こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


1998年12月発行の書籍

人気の作品

      黒い家

      貴志祐介

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! ice ooitee
      • ホラー作家貴志祐介の面目躍如な作品。

        保険調査員の若槻が指名された顧客の家に出向くと、子供の首吊り死体に遭遇。
        両親にはその後保険金が給付されるが、若槻は不信感から顧客の調査を行う。

        映像はないのに迫ってくるような圧迫感が、文字だけでビシビシ伝わってくる。
        殺人鬼の描写もまた強烈で、凶器は包丁だけなのに絶望感しかない。

        犯人が誰かとか、トリックがどうだとかを隠そうともしていない。
        そういう部分ではなく、殺人鬼や若槻の妄想などが恐怖の対象となっているから。

        ラストもすんなりと終わらせてくれない余韻も不気味。
        >> 続きを読む

        2018/08/22 by オーウェン

    • 他7人がレビュー登録、 61人が本棚登録しています
      坂の上の雲

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! tadahiko tomato shoko44n Maracas
      • 再読。
        初めて読破したのが20歳くらいだから、ほぼほぼ10年ぶり。
        20代のうちに再読したい、って当時思った記憶があるからギリギリ間に合うことになる。

        『まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている。』
        この冒頭の文章を読むだけで胸が熱くなる。
        明治初期に自分がタイムスリップしたかのような錯覚。登場人物たちの会話を側で自分が聴けているような嬉しさ。司馬先生の書く文章が堪らない。

        それとNHKドラマ「坂の上の雲」のサントラを聴きながらの読書が捗りすぎてヤバい。
        >> 続きを読む

        2017/01/28 by ねごと

      • コメント 3件
    • 他5人がレビュー登録、 49人が本棚登録しています
      猫語の教科書

      灰島かり , GallicoPaul

      筑摩書房
      カテゴリー:家畜、畜産動物各論
      4.0
      いいね! kazuna-ri
      • 【はい、次のところテストに出るからにゃ】
         タイトルだけを読むと、人が猫と楽しくお話ができるための教科書みたいな本じゃないかな?と思うことでしょう(「にゃー」というのは○○という意味ですみたいな)。
         でも違うんですね~。

         まず、この本は猫によって書かれたという設定なのです。
         猫がタイプライターを駆使して書き上げ、編集者の玄関先に完成した原稿をそっと置いていったと。
         でも、完全にはうまくタイプライターを打てないので、一見暗号のような文章に見えるのですが、それは猫の手でキーを押したため、ピンポイントには押し切れず、打ちたい文字の周辺の文字が打刻されてしまう場合もあるという結果、一見暗号のように見えてしまうけれど、読み方のコツさえ分かれば解読できるというもので、それを『翻訳』したのが本書という設定なのです。

         で、内容も、作者猫が他の猫に対して書いたものになっています。
         副題は『子猫、のら猫、捨て猫たちに覚えてほしいこと』となっています。
         具体的には、いかに人間の家で猫の自尊心を失わずに快適な生活を送るか?というものなのです。
         大体、第1章のタイトルからして『人間の家をのっとる方法』なんですから(笑)。

         人間は(特に男は)猫に比べれば賢くなく、矛盾に満ちたおかしな奴らで、猫に対して沢山の誤解を持っているけれど、うまく接してやれば猫の意のままに操ることなんて簡単だから、この教科書を読んで人間の家で快適な猫ライフを送るんだにゃというわけです。

        私は猫を飼ったことが無いのですが(犬はあります……猫から見れば犬は馬鹿な奴だそうです)、作者猫の言わんとするところは容易に分かりますし、もう読みながらにやにやしっぱなしでした。
         ましてや、実際に猫を飼われている方だったら、「あぁ、あの行動は猫からすればそういう深謀遠慮があってのことだったのか!」と思わず膝を打つことでしょう。

         自分専用の椅子を獲得するためにはどうすれば良いか、食事中に猫におすそわけをしてはいけないなどというルールを決めたご主人を籠絡して美味しい物をゲットする方法、魅惑の表情の作り方、上手な話し方などなど、実践的に役に立つ(猫にとってですよ)内容満載です。

