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2001年9月発行の書籍

人気の作品

      不幸な子供

      エドワード・ゴーリー , 柴田元幸

      河出書房新社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.1
      いいね!
      • 話題になってると言うので読んでみた。なんとも救いようのない話。

        2020/05/30 by hiro2

    • 他6人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      遠い山なみの光

      小野寺健 , カズオ・イシグロ

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! KEMURINO
      • 【息苦しい……でも、カフカ的とは感じなかった】
         カズオ・イシグロの作品は、これまでにいくつか読んできましたが、どうやら本作は、『浮世の画家』、『日の名残り』と並んで、それまでの幻想的な作風からリアリズム的な作風に変わった時期のもののようです。
         確かに、私がこれまでに読んできたカズオ・イシグロの作品とは全く違っていました。

         ですから、読み進めていくうちに違和感を覚え、また、これは一体どういう話なのだろうかと面食らってしまったのです。

         物語は第二次世界大戦終戦直後の長崎を舞台にしたパートと、その後、主人公の悦子が渡英した後のパートの2つが交互に語られていきます。
         主人公の悦子は、日本人男性と結婚し、終戦後間もない長崎で、お腹の中に子供を抱えて生活していました。

         長崎は、ようやく復興の兆しが見え始めたものの、未だ完全には立ち直っていませんでした。
         悦子の家の近くの、川近くに建つ相当粗末な家には、佐知子とその娘の万里子が二人だけで生活していたのです。

         佐知子は、どうにも身勝手というか無計画というか、ある意味で自堕落というか……。
         今では落ちぶれているけれど、昔はかなり裕福だったのだと事あるごとに悦子に吹聴します。
         子供の万里子に対してはあまり目をかけてやっていないようでもあり、少々ネグレクトではないかと。
         子供を家に置いたまま、長崎の街に外国人の愛人と会いに出かけたり平気でしています。
         それでも、佐知子は生活のために悦子の紹介でうどん屋で働くなどもするのですが、その一方で、何度騙されても外国人の男と別れられず、必ずアメリカに連れて行ってもらうのだと夢見ています。
         足が地についていないのですよね。
         悦子に対しては平気で借金を申し込むようなところもあるし。
         一方の悦子は、我慢強く、おとなしい女性に描かれています。
         
         この物語は、悦子が既にイギリスに渡ってしばらくした後の時から始まります。
         長崎時代、お腹の中にいた子供の景子は、イギリスで首を吊って自殺してしまったのです。
         その後に生まれた景子の妹であるニキ(現在は親と離れてロンドンで一人暮らしをしています)が、葬儀に出席するために母親の元に戻ってきたところから始まるのです。

         イギリスでの悦子とニキの会話、その過程で長崎時代の事を思い出し、その頃のこととして描写される佐知子と万里子のこと、悦子夫婦の家に遊びに来ていた義父のこと、そんな日常的な風景が描かれていきます。

         それは、なんて言うのでしょう、何だか他人の私生活を覗き見ているようなところもあり、私には決して居心地の良いものではありませんでした。
         それは決して幸せな描写ではなく、敗戦後の貧しさも描かれますし、人間の負の気持ちも描かれていて、読んでいて息苦しくなるようなものでした。

         かといって、それが何か大きな事件につながり発展していくという作品でもなく、ただ淡々とそれらのことが語られ、唐突に現在のイギリスでの悦子の生活に飛んでいくのです。
         巻末解説では、このような作風を『薄明の世界』と評していますが、そうかもしれません。
         特に、中心をなしている長崎時代の描写は、淡い、薄墨のような、それでいて戦争の影や、古い時代と新しい時代の相克を引きずっているような描写になっています。

        ご存知の通り、カズオ・イシグロは、長崎県で生まれ、5歳の時にイギリスに渡り、以後、英国籍を取得して英語を母国語として小説を書くようになったわけですが、本作は、何か作者の私小説的な感じもしてしまいました。

