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松井紀子
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とてもわかりやすい絵本です。『じどうしゃ ぶーぶーぶー』『ねこ にゃんにゃんにゃん』身近な言葉が赤ちゃん言葉と共に。こちらも月齢低いうちから重宝しています。めくりやすいし、持ち運びもしやすいし。『みず じゃーじゃーじゃー』と言葉に出しながら娘の手を洗ったり、『そうじき ぶいーんぶいーん』と掃除機かけたりしていました。わかりやすいので私自身も覚えやすく、車の移動のときによく声に出しています。退屈してそうなときとか。ファーストブックにぴったりです。 >> 続きを読む
2019/12/05 by あすか
宮部みゆき
この宮部みゆきの「R.P.G.」は、著者の初の文庫オリジナル長編。表題の意味は、ロール・プレーイング・ゲームの略。建売住宅の工事現場で発見された男は、ネット上で疑似家族の「お父さん」を演じていた。その数日前、男の「友人」である女子大生が、何者かに殺されており、二つの事件は同一犯人によるものと判断した警察は、父親が不審人物と接触していたことを目撃したという娘の証言を基に、疑似家族のメンバーを呼んで、面通しをすることになったのだが-------。昔ながらの、お互いを気遣いあう関係や、現代に特有といえそうな、荒廃した関係など、「理由」でさまざまな家族の形を描いた宮部みゆきは、この作品で、二つの関係のありようを拮抗させ、我々読み手を意外な結末へと導いていく。「模倣犯」に登場した武上悦郎と、「クロスファイア」に登場した石津ちえ子が共演し、ほぼ取調室でのみ展開する物語は、まるで舞台劇のような印象で、アガサ・クリスティー的世界を連想させる。この作品は、現代の語り部たる宮部みゆきの語りの技巧が、素晴らしい冴えを見せる秀作だと思いますね。 >> 続きを読む
2018/10/06 by dreamer
恩田陸
ドミノin上海を読んだ後だったので、1作目を久々に読了。28人の登場人物たちが東京駅及び、その周辺で様々に絡み合う。時にコメディであり、時にサスペンスある展開。多くが出るが混乱しないところは見事な書き分けだし、基本コミカルなので楽しく見られる。バイク便や子役などが実に破天荒だし、警察OBやテロリストたちも個性豊か。袋の中身が二転三転しての顛末も。ラストの別のドミノが倒れる結末は結局描かれなかったわけだが、そういうのを想像するのも楽しい終わり方。 >> 続きを読む
2020/06/15 by オーウェン
高野和明
今回読了したのは、高野和明の第47回江戸川乱歩賞受賞作の「13階段」。この「13階段」は、同名のタイトルで、反町隆史と山崎努の主演で映画化され大ヒットしたので、多くの人が知っている作品だと思う。冤罪でもあるかもしれない死刑囚の無実を晴らすため、刑務官の南郷と傷害致死事件を起こし仮釈放中の青年・三上が、謎の依頼人からの要請を受けて、調査を開始する。死刑執行まで約三か月。それまでに二人は、冤罪を晴らすことができるのか?-------。というのが「13階段」のプロットだ。この死刑執行までのタイムリミット内に無罪の人間の冤罪を晴らすというプロットは、ウィリアム・アイリッシュの傑作「幻の女」や「暁の死線」と同じ趣向なんですね。だが、この「13階段」は、とてもリアルだ。生々しいと言ってもいいと思う。死刑囚が刑を執行される時の描写、刑場の描写、そして刑務官が死刑執行に立ち会う描写、どれもリアルでドキュメンタリーを読んでいるかのような錯覚に陥ってしまうほどだ。とにかく、一つ一つを丹念に、そして丁寧に描く筆致が凄すぎて、生理的嫌悪感を感じずにはいられなくなるのだ。しかも、作者の筆は停滞を許さない。常に動いている。登場人物がいつも考えるか、動いているのだ。だから、重い内容の部分でもページを繰る手が止まらない。また、この作品はミステリとしても一級品の味わいがあり、謎の依頼者がなぜ高い報酬を払ってまで他人の冤罪を晴らそうとしたのか?本当にその人物は無罪なのか? そして、真犯人はいるのか?-------。こういった謎が、ラストでスッキリ解き明かされる。その真相も意外や意外。こう来るとは思いませんでしたね。ネタバレになるので、詳しくは言えませんが、"動機"にも、正直びっくりしましたね。それでいて無理がないんですね。そして、ラストの余韻たっぷりのシーンが実にいいんですね。 >> 続きを読む