         この本、猫に対して書かれているわけですが、本当のところは人間に対して書かれているんだと思うんです。
         無理解な人間に対して、猫側の言い分とでも言いましょうか。
         でもね、一見、猫の立場から勝手なことばかり書いているように見えながら、第14章『愛について』なんてじわっと来てしまいますよ。
         猫好きな方はもちろん、そうではない方も、本書を読めば猫にメロメロになってしまうことでしょう。
         
         なお、この『教科書』には愛くるしい猫のモノクロ写真が沢山添えられています。
         この写真の猫がまた可愛いんだわ。
        >> 続きを読む

        2019/06/07 by ef177

      • コメント 3件
    • 他3人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      村上春樹,河合隼雄に会いにいく

      村上春樹 , 河合隼雄

      新潮社
      2.8
      いいね!
      • なんだかしっくりこなかったというのが本音。

        心理学の専門用語…箱庭療法などいったいどういうことをするのかぼんやりとしかわからないまま読み進めていったり。

        村上春樹の使う横文字の多さ。
        それもほぼ理解できなかった。

        あとこの本の中によく出てくる、「ねじまき鳥クロニクル」だが、まだそれを読んでいないので理解できなかった部分もあると思う。

        3時間ほどでサラっと読めたが、ん~って感じだったなぁ。
        >> 続きを読む

        2015/04/20 by snoopo

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      「白線流し」を知っていますか

      フジテレビジョン

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:放送事業
      2.0
      いいね!
      • この本の名言をご紹介します。

        ***
        苦しいこともあるだろう。
        言いたいこともあるだろう。
        不法なこともあるだろう。
        腹の立つこともあるだろう。
        泣きたいこともあるだろう。

        それらをじっとこらえていくのが、男の修業である。

        - 海軍元帥 山本五十六
        >> 続きを読む

        2013/01/24 by 本の名言

      • コメント 1件
    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      極大射程

      佐藤和彦 , HunterStephen

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  この本は2000年の「このミステリがすごい」の海外部門第一位、2008年の20年間のベストでも海外部門4位ということで読もうと思っていました。

         私の本の師匠、内藤陳師匠も著者、スティーブン・ハンターを好んでいて、日本冒険小説協会(会長であった内藤陳師匠が亡くなった今は解散)でも評価が高い作家です。

         このハードボイルド小説もは、主人公が雄鹿を猟銃で狙うところから始まります。

         主人公は、過去、ベトナム戦争で名スナイパーとして伝説的な存在になったものの負傷して今は、ライフルと犬だけを友に山奥で隠遁生活をしている、孤独な男、ボブ・リー・スワガー。

         国のために戦って、負傷して、心に傷を負いながらも、決してそれを表情に出さない、タフで、腰を撃たれたもののその射撃の腕はいまだに衰えない。

         そこを、ある組織から目をつけられたことから、大変な事件に巻き込まれ犯人の汚名を着せられ、さらに、さらに、さらに、巨大な悪の組織から命を狙われる身となってしまうのだ。

         物語に起承転結があるのなら、この小説は「起・起・起・承・承・転・転・転・転・転・
        て~~~ん!結&結&結」という怒濤の一気読みをせざるを得ず、もう夜見る夢は「モデル70、・300口径H&Hマグナム」。

         ボブは世界で五指に入ると言われるだけの名射撃手なので、もちろん銃のプロフェッショナルであります。

         その辺の説得力と法律を巡る物語でもあり、また、謎のダイイングメッセージあり、世界情勢を含んだ、黒幕の後ろにさらなる黒幕っ!という重厚な世界です。

         もう、アメリカだけが正義、共産国がすべて敵ではもう成り立たない世界を、何重にも重なった「単純な悪」ではない、「複雑な悪」の描き分けがうまいからこそ、ボブはヒーローになれるのです。それが2000年代のヒーロー像なのだな、と思いました。
        >> 続きを読む

        2018/07/14 by 夕暮れ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      星新一ショートショート1001

      星新一

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
      いいね!
      • 『星新一 ショートショート1001』[全三冊] (星新一) <新潮社>
        読了です。

        タイトルに「1001」とありますが、文庫未収録作品を含め、1024作品が収録されています。

        少しずつ読んで、十数年かかりました。

        これだけあると、純粋に「おもしろい!」という作品もあれば、「うーん、ちょっとなあ」という作品もあります。
        それでも、それぞれに異なるアイデアでこれだけの作品を書き続けたというのは、やはり異才だと思います。

