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アガサ・クリスティ , 中村妙子
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【クリスティだけどミステリではない。しかし、とても恐ろしい作品である。】 以前、『アガサ・クリスティー完全攻略』という本をレビューしましたが、その本では著者がクリスティの邦訳されている全作品を読破した上で、ベスト10を選出していました。 著者が選んだベスト10は、私の感覚とは異なるものではありました。 ただ、その中には私が読んでいない作品が上位にランクされていたことから、「そんなに高評価ならば読んでみなくては」とも思ったのです。 ということで、本作は第5位にランクインしている作品で、図書館にもありましたので借りてきてみました。 さて、本作はクリスティの作品ではありますが、ミステリではありません。 殺人などの何の事件も起きません。 強いて言えばサスペンス的な要素を持っているとはいえるかもしれませんが、それもさほど強いものではなく、一般小説として読まれるべき作品でしょう。 主人公のジョーンは、弁護士の夫と3人の子供を持った主婦で、これまでうまく人生を生きてきた、自分はあれこれのことに気を配り、子供を上手に育て上げ、幸せな家庭を築いてきたという自負を持った女性です。 彼女は、結婚して嫁いでいった末娘が急病になったという知らせを受け、単身ロンドンを発って末娘家族が住むバグダッドへ行ってきた帰りでした。 末娘の容体はそれほど案ずるほどのことでもなく、あれこれと世話を焼いてロンドンに帰るところなのでした。 ジョーンは、帰路の途中で立ち寄った鉄道宿泊所で、偶然、女学生時代の同級生のブランチと再会します。 ブランチは、女学生時代、生徒たちの憧れの的であり、家柄も良く、幸せな将来が約束されたような女の子だったのです。 ところが、実際には、ブランチはろくでもない男に夢中になり、また、自分が生んだ子供の面倒をみることを放棄して別の男に走るなど、ジョーンからすれば散々な人生を歩んだ女性でした。 今、こうしてブランチの姿を見ると、年齢の割にはすっかりくたびれ果てて老け込んでおり、服装もみすぼらしく思えました。 それに比べて、鏡に映る自分の姿は、まだ若々しく、身なりもちゃんとしているではありませんか。 結局、本当の幸せをつかんだのは自分なのだと思うジョーンでした。 ジョーンを見かけたブランチは気さくに声をかけてきて、一緒にお茶を飲もうと誘ってくれました。 ブランチは、自分の人生がどういうものだったかについてあけすけに語るのですが、どうも大して後悔もしていないようにジョーンには感じられました。 あるいは露悪趣味? そんなブランチの姿を見るにつけ、ジョーンはつくづく自分はしっかりと生きてきたんだと安心するのでした。 ジョーンは、ブランチに対して、自分は毎日毎日、地区病院の理事職、施設の評議員、ガールスカウトのリーダーその他もろもろの仕事で忙しくしているので、一週間でも良いから何もせずにぼんやり過ごしてみたいなどとも言うのです。 翌朝、ジョーンはブランチと別れて一人で自動車で鉄道駅へ向かうのですが、生憎の雨のため旅程が遅れてしまい、駅に着いた時には乗るはずだった列車は既に出発してしまっていました。 仕方なく、駅の宿泊所に泊まることになったのです。 列車は週に三便しかありません。 宿泊所周辺は良い天気なのですが、その他の地域では雨が降り続いているらしく、列車は遅れに遅れていて、いつ到着するか分からないというのです。 それなら、ブランチに話したような、何もすることがない時間が望み通り手に入ったのだからと考え、ジョーンは宿泊所近くで無為な日々を過ごし始めたのです。 最初のうちは、こういう何もしなくても良い時間は良いものだなどとも考えもしましたが、すぐに飽きてしまいました。 持ってきた本もすべて読んでしまい、何もすることが無くなってしまいます。 ジョーンは有り余る時間を潰すために色々なことを回想し始めるのです。 ところが、思い出すことは不愉快なことばかり。 幸せな人生を歩んできたはずの自分なのに、何故こんなに嫌な事ばかり思い出してしまうのだろう? それとも、自分の人生というのは本当は幸せなものではなかったのだろうか? 