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貫井徳郎
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貫井徳郎の第4回鮎川哲也賞最終候補作「慟哭」は、25歳の若さで世に問うた、完成された文体と重層的なストーリー展開でグイグイ読ませる、著者のデビュー作だ。スピード出世した佐伯捜査一課長は、都内で起きた幼女連続猟奇殺人の捜査の難航、警察組織の構造的な問題であるキャリアとノンキャリアの対立、名簿流出疑惑と内憂外患を抱え、マスコミの仮借ない報道で、妻や幼い娘と別居して愛人がいることまで知られてしまう。この物語は、この幼女連続誘拐事件を取り仕切る佐伯捜査一課長を中心に、三人称多視点で進行していく。このプロットと並行して、交互に語られる筋では、心に傷を負った敗残者の「彼」が、魂の空虚を埋めようと、新興宗教の「白光の宇宙教団」に救いを求めた果てに、教団のシステムにのめり込み、黒魔術にまで手を染めてしまう男の心理と行動が克明に綴られる。犯人の手掛かりも掴めないまま、事件は被害だけが進行し、混迷を深めていく。そして、黒魔術を繰り返す男は、生贄となる幼女を次々と探し求め、儀式を遂行していく。警察機構の暗部、家族崩壊、カルトを求める人間の弱さ、私情と法の対立など、重厚な社会派サスペンスになっていると思う。そして、抑制の効いた文章には、騙りのトリックがアナログディスクの針飛びのように隠されている。人物の素性や時間の流れに対する、読む者の予断を一気に引っくり返す荒業が、実に凄いと思う。 >> 続きを読む
2018/11/18 by dreamer
東野圭吾
短篇の中で『つぐない』が最もよかったです。笑い云々とは関係なしに、仕事人間の栗林がピアノを必死に練習する姿と、その動機に感動しました。 >> 続きを読む
2019/11/15 by hide
北田卓史 , 大石真
子どものころこの本を知り、読んでみたいと気になっていたのに手にするチャンスがありませんでした。図書館で見つけて手に取りました。昔の児童文学の特徴のような、「どうするつもりだい?」「ごめんよ。」「いやだ、ごめんだね」等のような口語使いがたまらなく懐かしさを感じました。町一番の評判の洋菓子屋さんに濡れ衣を着せられた小学生が、仕返しにショーウインドウの店の看板であるチョコレートの城を盗む、というストーリー。この中に、こどもたちを信じる先生、世の中には悪い人が沢山いる、と人をあまり信じない店の社長、そして濡れ衣を着せられた子どもを応援する子ども達。果たしてこの戦争は、どちらが勝利を収めるのか?最後の終わり方がとてもよく、清々しく、これぞロングセラーの児童文学だと思いました。 >> 続きを読む
2019/04/11 by taiaka45
佐藤賢一
【君の瞳は10.000ボルト】 フランス100年戦争後期、イングランド軍と戦い、オルレアンを解放し、シャルル7世の戴冠に功績を残したジャンヌ・ダルクが登場する歴史小説です。 タイトルにもなっているピエールは、大貴族、ドゥ・ラ・フルトの私生児と呼ばれる傭兵隊長です。 当時のフランスは戦乱の世の中で、戦火に焼け出された人びとは生きていくために傭兵隊に加わり、戦争のある時にはこれに従軍して給金をもらい、戦争が停止中は略奪をしながら生き長らえていました。 それぞれの傭兵隊には、「シェフ」と呼ばれる隊長がおり、シェフがその才覚により自分の傭兵隊を統率していたのですね。 ピエールもそんなシェフの一人でした。 そして、ピエールがシェフとなったのは、前任の冷徹なシェフを殺害して成り代わったためであり、ですから、ピエールは「シェフ殺し」との異名も持っていました。 そんなピエール率いる傭兵隊が、とある略奪の際に偶然通りかかったジャンヌ・ダルクと出くわすのですね。 