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1999年11月発行の書籍

人気の作品

      ハリ-・ポッタ-と賢者の石

      松岡佑子 , J・K・ローリング

      静山社
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! Minnie ENRIKE

      • ハリー・ポッターシリーズの第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」で、世界的なベストセラーとなり、その後も続編が出版されるたびにブームを巻き起こし、その映画化作品も大ヒットを飛ばし、年収約1億二千五百万ポンドを稼ぎ出し、歴史上最も多くの報酬を得た作家と言われているJ・K・ローリング-------。

        この「ハリー・ポッターと賢者の石」を、今まで意識して読むのを避けてきていましたが、今回、ようやく、どんな内容の作品なんだろうなという興味で読み終えました。

        この作品は、1歳で両親を同時に亡くしたハリー・ポッターという少年が、親戚の家でいじめられながら育つも、11歳の誕生日に突然、自分が偉大な魔法使いの一粒種で、生まれながらにして伝説的な存在だったことを知るという、よくある貴種流離譚の形を取っているんですね。

        これは、我々読者にあらかじめヒーローが、最強の血筋であることが約束されている。
        どうひっくり返っても、種明かしは全部、最初に終わっているんですね。

        逆説的に言えば、だからこそ安心して読めるわけですが、でも成功がすべて約束されてる子供の成長を読んでて、一体、何が楽しいのかなと思いますね。

        このシリーズが世界的なベストセラーになっているというのは、よく考えてみると、結局は誰にでもわかる物語の構造になっているからなのだろう。

        ハリーが不幸にならないことが、わかっているから安心して読める。
        大人も、子供に安心して与えられる、安心本なんだと思う。

        私は、ファンタジー小説というのは本来は、無意識の欲望とか悪意みたいなものを、メタファーとして散りばめる文学であって、実は危険なジャンルだと思っているんですね。

        感受性豊かな子供であればあるほど、現実を認識する力を失わせかねない、向こうの世界に取り込まれてしまうかもしれないという、そんな危うさと隣り合わせの読み物なんですからね。

        だから、端的に言ってしまえば、この作品は、ファンタジーではないと思う。
        非常に現実的で、形而下的な物語だと思う。

        この作品は、"育ちより氏"という話になっていて、つまり、氏が良ければ人間は成功するのだと。
        出会う人、出会う人が「あなたがハリー様ですか」と、敬ってくれて、隠してあった親の財産で魔法の棒とかも、一流のものばかり買ってもらえる。

        最高級の机、ランドセル、筆箱を買い与えられる子供ってことなんですね。実に下世話で、どうしようもない話だと思いますね。

        しかも、折に触れて、「友達を大切にしよう」とか「約束は守ろう」というように、著者のJ・K・ローリングが、お説教や教訓を垂れるんですね。
        これは、ファンタジーが絶対にやってはいけないことの一つなんですね。

        それから、類型を脱しない単純な人物造型、先が読める展開、活字を追っていればすべてがわかるという、何の象徴性も持たない物語や文章、勧善懲悪の世界観。

        ファンタジーの傑作に慣れ親しんでいる者にとっては、眉をひそめざるを得ないそれらの欠点が、実はすべて売れる要因になっているのだと思う。
        現代は、少しでも読むのが困難な物語を求めていない時代なのかも知れません。

        この作品には、ほんとに一人として魅力のある人物がいないと思う。
        主人公のハリー・ポッターその人がすでに、魅力的に描かれていないんですね。

        七章で、寄宿舎の組み分けがある時に、人物の本質を見抜く帽子という人物が出て来て、ハリーについて「難しい。非常に難しい。ふむ、勇気に満ちている。頭も悪くない。才能もある。おう、なんと、なるほど-----自分の力を試したいというすばらしい欲望もある」と言うんですね。

        だけど、それまでのストーリーの中で、そういうキャラクターの片鱗も彼の行動によって表わされていないんですね。
        要するに、全編、説明なんですね。描写ではないんですね。