2018/06/19 by dreamer
牛山隆信
たまには毛色の違う本を読もうと読んだ。私も、電車で色々なところを巡るのが好きだが、こういった秘境駅といった場所は行ったことがなかったので、このような世界もあるのかと新鮮だった。運よく、本書でも秘境駅が多いとされている北海道に住んでいるので、この夏にでも、秘境駅の一つにでも行ってみようかと思った。 >> 続きを読む
2018/04/29 by shinshi
「三月は深き紅の淵を」を、不思議な気持ちで読了しました。最初から最後まで作者に翻弄されたかのような感覚です。会社の若手社員が会長の別宅に招待され、そこで本好きの人たちから聞かされたのは、「三月は深き紅の淵を」という稀覯本。たった一人にだけ、たった一晩だけ貸し出すことが許された本とは、どのようなものなのか。それが第一章の内容です。第一章、第二章、第三章…と進むにつれ明らかになるのが普通のストーリーですが、「三月は深き紅の淵を」とは何なのだ、という疑問に全く答えてくれません。それどころか、様々な形に変化していくややこしさ。もやもやするようで好奇心が刺激される、本好きにはたまらない構造となっています。好きです。複雑さを感じたのは、外側からの「三月は深き紅の淵を」四部作と、作中の四部作が異なっている点です。第一章 待っている人々第二章 出雲夜想曲第三章 虹と雲と鳥と第四章 回転木馬第一部 黒と茶の幻想第二部 冬の湖第三部 アイネ・クライネ・ナハトムジーク第四部 鳩笛第一章で作品の存在を否定しておきながら、第二章では実際に存在しているものとして書かれています。また第四章のキャラクターはシリーズ化していますし、作中書き始めた「黒と茶の幻想」は恩田さんの作品リストにあります。ややこしい!個人的には第三章の異母姉妹の話が好きでした。手探りで進んでいき、明らかになった真相が哀しくも美しさを感じました。さて。理瀬に会いに、「麦の海に沈む果実」を入手してこようと思います。dreamerさんのおかげで今後の楽しみができました。ご紹介ありがとうございました! >> 続きを読む
2020/10/19 by あすか
乙一
切なさと怖さ、そして戸惑い。揺れ動く心と話の進み方が面白い。
2014/01/16 by Rie
佐々木譲
佐々木譲の第21回新田次郎文学賞受賞作「武揚伝」(上・下巻)を読了しました。歴史のヒーローたちの物語は、いつでも読み手の心を熱くさせるものです。今回そこに加わったのは、榎本武揚の物語だ。榎本武揚は、江戸幕臣の子として生まれ、幕末期の長崎の海軍伝習所に入り、維新の動乱の中でオランダに留学し、機関・造船・操船術を学んでいる。もともと関心があったのは、科学技術だった。この幕末の留学生の生態が、とても興味深く描かれていると思う。彼が学んだのは技術ばかりではなく、当然、戦術も学んでいる。そして、帰朝して幕府の海軍の中心的存在となっていく。戊辰戦争の時、官軍に抗して開陽丸をはじめとする艦隊を率いて脱走、箱館に渡った。榎本武揚が外国で学んだものには、さらに国際法がある。また、共和政体に対する関心がことさら深く、箱館の地で「蝦夷ガ島自治州」を作り、選挙によってその総裁となり、諸外国にこれを政権として承認させたんですね。この幻の共和国の実態、特に外国との互いに腹に一物持っての交渉が、非常に面白い。結局、敗北して箱館五稜郭が滅び、官軍に降伏する三十三歳の頃までが「武揚伝」上下二冊の内容になっているが、実際の武揚は、七十二歳まで生存し、明治政府に出仕し諸大臣を歴任している。榎本武揚の写真を見ると、そこにはとても日本人とは思われないような人物が写っている。司馬遼太郎によると、オランダ留学中に、彼はスペイン人に違いないと思われていたそうだ。顔だけではなく、精神が当時の日本人からは大きく離れていたのだと思う。むしろ現在の日本人、あるいは、これからの日本人に近いのかもしれない。日本の歴史小説は、今まで"日本人とは何か"ということを追求してきたが、榎本武揚のような人物を描くほどには成熟していなかったように思える。この人物は、明らかに過去よりは未来に属しているのではないかと思う。「武揚伝」が、伝記ではなく小説であることが、とてもいいと思う。この未来型の日本人を描くには、書き手の情熱が直接表に出る小説というスタイルこそ望ましいと思いますね。 >> 続きを読む