行きがけの駄賃とばかり、ジャンヌとその従者を身ぐるみはいでしまうのですが、この時初めてジャンヌが女性だと気づきます。 こんな世の中ですから、女性はすぐに陵辱されてしまいます。ピエールも当然のようにそうしようとしたのですが、ジャンヌは、「自分にはフランスを救うという神による使命がある。その使命を果たすまでは処女でなければならない。使命を果たしたら私の処女を捧げるのでそれまで待って欲しい。」と懇願します。 通常ならそんな頼みなど聞く耳持たない傭兵ですが、何故かこの時ばかりはその頼みを入れてしまうピエールなのでした。 その後、ピエール達の傭兵隊は王軍が傭兵を求めているオルレアンに赴き、傭兵の常として王軍に加わるのですが、そこで妙な噂を耳にします。 救世主が現れたと言うのです。その救世主は「ラ・ピュセル」と呼ばれていたのですが、何と、それがジャンヌ・ダルクだったのです。 ジャンヌは、王軍の兵士達を前にして演説をしますが、それは圧倒的なカリスマ性を備えたものであり、荒くれ兵士達も救世主の存在を信じ、心を熱くするのでした。 こうして再会を果たしたピエールとジャンヌが、オルレアンの解放戦に臨んでいくというのが上巻の主な粗筋になります。 しっかし、ジャンヌというのは潔癖性なのですねぇ。この時代の傭兵達の常として、売春宿で遊んだり、略奪の末、女達を陵辱するのは当たり前だったわけですが、ジャンヌは神経質とも言える位にこれらの行動を唾棄します。決して認めようとはしません。 それでいて、何か神に守られているかのような圧倒的なカリスマがあると描かれています(但し、ある時を境に、その神の加護を失ったと自覚するのですけれど)。 やや精神症的なところがありはしないか?(その様な説もあるそうですね)とすら思えてしまう面もありますが、そんなジャンヌは本作の主役では決してありません。主役はあくまでもピエールです。 史実に基づいている小説ですが、佐藤賢一さんの語りは大変面白く、また、当時の傭兵達の生活や戦時の文化・風習も描き込まれており、ぐいぐいと読ませます。 シェフにもそれぞれ異なる性格があるのですが、ピエールは人望も厚く、部下思いの良い隊長なのですね。ですから、ピエール率いる「アンジューの一角獣」と呼ばれる傭兵部隊はいつも明るく、笑いが絶えず、シェフであるピエールを父の様に慕っているわけです。 傭兵隊に所属する主な傭兵達の性格も描き込まれており、キャラが立っています。 ピエールのそんな部隊思いの性格が原因で、ジャンヌと別れて行動しなければならなくなる場面もあるのですけれど。 おそらく、この後は史実に基づきそのように展開していくのだろうとは思いますが、それが分かっていても下巻が楽しみな小説であります。 下巻を読了したらまたレビューしますね。 >> 続きを読む
2019/12/28 by ef177
【大団円】 史実通り展開するのかと思っていたら、いやぁ、捻ってくれますね。 ご存知の通り、ジャンヌ・ダルクはシャルル7世戴冠後、ブルゴーニュ公国の捕虜になり、イングランドに身柄を引き渡されて異端審問にかけられ、火あぶりにされて亡くなったのですし、その後、ジャンヌと共に戦ったジル・ド・レエ(作中では、ジル・ド・レ)侯爵は、怪しげな技にふけり、近隣から子供をさらってきてはいたぶった挙げ句に虐殺するようになったわけですが(いわゆる「青ひげ」です)、一応、そのモチーフは活かしながら、でも改変して語ってくれます。 まぁ、そもそも、ピエールという傭兵隊長自体が架空の存在なわけですが、史実を下敷きにしつつ、フィクションも交えて大変面白い読み物にしてくれたわけです。 ところどころ、少々都合が良すぎるかなぁと思うところもありますが、まぁ、そんな細かいところは良いことにしましょう。 物語は面白いのですし、やはり、ピエール隊長の人となりが大変魅力的なのですから。 