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J・K・ローリング , 松岡佑子
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久しぶりのハリー・ポッター!大人になって読み返すと、また違う視点で見られるから面白い。子供の頃はダーズリー家の人間に対し単に「嫌なやつ」としか思っておらず物語の中でいらない存在なのではとでさえ思ったが、意外とハリーという子にとってはなくてはならないことをあらためて知った。ハリーは有名だ、有名過ぎる。そして優秀で勇敢だ。そんな子が正しく自分を見つめ、人格が壊れないようストッパーをかけるのがまさにダーズリー家の人間なのだ。魔法が無ければ環境一つ変えられない。魔法が無かったら、魔法の世界が無かったら仲間も出来なかった。この全てがありがたく愛情に溢れていることを、ハリーは対照的な環境によって感じ、またこれによって謙虚で思い上がらない優しい少年になれたのではないか。と、20年後に読み返した時に思ってみた。 >> 続きを読む
2020/09/04 by Moffy
金谷治
2000年の超ロングセラー。これだけ長い間残っているものなら、きっと刺さることが書いてあるに違いない。学生の頃、音読したことはあるのですが、あまり覚えていなかったので読んでみました。まさか『論語』がこんなに長いものだとは思っておらず、十巻まであって読み終えるのにかなり時間がかかりました。ちらほら良い事言っている箇所もありつつ、少し説教臭いものもあり、孔子の人柄や出来事が書かれていたりしました。それと、当時の文化や歴史がさっぱりわかっていなかったので、読んでいてあまり理解が出来なかったところもありました。紀元前の人達も、考えていたことは今の人とそう変わらないですね。 >> 続きを読む
2019/06/13 by May
逢坂剛
凄く面白かった!でもなぜか元警官の大杉がペーパードライバー?死んだ倉木がタバコを吸わない?ドラマではヘビースモーカーなはず。美希は犯される覚悟であそこにカッターの刃を隠す?いろいろツッコミ所はありますがこれはこれでいいのかな~。 >> 続きを読む
2016/04/01 by rock-man
鳴海 章
10年間勤めた会社をあっさり辞めた高城は、慧敏という風俗店の女性に恋をします。彼女が持っている汝官窯の皿を巡り、東京-台湾を舞台に物語が展開していきます。序盤は時系列や人物の入れ替わりがわかりにくかったのですが、それぞれの物語が一つに結びついた辺りから、急におもしろくなってきました。慧敏と出会ったことにより、日常生活からかけ離れた世界に足を踏み入れた高城ですが、彼自身は至って平凡です。ふと「会社を辞めてみよう」と決めて、退職願を書くまでにくよくよと悩み続ける普通のサラリーマンです。鳴海さんはこれでもかというほど、高城の内面を描いていました。例えばポップコーンに蜂が入っていたエピソード。これは彼自身の話ではないのですが、痛いこと、辛いこと、苦しいことを恐れ逃げ出すような人生であったと吐露します。想像しているうちに自らの身の内に作り上げたイメージに萎縮してしまう、と。彼の気持ちがよくわかると、同じくそこら辺にいるような人である私は思うのです。勤めていた会社の社長の言葉が心に響きます。「鰯だよ。生まれた時から餌になることを運命づけられている。その他大勢にすぎない。鰯だ」「その他大勢にすぎない鰯」である彼が女に惚れ、彼女を追うことに意味は見いだせないかもしれないけど、自分のアイデンティティを求めながら行動していく。そんなカッコ悪い彼を、「頑張れ・・・!」と応援したくなりました。一見手に取りにくいタイトルも、納得の本作です。(スミマセン。。)また、台湾・故宮博物館の国宝の話は丁寧に書かれており、興味をそそられながら読みました。いつか行ってみたいなぁ。この本オススメしてくださった課長代理さん、どうもありがとうございました! >> 続きを読む
