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2003年7月発行の書籍

人気の作品

      博士の愛した数式

      小川洋子

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!

      • 小川洋子の第55回讀賣文学賞小説賞受賞作「博士の愛した数式」を読み終えました。

        交通事故のせいで、記憶の蓄積が1975年でとどまり、以降80分間しか記憶が持続できなくなった数学者の博士。
        家政婦紹介組合から派遣され、博士の身の回りの世話をしている「私」。
        阪神タイガースファンの10歳の息子。

        「博士の愛した数式」は、著者・小川洋子の小説が常にそうであるように、行間から温かみがほのかに立ち昇ってくる、愛にまつわる物語だ。
        でも、それは激しい感情を伴う愛ではない。

        「私」の息子を、頭のてっぺんが平らだから「どんな数字でも嫌がらず自分の中にかくまってやる、実に寛大な記号、ルート」と名づけ慈しむ博士の、幼き者に寄せる無償の愛。

        世界の不思議と歓びと真実を、数字と数式で詩的に表す博士に向けられる「私」とルートの深い敬愛の念。

        博士の記憶が続かないから、毎日、初対面同士として出会い直す三人の間に、それでも蓄積されてゆく礼儀正しくて、しかし少しもよそよそしくない親愛の情を示すエピソードの数々が素晴らしい。

        記憶障害のために、背広のあちこちにメモを留めている博士。
        なかでも、一等大切にされている「私」とルートに関する覚え書き。
        靴のサイズなど「私」やルートにまつわる数字を、素数や友愛数といった"数の概念"で愛情たっぷりに表現し、二人に数字の神秘や美を優しく伝授する博士。

        凄い業績を残しているのに「神様の手帳をのぞき見して、ちょっとそれを書き写しただけのこと」だからと呟く博士の、驕ることのない、控え目で純粋な魂に触れ、そんな博士を全身全霊で守りたいと願う「私」とルート。

        聖家族とでも呼びたくなるような三人の深い心の交流。
        著者は、それを抑制の効いた筆致で描いていくんですね。
        そして、説明を極力避け、その上品な文体ゆえに、逆にくっきりと浮かび上がってくるんですね。

        淡白な交歓の情景の底に流れている、強い絆をもった愛情の気配が-------。

        「不自然極まりない概念を用い、無関係にしか見えない数の間に、自然な結び付きを発見した」という、オイラーの公式に込められた博士の思い。

        それが、読み終えた後、しみじみと胸を打つんですね。
        カラカラに乾いた心に、しっとりと潤いを与えてくれる、そんな作品なんですね。

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        2018/11/11 by dreamer

      • コメント 2件
    • 他10人がレビュー登録、 45人が本棚登録しています
      予知夢

      東野圭吾

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • ガリレオシリーズ2作目。

        1作目にも増して科学的トリックが多くなっているし、湯川が関わる部分も刑事とかなり遜色なくなってきている。

        予知夢や心霊写真。ポルターガイスト現象に火の玉。
        こういった現象に対し、湯川がきっちりとケリをつける解き明かしが見もの。

        5話目の「予知る」が一番印象に残ったが、解明できない謎というのも世の中には溢れているのだと。
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        2018/11/08 by オーウェン

    • 他6人がレビュー登録、 71人が本棚登録しています
      デッドエンドの思い出

      吉本ばなな

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • どこかで経験したような切なさの在る恋愛話は悪くない読了感。この季節に読めたのも良かった。 >> 続きを読む

        2017/11/16 by hiro2

    • 他4人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      鳥人計画

      東野圭吾

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 東野圭吾とスキーは切っても切れない関係。
        なのでこういう物語が出来るのも必然。

        天才ジャンパーの楡井が毒物死を遂げる。
        その不快な死に警察は捜査をし、コーチや選手などの関係者が犯人であると突き止めるのだが。

        実は犯人はかなり早い段階からばらされている。
        でもそれで完結とはならず、見せたいのはその裏に隠されている鳥人計画なるものだ。

        実際海外ではこんなことやっていそうな設定がリアルだし、ジャンプの角度や踏み切りなど細かい描写も多い。
        ラストはある種の含みを残すが、こんな未来は来てほしくないな。
        >> 続きを読む

        2018/08/14 by オーウェン

    • 他3人がレビュー登録、 26人が本棚登録しています
      蹴りたい背中

      綿矢りさ

      河出書房新社
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!