        第三巻の終わりになると、急に作風が変わってきます。
        星新一の、この業績の末にたどり着いた、一種の「境地」なんだろうと思います。
        人によって好き嫌いはあるでしょうが、私は好きでしたし、なんとも言えない感慨深いものを感じました。

        いつか、全作品の概要と評価をつけてみたいと思いますが、果たしていつになるのか、そもそも実現できるのか……。
        >> 続きを読む

        2018/05/04 by IKUNO

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      坂の上の雲

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね!
      • 再読。第2巻。
        1巻は青春小説の趣が強いけれど、2巻では日清戦争が勃発し時代が登場人物たちの青春時代を奪っていく。若者だった秋山兄弟も立派な軍人に。一方、子規は子規で喀血と脊髄炎に苦しみながらも俳句和歌に新風を起こすため文壇の世界で闘う。

        2巻はとにかくP308が泣ける。陸と子規の関係性がしみじみととにかく泣ける…。
        >> 続きを読む

        2017/02/05 by ねごと

    • 他1人がレビュー登録、 24人が本棚登録しています
      坂の上の雲

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
      いいね!
      • 再読。第3巻。

        3巻のハイライトは正岡子規の逝去。
        葬式での真之の姿振る舞いが…関係性を物語っている気がする。

        そして時代は主題でもある日露戦争に突入。
        大山巌、小村寿太郎、山本権兵衛、東郷平八郎らが登場しはじめワクワクする反面、
        これから203高地はじめ凄惨な戦闘が始まることを思うと、ちょっと暗い気持ちになる。
        >> 続きを読む

        2017/02/12 by ねごと

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 23人が本棚登録しています
      坂の上の雲

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 再読。第4巻。

        4巻は黄海海戦、沙河会戦と旅順総攻撃がメイン。この辺りからいわゆる司馬史観みたいなものがけっこう強めに出てくる。特に旅順要塞陥落を担当する乃木軍に対しては非常に厳しい評価。なかでも参謀長の伊地知に対しては辛辣を極めている。
        P308、旅順での死闘で乃木軍の無策により死傷者が2万人を超えたことについて、『もはや戦争というものではなかった。災害といっていいであろう。』には思わず笑ってしまった。いや、笑っちゃいけないんですけど。
        >> 続きを読む

        2017/02/20 by ねごと

    • 他1人がレビュー登録、 19人が本棚登録しています
      この国のかたち

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      3.5
      いいね!
      • 神道がいかにこの国で生まれ生き残ってきたか、初詣から始まり神社に神様を詣でる機会は多々あってもその歴史はほとんど知らない。
        そんなに信心深い方ではないが、歴史の話が絡んでくると面白く読めてくる。

        こういう評論をシリーズで読んでいくと、歴史を行ったり来たり何往復もすることになるので、自然と記憶に残ってどんどん読みやすくなるのもいい。
        あと一冊で終わってしまうのが残念。
        >> 続きを読む

        2014/02/28 by freaks004

      • コメント 3件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      しーっ!ぼうやがおひるねしているの

      ミンフォン ホ

      2.0
      いいね!
      • 同じフレーズが繰り返し繰り返し・・・・。子どもながらに「くどい!」と思うらしく1回で飽きていた。 >> 続きを読む

        2015/02/03 by ぶぶか

      • コメント 1件
    • 1人が本棚登録しています
      ごきげんななめのてんとうむし

      エリック・カール , 森比左志

      偕成社
      5.0
      いいね! Tukiwami
      • ごきげんななめのてんとうむしがあちこちでケンカを売って歩くお話し。
        というと、ちょっと驚かれるかもしれませんね。
        でも大丈夫。
        このてんとうむしはちょっとヘタレ君なんです。
        だから、「ぼくとけんかする気あるか?」とふっかけておきながら、
        相手が応じようとすると「けんかするには おまえじゃちいさすぎるな」なんて呟きながら逃げてしまうんです。
        「はらぺこあおむし」に次いで人気のあるのがこの絵本らしいのですが、
        それはきっとこの絵本も「しかけ絵本」だからです。

