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2000年1月発行の書籍

人気の作品

      文学部唯野教授

      筒井康隆

      岩波書店
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • (*)マンガも31通りに分類できるか?

         筒井康隆さんの「文学部唯野教授」は、まっとうな文学理論と、エゴ丸出しの大学社会のドタバタを平行して書き綴った面白い本ですが(1990年・岩波書店)、この中に、文芸批評の1分類として、第8講「構造主義」があり、1928年、ロシア・フォルマリズムの論客であったウラジーミル・プロップが「昔話の形態学」と言う本のなかで、「あらゆる魔法昔話」を、7つの行動領域、31の要素に分類したとのことです。全ての魔法昔話は、「主人公」だの「助手」だの「敵対者」だの「探し求められる人物」だのといった7つの行動領域を、31のやりかたで結合しただけ、というわけです。(「文学部唯野教授」P259)

        そこで、wikiから、それらの用語を抜粋すると
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
        昔話の構造31の機能分類
        1. 「留守もしくは閉じ込め」
        2. 「禁止」
        3. 「違反」
        4. 「捜索」
        5. 「密告」
        6. 「謀略」
        7. 「黙認」
        8. 「加害または欠如」
        9. 「調停」
        10. 「主人公の同意」
        11. 「主人公の出発」
        12. 「魔法の授与者に試される主人公(贈与者の第一機能)」
        13. 「主人公の反応」
        14. 「魔法の手段の提供・獲得」
        15. 「主人公の移動」
        16. 「主人公と敵対者の闘争もしくは難題」
        17. 「狙われる主人公」
        18. 「敵対者に対する勝利」
        19. 「発端の不幸または欠如の解消」
        20. 「主人公の帰還」
        21. 「追跡される主人公」
        22. 「主人公の救出」
        23. 「主人公が身分を隠して家に戻る」
        24. 「偽主人公の主張」
        25. 「主人公に難題が出される」
        26. 「難題の実行」
        27. 「主人公が再確認される」
        28. 「偽主人公または敵対者の仮面がはがれる」
        29. 「主人公の新たな変身」
        30. 「敵対者の処罰」
        31. 「結婚(もしくは即位のみ)」

        七つの行動領域
        1. 敵対者(加害者)
        2. 贈与者
        3. 助力者
        4. 王女(探し求められる者)とその父
        5. 派遣者(送り出す者)
        6. 主人公
        7. 偽主人公
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
        「機能分類の20=主人公の帰還」という項目に絞って実際のマンガの例に当たってみることにしましょう。週刊少年ジャンプに連載されたマンガで、「DRAGON QUEST-ダイの大冒険-」(三条陸+稲田浩司)は、正統的なジャンプのマンガで、主人公の勇者・ダイが敵役のラスボス・大魔王バーンとの死闘に終止符を打ち、勝利したあと、伏兵が現れ「黒のコア」という原爆にも匹敵する兵器を爆発させようとします。そのとき、ダイは黒のコアを抱えて上空高く飛び立ちます。炸裂後、彼は未だに帰還しません。でも、この戦いで生き残ったものたちは、いずれ訪れるであろうダイの帰還を信じて疑いません。

        また、同じく週刊少年ジャンプに連載されていた「バオー来訪者」(荒木飛呂彦)は、特務機関「ドレス」に脅威の寄生虫の宿主にされ、(この寄生虫「バオー」は、宿主を守るために宿主に驚くべき戦闘能力を授ける存在なのですが)「ドレス」本部に拉致された少女を救出するため、主人公である宿主・育郎は「ドレス」本部に乗り込み、超能力者ウオーケンと死闘を演じ、勝利しますが崩壊した海の洞窟の中に閉じ込められ、安否不明になります。助けられた少女は素敵なレディーになり、バオー=育郎の帰還を待ち続けます。

        ここで挙げた2つのマンガは、たしかに「主人公の帰還」の有り様について同様な結末になっています。この場合、現象的には「主人公が帰ってこない」状態ですがむしろそのことが「主人公の帰還」というカテゴリーに入ると思われるのです。どうでしょうか?

