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野谷文昭 , G・ガルシア=マルケス
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ガブリエル・ガルシア=マルケスの「予告された殺人の記録」を再読。疑問の余地なく、マルケス作品中、最良のものの一つだと思う。マルケスは、これを自身の最高傑作と呼んでいるらしいが、そう言われても全く違和感はない。まさしく、世界文学史上の不朽の名作だと思う。「百年の孤独」のあのめくるめく神話的な語り、途方もない幻想的な事件が頻出するマジックリアリズムとは、明らかに異質な、ジャーナリスティックで端正な語り口が採用されている。もともと、マルケスはジャーナリストとして出発した作家なので、別におかしくはないのだが、あのとめどもない饒舌体の印象が強いと、最初は戸惑うかも知れない。超現実的な事件が、どんどん起きるということもない。全体に、ぐっと抑制されている。だが、だから、いわゆる普通のリアリズム小説かというとそうでもない。ここで描かれる事件は、実に奇怪で、物理的に可能とはいえ、実際は超現実的というに相応しい、現実離れした出来事だ。魔術的であり、儀式的なのだ。暗合や象徴、前兆、不条理に満ちている。ところが、これは実際に起きた事件がモデルになっているのだ。その戦慄が、我々、マルケスファンを呪縛する。また、代表作の「百年の孤独」や「族長の秋」に比べれば、いかにも短いが、それはノーベル賞作家であり、20世紀文学に豊饒な物語を復権させた、文学的巨人マルケスが、持てる技量を凝縮し、結晶させた結果の短さなのだ。どんな長編よりも濃厚で、しかも、アクロバティックなまでの技巧が凝らされている。時間、空間がモザイクのように自在に組み合わされ、ジャーナリスティックな語り口と神話的な語り口が融合する。さらに、文学的な仕掛け云々以前に、話が面白い。マルケスの圧倒的ストーリーテリングを堪能できる。特に、それまで悠然と進んできた語りが、一気に加速する終盤が凄い。それまでの構成から、サンティアゴ・ナサールの殺害場面が、クライマックスに来ることは予想できるのだが、この決定的瞬間に向かって突き進むストーリーテリングが、加速を始めたが最後、我々読者はもう本を置くことができなくなる。それにしても、最後の章で、マルケスが読者をハラハラさせる巧みさはスティーヴン・キング並みだ。サンティアゴ・ナサールの親族たちは何とかして彼を救おうと色んな行動をとるのだが、それらの行動の一つ一つが、見事に裏目に出て、この青年を避けがたい死の方へと押し流していく。特に、母親がわが子を救おうとして取った行動が、とどめとなってしまうのがなんとも皮肉だ。思わず「ああー!」と声を上げそうになる。訳者のあとがきにあるように、この物語は外からやってきた客(花婿)、共同体の生贄(花嫁)、面目の失墜(花嫁が家へ戻される)、そして名誉の回復(殺人)という象徴的儀式としても読める。冠婚葬祭の華やかさや法王の到来がもたらす、祝祭的雰囲気が横溢し、物語に無意識に浸透していくような夢幻的色彩を与えるのだ。訳者は他にも、サンティアゴ・ナサールの二重言語者としてのアイデンティティの問題、共同体の中の差別や憎悪、民族的対立、あるいは母権的社会など、様々なテーマが盛り込まれていることを指摘している。これらのテーマが、モザイクのように組み合わさり、このシンプルな物語に、万華鏡のような素晴らしい複合性を与えている。どの角度からどのような切り口で入っても、重層的で奥が深い。またこの短い物語の中に、様々な物語の萌芽がたくさん含まれている。それはたとえば、外からやってきた男バヤルド・サン・ロマンのミステリアスな過去、あるいは花嫁アンヘラ・ビカリオの陵辱の真相、数十年後に再会する二人のそれからの物語。殺人者である屠殺人兄弟の物語、ナサール家で働く母娘の物語、「わたし」自身の物語などだ。それは、どこまでも膨らんでいきそうな予感をはらみながら、最低限にしか触れられていないか、あるいは謎のままにとどまっている。こうした物語の萌芽が、惜しげもなく散りばめられていることが、この短い物語の驚くべき豊饒さに繋がっているのは間違いない。あまりにもドラマティック、そして緊密な物語。その端正さに涙する、20世紀文学の結晶だと思う。 >> 続きを読む
2021/09/04 by dreamer
小川洋子