子供たちはみんな良い子で、私を愛してくれていたのに、幸せじゃないなんていうことはあり得ない。 でも……、あの時、あの子が言った言葉の意味は、本当は……。 私は、愛する夫をしっかりと支え、夫がろくでもない農園を経営したいなどと言い出した時も、しっかり引き留めてちゃんと弁護士事務所に勤めさせた良い妻ではないか。 でも、本当は、夫は……。 ジョーンは、徐々に、自分の人生が本当に正しかったのか、自分は良い妻だったのか、自分は幸せだったのか等について疑いを抱くようになっていきます。 自分一人だけが何も分かっていなかったのではないか、と。 これまで確固たるものと信じていたことが、突然根底からぐらつき始めるというプロットは、クリスティはミステリの中で使ったことがありましたが、本作は、それを何の犯罪も起きない一般小説の中で語っているのです。 これは、大変恐ろしいことではないですか。 さて、本作についてどう評価するか。 まず、ラストがどうなるのかが読んでいる途中から気になり始めました。 あっちへ持っていくのか、それとも……。 そして、読み終えた後、最後に書かれているエピローグは必要だったのだろうかとも考えました。 もちろん、エピローグを書いた方がクリスティの意図は明確になるでしょう。 ですが、私は、あるいはエピローグは不要だったのではないかとも思えました。 大変恐ろしい、また、読んでいて辛さを伴う作品だったと思います。 本作に高い評価を与える読者がいることも理解できるところです。 ただ、私がこの作品を好むかというと……。 なお、蛇足ですが、文庫版の表紙に描かれている女性(これってジョーンですよね?)って、何故ビーサンのようなサンダルを履いているんでしょうか? 私、どうもそこが気になってしまって、気に入らない点の一つなんですが……。読了時間メーター□□□ 普通(1~2日あれば読める) >> 続きを読む
2020/10/13 by ef177
石田衣良
映画化もされ、直木賞候補作にもなった石田衣良さんの代表作ともいえる一冊で気になっていたので図書館で借りて読みました個人的な感想で言うと、そこまで心に響かなかったのが正直なところです石田さんの作品は他にも何冊か読んでいるのですが、本作以外の作品のほうが私は好きだなと思いました(感じ方は人それぞれだと思うのでぜひ貴方も読んでみてくださいね)しかし、特段この作品が嫌いになったりすることもないのが不思議なところかもしれませんこの作品は題材に反して、温かみのある作品だと思うのでそれがネガティブな気持ちを包み込んでくれているのかもしれません娼夫という職業の話というだけで、もしかしたらなんだか暗い雰囲気だったり、闇のような雰囲気を感じてしまう方がいるかもしれません少なからず夜職や風俗業というのは偏見があると思いますし、それはきっと中学生のいじめ問題のように消えることはないのかなと残念ながら思っていますしかし、この作品は暗いどころか温かいのです大好きな人に優しく抱きしめられているような、春の太陽に照らされているような読後感に浸っています偏見のある方にも、この作品は是非読んでいただきたい一冊だと私は思いますそれから…御堂静香さんの口調が私はとても気になりました色っぽいけれど、冷たく、しかし慣れてくると温かいんです例えばP23の「こんにちは。電話をもらえなかったから、きてしまった」という言葉です私だったら「きてしまいました」とか「きてしまったわ」と書くかな〜と思うんですが、石田さんは「きてしまった」と書くんですあえて少し冷たく話すことで逆に魅力的に見せるためなのでしょうかあまり聞かない言葉遣いだと思ったので新鮮でしたまた静香さんのP60の「男に女がわからないように、男だって女から見るとわからないものよ」という言葉はとても共感する反面、作者の石田さんは男性なのに女性を書くのが非常に上手な方だと思いました官能的な描写の多い石田さんですが、女性的な表現や感情も上手なので男性だけでなくむしろ女性にも読みやすいのではないかと思いますそして最後にP114の「そうね、バスタブに青いインクを一滴落としたくらい、うんと淡いのでもそう呼んでいいなら恋していたのかもしれない。」という表現がとってもきれいだと思いました頭のなかで白いバスタブに水がたっぷり張られていて、そこに青いインクが一滴だけ落ちるのが映像で流れませんか?