊を語る

      SaganCarl , 青木薫

      新潮社
      4.0
      いいね!
      •  全25章。
         本当の科学とはいったい何なのかを解き明かすものであり、えせ科学、UFO、魔女裁判などなどを取り上げている。
         本書の現代はTHE DEMON-HAUNTED WORLD : Science as a Candle in the Dark『悪霊に憑かれた世界-暗闇を照らすロウソクとしての科学』。
         読むのに時間がかかったものの、すごく面白かった。科学とは何かと考えさせられる。本書が取り上げているのはアメリカの例が中心なのだが、それは著者がアメリカのことをよく知っているため。アメリカが特にえせ科学や神秘主義が盛んというわけではない。

         UFOの話で、アメリカで1992年に世論調査をしたところアメリカ人の2パーセントが宇宙人によって誘拐されたことがあるとわかった。ただし、この回答者に選ばれたのは宇宙人誘拐説を信じきっている人たちである。もし誘拐された2%を全世界に当てはめた場合、一億人を超える。
         一億人って、と思わず絶句。もしこんな数が本当なら、警察におい仕事しろよ、と苦情がくるだろう。

         困ったことに私たちは実際にあるものを見ていても、もしかしたらそれは「脳が見せているもの」なのかもしれない。しかし見たのだから本物と言い切れるのか……。人っていうのは小難しい説明より、神秘なるものに希望というか憧れみたいなものを抱いるのではないかな。だからこそ、インチキでも不可思議なものへ心が揺らいでしまう。

         また科学が社会や教育にどう扱われているのかも取り上げている。科学には柔軟な頭が必要だが、いまの社会は暗記をさせるだけ。科学者になろうとする興味を握りつぶしているかのようだ。
         この本は科学が苦手だな、という人にこそ読んで欲しいかもしれない。
        >> 続きを読む

        2014/06/12 by hasai

      • コメント 3件
    • 1人が本棚登録しています
      青ひげ

      浅倉久志 , カート・ヴォネガット

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【ねぇねぇ、どうしてこれが「青ひげ」なの? 何で?何で? ……それはね。】


         軽妙洒脱というのが、カート・ヴォネガット(・ジュニア)の持ち味でしょうか。
         最初に、お読みの方が多分気になっているであろう括弧書きの(・ジュニア)のことから書いておきますね。
         「ジュニア」が付いた名前でも著作を残しているのですけれど、お父様が亡くなった後はジュニアを取った名前で書いているのだそうです。それで、両用の表記があるということでご了解を(「ジュニア」あるなしにかかわらず同一人物なのだ……あーややこし!)。

         まぁ、飄々とした文体です。
         一つの短い章の中に短い文章の塊があって、その後にアスタリスクを入れて休符し、また続けるような。独特のリズム感があります。
         文体はシニカルであり、ユーモラスであります。「まぁそういうものだ」などという言葉が、短い文章の塊の最後に繰り返されたりもします。

         私が最初に読んだヴォネガットの作品は「スローターハウス5」でした。
         作者の名前は知っていました。それとなく興味はあったのですが、色々な書評を読んでみても今ひとつピンとこなかったこともあり(あ、読み終えたから言えますが、これは書評が悪いのではなく、こうとしか書けなかったのだろうと納得しています)、ずーっと手を出さずにいました。
         でも、気にはなっていたのですよ。

         それで(大分以前ですが)意を決して読んでみることにしたのですが、さて、何から読もうか?
         「スローターハウス5」は、大昔に映画化されています。……今、調べたら1972年の映画ですね。映画化されているということは知っていたので、まずそれを読みました。
         う~ん、これをよく映画化したもんだ。
         それよりも何よりも、この作品は、それまでにカート・ヴォネガット(・ジュニア)が書いてきた様々な作品の登場人物があちこちに散りばめられているという趣向。
         これを最初に読むのはいかんですよねぇ(面白さ半減になっちゃう?)。

         では、ということで次にとっかかったのがこの「青ひげ」でした。
         「青ひげ」(Barbe-Bleue)ってご存知ですか?
         一般には、童話で取り上げられているあのイメージかもしれませんが、モデルはジル・ド・レイという貴族であるという説もあります。
         ジル・ド・レイについては澁澤龍彦が大好きだった様で、散々書いているのですけれど、澁澤が書く「青ひげ」は猟奇的な方。

