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高村薫
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手紙で事件の詳細が明らかになるという展開が今一つに思うが、事件の謎は何なのか?的なところはさておき、読んでいて楽しい。レディージョーカーに劣るものの緻密な内容で読み応えがある。最後の解説を見て同感したが、水沢を世話した真知子の存在はよかったなと思う。僕も一緒に「さかき」に行きたくなる。 >> 続きを読む
2020/03/07 by 和田久生
福井晴敏
【ナチス・ドイツは、ローレライと呼ばれる秘匿兵器を開発したが、それは悲惨な非人道的兵器だった】 物語の舞台となるのは第二次世界大戦終戦間際の頃です。 既にナチス・ドイツは陥落していました。 その少し前、ナチス・ドイツは恐るべき秘匿兵器、通称ローレライ・システムを開発し、フランスから鹵獲した大型潜水艦UF4に搭載したのです。 しかし、UF4が就航して間もなく、ナチス・ドイツは陥落してしまったのです。 帰るところを無くしたUF4は、ローレライ・システムを手土産に、枢軸国側で唯一生き残っていた日本にその身を委ねたのでした。 帝国海軍としてもローレライ・システムを入手したかったことからUF4の受け入れを了承したのですが、米海軍も黙ってはいませんでした。 近くにいた潜水艦を投入して執拗にUF4を追尾したのです。 UF4は、ローレライ・システムの力により、長きにわたって米潜を排除し続けたのですが、さすがに疲弊し、ぎりぎりのところでやむなくローレライ・システムの中核となるナーバルという部位を投棄し、艦重を減らし、辛うじて呉にたどり着いたのです。 しかし、ナーバルを投棄してしまった以上もはやローレライ・システムは使用不能となり、帝国海軍もローレライ・システムを入手するための作戦を放棄してしまったのです。 UF4の乗組員と、ボロボロにされたUF4の受け入れまでは行ったものの、公式にはそこまででした。 日本自体、もう継戦能力を喪失しつつあったのです。 しかし、この事態を早期に読んでいた男がいました。 帝国海軍軍令部第一部第一課長の浅倉大佐でした。 浅倉大佐は、海軍の方針を無視し、独断でUF4を伊507へと改修し、自ら選別した乗組員を密かに伊507に搭乗させ、ナーバルを回収させるために伊507を発進させたのです。 当時、日本に対しては一億総玉砕か無条件降伏かしか道は残されていませんでしたが、浅倉大佐は、ローレライ・システムの力により、何とか少しでも条件の良い降伏を実現しようという腹だった……と思われます。 上巻では、伊507がなおも執拗に追尾を続ける米潜と戦いながらナーバルを回収するまでの話が描かれ、その過程でローレライ・システムの恐るべき実態が明らかになるという展開になっています。 当時の潜水艦では、索敵は音に頼るしかありませんでしたが、ローレライ・システムは、それを視覚化し、さらに驚くべき範囲と精度で海中の状況を把握できる驚愕の兵器だったのです。 そして、それだけにとどまるものではなく……。 しかし、そのようなことを可能にするローレライ・システムとは、実は極めて非人道的な兵器だったということが読者に明かされるのです。 そして、何故、そのような兵器が生まれて来たかにまつわる、戦争の悲惨な側面が語られていきます。 というわけで、本作は、SF架空戦記もの、サブマリーナものの作品なのですが、ローレライ・システムという秘匿兵器は登場するものの、このジャンルに多くみられる、次々と新型兵器が投入され、派手に戦闘シーンが繰り広げられるタイプの作品とは一線を画していると思います。 