お洒落な比喩だなと思いますなんだか横浜や自由が丘みたいなお洒落さです、この感覚を言葉にするって難しいですね😊この小説を読んで学んだことは「正直に生きているほうがいい」ということと「普通に生きるということは意外と難しい」ということですアズマくんとのやり取りのシーンは村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を思い出しました…とある大学生のひと夏がこんなにも濃いなんて、誰にも想像出来ないですね >> 続きを読む
2019/07/17 by ゆきの
貴志祐介
貴志祐介の第58回日本推理作家協会賞受賞作の「硝子のハンマー」を読了。株式上場を間近に控えた介護会社ベイリーフ。日曜日にもかかわらずオフィスは、役員と秘書で賑わっていた。上場準備で緊張した空気の中、社長の撲殺死体が発見される。監視カメラには侵入者の姿は映っておらず、社長室の続き部屋で眠っていた専務が逮捕されることに。彼の弁護を引き受けた青砥純子は、密室の謎を解明するため、防犯コンサルタントの榎本径に協力を要請するが-------。この作品は、著者・貴志祐介の"防犯探偵シリーズ"の記念すべき第一弾。最新鋭のセキュリティ技術によって構築される密室状況は、シンプルでいて堅牢、最終的に明かされるトリックは意表を突くものだが、それ以上に圧巻なのは、ビルの構造を踏まえて徹底的に行なわれるディスカッションの執拗さだ。部屋の開口部を組み込みながら、介護猿、人物の早替わりから介護ロボットまで、ありとあらゆる仮説が検討されていく。そして、それを支えるのが防犯技術のディテールの描写であり、本格ミステリが"謎と論理の物語"であると共に、"謎と科学の物語"でもあるのだということを、しみじみ思い起こさせてくれますね。 >> 続きを読む
2018/10/12 by dreamer
宮部みゆき
過去に一度読んだはずなのに、どんな話だったかほとんど覚えていなかった。南町奉行所の同心で臨時廻りの井筒平四郎が関わりを深めた鉄瓶長屋で起こる事件を中心とした物語。長屋で起きた殺人をきっかけにして差配が若い佐吉にかわってから、なぜか店子が次々に減っていく。謎が深まったところで下巻へ。茂七親分の名が出てきてうれしかった。米寿を迎えた茂七の事件簿のようなものをすべて記憶している、おでこというあだ名の少年がかわいい。このシリーズはつまり、『初ものがたり』の次の世代の話ということかな? >> 続きを読む
2017/08/30 by Kira
乙一
乙一氏の初長編。目ん玉な話
2018/07/06 by motti
小畑健
いい評判は耳に入っていたのだけど、メジャー過ぎて手を出しあぐねていた作品。 知力と知力のぶつかり合いという事で、まず間違いないだろうと全巻購入し…そこでまた長いこと積んでいた。 今年はマンガも多く読もうという事で、ようやく読み始めた第1巻。 有名過ぎて、語る必要はないかもしれないが一応、基本構造。 堕落しきった死神会を憂う死神が、故意に人間界に「デスノート」を落とす。 ノートに名前を書かれたものは、死ぬ。 このノートをたまたま拾ったのが、天才高校生。 天才ゆえ、構造を理解したうえで、知略の限りを尽くして悪人を殺してゆく。 対する捜査側の方も天才が存在し、その地位と頭脳で主人公を追いこんでゆく。 一見「デスノート」には制約が多いのだけど、冷静に分析すると便利すぎる印象はある。 あと、仮に「デスノート」の存在がバレたとしても、現在の科学でノートと殺人の因果関係は絶対に証明できないので、まず平気だと思うんだけどね。 ノートに名前を書いたら死ぬんだ!と、主張したとしても、現在の科学では「気の毒な人」としか解釈できないわけで。 この辺りも先を読み進めれば納得できるのかな。 まぁ天才ゆえ「気の毒な人」に堕ちるのも嫌なのかもしれないけど。 >> 続きを読む
2020/10/12 by 猿山リム
東野圭吾
正統派なミステリも書けば、こういったパロディだったり毒気の有る話も書くのが東野さん。推理作家の苦悩がこれでもかと描かれるが、それが税金逃れのための対策だったり、高齢化社会のためのミステリ話だったり。中には正統派な問題と犯人当てだったり。もちろん型通りに進むことなくブラックなオチが待っているが。超長編小説は確かに無駄に長い作品が多すぎるし、ショヒョックスの話なども笑える。これはいわば東野さんから文学界への提言なのだろう。 >> 続きを読む