         主たるストーリーは、何度かの結婚歴がある侯爵だか伯爵だかの青ひげが、城中に初々しい新妻を迎えるお話だったと思います。
         広い城の中の全ての鍵を渡し、この城のどこでも自由に見てよろしいと言います。しかし、ただ一つの部屋だけは開けてはいけないと。
         こう言われると余計に開けたくなるのが人情ってもので(この辺はヴォネガットも皮肉っているのですけれどね)、新妻は青ひげの留守の間についにその部屋を開けて中を見てしまうのですよ。
         その中には、これまでの青ひげの妻たちの白骨化などした死体がごろごろと……(きゃー!)
         で、お約束です。そこに青ひげが現れ、「お前は、見てしまったのだな」と……

         というのが、オリジナルの「青ひげ」なのですが、今回ご紹介する青ひげはそんなのとはぜ~んぜん関係ない(あ、換骨奪胎的テイストは散りばめてあるのですけれどね)です。

         主人公は、老齢の域に達した画家であった復員兵です。
         2度目の結婚で得た(奥さんは亡くなってしまってその遺産を相続したのですね)海辺の広壮な屋敷にしょぼくれて住んでいた男やもめです。
         彼は、若い頃非常に絵画の素養があり、まぁ、すったもんだの末、極めて写実的な絵を書く有名画家の弟子になります。
         しかし、その後、紆余曲折あり、彼自身素晴らしい写実的技術を持っていたのに、抽象絵画の道に進んでしまいます。
         そこでもそれなりの成功をおさめたのかも知れませんが、悪いことに粗悪な塗料を使っていたため、高額で買い取られた彼の作品があちこちで一夜にしてはがれ落ちる始末。
         もう、絵なんか描かないぞ~というわけで、当時のアトリエにしていた(今は亡き妻の相続で自分の物となっている)ジャガイモ貯蔵納屋に「ある物」を入れて固く封印してしまいたのでした。

         その後は、同じ復員兵の作家と広壮な屋敷で共同生活をしてうだうだと暮らしていたのですが、ある日、プライベートビーチに30代なんですかね、魅力的な女性が入り込んでいるのを見つけます。
         まぁ、侵入をとがめることもないけれど、一応挨拶でもと声をかけたところ、その女性曰く「ねえ、あなたのご両親はどんな死に方をしたの?」
         それがきっかけで、彼女(未亡人ね)に、有り余っている部屋を貸して一緒に生活することになります。
         彼女は、その地(実は今では結構なリゾート地になっていて、若者達が来たりもするようです)を舞台にして小説を書くつもりだと言うのです。

         同居していた仲間の復員兵作家は、素人が何でも書けると思ったら大間違いだよみたいな警句をやんわりと与えたりしますが、が!
         実は、彼女は大ベストセラー作家だったのでした!
         しかも、好奇心旺盛。勝手に主人公の家の隅々まで、あるいは使用人のプライベートまですんなりと調べ上げてしまいます。
         そして、しょぼくれていた主人公には、自伝を書くように勧め、その結果書かれたのが本書という構成になっています。

         ヴォネガットは、冒頭で謝罪を書いています。
         「青ひげ」の物語を書くつもりだったけれど、書いてみたら結局はしょぼくれた老人の自伝のようになってしまってすまん、と(まったく人を食った謝罪ですこと)。
         もう、にやにやしちゃいます。
         いいえ、もちろん、この作品は「青ひげ」なのですよ。
         ヴォネガットは、ちゃんと伏線(というよりもっと分かりやすいですけれど)を書いています。
         
         一番分かりやすいのは、この物語の感動的なエンディングにも使われている「ジャガイモ貯蔵納屋」のことです。
         好奇心旺盛なベストセラー作家の彼女は厳重に閉ざされているこの納屋を開けたくて仕方ないのです。
         それはまるで、青ひげが開けてはいかんと厳命した部屋のようではありませんか。
         それが、最後の数頁に描かれていて、とても良かったなぁという読後感を与えるところなのですが、いいえ、それだけじゃなく、実はよく読むとあちこちに「青ひげ」があります。

         一読しただけですが、カート・ヴォネガット(・ジュニア)の作品は、結構凝っているのではないかって感じました。
         もっと読み込んでみたら、沢山の「仕掛け」に気づけるかもしれないですね。
         テイストは軽く。でも良い作品だったのでご紹介させていただきました。
        >> 続きを読む

        2019/06/22 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      帰還

      ディック・フランシス , 菊池光

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • ディック・フランシスの小説を久しぶりに、本棚の奥から取り出して読みました。読了したのは彼の晩年の作品「帰還」です。

        この物語の主人公ピーター・ダーウィンは、外交官。職業の特性が、その人間の特性を作り上げるという設定は、ディック・フランシスの小説に多く、この「帰還」も例外ではありません。