        それから、構造がロールプレイングゲームのそれと同じになっていると思う。
        三人の男女が、クループを組んで、ダンジョンを通ったりして、謎を解きながら中ボスを倒し、ラスボスへ向かうみたいな。

        それも、子供たちに受けた原因なんでしょうね。ただし、ダメなロールプレイングゲームですけど。
        なぜなら、謎はすべて最初に解かれているから。ハリーのヒットポイントとマジックポイントは、最初からマックスですからね。

        事件が起こっているように見えてて、実は何も起きてないのは、そのせいだと思う。
        一番はじめに、魔法学校から手紙が来ると。でも、これが届くことは、最初からわかっているので、まるでハラハラできない。

        では、このシーンがなんの役に立っているかというと、間抜けなドタバタをさせられている人間というのが、どんなに愚かな生き物かと。
        それに比べて、魔法世界の人たちというのが、どんなに素敵で賢いかということを際立たせるためだけなんですね。

        魔法世界の素敵さを描かずに、人間のくだらなさ加減を描くことで、"彼らの世界"を引き立たせる、非常に汚いテクニックだと思いますね。

        たった一つの効用があったとすれば、この作品の大ヒットで、今までファンタジーなど読んだことがない人が、さらにグレードの高いファンタジーをいっぱい読み出すための、よすがになったかも知れないという事だけだと思う。

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        2018/07/26 by dreamer

    • 他6人がレビュー登録、 56人が本棚登録しています
      論語

      金谷治

      岩波書店
      カテゴリー:経書
      2.8
      いいね!
      • 2000年の超ロングセラー。これだけ長い間残っているものなら、きっと刺さることが書いてあるに違いない。
        学生の頃、音読したことはあるのですが、あまり覚えていなかったので読んでみました。

        まさか『論語』がこんなに長いものだとは思っておらず、十巻まであって読み終えるのにかなり時間がかかりました。
        ちらほら良い事言っている箇所もありつつ、少し説教臭いものもあり、孔子の人柄や出来事が書かれていたりしました。それと、当時の文化や歴史がさっぱりわかっていなかったので、読んでいてあまり理解が出来なかったところもありました。

        紀元前の人達も、考えていたことは今の人とそう変わらないですね。
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        2019/06/13 by May

    • 他3人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      よみがえる百舌

      逢坂剛

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      3.2
      いいね!
      • 凄く面白かった!でもなぜか元警官の大杉がペーパードライバー?死んだ倉木がタバコを吸わない?ドラマではヘビースモーカーなはず。美希は犯される覚悟であそこにカッターの刃を隠す?いろいろツッコミ所はありますがこれはこれでいいのかな~。 >> 続きを読む

        2016/04/01 by rock-man

    • 他3人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      俺は鰯 (角川文庫)

      鳴海 章

      4.0
      いいね!
      • 10年間勤めた会社をあっさり辞めた高城は、慧敏という風俗店の女性に恋をします。
        女が持っている汝官窯の皿を巡り、東京-台湾を舞台に物語が展開していきます。

        序盤は時系列や人物の入れ替わりがわかりにくかったのですが、それぞれの物語が一つに結びついた辺りから、急におもしろくなってきました。
        慧敏と出会ったことにより、日常生活からかけ離れた世界に足を踏み入れた高城ですが、彼自身は至って平凡です。
        ふと「会社を辞めてみよう」と決めて、退職願を書くまでにくよくよと悩み続ける普通のサラリーマンです。
        鳴海さんはこれでもかというほど、高城の内面を描いていました。
        例えばポップコーンに蜂が入っていたエピソード。
        これは彼自身の話ではないのですが、痛いこと、辛いこと、苦しいことを恐れ逃げ出すような人生であったと吐露します。
        想像しているうちに自らの身の内に作り上げたイメージに萎縮してしまう、と。

        彼の気持ちがよくわかると、同じくそこら辺にいるような人である私は思うのです。

        勤めていた会社の社長の言葉が心に響きます。
        「鰯だよ。生まれた時から餌になることを運命づけられている。その他大勢にすぎない。鰯だ」

        「その他大勢にすぎない鰯」である彼が女に惚れ、彼女を追うことに意味は見いだせないかもしれないけど、自分のアイデンティティを求めながら行動していく。
        そんなカッコ悪い彼を、「頑張れ・・・!」と応援したくなりました。

