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1997年10月発行の書籍

人気の作品

      緋色の囁き

      綾辻行人

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね!

      • 本格ミステリの旗手的存在の綾辻行人は、一方でホラー愛好家の顔を持っている作家だと思う。

        だが、彼の中では、この二つの嗜好は、決して矛盾するものではない。
        むしろ、二つのジャンルをいかに融合させるのかが、彼の創作活動の基本になっているような気さえします。

        「サスペリア」で有名なイタリアの映画監督、ダリオ・アルジェントにオマージュを捧げた、今回読了した小説「緋色の囁き」こそ、そんな彼の特徴がよく表れた作品だと思う。

        厳格な教育で知られる名門女子高の寮で、次々に起きる惨劇を描いたこの作品は、全篇がまさにホラー映画を観ているような、ヴィジュアルな恐怖感覚で溢れている。

        綾辻行人は、かねがね、ホラー小説やミステリに登場する死体は、作者の美意識によって祝福された存在であると主張しているんですが、殺人者が幾度も振りおろす刃によって、美少女たちが切り裂かれ、暗闇に血飛沫を鮮やかに噴き上げながら死んでいくさまは、読んでいて溜息が洩れるほどに美しい。

        もっとも、あくまでも「ミステリ」であることにこだわる綾辻行人のこと、真犯人の意外性も十分で、本格ミステリファンの私をワクワク堪能させてくれるんですね。

        作家が、自分の趣味の世界で遊びつつ、我々ミステリ好きをも悦ばせる傑作を仕上げることができた、稀有な一例だと言えるだろう。

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        2018/07/03 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      Riko 女神の永遠

      柴田よしき

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!

      • 第15回横溝正史賞受賞作で、女性刑事が主人公の異色の警察小説の柴田よしき原作の「RIKO 女神の永遠」を再読しました。

        この作品は、女性刑事・村上緑子を主人公にした警察小説で、過去に上司との不倫、同僚たちからのレイプを経験し、現在は男性の部下、さらには交通課の婦警との情事を楽しむヒロインが、ホモセクシャルのレイプ事件を捜査する物語です。

        不倫、レズ、バイセクシャル、ホモセクシャルとくれば、何とも淫乱で通俗的な作品のように見えますが、ヒロインの内面に向ける作者の視線に濁りはないので、少しも嫌らしい感じはしません。

        最初は、迸る情念を切り取ってぶつけていくような、独特の改行スタイルが、正統的な文学を愛好してきた者には、最初、かなり抵抗がありましたが、でも、次第にヒロインの過去や周囲の刑事たちとの関係も見えてきて(この辺りの浮かび上がらせ方が実にうまいのですが)、このヒロインの女性刑事に感情移入するようになるのです。

        ヒロインのパセティックな情動がヒリヒリするような感覚とともに、ビシビシと伝わってくるのです。特に、ある男に"愛している"と言わせるくだりには、思わず目頭が熱くなってしまいました。

        自らの情念に忠実に生き、性的にも組織からも逸脱することを厭わない主人公のRIKO。しかも、それが説得力を持ち得ていると思う。

        恐らく、普通の文体で警察組織の中で、RIKOの行動と情念を均等に描いていたら、こんなに強烈なインパクトを私に与えなかっただろうと思う。

        情念を際立たせる独特の改行スタイルだからこそ、"情念の真実"を追求することができたのだと思う。


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        2017/08/23 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      月のしずく

      浅田次郎

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 短編7編を収録。

        ・月のしずく
        ・聖夜の肖像
        ・銀色の雨
        ・琉璃想
        ・花や今宵
        ・ふくちゃんのジャック・ナイフ
        ・ピエタ

        全て、男女や母娘など、人間関係がテーマ。
        どれも味わい深く、泣けるものや、切なくなるものなど感情を揺さぶられる作品が揃っている。

        一番印象に残っているのは、終電を降り過ごした男女を描いた「花や今宵」
        有りそうで無さそうなシチュエーションな上、2人の距離の縮まり方がとても素敵に感じた。

        「姫椿」に続き、浅田次郎作品としては2作目だが、やはり安定の満足感。
        次々と読んで行きたい衝動に駆られる。

        ◆姫椿
        http://www.dokusho-log.com/b/4167646048/
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        2014/09/27 by ice

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      ディズニ-7つの法則 奇跡の成功を生み出した「感動」の企業理念

