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2002年12月発行の書籍

人気の作品

      マークスの山

      高村薫

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 手紙で事件の詳細が明らかになるという展開が今一つに思うが、事件の謎は何なのか?的なところはさておき、読んでいて楽しい。レディージョーカーに劣るものの緻密な内容で読み応えがある。最後の解説を見て同感したが、水沢を世話した真知子の存在はよかったなと思う。僕も一緒に「さかき」に行きたくなる。 >> 続きを読む

        2020/03/07 by 和田久生

    • 他4人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      終戦のローレライ

      福井晴敏

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 【ナチス・ドイツは、ローレライと呼ばれる秘匿兵器を開発したが、それは悲惨な非人道的兵器だった】
         物語の舞台となるのは第二次世界大戦終戦間際の頃です。
         既にナチス・ドイツは陥落していました。
         その少し前、ナチス・ドイツは恐るべき秘匿兵器、通称ローレライ・システムを開発し、フランスから鹵獲した大型潜水艦UF4に搭載したのです。
         しかし、UF4が就航して間もなく、ナチス・ドイツは陥落してしまったのです。

         帰るところを無くしたUF4は、ローレライ・システムを手土産に、枢軸国側で唯一生き残っていた日本にその身を委ねたのでした。
         帝国海軍としてもローレライ・システムを入手したかったことからUF4の受け入れを了承したのですが、米海軍も黙ってはいませんでした。
         近くにいた潜水艦を投入して執拗にUF4を追尾したのです。

         UF4は、ローレライ・システムの力により、長きにわたって米潜を排除し続けたのですが、さすがに疲弊し、ぎりぎりのところでやむなくローレライ・システムの中核となるナーバルという部位を投棄し、艦重を減らし、辛うじて呉にたどり着いたのです。
         しかし、ナーバルを投棄してしまった以上もはやローレライ・システムは使用不能となり、帝国海軍もローレライ・システムを入手するための作戦を放棄してしまったのです。
         UF4の乗組員と、ボロボロにされたUF4の受け入れまでは行ったものの、公式にはそこまででした。
         日本自体、もう継戦能力を喪失しつつあったのです。

         しかし、この事態を早期に読んでいた男がいました。
         帝国海軍軍令部第一部第一課長の浅倉大佐でした。
         浅倉大佐は、海軍の方針を無視し、独断でUF4を伊507へと改修し、自ら選別した乗組員を密かに伊507に搭乗させ、ナーバルを回収させるために伊507を発進させたのです。
         当時、日本に対しては一億総玉砕か無条件降伏かしか道は残されていませんでしたが、浅倉大佐は、ローレライ・システムの力により、何とか少しでも条件の良い降伏を実現しようという腹だった……と思われます。

         上巻では、伊507がなおも執拗に追尾を続ける米潜と戦いながらナーバルを回収するまでの話が描かれ、その過程でローレライ・システムの恐るべき実態が明らかになるという展開になっています。
         当時の潜水艦では、索敵は音に頼るしかありませんでしたが、ローレライ・システムは、それを視覚化し、さらに驚くべき範囲と精度で海中の状況を把握できる驚愕の兵器だったのです。
         そして、それだけにとどまるものではなく……。

         しかし、そのようなことを可能にするローレライ・システムとは、実は極めて非人道的な兵器だったということが読者に明かされるのです。
         そして、何故、そのような兵器が生まれて来たかにまつわる、戦争の悲惨な側面が語られていきます。

         というわけで、本作は、SF架空戦記もの、サブマリーナものの作品なのですが、ローレライ・システムという秘匿兵器は登場するものの、このジャンルに多くみられる、次々と新型兵器が投入され、派手に戦闘シーンが繰り広げられるタイプの作品とは一線を画していると思います。
         上巻だけでも、ハードカバー上下二段組、453Pとかなりのボリュームがあることからも推察できる通り(下巻はさらに厚いです)、戦闘シーンの連続では終わらず、登場人物の心情をかなり書き込んでいる作品になっており、読み応えは相当なものです。