        「しかけ絵本」というのは、普通の絵本と違って、ページに工夫がある本のこと。
        穴ぼこや窓が開いていたり、ページの形が変形だったり
        製本するのに苦労しちゃうだろうなと思える手のかかった本なのです。

        「おはよう」「わけてたべようよ」というきげんのよいてんとう虫に
        ごきげんななめのてんとう虫は
        「あっちへいけ。ぼくがこいつをたべるんだ」といきなり喧嘩腰です。

        こうして、てんとう虫は次々と大きな相手にケンカを売っていくのですが
        相手の大きさとページのサイズとが連動していて、文字もだんだん大きくなっていって。
        とにかく本をめくるのが楽しいのです。
        そしてハイライトは……ナイショです。

        はち、かまきり、すずめ、スカンクなどをスルーして、最後にケンカを売るのは誰でしょう?
        ケンカの勝負はどうなるのでしょう?

        道徳教育的な視点も含まれています。
        また、テントウムシの生態についての説明や一日の時間や時計の読み方などもちょこっと学べるようになっていて
        (夜から始まり、朝5時から夕方6時までの時計が描かれ、また夜になります)
        おかあさんウケもよさそう。

        でも、なんてったって、カールの描く動物のカラフルでユーモラスなことが一番です。

        人気に納得の1冊です。
        >> 続きを読む

        2015/11/08 by 月うさぎ

      • コメント 4件
    • 2人が本棚登録しています
      二重螺旋の悪魔

      梅原克文

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「二重螺旋の悪魔 (上)」DNAに潜むものを具現化してしまった人類。果たして人類の運命は…

        レビューの続きはこちらへ↓

        http://youyou-bookmovie.blog.so-net.ne.jp/2015-10-08
        >> 続きを読む

        2015/11/03 by youmisa

    • 1人が本棚登録しています
      二重螺旋の悪魔

      梅原克文

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「二重螺旋の悪魔〈下〉」人間のDNAから呼びだされた悪魔と人類の最終戦争の行方は… 

        詳しいレビューはこちらへ↓

        http://youyou-bookmovie.blog.so-net.ne.jp/2015-10-11
        >> 続きを読む

        2015/11/05 by youmisa

    • 1人が本棚登録しています
      夜想天使記 (角川ルビー文庫)

      斑鳩 サハラ

      4.0
      いいね!
      • 絵師さん目当てで買ったのに、挿絵がちょっとしかなくてがっかり。
        しかもシリーズのスタートということで、謎ばかりふくれあがったところで終わる。

        お仕置きシーンがやたらと濃厚だった。
        関西弁をしゃべる天使が出てくるのだが、その関西弁が地元の私にとって違和感がなかったので作者は関西人かなと思っていたら、あとがきに関西弁のことは何も知らなかったとあって驚いた。続きを買うかは不明。

        >> 続きを読む

        2017/08/28 by Kira

    • 1人が本棚登録しています
      恋愛中毒

      山本文緒

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      いいね! karamomo
      • この本の名言をご紹介します。

        ***
        過去に"もしも" を持ち込むな >> 続きを読む

        2014/05/02 by 本の名言

      • コメント 5件
    • 2人が本棚登録しています
      八ヶ岳高原殺人事件

      西村京太郎

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 最後までなかなか犯人がわからずミステリーとしてはよいと思う。この殺人犯はかなり卑劣である。ただ、ロマンスも発展しないし、最後のつかまり方もあっけない。 >> 続きを読む

        2011/04/21 by suzudon

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      モンテ・クリスト伯

      アレクサンドル・デュマ , 黒鉄ヒロシ , 村松友視

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 昔の作品なので、単純なストーリーかと思っていたので、そんなことはなく、とても楽しめました。
        復讐の方法が単に相手を殺す、ではないのがすごいですね。
        昼ドラになりそうな内容で、面白かったです。
        あとがきによると、原作は、これの8倍ほどの量があるとのことですが、この翻訳ぐらいの量で、ちょうどよかったです。
        大人の読者でも、おすすめです
        >> 続きを読む