      仁平和夫 , ConnellanThomas K

      日経BP
      カテゴリー:観光事業
      4.0
      いいね!
      • ディズニーでは、来園者をゲスト(賓客)と呼び、従業員をキャスト(出演者)と呼んでいる。
        キャストがゲストの心をつかんで放さないために何をしているかを、多くの人から直接聞き出し、7つの法則として筆者が整理。
        物語形式でわかりやすく説明している。

        ビジネス本は普段読まないのですが、物語になっていて読みやすいと友人からのすすめでした。

        ディズニーがどのような接客を行っているか、業種も職種も違う5人がツアーに参加します。読者はそれを同じ目線で見ることができます。
        日々の業務に取り入れたいものがたくさんありました。
        研修として行った会社も多いでしょうが、ミーティング等それぞれの部でやるのもいいと思います。もちろん会社全体の取り組みとして。なぜならディズニーの成功は、7つの法則を組織として一体感の中で、全員参画のうちに進められているからです。

        1.顧客が比べるすべての企業が競争相手
        2.細部にこだわる
        3.すべての人が、語りかけ、歩み寄る
        4.すべての物が、語りかけ、歩み寄る
        5.耳が多いほど、顧客の声はよく聞こえる
        6.報い、認め、讃える
        7.誰もがキーパーソン

        組織としてミッションステートメントが明確であることにより、各個がその実現に責任を持っていると感じました。

        それぞれ感じたことを書き留めたいのですが、会社バレバレになってしまうので少しだけ。
        同業者だけでなく、すべての企業が競争相手という意識はありませんでした。
        極端な話、全く異なるディズニーランドも自分のライバル会社ということになります。電話や来客応対時の意識が変わるひとことでした。これを読んでから、顧客の先にいる競争相手を心がけています。
        それから、会社が行う意識調査各種。今までは義務的に記入していましたが、せっかく会社が「語りかけ」てくれているのだから、「歩み寄」らねばいけないと思いました。

        「情熱をもつ一人は、情熱のない四十人にまさる」

        同じ時間を過ごすのなら、「情熱をもつ一人」でありたい。
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        2015/08/06 by あすか

      • コメント 23件
    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      ぐりとぐらの1ねんかん

      中川李枝子 , 山脇百合子

      福音館書店
      3.5
      いいね!
      • 去年のクリスマスに「くれよんはうす」のたくさんの絵本の中からこれを見つけて私が一目ぼれ。
        クリスマスプレゼントに選んだ絵本です。

        ---
        1月

        あけまして おめでとう
        あたらしいとし おめでとう
        きょうも あしたも あさっても
        ずっと ずっと 1ねんじゅう
        300と65にち よい日でありますように
        ---

        ぐりとぐらと同じ、山脇百合子さんのあたたかいイラストと中川李枝子さんの優しい言葉が見開きページで楽しめます。

        この絵本の良いところは色々あるのですが、1つ選ぶとしたら、それは大型絵本であることです。小さな本もかわいらしくてよいけれど、大きな絵本をめくるのってそれだけでもワクワクします。収納を考えるとちょっと困りますが、大きな紙面でぐりとぐらと動物たちの世界を眺められるのはとても嬉しい。

        最後のページ、ぐりとぐらと動物たちがお料理をたくさん並べたテーブルを囲んでいるイラストがあるのですが、娘はそのページが大好きで、そこの食べ物をつまんで自分で食べるふりをしたり、私に「あーん」してきたり、ぬいぐるみに食べさせてあげたりしていて、なんだかその姿を見るだけでもこの絵本選んでよかったなぁと思うのです。(親バカですみません。)
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        2017/04/19 by chao-mum

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      針さしの物語 (岩波少年文庫 (2136))

      メアリ・ド・モーガン

      5.0
      いいね!
      • ヴィクトリア朝時代の女流作家メアリ・ド・モーガンが初めて書いた童話集。日本に初めて紹介されたのは1997年。

        物語が始まるきっかけは、針さしの上に居合わせたピンやブローチの昔語りなのだが、それも途中で終わって普通の物語形式になる。こまやかな心理描写はまだそれほどなく、面白いお話を語って聞かせることが主流という感じがする。フェアリー・テイルズ形式の展開を踏襲しているのも初期の作品らしい。「おもちゃのお姫さま」にヴィクトリア朝文化に対する皮肉を感じるのは、深読みのしすぎかな?