        このピーター・ダーウィンの場合は「愛想よく関心を示しながら何も読み取られない目をしていること」だ。彼に向かうと誰もが、心に隠していることを話し始めるという極めつけの聞き上手。

        物語は、帰国途中の主人公が、ひょんなことから娘の結婚式に向かう老人夫婦と知り合い、彼らをイギリスまで送っていくところから始まる。

        この老人夫婦の娘が住んでいる町は、主人公が子供時代を過ごした郷里で、その町で静かに進行する陰謀に、やがて彼は立ち向かうことになるのです。

        ディック・フランシスのいつもの例にもれず、謎解きの要素の濃い物語ですが、それは特にどうということもありません。それよりも、主人公の母親と義父、老人夫婦など例によって登場人物のひとりひとりが、生き生きと活写されます。

        今さら言うまでもありませんが、このうまさには、あらためて舌を巻きます。こういうディテールを読むのが、ディック・フランシスの小説を読む愉しさで、もうそれだけで充分なのです。

        ディック・フランシス、老いてもなお健在だということを実感した作品でした。


        >> 続きを読む

        2018/01/26 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      死の泉

      皆川博子

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!

      • 私の大好きな作家のひとり、皆川博子の第32回吉川英治文学賞を受賞した「死の泉」を読了。
        高貴と野蛮の相貌をそなえた絢爛たる、ゴシック・ロマンの豊饒な物語世界に魅了されてしまいました。

        カストラート-----去勢手術によって、変声期前のソプラノを保ったまま成人した男性歌手たち。
        十七~十八世紀のヨーロッパで全盛を誇ったその歌声には、一種、魔性の魅力があったというが、今日では最末期に残された不鮮明な録音から、わずかにその片鱗をうかがうしかない。

        この「死の泉」は、西欧的な高貴さと野蛮の双貌をそなえた倒錯的な存在と、同じく西欧的な高貴さと野蛮の産物であるナチス優生学の悪夢とを結び付けるという、卓抜な着想から生み出された、華麗にして絢爛たる長篇ロマンの傑作だと思いますね。

        第二次世界大戦末期のドイツ。
        アーリア民族純血化計画の一環として設けられた、児童養育施設に入所したヒロインは、生まれてくるわが子を守るため、SS幹部で所長のクラウスの求婚を受け入れ、類まれな美声の持ち主である二人のポーランド人孤児の養母となる。

        科学と芸術の狂的崇拝者であるクラウスは、怪しげな生体実験を繰り返すかたわら、少年たちに厳しい声楽のレッスンを課し、さらに-------。

        帝国崩壊によって四散した"偽りの家族"の絆が、十五年の歳月を経て再び結び合わされた時、凄惨な復讐劇の幕が上がるのです。

        複雑に絡み合う愛欲恩讐の因縁の糸で、絢爛と織りなされる"運命の悲劇"であるこの作品には、ミステリやサスペンスよりも、むしろ古色蒼然たるゴシック・ロマンという呼び名こそが、ふさわしいのではないかと思いますね。

        とりわけ、作中の人物が次々に、甘美なる死の暗冥へと退場していく最終章には、"悪意と惑乱"のストーリーテラーたる作者・皆川博子の面目が、まばゆいほどに輝いていると思う。

        >> 続きを読む

        2018/05/10 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      日本はじめて物語

      歴史探検隊

      文藝春秋
      カテゴリー:日本語
      4.0
      いいね!
      • 日本で始めて○○した人。

        うんちくとしてだけでなく、その時代の世相を映しているのが面白い。

        雑学として非常に面白いのはもちろん。

        その時代背景や当時の日本人の思想など、様々な世相を反映した情報が得られるのを非常に興味深く感じた。

        とくに西洋から入ってきたものに関しては、鎖国や戦争の影響が色濃く、体制が敷いた政策が、結果的に文化を統制して来たことが分かる。

        また全体的に感じたのが、ものを大事にする文化から消費文化へのシフト。

        日本の発展において、欧米の科学技術の成果を取り入れることは必須だったが、その大量生産大量消費の悪習まで素直に取り込む必要は無かったと思う。

        おそらく敗戦の結果、経済で追いつけ追い越せをやっていく中で、良し悪しはともかく欧米のやり方をとにかく取り込もうとした時期が有ったのだろう。

        エコというキーワードに注目が集まる現代だからこそ、モッタイナイ文化を今一度見直す良い契機なのだと改めて感じた。

        楽しみながら教養が身に付く良書。
        >> 続きを読む

        2011/11/02 by ice

    • 1人が本棚登録しています
      マディソン郡の橋 (文春文庫)