少年のようなところがある人ですね。 明るくて、素直で、人間くさくて。 決して美男子ではないけれど、女性受けは滅法良いと描かれていますが、そうなんだろうなぁ。 そんなところは、隊員達から「シェフは女に弱いからなぁ」とからかわれもしますし、副隊長からは、「この世の中で俺の顔をひっぱたくことができる女は5人位のものだろうが、シェフの顔をはり倒せる女は……無数にいるな」と言われる由縁です。 そんな登場人物達がめでたく大団円を迎えるラストになっています。 途中で、傭兵隊の中での裏切りもあるのですが、それすらちゃんと落ち着くところに落ち着かせてくれていますので、嫌な味がまったく残らないラストに仕上げています。 さて、「王妃の離婚」に続き、佐藤賢一さんの作品は2作を読み終えましたが、まだまだ仕入れてありますので、この後も色々と読ませて頂いてレビューさせて頂きたいと思います。 未読の方は、面白いので読んでみてはいかがでしょうか? >> 続きを読む
2019/12/29 by ef177
McCammonRobert R , 二宮磬
スティーヴン・キングと並んでホラー小説の書き手として有名なロバート・R・マキャモンの少年の日を描いた自伝的長篇小説「少年時代」(上・下巻)を読了しました。著者が前書きで自分自身であると述べている主人公の少年コーリーと、彼を取り巻く両親、友だち、自然、そしてゼファーという架空の町を郷愁を込めて少年時代を書き上げていると思う。この作品世界を貫いているのは、少年の信じるリリカルな魔法の数々だ。この作品は、少年の間だけで信じられる魔法が織り成す少年時代の奇跡を描いているんですね。ある日の早朝、コーリー少年とその父親トムは、湖に車が飛び込むのを目撃する。助けに湖に飛び込んだ父親が見たものは、沈んでいく車の中の、手錠でハンドルに縛られ首を絞められて殺された男の姿だった。死体の悪夢に苦しむ父親が、次第に憔悴して弱っていくのを心配しながらもコーリーは、友人たちとのキャンプ、初恋、親友の死、洪水での出来事、そして、ザ・レディとの出会いを経験する。その後、静かだったゼファーの町にもスーパーマーケットが建ち、その影響でトムは牛乳店をクビになる。こうして、コーリーの家の生活は苦しくなっていったが、コーリーは父親のトムをいまだに苦しめている死体の手掛かりになる、緑色の羽を湖岸で見つけたのだった。犯人を捜す決意をしていたコーリーは、その羽と同じ色をしたオウムを見つけたのだが-------。少年時代を通過して、まさに大人になろうとする少年の一年を描いたこの作品は、全篇に少年の夢、言い替えれば、著者ロバート・R・マキャモンの少年自体の夢が一杯に詰まっていて、スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」とは全く違う魅力を持っていると思うんですね。この物語に重要な意味を持つ、湖に沈んだ死体の犯人捜しの部分は、どこかぎこちなく、そのエピソードだけが全体に溶け込んでいない印象を与える結果になっているが、それも大きな欠点とはなり得ず、「少年時代」の出来を損なってはいないと思う。読み終えて感じるのは、色彩豊かなアメリカの四季を描いた、見事な傑作だということですね。 >> 続きを読む
2018/09/01 by dreamer
我孫子武丸
時代は2024年。惨殺死体が発見されたが、それはドクと呼ばれた連続殺人犯の手口と同じ。だがドクは溝口が逮捕し、3か月前に死刑になったはず。男娼やヘテロという言葉が当たり前のように出てくるが、そこまでどぎつい描写はない。その中でシンバと呼ばれる少年との出会いがあり、溝口はドクの事件の真相を暴いていく。当時は珍しかった三次元やヴァーチャルの世界が重要な要素となっており、その過程で溝口と犯人はある種の関係に。続編があるので、この決着はそちらにまわされるのだろうか。 >> 続きを読む