        作者の兄で芸術家のウィリアム・ド・モーガンによる挿絵があまりにも美しくて、眼福だった。それだけでも本書は値打ちがあるし、作者の他の二冊の童話集とともに私の本棚の宝である。

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        2017/09/24 by Kira

    • 1人が本棚登録しています
      読書案内 世界文学

      西川正身 , サマセット・モーム

      岩波書店
      3.0
      いいね!
      • 文豪モームによる本の案内書です。

        文はそこまで難解なものではなく、海外文学に詳しくない自分がそれを知るための一助になってくれた良書だと思います。

        特にイギリス文学の章のジョージ・エリオットの文が印象に残ってます。

        紹介文にもある「読書は楽しみのためでなければならぬ」というモームの言葉を見て、丸谷才一さんの「本の読み方の最大のコツは、その本をおもしろがること、その快楽をエネルギーに進むこと。」という言葉を思い出しました。

        「楽しむ」ことはすごく重要なことなんだな、と改めて思います。
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        2015/11/30 by けんいち

    • 1人が本棚登録しています
      世界の十大小説

      西川正身 , サマセット・モーム

      岩波書店
      カテゴリー:文学史、文学思想史
      3.0
      いいね!
      • 【あなたは何冊読みましたか?】
         本書は、モームがアメリカの『レッドブック』という雑誌の編集長から、世界の十大小説を選んでくれと頼まれて選んだ作品に解説を加えたものです。
         モーム自身、これ以外の、同等の10冊を選ぶことは可能だし、人によってどの10冊を選ぶかはそれぞれだろうと書いていることから、本書に収録されている10冊が必ずしも絶対的な物とは考えていないと思います。
         それでも、定番的な名作が選ばれているのは間違いないところ。

         モームは、選んだ作品を解説するに当たり、まず、その作者の簡単な評伝を記し、その上で作品について書くというスタイルを取っています。
         作者がどんな人物だったかを知ることは、どんな人がその作品を書いたのかという理解につながるとの考えのようです。
         ですから、むしろ作品解説というよりは、著者評伝という色彩の方が強くなっています。

         さて、モームが選んだ10冊ですが、私は全部は読めていません。
         読んだ本か、そうではないかも付記しつつ、その10冊を追ってみましょう。
         上巻では5冊が紹介されています。

        ○ 『トム・ジョーンズ』/ヘンリー・フィールディング(未読)
         最初っから読んでいない本が出てしまった。
         フィールディングは戯曲も書いていたそうですが、さほど売れた戯曲は残せなかったようです。
         しかし、そんな戯曲を書いていたという経験が、小説を書くに当たっても大変役に立ったのではないかというのがモームの分析です。
         戯曲は、舞台で演じられることが大前提ですので、次から次へと出来事が起き、台詞回しも簡潔にして要を得ていないとならないわけですが、そのような技術は小説を書くに当たっても有用であろうというわけですね。
         しかし、『トム・ジョーンズ』はどうかというと、モーム曰く、かなり本を読んでいる人の中にも『トム・ジョーンズ』は読めないという人が結構いるということであり、おそらくそういった人たちは『トム・ジョーンズ』を退屈に思うのだろうということです。
         また、『トム・ジョーンズ』には1巻ごとにエッセイがつけられているのだそうですが、そのエッセイの内容が小説とは全く関係のないものなのだとか。
         そのエッセイ故に高く評価する人もいるようですが、モームは、初めて『トム・ジョーンズ』を読む人は、このエッセイの部分は飛ばして読んだ方が良いとアドバイスをしています。

        ○ 『高慢と偏見』/ジェイン・オースティン(既読)
         ジェイン・オースティンの評伝を読むと、何だか『高慢と偏見』の登場人物そのままの人のようにも感じられます。
         モームも大体そんなことを書いています。
         『高慢と偏見』は、大いなる婚活物語と言えるのだろうと思いますが、あの時代だったが故に成り立つ話ですよね。
         モームの評価では、ジェイン・オースティンは文豪としてはさして偉大ではないが、その文章は平明率直であり、気取りというものが少しもないということです。
         そして、彼女の作品はすばらしく面白く読めると評価しています。