上巻だけでも、ハードカバー上下二段組、453Pとかなりのボリュームがあることからも推察できる通り(下巻はさらに厚いです)、戦闘シーンの連続では終わらず、登場人物の心情をかなり書き込んでいる作品になっており、読み応えは相当なものです。 確かに戦争文学として読むにはなお物足りなさは残り、本質はやはりSFエンタメ作品ではあるのですが、決してお手軽な作品には終わっていないと感じました。 SF、架空戦記ものがお好きな方はもちろん、しっかり描かれている戦争を背景にした、登場人物の心情にも踏み込んだ作品ではあるので、一般作品としても楽しめるのではないかと感じています。 さて、いよいよローレライ・システムが稼働し始めた伊507ですが、日本に帰投するかと思いきや、浅倉大佐からはウエーク島へ向かえとの命令が。 そこには一応日本軍の基地はあるものの、ほとんど見捨てられたような場所であり、何故そんな場所へ行けと言うのか? しかも、もはや日本周辺の制海権、制空権は連合国側に抑えられており、ウエーク島へ行くのはそんなに簡単な話ではないというのに。 広島への原爆投下が迫る中、浅倉の真意は? ということで、下巻に続きますよ~。読了時間メーター□□□□ むむっ(数日必要、概ね3~4日位) >> 続きを読む
2020/12/31 by ef177
上下とも感想。前々から読みたいと思ってとっておいた本。登山が趣味なので、物語の山の雰囲気がよく分かる。暗い感じで物語が展開する。著者の描写が細かく文章の密度が濃い。分厚い小説だが、読み進めていくうちになんとなく事件の全貌が見えてくる。警察小説でもないし、推理小説でもない。サスペンス小説か。解説にあるように本格的小説というのがよく説明しているかもしれない。少々奇抜な犯人設定だが、そういうのもありかもしれない。警察内部の縄張り意識による衝突も興味深かった。犯人に寄り添う女性である看護師の存在も安堵させる。十分、読み応えのある小説だった。 >> 続きを読む
2020/04/22 by KameiKoji
乙一
以前「失はれる物語」(ハードカバー)を読んときに収録されていたものと被る収録内容が多いけど読んでいないものがあったので図書館で借りた。乙一さんの一つの側面であるせつない系の寄せ集め集という感じか。 >> 続きを読む
2018/07/06 by motti
広江礼威
存在自体は昔から知ってはいましたが、なかなか手が伸びなかった作品で、ようやく読み始められました……ただ、ものすごく荒っぽい科白の応酬と絵だけで表現する、一番苦手な手法がわんさかあって、読んでいる間ずっと苦笑いが止まりませんでした(;´∀`)話や人物描写は、好きな人にはホントに刺さるんだろうけど、自分的には合わなかったというか、単純に怖かったなぁと💦💦粋なやり取りもひたすら苦笑いと恐怖感で、ああ、結構買い揃えてしまったものはどうしたらいいんだろう…とため息がこちらも止まりませんでした(笑)昔、漫画好きの知り合いの方が、すごく好きなんですよ!と言っていて、アニメもバイブルだ!と言っていたのを思い出して、見た目は純朴で好青年だったけど、やっぱりそういう一面もあるんだなぁ、、なんて詮無いことを考えたりもしてしまいました(^O^;)取り敢えず、また違う作品を読んでこの荒くれ荒んだ気持ちも癒したいなーと思っている、宵の口です(´・_・`)…争い事、諍い事はんたーい!笑笑今回は、平和が一番!と改めて思った読書が出来ました( ・ㅂ・)و ̑̑ >> 続きを読む
2021/05/23 by 澄美空
村田雄介
高校入学して早々パシリにされるほど気弱でいじめられっ子な少年小早川セナしかし、彼にはパシリで鍛えられた驚異的な脚力が・・・アメフトという日本ではマイナー(?)なスポーツを題材にした本作品内容は「友情、努力、勝利」をテーマとする、いかにもジャンプらしい内容だが、そこがいい!また、登場するキャラクターが非常に個性的で、たとえ敵(ライバル)だとしても憎めないやつばかりこの作品を読んでいるとアメフトがしたくなります(笑)(↑まぁ、したくなるだけでやらないとは思いますが・・・) >> 続きを読む