         ちなみに、リードで書いた『カフカ的云々』という点ですが、これは巻末解説で、本作を含めたいくつかの作品について「カフカ的という形容は誰にでも思いつくだろう」と書かれていた点についての私なりの感想です。
         私は、本作を『カフカ的』とは全く感じなかったものですから。
        >> 続きを読む

        2019/11/26 by ef177

    • 他3人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      鉄鼠の檻

      京極夏彦

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね!
      • 憑き物を落とす、

        というのがこの京極堂シリーズのテーマ。


        憑いているものが落ちると、ハラリと世界が開ける。
        怯えや萎縮や強がりや衒いなどが無くなり、泰然自若と世界に溶け込める。


        分かるような気がする。
        自分も5-6年ほど前に一度人生観を見直すことがあった。

        それ以前は、まだ社会の新参だったこともあるのだろうが、やはり、憑りつかれていたように思う。

        善く生きる
        成長が大事
        前に倒れるべし
        汗をかけ
        アンテナを広く
        謙虚に
        慮って
        謙って
        器用に
        最善を尽くす
        一級品を
        一軍で
        誇り高く


        なんだか、今では上手く書けないのだけれど、
        こういうような概念に囚われて、心底息苦しかった。

        これらのテーゼが勿論間違っているとか自分に無かったというわけではなく、ただ、脅迫観念として迫られていて、しかしそれに気づかずに、とにかくそれらが軽率な自己否定や不遜な他者否定となり、グルグルぐるぐるした気持ちに憑りつかれていた。

        のだと思う。


        パコーンと鈍器で頭を殴られるような形で、ぼーっと自分の人生観を問い直した日々があり、その期間そのものは物理的には短いのだけれど、これが契機で「憑き物」が自分から落ちた。



        あれ以降、自分でも驚くほどリラックスして生きられている。
        あれ以降、あの傲岸不遜で自分本位な父に、あの父によく似てきた、と人に言われることが増えたように思う。
        あれ以降、胃痛も無くなった。


        この作品では、小悟とか大悟とかが出てくるのだけれど、禅問答の類はよくピンと来ないものの、そこで描かれる晴れ晴れとした心境だけは、なんとなくわかるように思う。

        境内の結界が、檻となって鉄鼠(お坊さん)を閉じ込めて苦しませていた、という話なのだが、
        そう考えると自分にとっては、東京というものが檻だったのかもしれない。


        この作品そのものはそこそこだったけれど、相変わらず知的好奇心は満たしてくれるし、考えさせてくれる。
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        2017/08/19 by フッフール

    • 他2人がレビュー登録、 25人が本棚登録しています
      ピューと吹く!ジャガー

      うすた京介

      集英社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.5
      いいね!
      • 好きです。
        ギャグ漫画は個人の好みがあるので、合う合わないが大きいと思いますが、この漫画は私に見事にはまりました。
        シュールでナンセンスなのですが、それだけでは説明が出来ない独特の世界観が好きです。
        ハマー最高っ!!
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        2014/09/28 by che_k

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      ミスティック・リバー (ハヤカワ・ノヴェルズ)

      デニス・レヘイン

      4.5
      いいね!
      • クリント・イーストウッドの映画版を見ていたので真相に驚きはしない。
        とはいえ原作はさらに詳細に人物たちの心情模様が描かれており、見応えがある。

        ジミーとショーンとデイヴの3人に近づいてきた警察らしき人物。
        デイヴだけがさらわれ4日後に解放されるが、明らかにおかしな状況。

        そこから25年後にジミーの娘が殺される事件が発生。
        担当する刑事はショーンであり、重要な容疑者としてデイヴが浮上する。

        事件の真相はもちろんだが、3人ともに苦悩する。
        さらわれたのが他の2人だったらや、対人関係についての悩み。
        結局事件が解決しても誰も幸せでないという重みが圧し掛かる。
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        2019/03/23 by オーウェン

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      建築屍材

      門前典之

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 第11回鮎川哲也賞受賞作、門前典之の「建築屍材」を読了。