        確かに戦争文学として読むにはなお物足りなさは残り、本質はやはりSFエンタメ作品ではあるのですが、決してお手軽な作品には終わっていないと感じました。
         SF、架空戦記ものがお好きな方はもちろん、しっかり描かれている戦争を背景にした、登場人物の心情にも踏み込んだ作品ではあるので、一般作品としても楽しめるのではないかと感じています。

         さて、いよいよローレライ・システムが稼働し始めた伊507ですが、日本に帰投するかと思いきや、浅倉大佐からはウエーク島へ向かえとの命令が。
         そこには一応日本軍の基地はあるものの、ほとんど見捨てられたような場所であり、何故そんな場所へ行けと言うのか?
         しかも、もはや日本周辺の制海権、制空権は連合国側に抑えられており、ウエーク島へ行くのはそんなに簡単な話ではないというのに。
         広島への原爆投下が迫る中、浅倉の真意は?
         ということで、下巻に続きますよ~。


        読了時間メーター
        □□□□    むむっ(数日必要、概ね3~4日位)
        >> 続きを読む

        2020/12/31 by ef177

    • 他3人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      マークスの山

      高村薫

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 上下とも感想。
        前々から読みたいと思ってとっておいた本。登山が趣味なので、物語の山の雰囲気がよく分かる。暗い感じで物語が展開する。著者の描写が細かく文章の密度が濃い。分厚い小説だが、読み進めていくうちになんとなく事件の全貌が見えてくる。警察小説でもないし、推理小説でもない。サスペンス小説か。解説にあるように本格的小説というのがよく説明しているかもしれない。少々奇抜な犯人設定だが、そういうのもありかもしれない。警察内部の縄張り意識による衝突も興味深かった。犯人に寄り添う女性である看護師の存在も安堵させる。十分、読み応えのある小説だった。 >> 続きを読む

        2020/04/22 by KameiKoji

    • 他3人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      さみしさの周波数

      乙一

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね!
      • 以前「失はれる物語」(ハードカバー)を読んときに収録されていたものと被る収録内容が多いけど読んでいないものがあったので図書館で借りた。乙一さんの一つの側面であるせつない系の寄せ集め集という感じか。 >> 続きを読む

        2018/07/06 by motti

    • 他2人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      アイシールド21

      村田雄介

      集英社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • 高校入学して早々パシリにされるほど気弱でいじめられっ子な少年小早川セナ
        しかし、彼にはパシリで鍛えられた驚異的な脚力が・・・

        アメフトという日本ではマイナー(?)なスポーツを題材にした本作品

        内容は「友情、努力、勝利」をテーマとする、いかにもジャンプらしい内容
        だが、そこがいい!

        また、登場するキャラクターが非常に個性的で、
        たとえ敵(ライバル)だとしても憎めないやつばかり

        この作品を読んでいるとアメフトがしたくなります(笑)
        (↑まぁ、したくなるだけでやらないとは思いますが・・・)
        >> 続きを読む

        2014/05/07 by ぬますけ

      • コメント 4件
    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      Black lagoon

      広江礼威

      小学館
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • 原作は読んだことがなくアニメだけの視聴だが、これはぜひとも原作も読まねばと思った作品。

        日本のサラリーマンが強すぎるのかロックがすごいのか…

        面白いしめちゃくちゃなとこもあるがその中で描かれている人柄やセリフには惹かれるものがありました。
        >> 続きを読む

        2014/01/08 by ちあき

      • コメント 3件
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      深追い

      横山秀夫

      実業之日本社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 横山さんの警察小説だが、舞台は三ツ鐘警察署。
        そこは都落ちの集まりのような場所。