2019/11/01 by オーウェン
マーガレット・バーク=ホワイト
モノクロだからこその部分があるかもしれない。時代が違うという部分を除いても、どこか異空間のように感じてしまうところがある。表紙のような”構造物”と人との組み合わせがそう思わせるのかもしれない。それでも、やはり人のフォーカスした写真のほうが個人的には好きだ。その人の背負ってきたもの、これから背負うものが凝縮して現れているように思えるからだ。いつも思う。プロの写真家の凄さはどこからくるのだろうか?と。観察眼、その背景にある指向・思考もあるんだろう。 >> 続きを読む
2015/01/11 by けんとまん
石 弘光
タイトル通り環境税について細かく書かれていました。10年ほど前の本であるので情報が古く現在の動きを追いたいなら内容的にも新しいものを読んだ方がいいように感じました。買った後に気づいたのですが、一橋大学の学長を務められていた先生であったらしくビックリしました。 >> 続きを読む
2017/12/03 by Mishiro
降矢奈々 , 内田麟太郎
保育園で借りてきた本です。---誕生日を1日早く間違えているオオカミくん。お友達のキツネさんを待ちますが、来ない・・・悲しくて悲しくて涙が溢れ、心を捨ててしまいます。次の日、キツネくんが来てくれますが悲しいことがなくなったかわりに嬉しいこともなくなったことに気づきます。ふたりで泣いて、心が戻ってきました。---個人的には普通だし、お話を持っていきたい方向に強引に持って行っている感を感じてあんまり好きではないのですが、娘はとても気に入っている様子。「歌うところがおもしろいし、キツネさんがケーキ持ってくるところもおもしろいし、フクロウさんがクスっと笑うところもとーってもおもしろいもん」だそうです。どれも物語の中心ではないのですが笑、そういうちょっとしたところが子供には印象的だったりするのですね^^あと、絵本についてこんなに具体的に会話できるようになったことも成長を感じます。とはいえ、絵本自体の評価は厳しめの☆3です! >> 続きを読む
2019/06/17 by chao-mum
不二竜彦
占いを信じる方ではないのですが、夢は深層心理の表れだという話は何となく頷けます。夢占いの本は、(簡単なものでしたが)フロイトやユングなど学術的なものも含め幾つか読みましたが、この本が一番バランスが取れているように感じました。難しい話は置いておいて、夢に出て来たキーワードから占う形式なので誰にでも楽しめますし、私の友人の間では「とにかく当たる」と評判です。朝起きて夢を覚えていたら嬉しくなる。そんな1冊です。 >> 続きを読む
2012/09/19 by emi
犯人を推理しながら読んでなかったので犯人がわからないまま読み終わってしまったあ〜あ当時のブログより >> 続きを読む
2016/06/20 by ゆ♪うこ
栗本 薫
【図書館】遠征先で読破。ある日 突然にして輝かしい生活に変わったのはまるでシンデレラだと思う。 >> 続きを読む
2015/02/12 by おれんじ
青木雄二
失業の結果、金融業界を志す若者の金融屋として第一歩。金融屋マンガの元祖として絶大な存在価値を感じた。普段の生活では体験できない世界を垣間見られるのが面白く、新宿歌舞伎町のドキュメント本や映画ミナミの帝王などを観る機会が多い。本作では主人公の灰原が金融屋としての第一歩を踏み出すところが収められている。決して尖がったキャラクタでは無い灰原の目線があることによって、ヤクザな世界をマイルドに表現し一般受けするように配慮しているのが見事で有る。ナニワ金融道は、テレビドラマで認知していた上、著者に、金融屋マンガの元祖としての自負が強く、ミナミの帝王に対しても似たストーリーで有るとして訴訟を起こしたという逸話でも知っていた。基本設定が同じ以上、止むを得ない部分は有るが、確かに似た箇所が多く感じた。読者というスタンスでは、作品が面白ければどこが元祖だろうと構わないのだが、金融屋マンガというジャンルを確立したという点で、ナニワ金融道の果たした役割は大きい。映像の影響は大きく、頭の中でウルフルズの借金大王がずっと鳴り響いていた。 >> 続きを読む