        一見手に取りにくいタイトルも、納得の本作です。(スミマセン。。)

        また、台湾・故宮博物館の国宝の話は丁寧に書かれており、興味をそそられながら読みました。
        いつか行ってみたいなぁ。

        この本オススメしてくださった課長代理さん、どうもありがとうございました!
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        2015/12/21 by あすか

      • コメント 4件
    • 他2人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      よるくま

      酒井駒子

      偕成社
      4.2
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      • ある晩、真っ黒いくまの子が訪ねてきて、おかあさんをさがしているの、といいます。
        の子は、夜の中を、よるくまとさがしにいきます。

        夜が、とても綺麗に描かれています。夜の中の光とか、光の中の影とか。
        男の子が、よるくまを抱いて、「だいてみたら、あたたかかった」というところ、本当にあったかそうだった。

        何だか吸い込まれていきそうな、静かだけれど楽しい絵本です。
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        2014/02/07 by ヒカル

      • コメント 5件
    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      黄金の羅針盤

      PullmanPhilip , 大久保寛

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 人間に『ダイモン』という分身がいる、
        世界は魔法と魔女、話すシロクマが存在するらという設定がベースになっている話。

        主人公のライラが様々なトラブルに巻き込まれつつも、その世界の確信、別世界(こちらの現実世界)が入り交じるところが面白い。
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        2019/03/17 by 竹下真弘s

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      ブルーシティー

      星野之宣

      メディアファクトリー
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      2.5
      いいね!
      • 宇宙ステーションと隕石群との衝突事故が発生。
        これが全ての始まりだった。

        地上に落下した宇宙ステーションには未知の病原体が潜んだ隕石が付着していた。
        しかも病原体は、人間にとっても、動物にとっても、致死性の上、感染力が非常に高かった。
        あっという間に病原体は地球全域に蔓延し、地上の生物は、ほぼ全滅してしまう。

        わずかに残った地上の人類は、意図的にオゾン層を破壊、紫外線で自らと共に未知のウィルスを焼き払う「人類自決作戦」を決行。
        ウィルスは死滅したものの、地球に残ったのは海の生き物と海底実験都市ブルーシティーに住む2万人だけ、となってしまう。

        人類再建を目指すブルーシティーに次々と危機が迫る・・・。

        本作、実は未完。

        一応、話はまとまって終わるが、
        「本当の戦いは、これからだ」
        と、どこかのマンガ雑誌で、人気のないマンガにありがちなラストと同じような終わり方を迎えてしまう。

        ちなみに本作は1975年に初出。
        それを考えると、作者はおそらく続編を書く気はないのだろう。

        前半は息もつかせぬハードな展開の連続、(しかも大仕掛けで)手に汗握る。
        残念だったのは、後半から。

        実は「黒幕」がいた、という展開になるのだが、前半の大仕掛けがすべて「黒幕」個人の仕業(きっかけを与えただけだが)だった、というのが、急にスケールが小さくなってしまったようで、拍子抜けしてしまった。
        また、「黒幕」自身も、「ありきたりな悪役」で魅力に欠ける。

        ハードSFだと思って読んでいたら、B級SFだった、という感じだった。
        最初から、B級SFだと思って読んでいれば、感想は違ったかもしれない。

        「続編」に期待すべきだろうか?
        そもそも描かれないかもしれないが・・・。
        >> 続きを読む

        2013/12/28 by Tucker

      • コメント 5件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      斎藤家の核弾頭 (朝日文庫)