2014/05/07 by ぬますけ
Ulitskaia, Liudmila, 1943- , 沼野恭子
【淡々と、ただ淡々と……】 ソーネチカという一人の女性の一生を描いた作品です。 彼女は本を愛し、図書館に勤務していました。 さほど優れた容貌でもなく、地味な女性だったのでしょう。 そんな彼女にいきなりプロポーズしてきた男性がいました。 彼女よりも随分年上の、ロベルトという芸術家でした。 彼自身は、自分の作品の評価には無頓着のようなのですが、ヨーロッパではかなり高い評価を受けており、また、彼の死後にはその作品に莫大な値がつけられるようになるのです。 ですから、本来ならロベルトはもっと裕福な生活が送れそうなのですが、作品を売ることに頓着しないのか、いつもつぎの当たった上着を着ているような男性でした。 ソーネチカは、ロベルトからの突然のプロポーズに、最初は冗談かと思うのですが、これをすんなり受け入れ、二人で貧しい生活を始めていきます。 二人の間にはターニャという女の子が生まれるのですが、ソーネチカの身体はそれ以上の出産はできないものになっていました。 ソーネチカは、本当ならもっと何人も子供を産みたいのに、産めない自分はロベルトに対して申し訳ないと思わずにはいられないのです。 ソーネチカは、自分はロベルトに愛されていると実感しており、何度も何度も「なんて幸せなんだろう」と思わずにはいられないのです。 しかし、その人生にも波乱が起きます。 大きくなったターニャは、ヤーシャという孤児の女の子と親しくなり、ヤーシャに同情したソーネチカはヤーシャを家に引き取ることにしたのです。 ヤーシャは、一見か弱そうなところもありますが、実はかなり強い、ある意味ではしたたかな女性なのでしょう。 ヤーシャは、ある時、自分からロベルトを誘惑し、その後、二人は関係を続けることになっていきます。 そのことはソーネチカが知るところともなるのです。 普通ならここで修羅場があってもおかしくなさそうなのに、ソーネチカは実に淡々とその事実を受け入れていくのです。 ロベルトは、若い女性を手に入れることができて良かったのではないかなどとさえ考えてしまうのです。 本作は、非常におだやかに、淡々と進んで行く物語です。 ひょっとするともっと波乱万丈、強い感情が渦巻くような物語になりそうなのに、作者はそうはしないのですね。 その辺りがやや物足りなく感じる向きもあるかもしれません。 ですが、本作はそこが一つの魅力になっている物語なのではないでしょうか。読了時間メーター□□ 楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK) >> 続きを読む
2021/03/06 by ef177
横山秀夫
横山さんの警察小説だが、舞台は三ツ鐘警察署。そこは都落ちの集まりのような場所。7つの短編集の中で、誰もがもがき苦しみ事件を追う。中身としては地味だろうが、どの話にも起伏があり、ラストには救いに似たものが。特に「仕返し」で見せる、息子を持つ刑事のラストの決断は潔いが苦い代物。そういう話こそが横山さんの真骨頂。 >> 続きを読む
2018/12/31 by オーウェン
吉田篤弘
月船町に行ってみたいです。つむじ風食堂気になります。先生のその後も気になったり。(10.06.15 読了) >> 続きを読む
2015/06/09 by のこ☆
出久根育 , 梨木香歩
この絵本も、本屋で知っている梨木香歩さんの作ということで購入。ペンキ屋さんに生まれ、ペンキ屋さんとして生き、一生を終えた、職人さんの物語。リタイヤしたわが身とすれば、ぴったりの本。人生長く生きてきたら、どんな絵本でも、どこか自分に置き換えることができるのか、でも仕事人として55年間過ごしてきて、満足できる仕事ができたのか、お客さんに喜んでもらえる仕事ができたのか、周りの人に多少なりとも幸せを感じて貰える仕事ができたのか、・・・静かに振りかえる日々でございます。 >> 続きを読む