        2015/05/31 by Kazutoshi

    • 1人が本棚登録しています
      鹹湖―彼女が殺された街

      鳴海 章

      4.0
      いいね!
      • 東京の春は寒い。
        大久保のホテル街、雑居ビルで女の死体が発見された。
        管理職を務める身でありながら、ホテトル嬢をしていたという。
        妻との関係や職場の問題など、中年の悲哀にみちた日々を過ごしていた新聞記者・上沢広之は、事件に興味をひかれてゆくが…。

        東電OL殺人事件をモチーフにした、社会派小説です。
        謳い文句は「社会派ミステリ」なので、期待したものと違うと感じた方の評価は低いようです。
        読んでみると、本作は「ミステリ」ではありません。
        東京という街で、エリートととして生き、そして娼婦として死んでいった女性の悲哀を、新聞記者・上沢の視点を借りつつ、著者なりに丁寧な筆致で描いた純然たる社会小説です。
        また、非常に良作です。

        著者の作品を過去に『鬼灯』のみ読んだことがありますが、作風や文章が僕の肌に馴染むようで、しばらくぶりにそういう作家さんに出会えたことで少し興奮気味です。嬉しくて。

        東電OLの代わりに都市銀行管理職OLが、アパートの一室の代わりにホテル街の空き事務所の一室で、扼殺され、一報を発信する記者会見の場面から物語は始まります。
        事件を通して、一貫して無味乾燥な都会の現実が淡々と綴られます。
        上沢は事件に強い興味を持ちますが、同時に同僚記者たちの事件をスキャンダラスに仕立てようという報道姿勢に反感を持ちます。
        被害者の過去を面白おかしく暴露するような記事を否定するあまり、社内で孤立し、担当を外されます。
        一方で上沢は家庭生活もうまくいっておらず、妻の不貞を知りつつ、仕事にかまけて帰宅もまちまち。
        仕事も家庭も、順調と言えない状況の中、上沢の中にはいつしか
        「ジブンノジンセイガマチガッテイタ」
        という自問とも、女性の心境ともわからない言葉が木霊のようにくりかえし聞こえるようになるのでした。
        そして上沢は、自分と同年代だった殺された女性に強烈に感情移入していきます。
        独自に事件を調べた、上沢は、最後に殺害現場に立ち、殺された女性の慟哭と、東京と自分の人生に抗い続けたその生き方に呆然と立ち尽くすのでした。

        なぜ上沢がこんなにも事件に没入してゆくのかを、上沢自身「被害者のOLが同年代だったから、同じように同じ時代を同じ街ですごしただろうから」という曖昧な理由で語ります。
        上沢自身もその理由がほんとうなのか自問自答を繰り返すのですが、被害者の夜の顔を調べるために、実際にホテトル譲を呼び、取材をする過程で逆に指摘されることになります。
        上沢(=著者)は赤裸々に本心をぶちまけます。

        「どうしてキミカさんにそんなに興味があるんですか」
        「一つには、殺された彼女とぼくと年齢が近かったてことかな。それに彼女もぼくも地方出身者でね、ほとんど同じ時期に東京に出てきて、たぶん同じように都会に打ちのめされたと思うんだ。その彼女がどうして…」
        上沢は眉間にしわを刻んだ。語尾が力なく消えていく。
        「売春に走ったか」アイカが引き取ってうなずく。
        「私みたいに学校もまともに出てない女なら、水商売で働いたり、躰を売ってても不思議はない。だけどキミカさんみたいにちゃんとした大学を出ている人がこんな商売をしているのは不思議。そういうことでしょ」
        「いや」
        否定しかけたが、結局、言葉に詰まってしまった。アイカの言うとおりだった。キミカとアイカの生い立ちを並べたとき、知らず知らずのうちに、どちらが上、どちらが下とみている。上沢の内側には、人の優劣を出身校や偏差値で決めつける価値観があった。
        職業に貴賤なし、法の下の平等、基本的人権の尊重といくらでも言葉は浮かぶが、言葉はしょせん言葉に過ぎず、実体をともなった、血肉となった感覚にはほど遠い。
        もし今回の事件で殺されたのが、中学しか出ておらず、故郷を飛び出して水商売、風俗産業と流れ流れたアイカだったら、上沢の関心を引くことはなかったかもしれない。