      篠田 節子

      5.0
      いいね!
      •  高度管理社会となった日本の近未来。
         裁判のコンピュータ化により職を失った最高裁の裁判官・斎藤総一郎は、地上げ屋の嫌がらせに抵抗しているうちに、成り行き上話が大きくなっていき、ついには国家に対して独立宣言をすることに……。
         1997年に書き下ろしされた長編小説ですが、2016年現在の日本にも通じるキーワードをそこかしこに見つけることができます。
         豊洲市場移転問題、沖縄高江問題、国民総背番号制、原発問題、核による軍拡競争、優生学、その他ジカ熱やはしか問題など……。
         その他何が読み取れるのか、挑戦してみるといいでしょう。
         例えばこの小説では、有毒ガスで汚染された成田の飛行場跡や放射能で汚染された原発跡地に盛り土をして、国家にとって不要となった国民を実験動物として住まわせるのです。
         豊洲市場移転問題や原発事故地域への強制帰還を思わせます。
         大友克洋『AKIRA』が東京オリンピックを予言していた、と話題になりましたが、本作品も、未来を予見していると思います。
         2011年の大地震の記述もありますから。
               
        『AKIRA』の予言は「2020年東京オリンピック」だけではなかった!
          http://tocana.jp/2014/02/post_3594.html
                 
         本作品はあらすじだけを読むと、コメディタッチで楽しめる物語かと思ってしまうのですが、なかなか重苦しい物語で、気分爽快とはいきません。
         そもそも高度に進んだ管理社会で国家に抵抗するのは、大変なことです。
         公民館に集まった近所の仲間も烏合の衆です。
         一致団結して大いに戦おう!なんてハリウッド映画のような展開にはなりません。
         私のイメージとしては、『1984』や太平洋戦争の日本軍の戦記などと同じ、重苦しい読書でした。
         そもそも先頭に立って戦う指揮官・斎藤総一郎に共感できません。
         私が総一郎の妻・美和子さんなら、早急に見限って実家に帰るか、有賀さんに頼み込んで連れて行ってもらうと思います。
           
         本作品には単行本版、朝日文庫版、新潮文庫版があります。
         朝日文庫版の解説は斎藤美奈子さんです。
              
         なお、ネタバレブログでは、本作品に描かれた男系・女系問題について論じています。
         そういえば本作品では天皇制についての記述はありません。
        (皇居も皇族も存在し、元号が使われているのだから天皇制が存続していることは確実です)
         なお、物語は2075年(成慶58年)の出来事となっています。
         計算すると、成慶元年は、2017年ということになります。ムムム……。
           
        OLDIES 三丁目のブログ 
        ■[日々の冒険]斎藤家の核弾頭 篠田節子
          http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20160928/p1
          
        少年少女・ネタバレ談話室(ネタばらし注意!)
         斎藤家の核弾頭 篠田節子 ネタバレ感想会
          http://sfclub.sblo.jp/article/177059584.html
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        2016/09/29 by 荒馬紹介

    • 1人が本棚登録しています
      喜びの泉_ターシャ・テューダーと言葉の花束

      ターシャ テューダー

      4.0
      いいね!
      • 美しくすばらしい言葉がターシャの絵とうまく調和されていて。すごい!

        2017/03/17 by ふみえ

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    • 1人が本棚登録しています
      機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…

      富野由悠季 , 矢立肇 , 林譲治

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 1年戦争の裏側。というか表舞台ではないのがこの本の見どころ。

        舞台は1年戦争後期の地上です。みんなが宇宙でわーわーやってるときですね。
        ガンダムとか赤いのとか最新鋭とは程遠い量産vs量産
        ヒーローがいるから戦争に勝てるのではない
        語られる事のない一般兵のお話

        名もでてこないような下っ端ががんばるから成り立ち、勝つことができる。

        私たちも頑張りましょう(笑)
        GMやザクだってがんばってるんです。
        >> 続きを読む

        2013/06/03 by ちあき

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    • 1人が本棚登録しています
      パパはウルトラセブン

      宮西達也 , 円谷プロダクション

      学研マーケティング
      4.5
      いいね!
      • 息子のために購入した絵本ですが、自分のために読んでいることもしばしば。
        よしっ、がんばるぞと思える本です。 >> 続きを読む

        2014/09/23 by che_k

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    • 3人が本棚登録しています
      マネー・ハッキング