        7つの短編集の中で、誰もがもがき苦しみ事件を追う。

        中身としては地味だろうが、どの話にも起伏があり、ラストには救いに似たものが。

        特に「仕返し」で見せる、息子を持つ刑事のラストの決断は潔いが苦い代物。
        そういう話こそが横山さんの真骨頂。
        >> 続きを読む

        2018/12/31 by オーウェン

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      つむじ風食堂の夜

      吉田篤弘

      筑摩書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね! kentoman
      • 月船町に行ってみたいです。
        つむじ風食堂気になります。
        先生のその後も気になったり。
        (10.06.15 読了) >> 続きを読む

        2015/06/09 by のこ☆

      • コメント 2件
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      文庫版 三国志完結セット 全13巻+読本

      北方 謙三

      角川春樹事務所
      5.0
      いいね!
      • まだ読んでる最中です。もともと吉川三国志から入っているので、劉備のキャラクターに驚きました。
        蜀中心っぽく劉備が善人らしく書かれてるのも物語としては好きでしたが、
        こちらの描かれ方も好きです。偏りがなくていいかなと。
        全巻大人買いしたので、読み終えたら詳しくレビューします。

        ----------------

        ちょっと読み進めたので追記します。

        初っ端ですが、いわゆる桃園の誓いみたいなことは無いです。
        劉備が秘めた熱い志を語るのがカッコいいです。
        「私は一人だ。名も財も無い。無から始めることゆえに、無に帰しても悔やまぬ。自分の命を自分の好きなように使う。笑ってくれていい。私の夢を押しつぶす事は誰にもできぬ」

        淡々と出来事が書かれるのではなく、心情をよく表現しています。人物の描き方が面白いです。
        呂布の男気がすごいのです。赤兎馬との別れが泣ける…
        貂蝉は実在の人物でもないですので、この作品にはいません。董卓への裏切りも、演義の美女連環計とかとは違います。
        どちらかというとこの作品は、裏切りといっても理由がちゃんとある
        そんな感じです。
        一人称視点の人物が結構変わります。
        劉備を善人、曹操を悪役と思いそうな演義のとは違って、いろんな人物の心の中にフォーカスを当てているので、個々の魅力を更に感じられるかと。
        張飛の乱暴さについても、、劉備の徳のために買って出てるんですよ、っていう表現もあります。督郵を殴るのは劉備の方の話ですし。

        吉川との違いというのをつい意識してしまいますが、
        それが面白いですね。
        ついじっくり読んでしまいます。

        最初に読む三国志は吉川をお勧めしますが、
        吉川じゃなきゃ、って方でも
        読んでみると、違った面白さがあると思います。
        三国志は同じものを題材にいろんな書かれ方をされているのも魅力だと思います。こんな捉え方もあるのかー、と。
        ぜひ読んでみてください。
        >> 続きを読む

        2015/04/21 by わだち

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      不思議の国のアリス・オリジナル

      高橋宏 , ルイス・キャロル

      書籍情報社
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 【キャロルが、アリスのためだけに書いたその一冊がここにあります】
         「不思議の国のアリス」はみなさんご存知ですよね。
         ルイス・キャロル……もとい! チャールズ・ダドウィッジ・ドジスンが書いた不朽の名作。

         でも、キャロルはかなりのロリコン。今の時代だったらそう言われたでしょう。
         現代は、何とも窮屈な時代なのかもしれないけれど。

         彼は、オックスフォード大学の学寮長でもあったリデル氏と懇意にしており、彼の子供さんの幼い三人姉妹ともしばしば会っていました。
         ある日、ボートに娘さん達を乗せ、その間にお気に入りの当時10歳のアリスのために一つの物語を創作したのですね。
         アリスは、その物語を大変気に入り、「このお話をちゃんと書き留めておいてね」とキャロルにせがみました。

         こうしてできあがったのが、キャロルによる手書きの「アリス」でした。
         その後、この本は、キャロルが信頼していた人にも読んでもらい、これは是非出版すべきだとの言葉ももらったことから、改訂の上できあがったのが「不思議の国のアリス」でした。