2015/12/21 by あすか
酒井駒子
ある晩、真っ黒いくまの子が訪ねてきて、おかあさんをさがしているの、といいます。男の子は、夜の中を、よるくまとさがしにいきます。夜が、とても綺麗に描かれています。夜の中の光とか、光の中の影とか。男の子が、よるくまを抱いて、「だいてみたら、あたたかかった」というところ、本当にあったかそうだった。何だか吸い込まれていきそうな、静かだけれど楽しい絵本です。 >> 続きを読む
2014/02/07 by ヒカル
星野之宣
宇宙ステーションと隕石群との衝突事故が発生。これが全ての始まりだった。地上に落下した宇宙ステーションには未知の病原体が潜んだ隕石が付着していた。しかも病原体は、人間にとっても、動物にとっても、致死性の上、感染力が非常に高かった。あっという間に病原体は地球全域に蔓延し、地上の生物は、ほぼ全滅してしまう。わずかに残った地上の人類は、意図的にオゾン層を破壊、紫外線で自らと共に未知のウィルスを焼き払う「人類自決作戦」を決行。ウィルスは死滅したものの、地球に残ったのは海の生き物と海底実験都市ブルーシティーに住む2万人だけ、となってしまう。人類再建を目指すブルーシティーに次々と危機が迫る・・・。本作、実は未完。一応、話はまとまって終わるが、「本当の戦いは、これからだ」と、どこかのマンガ雑誌で、人気のないマンガにありがちなラストと同じような終わり方を迎えてしまう。ちなみに本作は1975年に初出。それを考えると、作者はおそらく続編を書く気はないのだろう。前半は息もつかせぬハードな展開の連続、(しかも大仕掛けで)手に汗握る。残念だったのは、後半から。実は「黒幕」がいた、という展開になるのだが、前半の大仕掛けがすべて「黒幕」個人の仕業(きっかけを与えただけだが)だった、というのが、急にスケールが小さくなってしまったようで、拍子抜けしてしまった。また、「黒幕」自身も、「ありきたりな悪役」で魅力に欠ける。ハードSFだと思って読んでいたら、B級SFだった、という感じだった。最初から、B級SFだと思って読んでいれば、感想は違ったかもしれない。「続編」に期待すべきだろうか?そもそも描かれないかもしれないが・・・。 >> 続きを読む
2013/12/28 by Tucker
篠田 節子
高度管理社会となった日本の近未来。 裁判のコンピュータ化により職を失った最高裁の裁判官・斎藤総一郎は、地上げ屋の嫌がらせに抵抗しているうちに、成り行き上話が大きくなっていき、ついには国家に対して独立宣言をすることに……。 1997年に書き下ろしされた長編小説ですが、2016年現在の日本にも通じるキーワードをそこかしこに見つけることができます。 豊洲市場移転問題、沖縄高江問題、国民総背番号制、原発問題、核による軍拡競争、優生学、その他ジカ熱やはしか問題など……。 その他何が読み取れるのか、挑戦してみるといいでしょう。 例えばこの小説では、有毒ガスで汚染された成田の飛行場跡や放射能で汚染された原発跡地に盛り土をして、国家にとって不要となった国民を実験動物として住まわせるのです。 豊洲市場移転問題や原発事故地域への強制帰還を思わせます。 大友克洋『AKIRA』が東京オリンピックを予言していた、と話題になりましたが、本作品も、未来を予見していると思います。 2011年の大地震の記述もありますから。 『AKIRA』の予言は「2020年東京オリンピック」だけではなかった! http://tocana.jp/2014/02/post_3594.html 本作品はあらすじだけを読むと、コメディタッチで楽しめる物語かと思ってしまうのですが、なかなか重苦しい物語で、気分爽快とはいきません。 そもそも高度に進んだ管理社会で国家に抵抗するのは、大変なことです。 公民館に集まった近所の仲間も烏合の衆です。 