         このような結末の例はアニメや実写版TV番組にも見られます。「鉄腕アトム」の結末もそうでしたし、「宇宙戦艦ヤマト」の第一回劇場版でもそうですし、またかなり古い物語ですが「ジャイアント・ロボ」もそう云った類型に入ると思います。
         
         ギリシャ神話の「オデッセイア」はポセイドンの呪いで散々苦労して故国に帰りつくオデッセウスの物語で、主人公がうまく帰還できた例ですね。

        最後に:プロップのこの驚嘆すべき理論は、人智の限界を示すものかも知れません。この類型以外の物語は作れぬものなのでしょうか?
        >> 続きを読む

        2013/09/15 by iirei

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      ご冗談でしょう、ファインマンさん

      FeynmanRichard Phillips , 大貫昌子

      岩波書店
      カテゴリー:個人伝記
      4.7
      いいね!
      • 本当に純粋に学問自体が好きな人。
        マンハッタン計画に関わっても特に罪悪感を感じるでもなく、アメリカへの愛国心を語るでもない。

        一方で戦後日本訪問をとても好意的に叙述していて、西洋式ホテルではなく、日本式旅館や食事を絶賛している。
        湯川教授も登場する。

        絵画とかドラムとか外国語とかいろんな事に興味を持って実践してて、科学や数学の話以外のエピソード多くて読みやすかった。
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        2016/11/11 by W_W

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      知の編集術 発想・思考を生み出す技法

      松岡正剛

      講談社
      カテゴリー:知識、学問、学術
      3.5
      いいね!
      • 私自身が自分でも多いなと感じるほど活字中毒者であり
        こうしたあらゆる情報の取捨選択と時間をいかに
        有効に使うのかを意識しながら読んだ。
        本を通して知ることのできる世界の領野からいかに
        物事の本質を把握するべきか考えさせられた。
        >> 続きを読む

        2013/10/21 by frock05

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      一億円もらったら

      赤川次郎

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 身寄りのない大富豪、宮島勉が思いついたゲーム。それが「一億円もらったら」だ。
        莫大な財産を持て余し「誰かを選んで、一億円を贈る」というびっくりなお遊び。

        「老兵に手を出すな(不幸買います)」を読んでしまってからこれが「一億円もらったら」という共通テーマで描かれた本作の続編であることを知って、もののついでなので、第一話から読んでみることにしました。

        短編集で一話一話独立したエピソードなので、別に最初から読む必要はないのですけれども。

        感想は
        「赤川次郎らしくもあり、赤川次郎らしくない作風でもあり」でした。
        「老兵に…」は、いつもの赤川次郎に思えたのですが、こちらは、なんとなくの印象ですけれど、ちょっと違うな~と感じました。


        思いがけず一億円という大金を手にしたとき、人はどう変わるのか?
        お金がどう使われるのか?それはその人の人間性を露わにするかもしれないし、逆に人そのものを変えてしまうのかもしれない。
        いずれにしろ人生が変えられてしまうことは間違いないでしょう。

        人間観察が「楽しみ」だという宮島老人の設定は、アガサ・クリスティの小説の登場人物、サタスウェイト氏にヒントを得たものかもしれません。
        サタスウェイト氏同様に、人がよいのだか悪いのだか、いまいちわからない人物設定なのです。
        時々含蓄の深いことをつぶやいたりしますが、彼自身は比較的無色の存在です。
        人選びも金のやり取りも秘書の田ノ倉を使っており、広い人脈は利用すれど、事件に直接介入せず基本的に傍観を決め込んでいます。

        赤川次郎作品において、このようなニュートラルな存在は実は珍しいのではないかと感じました。
        善人と罪人と悪人と嫌な奴(これ、すべて別のカテゴリーですよ)にくっきり分かれているのが彼の小説のスタイルで、だから読者は「何も考えずに」ストーリー展開に没頭して楽しめるという仕掛けになっている訳です。
        ユーモアで適当に笑わせておいて、殺人やセックスはあっさり軽い扱いをされ、残虐行為も行われますが目に浮かぶようには描写されません。
        要するに感情を深く揺さぶられることもないんですよね。
        そしてありえない展開や思ってもみなかった結末に、素直に面白かった。と本を閉じるのが普通。
        そして各作品にそれほどのばらつきがないのも特徴。

