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1997年11月発行の書籍

人気の作品

      薬指の標本

      小川洋子

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 『薬指の標本』(小川洋子) <新潮文庫> 読了です。


        ※ 内容に触れます。
        ※ 嫌な方は読まないでください。


        薬指の先を無くしたときの「残像」、初めて街に出たときの情景、靴をプレゼントされたときの様子、浴場でのデート、など、素晴らしい描写がいくつもありました。
        その一方で、弟子丸氏が耳に息を吹きかけたり、三つのきのこの標本のエピソード(両親と弟を亡くした)が語られたり、火傷の少女が再び現れたり、果たしてこのシーンは必要なのか、と思うところもありました。

        また、標本室にはどうやって入るのかよく分からなかったり(受付に直接行けばいいのか、門の呼び鈴を押すのか)、長年ほっておいたピアノを調律なしで弾いたり、そもそも建物の構造がイメージできなかったり、読んでいくといろいろな違和感を覚えます。

        読んでいる間、悪くはないけど私に読めるのかなあ、という印象が常につきまとっていました。

        それが、活字を拾うシーンですべて帳消しにされました。
        その他の素晴らしい描写と相まって、この違和感の創出が作者の持ち味なんだろうと思うようになりました。
        すべてが作者の計算の上で構築された世界観なんだろうな、と。

        しかしそれでも、この世界観に私はどっぷり浸ることができませんでした。
        日常生活において他人の生活にある種の無関心を持っているように、ここで描かれる世界も、どうもしっくりこないのです。
        作風との相性なのか、私の理解が間違っているのか……。

        併録の「六角形の小部屋」はさらにその感じが顕著でした。
        違和感はある、そしてそれは作者の持ち味なんだろう、という印象までは持てるのですが、それ以上のものが響いてこないです。
        「薬指の標本」のような素晴らしい描写もなく……。

        うーん、このまま小川洋子を読み続けるか、ちょっと悩ましいところです。
        >> 続きを読む

        2018/11/17 by IKUNO

    • 他9人がレビュー登録、 31人が本棚登録しています
      ONE PIECE 巻一 ROMANCE DAWN -冒険の夜明け-

      尾田栄一郎

      集英社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.2
      いいね! ice
      • すごく楽しかったです

        2018/07/17 by jp-miura

    • 他8人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      予告された殺人の記録

      野谷文昭 , G・ガルシア=マルケス

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! Minnie
      • あとがきを読むと、構成が素晴らしいなど
        書いてあり、それを読んで確かにそうだったなぁと
        思ったが

        実際読書中はただただ恐かった。
        どの登場人物にも温もりがなく
        (淡々と綴られているせいでそう感じた)
        この街は冷たいなぁと思ったからの、
        殺人描写…

        リアルでこわかった。

        再読できない。

        でも実際こんな事件があったのだと思うと
        本当に残念だと思う。
        殺されたサンティアゴ・ナサールは
        きっと何も強姦なんてしていない…

        私はそう信じて、とても残念な気持ちになった。
        >> 続きを読む

        2017/07/17 by snoopo

    • 他7人がレビュー登録、 29人が本棚登録しています
      らせん

      鈴木光司

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 15年前に読んだときは前作とのギャップにやられてどうも面白さがわからなかったが、再読したところ前作以上に好みだった。(ホラーよりも謎解きが好き。はっきりした答えが知りたい性分なので。)
        自身も2児の親となった今、主人公である安藤への感情移入は苦しいほどである。
        荒唐無稽と思えた呪いのビデオが、フィクションとはいえ科学的に解明されていく過程は、個人的には貞子が迫ってくる前作よりも緊張感があると思う。なんといっても前作は個人の死で済んだものが種の存続に関わる問題になるのだから、規模が違う。
        >> 続きを読む

        2018/09/30 by komatsu

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      ド・ラ・カルト ドラえもん通の本

      藤子プロ , 小学館

      小学館
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.5
      いいね!
      • あなたはドラえもんが何故青色なのか知っていますか?

        ネズミに耳をかじられた姿を鏡で見て青ざめたから?
        耳を無くしたため「元気の素」を飲もうとしたら間違えて「悲劇の素」を飲んでしまい3日3晩泣き続けた反動で体のメッキが剥がれたから?