         そうして、出版にこぎつけた「不思議の国のアリス」の挿絵を担当したのが、テニエルでした。
         おそらく、みなさんもテニエルの挿絵はご覧になっていることでしょう。
         私も大好きな挿絵です。
         その後は、みなさんもご存知の通り、誰もが知っている名作として残っているのですね。

         さて。
         こんなアリスですが、私が今回ご紹介した本は、「最初の最初の」アリスの完全復刻版です。
         テニエルの挿絵が入れられる前の、キャロルが自分で書いた挿絵と、自筆のままの、まさにアリスのためだけに作られた、最初の本の復刻版なんですね。
         もちろん、英文ですよ。
         でも、それを翻訳したもう一つの本もついている2巻仕立てのきれいな本です。

         でも、おそらく、これは絶版だと思う。
         とても良い本なのにね。
         
         キャロル自身が手筆で、アリスのために書いた本を見てみたいと思いませんか?
         ええ、復刻版が、ここにあるんですよ。
        >> 続きを読む

        2020/01/20 by ef177

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      ホビットの冒険

      J・R・R・トールキン , 瀬田貞二

      岩波書店
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 映画3部作は視聴済み。事前に「指輪物語」を読み、この作品もいずれ読みたいと思っていた。購入も考えていたが、図書館にあったので借りて読んでみた。概ね映画版はこの原作に沿ったものだということが文章を読んで理解できたという点が感想。(映画版はエルフのレゴラスが出てきたり、スウマグにとどめを刺すバルドのエピソードが入るのだがそれが脚色だと知ることができた。)あと、違う訳者のバージョンも出ているらしいので機会があれば今度はそちらを手に入れて読んでみたいと思う。 >> 続きを読む

        2016/05/11 by おにけん

    • 5人が本棚登録しています
      アラスカの氷河 中谷宇吉郎紀行集

      渡辺興亜 , 中谷宇吉郎

      岩波書店
      カテゴリー:地理、地誌、紀行
      5.0
      いいね!
      • 「雪は天から送られた手紙である」という言葉で有名な、雪の博士こと中谷宇吉郎。
        その中谷博士がアメリカ、ハワイ、満州、アラスカなどを訪れた際の様子を記したもの。

        今まで自分の中で、中谷博士は人工雪の研究では世界的に名が知られているものの、研究活動自体は日本国内でのみ行っていたとばかり思っていた。

        が、本書の中での博士は世界を飛び回って、研究を行う颯爽とした姿を見せてくれる。
        考えてみれば、最初のイメージは根拠なしである上、研究が世界的に知られているのであれば、あちこちから声がかかるので、世界各地を飛び回る事になるのは当然ではある。

        本書は研究結果の報告や、研究過程の考え方などを述べたものでなく、日記なため、内容的に難しいものは少ない。

        招待されてアメリカを訪れた時、講演のオマケで日本文化について述べる、と約束した事が、オマケの方が主題のように報道され、冷や汗をかいた話
        があるかと思えば、
        満州を訪問した時は、日本の満州開拓のあまりもの準備不足ぶりを批判したりなど、内容は幅広い。

        読んでいて、博士が一番、楽しそうに描いているのは、やはり研究をしている時の様子。
        その時の様子が目に映るようだった。

        印象的だったのは、「地球温暖化」という言葉がない頃から、その事について、うすうす気が付いているフシがあった、という点。
        雪の博士の面目躍如、といったところだろうか。

        ただ「温暖化」については、未だに大した対応策を考えつけない自分達、「温暖化」自体を認めていない人々などを中谷博士が見たら、何と言うだろう・・・。
        >> 続きを読む

        2014/02/15 by Tucker

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    • 1人が本棚登録しています
      日本語のレトリック 文章表現の技法