        …だと思うのですが、本作は違います。
        物足りない作品からスラップスティックから感動の小品まで、さまざまです。
        これは、いったい、どういうことなんだろう…?
        赤川次郎に何かあったのか?
        (次作のほうでは特にこういう印象は持ちませんでした)

        「故郷(ふるさと)は遠くにありて」「一、二の三、そして死」なんて、筒井康隆が書けばいいのに、というような話です。(そのほうが何倍も面白かろうに…と思います)

        そして文庫の解説の酒井順子氏の解釈のすさまじさにもびっくり。たぶん赤川さんも驚いているでしょう。
        いくらなんでも、そういう意図で彼は作品を描いていないと思うけれど( ̄∇ ̄;) ハッハッハッ
        でも、それくらい書かないとレビューに書くことがないような本だったとも言えるでしょうね。
        なんかこう、まとまりがないんですよ。この作品集。

        ハート・ウォーミングな部分にのみ着目して感動するもよし、ひっくり返して裏側から見て楽しむのもよし。
        すべて読者次第ではあります。

        私は食い足りない感が残りました。
        これをやるなら、もっと人間の醜いところを描けよ、って思いました。
        でなければ心温まるいい話に特化すればいいのに。と。


        目次  (全5話)
        1.「一億円もらったら」  
           毎朝の通勤で顔見知りになっただけのひそかに憧れる女性から突然の告白
        2.「故郷(ふるさと)は遠くにありて」
           彼女が故郷に還るとき。それは復讐劇の始まりだった
        3.「一、二の三、そして死」
           痴漢の冤罪を受けたサラリーマンの人生の大変化とは   
        4.「仰げば尊し」
           女子高の制服をかわいくアレンジしたい乙女心が友情を開花させるきっかけとなった
        5.「ミスター・真知子の奮闘」
           有能な妻をもってしまった平凡な男の内助の功

        1~3 全部甘いです。短篇というのはこんな半端な終わりでは心に残りません。
        ストーリーの「意外性」というよりも「ありえなすぎてコントみたい」です。(ならばコントにしてほしい)
        4 唯一完璧なハートウォーミングドラマに仕上がっています。赤川次郎が女子高生を描くのがまだ上手いとはね!
        おそらくこの本を読んだほぼすべての人がこの作品が一番よかったという感想を持つでしょう。
        5.原田マハさんの「総理の夫」を連想しました。どうしてデキる女の夫はこういうタイプってことになるんでしょうね?ハートウォーミングでいい話ですが、物語としてはちょっとスケールが小さいかなあ。もっと巨悪と戦えばいいのに。

        宮島氏が「ドストエフスキーの愛読者なので」このゲームに乗り気になった。というような記述があるのですが、いったいどういう共通点があるのかしらと、気になっています。
        何か思い当たる方がいらしたらぜひ教えてください。

        以上勝手な感想でした。<(_ _)>
        >> 続きを読む

        2017/12/21 by 月うさぎ

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      海峡の光

      辻仁成

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • 『海峡の光』(辻仁成) <新潮文庫> 読了です。

        技巧の跡の残る文体が私には鼻につき、楽しむことができませんでした。
        (どこか川端康成の表現を思い起こさせます)
        初めての辻仁成作品でしたが、多分、今後辻仁成を読むことはないと思います。

        ただ、私には合わなかった、というだけで、いい作品だとは思いますので、少しでもご興味ある方はぜひ。
        >> 続きを読む

        2015/09/19 by IKUNO

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      フェルマ-の最終定理 ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

      青木薫 , サイモン・シン

      新潮社
      カテゴリー:数論(整数論)
      4.0
      いいね!
      • 数学は専門ではないですが、難しげな証明や定理も詳しく説明されているので内容がよく理解できました。
        数学者という人種が少し身近に感じられるようになりました。
        訳者の方のあとがきにも書かれていましたが、女性数学者や日本人数学者の活躍がたくさん触れられていて興味深かったです。
        フェルマーの最終定理以外にも、歴史上の数学のいろいろなエピソードが読めます。数学や世界史の知識が豊富な人ならもっと楽しめたかな、と思います。
        読み終わると少し頭が良くなったような錯覚を感じられます。笑
        >> 続きを読む