2018/08/12 by dreamer
北森鴻
北森鴻の「共犯マジック」は、メリーゴーラウンド方式の連作短篇集だが、名手・北森鴻の手にかかると、三億円事件もグリコ森永事件もみな木馬の一つにされてしまう。人の不幸のみを予言して自殺の連鎖を誘発した禁断の書「フォーチュンブック」が、その木馬の仕掛けであり、登場人物たちはこの本との遭遇によって、運命の糸に搦めとられ犯罪に手を染め、心ならずも昭和という時代を彩った社会的な大事件の主役・脇役を演じることになる。どう搦めとられていたかは、張り巡らされた伏線が最終話で一挙に回収され、彼らの人生が一点に収束して明かされる訳だが、横須賀線事故以外はすべてが繋がってくる。運命に操られるように、若者も中年もいとも簡単にキレ、しかも執拗に執念深くなる。著者は脱出口を一つ用意していて、「さよなら神様」の真理子だけが、もう深く考えまいと心に決めることで、運命の糸から抜け出し、小さな幸せの場を確保する。著者がリアルタイムで知らない帝銀事件だけが、ちょっと浮いて見えるのは致し方ないが、「共犯マジック」は単純な連作ミステリの枠に収まり切らない異色作になっていると思う。それにつけても、北森鴻の早逝が惜しまれる。 >> 続きを読む
2019/01/29 by dreamer
榊原晃三 , モーリス・ルブラン
モーリス・ルブラン作の本を読むのは今回で初めて。昔から語り継がれているだけあり、面白かったです。ルパン三世しか知らなかった私には、ルパンの一世がいることを知ることから大発見でした。 >> 続きを読む
2017/04/28 by SM-CaRDes
夢枕獏 , 天野喜孝
夢枕獏先生は昔、エロ+バイオレンスで売ってたんですね。この本は昔みたいなエロ+バイオレンスを全面に出そうとして書かれたそうです。さらにそこに平安時代の要素と天野喜孝先生のアートも加えてあります。と言っても2001年の本なので中古本です。でも時代小説ですので全然気になりません。戦国時代のように新たな史実が発見されることもあまりないようですし。全部で三篇収録されてます。一篇目は狐に憑かれた姫を助けた僧侶はその姫に惚れてしまい、自身の神通力も失い鬼になってしまう。鬼となった僧侶と姫は人目も憚らず体を重ねる…そこへ別の僧侶が呼ばれ、鬼になった僧侶を見て泣く。なぜ泣くかと言うと「自分は修行ばかりして女を知らない。女とやりたい放題やってるあなたの姿を見て羨ましくなり…」とまさかの発言。鬼はそれを聞くと姿を消す。二篇目は鬼から女をもらったが100日間は手をつけてはいけないと言われた男が、あと僅かと言うところで手をつける。無論女は消えてしまうが、男は人生で一番良い歌を読み鬼を感動させる。三篇目は地獄で閻魔大王の手伝いをしたと言われる実在の人物、小野篁のお話。小野篁が義理の妹と関係を持ってしまう。妹は病気で死に、妹とモウイチド会うために地獄へ行く。それが小野篁が地獄へ行くきっかけだったというお話。個人的には一篇目が天野先生の画も含めて一番面白かった。 >> 続きを読む
2018/10/14 by beppinudon
SchulzCharles M , 谷川俊太郎 , 星野裕子
PEANUTSを引用して、ほしのゆうこさんの素敵な言葉と解釈がまとめられた1冊。読み終わった後には、人生って素敵だよなあ。とちょっと恥ずかしいことを改めて教えてくれます。どうぞ、今晩のお供にいかがですか? >> 続きを読む
2015/06/25 by kaho
佐竹美保 , 上橋菜穂子