2021/03/31 by ごまめ
北方 謙三
まだ読んでる最中です。もともと吉川三国志から入っているので、劉備のキャラクターに驚きました。蜀中心っぽく劉備が善人らしく書かれてるのも物語としては好きでしたが、こちらの描かれ方も好きです。偏りがなくていいかなと。全巻大人買いしたので、読み終えたら詳しくレビューします。----------------ちょっと読み進めたので追記します。初っ端ですが、いわゆる桃園の誓いみたいなことは無いです。劉備が秘めた熱い志を語るのがカッコいいです。「私は一人だ。名も財も無い。無から始めることゆえに、無に帰しても悔やまぬ。自分の命を自分の好きなように使う。笑ってくれていい。私の夢を押しつぶす事は誰にもできぬ」淡々と出来事が書かれるのではなく、心情をよく表現しています。人物の描き方が面白いです。呂布の男気がすごいのです。赤兎馬との別れが泣ける…貂蝉は実在の人物でもないですので、この作品にはいません。董卓への裏切りも、演義の美女連環計とかとは違います。どちらかというとこの作品は、裏切りといっても理由がちゃんとあるそんな感じです。一人称視点の人物が結構変わります。劉備を善人、曹操を悪役と思いそうな演義のとは違って、いろんな人物の心の中にフォーカスを当てているので、個々の魅力を更に感じられるかと。張飛の乱暴さについても、、劉備の徳のために買って出てるんですよ、っていう表現もあります。督郵を殴るのは劉備の方の話ですし。吉川との違いというのをつい意識してしまいますが、それが面白いですね。ついじっくり読んでしまいます。最初に読む三国志は吉川をお勧めしますが、吉川じゃなきゃ、って方でも読んでみると、違った面白さがあると思います。三国志は同じものを題材にいろんな書かれ方をされているのも魅力だと思います。こんな捉え方もあるのかー、と。ぜひ読んでみてください。 >> 続きを読む
2015/04/21 by わだち
ルイス・キャロル , 高橋宏
【キャロルが、アリスのためだけに書いたその一冊がここにあります】 「不思議の国のアリス」はみなさんご存知ですよね。 ルイス・キャロル……もとい! チャールズ・ダドウィッジ・ドジスンが書いた不朽の名作。 でも、キャロルはかなりのロリコン。今の時代だったらそう言われたでしょう。 現代は、何とも窮屈な時代なのかもしれないけれど。 彼は、オックスフォード大学の学寮長でもあったリデル氏と懇意にしており、彼の子供さんの幼い三人姉妹ともしばしば会っていました。 ある日、ボートに娘さん達を乗せ、その間にお気に入りの当時10歳のアリスのために一つの物語を創作したのですね。 アリスは、その物語を大変気に入り、「このお話をちゃんと書き留めておいてね」とキャロルにせがみました。 こうしてできあがったのが、キャロルによる手書きの「アリス」でした。 その後、この本は、キャロルが信頼していた人にも読んでもらい、これは是非出版すべきだとの言葉ももらったことから、改訂の上できあがったのが「不思議の国のアリス」でした。 そうして、出版にこぎつけた「不思議の国のアリス」の挿絵を担当したのが、テニエルでした。 おそらく、みなさんもテニエルの挿絵はご覧になっていることでしょう。 私も大好きな挿絵です。 その後は、みなさんもご存知の通り、誰もが知っている名作として残っているのですね。 さて。 こんなアリスですが、私が今回ご紹介した本は、「最初の最初の」アリスの完全復刻版です。 テニエルの挿絵が入れられる前の、キャロルが自分で書いた挿絵と、自筆のままの、まさにアリスのためだけに作られた、最初の本の復刻版なんですね。 もちろん、英文ですよ。 でも、それを翻訳したもう一つの本もついている2巻仕立てのきれいな本です。 でも、おそらく、これは絶版だと思う。 とても良い本なのにね。 キャロル自身が手筆で、アリスのために書いた本を見てみたいと思いませんか? ええ、復刻版が、ここにあるんですよ。 >> 続きを読む