2011/06/11 by yutaka
連帯保証人になったことで人生を狂わす人々。人が良いのは美徳だが、守るべき人を持つ身には罪悪だと再認識。以前お付き合いの有った企業の要職者から、合法的に税金を安くしたり、様々な公的援助を受ける方法を、お金持ち程勉強しているという話を聞いた。同時に、知ろうとしない者は、罪で有るという価値基準をお持ちだった。確かに世間一般では成功者と言われる程度にはお金持ちで有り、非常に清廉潔白な方だが、人を陥れたり競合したりせずに蓄財をすることに関しては、極めて貪欲で有り、厳しい視点をお持ちだったことが強く印象に残っている。本作では、知らないことによる悲劇がテーマになっており、知らなかったでは済まされない無知という罪が糾弾されている。ホイホイと連帯保証人になる登場人物がいるが、こういう人物はマンガの世界だけでなく、現実世界にも多く存在する。これまで様々な本を読んできた結果、現在のお金の貸借に対する考え方は以下で有る。保証人になるくらいなら、有限責任となるように金を貸せ。返って来るのを心配しながら金を貸すくらいなら、返されなくても困らない程度の金をやれ。金が返って来ずに友情を無くすくらいなら、一銭も貸さない勇気を持て。ゼニカネが全てでは無いはず。そんなものに人生を縛られる愚は冒したくない。 >> 続きを読む
2011/06/27 by yutaka
高村薫
カバーのあらすじに「惚れたって言えよ」云々と書いてあったのでBLっぽいかもと不純な動機で読み始めた。ハッキリしない主人公に暴力団やらシンジケートが絡む中、李歐という美青年(爽やか)に出会い友人となるも遠く別れ、それぞれ家庭を持ち月日が経つも魂は寄り添っていたので最終的にやっぱりBLだったというお話。BLって年齢でもないけどホモというよりはBLだった。最終的に大団円で明るくはあるものの、私が主人公の妻であったら呪い殺してるとは思う。呪い殺してるとは思う本当に。とはいえ犠牲の上にやっと繋がれた(性的な意味ではない)二人に幸あれ。そんな感じに面白く読めたけれど、BL狂いなのでどうしても人間関係や微妙な空気の描写ばかりに眼がいってしまっていた。そうでない人が読んだらまた違う印象なんだろうか。私は先が気になるのでグングン読んだけど、その原動力が漂うBL臭に絡みまくっていたのは間違いない。ごちそうさまでした。でも一番切ないのはやっぱり主人公の奥さんです。登場人物の名前が馴染みにくい響きで、とことん覚えられなかったので横にメモして読むくらい楽しめたので、この作家さんの他の本も読んでみよう。 >> 続きを読む
2015/07/18 by きなこ
西村 京太郎
西村京太郎の「消えたタンカー」は、巨大タンカー沈没事件の謎に十津川警部補が挑む、海洋ミステリーの傑作だ。北インド洋で原油を満載した世界最大の巨大タンカー「第一日本丸」が、炎上して沈没したのを、付近を航行中の遠洋トロール漁船「第五白川丸」の乗組員が発見し、海上保安庁へ連絡すると同時に、宮本船長以下6人を救助した。しかし、残りの26人の生死は不明で、爆発炎上の原因もつかめないまま捜査は打ち切られた。それから2週間後、帰国した宮本船長が渋谷のオリンピックプールの近くで、転落死しているのが発見された。そして、その翌日、「第一日本丸の生存者6人を皆殺しにしてやる」という予告状が警視庁に届いた。ここで、我らが十津川警部補が捜査に乗り出し、残りの生存者の身柄を確保しようとするが、犯人は先手を打って、予告通りに次々と殺戮を重ねていくのだった-------。