一致団結して大いに戦おう!なんてハリウッド映画のような展開にはなりません。 私のイメージとしては、『1984』や太平洋戦争の日本軍の戦記などと同じ、重苦しい読書でした。 そもそも先頭に立って戦う指揮官・斎藤総一郎に共感できません。 私が総一郎の妻・美和子さんなら、早急に見限って実家に帰るか、有賀さんに頼み込んで連れて行ってもらうと思います。 本作品には単行本版、朝日文庫版、新潮文庫版があります。 朝日文庫版の解説は斎藤美奈子さんです。 なお、ネタバレブログでは、本作品に描かれた男系・女系問題について論じています。 そういえば本作品では天皇制についての記述はありません。(皇居も皇族も存在し、元号が使われているのだから天皇制が存続していることは確実です) なお、物語は2075年(成慶58年)の出来事となっています。 計算すると、成慶元年は、2017年ということになります。ムムム……。 OLDIES 三丁目のブログ ■[日々の冒険]斎藤家の核弾頭 篠田節子 http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20160928/p1 少年少女・ネタバレ談話室(ネタばらし注意!) 斎藤家の核弾頭 篠田節子 ネタバレ感想会 http://sfclub.sblo.jp/article/177059584.html >> 続きを読む
2016/09/29 by 荒馬紹介
ターシャ テューダー
美しくすばらしい言葉がターシャの絵とうまく調和されていて。すごい!
2017/03/17 by ふみえ
富野由悠季 , 矢立肇 , 林譲治
1年戦争の裏側。というか表舞台ではないのがこの本の見どころ。舞台は1年戦争後期の地上です。みんなが宇宙でわーわーやってるときですね。ガンダムとか赤いのとか最新鋭とは程遠い量産vs量産ヒーローがいるから戦争に勝てるのではない語られる事のない一般兵のお話名もでてこないような下っ端ががんばるから成り立ち、勝つことができる。私たちも頑張りましょう(笑)GMやザクだってがんばってるんです。 >> 続きを読む
2013/06/03 by ちあき
円谷プロダクション , 宮西達也
息子のために購入した絵本ですが、自分のために読んでいることもしばしば。よしっ、がんばるぞと思える本です。 >> 続きを読む
2014/09/23 by che_k
幸田真音
読了日はダミー。外資系投資銀行の決済業務についている主人公の女性が別の外資銀行のディーラーである人物にコンピュータをハッキングしディーリングを行うという計画に巻き込まれる話。決して悪意ある話ではなく、純粋にディーラーの腕試しって話です。主人公とディーラーそれにコンピュータのハッカーが加わり、3人でNYの債券市場に挑む。オプション取引についての説明等あり、債券の市場の臨場感が伝わってくる描写は素晴らしいです。が、反面、コンピュータについて詳しい人から見れば、ハッキング行為(この言い方もどうかって感じ)はちゃっちく見えるかもしれません。ま、ハッカーとか言ってちゃイケナイよね。あと最後のオチも不合理があるようでこの評価。ただ、なかなか債権市場をベースにした小説は少ないのでその点では非常に評価しています。 >> 続きを読む
2013/03/11 by loki
真島ヒロ
私の小学生時代、ずっとハマり続けたマンガです。王道?なバトル系ですが、熱くなれるところ、笑えるところ、泣けるところなど非常にバランス良く作られている気がします。特に有名なのは31巻かな?本当に泣きました。カッコよすぎです。現在は、同作者さんの描くFAIRYTAILが有名だと思いますが、FAIRYTAILが好きな人はもちろん、興味があればぜひ読んで頂きたいです! >> 続きを読む
2015/05/14 by frontier
戸井 十月