        ○ 『赤と黒』/スタンダール(既読)
         スタンダールという人は、どうもあんまり感心しない人だったようですね。
         女性に対してはかなり内向的で、うまく話すこともできなかったくせに、妙に熱心に何人も口説こうとしたようです。
        結果はあまりはかばかしくなく、とにかく女性とのつき合いは下手だったようです。
         そんな彼が『恋愛論』を書いているんですよねぇ。
         また、モームの評では、スタンダールには創作力が無いということです。
         作家で創作力が無いなんて致命的にも思えるのですが、どうやらスタンダールは他人の作品を読んで、それを換骨奪胎して自作に仕立ててしまっていたのだとか。
         もちろん、自作化するにあたっては、物事を正確に観察する驚くべき才能と、複雑で気紛れで奇怪な人間の心を見抜く鋭い洞察力を駆使したということですが。
         『赤と黒』に関しては、ジュリアン・ソレルがレナール夫人を射殺する場面について、致命的な欠点としています。
         確かに、何でそんな行動に出るのか不可解極まりないわけですが、モームは、何故スタンダールがこのような展開にしてしまったのかについて考察しています。

        ○ 『ゴリオ爺さん』/バルザック(既読)
         モームは、バルザックこそ天才の名にふさわしいと高い評価を与えています。
         ただし、人間的には困った人だったようですね。
         浪費家なのですよ。
         バルザックは、生前から作品が売れたわけで、それなりの収入もあったにもかかわらず、とにかく後先考えずに濫費し、女性もその財産目当てに近づくようなところもあったようで、人としてどうよ?と言いたくなっちゃいますねぇ。
        『ゴリオ爺さん』に関しては、モームは高い評価を与えています。
         また、下宿屋を物語の舞台にして、様々な人物が登場することを自然に見せることができるという方法を初めて使ったのはこの作品ではないか?としています。
         確かに、『ゴリオ爺さん』は面白かったのですが、私、以前から感じているのですが、このタイトルで随分損をしているんじゃないかなぁと思うんです。
         内容は面白いのに、読もうという気持ちをそそるようなタイトルではありませんよね。
         
        ○ 『デイヴィッド・コパーフィールド』/チャールズ・ディケンズ(未読)
         ディケンズは、性格的に気持ちの良い人だったようです。
         『世界の十大小説』で取り上げられている作家の中で一番マトモな人だったんじゃないでしょうかね。
         でも、ファッションセンスは問題だったとか。
         洒落者で、凝った服装をしていたそうなんですが、それが似合わないし、何だか奇妙な格好だったのだそうですよ。
         また、ディケンズは、複数の小説を並行して書くという離れ業を平気でできた人だったそうで、モームもこれには舌を巻いています。
         で、ディケンズの代表作は、『デイヴィッド・コパーフィールド』なんですか。
         読んでいないので何とも言えないのですが、『二都物語』とかじゃないんですね。
         モーム曰く、『デイヴィッド・コパーフィールド』はとにかく心地よい楽しみを与えてくれる作品であるということなので、これもその内読みましょうかね。

         ということで、まず、上巻の5冊をご紹介しました。
         冒頭に書いたように、モームが挙げている10冊が絶対だということではないわけで、各人評価のベスト10があってもちろんしかるべきなのですが、モームが挙げる10冊というのも参考になるのではないでしょうか。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2019/12/09 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      世界の十大小説

      西川正身 , サマセット・モーム

      岩波書店
      カテゴリー:文学史、文学思想史
      4.0
      いいね!
      • 【結構意外な文豪の素顔】
         さて、下巻に入って取り上げられた5作をご紹介しますよ。
         人物評や作品評はあくまでもモーム視点です。

        ○ 『ボヴァリー夫人』/フローベール(未読)
         フローベールという人は相当凝り性だったようですね。
         凝り性というか完全主義者というか。
         例えば、同じ1ページに同じ言葉を2度使うことは避けるとか、彼なりのルールがあったようですが、そのために呻吟してえらい時間をかけてたった2行しか書けなかったとかもあるそうです(モームは、この独自ルールはほとんど評価していません)。
         フローベールは、若い頃には結構美男子だったんだそうですよ。
         肖像画をご覧になったことがある方は「うっそー!」と言っちゃいそうですが、それもそのはず(あ、本作は、各作者の扉絵に肖像画が掲載されております)。
         30代になると突如劣化が始まり、禿げるは腹は出るはで、かつての美貌は跡形もなくなったのだとか。
         さて、『ボヴァリー夫人』ですが、これは知人から聞いた実話を小説に仕立てたものだそうです。
         モームの評では、『ボヴァリー夫人』の登場人物は、例えばディケンズなどの作品の登場人物に比すると、現実に存在する人という印象を与えないような人物造形になっているということです(でも、作品は高く評価しているのですよ)。
         フローベール、読まなきゃなぁとは思っているのですが、大分昔に『繻子の靴』を読んで、「つまんね~」と思ってしまって以来手が出ないのですよ。