        2015/04/22 by するめいか

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      東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ

      遥洋子

      筑摩書房
      4.5
      いいね!
      • 東京大学で上野千鶴子先生から学んだ遙洋子先生による著書。議論、ディベートする意味や正しい議論、ディベートの仕方、議論、ディベートの勝ち方を学べます。日本社会がいかに男性優位社会、女性蔑視社会で、女性が過酷な状況に置かれているかも学べます。素晴らしく勉強になる良書で、女性はもちろん、男性にも読んで欲しい一冊。上野千鶴子先生のような能力も信念もあって、かつ明朗快活な女性が増えると、日本社会もきっと変わるはず。 >> 続きを読む

        2017/11/23 by 香菜子

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      歴史物語・アフリカ系アメリカ人

      猿谷要

      朝日新聞出版
      5.0
      いいね!
      • アフリカ系アメリカ人、つまりアメリカの黒人の歴史の本。
        はじめて知るエピソードがたくさんあった。
        あたかも大きな河の流れのような、歴史の大叙事詩を読んだ気がした。

        大航海時代の始まりとともに、アフリカからは多くの人が奴隷として連れ去られ、新大陸でタバコや綿花の生産のために働かされた。

        世界史の教科書では、大航海時代の先駆者として描かれるポルトガルのエンリケ航海王子は、勝手にアフリカ大陸のかなりの部分をポルトガルの領土だとローマ教皇との間で取り決めて、そのうえ毎年アフリカに出かけては七百人もの黒人奴隷を連れて帰ったという。
        その後、こうした奴隷の輸送は、ずっとエスカレートしていった。

        十六世紀から十九世紀半ばのリンカーンによる奴隷制廃止までの間のおよそ三世紀半の間、どんなに少なく見積もっても千二百万人以上、おそらく三~五千万人ぐらいの人が、アフリカから奴隷として新大陸に連れ去られたそうである。
        そうした奴隷貿易の三角貿易が、イギリスのリバプールに産業資本の蓄積をもたらし、産業革命のきっかけになったし、新大陸の白人には多くの富をもたらした。

        黒人は抵抗せずにただ従ったわけではなく、アメリカがまだ独立していない、イギリスの植民地だった時代にも、1712年にはニューヨークで黒人による暴動が起ったり、1739年にはサウスカロライナでカトーという黒人がリーダーとなって反乱が起っているそうである。

        やがて、アメリカの植民地において、主に白人を中心に、イギリスの支配に対して抵抗が始まり、独立戦争が起った。
        その直接のきっかけとなった、1770年のボストン虐殺事件は、イギリスの軍隊が一般市民のデモに発砲した事件だったのだけれど、その時に市民の先頭にいて、最初の犠牲になったクリスパス・アタックスは混血の黒人だったそうである。
        独立戦争には、五千人もの黒人が軍隊に参加して戦い、白人とともにアメリカの独立のために奮闘した。
        しかし、独立後も、奴隷制は続き、かえって南部を中心に奴隷貿易はますます盛んになり、プランテーションのために過酷な奴隷労働が強いられるようになった。

        そうした中、デンマーク・ヴェセイを中心に、大規模な何千人という黒人奴隷の反乱の計画があったが、未遂の段階で摘発される事件が1822年にあったそうである。
        また、1831年にはナット・ターナーの反乱があった。
        1859年には、ジョン・ブラウン(ブラウン自身は白人)による黒人解放のための武装蜂起があった。

        十九世紀の前半に断続的にフロリダで行われたセミノール戦争では、インディアンと黒人がともに協力して、侵略してくる白人と闘ったそうである。
        当時は、逃亡してきた黒人奴隷をインディアンがかくまうことが多かったそうだ。
        セミノール戦争のリーダーだったオシオーラは、父はインディアンの酋長で、母は逃亡してきた元黒人奴隷だったそうである。
        白人中心の歴史では見えてこない、いろんな歴史があるものだと、読みながら考えさせられた。