        ビルの建築現場に侵入したホームレスが、三体のバラバラ死体を目撃するが、警察の徹底した捜査にもかかわらず、死体は現場から見つかることはなかった。

        行方不明となった家族の元には、切断された指が郵送されてくる。
        さらに、現場に侵入した不審人物の姿も目撃されるが、三人の証人の目の前で消失してしまったという。

        施工図製作の仕事をしている蜘蛛手が、三人の話に興味を持ち、相次ぐ消失事件の謎解きに取り組む姿勢を見せるが、しかし、奇怪な事件はさらに続くのだった。

        建築中のビルを舞台に跋扈する殺人者の狙いとは-------。

        建築中のビルの工事現場という魅力的な舞台を用意した点が、まず素晴らしい。
        このビルの工事現場に、屍体の各部位がナンバリングされて並んでいたのに密室状態で、それが消失したという、このとんでもない小説では、殺人者と屍体処分者の分離を通じて、動機の問題と屍体の"もの"性が、別個の意味を担っているんですね。

        建築現場だからこそ成立するトリックでなければ、ここで用いる意味がない。
        というわけで、自分に縛りを課した上で、ネタを披露しているのは、素晴らしいと思う。
        生乾きのセメントの上に残された足跡の謎などは、その典型ですね。

        そして、この小説の冒頭に、現場の図面が重ねて透かし見られるように添付されており、そこにも手掛かりが含まれているという趣向の徹底には恐れ入りますね。

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        2018/07/20 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      切り裂き魔ゴーレム

      池田栄一 , AckroydPeter

      白水社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 【既に絶版。ほとんど知られていない作品かもしれないけれど】
         物語の冒頭は、エリザベス・クリーの絞首刑の場面です。
         エリザベスは、夫のジョンを砒素により毒殺した罪により、ニューゲイト監獄で死刑を執行されるところでした。
         エリザベスは、死刑執行人によってかけられた目隠しをふりほどき、「またもや、まかり出ました!」と叫んで死んでいきました。

         本書は、ビクトリア朝後期のロンドンを舞台にした連続殺人事件を軸として、当時の風俗や人物を織り込んだ、すこぶるペダンティックな作品です。
         ロンドンの深い霧の中で、娼婦をはじめとして様々な人々が惨殺される連続殺人事件が発生しました。
         被害者の死体は鋭利な刃物で切り刻まれ、内臓は引きずり出されるという陰惨な状態です。
         こう書くと、当然『切り裂きジャック』を連想しますが、作中の年代設定はそれよりも約70数年前の出来事とされています。

         捜査は遅々として進まず、また、ある被害者の切り取られた陰茎が開かれた書物の上に置かれ、その位置にちょうど『ゴーレム』という文字があったことから、新聞はこぞって『殺人鬼ゴーレム』と書き立てたのです。

         ゴーレム……。
         それは、ユダヤのラビ(律法学者)が操る人造人間。
         土塊から作られ、額にemeth(真実)という文字を書き付けて命を吹き込まれます。
         そして、土塊に返す時には、その額の最初の文字のeを消せばmeth(死)になり、ゴーレムの命は消える……
         これは作中には書かれていませんが、元来ゴーレムとはそういうもの。
         様々な作品で扱われていますよね。
         幻想文学好きな方には必須の知識。
         そういうことを知って読む方が、数倍その作品の、作者の意図が鮮明になります。

         作中では、ある人物がゴーレムとして殺人を繰り返す様子が描かれますが、ゴーレムは、被害者の前に「またもや、まかり出ました!」と言って姿を現し、惨殺するのでした。

         死刑に処せられたエリザベスとはどういう女性だったのでしょうか?
         狂信的な母親に虐げられ、その母親とも死別した彼女は、憧れていたミュージック・ホールの下働きをするようになります。
         そして、段々女優としての頭角を現し、遂にはミュージック・ホールの花形女優に上り詰めたのでした。
         そして、当時時新聞記者で、将来は作家を志望していたジョンと知り合い、結婚します。
         ジョンは、莫大な遺産を相続したこともあり、新聞記者を辞めて執筆に専念するのですが、なかなか作品を仕上げられないでいました。