        ○ 『モウビー・ディック』/メルヴィル(既読)
         『白鯨』ですな。
         メルヴィルはかなり波乱の人生を歩んだようで、実際に船に乗り、『人食い人種』が住む島に捕らえられたことがあるのだとか。
         その事を書いた作品もあるようです(未読です)。
         私、『白鯨』大好きなんですよ。
         主たるストーリーにも惹かれますが、あの鯨の博物誌的な部分も大好きです。
         でも、ここは評価が分かれるところでしょうね。
         モームも、この作品の構成は良くないと言っています。
         モームが言うには、もうメルヴィルは他人からの評価とかそんなことはどうでもよくてこの作品を書いたのではないかというのですね。
         メルヴィルは、どうも大げさなというか、荘重な言葉を好んで使っているようで、それが上手くいくと『白鯨』のような、荘厳な雰囲気を醸し出す傑作が書けるというのがモームの分析です。
         ただし、キャラクターの書き分けが下手で、どんな身分の者でもその身分にそぐわない荘重な言葉を使ってるのはどうよ?とツッコンでいます。
          
        ○ 『嵐が丘』/エミリー・ブロンテ(既読)
         モームのこの作品のミソは、取り上げた作品を語るに当たって作者の人生、経歴などから読み解くという手法を取っているところなのですが、エミリー・ブロンテに関しては少々困ったようです。
         何故かと言えば、残されている資料から見ると、他のブロンテ姉妹のことは沢山書かれているのに、どうもエミリーは影のようにしか現れてこないと言うのです。
         男性的な気質を持った人だったと分析しており、そこからなのか、同性愛者だったとモームは考えています。
         ですから、シャーロットが書いた『ジェーン・エア』(読んでいます)とは全く違った『嵐が丘』の様な作品が生まれたのだと。
         確かに、あの陰鬱な雰囲気、ヒースクリフというとんでもないキャラクターの創造、『ジェーン・エア』とは相当に違いますよね。
         でも、私はどちらか選べと言われたら『嵐が丘』を選ぶのですが。
         モームは、『嵐が丘』について、構成が下手で、文章もダメだと辛辣に批評しています。
         ですが、それでも十大文学に選ぶだけの魅力がある作品だと高く評価しているのです。

        ○ 『カラマーゾフの兄弟』/ドストエフスキー(既読)
         ドストエフスキーって、ひっでえ奴!
         モームが紹介するところによれば、本当にとんでもない男です。
         「自惚れが強く、嫉妬深く、喧嘩好きで、邪推深く、卑屈で、利己的で、高慢で、信頼ができず、思いやりがなく、偏屈で、狭量だった。」ということです。
         それぞれの具体的エピソードも語られているのですが、それが本当ならとんでもない奴ですよ。
         もう将来設計も何もなし。
         借金しまくり。もう借りられないというところからドストエフスキーの借金は始まるのだ!
         女に手を出しまくり、責任全く取りません。
         女の持ち物も質入れさせて、それで何をするかというと賭博三昧(全部負けます)。
         こいつは学習能力というものがないのか?
         妻をほったらかして西欧に旅行に行き、賭博やりまくりで金使いまくり。
         帰ってみたら妻は瀕死。
         死んでしまうと、「私は妻を愛していた。片時も傍を離れることはなかった。」などと書くのですよ。嘘つくな、このやろー!!
         そんなドストエフスキーが書いた『カラマーゾフの兄弟』は、悔しいけれど本当に好きな作品なんだなぁ。
         どうしてこういう人格、品性下劣な奴がこんな素晴らしい作品を書けるのだろう?
         モームもその辺りは色々分析しているのですが、「そうか!」と膝を打つような分析にまでは至っていない……というか、やっぱりこれは謎だよ、謎。
         そういう奴だったからこそ、あれが書けたのかねぇ……。