『薬指の標本』(小川洋子) <新潮文庫> 読了です。※※ 内容に触れます。※ 嫌な方は読まないでください。※薬指の先を無くしたときの「残像」、初めて街に出たときの情景、靴をプレゼントされたときの様子、浴場でのデート、など、素晴らしい描写がいくつもありました。その一方で、弟子丸氏が耳に息を吹きかけたり、三つのきのこの標本のエピソード(両親と弟を亡くした)が語られたり、火傷の少女が再び現れたり、果たしてこのシーンは必要なのか、と思うところもありました。また、標本室にはどうやって入るのかよく分からなかったり(受付に直接行けばいいのか、門の呼び鈴を押すのか)、長年ほっておいたピアノを調律なしで弾いたり、そもそも建物の構造がイメージできなかったり、読んでいくといろいろな違和感を覚えます。読んでいる間、悪くはないけど私に読めるのかなあ、という印象が常につきまとっていました。それが、活字を拾うシーンですべて帳消しにされました。その他の素晴らしい描写と相まって、この違和感の創出が作者の持ち味なんだろうと思うようになりました。すべてが作者の計算の上で構築された世界観なんだろうな、と。しかしそれでも、この世界観に私はどっぷり浸ることができませんでした。日常生活において他人の生活にある種の無関心を持っているように、ここで描かれる世界も、どうもしっくりこないのです。作風との相性なのか、私の理解が間違っているのか……。併録の「六角形の小部屋」はさらにその感じが顕著でした。違和感はある、そしてそれは作者の持ち味なんだろう、という印象までは持てるのですが、それ以上のものが響いてこないです。「薬指の標本」のような素晴らしい描写もなく……。うーん、このまま小川洋子を読み続けるか、ちょっと悩ましいところです。 >> 続きを読む
2018/11/17 by IKUNO
尾田栄一郎
すごく楽しかったです
2018/07/17 by jp-miura
小松左京
数十年ぶりの再読。Tレックスがこの地を凌駕していた白亜紀から始まり、未来まで十億年もの時間軸を舞台にする壮大な物語。ネット社会も、SNS社会も存在しない半世紀も前に書かれた作品なのに、現代に通じるテーマ性が多角的に描かれているSF界巨匠の創造力の奥域に改めて驚愕。ジョージ・オーウェルの『1984年』と同様に一時代を飛び越えて、未来の人々を刺激して止まない人類の叡智こそ宇宙の神秘かも。初独時は、宇宙の存続を賭けたプログレッシブなタイムトラベラーと、歴史改ざんを阻止するコンサバティブなタイムパトローラの時空を超えた攻防戦という活劇タッチに魅了されたが、年を積んだ今は、さまざまな時代に生まれて消えてゆく人間そのものが星のような宇宙のメカニズムの一片のような哲学的な小説に思えた。 >> 続きを読む
2019/09/21 by まきたろう
鈴木光司
15年前に読んだときは前作とのギャップにやられてどうも面白さがわからなかったが、再読したところ前作以上に好みだった。(ホラーよりも謎解きが好き。はっきりした答えが知りたい性分なので。)自身も2児の親となった今、主人公である安藤への感情移入は苦しいほどである。荒唐無稽と思えた呪いのビデオが、フィクションとはいえ科学的に解明されていく過程は、個人的には貞子が迫ってくる前作よりも緊張感があると思う。なんといっても前作は個人の死で済んだものが種の存続に関わる問題になるのだから、規模が違う。 >> 続きを読む
2018/09/30 by komatsu
藤子プロ , 小学館
あなたはドラえもんが何故青色なのか知っていますか?ネズミに耳をかじられた姿を鏡で見て青ざめたから?耳を無くしたため「元気の素」を飲もうとしたら間違えて「悲劇の素」を飲んでしまい3日3晩泣き続けた反動で体のメッキが剥がれたから?世代によって答えが変わるのですが実は…「学習マンガは扉ページで地色に黄色を使うことが多くタイトルは赤字が多い。3原色で残る青色にした」というのが真相。実はとっても合理的な理由が。でも、それでは子どもたちに説明するには味気なさすぎると言う事でアシスタントの片倉さんが後付で作った物語がネズミに耳をかじられた非公式設定。それを藤子・F・不二雄さんもそのほうが良いと公式に認められたという経緯があります。この本ではそんなコミックスにも収録されていないような初期のマニアックな設定が紹介されています。ただドラえもんトリビアの知識を得ることだけが楽しいのではなく、面白さのためなら不動と思われた設定をどんどん壊して新しい姿をもとめ続けた藤子・F・不二雄さんの考えを知ることが出来て実に面白く読み進められました。子どもたちの成長に合わせてより良い物語を生み出そうと努力したからこそ現代の子どもたちも魅了するキャラクター・道具たちが生まれたんですね。世代を超えて愛される作品ドラえもん。ポケットモンスター、妖怪ウォッチ、仮面ライダー…etc毎年劇場公開が恒例となっている子ども向けの作品は多いですが、大人も一緒に観たいと思えるとなると「ドラえもん」が群を抜いています。 >> 続きを読む