        また、上沢は取材中に殺された女性の写真を持っているという男にあたります。
        この男の登場は、現実社会の厭らしさや醜さを端的に表現しています。

        上沢と名刺交換をすませるなり、蒲生は上沢の社にいる新聞記者たちの名前を挙げはじめた。中にはすでに定年退職した者もいれば、取締役や経済部長、社会部長、デスクの名前も次々に出てきた。
        彼らと昵懇だといいたいらしい。

        こういう類の男が、まだ僕ら現役世代の上に君臨しているのを実感として感じています。
        唾棄すべきこの類の男たちの常套文句はいつも同じです。
        凄いことを成し遂げたあの人は俺の友人だから…
        だからなんだというのでしょう。
        糞みたいな世代の代名詞のような、この類の男たち。
        この世代のとりわけ男たちが日本をおかしくしたと思っています。

        日刊紙が書かずとも、テレビや週刊誌は、格好のネタとばかりに事件を書きたてます。
        ひとりの女性の光と影。
        凋落したエリートを社会は妬みと嫉みに塗れた喝采で囃し立てます。
        上沢はただどうしようもなくやるせなく、途方に暮れます。

        立ち止まった上沢は、武道館を取り囲む木々に目をやった。
        かすかな風にそよぐ葉は陽の光につらぬかれ、葉脈を透かしている。桜はいつの間にか咲いて、気づかないうちに散り、今年もまた花見にいく機会もないままに終わった。
        ビールだけでしたたか酔い、散る桜花のはかなさにふと涙ぐみそうになったのは、もう何年前のことか。酒宴にひとり、まるで別世界でただよっていたことを思いだす。
        それほどまでに思い入れしていた桜なのに、今年の春は、ついに一片の桜に気づくことすらなかった。
        ふだんならどうといって気にかけないくせに腹立たしかった。
        ひとりの女が死んだ。ただそれだけのことだ。それでも桜は咲いて、散っていく。

        あまりに騒がしすぎるのです。
        現実の壮年期の人生は。
        情緒を感じる感性を失うことを、強くなることと混同してしまうことに嫌気がさすことができるだけ、まだいいのかもしれません。
        僕などは混同したままで、それを受け入れることで現実に適応した気になっています。
        たとえば、ふとした涙を尊いものと、気恥ずかしくなく思える生き方を、選ぼうと思えば選べたはずでした。
        これから選びなおすには、それだけの勇気も体力も、実際には無いのです。

        上沢は物語の終盤にきてもなお、自分の中に、事件への執着の理由を探します。
        きっと本作を流れるテーマはそこにこそあるのだと思いました。

        「なぜ上沢は、ありきたりな、悲しい女性の死を思いつめるのだ」

        上沢は、ひとりの女性の死を通じ、現代社会が日々生産している歪みや矛盾に、とうとう我慢ならなくなったんだと思いました。
        センチメンタルな感傷を気取るのは、それが簡単だから。
        上沢という人間の底流に、確かに怒りがあることを感じます。

        「ひょっとしたら、お姉さんと自分の人生を重ねていたのかもしれません。高校を卒業して東京に出てきて、何かを求めていた。でも、気がついたら歳を取っていただけで、自分が求めていたものからは遠ざかる一方、自分の人生が間違っていたんじゃないか、と焦燥に駆られる始末です。だから、お姉さんが求めようとしていたものがわかれば、大げさにいうと、自分の人生を取り戻せるかも知れない、あるいはそこまでいかなくとも、自分の人生を考え直す手がかりが得られるかも知れないと思うようになったんです」

        確かにミステリ要素は無いに等しく、物語の展開も遅々として進まず、奇想天外や驚天動地は望むべくもありません。
        僕は本作を、その方向から評価してはいけないと思います。

        仕事と私生活、両方で抱えるだけ抱えて、背負って、日々の自分に疑問を抱きつつも、来し方を戻れない。
        著者は本作を通じて、どうにもならない人間の寂寥を捉え、見事に小説として昇華させています。
        自分の心中の葛藤と相まって心地よい余韻とはいきませんが、漠々たる胸騒ぎにも似たざらついた手応えを残します。

        非常に良い読書になりました。
        素晴らしい。
        >> 続きを読む

        2014/09/18 by 課長代理

      • コメント 6件
    • 1人が本棚登録しています

出版年月 - 1998年12月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本