今回はチャグムの話。バルサはチャグムの思い出の中にだけ出てきます。 前半は舞台背景、布石なのでゆっくり理解しながら読みます。そして、後半は、チャグム、シュガ、サルーナ王女たちに目が離せなくなります。 それにしても、チャグムはいい皇太子に成長したね。 国を守るとは?人を道具としてみることのできるカリーナ王女・・「はるかな世界。・・・人の世は、そんな壮大なめぐりをを感じることもなく、人を動かしのみこんでいく。陰謀をめぐらし、戦をおこし・・・小さな人の命など、みすててもしかたのないこと、と思わせててしまう。(人はなぜ・・・・・こんなふうにしか生きられないのだろう。)」 「人とは、ふしぎな生き物だと思ったのだ。自分をはぐくんでくれる世界が、どんなふうにめぐっているのかに、まるで無関心だ。もっぱら頭にあるのは、こういう・・・人と人のかかわりや、国と国とのかけひきだ」 「国のために生きよ、という。それがなにより大事なことだと。・・・ほんとうにそれでいいのだろうか?」チャグムは自分自身に問う。国のため?一人ひとりの命の方が重いのでは? 「わたしは殿下に誓いましたから。陰謀を知りながら、だれかを見殺しにするようなことは、けっしてさせぬと。・・・・清い、輝く魂を身に秘めたままで、まつりごとをおこなえる方がいることを、わたしは信じます。」シュガさん、私も信じます。 「いつか、新ヨゴ皇国を、兵士が駒のように死なない国に・・・・・わたしが、うす布などかぶらずに、民とむきあえる国にしたいと思う」そうだ、チャグム。あなたなら、きっとできるよ! アルジェリア事件。テロをつぶす為に犠牲になった人たちがいる事実・・・ 何とかならなかったのかなあ。 >> 続きを読む
2013/01/24 by バカボン
清少納言 , 角川書店
源氏物語はだいたいどのようなものか分かっているが、枕草子のことをまったくといっていいほど知らなかったので読んでみた。とても面白かった。1000年前も現在も人の心理は変わっていないんだなぁととても感慨深かった。そして清少納言がすごく人間らしく好きだと思った。ある子供が清少納言の物を壊しても、微笑みながら叱る親について、「憎い、しっかり注意したいけど親の前だし注意できない。」と書いているのがとても面白い。現代人だからこそそういう問題があるのかと思えば、1000年前にも同じようなことがあったんだなぁと思った。そんな日常生活を綴った微笑ましい書物なんだとおもった。 >> 続きを読む
2015/05/13 by snoopo
松尾芭蕉 , 角川書店
松尾芭蕉は、1689年に江戸を発ち、奥州と北陸を巡る旅にでました。現在の地名で言うと、東京、埼玉、栃木、福島、宮城、秋田、山形、新潟、富山、石川、福井となるでしょうか。この旅を徒歩でこなすとは、持病持ちの芭蕉の気力の程が伺えます。 『おくのほそ道』は、旅を記録した書物であると同時に、旅の中で出会う様々な興趣によって、芭蕉が自らの詩魂を成熟させていく過程を克明に描き出した書物でもあります。自らの身体を世界に飛び込ませ、自らが対峙した広大な世界を、17音に凝縮させていく。彼の句が独りよがりに終わらなかった理由は、そのあたりにあるのかもしれません。 旅の内容すべてについては書き記す余裕がないですから、特に気になった点のみを以下に列挙していきたいと思います。 ①心に残った一句 個人的に最も印象に残った句は、越後(現在の新潟県)で詠まれた句。芭蕉は、疲労がたまってきていると正直に吐露しながら、「荒海や佐渡によこたふ天河」の句を越後でしたためました。荒海(日本海)と天の川、芭蕉と佐渡島の対比が、世界の広大さを実感させる傑作ではないでしょうか。彦星と織姫の伝説を思い起こすと、芭蕉が彦星で、佐渡島が織姫という解釈もできるかもしれません。荒海という語が入っているのに、どことなく静謐な雰囲気をまとっているのも不思議です。星の光が、海をなだめてくれたのでしょうか。 ②文章の動感 紀行文ときくと、旅先のあれこれを気の赴くまま書き綴るといったイメージが浮かびます。ですが『おくのほそ道』は、旅が終わった後に清書されたこともあってか、なかなか堅固な構成をしています。冒頭の旅立ちには「春」を読み込んだ句を配置し、終盤の旅の終わりには「秋」を読み込んだ配置をしています。