      • 青臭い。なのに、独善的ではない。描かれているのは、高校生の世界。
        なのに、ハイティーンだけでなく、それこそリストラ世代の胸にも届く言葉に溢れている。

        綿矢りさの第130回芥川賞受賞作「蹴りたい背中」は、"17歳の女子高生が書いた"という話題だけが先行しがちだったデビュー作「インストール」より遥かに普遍性の高い、この若い作家の明るい未来を予告するファンファーレのような晴れやかな小説だったように思う。

        主人公は、高校一年生のハツ。友達は、中学生時代から一緒の絹代ただ一人なのだけれど、その彼女も新しい友人グループを作ってしまい、ハツはクラスで浮いた存在になっている。

        ある日、もう一人のクラスの余り者、にな川に家に来ないかと誘われる。
        にな川は、ハツが中学生の頃、偶然に出会ったモデルのオリチャンの大ファンで、彼女の情報を集めていたのだった。

        「どうしてそんなに薄まりたがるんだろう。同じ溶液に浸かってぐったり安心して、他人と飽和することは、そんなに心地よいもんなんだろうか」。

        独りきりで過ごす休み時間や、昼寝タイムの居心地の悪さをつらいと感じても、ハツはだからといって無理に仲間を作りたいとも思わない。
        練習をさぼることばかり考えている陸上部の、仲良しクラブのようにぬるい雰囲気にも馴染むことができない。

        でも、中学時代にはそうしたグループの一員だったこともあるハツは「人のいる笑い声ばかりの向こう岸も、またそれはそれで息苦しい」のを知っている。
        笑いたくなくても笑って、他の人に調子を合わせなくてはならない暗黙の掟の窮屈さを知っている。

        だから、よくいえばニュートラル、悪くいえばどっちつかずの状態にあるハツ。
        それゆえに、自分より一層、他者と交わらず、オリチャンという幻想の中に閉じこもっているにな川が、気になって仕方なくなってしまうのだ。

        でも、それは"好き"という感情とは違う。
        オリチャンのラジオ番組を、「この方が耳元で囁かれてる感じがするから」と、片耳イヤホンで聞くにな川の「この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい。痛がるにな川を見たい」という欲望に耐えきれず、凄まじい力で蹴り倒すハツ。

        一緒にオリチャンの初コンサートに行き、地震が起こればいい、地震が起きたら自分がオリチャンを助けるんだという妄想を口走りながらも、しかし、絶対に地震など起こらないことも分かっているにな川が、絶望的な表情を見せれば「にな川がさびしい。彼を可哀想と思う気持ちと同じ速度で、反対側のもう一つの激情に引っぱられていく。にな川の傷ついた顔を見たい。もっとかわいそうになれ」と思ってしまうハツ。

        勉強ができるわけじゃない。ルックスがいいわけじゃない。何か特技があるわけでもない。
        だから、独りとはいっても、それは孤高の存在なんてカッコイイものではなくて、クラスのお荷物的な存在としての独り。

        ハツは、そんな自分の情けない立場をよく知っている。
        ところが、にな川ときたら、自分以上にクラスメートから異物扱いを受けているのに、意にも介さない。
        オリチャンさえいれば満足なのだ。オリチャンのグッズに囲まれていれば幸福なのだ。

        そんなにな川に対する共感と苛立ちと、ほんのわずかな羨望と-------。

        一歩間違えば陰惨な、しかも哀しいくらい低レベルないじめに向かってしまいそうな、そうした心象を、著者の綿矢りさは、簡単に決着させることなく、丁寧に、でもくどくはない、どちらかといえば軽いユーモラスな筆致で描いていく。

        そして、ハツとにな川の関係性を開いたまま、物語を閉じる。
        19歳にしか書けない、けれど普通の19歳には決して書くことができない。
        まさしく、この作品は、新しい才能の開花を告げる慶賀の一冊なのだと思う。
        >> 続きを読む

        2019/02/09 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      思い出のマーニー

      RobinsonJoan Gale , 松野正子

      岩波書店
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Moffy
      • (上下巻あわせての感想です)

         この物語はわたしの中では「新刊」でした。
        ジブリアニメの2014年新作の原作がこれ、と聞いて、そういえば読んでなかったなぁ、と思い手にとりました。
        (ジブリは本当に良質の児童文学を知っていると思います)