        ○ 『戦争と平和』/トルストイ(未読)
         これ、読まなきゃなぁと思っていながらなかなか手がつけられない小説なんです。
         何よりも長い!
         いや、それよりも長い小説(例えば、『失われた時を求めて』とか)を読んだ経験もあるので、長過ぎて読み切れないのではないかというおそれを抱いているわけではないのですが、長大な小説に取りかかるにあたっては、覚悟というか気合いのようなものが必要で、どうもこの作品に関してはそういった覚悟や気合いが出てこないんですよねぇ。
         さて、トルストイですが、伯爵なのですね。
         裕福な家柄なのですが、狂信的だったようです。
         当初は、キリスト教を信仰するのですが、徐々に自分独自の神を思うようになり、清廉潔白な生活に憧れるものの、自分は貴族で金もあるというところに矛盾を感じていたそうです。
         別に良いじゃないかと思うんですけれど、それが嫌で嫌で仕方なかったらしく、妻子の生活を省みずに全財産を放棄しようとしたのだとか。
         また、そういうトルストイを焚きつける取り巻き連中がいたようで、トルストイは手もなくそんな胡散臭い奴らの言うがままになっていたところもあるようです。
         どうも生活人としてはあまりよろしくなかったようですね。
         さて、『戦争と平和』ですが、あれだけの登場人物を書きこなしていることに関しては、モームは絶賛しています。
         ほとんど手放しで誉めてはいるのですが、モスクワからの退却とナポレオン軍の壊滅に関する記述については、どうしても必要な部分ではあるのだけれど、長過ぎて歴史を知っている普通の読者にとっては既に知っていることを改めて読ませられるという不利な点があり、それはこれだけ長大な物語を書き続けていく中に現れた筆力の衰えではないかと分析しています。
         ふ~む。やっぱり時にだれるというか、退屈になってしまう部分もあるのでしょうか。
         いずれにしてもいつかは読んでみないとね。

         モームは、10の小説について語った後、『結び』を書いています。
         驚くべきことに、これら文豪の文章は必ずしも上手い文章ではないと書いているのです。
         上手な文章というのがどういうものなのかというのは私にも実はよく分からないところなのです。
         確かに、例えばドストエフスキーの作品など、冗長とも言える語りが結構多く、読んでいてうんざりすることもあります。
         そういった点を捕らえて上手い文章ではないというのであればそうなのかもしれません。
         ただ、どれも味がある文章であることは間違いなさそうですよね。
         時に退屈したり、うっとおしい部分があるにせよ、読み終えた後、面白かったと思えるという意味では味がある文章なのでしょう。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2019/12/10 by ef177

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      幸福荘の秘密 続・天井裏の散歩者

      折原一

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 天井裏経由で行き来できるマンションで起こる謎の事件。

        前作を読まなくても単独で楽しめる。

        良くも悪くも折原氏的な作品であると言える。

        小手先のテクニックで読者をかわすため、予想していない展開に出会っても、爽快感には結びつかず、サクサクと流して読み進めてしまう。

        とくに閉口するのが、文字を一度バラバラにし、再度組み合わせることで、隠されていたキーワードが浮かび上がるアナグラムという手法。

        そもそも書籍という媒体で、文字をバラバラにして組み合わせるという、あまりにも読者視点でない発想と、チープすぎる謎。
        著者は非常に好きそうだが、正直、読者で楽しめる人は少ないのでは無いかと思う。

        前作も読んだのだが、ほとんど覚えていない。

        折原氏の作品はいつもイマイチなコメントを書いてしまうがタイトルのセンスは秀逸だと思う。
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        2012/04/16 by ice

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      誘拐 ミステリーアンソロジー

      有栖川有栖

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 誘拐をテーマに、8人の作家が書き下ろした短編ミステリ。

        表紙の顔ぶれだけでも皆代表作を持つような作家ばかりだが、やはり新本格の旗手である人たちは外せない。

        有栖川さんは江神シリーズ。山口さんはキッド・ピストルズ。

        折原さんは当然のように叙述トリック。

        霞さんは奇怪なバカミスで挑み、法月さんは誘拐の間違い電話という形。

        短編なので堪能とまではいかないが、好きな作家がいれば楽しめると思う。
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        2018/09/13 by オーウェン

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      幻惑の死と使途 森ミステリィのイリュージョン