2020/01/20 by ef177
瀬田貞二 , J・R・R・トールキン
映画3部作は視聴済み。事前に「指輪物語」を読み、この作品もいずれ読みたいと思っていた。購入も考えていたが、図書館にあったので借りて読んでみた。概ね映画版はこの原作に沿ったものだということが文章を読んで理解できたという点が感想。(映画版はエルフのレゴラスが出てきたり、スウマグにとどめを刺すバルドのエピソードが入るのだがそれが脚色だと知ることができた。)あと、違う訳者のバージョンも出ているらしいので機会があれば今度はそちらを手に入れて読んでみたいと思う。 >> 続きを読む
2016/05/11 by おにけん
中谷宇吉郎 , 渡辺興亜
「雪は天から送られた手紙である」という言葉で有名な、雪の博士こと中谷宇吉郎。その中谷博士がアメリカ、ハワイ、満州、アラスカなどを訪れた際の様子を記したもの。今まで自分の中で、中谷博士は人工雪の研究では世界的に名が知られているものの、研究活動自体は日本国内でのみ行っていたとばかり思っていた。が、本書の中での博士は世界を飛び回って、研究を行う颯爽とした姿を見せてくれる。考えてみれば、最初のイメージは根拠なしである上、研究が世界的に知られているのであれば、あちこちから声がかかるので、世界各地を飛び回る事になるのは当然ではある。本書は研究結果の報告や、研究過程の考え方などを述べたものでなく、日記なため、内容的に難しいものは少ない。招待されてアメリカを訪れた時、講演のオマケで日本文化について述べる、と約束した事が、オマケの方が主題のように報道され、冷や汗をかいた話があるかと思えば、満州を訪問した時は、日本の満州開拓のあまりもの準備不足ぶりを批判したりなど、内容は幅広い。読んでいて、博士が一番、楽しそうに描いているのは、やはり研究をしている時の様子。その時の様子が目に映るようだった。印象的だったのは、「地球温暖化」という言葉がない頃から、その事について、うすうす気が付いているフシがあった、という点。雪の博士の面目躍如、といったところだろうか。ただ「温暖化」については、未だに大した対応策を考えつけない自分達、「温暖化」自体を認めていない人々などを中谷博士が見たら、何と言うだろう・・・。 >> 続きを読む
2014/02/15 by Tucker
瀬戸賢一
・どんな本? レトリックについてエッセイや小説、詩などを通して30の技法を学ぶといった構成になっています。レトリックは5部門で構成されているとのことですが、本書では修辞(文体)部門を中心に見ていきます。修辞は表現に肉付けをすることで魅力的に見せる技法です。 隠喩やパロディーといったおなじみのものから、くびき法や撞着法といった少し変わった技法まで紹介されています。 ・レトリックってなに? 本書ではレトリックについて次のように定義しています。『レトリックとは、あらゆる話題に対して魅力的なことばで人を説得する技術体系である』(p.7) ・レトリックを学ぶ意味は? 私達人間は他人を説得するとき、あるいは他人に自分の考えを伝えるために言葉を使います。言葉を巧みに扱う技法であるレトリックを学ぶことで、自分の意見を魅力的に説得力をもって伝えることができます。これは議論の場で、あるいは会社の意思決定の場で強力な剣となってくれることでしょう。一方で魅力的な言葉で彩られた詭弁から、身を守るための盾にもなってくれることでしょう。 >> 続きを読む
2015/10/08 by けやきー
池宮彰一郎