今でこそ、十津川というと、列車絡みの事件専門の探偵役というイメージが定着しているが、初期には海を舞台にした事件を担当することが多かったんですね。その時期のシリーズ最高傑作と言えそうなのが、この「消えたタンカー」だと思います。物語の前半は、十津川ら捜査陣と犯人との攻防戦で占められているが、後手に廻りっぱなしの警察に苛立ちを覚えてしまう。しかし、事件の表向きの決着に納得がいかない十津川の粘り強い調査と推理によって、事件全体の構図が鮮やかに反転する後半は、謎解きのカタルシスを堪能させてくれる。意外な首謀者の正体と動機もさることながら、普通ならば単なる情報として、読む者に提供されそうな点まで、理詰めの推論によって炙り出してみせるあたりからは、謎と論理の面白さで、とことん読む者を饗応しようとする、著者・西村京太郎のただならぬサービス精神を感じさせるんですね。 >> 続きを読む
2018/12/22 by dreamer
柘植久慶
実在した英独それぞれの将軍が同一人物だった可能性を追求。親近感に欠けるためインパクトにも欠ける印象を持った。解説でも触れられているが、日本で言えば源義経がモンゴルに渡りジンギスカンになったというような英雄不死伝説に近い内容である。源義経→ジンギスカン説では、成吉思汗(ジンギスカン)の秘密 /高木彬光 にて、相当数の説を裏付ける状況証拠や物的証拠が上げられている。ロマンに欠けるが、実際には説が真実で有った可能性は低い上、経過年月も比較にならないほど古いにも関わらず、これだけ都合の良い証拠を集めることが出来たわけである。このことから考えても本書で取り上げる二人の将軍が同一人物で有ったとする根拠や史料は、よほど決定的なもので無い限り信頼に足るものでは無いと考える。これらの理由から、同一人物か否かの信憑性は問題とせず純粋なエンタテイメントとして、いかに入り込める内容かを期待して本書を手に取った。イギリス人でさえも名前を知らないという程の知名度の人物で有る上、軍人としての人物像は見えても、一個人としての人物像が書き込まれていないため親近感を持つのは、なかなか難しかったのは否めない。著者が強い思い入れを持った作品ということだが、他の柘植氏作品に比べると落ちる。 >> 続きを読む
2011/01/30 by ice
岸本裕紀子
キャラの立った著名人男性との対談。サラサラと読み進め、サラサラと記憶から落ちていくライトな内容。芸能界、政界、スポーツ界などなど、バラエティに富んだ人選の対談集。一貫しているのは、キャラが立っているという点で、俗に言う大物や人気者ばかりで有る。対談の内容は、女性関係、恋愛関係が中心。タイトルの通り、良い意味でアブナイ男性達の主張や意見は確かに面白く、考えさせられてしまう点が有る。全体を通じて感じるのは、どの業界であれ、名が知られ、名を残すような人物は、アクティブ、アグレッシブで有り、ポジティブシンキングだということ。デキル人間は、どこに行ってもデキルと言うが、まさにそれを痛感した。鳩山由紀夫氏、北沢豪氏が印象に残った。 >> 続きを読む
2011/11/09 by ice
辻仁成
耳の三部作の第一作目。 「音」をテーマに書かれた作品。 相性の違いはピッチ感の違い。 聞こえない音を聞こうとする男。 都会の鐘の音を聞き分けようとするように、フミの心の音を聞き分けてやれ。 聞こえたところでどうしようもなかっただろうけど、盗聴はよろしくない。 >> 続きを読む
2011/08/25 by Iris
出版年月 - 1999年2月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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