         エリザベスも、女優の仕事を辞め、そんなジョンを支えて何とか作品を完成させてあげようと努力していました。
         というのも、ジョンが執筆中の作品は、『ミザリー・ジャンクション』というタイトルの、まさにミュージック・ホールの芸人達を描いた作品であり、エリザベスはこの作品が完成した暁にはそれを舞台にかけ、自分が主役を演ずることを夢見ていたからでした。

         しかし、ジョンは砒素中毒により急死してしまいます。
         エリザベスは、ジョンに砒素を盛ったとして裁判にかけられますが、最後まで犯行を否認します。
         終油の秘蹟すら拒否します。
         「私は夫を殺してなんていません。ですがもし私がジョンを殺した理由が、ゴーレムを消したかったからだとしたらどう思われるのですか?」
         でも、結局、有罪判決を受け、死刑に処せられてしまうのですね。
         「またもや、まかり出ました!」と叫びながら。

         この作品は、当時のロンドンの貧民街であるイースト・エンドの風俗や、労働者を対象にして絶大な人気を誇ったミュージック・ホールの猥雑な様子、実在の人物である、カール・マルクスやコンピュータの生みの親チャールズ・バベッッジ、実在の俳優でチャップリンにも激賞されたというダン・リーノらを織り込みながら展開していきます。

         要所要所で出てくる「またもや、まかり出ました!」(この作品では何とおどろに響く言葉でしょう!)という台詞は、『道化の王様』と呼ばれ、作中でも少しだけ触れられる実在の俳優、ジョゼフ・グリマルディが舞台に登場する時の名台詞なのだそうです。
         このような、重層的な、独特の雰囲気だけでも大変面白い作品と言えます。

         そして、何よりも、本作はかなり凝った造りになっています。
         著者は、作中で、明確にゴーレムの正体を書いており、その犯行現場も描写しているのですが、果たしてそうなのか?という疑問がふつふつと湧いてきてしまうのです。
         作者を信用できなくなるのです。
         ゴーレムは、実は○○なのではないのか?
         エリザベスは、否認しているけれどやっぱりジョンを殺害している。でもその理由は……だからなのではないのか?
         読了後も、様々な疑念が渦巻いてしまうような作品でした。
         既に絶版ですし、あまり知られていない作品かもしれませんが(efは、読書ツナガリでこの作品を見つけました)大変、密度の濃い、みっちりとした作品ですよ。
         再読、必至だなぁ。
        >> 続きを読む

        2019/07/26 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      たったひとつの浦川氏の事件簿 (ミステリー・リーグ)

      斎藤 肇

      2.5
      いいね!

      • 世にも奇妙な斎藤肇が書いたミステリ「たったひとつの浦川氏の事件簿」を読了しました

        少年犯罪について思考を巡らしている中学生の加波賢也の前に、浦川氏が突然登場して「君さ、人を殺しただろ?」と聞いてくる。

        実際のところ少年は、その町で一昨日発生した殺人事件に、ある意味で関わっていたのだった。

        しかし、なぜそれがわかったのか? 浦川氏は、少年がネット上の掲示板に書き込んだ、アニメ番組に関するわずかな文章を手掛かりに、彼をその殺人事件と結びつけたというのだが-----。

        というような、8つの短篇からなる連作集の第一話の短篇だけを読むと、なるほど、これは浦川氏という探偵役の活躍する短篇集なんだなと思うのですが、続けて第二話「恥ずかしい事件」、第三話「はじめての事件」と読み進めていくうちに、あれっ?と首を捻ることになるんですね。

        なぜならば、殺人事件が起きているというのに、誰が殺したのか、なぜ殺したのか、といった重要な案件が、そこではなぜか等閑にされていて---いや、そもそもその殺人事件とやらは、いつ起きたのか、それぞれが同じものであり得るのか?