この池宮彰一郎版「平家」を読了して思うことは、今までの「平家物語」が描く、"諸行無常の仏教文学"から、"高度な政治小説"へと変貌を遂げたのではないかという事です。作者の池宮彰一郎は、それまで、"巨悪"というレッテルを貼られていた平清盛を、強固な藤原官僚体制に果敢に挑戦した"改革者"としての視点から描いているのが、非常に斬新で画期的な歴史解釈だなと思いました。行き詰った国家体制の改革という点では、この作品のテーマは、完全に平成の時代の今と二重写しになっており、この小説の中に出てくる「人の食を分け与えられた者は、その国民のために死すべきである」との、痛烈な"官僚批判"は、現在の日本の政治家、官僚、役人などへの行き場のない憤りを覚えている身にとって、一服の清涼剤ともなり、日頃の渇きを癒してくれます。しかし、この優れた歴史小説の素晴らしさは、それだけではなく、作中の人物の平清盛以下、手垢のついた描かれ方をした人物は一人も存在しないという点なのです。その代表ともいえる人物が、通常、武家勢力が台頭してくる中で、対立する源氏と平家を巧みに操ったとされる後白河法皇ですが、特にこの長編歴史小説の下巻において、清盛の死が目前に迫った事を知った法皇が、嗚咽する場面は、単に"最大の政敵こそが最大の理解者"である、という事以上に、一代の英傑の志の行方を嘆ずる名場面として、永く歴史小説史上に残るのではないかと思います。そして、潰えたかに見える清盛の志が、"希望と諦観"の中から浮かび上がって来るラストの大原御幸まで、池宮彰一郎は生命を削りながら渾身の大作を完成させたのだと思います。 >> 続きを読む
2016/10/08 by dreamer
高畠純 , 越野民雄
オレ・ダレ表紙からわかるとおり、大人が見たらすぐにわかるのですが、小さいお友達からすると難問がいっぱい詰まっています。黒い影を見ると、やっぱり怖くなっちゃうみたいで、ページをめくる度に、私の腕を掴んでいる手にキュッ♪って力が入るところがとってもカワイイでーす☆結局、全部のページで「お姉ちゃんと一緒だから怖くないよね♪」って励ましていました。なんだかわたしも一緒に冒険した気分でーす☆ >> 続きを読む
2013/02/19 by tamo
立川談志
父が亡くなった。読もうと思って図書館から取り寄せて、結局読まず終いになってしまった。読みたい最後の本がこの、談志の落語だったとは。自分の落語をやるつもりで、そのネタ本として借りてきたのだ。代わりに娘が読んでやろうと思う。落語というのはしゃべるもの、聞くもの。「書いたもの」というのは、普通存在しないらしい。饅頭怖い/天災/松曳き/清正公酒屋/雪てん/豆屋/子ほめ/つるつる/庖丁/権兵衛狸/宿屋の富/らくだ上記12の噺が収められている。私が知っている噺が3つあった。「談志(わたし)の書いた落語は面白いのだ」と豪語する。「天才落語家の挑戦。名作落語が現代に甦る」とのコピー。落語は噺家が随時アレンジし、個性的な演技をし、自分の得意を持ち、演者によって違うものになる。クラシックの演奏家もそうだ。と、思っていたけれど。落げ(さげ)まで変えて演じることもあるのは、知らなかった。自分に談志が好きかと聞かれたら、好きじゃない。と答えるだろう。落語通ではないので、彼の「名人」な度合いがわからないのだ。(すみません)理屈っぽさと態度のでかさが目に付き鼻につくので、どうも単純に楽しめない。本ではひとつひとつの噺の後に、本人の解説が入る。なるほどこれは、落語についての知識が増えるし本人の意図がわかって有用だ。「子ほめ」の落げ、は変えない方がいいよ。「灘の酒」がわからないなら教えればいいし、昔の歳の数え方だって、こういう話があるから知るきっかけになる。そのチャンスを噺家が「通じない」って言って削除したら、知る機会そのものが失われるじゃないか。なんて、生意気に意見したくなったりした。談志はどう答えるだろう。