      瀬戸賢一

      岩波書店
      カテゴリー:文章、文体、作文
      5.0
      いいね!
      • ・どんな本?
         レトリックについてエッセイや小説、詩などを通して30の技法を学ぶといった構成になっています。レトリックは5部門で構成されているとのことですが、本書では修辞(文体)部門を中心に見ていきます。修辞は表現に肉付けをすることで魅力的に見せる技法です。
         隠喩やパロディーといったおなじみのものから、くびき法や撞着法といった少し変わった技法まで紹介されています。
         
        ・レトリックってなに?
         本書ではレトリックについて次のように定義しています。『レトリックとは、あらゆる話題に対して魅力的なことばで人を説得する技術体系である』(p.7)
         

        ・レトリックを学ぶ意味は?
         私達人間は他人を説得するとき、あるいは他人に自分の考えを伝えるために言葉を使います。言葉を巧みに扱う技法であるレトリックを学ぶことで、自分の意見を魅力的に説得力をもって伝えることができます。これは議論の場で、あるいは会社の意思決定の場で強力な剣となってくれることでしょう。一方で魅力的な言葉で彩られた詭弁から、身を守るための盾にもなってくれることでしょう。
         

         
        >> 続きを読む

        2015/10/08 by けやきー

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    • 2人が本棚登録しています
      平家

      池宮彰一郎

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • この池宮彰一郎版「平家」を読了して思うことは、今までの「平家物語」が描く、"諸行無常の仏教文学"から、"高度な政治小説"へと変貌を遂げたのではないかという事です。

        作者の池宮彰一郎は、それまで、"巨悪"というレッテルを貼られていた平清盛を、強固な藤原官僚体制に果敢に挑戦した"改革者"としての視点から描いているのが、非常に斬新で画期的な歴史解釈だなと思いました。

        行き詰った国家体制の改革という点では、この作品のテーマは、完全に平成の時代の今と二重写しになっており、この小説の中に出てくる「人の食を分け与えられた者は、その国民のために死すべきである」との、痛烈な"官僚批判"は、現在の日本の政治家、官僚、役人などへの行き場のない憤りを覚えている身にとって、一服の清涼剤ともなり、日頃の渇きを癒してくれます。

        しかし、この優れた歴史小説の素晴らしさは、それだけではなく、作中の人物の平清盛以下、手垢のついた描かれ方をした人物は一人も存在しないという点なのです。

        その代表ともいえる人物が、通常、武家勢力が台頭してくる中で、対立する源氏と平家を巧みに操ったとされる後白河法皇ですが、特にこの長編歴史小説の下巻において、清盛の死が目前に迫った事を知った法皇が、嗚咽する場面は、単に"最大の政敵こそが最大の理解者"である、という事以上に、一代の英傑の志の行方を嘆ずる名場面として、永く歴史小説史上に残るのではないかと思います。

        そして、潰えたかに見える清盛の志が、"希望と諦観"の中から浮かび上がって来るラストの大原御幸まで、池宮彰一郎は生命を削りながら渾身の大作を完成させたのだと思います。
        >> 続きを読む

        2016/10/08 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      オレ・ダレ

      高畠純 , 越野民雄

      講談社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      • オレ・ダレ

        表紙からわかるとおり、大人が見たらすぐにわかるのですが、小さいお友達からすると難問がいっぱい詰まっています。

        黒い影を見ると、やっぱり怖くなっちゃうみたいで、ページをめくる度に、私の腕を掴んでいる手にキュッ♪って力が入るところがとってもカワイイでーす☆

        結局、全部のページで「お姉ちゃんと一緒だから怖くないよね♪」って励ましていました。

        なんだかわたしも一緒に冒険した気分でーす☆
        >> 続きを読む

        2013/02/19 by tamo

      • コメント 5件
    • 1人が本棚登録しています
      書いた落語傑作選

      立川談志

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 父が亡くなった。
        読もうと思って図書館から取り寄せて、結局読まず終いになってしまった。
        読みたい最後の本がこの、談志の落語だったとは。
        自分の落語をやるつもりで、そのネタ本として借りてきたのだ。
        代わりに娘が読んでやろうと思う。