2018/08/11 by オーウェン
山田悠介
代表作と聞いて読んでみました。私も佐藤姓だったら、あしが遅いので初日で捕まっているかなぁ。私だったら、速攻船か何かで外国に渡ります。 >> 続きを読む
2017/04/30 by SM-CaRDes
越前敏弥 , ダン・ブラウン
興味はあったんですが先に読みたい本がいっぱいあって なかなか食指が伸びないでいました。 たまに違う毛色の本を読みたくなったので 今更ですが読んでみました。 結果、単純に面白かったです。 読んだから何かを得るという類の本ではなく、 完全にエンターテイメント作品ですね。 西洋の歴史、特にキリスト教や美術に対する造詣が深い方が書いたのであろうことは分かりますが、あくまでも娯楽作です。 謎解きは誰しも心くすぐられるもの。 下巻も楽しく読みたいと思います。 >> 続きを読む
2015/02/01 by kengo
ドストエフスキー
【登場人物たちの心理がよく分かんないなぁ……】 上巻のレビューで書いたとおり、ムイシュキン公爵はナスターシャに求婚するのですが、ナスターシャは過去囲い者になっていた自分を卑下し、自分と結婚すればムイシュキン公爵は不幸になると考え、ロゴージンを選んで二人で去って行くのでした。 その後、ムイシュキン公爵は、エパンチン家の三女で美貌のアグラーヤに恋をし、アグラーヤもムイシュキン公爵を愛するようになります。 ところが、このアグラーヤの行動が理解に苦しむのです。 いいようにムイシュキン公爵をいたぶり、また、辛辣な言葉をぶつけるなど、こりゃツンデレか? そして、ロゴージンを選んで身を引いたナスターシャの行動も不可解極まります。 ロゴージンと何度も結婚式を挙げる約束をしながら、その度に逃げ出し、一時はムイシュキン公爵のもとに身を寄せて一向にロゴージンと結婚式を挙げようとしません。 ムイシュキン公爵も、ナスターシャは気が触れているとまで言うのです。 しかもあろうことか、ナスターシャは、アグラーヤに手紙を書き、是非ムイシュキン公爵と結ばれなさいと言い出す始末。 自分が身を引くのは勝手ですが、アグラーヤにそんなことを勧めるのは余計なお世話というものです。 密かに愛しているムイシュキン公爵に幸せになってもらいたい一心と言うことなのでしょうけれど、だったらとっととロゴージンと結婚してしまえば良いし、少なくともロゴージンから逃げ出してムイシュキン公爵のもとに転がり込むようなことをするなと言いたい。 アグラーヤは、そんなナスターシャに怒りを覚え、これはナスターシャが不当に二人の間に割って入って二人の仲を壊そうとしていると邪推します。 そしてあろうことか、現在は遠くに住んでいるナスターシャを呼び出した上、ムイシュキン公爵を伴ってナスターシャの所に乗り込んで行くのですね。 気持ちは分からなくはないけれど、行くなら一人で行けと言いたい。 で、ここで愁嘆場ですよ。 アグラーヤに罵られたナスターシャは、それならというわけで、同席していたムイシュキン公爵に対して、「私とアグラーヤのどちらを選ぶの!」と迫り、ロゴージンに対して出て行けと怒鳴りつけます。 何で~? ようやく自分の本心に素直になったということなのでしょうか? ムイシュキン公爵もへたれです。 ナスターシャの言葉を聞いてその場を飛び出してしまったアグラーヤを追えば良いものを、そうせずに失神してしまったナスターシャに寄り添い、一晩中ずっと髪をなでてやるなどし、結局アグラーヤを捨ててナスターシャと結婚することにしてしまうのです。 そしてさらに不可解なのは、ロゴージンを袖にしてムイシュキン公爵と結婚する約束を交わし、結婚式の準備を進めていたナスターシャです。 何と式の当日、群集の中にロゴージンの姿を認めるや、式から逃げ出してロゴージンの胸に飛び込み、「私を連れて逃げて!」と言うではありませんか。 何なんだ、この女は? ムイシュキン公爵は、もはやアグラーヤから会ってももらえなくなり(当たり前ですね)、ナスターシャを探してあちこちを駆け回ります。 