      ロバート・ジェームズ ウォラー

      4.0
      いいね!
      • キンケイドのセリフにまいった。「ぶしつけかもしれないけど、あなたはすごくきれいだ。わめきながらめちゃくちゃに町中を走りまわりたいほどきれいだ。わたしは真面目に言ってるんです。言葉のいちばん純粋な意味で、フランチェスカ、あなたはとてもエレガントですよ」

        こんなセリフを人生の中で一度でも言ってみたいし、また女性であれば、言われてみたいだろう。そのとき、その人の人生は悔いなしだ。

        人には本来的に結ばれるべき異性があるような気がする。

        その永遠の人と、はじめから結ばれれば文句なしに幸せの人生だろう。だが運命的な出会いは都合よくはまわってこない。すでに人生の半ばにさしかかったときにその出会いがあったら、そして一方がすでに他人と結婚していたらどうなるのか。

        偶然が生み出した4日間の奇蹟的な愛の物語がとても美しい。それはけっして4日間の愛欲の日々が美しいのではない。むしろ激しい愛の世界に陥りながらも、それぞれが自らを律したことが美しいのである。その後、二人が合うことはなかったが、思い出は永遠に残る。

        【このひと言】
        「ぶしつけかもしれないけど、あなたはすごくきれいだ。わめきながらめちゃくちゃに町中を走りまわりたいほどきれいだ。わたしは真面目に言ってるんです。言葉のいちばん純粋な意味で、フランチェスカ、あなたはとてもエレガントですよ」
        >> 続きを読む

        2017/04/16 by シュラフ

    • 2人が本棚登録しています
      みぞをなぞるひらがなのほん

      守誠

      サンリオ
      4.0
      いいね!
      • タイトル通りなのですが、溝に沿って鉛筆を滑らせていくと文字が書けるようになっています。

        小さいお友達と一緒に遊ぼう☆と思って買ったのですが、実は大人でも気付きがあります。

        すっかり自分の文字が定着してしまっていますが、お手本の文字とは全然違うの。

        キレイな字を書ける人って素敵だと思うので、これを機会に取り組んでみようかと思っています。

        まさかのわたし用で、もう1冊購入です(笑)
        >> 続きを読む

        2012/10/22 by tamo

      • コメント 6件
    • 1人が本棚登録しています
      キャサリン・グラハム わが人生

      キャサリン グラハム

      5.0
      いいね!
      • ワシントン・ポスト絡みの映画2本が日本で上演中である。1本は
        「ザ・シークレットマン」。ウォーターゲート事件の時、ワシントン・
        ポストの記者に助言を与えた匿名の情報源「ディープ・スロート」で
        あり、FBI副長官だったマーク・フェルトを主役に据えた作品。

        そして、もう1本が「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」。
        ヴェトナム戦争時の国防総省の機密文書の報道をめぐって、政府
        からの圧力を跳ね返し記事の掲載続行を決断した社主キャサリン・
        グラハムを中心に、権力に歯向かった報道機関の決断と闘いを
        描いている。

        本書の一部がこの映画の元ネタである。日本での公開に合わせて
        該当部分を再編集した作品も出ているらしい。ちなみにペンタゴン・
        ペーパーズをすっぱ抜いたのはニール・シーハン記者を中心とした
        ニューヨーク・タイムズ。ワシントン・ポストはニューヨーク・
        タイムズに掲載禁止の仮処分が出た後に後追いで報道している。

        映画が公開されるということで、実家に眠らせていた本書を引っ張り
        だしてきたのだが、まぁ、分厚いこと。650ページ超で上下2段組み。
        著者の両親の祖父母の時代からの家族史に始まり、著者の歩んで来た
        道のりがかなり詳細に綴られている。

        父が買収したワシントン・ポストの経営を、伴侶であったフィル・
        グラハムが受け継ぎ、フィルの自殺後は父が立て直し、夫が改革を
        断行して経営を立て直した新聞社の社主となったのが40代の時。

        息子に社主の座を譲るまで、約30年に渡って女性経営者として過ごし
        たんだよな。彼女が社主になった時代、アメリカでもまだまだ女性は
        子供を産んで家庭を守ることが第一だったんだよな。

        そんな時代に男社会の代表とも言える報道機関のトップになり、試行
        錯誤しながら会社を運営し、20世紀の終わりごろにはアメリカで最も
        注目される女性にもなっている。