2017/09/24 by ybook
佐々木譲
この方のストーリーは私にとってとても情景が浮かびやすくてそして現場にいる感覚になりやすいから、好き。あとにおいたつものが、好き。 >> 続きを読む
2017/06/13 by 自由じゃん
ヨースタイン ゴルデル
ヨースタイン・ゴルデルの「鏡の中、神秘の国へ」のストーリー・ラインは、白血病で死に瀕している少女の前に、守護天使が姿を見せ、死後の世界へと彼女を誘うというもの。だが、哲学的とも言える、感性豊かなこの作品は、物語の展開ではなく、少女と天使とが交わす会話に妙味がある。語るうちに、少女は自らの死という事態を受け容れていくのだ。神の国の超越性を説いた「鏡の中におぼろに見るが如く」という、パウロの有名な言葉を踏まえ、神の定めた死というものの測り難さ、つまりは神秘の超越性を語る作品なのだと思う。 >> 続きを読む
2019/11/21 by dreamer
EllroyJames , 小林宏明
この映画化もされたジェイムズ・エルロイの「LAコンフィデンシャル」(上・下巻)を読み終えた後の正直な感想は、途方もないものを読んでしまったということだ。例えるなら、脳がぐちゃぐちゃになったような感覚と言ったらいいだろうか。熱病による消耗にも似た気分で、脳自体がエルロイの小説に引きずり回されて疲弊しているのだ。放たれる激情の本流が、情動を司る半球を犯し、奇矯なくせに緻密な言語さばきと構成が、論理を司る半球を揺さぶるのだ。その呪術的な音色が奏でるのは、人間が抱える負の衝動の蠢きだ。この作品で巨悪の陰謀を封じることになる三人の刑事、エド・エクスリー、バド・ホワイト、ジャック・ヴィンセンズのキャラクターが、とにかく凄い。唯一「清潔」な刑事であろうとするエド・エクスリーでさえ、その芯にあるのは、エゴイスティックな出世欲なのだ。凄惨な犯罪と、腐敗した権力の横暴とがひしめきあう世界。善人など誰ひとり存在しない。あまりに殺伐とした世界に見えるかもしれない。エルロイの描く人物は、負の衝動で動く。それがエルロイの人間観であり、世界観なのだと思う。人間は性衝動や差別感情や憎悪を捨て去ることのできない、不完全で歪んだ存在なのだと言っているかのようだ。だが、エルロイはそれでもなお、人間性というものを信じていると思う。そして、それが最も明瞭に現われているのが、この「LAコンフィデンシャル」なのだと思う。悪徳と憎悪のクロニクルのような物語は、やがてひとつの巨悪へと収斂してゆき、三人の刑事たちはそれを倒すべく、ともに立ち上がる。負の衝動に支配された存在であったとしても、人間は結果的に何か大きな意味あることを成し遂げられる---そんな思いが、感動的で爽快ですらある結末を生んでいるのだ。ジェイムズ・エルロイという作家は、ある意味、最も尖った先鋭的なミステリ作家で、暴走するエモーションの底で複雑なプロットを操り、やがてひとつにまとめてみせる筆致は、巧緻きわまりない。ただ、エルロイは、ややとっつきにくいことも確かなので、ミステリを読み始めてまだ日が浅いという人は、映画版「LAコンフィデンシャル」を先に観てから、原作の小説にトライした方がいいかもしれません。映画版は、細部は忠実に、一方で大胆な脚色も施されていて、原作の複雑怪奇な全体像がすっきり整理されていると思うので、観終わった後、原作へと進み、唯一無二の言葉の呪術を体験されるのをお薦めしますね。それが、ジェイムズ・エルロイという作家の本領であり、映画に移し変えることのできない、小説ならではの力なのだと思う。エルロイの呪術にひとたび脳を灼かれてしまえば、もう逃れることはできません。 >> 続きを読む
2019/04/24 by dreamer
ClementFrederic , 鈴村和成