ようやくロゴージンの家でナスターシャを見つけた時には手遅れです。 何と、ロゴージンはナスターシャを殺してしまっていたのですね。 ざっと書くとこういう展開になる物語なんですが、いや、本当に理解しがたい。 何故こんなことになるんですかね? 最も不可解なのはナスターシャですが、ムイシュキン公爵だってどうかしていますよ。 ナスターシャが何を言おうとアグラーヤを選んで当然でしょうに。 確かに逃げ出したアグラーヤを追おうとした時、ナスターシャが失神してしまったのでその世話をして出遅れたという事情はあるにせよ、何も一晩付き添わなくても。 アグラーヤも短気過ぎます。 確かにムイシュキン公爵が心変わりしたかのような曖昧な言葉を言ったのは事実にせよ、それだけで見限ってしまうとは。 ロゴージンもロゴージンですよね。 ふられたならさっさと引き下がれ! あろうことか、未練がましく結婚式の際に姿を見せ、ナスターシャを連れて逃げたのに殺してしまうとは……。 ドストエフスキーは、この作品において、究極の善人を描きたかったと言い、それがムイシュキン公爵であるということのようなんですが、確かに人の良い人物ではあるでしょうけれど、あまりこれが究極の善人なのだとは感じられなかったのです。 さらに、本筋はご紹介した通りなのですが、そこから外れた記述があまりにも冗漫だと感じました。 例えば、イヴォルギン将軍という、アル中の虚言癖のある老人が出てくるのですが、彼の嘘が延々と描かれるのですけれど、これは本筋とどう関係があるというのでしょう? はたまた、このイヴォルギン将軍の情婦の息子のイポリートという結核病みの青年が登場しますが、彼が書いた自殺をほのめかす手記が延々と朗読されるなど、これも全体としてどういう狙いがあってのことかよく理解できませんでした。 その他にも、本筋とどう関係があるのか、どういう効果を狙って書き込んだのかという部分が山ほど沢山出てきて、正直読んでいて退屈な部分が多数あったように感じます。 ロシア的な物に対するドストエフスキーの批判とも受け取れるのですが、それをここで延々と書いてどうするんだと言うのが私の感想です。 当時の作劇上、あるいはドストエフスキーの作風からすればそういうものなのだということになるのかもしれませんが、読んでいてかったるいのも事実ではないでしょうか? 確かに他の作品でも、ドストエフスキーにはそういう傾向があるようにも思われるのですが、少なくとも『カラマーゾフ』などではそのような枝葉の部分がそれなりに感動的だったりして効果を生んでいたように思われるのですが、『白痴』に関して言えばそういう内容にもなっていなかったように思われました。 だから余計に読みにくい作品になっているようにも思われます。 もっとストレートに本筋を追い、主要な人物の、私には理解しがたいと思われた心情を書き込み、読者の納得が得られるように説いた方が効果的だったのではと思わずにはいられません。 この作品を推す方も多かったようなのですが、残念ながら私的にはあまり納得しない作品だったように思えます。 >> 続きを読む
2019/10/01 by ef177
加納朋子
当方、男だけれども自分の妻をバカ呼ばわりするのはどうかと思うのだけど、少数派の意見なのかな?細かい話だけど。著者が女性だからいいのか?お話し全体としては楽しんだので、そこだけがちょっと引っかかった。 >> 続きを読む
2016/04/22 by W_W
森村誠一
新装版ということなので、読んでみましたが、違いが解からないのが本音です。発売当初も話題になり本の内容も犯人も知っていて、勿論映画も見ました。何年たっても色あせない内容の濃さにはただただ、感心の一言です。本を読んでいる間はずっとジョー山中の「人間の証明のテーマ」が流れていました。 なぜ「人間の証明」というタイトルなのか考えさせられる内容です。 >> 続きを読む
2018/08/25 by rock-man
鎌池 和馬