行動する作家・戸井十月の「世界で一番贅沢な旅」を読了。この作品は、十万キロに及ぶ旅の記録だ。著者の戸井十月は、七年かけてオートバイによる五大陸走破を敢行するんですね。彼の旅行記が面白いのは、ただの冒険野郎とは違う、研ぎ澄まされた作家の目と耳で観察しているからだと思う。地べたを十万キロもオートバイで移動していく者にしかわからない空気の振動、におい、湿度や乾き、また激しい風雨、うんざりするほどの自然の気まぐれ、あるいは、目の前に待ち受けている悪路など、たとえ信じられないようなことが起こっても、何があっても、絶対、書いてやるぞという気迫がこもっているんですね。五十男の年期と熟練に、どこか、やぶれかぶれの気分さえ滲ませて、オートバイは、ただひたすら走り続ける。ツンドラから茫漠たる平原、砂漠、町を越え、寒村を走り抜け、地球の果てまで旅は続く。当然のことながら、さまざまな人々との出会いがある。マニラのポン引き、モンゴルの売春婦、クマのような大男の釣り人、南アフリカの黒人警官、アボリジニの吝嗇なおばさん等々。そして、驚くべきこととして、あらゆる土地に日本人が住んでいるんですね。著者がとりわけ感心を寄せるのは、"単なる経済的な成功を超えた充実の人生"を探して日本を脱出した「新越境者」なんですね。ブラジル、ボリビア、パラグアイの国境に広がる世界最大の湿地に挑む、若い日本人のカメラマンや、「どこにいったって死ぬ時は死ぬ時ですよ」とペルーのゲリラ組織のテロに怯える町で、実験農場を営む男。アジェンデ、ピノチュトと政権が激しく変わったチリで、波瀾万丈の日々を送り、深田祐介の小説「革命商人」のモデルになった男。読んでいると、知らぬうちに気分が大きくなっていくのを感じてしまうんですね。著者の五大陸走破の旅は、まだ続いていく。なぜ、そんなに旅に出るのか? と聞いても、せんなきことだ。著者はこう書いている。「悪路を行き、安宿を探す毎日。それ以前に旅の資金集めから悪戦苦闘する。しかし、これもまた私自身が選んだ"贅沢"である」と。 >> 続きを読む
2018/08/04 by dreamer
沖幸子
女性ベンチャー企業の社長が語る起業。基本事項ばかりだが、ノウハウが散りばめられた良書と言える。大手企業を飛び出して海外留学。帰国後、海外でのヒントを元に起業。女性ながら、そして女性ならではの目線を生かすことで、ベンチャー企業立ち上げを成功させた著者が繰り出す言葉には説得力が有る。自身の経営という立場をこなしつつ、現場に出るのも厭わず、そこからサービス改善の糸口を探すという姿勢は素晴らしいと思う。自分の城を持つというダイナミズムには非常に魅力を感じていながら、独立/起業に対してリスクを理由に踏み出さない人は多いが、結局のところ仮に軌道に乗っても社長業で忙殺されることを厭う人が多いのが今のご時勢なのではなかろうか。文体は決して堅く無いのだが、何故か「上から目線」を感じた。 >> 続きを読む
2012/09/22 by ice
池波正太郎
図書館本。赤穂浪士の一人、堀部(中山)安兵衛の生涯を描いた物語の上巻。この巻では、濡れ衣を着せられて切腹した父の死に様を見た少年時代、菅野六郎左衛門の義理の甥となるいきさつ、女剣士伊佐子との出会いなどが語られる。父の死によって中山家は断絶し、孤児となった安兵衛が優れた剣客となって名をはせるまでには、多くの恩人がかかわってくる。特に菅野六郎左衛門のおかげで、けがを負った安兵衛は保護され、剣で身を立てていけるようになる。そうして物語は、「高田の馬場の決闘」へとつながっていく。 >> 続きを読む
2021/01/28 by Kira