        世代によって答えが変わるのですが実は…
        「学習マンガは扉ページで地色に黄色を使うことが多くタイトルは赤字が多い。3原色で残る青色にした」というのが真相。実はとっても合理的な理由が。

        でも、それでは子どもたちに説明するには味気なさすぎると言う事でアシスタントの片倉さんが後付で作った物語がネズミに耳をかじられた非公式設定。
        それを藤子・F・不二雄さんもそのほうが良いと公式に認められたという経緯があります。

        この本ではそんなコミックスにも収録されていないような初期のマニアックな設定が紹介されています。
        ただドラえもんトリビアの知識を得ることだけが楽しいのではなく、面白さのためなら不動と思われた設定をどんどん壊して新しい姿をもとめ続けた藤子・F・不二雄さんの考えを知ることが出来て実に面白く読み進められました。

        子どもたちの成長に合わせてより良い物語を生み出そうと努力したからこそ現代の子どもたちも魅了するキャラクター・道具たちが生まれたんですね。

        世代を超えて愛される作品ドラえもん。
        ポケットモンスター、妖怪ウォッチ、仮面ライダー…etc
        毎年劇場公開が恒例となっている子ども向けの作品は多いですが、大人も一緒に観たいと思えるとなると「ドラえもん」が群を抜いています。





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        2017/09/24 by ybook

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      ストックホルムの密使

      佐々木譲

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!
      • この方のストーリーは私にとって
        とても情景が浮かびやすくて
        そして現場にいる感覚になりやすいから、好き。
        あとにおいたつものが、好き。
        >> 続きを読む

        2017/06/13 by 自由じゃん

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      LAコンフィデンシャル

      EllroyJames , 小林宏明

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!

      • この映画化もされたジェイムズ・エルロイの「LAコンフィデンシャル」(上・下巻)を読み終えた後の正直な感想は、途方もないものを読んでしまったということだ。

        例えるなら、脳がぐちゃぐちゃになったような感覚と言ったらいいだろうか。
        熱病による消耗にも似た気分で、脳自体がエルロイの小説に引きずり回されて疲弊しているのだ。

        放たれる激情の本流が、情動を司る半球を犯し、奇矯なくせに緻密な言語さばきと構成が、論理を司る半球を揺さぶるのだ。

        その呪術的な音色が奏でるのは、人間が抱える負の衝動の蠢きだ。
        この作品で巨悪の陰謀を封じることになる三人の刑事、エド・エクスリー、バド・ホワイト、ジャック・ヴィンセンズのキャラクターが、とにかく凄い。

        唯一「清潔」な刑事であろうとするエド・エクスリーでさえ、その芯にあるのは、エゴイスティックな出世欲なのだ。
        凄惨な犯罪と、腐敗した権力の横暴とがひしめきあう世界。

        善人など誰ひとり存在しない。あまりに殺伐とした世界に見えるかもしれない。
        エルロイの描く人物は、負の衝動で動く。
        それがエルロイの人間観であり、世界観なのだと思う。

        人間は性衝動や差別感情や憎悪を捨て去ることのできない、不完全で歪んだ存在なのだと言っているかのようだ。
        だが、エルロイはそれでもなお、人間性というものを信じていると思う。
        そして、それが最も明瞭に現われているのが、この「LAコンフィデンシャル」なのだと思う。

        悪徳と憎悪のクロニクルのような物語は、やがてひとつの巨悪へと収斂してゆき、三人の刑事たちはそれを倒すべく、ともに立ち上がる。
        負の衝動に支配された存在であったとしても、人間は結果的に何か大きな意味あることを成し遂げられる---そんな思いが、感動的で爽快ですらある結末を生んでいるのだ。

        ジェイムズ・エルロイという作家は、ある意味、最も尖った先鋭的なミステリ作家で、暴走するエモーションの底で複雑なプロットを操り、やがてひとつにまとめてみせる筆致は、巧緻きわまりない。

        ただ、エルロイは、ややとっつきにくいことも確かなので、ミステリを読み始めてまだ日が浅いという人は、映画版「LAコンフィデンシャル」を先に観てから、原作の小説にトライした方がいいかもしれません。

        映画版は、細部は忠実に、一方で大胆な脚色も施されていて、原作の複雑怪奇な全体像がすっきり整理されていると思うので、観終わった後、原作へと進み、唯一無二の言葉の呪術を体験されるのをお薦めしますね。

        それが、ジェイムズ・エルロイという作家の本領であり、映画に移し変えることのできない、小説ならではの力なのだと思う。

        エルロイの呪術にひとたび脳を灼かれてしまえば、もう逃れることはできません。

        >> 続きを読む

        2019/04/24 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      このゆきだるまだーれ?