      幸田真音

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      2.0
      いいね!
      • 読了日はダミー。

        外資系投資銀行の決済業務についている主人公の女性が
        別の外資銀行のディーラーである人物に
        コンピュータをハッキングしディーリングを行うという計画に巻き込まれる話。
        決して悪意ある話ではなく、純粋にディーラーの腕試しって話です。
        主人公とディーラーそれにコンピュータのハッカーが加わり、3人でNYの債券市場に挑む。
        オプション取引についての説明等あり、債券の市場の臨場感が伝わってくる描写は素晴らしいです。
        が、反面、コンピュータについて詳しい人から見れば、ハッキング行為(この言い方もどうかって感じ)はちゃっちく見えるかもしれません。
        ま、ハッカーとか言ってちゃイケナイよね。
        あと最後のオチも不合理があるようでこの評価。
        ただ、なかなか債権市場をベースにした小説は少ないのでその点では非常に評価しています。
        >> 続きを読む

        2013/03/11 by loki

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    • 1人が本棚登録しています
      Rave

      真島ヒロ

      講談社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
      いいね!
      • 私の小学生時代、ずっとハマり続けたマンガです。

        王道?なバトル系ですが、熱くなれるところ、笑えるところ、泣けるところなど
        非常にバランス良く作られている気がします。

        特に有名なのは31巻かな?
        本当に泣きました。
        カッコよすぎです。

        現在は、同作者さんの描くFAIRYTAILが有名だと思いますが、
        FAIRYTAILが好きな人はもちろん、興味があればぜひ読んで頂きたいです!
        >> 続きを読む

        2015/05/14 by frontier

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    • 1人が本棚登録しています
      世界で一番贅沢な旅

      戸井 十月

      5.0
      いいね!

      • 行動する作家・戸井十月の「世界で一番贅沢な旅」を読了。

        この作品は、十万キロに及ぶ旅の記録だ。
        著者の戸井十月は、七年かけてオートバイによる五大陸走破を敢行するんですね。

        彼の旅行記が面白いのは、ただの冒険野郎とは違う、研ぎ澄まされた作家の目と耳で観察しているからだと思う。

        地べたを十万キロもオートバイで移動していく者にしかわからない空気の振動、におい、湿度や乾き、また激しい風雨、うんざりするほどの自然の気まぐれ、あるいは、目の前に待ち受けている悪路など、たとえ信じられないようなことが起こっても、何があっても、絶対、書いてやるぞという気迫がこもっているんですね。

        五十男の年期と熟練に、どこか、やぶれかぶれの気分さえ滲ませて、オートバイは、ただひたすら走り続ける。
        ツンドラから茫漠たる平原、砂漠、町を越え、寒村を走り抜け、地球の果てまで旅は続く。

        当然のことながら、さまざまな人々との出会いがある。
        マニラのポン引き、モンゴルの売春婦、クマのような大男の釣り人、南アフリカの黒人警官、アボリジニの吝嗇なおばさん等々。

        そして、驚くべきこととして、あらゆる土地に日本人が住んでいるんですね。
        著者がとりわけ感心を寄せるのは、"単なる経済的な成功を超えた充実の人生"を探して日本を脱出した「新越境者」なんですね。

        ブラジル、ボリビア、パラグアイの国境に広がる世界最大の湿地に挑む、若い日本人のカメラマンや、「どこにいったって死ぬ時は死ぬ時ですよ」とペルーのゲリラ組織のテロに怯える町で、実験農場を営む男。

        アジェンデ、ピノチュトと政権が激しく変わったチリで、波瀾万丈の日々を送り、深田祐介の小説「革命商人」のモデルになった男。
        読んでいると、知らぬうちに気分が大きくなっていくのを感じてしまうんですね。

        著者の五大陸走破の旅は、まだ続いていく。
        なぜ、そんなに旅に出るのか? と聞いても、せんなきことだ。

        著者はこう書いている。「悪路を行き、安宿を探す毎日。それ以前に旅の資金集めから悪戦苦闘する。しかし、これもまた私自身が選んだ"贅沢"である」と。

        >> 続きを読む

        2018/08/04 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      「会社起こし」勝利の手の内