本を読んで、二つの感想をもった。一つは、今までの印象通りの上から目線。彼は自分を「家元」と呼ぶのだが、それへの違和感。落語は「芸術」だろうか?伝統もある立派な「芸」だとは思うけれど。笑いというものが、緊張からの解放であるならば、偉い人がやっている芸術だと思ったら笑えないんじゃないだろうか?落語は反体制の芸だが、体制側の政治家やってたし…。このあたり、私にはよくわからない。もう一つは、情熱だ。古典落語は最近敬遠されている。理由はいろいろ。ウケるのが難しい、時代の流れにより通じない言葉、シチュエーションが多数ある、演る側が伝統を意識してしまい自己流がやりにくい。などだろうか。その古典落語にわざわざ「俺流」を投入するのが談志というわけ。自由に現代を混ぜ込み、知識を披露し、時に噺家が話に割って入る奔放ぶり。その無謀とも思われる勇気と才気は他の噺家にはないものなのだろう。「どこかで、己を出さないと満足しない芸人の業」落語への愛とわがままな生き方をまざまざと感じ取れる。こういう出版がなされたことが、貴重な試みであったと思う。 >> 続きを読む
2012/05/14 by 月うさぎ
あべ 弘士きむら ゆういち
「あらしのよるに」シリーズの第3弾。今回はメイがガブに会っている場所に、事情を知らない友達ヤギのタプが来てしまう事によるドタバタが描かれる。メイとガブの関係がバレてしまうかどうか、ハラハラする展開。タプはガブの姿がよく見えないので、まさかオオカミとは思わず、さんざんオオカミの悪口を言う。それを聞いても、メイの友達だから、と怒る事なくガマンするガブ。この辺り、ガブの人柄・・・いや狼柄が窺える。が、さんざんオオカミの悪口を聞かされた挙句、ついに一声吠えて、森の中に走りこんでしまう。ただ、それは相手を威嚇するためでなく、普通のヤギがオオカミの事をどう思っているかを知ってしまった悲しみの声。「もしかしたらメイも、心の奥底では、そんな風に思っているのでは」と思ってしまったのだろう。だが、メイは「そんな事はない」と否定し、また会い続けよう、と約束する。落ち込んでいたガブは、メイのその言葉に救われる。地味かもしれないが、今回はメイとガブがお互いを思いやる気持ちが印象に残った。 >> 続きを読む
2014/05/17 by Tucker
あらしのよるにシリーズの第4弾。今回は、サスペンス(?)のような展開。ガブはメイにキレイな月を見せたい、と思い、ポロポロヶ丘へ誘う。が、折りしもオオカミのギロとバリーが、たまたまメイを見つけ、食べてしまおうとつけ狙う。バリーに、手伝うように言われるが、ガブは手伝うフリをして、メイを助けようと決心。ガブの活躍で、メイは無事。ただ、ギロやバリーと話を合わせるため、メイにも聞こえているのを知りながら「ヤギを食いたい」と言ったのを悔やむ。だが、メイの方もそれは充分、承知の上だった。それどころか、2匹は、それを冗談のネタにすることもできる間柄になっていた。ところで、ガブがメイをこの場所に連れてきたのは、ここから見る月がとてもキレイだから。特別編の「しろいやみのはてで」で出てくる事だが、ガブは何かツライ事があると、ここへ来て、月を眺めていたそうだ。仲間のオオカミに言ったら、バカにされるだけと思って、黙っていたが、メイは分かってくれそうな気がしたので、連れてきた、と話している。メイは元から「繊細」というイメージだったが、ガブも充分「繊細」なのだろう。「ロマンチスト」と言うべきか?だからこそ、2匹は、馬が合ったのかもしれない。4 >> 続きを読む
2014/05/25 by Tucker
出版年月 - 2002年12月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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