        こうした、実際の武装蜂起以外にも、言葉によってなんとか奴隷制をなくそうとする取り組みもずっと行われ、アボリショニスト(奴隷制廃止論者)による活発な言論活動がずっと行われた。
        彼らは、言論による闘いと同時に、南部の奴隷州から北部の自由州に「地下鉄道」と呼ばれる秘密のルートをつくり、多くの黒人奴隷の逃亡を援助した。
        自分自身、元はその一人で、自由になってから多くの人々を逃がすために努力した人々も、フレデリック・ダグラスやハリエッド・タブマンのように数多くいた。

        こうした努力の中、徐々に奴隷制をめぐって北部と南部の対立が深まり、南北戦争が勃発。
        リンカーンが大統領として、幾多の困難を乗り越えて、奴隷解放を宣言する。

        だが、そのあとが大変だったんだなぁ、とこの本を読んでいてつくづく思った。

        奴隷の身分から解放されたものの、多くの黒人はほとんど何の財産もなければ、教育もなく、差別も依然として続いていた。
        その中で、奴隷解放のあと、多くの黒人の間でとても教育熱が高まり、老人と子どもが席を並べて学校でアルファベットを学んだそうである。

        しかし、貧困と差別は変わらなかった。
        そもそも、南北戦争のあと、南部の大土地所有者から土地を没収し、黒人に分配するという計画もあったそうである。
        北軍の指揮官で南部に侵攻したシャーマン将軍や、政治家のサディアス・スティーブンスはそのつもりだったそうだ。
        しかし、リンカーンが暗殺され、アンドリュー・ジョンソンが大統領になり、その計画は頓挫し、結局元の南部の地主の所有権の保護だけが優先された。

        リンカーンが南部で農地改革をやるつもりだったのかどうか、記録からはわからないそうである。
        しかし、リンカーンは奴隷解放の時も、わりと途中までは黙して語らず、時期を見て政策を実現していった。
        ひょっとしたら、胸中には南部の農地改革のプランがあり、それを知った人々に消されたのかもしれないと、この本を読みながら考えさせられた。

        リンカーンの後の大統領たちは、南部にあまりにも寛大な対応を行い、南北戦争の責任者だったはずの南部の指導者たちは、わりとすぐに許されて南部の政治の中心に復帰した。
        そのため、相も変らぬ黒人への抑圧や差別は、法律上は一応奴隷制廃止で平等になったとはいえ、根深い形で再び形成されていったそうである。

        アメリカの南部を見ていると、乏しい資源で無謀な戦争に突っ込み、敗戦後は多くの指導者が公職追放になるも短期間で復帰し、あまり価値観の反省もなく、かえってわが勝手な理屈を振り回し始め、排他的で偏狭な価値観を形成していった、という歴史がある。
        日本にとってもあまり他人事ではないのかもしれないが、なんとも人間の世の中というのは、一朝一夕には良くならないものだと考えさせられる。

        しかし、そうした南北戦争後の困難な時代においても、「今いる場所でバケツを投げ下ろして水を汲め」と主張するブッカー・ワシントンや、大著『黒人のたましい』を書いたデュボイスなどの指導者が、黒人の地位向上や解放のために努力したそうである。

        そして、第一次大戦後は、ニューヨークのハーレムを中心に、黒人の文学や音楽でさまざまな才能が開花したそうだ。

        だが、依然として差別と貧困と排除は続いていた。
        そこに、1950~60年代、キング牧師とマルコムXという二人のすぐれたリーダーが現れ、公民権運動や黒人の権利への取り組みや意識革命は大きく進んだ。
        この本は、このわりと現代に近い時代のこれらの動きもとてもわかりやすく生き生きと叙述していて、とても感動的だった。
        読みながら、キング牧師について、本当に道徳の力と言葉の力だけで世の中を動かしたことに、あらためて深い感動を覚えた。
        愛の言葉と心が、世の中を動かす力があることを身をもって立証したのだと思う。
        しかし、それまでには本当に苦難の道のりだったし、公民権法が成立したあとも本当に大変だったと読んでいてよくわかった。
        マルコムXも、本当に惜しい人物だったと読んでいて思われた。