      沖幸子

      小学館
      カテゴリー:企業、経営
      2.0
      いいね!
      • 女性ベンチャー企業の社長が語る起業。

        基本事項ばかりだが、ノウハウが散りばめられた良書と言える。

        大手企業を飛び出して海外留学。帰国後、海外でのヒントを元に起業。

        女性ながら、そして女性ならではの目線を生かすことで、ベンチャー企業立ち上げを成功させた著者が繰り出す言葉には説得力が有る。

        自身の経営という立場をこなしつつ、現場に出るのも厭わず、そこからサービス改善の糸口を探すという姿勢は素晴らしいと思う。

        自分の城を持つというダイナミズムには非常に魅力を感じていながら、独立/起業に対してリスクを理由に踏み出さない人は多いが、結局のところ仮に軌道に乗っても社長業で忙殺されることを厭う人が多いのが今のご時勢なのではなかろうか。

        文体は決して堅く無いのだが、何故か「上から目線」を感じた。
        >> 続きを読む

        2012/09/22 by ice

      • コメント 4件
    • 3人が本棚登録しています
      「超」旅行法

      野口悠紀雄

      新潮社
      カテゴリー:地理、地誌、紀行
      3.0
      いいね!
      • 10年前からだいぶ旅行情報も変わったけど、基本的にはかなり参考になりそうな気がする。一人旅なんて次はいつできるかわからないけど、近いうちに海外にだ脱出したくなってきた。 >> 続きを読む

        2013/06/15 by freaks004

    • 1人が本棚登録しています
      さゆり〈上〉

      アーサー ゴールデン

      3.0
      いいね!
      • とてつもない翻訳の妙技に、声を失う感さえする。

        本書と出逢ったとき、英米小説らしからぬ翻訳タイトル「さゆり」……なんていう和名だったので惹かれました。
        作者は合衆国のアーサー・ゴールデンで邦訳者は小川高義。なのに、ストーリーの前にある「訳者覚書」には「ヤーコプ・ハールホイス」とのオランダ人研究者とあって混乱しました。

        ???

        覚書によれば、
        ハールロイスさんが元芸妓であった日本人のニッタ・サユリの語る一代記をテープレコーダーで録音しながら聞き取りして書き上げた……

        という設定なんですが、これがそもそも全部フィクションらしい。(ネタバレ御免。そう知って読んでも、作品のすばらしさは損なわれない、すごい。)

        そうして書き上げた小説「Memoirs of a Geisha」の邦訳が『さゆり』なのです。

        架空の芸妓の、日本語の語りからオランダ人が聞き取りして綴った英文をもいちど日本語になおしているんですが、なんとも流麗なやまとことばで、ほんに芸妓はんらしい物言いになっているんです。

        単にことばだけじゃない。
        芸妓らしいしぐさや心憎い機知がふんだんにあって、とてもアメリカ小説とは思えないし、日本人が日本語で書いた以上に「芸妓の世界」が拡がってくるとさえ感じてしまいます。

        樸にとつて残念なのは、
        図書館で借りて読んだのに、またまた上巻しかゲットできていないこと!
        はやく下巻が読みたい!
        (これまたレビューの続編はいつになることやら。)



        (映画にもなったそうですが、知らなかった。でも、きっと小説は小説ならではの文章の妙味まちがいなし。)




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        2016/01/17 by junyo

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      人と接するのがつらい 人間関係の自我心理学

      根本橘夫

      文藝春秋
      カテゴリー:社会学
      5.0
      いいね!
      • 人と接するのがつらい、人間関係がつらい、そう感じる人への状況改善のためのヒントがつまっていました。自分自身に自信をもって、周りに目は気にしない、自分の好きなようにすれば良いんだってわかりました。
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        2017/09/18 by 香菜子