        落語というのはしゃべるもの、聞くもの。
        「書いたもの」というのは、普通存在しないらしい。

        饅頭怖い/天災/松曳き/清正公酒屋/雪てん/豆屋/
        子ほめ/つるつる/庖丁/権兵衛狸/宿屋の富/らくだ

        上記12の噺が収められている。私が知っている噺が3つあった。

        「談志(わたし)の書いた落語は面白いのだ」と豪語する。
        「天才落語家の挑戦。名作落語が現代に甦る」とのコピー。

        落語は噺家が随時アレンジし、個性的な演技をし、自分の得意を持ち、演者によって違うものになる。
        クラシックの演奏家もそうだ。
        と、思っていたけれど。

        落げ(さげ)まで変えて演じることもあるのは、知らなかった。

        自分に談志が好きかと聞かれたら、好きじゃない。と答えるだろう。
        落語通ではないので、彼の「名人」な度合いがわからないのだ。(すみません)
        理屈っぽさと態度のでかさが目に付き鼻につくので、
        どうも単純に楽しめない。

        本ではひとつひとつの噺の後に、本人の解説が入る。
        なるほどこれは、落語についての知識が増えるし本人の意図がわかって有用だ。

        「子ほめ」の落げ、は変えない方がいいよ。
        「灘の酒」がわからないなら教えればいいし、昔の歳の数え方だって、こういう話があるから知るきっかけになる。
        そのチャンスを噺家が「通じない」って言って削除したら、
        知る機会そのものが失われるじゃないか。
        なんて、生意気に意見したくなったりした。
        談志はどう答えるだろう。

        本を読んで、二つの感想をもった。

        一つは、今までの印象通りの上から目線。
        彼は自分を「家元」と呼ぶのだが、それへの違和感。
        落語は「芸術」だろうか?
        伝統もある立派な「芸」だとは思うけれど。
        笑いというものが、緊張からの解放であるならば、
        偉い人がやっている芸術だと思ったら笑えないんじゃないだろうか?
        落語は反体制の芸だが、体制側の政治家やってたし…。
        このあたり、私にはよくわからない。

        もう一つは、情熱だ。
        古典落語は最近敬遠されている。理由はいろいろ。
        ウケるのが難しい、時代の流れにより通じない言葉、シチュエーションが多数ある、演る側が伝統を意識してしまい自己流がやりにくい。などだろうか。

        その古典落語にわざわざ「俺流」を投入するのが談志というわけ。

        自由に現代を混ぜ込み、知識を披露し、時に噺家が話に割って入る奔放ぶり。
        その無謀とも思われる勇気と才気は他の噺家にはないものなのだろう。

        「どこかで、己を出さないと満足しない芸人の業」

        落語への愛とわがままな生き方をまざまざと感じ取れる。
        こういう出版がなされたことが、貴重な試みであったと思う。
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        2012/05/14 by 月うさぎ

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      大型版 あらしのよるにシリーズ(3) くものきれまに (大型版あらしのよるにシリーズ)

      あべ 弘士きむら ゆういち

      4.0
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      • 「あらしのよるに」シリーズの第3弾。

        今回はメイがガブに会っている場所に、事情を知らない友達ヤギのタプが来てしまう事によるドタバタが描かれる。
        メイとガブの関係がバレてしまうかどうか、ハラハラする展開。

        タプはガブの姿がよく見えないので、まさかオオカミとは思わず、さんざんオオカミの悪口を言う。

        それを聞いても、メイの友達だから、と怒る事なくガマンするガブ。
        この辺り、ガブの人柄・・・いや狼柄が窺える。

        が、さんざんオオカミの悪口を聞かされた挙句、ついに一声吠えて、森の中に走りこんでしまう。
        ただ、それは相手を威嚇するためでなく、普通のヤギがオオカミの事をどう思っているかを知ってしまった悲しみの声。