それらの間を挟むかのように、旅の道中の記述は、名所旧跡に感動する「動」の部分と、旅の模様を淡々と記す「静」の部分とを整然と並べているのです。『おくのほそ道』自体が、1つの句なのかもしれないですね。③過去の和歌と漢詩の堆積 俳句はもちろんのこと、景観や名所旧跡の描写には過去の和歌や漢詩を参考にしています。それらを踏まえた上で、芭蕉が文章と俳句を構築していくところに、『おくのほそ道』の妙味があります。④武士への眼差し 芭蕉は実家が下級武士の出身のためか、過去の武将や武将に関する旧跡に対する熱意が強いように思えます。特に源氏と平氏に対しては、並々ならぬ関心があったようです。死んでいった武士たちに、無常と寂寥を覚えたのでしょうか。ただ、同時代の徳川家について言及した箇所がないのは、ちょっと気になりますね。 ⑤芭蕉の理念 芭蕉はこの旅のあとに、不易流行と風雅の誠という理念を明確に意識し始めたようです。不易流行は、変わらずして変わることを意味し、俳諧の理想を常に根底に置きながらも軽妙に姿を変えていくことの重要性を説きました。そして、不易流行の実践によって得られる俳諧の極地を、風雅の誠という言葉で表現したのです。⑥終わらない旅 芭蕉は『おくのほそ道』の旅のあと、また次の旅(伊勢)に向かっています。彼は行動の人でした。旅を人生とした芭蕉にとっては、旅路を行くことが俳句の制作の一部になっていたのです。その意味において、芭蕉の旅に終わりはありませんでした。彼が死んだ後も、彼の残した俳句は「旅」を続け、後世の人々に影響を与え続けています。そういえば、芭蕉の辞世の句は「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」でした。あの世でも芭蕉は旅をしているのかも…なーんてロマンティック過ぎる解釈ですよね。 さて、個人的に指摘したかったことは以上です。本書では、原文に加えて、現代語訳、解説、コラムが付されています。現代語訳は補足説明を多く挿入してくれているため、『おくのほそ道』初心者でも安心です。コラムでは、芭蕉の仮名と漢字の使い分けへの意識、意外に潤沢な旅費、同行者の曽良の経歴、役行者、遊行柳、遁世の意味、芭蕉が参照した過去の和歌や歌人、過去の武将たちへの追慕、芭蕉忍者説、みちのくの自然、俳句のグローバル化、不易流行と風雅の誠、芭蕉と親族の関係、食と芭蕉などが簡潔に説明されています。気になった方は、是非ご一読を。 ちなみに、本文だけではイメージが湧きにくい場合は、NHKが過去に制作した番組(「奥の細道をゆく」)やGoogleの画像検索を利用してみてください。ビジュアルの情報があると、『おくのほそ道』をよりよく理解できるにちがいありません。まぁ、一番良いのは実際に現地に赴くことなのでしょうが、旅する時間的余裕も経済的余裕もなかなかないものですからね。各々に適した「旅」をすればよいのではないでしょうか。 >> 続きを読む
2015/02/11 by ゆうぁ
枡野浩一
続いて、枡野浩一さんの歌集。初版は、枡野さん29歳の時。全体に、重たい、気の病んでいるような、世の中に馴染んでいない。そんな毎日の様子が、歌に、にじんでくる。従って、お気に入りの歌も、たった四つ。前向きになれと言われて前向きになれるのならば悩みはしない野茂がもし世界のNOMOになろうとも君や私の手柄ではないもっともなご意見ですがそのことをあなた様には言われたくないかなしみはだれのものでもありがちであふれていておもしろくない打ってみて初めて気づく語尾の・・・・・ないすべてを否定、気づきましたよ。 >> 続きを読む
2017/12/05 by ごまめ
時雨沢 恵一
印象に残ったのは弱い立場の人をいじめた報いは自分に返ってくると思った第3章「二人の国」、弱い立場の人を救ったのに報われなくて辛いなと思った第9章の「たかられた話」。あと第5章の「仕事は遊びほど疲れるものではない。遊び疲れた夕方より仕事を終えた夕方の方が清々しい」の言葉には同感だなと思った。仕事が好きというわけではないが、何かをやってこそ趣味などの時間が有意義になると考える自分の意見に合う言葉だなと読みながら考えた。感想はこんなところです。 >> 続きを読む