        それ以前に、この浦川氏とは果たして何者なのか、神出鬼没、変幻自在の探偵はいるにはいますが、ここまで変幻自在な探偵役が果たしていていいものかどうか?---という風に、読みながら私の前には、過去に体験したことのないような謎が山積するんですね。

        本格ミステリの謎というものは、通常ならば、フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットといった形をとるものだ。
        しかし、そういった普通の謎では満足できないという、ひねくれた書き手ももこの世の中には存在するだろう。

        著者の斎藤肇は、この作品で、普通ではない謎に首を捻らされるという新種の快楽を、我々読み手に与えてくれているのだ。
        その試みが、成功しているか失敗しているかは別にして-----。

        最終話の「浦川氏のための事件」を読んでニヤリとするという特権は、この作品を最後まで読んだ者だけに与えられるものだと思う。

        >> 続きを読む

        2018/08/30 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      くまの子ウーフ

      神沢利子 , 井上洋介

      ポプラ社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • これは、私のファースト小説ですね。
        確か小学1年生の頃、絵本から本を読む練習のためにと、母が買ってくれました。
        小説の割に絵が多く、すべてに送り仮名が書かれており、1ページに対しての文字量も少ないため、少し苦しみながらも初めての小説ですが読み終えることができました。

        確か続編もあり、そちらも続けて読んだ記憶があります。
        内容ははっきり覚えていませんが、特別賢いわけでもない私が読み切れたので、小学1年生くらいのお子さんにお勧めです。
        >> 続きを読む

        2015/05/13 by coco

      • コメント 4件
    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      ワーニャおじさん (岩波文庫)

      チェーホフ

      4.0
      いいね!

      • チェーホフの傑作戯曲「ワーニャおじさん」は、ほとんど事件らしい事件もないうちに、その底に流れているものは、次第に発達し展開していって、遂にそれが前面に押し出されて来た時、初めてその強く抜き差しならない人生のドラマになっていきます。

        田舎屋敷に、退職した老教授と、その若くて美貌の妻が帰って来る。
        それが人々の間に、思いがけない波紋を広げるという展開なのですが、波紋はいずれも大事にはならず、せいぜい若妻に片想いをしたワーニャが、老教授に発砲して失敗する事くらいがクライマックスなんですね。

        ところが、善良で、小心で、平凡で、退屈で、美しくもない人物たちが、クライマックスの後、みるみる輝き出していくんですね。

        ラストにおいて、疲れ果て、絶望しつつも生きる事を決意した娘ソーニャが語るセリフこそは、叙情の極みを行く絶唱です。

        「ね、ワーニャおじさん、生きて行きましょう。----寿命が尽きたら、おとなしく死んで、あの世に行き、『私たちは苦しみました、泣きました、ほんとうにつろうございました』と申しあげましょう。----あたしたち、ゆっくり休みましょうね!----すぐに----、休めるわ----。ゆっくり、休みましょう!」

        この「ゆっくり休みましょう」というリフレインが、痛切に美しい。
        平凡な人の平凡な言葉に、チェーホフはまさしく「強く抜き差しならないドラマ」を脈打たせているのだと思います。

        >> 続きを読む

        2019/11/01 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      竹取物語

      角川書店

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね! Fragment
      •  『星の王子さま』を読んだので、じゃあ「月のお姫様」の話でも読もうかなと思い、『竹取物語』を読みました。子ども向けの童話、あるいは学校の教科書などで一部を読んだことのある方は多いかもしれません。でも、名前は有名な作品ほど、全部を読み通していることが少ないものではないでしょうか。

         『竹取物語』は、いつ、誰によって書かれたのかははっきりとしていません。おそらく9世紀の終わり頃(平安初期)に、貴族の男性知識人によって書かれたのではないかという説が有力のようです。また、原本がないですから、残っているのは写本や文書に残る物語の断片のみ。完全な写本は、最も古いものでも16世紀終わり頃のものだそうです。各時代の写本と文書に記された物語の断片をつなぎあわせて、「原文」を再構築する作業があってこそ、僕たちは『竹取物語』をまとまった形で読むことができるわけです。