         この本が出版されたのは1967年なのですが、日本で岩波少年文庫になって出たのが1980年。
        岩波少年文庫を「実年齢で」追いかけていたのは小学校、中学校の時で、まだ日本語には訳されていませんでした。

         学生当時、映画研究会に入っていて、合同サークルだった為、他の大学の文化祭なんかも行ったのですが、そこに「児童文学研究会」を見つけ、おお、こちらでも良かったなぁと思った事を覚えています。
         
         そこで発表されていたのがこの『思い出のマーニー』
        今では、古典なのかもしれませんが、当時は「ええ?新刊かぁ。いつか読もう」で、実際読んだのがずいぶんと遅くなってしまいました。

         なんと言っても、この物語の舞台がイギリス・ノーフォークであることが魅力。
        海に近くて川がたくさんあって、湿地帯がたくさんあるところ。潮の満ち引きがあって、ボートや帆走がさかんな所です。

         大好きなアーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』のシリーズの中で、Dきょうだい(ドロシアとディック)ものというのがありますが、Dきょうだいが、休暇に訪れて帆走を学ぶ場所です。

         物語はアンナという少女が主人公。
        親は死んでしまい、養い親となんだかぎくしゃくしているロンドンに住む子ですが、ぜんそくの治療の為、夏休みを繰り上げてこのノーフォークの村に来ます。

         友だちがいない、というより自分の殻にこもって、全く友だちを作ろうという気がない女の子。
        このノーフォークの湿地に屋敷があって、そこで同じ年のマーニーという少女と出会い、気があい友だちになります。

         しかし、村人は屋敷は誰も住んでいないといい、マーニーの事は誰も知らない。
        秘密の友人ができたアンナですが、どうもマーニーと言う事が食い違うのです。

         時を超えて・・・という児童文学ではフィリッパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』やアリソン・アトリーの『時の旅人』といった
        佳作があるのですが、この物語はアンナの心情、殻にこもって心を閉ざす様子がとても繊細。

         ノーフォークの川や海で、ひとりで何時間も過ごすことができる。
        大人が「かまわないでくれる」ことを望むのですが、それは「気にかけてほしい」の微妙な裏返しの気持です。

         しかし、天真爛漫なマーニーはそんなひねくれたアンナを受け入れてくれる。
        気のあう友人というのは、子供であっても合う、合わないがあるので難しいのですが、アンナはマーニーという少女が大好きになる。

         訳をした松野正子さんがあとがきで書かれている通り、最初の出だしは気難しいアンナのあれこれ、なのですぐには入り込めないかもしれません。

         しかし、ノーフォークの様子が生き生きと描かれているので、その辺は大丈夫なのです。
        アンナは、性根の腐ったこどもではないので、すぐにすくすくと成長するので、安心して読める一冊。
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        2018/06/02 by 夕暮れ

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      出家とその弟子

      倉田百三

      岩波書店
      カテゴリー:戯曲
      3.5
      いいね!
      •  浄土真宗の宗祖 親鸞聖人と
        その弟子達とのやりとりを題材にした戯曲です。
        戯曲ですから台本形式なのですが、
        特に違和感なくスラスラ読めます。
        時代の古さも気になりません。
         
         親鸞聖人の弟子 唯円が書いたとされる
        歎異抄を下敷きにしているそうですが、
        小難しいことは一切かかれていません。
         
         浄土真宗のことは詳しく知りませんが、
        「人を憎むな、自分を責めるな、すべて許して受け入れろ、
        全部を仏様にゆだねるのだ」
        といったことが ひたすら繰り返し平易に述べられています。
         
         そんな親鸞聖人の教えを上手に受け止められず、
        聖人の実の息子や とてもかわいがっている弟子が
        生きていく悩みに打ちのめされているエピソードが物語の中心であり、
        親鸞聖人自身も往生を迎える最後の場面まで
        葛藤をもっていたことが描かれています。
         
         発表当時(大正のころ)には大ベストセラーになったそうですが、
        今読んでも考えさせられるところのある作品です。
        >> 続きを読む

        2018/08/29 by kengo

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      ヨーロッパ思想入門

      岩田靖夫

      岩波書店
      カテゴリー:西洋哲学
      4.0
      いいね!
      • ギリシアの思想とヘブライの信仰(ユダヤ教・キリスト教)を源泉として、ヨーロッパ思想の流れが語られます。