      森博嗣

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • S&Mの5作目。

        折り返しに入ってからタイトルに意味が込められているような気がします。
        今回はボリュームもあり、少し読むのに時間がかかりました。

        しかし、改めてこの作品が20年近くも前に発表されているのに
        今普通に楽しめることが凄いなと思います。
        >> 続きを読む

        2014/11/14 by MUSICA

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      ああ玉杯に花うけて

      佐藤紅緑

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • この本の中に生きる人々の熱さが、こちらにも影響を及ぼすような感じがする。演説の部分も熱い!野球の部分も熱い!少し古めかしい感じがする文体、なのかな?
        読んでいてわくわくした。
        >> 続きを読む

        2014/02/18 by tenpuru

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      黄龍の耳

      大沢在昌

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! ice
      • 古代中国の皇帝より代々脈々と受け継がれる不思議な能力を持つ少年の活躍。

        非常に魅力的かつ分かり易いキャラクター設定とテンポの良い展開が秀逸。

        ・耳のリングを外すと女性とお金に作用する能力が発揮される
        ・この能力は古代中国の皇帝に由来する
        ・ヨーロッパの修道院で暮らしていたため主人公は自分の能力や生い立ちを知らない
        ・家系に代々受け継がれる能力で、当主にならないと開花しない。
        ・敵対する家系が存在し、代々ライバル関係に有る。
        ・父母は敵対する家系の許されざる恋の結果として主人公を生んだ。

        極めて残念なのが、続編が無さそうなこと。
        純粋に身を任せて楽しむことの出来る作品だけに続編を期待したい。

        あとがきを読んでから知ったのだが、本作品は、週刊少年ジャンプがマンガだけでなく、少年向けの小説にも挑戦して行こうという主旨で企画したもの。

        確かにマンガ的な設定と分かり易いストーリー展開で有り、実際に漫画化もされている様子。

        子供から大人まで主人公になりきって楽しめる作品だと思う。
        >> 続きを読む

        2011/04/14 by ice

    • 1人が本棚登録しています
      他者を探す女達

      村上龍

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 年号が平成に変わった年に公開された同名映画のノベライゼーションを懐かしく読む。

        ンガポールの伝統的コロニアルホテルを舞台にエキセントリックな女優と元戦場カメラマンの奇異な恋のゆくえを描いた作品。

        シンガポールスリリングを飲んだり、セレブリティーなシーンにバブル経済絶頂期の面影がよぎる(そもそもラッフルズホテルで映画を撮るということ自体がバブルか?)

        どこか壊れていて、なにかを引きずっている男と女の無軌道な愛は、得体の知れない狂気に転じてゆく。ハッピーな時代に潜む狂気の描出力は、さすが著者らしい。

        結局、イカれた女優はどこへ消えたのか? カメラマンが恐れながら撮影した女のポートレートが、バブル景気の幻影にも思えた。

        ちなみに主演の藤谷美和子が、のちに表舞台から姿を消してしまったことが、映画よりはるかに衝撃的でミステリーだった。
        >> 続きを読む

        2020/05/03 by まきたろう

    • 2人が本棚登録しています
      るろうに剣心 - 明治剣客浪漫譚 - 巻之十七 決着

      和月伸宏

      集英社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • るろうに剣心 第17/28巻

        京都編ついに完結。全員が死力を出し尽くした最終決戦。

        男同士の生死を賭けた激突のようでいて、密接に女性が絡んで来るところがリアルだと思った。

        倒された剣心の前に佇む志々雄。

        前巻のラストで、それはナシだろ!と突っ込まずにいられない登場を決めた斎藤だが、案外見せ場なく撤収...
        続く左之助はいつものことなので見過ごすとしても、蒼紫さえも見せ場が無かったのは残念だった。

        そんなこんなで剣心と志々雄の一騎打ちになるわけだが、お互いに最終奥義は隠し持っているものの、もはや戦闘シーンは見飽きた感が強く、かなりダレダレだったのは否めない。

        そこに登場した由美は良かった。
        あんな愛の形はとてもじゃないが受け入れられないけれど。

        大きな目標に挑み、孤独感に苛まれるような場合には、一人で戦っているようでいて、精神的には誰かに縋っているものなのかも知れない。

        その後、生存への執着を忘れそうになった剣心の心理に登場した薫も含め、最強を求めていく男性で有っても、結局は女性に支えられていることを思い知らされる。

        ただ、個人的には1カットしか登場していない恵がやはり一番魅力的に感じる。

        いくら少年誌とは言え、いい大人の剣心が、由美はともかく薫に惹かれるのは無理が有るのではなかろうか。

        これにて京都編終了。また集中力を取り戻させてくれる設定を期待したい。
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        2013/01/02 by ice