図書館本。下巻。この巻では、「高田の馬場の決闘」と赤穂浪士討入りの経緯が語られる。義理の叔父となった菅野六郎左衛門が受けた決闘の助太刀をして、中山安兵衛は剣名を高める。多くの大名たちから召し抱えたいという申し出が殺到するが、安兵衛はすべて断る。浪人のままだった安兵衛が浅野家の家来となったのは、浅野家の江戸留守居役堀部弥兵衛から婿養子にと望まれたからである。断絶した中山家を再興しなくてはならないと、安兵衛が何度断っても弥兵衛はあきらめない。安兵衛もついには折れて弥兵衛の娘幸を妻とし、堀部父子は幸福な七年間を過ごす。あの刃傷沙汰が起こるまでは。吉良邸に討入り、吉良上野介の首をとった後、浪士たちは処分が決まるまで四人の大名たちの預かりとなる。安兵衛は弥兵衛と別にされ、同じく息子主悦(ちから)と別にされた大石内蔵助から主悦のことを託される。このあたりから、涙なくしては読めなかった。切腹の日、緊張する主悦にあたたかい言葉をかける安兵衛の優しさ、十六歳になったばかりで見事な死を迎えた主悦のけなげさに泣かされた。剣の道を選べば長生きはできないと、少年の日に山伏から予言された通り、堀部安兵衛は三十四歳の生涯を閉じた。 >> 続きを読む
2021/01/29 by Kira
秋山駿
「麒麟がくる」がテレビでやっているので、もう少し理解を深めようと、秋山駿さんの「信長」を読む。気が短くて、たわけもの、と言われ不可解な行動に満ち溢れている信長。でもこの本では、従来の発想とは異なった ことにより変人扱いを。例えば、戦争の方法、戦争をする意味つまり原理が違うと・・・。信玄は自分の家が大切、つまり自分を中心の一点であるような国土の繁栄と拡大を願い、そのための戦争。信長は、転々と自分の居城を移す。自分の本拠地を新しい場処に移す。俗にいう、農耕民族と狩猟民族の違い、自分の生まれ育った場処の否定、自分の家の否定。天下、という観念、「天下布武」という思想はここから生まれている。我が領地を広げるその為の小競り合い、戦の繰り返しであった中で、信長は、新しい国のあり方、新しい精度の制定、目先の目標ではなく、ビジョンをもって行動し、それによる部下のそろえ方、戦の仕方、帝、天皇とのあり方、各大名との力関係、宗教などすべて従来の既成概念とは違った前衛とでも言える、自らの手になる事実の蓄積を踏まえての、思想と行動。発想が非凡である故、行動が独創的になり、周りには到底理解しえないものであった。そして、一つの国家社会、一つの文明が、変わろうとするとき、早く、いかに効率よく行おうとする合理主義が垣間見れる。もし「本能寺の乱」がなく、信長の時代が続いたのであれば、歴史はどう変わったのか、江戸時代も短く、明治維新ももっと早く行われたり、今の私たちの思想、DNAにも影響与えていたのではないか、そういう意味で、ひとりの人物の一生涯、興味あることですな。 >> 続きを読む
2020/10/10 by ごまめ
野口悠紀雄
10年前からだいぶ旅行情報も変わったけど、基本的にはかなり参考になりそうな気がする。一人旅なんて次はいつできるかわからないけど、近いうちに海外にだ脱出したくなってきた。 >> 続きを読む
2013/06/15 by freaks004
大久保寛 , PullmanPhilip
人間に『ダイモン』という分身がいる、世界は魔法と魔女、話すシロクマが存在するらという設定がベースになっている話。主人公のライラが様々なトラブルに巻き込まれつつも、その世界の確信、別世界(こちらの現実世界)が入り交じるところが面白い。 >> 続きを読む
2019/03/17 by 竹下真弘s
レイモンド ポストゲート
【陪審員裁判物ですが、この構成は……】 陪審員裁判物と言うと、私の場合真っ先に思い浮かぶのが映画の『十二人の怒れる男』なんですが、本作もイギリスの陪審員物です。 『怒れる』のような感じかなと期待して読んだのですが……。 本作で裁かれる事件は、とあるお屋敷の跡取り息子が中毒死したという事件で、どうも有毒な蔦の花粉をサラダに混入され、それが原因で中毒死したようなのです。 当時屋敷にいたのは被害者の他には3人だけ。 使用人夫婦(サラダを作ったのはこの奥さんの方です)と、被害者の叔母です。 