        3部構成で、1部がギリシアの思想、2部がヘブライの信仰、そして3部がヨーロッパ哲学の歩みとなっており、3部では中世から現代までを一気に駆け抜けます。

        この3部がめちゃくちゃ難しい(笑)。

        しかし、飲みこみの悪い私でも、現代哲学がギリシアの思想とヘブライの信仰の礎石の上にあるということだけはかろうじて理解することができ、目から鱗でした。
        恐らく私たちの思考にも影響があるのではないでしょうか。


        印象に残っているのはイエスの有名な説教について書かれているところ。
        自分を愛してくれる人を愛したり、自分をよくしてくれる人によくするのは、善意ではない。そんなことは罪人でもしている。
        お返しを何も期待せずに、善いことをするのが「敵を愛せ」の意味だそうです。

        3部の最後に、レヴィナスの思想の背景にはこういったヘブライ信仰があると。
        彼の著作をぜひ読んでみたいと思いました。

        ちなみに、巻末の読書案内には、『倫理と無限』がレヴィナス哲学へのもっともやさしい入り口として紹介されています。
        >> 続きを読む

        2014/11/04 by でま!

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      くらのかみ

      小野不由美

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!

      • 小学六年生の夏休み、父に連れられて母方の実家に帰省することになった耕介。

        家督相続の話し合いに忙しい大人たちをよそに、親戚の三郎にいさんに教えてもらった遊びを、子供四人で試していたら「耕介くん、真由ちゃん、音弥くん、禅くん。」「-----あたし。」---いつの間にか子供が一人増えていた!!

        蔵の中の"四人ゲーム"で現われた座敷童子は、一体誰なのか?

        一方、本家の夕飯で食中毒事件が発生、子供たちは即席の探偵団を結成して、旧家にまつわる謎に立ち向かうのだった-------。

        この作品は、講談社が創刊した少年少女、そして、かつて子供だった大人向けの叢書"ミステリーランド"の第一回配本であり、ロジックを軸にしたジュブナイルミステリの傑作だ。

        郷愁を誘う夏休みの風景の中で繰り広げられる捜査は、意外に骨太で、子供の手書きを模した図表やタイムテーブルが、あちこちに挿入されているのも楽しい。

        しかし、何より素晴らしいのは、座敷童子の存在が、容疑者の限定を阻むある盲点になっていることだろう。

        童子が正体を現わすと同時に、これまで見過ごされてきた消去法が成立する瞬間は、ほとんど感動的ですらある。

        >> 続きを読む

        2019/01/25 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      あなたが世界を変える日 12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ

      Cullis-SuzukiSevern , ナマケモノ倶楽部

      学陽書房
      カテゴリー:公害、環境工学
      5.0
      いいね! tamo sayaka
      • 1992年のブラジルのリオデジャネイロで開催された国連の地球環境サミットで当時12才だったセヴァン・カリス・スズキ先生が子供の環境団体の代表として地球環境問題についてスピーチした内容とその背景をまとめた良書。たった12才で世界の人たちの共感を得るようなスピーチをして、世界の環境問題への関心を高めることに成功したなんて心から尊敬。もちろんセヴァン・カリス・スズキ先生個人の才能や努力もあるだろうけれど、12才の女の子に地球環境問題を真剣に考えるきっかけや環境を与えた周りの大人たちもすごいと素直に思う。 >> 続きを読む

        2017/09/18 by 香菜子

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      七度狐

      大倉崇裕

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 落語ミステリ第2弾。
        短編だった前作と変わり、長編の本格ミステリとなっている。

        春華亭一門の跡継ぎを決めるため、人がいない片田舎の屋敷で行われることに。
        取材のため緑は現地に向かうが、頼れる牧は出張で来れない。
        そんな折一つの殺人事件が起きる。

        短編はあくまでも軽いテイストだったが、こちらは落語でもホラー要素の入った類い。
        そもそも七度狐は狐に化かされた人間の末路という話。

        その見立てによって連続殺人となるが、それは一族の歴史に秘密が。

        落語に疎くても問題はないこのシリーズ。
        2作目にして読みやすくなった印象。
        >> 続きを読む

        2018/08/11 by オーウェン

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      過ぎ行く風はみどり色 (創元推理文庫)