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      雀の手帖

      幸田文

      新潮社
      3.0
      いいね!
      • 雀といえば、落語では「雀のお松」。
        しゃべりで亭主を尻にひく、気の強い女性の代名詞であるが、
        この本の、雀、幸田文さんは、いたって上品。

        初稿は、西日本新聞に連載されたのであるが、
        日本の古き良き時代を、淡々とした文章で綴る。

        入試のところでは、入学願書を出すときが梅で、試験が沈丁花、
        卒業式が辛夷、入学が桜ではじまる・・・・・と。
        暦とは違う、肌で感じる季節感が羨ましい。

        思いがけなくいい美術品を見たとき、きょうは眼の福を頂きました。
        美味しいものを、ごちそうになったとき、口の果報にあずかりましてと。
        今では聞くことのできない、言い回し、あいさつがかかれている。

        都会のおばあちゃんの家に行ったような、
        日本の古き良き文化を知ることのできる、本である。

        この本を読むなら、一年中で、この季節が一番のお勧め。

        というのは、連載が、1月26日から5月5までの100日間で、
        「雀百まで」の洒落か・・・・・・私は、目次に日付を入れて
        寝る前に日記替わりに、1ページずつ読んでおりました。
        >> 続きを読む

        2013/05/24 by ごまめ

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      落窪物語

      花村えい子

      中央公論新社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
      いいね!
      • 面白かった。

        継母にいじめられる落窪姫が、良い男性とめぐりあうシンデレラストーリーと、夫が今度は落窪姫のために継母たちにちょっといろんないじわるで復讐を試み、落窪姫はそれに対して許しと和解をもたらす、といったストーリー。

        落窪物語は、タイトルだけは高校の古典の時間などに覚えさせられたし、一部分は古文の問題に出てきたような気もするが、あんまりきちんとよく知らなかった。
        こんなに面白い物語だったんだなぁ。
        ある意味、その後のいろんな物語の元型のような気もする。

        源氏物語や枕草子よりも前の時代のものなのに、不思議と昼ドラや朝ドラにありそうな新しさを感じる面白い作品と思う。
        >> 続きを読む

        2014/02/26 by atsushi

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      上海リリ-

      胡桃沢耕史

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 終戦間近の上海を華やかに生きる女性。

        軽いタッチを想像していたが良い意味で裏切られた。

        終戦間近だが、まだ日本の占領下に有った上海に咲き誇る華として
        君臨した女性「上海リリー」。

        親元を離れてからは、一時期、最下層まで身を落とし、
        そこから這い上がって来たサクセスストーリーでも有る。

        戦乱渦巻く日中米の狭間で、華麗に男性を渡り歩きつつ、
        それぞれの男性への情も厚い。

        時代は流れ、上海リリーの亡くなるシーンも感動的。

        大陸特有の喧騒感が見事に表現され絵が浮かぶようだった。
        >> 続きを読む

        2007/01/27 by ice

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      謎の神代文字 消された超古代の日本

      佐治芳彦

      徳間書店
      カテゴリー:日本史
      1.0
      いいね!
      • かつて古代日本に存在したという神代文字をキーに隠された古代日本を探る。

        史料に基づいてはいるものの、いわゆるトンデモ本という面が有る。

        歴史のifを題材にし著者が自由に想像を飛躍させるスタイルは嫌いではないが著者が研究成果の公開への未練を捨てきれておらず、ノンフィクションにもエンターテイメントにも成りきれていない作品で有る。
        緻密な調査が読み取れるだけに極めて惜しい。

        また、類似の書籍と比較して非常に読みにくいことも付け加えておく。
        専門で無い人が読むには、明らかに必要とされる基礎知識のレベルが高すぎる。
        文庫ということから一般の読者をターゲットにしていることと思うが、読者への配慮に欠けている。

        現存する日本古代史とは異なる隠された歴史。
        テーマ選定は抜群だと思うだけに残念で有る。
        >> 続きを読む

        2011/02/13 by ice

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