         『竹取物語』の物語の展開は有名ですが、一応要約しておきます。ある日、竹取の翁(讃岐の造)が竹の中に10センチくらいの女の子を発見。家に持ち帰って大事に育てると、あっという間に一人前の女性へと成長する。彼女はかぐや姫と名付けられ、その美しさは多くの男性を魅了する。
         5人の貴公子は、かぐや姫を妻にしようと求婚する。だが、かぐや姫の要求する難題にこたえられず、かぐや姫を妻にすることはできなかった。かぐや姫の美しさは、帝の耳にまで入る。帝はかぐや姫に積極的に愛を伝え、自分の妻にしようとする。かぐや姫は帝の願いを断るが、帝とは文通を通じての交流を続け、親密な関係を保っていく。
         帝との文通が始まってから3年、かぐや姫は物憂げに月を眺め始める。なんと彼女は月の世界の人間だったのだ。もうすぐ月から迎えの使者が来て、彼女は月に帰らなければいけないらしい。翁や嫗、帝はかぐや姫との別れを惜しみ、月の使者に抵抗しようとする。しかし、抵抗も空しく、かぐや姫は帝、翁、嫗との別れに後ろ髪を引かれながら、月へと帰っていった。

         本書の要約は以上のようになるでしょう。ちなみに本書は、正式には『ビギナーズ・クラシックス 竹取物語』であり、初学者向けに現代語訳、原文、解説、歴史的背景を説明するコラムから構成されています。懐かしい古文の勉強にも、歴史の勉強にも、もちろん物語に関する教養を身につけるのにも役立ちます。
         例えば、日本文化における竹の神秘性、藤原氏批判としての『竹取物語』、当時の結婚観や女性観からみる『竹取物語』、月がもつ文化的意味、説話との類似性、当時の政治制度や社会的慣習との関係などが説明されています。この他にも多くのことが触れられています。日本史に詳しい方は、より良く理解できるかもしれません。

         さて、『竹取物語』を通読して、改めて感じたことは、かぐや姫の心の成長です。求婚してくる5人の貴公子とのやりとりでは、愛に邁進する人間が直面する危険、あるいは愛に踊らされる人間の滑稽さを、かぐや姫は学んだのかもしれません。そして、翁や嫗との触れ合いでは家族愛を、帝との交流では男女の愛の喜び、悲哀、葛藤を学んだのではないでしょうか。
         かぐや姫は何かの罪を犯して、月から地上世界へと送られました。また、その罪を何らかの方法で償ったからこそ、かぐや姫は月へと帰って行きました。罪とは何で、償いがなんであったかは明確にはされません。でも、もしかしたら、かぐや姫が地上世界で人間の心というものを知ったことが、「償い」だったのかもしれません。

         蛇足ですが、『竹取物語』を読んでみて、古文の単語、文法、古典常識などの基礎知識が不足していることを痛感しました。また、日本史(日本文化)の教養も不足していることを実感。日本史の概説書と、辞書を片手に地道にお勉強しないといけないですね。

         
        >> 続きを読む

        2015/01/20 by ゆうぁ

      • コメント 3件
    • 3人が本棚登録しています
      平家物語

      角川書店

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 昔授業でやったけど、出だしを暗記するくいらだったから、改めて内容を理解したくて手に取った。

        この本は、現代訳(解釈)をベースに、重要な箇所は原文(に近いもの)が載せてある。
        時代背景や、描かれていない当時の人間関係についてなども途中の解説によって理解することができるので、「大学時代は古典を研究しておりまして」みたいな人でなくても大丈夫。中学生の教科書みたいな感じ。

        小説の形式ではないので、物語として読みたい人は別の本を探した方がいいと思うけど、昔の言葉遣いなどに高揚するタイプの人はおすすめ。





        >> 続きを読む

        2018/05/29 by REM

    • 2人が本棚登録しています
      時には懺悔を

      打海文三

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      •  あらすじから。
         探偵・佐竹は元上司に頼まれ、探偵スクールの研修生・中野聡子の代理教官をすることになる。その日の実習は、とある探偵事務所に盗聴器を仕掛けることだったが、事務所に忍び込むと、そこには死体が転がっていた。やがて佐竹と中野の調査線上に、一人の障がい児の存在が浮上する。