      倉知 淳

      3.5
      いいね! ooitee

      • 今回読了したのは、連作短編集「日曜の夜は出たくない」でデビューを飾った倉知淳の第一長編「過ぎ行く風はみどり色」。

        猫丸が今回訪れたのは、後輩の方城成一の実家であった。
        半ば勘当状態の成一だが、祖父の兵馬が胡散臭い霊媒師を信心していると聞いて心配になり、久々の帰宅とあいなった次第だ。

        成一は、彼を兄と慕う従姉の左枝子や妹の美亜、家政婦のフミたちから温かく迎えられたものの、祖父との和解を果たすことはかなわなかった。

        兵馬は、密室状況にあった屋敷の離れで殺害されてしまったのだ。

        霊媒師が予言したように、事件は神霊の仕業なのか?-------。

        超心理学に関する蘊蓄は詳細を極めつつ、随所に皮肉がまじる。
        もっとも、著者の倉知淳は、オカルティズムを声高に弾劾するわけではなく、猫丸先輩の口舌は、妙に滑稽味を帯びているのだ。

        著者もまた、猫丸と同じく「その興味の赴くところ、とりあえず首を突っ込んでみないと収まらない性格」なのかも知れない。

        著者のオカルトへの"ひねくれた愛好"は、渋谷で霊感占い所を営む辰虎叔父を探偵役に据えた連作短編集「占い師はお昼寝中」や、電波妄想ミステリ「壺中の天国」といった作品にも結実していると思いますね。

        >> 続きを読む

        2018/11/10 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      放浪息子 (1) (BEAM COMIX)

      志村 貴子

      4.5
      いいね!
      • とにかく痛くて、切ない。
        男の子だ、女の子だってこともだけど友人関係とかの。
        両親や家族がやさしくてホンワカしてくれるのがイイね。
        無償の愛情ってやつだな。
        >> 続きを読む

        2018/07/30 by motti

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      大学・中庸 (ワイド版岩波文庫)
      4.0
      いいね!
      •  一般に出回っている大学・中庸は朱熹の注釈に基づいたものを使用しているが、ここでは朱熹の注釈によらない、すなわち朱熹の思想の入っていない古い読み方を中心に扱い、参考として朱熹の序文、読み方を掲載している。

         もともと大学・中庸は埋もれていた書物であるが、読んでみればなかなか良いことが書いてある。これを朱熹が広めたいと考えたことは理解できるし、序文からもその思いは伝わってくる。しかし朱熹の注釈を読むと理と気の考え方を広めるために大学、中庸を利用したともとらえることができてしまう。ここが注釈の危ういところで、難解な文章の理解のためには注釈が必要であるが、そこに注釈を付ける者の思想が入り込む余地があるともいえる。ただ、朱熹の場合はこだわりのポイントがわかりやすいので、そこにさえ気を付けて読めばよい。

         大学では学ぶことの意味、心構え、そもそもなぜ学ばなければならないかが述べられている。上に立つものに向けて書かれたものであるのだが、学ぶという行為そのものに対する指針を示すものであるため、立場によらない普遍的な内容となっている。一方で中庸は「誠」を説いたものといえるが、自然や宇宙のありようと誠を結びつけているところに難解さがある。ただ、丹念に読んでいけば言わんとすることは伝わってくる。

         なぜ学ばなければならないか、学ぶということはどういうことか、どう学ばなければならないかという忘れがちなことを思い出させてくれる。朱熹ではないが、このようなものが埋もれているのは確かにもったいない。学ぶということの大切さを伝えるためにも、漢文の授業を通してでもよいので公教育の場で扱うべきだと思う。
        >> 続きを読む

        2019/06/30 by 夏白狐舞

    • 1人が本棚登録しています
      思い出のマーニー〈下〉 (岩波少年文庫)

      ジョーン ロビンソン

      4.8
      いいね! Moffy
      • やっぱりこの作品はとても素晴らしい!^ ^
        人と人とのつながりを教えてくれる、とても暖かい本です。

        今自分が不幸だと、愛されていないと思っていても……決してそうではないと思う。
        いつも知らない所で、たくさん愛をもらっている。感じないのは、自分がそれに気が付いてないだけ。
        マーニーは「第二のチャンス」を決して失ってはいなかった。
        時と場所を越えて、寂しさで心を閉ざしたアンナにありったけの愛を届けた。
        アンナが後になって友達が出来たのも、ミセス・プレストンに心を開き始めたのも、明るい子になったのも……それはきっとマーニーの愛のおかげだった。
        人の思いと愛情って、本当に不思議。
        >> 続きを読む