        「もしかしたらメイも、心の奥底では、そんな風に思っているのでは」
        と思ってしまったのだろう。

        だが、メイは「そんな事はない」と否定し、また会い続けよう、と約束する。
        落ち込んでいたガブは、メイのその言葉に救われる。

        地味かもしれないが、今回はメイとガブがお互いを思いやる気持ちが印象に残った。
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        2014/05/17 by Tucker

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      大型版 あらしのよるにシリーズ(4) きりのなかで (大型版あらしのよるにシリーズ)

      あべ 弘士きむら ゆういち

      4.0
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      • あらしのよるにシリーズの第4弾。

        今回は、サスペンス(?)のような展開。

        ガブはメイにキレイな月を見せたい、と思い、ポロポロヶ丘へ誘う。
        が、折りしもオオカミのギロとバリーが、たまたまメイを見つけ、食べてしまおうとつけ狙う。

        バリーに、手伝うように言われるが、ガブは手伝うフリをして、メイを助けようと決心。
        ガブの活躍で、メイは無事。

        ただ、ギロやバリーと話を合わせるため、メイにも聞こえているのを知りながら「ヤギを食いたい」と言ったのを悔やむ。
        だが、メイの方もそれは充分、承知の上だった。

        それどころか、2匹は、それを冗談のネタにすることもできる間柄になっていた。

        ところで、ガブがメイをこの場所に連れてきたのは、ここから見る月がとてもキレイだから。

        特別編の「しろいやみのはてで」で出てくる事だが、ガブは何かツライ事があると、ここへ来て、月を眺めていたそうだ。
        仲間のオオカミに言ったら、バカにされるだけと思って、黙っていたが、メイは分かってくれそうな気がしたので、連れてきた、と話している。

        メイは元から「繊細」というイメージだったが、ガブも充分「繊細」なのだろう。
        「ロマンチスト」と言うべきか?

        だからこそ、2匹は、馬が合ったのかもしれない。4
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        2014/05/25 by Tucker

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      終戦のローレライ

      福井晴敏

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
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      • 【東京に三発目の原爆が投下されるのか?!】
         クエーク島に到着した伊507は、そこに先着していた浅倉大佐と邂逅します。
         そこで伊507の乗組員が聞かされたことは絶望的な話だったのです。
         既に広島と長崎に原爆が投下された。
         しかし、軍部はいまだなお、国体護持を条件とするポツダム宣言受諾を米に打診しているが、そんな提案を米が呑むわけがない。
         仮に、条件付き受諾の提案を拒否されたならば、再び徹底抗戦派が勢いを盛り返し、一億総玉砕の道をたどることは明白であると。

         浅倉大佐は、徹底抗戦などすれば、3発目、4発目の原爆が投下されるのは自明であり、国民を滅ぼして国体を護持しても何の意味も無いと喝破し、少しでも条件の良い降伏を実現するために、ローレライ・システムを備えた伊507にやってもらいたいことがあると言うのです。
         クエーク島の周辺海域に極秘に残存艦隊を集結させてあるので、伊507はそこへ向かい、残存艦隊と合流の上、米本土に直接攻撃を仕掛けてもらいたいと。
         本土を攻撃されれば、米もさすがに安閑としてはいられなくなり、多少の条件なら呑む可能性もあると言うのです。

         もちろん、米本土にたどり着くことは至難であろうが、ローレライ・システムを装備している伊507ならば不可能ではない。
         また、米本土攻撃に成功したとしても生きては帰れないだろうが、国民を守るために死んでくれと。
         もとより、この期に及んで生き延びようなどと伊507の乗組員たちが考えていたわけもなく、それが国民を守るために残された唯一の道ならばと、浅倉大佐の命令に従うことになりました。