【クラフトエヴィング商會のような】 大変夢がある、ビジュアルな美しい本です。 著者のフレデリック・クレマンは、ブック・デザインやオブジェ制作なども手がけているそうですが、最初はこの本は娘さんのために作ったのだそうです。 どんな本かというと……。 アリスという、不思議なものを売っている女の子の誕生日に、フレデリック・チック・チックという、これまた不思議なものを売っている男が色んなプレゼントを披露するというお話。 ビジュアルな本ですから、プレゼントしようとしている不思議なものが実際に作られていて、その写真が添付されています。 例えば…… 『ピノキオの鼻の先っぽ』、『頭のおかしなラクダの思い出』、『星の王子さまの影』、『空飛ぶじゅうたんツアーの当たりくじ』、『シンデレラの笑いのかけらとガラスのかけら』などなど。 う~ん、詩的だなぁ。 それに、ほら、クラフトエヴィング商會のようでしょう? 作られているプレゼントのオブジェも似ているんですよ。 また、それぞれのページには美しいイラストやコラージュが添えられています。 このコラージュ、マックス・エルンストのコラージュに似ています。 マックス・エルンストは、古いカタログなどを切り取って、もともとの絵とは全く違う絵を作り上げてしまったのだけれど、そんな感じのコラージュです。 アリスという名前はついているけれど、必ずしもあのアリスというわけでもないのかな? でも、チェシャ猫が出てきたりもするのでそうなのかもしれない。 むしろ、当初のコンセプトからすると、娘さんの名前がアリスだったりして。 大変おしゃれな本です。 プレゼントにも最適じゃないでしょうか。 クラフトエヴィング商會が好きだという方ならきっと気に入ることでしょう。 私も、大変気に入りました。 >> 続きを読む
2020/01/20 by ef177
岸田衿子 , 山脇百合子
すべってころんでゆきだるまになって。リズムも楽しい文章とストーリー展開で大好きな絵本。 >> 続きを読む
2015/01/14 by ぶぶか
坂口安吾
坂口安吾の本 初挑戦。 ということで、いろんな作品の雰囲気を感じられる 短編集を読んでみました。 しかし・・・個人的には合いませんでした・・・。 ネット上の評価も高い本だったんですけどね (>_<) 収録作品は 「魔の退屈」 「私は海を抱きしめていたい」 「ジロリの女」 「行雲流水」 「肝臓先生」 の5作品。 1~4作品目までは もうひたすらに男女の色事に関してのみの記述です。 もう徹底してると言っていいくらい。 あまりにも赤裸々すぎて笑えてくる部分もありますが、 おおむね辟易としてきます。 これらの文章の中に文学を見出すと評価が高くなるのかもしれませんが、 私には無理でした。 唯一、毛色が違って熱いお話だったのは「肝臓先生」。 田舎の一介の町医者として往診に明け暮れ、 名声も地位も富も望まず、 町の何人かの人々が先生の存在によって心安きを得た という小さな事実をよろこびとして生き抜いた物語は 胸に訴えかけてくるものがあります。 全作品を通じて 第二次世界大戦当時~直後の日本の雰囲気が色濃く反映されています。 そうしたことを感じられるのは 本書のひとつの良い特徴かもしれません。 しかし、正直 「肝臓先生」がなければ ★2つでいいくらいです。 「肝臓先生」があるがゆえに★3つとさせていただきます。 >> 続きを読む
2016/01/30 by kengo
柳美里
台本調にセリフ書きの形で展開される家族/友人関係。感性が合わず、何を伝えたいのかが全く把握できない。かといってとくに主張もなく、ごく普通の日常風景を切り取るというアプローチでも無い。登場人物が死ぬという非日常が展開されるが、その意図が掴めない。全体を通しての印象としては、偉そうな評論家が使う、「19歳女流作者がみずみずしい感性で描くなんとかかんとか」というよく有る宣伝文句がピタリとはまる気がする。芥川賞受賞「家族シネマ」など、文壇からは高い評価を受ける著者なので、きっと楽しめる作品も有るのだろうとは思うが、本書を読み勧めるのは辛かったというのは事実。台本調でない他の作品に触れてみたい。 >> 続きを読む
2011/01/04 by ice
奈良美智
ココロの中をカタチにしながら葛藤したり、泣いたり、悩んだり笑ったり、希望を見出したり、未来を思ったり。当たり前だけど、奈良さんの日常の中で生まれてくる絵たちをすごく実感できます。あまりに赤裸々で少し照れてしまったりもするけど、そんなむき出しのカタチがいいなぁと、何度も読み返してしまう本です。 >> 続きを読む
2013/10/15 by 山本あや