        この本には、多くの文学も紹介されていて、ホイッティアの詩や、マーク・トウェインの「地獄のペン」や、クロード・マッケイの詩集「ハーレム」や、ジェームズ・ボールドウィンの「次は火だ」や、グロウの「ハウランド家の人々」や、アレックス・ヘイリーの「ルーツ」なども、いつか読んでみたいと思った。

        さまざまな方法により、長い歴史を通じて、黒人の人々が自らの自由と平等を求めて、多大な犠牲を払いながら努力してきた歴史は、本当に読みながら深い感動を覚えた。
        著者が言うとおり、アメリカにおけるキング牧師らの黒人の自由や平等のための努力は、他の少数民族の権利のための闘いにも、とても大きな影響を与え、先駆となるものだったと思う。

        アメリカと一口に言っても、今もって、ともすれば、白人中心に語られがちだし、そうした歴史しか知らない場合も多い。
        私は恥ずかしながら、つい最近まで、黒人の歴史についてはほとんど何も詳しいことは知らなかった。
        白人と黒人とネイティブ・アメリカン(インディアン)の三つの歴史は、どれもアメリカの歴史として重要で、本来は等しく同じウェイトで語られるべきものなのかもしれない。
        その一つの壮大な物語をとてもわかりやすく書いているという点で、この本はとても貴重な本だと思う。
        >> 続きを読む

        2013/03/01 by atsushi

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      一瞬の光

      白石一文

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 小さい頃から、成績もスポーツも優秀だった橋田浩介は、容姿にも優れていたので周りから一目置かれる存在だった。浩介自身は容姿の為に特別扱いされることを嫌っていた。しかし、いつも周りはそんな浩介をほおっていく事はなく、一流企業に就職しても社長の懐刀として活躍していた。そんな時、人事課長として面接した女子短大生で、面接のときは不採用にした女の子を、偶然町で助けることになる。
        その時の女の子の怯え方に不可解な物を感じた浩介は、改めて履歴書を見返すのだった。この出会いが 後の浩介の人生に影響を及ぼすとは、その時は考えてもいなかった。
        世の中の男性は、なぜ女性のか弱そうな外見に心奪われるものなのだろうか。見た目はしっかりしていても、心の中はとてもか弱い女性だっているのに・・。見た目だけで、俺が守ってやらないと・・とおもってしまうのだろうか。この結末には同意しかねる気がした。たぶん私の個人的な偏見だと思うけれど、いい話の結末なのに心がモヤモヤしてしまいました。
        >> 続きを読む

        2014/07/09 by ゆうゆう

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      夏の約束

      藤野千夜

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 芥川賞受賞作品とは思えないポップな表紙に興味を持ちました。

        ゲイという性的マイノリティの2人の日常を描いた作品です。

        ゲイという一点がなければ、極めて普通の日常にすぎない話が、その一点だけで特殊性が有る。そんな印象です。

        同性を愛してしまうことに対して、既に悩み切ってしまい、完全に受け入れているかのような2人。

        それでも、やはり先が見えない不安感までは拭い去ることができず、どうしても悩みは尽きません。

        読者は、この作品から何を感じるのでしょう。

        私の場合は、月並みながら、周囲の目を気にせずに愛情を表現できる点で、異性を愛するノーマルな自分の幸福さに感謝する気持ちになりました。

        性別を超越した愛と言うと素敵な響きも感じますが、当事者からすればあまりに過酷な宿命を負っているということを、あまりにも普通な日常との対比から感じさせられました。
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        2013/01/21 by emi

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      未明の家 建築探偵桜井京介の事件簿

      篠田真由美

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
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      • W大大学院生の京介は研究半分バイト半分で「閉ざされたパティオ」の調査を依頼される。依頼主の少女は屋敷の鑑定だけでなく、祖父の死の謎も解いて欲しいらしくて……。