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      ペルソナ 三島由紀夫伝

      猪瀬直樹

      文藝春秋
      カテゴリー:日本文学
      3.0
      いいね!
      • 初猪瀬直樹さん。
        東京オリンピック招致に成功した栄光から一転、カバンにお金の束と見立てた包みを、入りますっと言い切りグイグイ押し込んでいた汗だくの猪瀬直樹さん。
        本ははじめて読んだ。
        読みやすい文章を書かれる。でも内容はそれ程面白いものでは無かった。

        三島由紀夫について書いてある。
        三島由紀夫は余り詳しく知らないので興味を持って読んでみた。
        三島の父親や祖父のことまで遡って書くことは三島の人格形成を紐解くためにも必要だとは思うけれど、ここまでの記述は必要だったのか。
        三島の祖父定太郎のエピソードの中で杉山茂丸という政界のフィクサーのような人物が出てきて、その人物が夢野久作さんの祖父ということは知らなく、へえと思ったが、それ以外は特に興味も持てずに終わった。

        三島をよく知らないわたしでも知っているような内容が多く、何故貧弱とも言える少年期を過ごした三島が、肉体を鍛えることに執着し自身の肉体を誇示したり、ゲイのような言動行動をしたりすることや、戦争には出征出来ないしたくないという考えだったのに軍隊というか武力による防衛などに興味を持ち、自衛隊に傾倒し果ては自刃するということに至ったのかという最も興味深いことについての洞察や推理が甘い。
        単に事実を並べ立てるだけでなく、同じ執筆活動をする猪瀬直樹ならではの見解を読みたかった。

        三島由紀夫という男をベースにした猪瀬直樹の伝記物語風作品という感じだ。
        >> 続きを読む

        2016/04/08 by jhm

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      平時の指揮官有事の指揮官 あなたは部下に見られている

      佐々淳行

      文藝春秋
      カテゴリー:経営管理
      4.0
      いいね!
      • 指揮者の在り方について一つの側面から描かれた本。指揮者(conductor)は様々な分野に存在します。オーケストラの指揮者、軍の指揮官(conductor miritaire)、リーダー、指導者、政治家・・・。これは、対処すべき問題と責任を持つ組織という制約から生じるいたしかたの無い現象で、上手く演じることで、とても上手いクラシックのような音を奏でることができるものです。

        どのような分野、仕事においても複数人が集まって一つの目標に向かって作業をする場合、リーダーが発生し、あるいは場合によっては聖書に在る様に、人5人集まれば二人と三人と、父と子とにさもなければ男女に分かれて争わんと成りえますが、それが、そこにいる人の誰の望みでもない事は明らかかと思います。

        これは二つの相克する概念を生み出します。即ち、自身の望む方向(自身の属す組織と置き換えても良い)へ指揮していく、ベクトルを作る、というものと、自身が自然に在るから、周りもそのように纏まる、すなわち、纏まるという結末へ収束させるという目的を達せさせることこそがゴールであるというもの。

        どちらも、必要ですが、前者はconductorと呼ばれ、後者はprichepesと呼ばれるかと思います。指揮官と議長/第一人者、どちらも間違いではなくて、状況に応じて演じなくてはいけない役でしかない。

        重要なのはその両方を演じれて、かつ、演じる役を間違わない事。

        さて、この本の内容は指揮官としての在るべき振舞いと思想、思考を良い事例、ダメな事例を通しながら、あるいはアンケート結果を紹介しながら、指揮官たるべき姿勢を示しています。
        他方で、指揮官の姿勢を示すことで、実は相克する概念であるはずの議長としての姿勢もまた鏡に映って対称に見えるだけで、実は隣り合った在り方である事を示しているように思います。

        要は、マナーを説明している本と考えれば良いのだと思います(結局、自身そう在りさえすれば、大抵はそのように収束するので・・・。)。

        現場指揮官として、あるいは頑張ってきたつもりだけど自分って大丈夫なんだろうかって不安になった人で背中をちょっとだけ押して欲しくなった人、もしくはちょっとだけ逸脱しすぎて反省が必要な人にお勧めかもしれません。
        >> 続きを読む

        2013/06/18 by Shimada

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出版年月 - 1999年11月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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