柴田翔 , ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
主役がそれぞれ高い知性を持っているということが感じられとても面白かった。感情が移ろいやすいということを理解するからこそ感情を長続きするように努力をする。それでもままならない現実。現代のワイドショーを芸能人の男女関係のスキャンダルが賑わす。これに対して「アホだなー」と悪口をいうのはそれはそれで楽しい物があるのだけれど、「もういいよ飽きたよ」って人が読んだら楽しい本。確か「ヘッセの読書術」という本の中でヘッセが若いころにこのゲーテの「親和力」を読んだという記述があり興味を惹かれ読んだ。 >> 続きを読む
2016/04/05 by ryochan333
シェル・シルヴァスタイン , 倉橋由美子
大人向けの絵本かな。子どもに話して聞かせるような、ユーモアのある文章で、とても読みやすかった。ただハンターという語感が好きで、ハンターが何者かも知らなかったライオン。ハンターが来ても襲う気なんてなかったのだが、ジャングルにやってきたハンターに「ハンターは撃つもんだし、ライオンは降参せず最後まで戦ってハンターを食ってしまうもんだ」と教えられたとおり、ハンターを食べ、奪った銃で射撃の名手になる。射撃の名手になったライオンをサーカスに出して儲けようという人間に連れられ、都会にやってきたライオン(ラフカディオって名前を付けてもらった)は文明にふれながら次第に人間と変わらないようになる。散髪をし服を着て美味しい物を食べてお金を儲けて、ゴルフに音楽に・・・etcしかし、人間の文明にも飽きてしまったラフカディオはジャングルに狩りをしに行く。そこで仲間のライオンからお前はライオンなんだと言われる。彼は自分がライオンだと言うことをすっかり忘れてしまっていた。人間からは、「お前が人間なら、ライオンたちを撃つんだ。もしお前がライオンなら、お前を撃ってやる」と言われ、ライオンからは「お前がライオンなら、おれたちに手を貸してこいつらを食うがいい。お前が人間だというなら、お前を食ってやる」と言われる。自分はもう本物のライオンでもないし、かといって本物の人間でもない。僕の居場所はどこにもない、と彼はあてもなく歩き出す。どこにいくのか自分にも分からなかった。・・・というお話。 「・・・自分の居場所を見失なってしまった人、新しい出発を目指す人に。」と作品紹介にある。本物のライオンって?本物の人間って?自分の居場所って?ライオンにも人間にもなれなかった、・・・て悲しまなくてもいいんじゃないかな。人間っぽいライオンでも、ライオンっぽい人間でも、中途半端でも、そういうライオン(ラフカディオ)がいてもいいんじゃないかなあ?今、自分が居る場所が居場所であって、それはどこでもいいし、どこにでもある(できる)。どこからでも歩き出せる。人間を食えというライオンの言うことを聞くこともないし、人間に言われてライオンを撃つこともない。そういう者と一緒にいることはない。他のいい仲間を探してもいいし、いなければひとりでしっかり歩いていけばいい。(自分がライオンだったということを思い出せたのはよかった!そうしないと仲間を撃つことになるからね。でも、本当は自分自身をよく知ったうえで、ライオンか人間か、という壁がなくなるのが理想だけどね。)自分探しって何?自分なんて探す必要ないよ。もう、すでに、ここに居るんだからね。自分の居場所は、ここ。ここから出発すればいい。いつでも。 ・・・って私は思うんだけど。作者は何を伝えたかったのかな?ライオンか人間か、どっちかにならなきゃいけないってんなら、ん~星3つ。ラフカディオはそのままでいいよ。自分の生き方をいけばいい。ってことなら星4つ。(それ以外だったりして…^^;)人によって解釈が分かれるところでしょうかね。(読解力の問題?^^;) >> 続きを読む
2013/10/26 by バカボン
天樹征丸
小説版「金田一」シリーズ、第5巻です。今回の舞台は、中国・上海。幼馴染「七瀬美雪」と共に、上海を訪れた「金田一一」は、そこで恐ろしい連続殺人事件に巻き込まれる。中国雑技団の中で囁かれる、魚人伝説になぞらえた殺人事件。異国の地で、公安に阻まれながらも、事件解決に挑む金田一。その中で新たに芽生える、友情-。見所満載の事件で、面白かったです。 >> 続きを読む
2019/08/19 by ゆずの
井沢 元彦