        2017/09/04 by deco

      • コメント 2件
    • 4人が本棚登録しています
      彼のバターナイフ (角川文庫)

      内田 春菊

      4.0
      いいね!
      • 男性に知っておいて欲しいと思ったこと

        女をフェラチェオ好きにするのは相手の男の態度次第。
        カノジョの女友達に手を出そうとするとカノジョに連絡がいく。女友達の間にも友情はある。
        コンドームを使うのは避妊のためではなく性病予防のためでもあり、自分がカノジョから病気を移される可能性もある。カノジョが自分以外の男とヤっていないという確証はないのだから。
        >> 続きを読む

        2017/08/20 by kikima

    • 1人が本棚登録しています
      機動戦士ガンダムthe origin

      安彦良和

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
      いいね!
      • ガルマは坊や。マクベ登場。アムロは木馬を飛び出す。セイラさんそわそわ。

        2016/06/25 by aya5150

    • 1人が本棚登録しています
      パパはウルトラセブン・みんなのおうち home sweet home

      宮西達也

      学研マーケティング
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      3.5
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      • 世の父親の皆さんが、いかに一生懸命仕事をし、頑張っているのか…。父をウルトラセブンに例えて、その戦う理由を描いている絵本です。

        パパは愛する家族のため、毎日戦っている。時には負けそうになることもあるが、家族と触れ合い、子供の成長に感動し、そのパワーでまた戦える。

        ~の巻的な、出来事を短くまとめた短編の描き方で分かりやすいです。

        ママと子供はパパの愛情に感謝出来るし、パパは凹んだ時に読むとまた力が湧いてくるような本だと思います(^^)
        家族みんなにオススメする絵本です♪

        まだこれしか読んでいませんが、シリーズがたくさんあるようですね!

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        2013/05/21 by kumahachi

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      神聖ローマ帝国

      菊池良生

      講談社
      カテゴリー:ドイツ、中欧
      4.0
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      • 神聖でもなければ、ローマでもない。

        世界史において捉えどころのない国として
        「神聖ローマ帝国」を超えるものは他にないだろう。

        「神聖ローマ皇帝」は天皇とも中国の皇帝とも全く異質の
        君主像を有するという点で、我々アジア人にはなかなか難しい概念である。

        カール大帝の西ローマ皇帝位戴冠に始まる「皇帝」の復活は
        ドイツに背負わされた歴史の始まりであった。
        ドイツの領邦君主たちも後に皇帝位を世襲することになるハプスブルク家もその歴史を背負わされた。

        奇しくも彼らを救ったのは、帝国を滅ぼしたナポレオンだった。「フランス皇帝」の登場によりハプスブルク家の「皇帝」も中世的皇帝理念の呪縛から救われることになるのだ。
        >> 続きを読む

        2014/11/10 by ShinminTM

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      陰摩羅鬼の瑕

      京極夏彦

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 京極夏彦の「陰摩羅鬼の瑕」を読了しました。

        「塗仏の宴」で、複雑化の極みに達したかのような「百鬼夜行」シリーズですが、この作品は一転して、かなりシンプルで風通しのいい物語になっていると思う。

        白樺湖畔に聳える霊廟の如き大豪邸、通称「鳥の城」。
        無数の鳥の剥製が並ぶこの洋館の主・由良昂允元伯爵は、城から一歩も外に出ることなく育ち、万巻の書を読んで世界を識ったという人物だ。

        彼は過去四度結婚したが、花嫁はいずれも初夜に殺害されていた。
        五度目の婚礼を控えた彼は、探偵の榎木津礼二郎に花嫁を守るよう依頼するのだった-------。

        この作品は、視点となる登場人物の切り替えがミスディレクションの役割を果たしているとはいえ、真相に早い時点で辿りつくのは、それほど難しくはない。

        それほどシンプルな作りであるにもかかわらず、飽きさせずに最後まで読ませる筆力と構成力は、さすがに京極夏彦、非凡の一語に尽きる。

        いつまでも尾を曳く結末の哀切な余韻は、シリーズ中でも屈指の出来栄えだと思いますね。

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        2018/09/04 by dreamer

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出版年月 - 2003年7月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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