        建築探偵シリーズ第1巻。館モノのミステリーです。

        長い前髪で類稀なる美貌を隠し、午前中は使い物にならない京介。
        名前とは違い熊のような大男で基本なんでもこなしてしまう深春。
        何故か、大学の研究室に出入りしている訳ありらしい蒼。
        とキャラクターが非常に濃いです。

        かなり分厚いミステリーなんですが、気づくと物語に引き込まれていました。
        ただし、謎の方は知識不足が祟って「そうなんだ?」と納得するしかなかったのがちょっと残念でした。

        【http://futekikansou.blog.shinobi.jp/Entry/122/】
        に感想をアップしています(2010年8月のものです)
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        2013/10/30 by hrg_knm

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      GREEN(1) (講談社コミックスキス (263巻))

      二ノ宮 知子

      3.0
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      • 結構面白い。2巻目読みたい!!

        2017/03/12 by ふみえ

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      魁!!男塾

      宮下あきら

      集英社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.0
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      • 名作ですね~。剣桃太郎サイコー!

        驚邏大四凶殺(きょうらだいよんきょうさつ)とか、オドロオドロしい漢字といい独自の世界観が堪りません。

        アニメ版では一世風靡SEPIAの曲がマッチ!

        実写映画版はネタの宝庫!
        富樫源次役の照英が素で違和感無いのが大爆笑でした。

        ああまた読みたくなって来た!!
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        2012/04/19 by yutaka

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      機動警察パトレイバー

      ゆうきまさみ

      小学館
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.0
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      • 友達から貰った本。
        名前だけは知ってしたけど…こうゆう本だったんだぁ\(◎o◎)/
        警察庁機械化(ロボット)部隊"パトレイバー"のお話。 >> 続きを読む

        2012/06/23 by あんコ

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      この国のかたち

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      3.0
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      • 終わってしまった。と言ってももう20年近く前のことなのだが。

        最後は歴史のなかの海軍の話。
        ペリーが浦賀にやってきてからの国内での海軍をめぐるあれやこれや。
        「坂の上の雲」とか「龍馬がゆく」とか読んでるともっと理解が深まるかと。

        全六巻読んで、司馬さんの随筆は非常に読み易くて良かったなぁという感想なので、次は「街道をゆく」にしようかなと。

        まだまだしばらく楽しめそうだ。
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        2014/02/28 by freaks004

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      陰陽師鬼一法眼〈1之巻〉 (カッパ・ノベルス)

      藤木 稟

      3.0
      いいね!
      • 藤木稟さんによる伝奇小説。
        朱雀十五の事件簿とバチカン奇跡調査官の間くらいに刊行されていた本らしい。
        「そんなもの誰が知るか」「知ってなんの得があるのか」と言いたくなるようなウンチクがたくさん盛り込まれているという点は朱雀十五シリーズやバチカンシリーズと同じだが、藤木稟さんの作品にしては文字が大きくページ数が少ない。

        また女性キャラが多く、男女の濡場があり、BL要素も皆無なので、バチカンシリーズしか読んだことのない読者はかなり戸惑うかもしれない。

        個人的には作品よりも若い頃(といってもアラフォーだが)の著者によるあとがきに目がいった。
        堅苦しい人柄なのかと思いきや、よく言えばハイテンションで気さく、悪く言えば女子小中学生が書いたような文体で書かれており、露出の少ない藤木さんの人となりを知ることが出来る。
        因みにこの巻のあとがきによると、藤木さんは大酒飲みなので夕方以降仕事が出来ず、結果として朝型人間という作家としては珍しい生活をしているとのこと。
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        2017/06/09 by kikima

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      (裏)アルバイトニュース 知りたかったバイトの実態・条件・給与etc…のホントのトコロ

      アルバイト向上委員会

      永岡書店
      カテゴリー:労働経済、労働問題
      3.0
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      • 内職から怪しくて危険な高額バイトまで。