        「自分で悲哀の種を無尽蔵に作り出すくせに、とことん無力な人間というこの手に負えぬ生き物に、乾杯!」(p.224)

         この自虐的ながらいっそ清々しい物言い! このシンプルな力強さが著者の作品にある魅力だと思います。

         本作は探偵モノですが、名探偵○○! という感じではありません。主人公はしがないイメージのおっさんですし、業務はストーカーと紙一重です。見た目はおっさん、頭脳もおっさん。そして、その探偵っぷりは地味です。刑事は足だ、なんて言われますが、その倍ほど足を使うのが本作で描かれるリアルな探偵なんですね。

        「過去も現在も未来も、この稼業は人生の吹き溜まりだよ」(p.5)

        「探偵という職業に、重い荷物を背負わせようとしても無理がある」(p.242)

        「ロックは生き方だ、という言い方はありえるかもしれないが、探偵は生き方じゃない」
        「職業に徹しろと?」
        「そして、すべての職業は卑しい」(同上)

         いやー、夢がないです。でも、著者の作品にはなぜかいつも生命力を感じます。

         現実は恐らく理想とはかけ離れたものだと思います。決して公平ではなく、慈悲深くもないのでしょう。しかし、残酷ではないと思うのです。現実をあるがまま理解することができず、ねじ曲げてしまうのは人間の側なのではないでしょうか。

         人間の持つフィルターは、現実を違ったものに変えることができる素晴らしいものですが、過度な期待や悲観が時に他人を傷つけることがある。しかも、それは大抵無意識なものです。原罪とまでは言わなくとも、それはもう一つの性です。
         人間はきっと誰かを救うことができる、しかしそれができるということは、誰かを傷つけることもできてしまう。毎日のふとした瞬間に、そのことに思いを馳せることをするべきかもしれません。そして、時には懺悔を。
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        2015/05/01 by あさ・くら

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      今日から(マ)のつく自由業!

      喬林知

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
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      • カツアゲされていた同級生を助けようとしたら返り討ちにあってしまったユーリ。便器に顔をつけられそうになっているとなぜか水流にのまれてヨーロッパ風の異世界にたどりついてしまい!?

        異世界トリップファンタジー、ただし初トリップは公衆便所(女子トイレ)の便器から、しかも主人公のジョブは勇者じゃなくて魔王という話。

        結構昔の話になりますが、NHKでアニメ化されててそこから原作買いに走りました。

        初期はギャグ色が強いんですが、物語の根底にあるのはかなり重い話だったりします。
        種族の話だったり、戦争の話だったりと日本の一般的な家庭に生まれ育った主人公からするととうてい理解できないというかまるで実感がない話ですよね。

        色々あって、王様としてやってやる!と決意したところまでこの巻では語られています。

        何に一番驚いたかって、BLでもないのに男子高校生の婚約者が男性(80歳オーバー)なことでしょうか(笑)

        【http://futekikansou.blog.shinobi.jp/Entry/144/】
        に感想をアップしています(2010年9月のものです)
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        2014/01/11 by hrg_knm

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      今度は(マ)のつく最終兵器!

      喬林知

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 今度は銭湯から再び異世界にやってきたオレ・渋谷有利。
        魔王に就任したオレは魔剣・モルギフを探す旅に出かけることになるが――!?