いずれも被害者が死ねば巨額の遺産が手に入るという立場にありました。 叔母は、もともとは下層階級の出で、教養も無く独りよがりな性格で、本来なら貧しい生活に甘んじなければならない立場だったのですが、運命の巡り合わせにより、被害者の後見人という立場で屋敷に住むことになり、裕福な生活を甘受していたのです。 しかし、被害者に対してはやることなすこと全てについて自分の思う通りにさせたがり、精神的にもかなり追い詰めていました。 この3人の誰もがサラダに毒物を混入できるチャンスはありました。 しかし、跡取り息子の家庭教師が、偶然屋敷の居間の書棚にあった本に挟まれていた新聞記事を発見したことから様相が一変します。 その新聞記事には蔦の花粉により殺害された事件が載っていたのですね。 しかも、その新聞は屋敷で取っている新聞ではなく、地方紙で、誰かがわざわざ新聞配達店に注文して取り寄せたものであることが分かりました。 新聞配達店の店主は、確か叔母に頼まれた記憶なのだがはっきりしないと言います。 とは言え、使用人夫婦が新聞記事を隠すにしてはおかしな場所ですし、これは叔母が怪しいということになります。 警察がその新聞記事のことを叔母に問いただしたところ、いきなり騒ぎ出して暴れるではないですか。 これは間違いないということで叔母は殺人容疑で逮捕、起訴されてしまったのですね。 さて、この作品は三部構成になっています。 この構成が良いのかなぁというのが最後まで引っかかってしまったのです。 第一部は、この事件の陪審員に選ばれた12人のプロフィールが描かれるのですが、ここが長い。 まだ本筋の事件については何も触れられていないのに、いきなり陪審員の、しかも12人ものプロフィールを書き出すというのがどうもいただけませんでした。 それぞれのプロフィールは興味深い点もあるのですが、一体何の裁判なのかが全く分からない段階で書いても興味をつなぎ止めるのが難しいんじゃないかなぁと感じました。 また、後に出てくる評決に至る過程で、それぞれの陪審員の性格や過去がそれなりに影響しているような書き方にはなっているのですが、それほど効果的とも言えず、少なくともここまで詳しくプロフィールを書いた効果があったとは思えませんでした。 弟二部に入ってようやくこの事件のあらましが語られます。 その中で、被害者が飼っていたウサギにまつわるエピソードが出てくるのですが、そのウサギの名前がなんと、『スレドニ・ヴァシュター』なんです。 もう、これを読んでピン!と来ました。 サキの作品に『スレドニ・ヴァシュター』というのがあり、その作品でも口やかましい叔母が少年の飼っているイタチを殺そうとすることが出てくるんですね。 確かに本件の事件もサキの作品にそっくりです。 こりゃあ、サキのあの落とし方を下敷きにしてるんだなとすぐに分かりました。 実際、第三部の法廷シーンでは、叔母の弁護士がサキのこの作品を持ち出して弁護をするのですよ。 そして第三部が陪審員裁判の模様が描かれるという展開です。 そして、評決の結果は……。 最後に、後日談が添えられており、その中で皮肉な結末を迎えるという作品です。 先ほども書いたとおり、この構成がどうかなぁと最後まで引っかかりました。 中核となる部分はそれなりに面白かっただけに、陪審員のプロフィールを延々と書き、またそれが冒頭部分だったというのは失敗ではなかったのかという感じを強く持ってしまいました。 そうそう、それからおそらく訳の問題なのですが、おかしいところがあり、それも気になってしまいました。 全体的にちょっと残念な感じですかね。 >> 続きを読む
2020/01/24 by ef177
出版年月 - 1999年11月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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