        アルバイトとは言え、様々な職業を疑似体験できるのは有意義。

        タイトルに「裏」という字が含まれているため、怪しくて危険な高額バイトを扱ったものだろうと想定したが、ごく普通のものも含めて幅広くアルバイトが紹介されている。

        これだけ多くのパターンが有るため、どれか心惹かれるものが有って当然のように思うのだが、全く他人事としてしか感じられなかった。

        おそらく本業の内容にも待遇にも不満が無いため、アルバイトというもの自体に必要性を感じていないのだと気付いた。

        とは言え、年齢を重ね、背負うものが大きくなるに連れて、現状維持の守備的思考が強まっているのを感じる。

        若くして老害とならぬよう意識して思考の柔軟性を維持したい。
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        2012/07/14 by ice

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      どうぶつたちへのレクイエム

      児玉 小枝

      5.0
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      • 保健所で殺処分された犬や猫たちの「遺影」

        写真が全て白黒のため、もともと重い印象を受ける上に、殺処分「された」犬、猫たちの姿である事を思うと、さらにズシリ、と「重さ」を感じる。
        なにより、犬、猫たちの悲しそうな目がつきささる。

        いっそ、人間を憎む目つきで睨みつけてくれた方が、まだ写真を見るのが楽だったかもしれない。

        1995年度時点で殺処分された犬は41万4506匹、猫は30万7626匹。
        (ちなみに本書は2000年に刊行されている。)

        その後、殺処分は減り、譲渡数が増える方向に向かっているが、それでも、2012年で犬は3万8000匹、猫は12万3400匹が殺処分されている。
        (環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室 HPより
        http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html)

        殺処分に関しては、俄か知識しかないが、問題は殺処分というシステムそのものではないらしい。

        ペットショップに行けば、簡単にペットを買える一方で、飼いきれなくなった場合、あまりに簡単に保健所に持ち込む事ができる。
        (制度上、保健所はペットの引き取りを拒む事ができないので、保健所を責めるのは、お門違い。)

        手に入れる時も簡単ならば、捨てる時も簡単。
        捨てる人にも、いろいろ事情はあるだろうが、あまりに簡単に保健所行き(=殺処分)を選んでないだろうか。

        ただ、それ以上に殺される犬猫がいる一方で、人気の種類を「供給」する体制が存在するのと、飼えるか、ろくに検討しないままに求める「需要」があるのが問題のようだ。
        こうなると、どちらから手をつければいいのか分からなくなる。

        殺処分を減らせる制度を整えていく、と同時に、需要側への地道な啓蒙活動くらいしか無いのだろうか。

        啓蒙活動と言えば、テレビでは、ペットの「かわいさ」を強調する番組はあるが、殺処分のような問題を見せるようなものは、ほとんど見ない。
        視聴率が取れないからだろうが、ペットの良さを強調するなら、その「闇」も晒すのが、本来の役目ではないか、と思う。
        ちなみに、ペットの雑誌など、映像メディア以外は、どんな状態なのだろう。

        よく言われる言葉だが、正にその通りだと思う。
        「ダメな犬(猫、その他ペット)はいない。
         ダメな飼い主がいるだけだ。」
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        2014/12/21 by Tucker

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      100曲CD付きもう一度学びたいクラシック

      西村理

      西東社
      カテゴリー:音楽
      3.0
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      • この本は、クラシックを作曲家を中心に紹介する類書と異なり、歴史的に学べるようになっている。 >> 続きを読む

        2012/11/25 by togusa

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      お金-ウラの裏の世界 ウラの裏の世界 (王様文庫)

      リサーチ21

      三笠書房
      カテゴリー:貨幣、通貨
      3.0
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      • お金に関するTips集。

        興味深い大量のTipsが飽きさせない。

        お金に対する、疑問に思ったことも無いこと。
        知っていそうで知らないことなどが大量に紹介されている。

        ・社内預金、会社が倒産したらどうなる?。
        ・外科医、名医も新米も同じ料金?
        ・食べ放題、どんな大食漢も簡単に元を取れない、その仕組み?

        それぞれ納得させられたり驚いたりと、意外に勉強になる。
        このアプローチなら「お金」以外でも面白い作品になると思う。

        値段というものには理由が有ると再認識させられた。
        >> 続きを読む

        2013/10/03 by ice

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