      岸田衿子 , 山脇百合子

      福音館書店
      4.5
      いいね!
      • すべってころんでゆきだるまになって。リズムも楽しい文章とストーリー展開で大好きな絵本。 >> 続きを読む

        2015/01/14 by ぶぶか

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      果しなき流れの果に

      小松左京

      角川春樹事務所
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 大学生の頃、古書店で10円から100円程度でまとめ購入し通学電車の途すがら読み更けた文庫本の中の一冊だった。内容の半分も理解できたかどうか不明だったが、当時タイムトラベルSFに執着していたこともあって衝撃を受けたのは確かだった。クライマックスの意識が登りつめる描写は、よく風邪をひいて熱にうなされた時に見る不思議な夢に酷似していたことを記憶しており、いつか再読したいと思っていた。最近「シュタインズゲート・ゼロ」というアニメのエンディングテーマから映画「復活の日」の主題歌の酷似から、この作品を思い出し、再読を決意。そして、角川e文庫の電子書籍Kindle版(特典:先生の残された手書き創作メモ付き)を購入した。
        改めて読み進めると全然覚えていない細部や描写が至る所にあったが、二つのエピローグに込められた切なくも優しい、そして色あせることのない感銘にもう一度触れることができた。
        >> 続きを読む

        2018/09/29 by 次郎(風)

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      肝臓先生

      坂口安吾

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      •  坂口安吾の本 初挑戦。
        ということで、いろんな作品の雰囲気を感じられる
        短編集を読んでみました。
         
         しかし・・・個人的には合いませんでした・・・。
        ネット上の評価も高い本だったんですけどね (>_<)
         
         収録作品は
        「魔の退屈」
        「私は海を抱きしめていたい」
        「ジロリの女」
        「行雲流水」
        「肝臓先生」
        の5作品。
         
         1~4作品目までは
        もうひたすらに男女の色事に関してのみの記述です。
        もう徹底してると言っていいくらい。
        あまりにも赤裸々すぎて笑えてくる部分もありますが、
        おおむね辟易としてきます。
        これらの文章の中に文学を見出すと
        評価が高くなるのかもしれませんが、
        私には無理でした。
         
         唯一、毛色が違って熱いお話だったのは「肝臓先生」。
        田舎の一介の町医者として往診に明け暮れ、
        名声も地位も富も望まず、
        町の何人かの人々が先生の存在によって心安きを得た
        という小さな事実をよろこびとして生き抜いた物語は
        胸に訴えかけてくるものがあります。
         
         全作品を通じて
        第二次世界大戦当時~直後の日本の雰囲気が色濃く反映されています。
        そうしたことを感じられるのは
        本書のひとつの良い特徴かもしれません。 
          
         しかし、正直 「肝臓先生」がなければ
        ★2つでいいくらいです。
        「肝臓先生」があるがゆえに★3つとさせていただきます。
        >> 続きを読む

        2016/01/30 by kengo

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    • 2人が本棚登録しています
      魚の祭

      柳美里

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:戯曲
      1.0
      いいね!
      • 台本調にセリフ書きの形で展開される家族/友人関係。

        感性が合わず、何を伝えたいのかが全く把握できない。
        かといってとくに主張もなく、ごく普通の日常風景を切り取るというアプローチでも無い。
        登場人物が死ぬという非日常が展開されるが、その意図が掴めない。

        全体を通しての印象としては、偉そうな評論家が使う、
        「19歳女流作者がみずみずしい感性で描くなんとかかんとか」
        というよく有る宣伝文句がピタリとはまる気がする。