日本史最大とも言っていい謎の一つが、邪馬台国と卑弥呼だろう。その存在は 唯一、魏志倭人伝に記載されているのだが、正確には中国の正史で65巻からなる「三国志」の中の「魏書(魏志)」全30巻の中の最終巻である、烏丸鮮卑東夷伝の、更に最終章「倭」に記載されている。井沢元彦の「卑弥呼伝説」は、邪馬台国と卑弥呼の謎を、現代人のトレジャー・ハンター永源寺峻が探索しながら、事件に巻き込まれ、殺人事件が起こりという、いつも通り、ミステリと邪馬台国と卑弥呼の謎の探求の二つがその命題となっている。この歴史探求には、現代科学や著者の「怨霊信仰」や「祟り」理論を駆使して、この謎を解き明かすのだが、著者の場合、それだけにとどまらない。それは、派生的というには大きすぎる謎や、既に歴史の常識となっている事柄にまで追及の手が入る。例えば、天皇家と神話の関係や、世界の宗教との関わり、伊勢・出雲・宇佐神宮の設立の謎などを次々と解き明かしていく。その解明方法は、通説やそれに対する他方面の説を土台に、独自の理論を展開する、いわば井沢作品の常套手段であり、安心感があり、納得して読める。要するに、著者の作品には迷いがない。また、学者ではなく作家であることが 下手な束縛やしがらみを排除できる為か、常識とされていることについても、どんどんと反論する様は、実に圧巻だ。いつか、この井沢説が立証される日がくるのが愉しみでもある。 >> 続きを読む
2022/01/07 by dreamer
佐藤賢一
【面白うて、やがて悲しき……】 男って馬鹿ですよね~。本作を読んでつくづくそう思いました。 本作は、佐藤賢一さんのデビュー作。「王妃の離婚」があまりにも面白かったのでちょっと佐藤さんの作品を読んでみようかと思い、まずはデビュー作から。 物語は、戦いの世に憧れて支倉常長使節団に加わった奥州一の剣の使い手、斎藤小兵太寅吉を主人公とした波瀾万丈のお話です。 寅吉は、スペイン無敵艦隊を味方につけて徳川幕府に殴り込みをかけ、伊達藩による天下を達成しようと、恋人のお米を捨ててまで使節団に加わりました。 苦難の末スペインにたどり着いたものの、スペインも斜陽の国。わざわざ日本にまで艦隊を派遣する義理もなく、夢は消えようとしていました。 とにかくやることもなく、酒に明け暮れる毎日だったのですが、ひょんなことからお調子者のベニトと意気投合し、ついにはスペインの軍隊に入って戦いに赴きます。 寅吉はベニトの家に居候していたのですが、成り行きもあってベニトの妹エレナと関係を持ち、結婚までしてしまいました。 このプロポーズのくだりが結構笑わせます。 スペインの風習など知らない寅吉は、隣の世話焼き女将にせっつかれてどうしてもエレナにプロポーズしなければならない立場に追い込まれます(もとより、寅吉も責任は取るつもりではいたのですが)。 プロポーズをするためには、まず窓の下に行ってセレナータを歌わなければならないと言います。セレナータなんて知らない寅吉でしたが、とにかく歌わなければと歌ったのが、何と田植え歌(爆)。 歌う意味なども分からずにとりあえず歌ったのですが、変わった節回しにせよ、集まった見物人には結構好評の様子。 そのままエレナにプロポーズして見事に結ばれました。 その後、エレナとの披露宴を上げるための費用を稼ぐという名目で、エレナの反対を押し切ってベニトと一緒にスペイン軍にはせ参じたというわけなんですね。 その後の寅吉の波瀾万丈の人生が描かれるのですが、まぁ、一本気というか、不器用というか、男って本当に馬鹿です。 ユーモアも交えた筆致で描かれますが、佐藤さんの作品はラストまで一気に読ませる力がありますねぇ。 そして、結構ほろっとさせるところもあります。 この作品も、男って馬鹿だよねって思いながらも、寅吉の行動に「本当にお前さんは馬鹿だよ」と思いながらも、それだけ言うのならやってきなさいなと言ってしまうようなところもあります。 そう。面白うて、やがて悲しき……です。 大変楽しめた一冊でした。 >> 続きを読む
2019/03/23 by ef177
皆川亮二
この本の名言をご紹介します。***足を止めるのは絶望ではなく"諦観"人の足を進めるのは希望ではなく"意志"だとな >> 続きを読む
2013/01/16 by 本の名言
出版年月 - 1997年11月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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