        著名人や歴代大統領、政府高官の名前が多数出て来て華やかな交流がある
        反面、労働争議で組合員がストに突入した時には社主自らが読者からの
        苦情電話に対応していたりする。ソフトバンクに苦情電話を入れたら、
        孫社長が対応してくれるようなものか。

        映画の元となったペンタゴン・ペーパーズの部分の記述は、緊迫感に
        欠けるかなという感じだったがどのように描かれているのは気になる
        ので、やはり映画を観なきゃいけないかな。

        20世紀後半からのアメリカ史ともなっている部分もあったので、読むのに
        時間はかかったが面白かった。でも、夫であるフィルの死後、いくつかの
        買収を断りキャサリンが必死に守ってきたワシントン・ポスト社だったが、
        2013年にamazonのジェブ・ベソスに買収されちゃった。新聞の編集には
        口出しをしないようだが。

        尚、本書は伝記部門でピュリツァー賞を受賞している。
        >> 続きを読む

        2018/04/01 by sasha

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      シャチ ヤメ検弁護士

      加藤唯史

      日本文芸社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.0
      いいね!
      • シャチ - ヤメ検弁護士 第2/全2巻

        愛情に飢えて育った男性の前に、初めて現れた義兄弟と呼べるような存在。
        彼らの共通の知人を被害者とした凶悪殺人が発生。
        その義兄弟を犯人と考えた挙句、身代わりとなるため容疑を認めてしまう。

        彼の態度に誰かを庇っていると見抜いたシャチは、真相に迫るものの、意外性の無い真犯人像に肩すかし感は否めない。

        --
        夫が運転していた車が事故に遭い、夫婦ともに生命を落とす。
        この夫婦が資産家だったため、遺族の遺産争いが勃発。

        このようなケースで妻が少しでも長く生きていた場合、その瞬間でも相続が発生することは知らなったので学びは有った。
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        2015/10/26 by ice

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      ししゅうでつづるマザーグース

      鷲津名都江 , DownesBelinda

      評論社
      5.0
      いいね!
      • 大好きなマザーグースが、たくさんのステキな刺繍絵と一緒に
        たくさん紹介されていて、何度見てもわくわくわくわく!

        ワタシも刺繍絵をたくさん描かなくちゃっ!
        ってキモチにしてくれる大切な大好きな本♡
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        2013/10/15 by 山本あや

      • コメント 8件
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      大久保利通 近代日本を創り上げた叡知

      中村晃

      PHP研究所
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 大政奉還やその後の新政権で重責を担った大久保利通の一生を描いた作品。
        薩摩藩における教育方針が、大久保利通や西郷隆盛の行動指針としてどのように影響し、それが、どのように発露したかを史実に基づき理解できる。特に、島津久光との関係が利通にとって、避けられない壁として再三登場する。
        大局観を持って行動できる利通は、必ずそれを対策の一つとして考えているが、もし、この縛りがなかったのならば、もっと早く理想は実現していたのかもしれない。
        現在の政治に繋がる明治維新の理解のためにも、読んでおいて良かった。
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        2011/02/26 by sasimi

      • コメント 1件
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      考課者訓練事例集 (ニュー人事シリーズ)
      3.0
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      • これを読んでから5年。

        読んだ当時は、職務の変更に対応するためにということで。
        そうなのか・・というところ。

        そして現在。
        そもそもの基本のところがないことを痛感。
        >> 続きを読む

        2015/08/05 by けんとまん

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      コブタの気持ちもわかってよ

      小泉吉宏

      ベネッセコーポレーション
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
      いいね!
      • 大好きな絵本。
        小さいころよんで、ひとりぽろりと涙が。

        不器用で、ゆっくりで、ピュアな子ブタ。

        大人の考え方と、子供の考え方。
        視点の違い。感覚の違い。
        いろんなことがすれ違って行く。

        子ぶたのきもちもわかってよ。
        ってこっそり泣いてしまう。

        だけど最後の1ページでまた救われる。

        本当に大切にしている絵本です。
        >> 続きを読む

        2014/01/16 by Rie

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      てのりゾウのパズー

      小泉吉宏

      ベネッセコーポレーション
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.0
      いいね!
      • 不安を取り除くために大切なこと。

        相手は良く自分を見てる。
        どんな顔をしたか、なんて言ったか、
        どんな気持ちを抱えているか。

        大丈夫だよっていつも穏やかにいれたら
        相手も安心していい関係が築ける。
        いやなこと、うっと思うことをされたときは
        相手が自分を信頼に足る人間なのか
        試してるのかも。
        >> 続きを読む

        2014/01/22 by Rie

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出版年月 - 1997年9月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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