        芥川賞受賞「家族シネマ」など、文壇からは高い評価を受ける著者なので、
        きっと楽しめる作品も有るのだろうとは思うが、
        本書を読み勧めるのは辛かったというのは事実。

        台本調でない他の作品に触れてみたい。
        >> 続きを読む

        2011/01/04 by ice

      • コメント 2件
    • 2人が本棚登録しています
      深い深い水たまり

      奈良美智

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:洋画
      5.0
      いいね!
      • ココロの中をカタチにしながら葛藤したり、泣いたり、悩んだり
        笑ったり、希望を見出したり、未来を思ったり。

        当たり前だけど、奈良さんの日常の中で生まれてくる
        絵たちをすごく実感できます。あまりに赤裸々で
        少し照れてしまったりもするけど、そんなむき出しのカタチが
        いいなぁと、何度も読み返してしまう本です。
        >> 続きを読む

        2013/10/15 by 山本あや

      • コメント 4件
    • 1人が本棚登録しています
      親和力

      柴田翔 , ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 主役がそれぞれ高い知性を持っているということが感じられとても面白かった。
        感情が移ろいやすいということを理解するからこそ感情を長続きするように努力をする。それでもままならない現実。


        現代のワイドショーを芸能人の男女関係のスキャンダルが賑わす。これに対して「アホだなー」と悪口をいうのはそれはそれで楽しい物があるのだけれど、「もういいよ飽きたよ」って人が読んだら楽しい本。


        確か「ヘッセの読書術」という本の中でヘッセが若いころにこのゲーテの「親和力」を読んだという記述があり興味を惹かれ読んだ。
        >> 続きを読む

        2016/04/05 by ryochan333

    • 1人が本棚登録しています
      人間になりかけたライオン

      倉橋由美子 , シェル・シルヴァスタイン

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 大人向けの絵本かな。
        子どもに話して聞かせるような、ユーモアのある文章で、とても読みやすかった。

        ただハンターという語感が好きで、ハンターが何者かも知らなかったライオン。ハンターが来ても襲う気なんてなかったのだが、ジャングルにやってきたハンターに「ハンターは撃つもんだし、ライオンは降参せず最後まで戦ってハンターを食ってしまうもんだ」と教えられたとおり、ハンターを食べ、奪った銃で射撃の名手になる。
        射撃の名手になったライオンをサーカスに出して儲けようという人間に連れられ、都会にやってきたライオン(ラフカディオって名前を付けてもらった)は文明にふれながら次第に人間と変わらないようになる。散髪をし服を着て美味しい物を食べてお金を儲けて、ゴルフに音楽に・・・etc
        しかし、人間の文明にも飽きてしまったラフカディオはジャングルに狩りをしに行く。そこで仲間のライオンからお前はライオンなんだと言われる。彼は自分がライオンだと言うことをすっかり忘れてしまっていた。

        人間からは、「お前が人間なら、ライオンたちを撃つんだ。もしお前がライオンなら、お前を撃ってやる」と言われ、ライオンからは「お前がライオンなら、おれたちに手を貸してこいつらを食うがいい。お前が人間だというなら、お前を食ってやる」と言われる。

        自分はもう本物のライオンでもないし、かといって本物の人間でもない。
        僕の居場所はどこにもない、と彼はあてもなく歩き出す。どこにいくのか自分にも分からなかった。

        ・・・というお話。

        「・・・自分の居場所を見失なってしまった人、新しい出発を目指す人に。」と作品紹介にある。

        本物のライオンって?本物の人間って?自分の居場所って?
        ライオンにも人間にもなれなかった、・・・て悲しまなくてもいいんじゃないかな。
        人間っぽいライオンでも、ライオンっぽい人間でも、中途半端でも、
        そういうライオン(ラフカディオ)がいてもいいんじゃないかなあ?
        今、自分が居る場所が居場所であって、それはどこでもいいし、どこにでもある(できる)。
        どこからでも歩き出せる。
        人間を食えというライオンの言うことを聞くこともないし、人間に言われてライオンを撃つこともない。
        そういう者と一緒にいることはない。
        他のいい仲間を探してもいいし、いなければひとりでしっかり歩いていけばいい。
        (自分がライオンだったということを思い出せたのはよかった!そうしないと仲間を撃つことになるからね。でも、本当は自分自身をよく知ったうえで、ライオンか人間か、という壁がなくなるのが理想だけどね。)