         ただし、ナーバルを回収するために乗船させた、若い折笠、清水の二人の上等兵には下艦が命ぜられました。
         ナーバル回収が成功した今、お前たちは必要ないと。
         もちろん、それは死地に赴く伊507が、若い二人を道連れにすることを拒んだということです。
         泣く泣く艦長命令に従って下艦する二人。

         しかし、折笠と清水は、伊507出航後、浅倉大佐の真の意図を知るに至ってしまうのです。
         米本土攻撃などというのは合流地点に伊507を向かわせる口実に過ぎませんでした。
         実は、浅倉大佐は米軍と通じており、東京に原爆を投下させることと引き換えにローレライ・システムを米軍に提供すると約束していたのです。
         このままどうあがいても徹底抗戦派は潰せない。
         唯一の道は宮城に原爆を投下させ、天皇を廃するしかないというのが浅倉大佐の真意だったのです。

         このことを知った折笠、清水の二人は、クエーク島のランチを奪い、伊507を追いました。
         しかし、伊507にはクエーク島で乗り込んだ土谷中佐らの米側の兵士がいた他、実は最初から伊507に乗り組んでいた枢要な士官らも浅倉大佐と以前より通じており、ランチが接近していることを知るや反乱を起こし、伊507を奪取してしまったのです。

         伊507はこのまま米軍に拿捕されてしまうのか?
         そして、東京に三発目の原爆が投下されてしまうのか?
         3発目の原爆を投下するB29の出発時刻は刻一刻と迫ってきます。
         下巻は、このような緊迫した状況からクライマックスへとなだれ込んでいきます。

         読了しての感想ですが、しっかり書き込まれた面白い作品だったと思いました。
         ローレライ・システムという設定も良く、架空戦記SFとして水準以上の出来だと思います。
         ただし、この分量はハンパないです。
         下巻は上巻よりもさらに厚く、上下二段組みで597ページになります。

         何故ここまで厚くなったかというと、登場人物の過去や心情をかなり詳しく描写しているからなのです。
         単なる架空戦記SFには終わらせないという作者の意図がうかがえます。
         しかし、ちょっと長過ぎの感はぬぐえず、特に物語に決着がついた後のエピローグの長さはどうでしょうか?
         終戦までではなく、その後、ほぼ現在に至るまでのことがさらに描かれ続けるのです。

         伊507の結末はついているだけに、最後の部分はいかにも冗長という印象を受けました。
         作者は、戦後の日本がたどった足跡をも書きたかったのだろうと推測されますが、ここはもう少し刈り込んでも良かったのではないでしょうか?
         読者は、もう、壮絶な結末で酔ってしまっており、余韻にしては長すぎるエピローグはラストの衝撃を薄めてしまったように感じました。

         とは言え、読み応え十分な作品であり、特に架空戦記SFがお好きな方にはおススメできる作品です。


        読了時間メーター
        □□□□□   しばらくお待ち下さい(5日以上、上限無し)
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        2021/01/03 by ef177

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      このすばらしい世界 ロバが語った宇宙飛行士の話

      葉祥明 , 山口タオ

      講談社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
      いいね!
      • すばらしい絵本だった。
        ぜひ多くの人に手にとって読んで欲しい。

        ガガーリンが、青い地球を見て、地上に戻ってきた後、町の人々がやってくるまでの間、ロバと話した事柄。

        もちろん、フィクションだけれど、とても考えさせられる、すばらしい内容だった。

        どうして地球は青かったのか。
        青い輝きの意味を知らなくてはならない。

        人間であればこそ、この青い輝きを見ることができ、心を響かせることができた。

        いまいちど、我々はそのことをよくよく考え直すべきなのだろう。
        >> 続きを読む

        2013/06/08 by atsushi

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出版年月 - 2002年12月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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