2016/11/19 by おにけん
戸梶圭太
戸梶圭太が描く爆笑"激安犯罪小説"の「なぎら☆ツイスター」を読了。この小説は、北関東の田舎の、すべてが終わって死にかけている町が舞台で、そこに都会のインテリヤクザが乗り込んで行く話だ。とにかく、主人公以外はどうしようもない奴ばかりで、そのどうしようもなさと、東京近郊の田舎の精神性みたいなものが、たいへん愉快に戯画化されている。この小説は、"巻き込まれ加害者型小説"という感じで、その嚆矢となるスコット・B・スミスの「シンプル・プラン」と同じタイプでも、もう少しストーリー性を重視したライトな感覚なんですね。この手の巻き込まれ型加害者小説というのは、それ自体がひとつのプロットになっていて、そこに人間の心理なり背景なり、何らかの意味を作家がプラスしていって、小説というのは出来上がると思う。実はそこに、作家性が出てくるわけですが、著者の戸梶圭太の斬新さは、そこに何もつけないで、核だけ放り出したことだと思うんですね。ひとつは、実際に日々起きているTVのワイドショー的な事件を見てみると、ノワール的な"人間の心の闇"とか、"現代社会の歪み"とか、そういう問題とは一切関係ないのが多い。被害者も犯人も何も考えていない。それを著者は、"激安犯罪"と呼ぶのですが、現実にはむしろ、そういう何の深みも内面もない犯罪の方が普通じゃないか、と。とにかく、加害者も安いし被害者も安い、舞台から何から全部安っぽい感じがする。そういう犯罪の方が、実は多いという-----。ところが、小説のミステリでは、密室殺人みたいな、もの凄く頭のいい犯罪者の話か、そうでなければ、やむにやまれず人を殺してしまったことで生じる苦悩とか後悔とか、はたまた、どうやって逃げ延びようようみたいなハラハラ、ドキドキとかを描く話かのどちらかなんですね。つまり、大きく分けると、人工的な本格ミステリか、社会派的なリアリズムか、ふたつにひとつだと。でもそういう、プラス・アルファみたいなものは、現実にはない。だから、小説にもなくていいというのが、戸梶圭太の小説観のような気がするんですね。それを書いても小説にならないというのが、伝統的な小説観でしたが、戸梶圭太はバカな奴をバカなまま書いて、面白い小説になるということを証明したのだと思う。 >> 続きを読む
2018/12/28 by dreamer
米原万里
【1960年代にプラハのソビエト学校で机を並べた3人の個性的な同級生たちのその後を通して、現代東欧民衆史を鮮やかに切り出してみせる名エッセイ。「アーニャの嘘」に隠された真実を追う過程は、北村薫のミステリーを読むような高揚感と、真実の持つ悲しさとを味わわせてくれる】他の読者の高い書評どおりの作品。 ほとんど知らなかったけれど、中・東欧で民族闘争の中で生きている人たちがいる。 なぜ民族や宗教に執着してしまうのか。自由で平和な(一応。中には執着したい人もいるみたいだけど)島国日本で育った私には難しい。 同じ命ある人間同士なのに・・・ どうして互いに慈しみ仲よくできないのか・・・ どうして不幸への道を選ぶのだろう・・・ >> 続きを読む
2013/01/14 by バカボン
篠田真由美
名門ホテルで内紛が持ち上がり、創業者の娘である老女が住む館をめぐり骨肉の争いが怒ってしまう。京介は百年にわたる秘密に迫れるのか――。建築探偵シリーズの3巻目になります。今回スポットがあたるのは「碧水閣」。奇妙な館に秘められた謎を解き明かします。物語の本筋とは関係ないところで、主要登場人物である蒼の過去が仄めかされていてそちらに気をとられてしまいました(笑)【http://futekikansou.blog.shinobi.jp/Entry/250/】に感想をアップしています(2010年12月のものです) >> 続きを読む
2014/04/09 by hrg_knm
出版年月 - 2001年7月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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