        自分探しって何?
        自分なんて探す必要ないよ。もう、すでに、ここに居るんだからね。
        自分の居場所は、ここ。ここから出発すればいい。いつでも。


        ・・・って私は思うんだけど。


        作者は何を伝えたかったのかな?
        ライオンか人間か、どっちかにならなきゃいけないってんなら、ん~星3つ。
        ラフカディオはそのままでいいよ。自分の生き方をいけばいい。
        ってことなら星4つ。(それ以外だったりして…^^;)

        人によって解釈が分かれるところでしょうかね。(読解力の問題?^^;)
        >> 続きを読む

        2013/10/26 by バカボン

      • コメント 5件
    • 2人が本棚登録しています
      ジャガーになった男

      佐藤賢一

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【面白うて、やがて悲しき……】

         男って馬鹿ですよね~。本作を読んでつくづくそう思いました。
         本作は、佐藤賢一さんのデビュー作。「王妃の離婚」があまりにも面白かったのでちょっと佐藤さんの作品を読んでみようかと思い、まずはデビュー作から。

         物語は、戦いの世に憧れて支倉常長使節団に加わった奥州一の剣の使い手、斎藤小兵太寅吉を主人公とした波瀾万丈のお話です。
         寅吉は、スペイン無敵艦隊を味方につけて徳川幕府に殴り込みをかけ、伊達藩による天下を達成しようと、恋人のお米を捨ててまで使節団に加わりました。
         苦難の末スペインにたどり着いたものの、スペインも斜陽の国。わざわざ日本にまで艦隊を派遣する義理もなく、夢は消えようとしていました。
         とにかくやることもなく、酒に明け暮れる毎日だったのですが、ひょんなことからお調子者のベニトと意気投合し、ついにはスペインの軍隊に入って戦いに赴きます。

         寅吉はベニトの家に居候していたのですが、成り行きもあってベニトの妹エレナと関係を持ち、結婚までしてしまいました。
         このプロポーズのくだりが結構笑わせます。
         スペインの風習など知らない寅吉は、隣の世話焼き女将にせっつかれてどうしてもエレナにプロポーズしなければならない立場に追い込まれます(もとより、寅吉も責任は取るつもりではいたのですが)。
         プロポーズをするためには、まず窓の下に行ってセレナータを歌わなければならないと言います。セレナータなんて知らない寅吉でしたが、とにかく歌わなければと歌ったのが、何と田植え歌(爆)。
         歌う意味なども分からずにとりあえず歌ったのですが、変わった節回しにせよ、集まった見物人には結構好評の様子。
         そのままエレナにプロポーズして見事に結ばれました。
         その後、エレナとの披露宴を上げるための費用を稼ぐという名目で、エレナの反対を押し切ってベニトと一緒にスペイン軍にはせ参じたというわけなんですね。

         その後の寅吉の波瀾万丈の人生が描かれるのですが、まぁ、一本気というか、不器用というか、男って本当に馬鹿です。
         ユーモアも交えた筆致で描かれますが、佐藤さんの作品はラストまで一気に読ませる力がありますねぇ。
         そして、結構ほろっとさせるところもあります。
         この作品も、男って馬鹿だよねって思いながらも、寅吉の行動に「本当にお前さんは馬鹿だよ」と思いながらも、それだけ言うのならやってきなさいなと言ってしまうようなところもあります。
         そう。面白うて、やがて悲しき……です。

         大変楽しめた一冊でした。
        >> 続きを読む

        2019/03/23 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      Arms

      皆川亮二

      小学館
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      いいね!
      • この本の名言をご紹介します。

        ***
        足を止めるのは絶望ではなく"諦観"
        人の足を進めるのは希望ではなく"意志"だとな
        >> 続きを読む

        2013/01/16 by 本の名言

    • 1人が本棚登録しています
      殺人者K

      鎌田敏夫

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 現場配属に燃えるキャリア組の女性刑事が挑む謎多き事件。