        シリーズ第2弾です。
        銭湯から異世界へ移動して、オネエたちにもみくちゃにされたり、婚約者(♂)が密航してきたりと、別にBLじゃないのにいろいろすごくて驚きました。

        今回登場するお庭番・ヨザックの新米魔王に対する評価が辛口でちょっと驚きました。
        どうもあとの巻のイメージ(ユーリを認めて手助けしてくれる人ってイメージ)が強かったんですが、自分の命を預ける相手なわけですし、きちんと見極めようとするのは当然のことなんでしょうね。

        今回もラストは日本に戻ってくるわけですが、夜這いに言って世界を超えて逃げられたヴォルフラムはちょっとかわいそうでした(笑)

        【http://futekikansou.blog.shinobi.jp/Entry/160/】
        に感想をアップしています(2010年9月のものです)
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        2014/01/25 by hrg_knm

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      アンジェリークEXTRA (角川ビーンズ文庫)

      高瀬 美恵

      5.0
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      • 「アンジェリーク」を知っている事が前提。
        守護聖達、登場人物の普段の姿(ゲーム中では見れない姿?)が垣間見れる様な気がしました。(笑)
        このエクストラと題打ったシリーズ、全部で3冊あるけどレビューは面倒臭いんで纏めます。(一応番号ふっておきます)

        1.ストーリーはどれも面白く、人物像もイメージ通りに描かれていてかなり満足。
        ゲーム開始、女王試験より以前の設定でのオリジナルストーリーって事で、特に女性キャラに固執してない人でも素直に楽しめるのではないかと。

        2.しっかりしたストーリー構成の中にたま~に散りばめられたギャグに笑いつつ、それでいて各キャラともちゃんとカッコイイとこは魅せる!(爆笑)
        どの守護聖ファンにも納得出来る内容間違い無し、と太鼓判。(笑)

        3.内容の充実度は勿論、挿絵が由羅カイリさんなトコも嬉しかった。
        一般の世俗と隔絶された環境に生きる守護聖達、彼等のちょっと切ない面も良かったんすが、この巻の副題になってる「幻獣の楽園」よりも一緒に収録されてた「聖地パーフェクト・レシピ」の方が個人的には笑えて楽しかったかも。
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        2019/01/17 by ちさと

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      ほんじょの天日干。

      本上まなみ

      3.0
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      • 大好きな本上まなみさんの本。


        散歩好きだった本上さんが、友達の薦めで買ったカメラで散歩のついでに
        あちらこちらで、パチリ。

        町中の猫チャンをパチリ。お花をパチリ。旅先でパチリ。料理をパチリ。
        写真だけでは、心もとないのでと、文章も補足でチョイト。


        私の一番のお気に入りの写真は、172ページの“まなみさんのポートレイト”です・・・・・とってもかわいい。

        本から切り離そうか、切り離したら何処に飾ろうか、もっか悩みのタネでおます。



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        2015/01/01 by ごまめ

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      村上水軍興亡史 戦史ドキュメント

      森本繁

      学研マーケティング
      カテゴリー:日本史
      4.0
      いいね!
      • その勢力範囲の狭さから、歴史の表舞台で取り上げられる機会の少ない村上水軍。

        しかし、海上においての圧倒的な強さから戦国大名にも一定の影響力を及ぼしていたり、海賊的な側面や東南アジアまで勢力範囲を持っていたなど、魅力たっぷり。

        いずれ九鬼水軍との対比で分析してみたいと考えている。
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        2013/09/24 by はにぃ

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      なっとくする集合・位相

      瀬山士郎

      講談社
      カテゴリー:数学
      5.0
      いいね!
      • 集合と位相という、数学の基礎を構成する数のつかまえ方を、分かりやすい言葉で論理式も使いながら説明してくれている。集合=数の連続した集まり。位相=数の部分的な環境、空間。という、「概念」で数学を捉えられている感覚を得られるので、数学用語の具体的なイメージや感覚をつかまえられるのではという気持ちが持てて嬉しい。 >> 続きを読む

        2018/04/08 by Katta

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      ビゴ-が見た日本人 風刺画に描かれた明治

      清水勲

      講談社
      カテゴリー:洋画
      3.0
      いいね!
      • 教科書で見たことある画、ビゴーという人が書いたことは知っていたが、どういう経緯でその画を描くことになったのかはこの本で知った。古き良き日本が失われていく様を毒を持って描き続けたビゴーの目には今の日本はどの様に映るのだろうか? >> 続きを読む

        2013/06/15 by freaks004

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出版年月 - 2001年9月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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