        後味は良くないが相変わらずビジュアルに訴える作品。

        女性を描くことに関しては卓越した腕を持つ著者だが、本作品でも追う者と追われる者として魅力的な女性が登場する。

        一応、事件を追う形式にはなっているものの、殺人事件自体はストーリーの本筋ではないため、推理やサスペンスというカテゴリにしっくりとは嵌らない気がする。

        とはいえ、著者の特徴は健在で、映像が頭に浮かぶ作品のため、2時間枠のドラマをイメージすると、やはり火サスだろうと思ったりもした。

        幾らなんでも滅茶苦茶では無いかというラストには多少閉口。
        >> 続きを読む

        2012/08/28 by ice

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      吉行淳之介全集〈第2巻〉全短篇2

      吉行 淳之介

      5.0
      いいね!

      • この「吉行淳之介全集 第2巻 全短篇2」に収録されている短篇小説「鳥獣虫魚」をじっくりと再読しました。

        「その頃、街の風物は、私にとってすべて石膏色であった」という書き出しが、実に鮮烈だ。

        著者・吉行淳之介の内的宇宙に映る光景は、超現実的であり、吉行はこの世にいながら、この世を超えた異数の世界にいる。

        この作品は、現代人の孤独と徒労を超現実的な、ないし幻想的手法で描いた作品なのだと思う。

        一般社会からの疎外感を石膏色というイメージで、見事に表現していると思う。
        吉行の内部には、「街の底で」という彼の作品にもあるように、世界がすべて裏返って見えるなどの、こういう異常な体験があるように思われるのだ。

        いや、というよりも、こういう表現によってしか、とらえられない感覚があるのだと思う。

        吉行は、自分の生理的、肉体的な感覚しか信じられないのだ。
        女と肌で接しあった時しか、生きている色彩は見い出せない。
        孤独なニヒルな世界に住んでいるのだと思う。

        そう言えば、吉行の作品のほとんどは、淡彩画であり、モノトーンだ。
        油絵的、装飾的な華やかな色彩はない。すべて石膏色に暮れて寂しげだ。

        そこに、ただひとり色彩のある一人の女に出会う
        主人公は、女を気に入るのではなく、愛しているのだ。
        戸惑いながらも、自分の発見した愛に嬉し気なんですね。

        この女にだけ色彩があるのは、その女が男に捨てられ不幸であるからなのだ。
        この世では生きていけないような心を持っているからなのだ。
        これは、長い遍歴の末の同類発見の、人間の真実発見の物語なのだと思う。

        抱いた時、手術した肋骨のない肺が、笛のようになるのは、とても哀切だ。
        けれど、この悲しさ、寂しさの涯に、吉行は真実の愛の、とらわれ、わずらわされる愛の悦びを見い出しているのかもしれない。

        グロテスクを、滑稽を、愛に昇華させながら、「私たちの旅は、いま、はじまったばかりなのだ。」という結びは、それまでの吉行淳之介にはなかった、素直な生きる決意のようなものを思わせるんですね。
        >> 続きを読む

        2018/09/10 by dreamer

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      鏡の中、神秘の国へ

      ヨースタイン ゴルデル

      5.0
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      • 大学一回生の頃から読書ノートをつけている。
        この本は、その読書ノートの一冊目だ。

        高校生のころから、ちょこちょこゴルデル氏の作品を読んでおり、これもその流れで読んだもの。 >> 続きを読む

        2015/03/04 by 魚住すくも

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      マンガはなぜ面白いのか その表現と文法

      夏目房之介

      NHK出版
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
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      • 著者:夏目房之介という人物は一体何者か?

        ずばり、夏目漱石の孫である。

        夏目は自らを「漫画コラムニスト」と称し、
        漫画研究・評論ならびに執筆活動を行っている。
        ちょっと前まで、BSマンガ夜話にもレギュラーで出演していた。

        ジャングル大帝レオ と のらくろの目玉を取り替えるとどうなるか?
        ゴルゴ13がおおげさな感情表現をするとどうなるか?
        のび太の部屋はなぜあんなに片付いているのか?

        さまざまな実験を通して説明される漫画論に
        読者はすっかり魅了されるだろう。

        「マンガはなぜ面白いのか」は、なぜ面白いのか。

        読めば分かるのだ(バカボンパパ)
        >> 続きを読む

        2014/01/04 by ウサギ

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