超能力が科学的に研究・利用されている学園都市。その学園都市のとある高校に通う上条当麻の前に空から純白のシスターが降ってきた。シスターは魔術師たちに追われていて――。魔術と科学が交差するライトノベルです。本作だけでなくスピンオフまで複数回アニメ化されるほどの人気作ですね。(アニメ超電磁砲だと佐天さんが好きです)アニメ1期を見たあとに原作を読んだのでなんとなくストーリーは把握した状態で読み始めました。正直、1巻はそこまで面白いとは思えませんでした。主人公の上条がヒロインであるシスター・インデックスを助けるのにあそこまで命を張る理由がわからなくて。2巻以降の上条は結構好きなんですけどね。この作品は巻が進めば進むほど面白くなっていきそうなので3巻まではどうにか読んでほしいです。【http://futekikansou.blog.shinobi.jp/Entry/307/】に感想をアップしています(2011年1月のものです) >> 続きを読む
2014/06/19 by hrg_knm
成田良悟
ずっと読んでみたかったライトノベルのうちの一冊。一巻を読み終わった後にアニメも1クールだけみてきました。正直少し読みずらい部分はあります。語り手がばんばん変わっていくし、ちょっと非日常的だし。でも内容はすごく面白いなぁと思いながら読み進めました。個人的にセルティと新羅が好きです。少しダークな話ではありますが、そこが面白いポイントのような気がします。帝人くんと杏里もすごく可愛いので好きです。それぞれのキャラが個性豊かで素敵だなと思います。小説で読んで分かりずらかった場合にはアニメで見たらだいぶ理解できると思います。 >> 続きを読む
2017/05/12 by ゆきの
梨木香歩
【この鸚鵡、ぜつみょー!】 いやぁ、良い本だぁ。 この物語は、エルトゥールル号の事件で大変感動したトルコの王様が、是非にということで日本人の学術研究者をお招きされて、それに応えてトルコに渡った村田のトルコ滞在記です(だから「滞土録」なのですね。……ほら、トルコって、土耳古じゃないですか)。 で、「エフェンディ」というのは、学問を修めた人に対する敬称なのですね。 村田は、トルコで考古学を学んでいるのです。 そして、村田が寄宿する家には、ドイツ人やギリシャ人の考古学研究者も同居していて、さらには、イギリス人のディクソン夫人が取り仕切っており、トルコ人のムハンマドが家のことを任されていて料理なども作ってくれたりするという、極めて国際色豊かな「下宿」でした。 村田は、日本では当時まだその学術大系すら確立されていなかった考古学を学ぶのはもとより、異国の様々な文化に触れて目を白黒させながらも楽しく仲間達と暮らしているわけですね。 その何とも良い味の滞在記が本書というわけです。 国による文化や考え方の違いなども描かれており、それがまた良いのです。 さらには、この家にいる鸚鵡が絶妙なんですよね。 あまり多くの言葉はしゃべらないのですが、何だか意味が分かってしゃべっているように、まさしく!というタイミングですごいことをしゃべったりするのでもう抱腹絶倒。 また、この鸚鵡が終盤で泣かせるんだわ。 ラストは書きませんが、しみじみともさせられます。 梨木さんの作品はどれもあったかい。 淡々としていながら、でも、本当によくできた素敵な作品です。 そして、もう一つ書いておかなければ。 この物語、梨木さんの(これも良い本)「家守奇譚」につながるお話でもあるんですね。 「家守奇譚」に描かれている時よりももっと後のことになるのでしょう。 ですから、本書よりも先に「家守奇譚」を読んでおくことを強くオススメします。 そうじゃないと、せっかく本書のラストでつながっているところが分からないから。 梨木さんは、これで3作目の読書ですが、すっかりファンになってしまいました。 さて、次は何を読もうかな? >> 続きを読む
2019/09/26 by ef177
中井英夫
この上巻では、氷沼家の次男・紅司と叔父の橙二郎が密室で死亡します。 その真相について、奈々村久生・光田亜利夫・氷沼藍司・藤木田誠の4人が推理合戦を展開。 ミステリ・ファンとしては楽しい展開ですが、実際に被害者になった人やその関係者からすると、とんでもないことでしょうね。 しかしこの4人の四通りの推理、どれももっともらしい。 同じ事件でもこんな風に色々と解釈できるのかと興味深い。(ネット上では、馬鹿げた推理と書いてるミステリ上級者もいます。私は初心者なので、何を読んでもすごいと思うレベルです。) それで、ミステリマニアの藤木田翁の退場と入れ替わりに登場したのが、奈々村久生の婚約者・牟礼田俊夫。 世界を駆け回る敏腕記者ということですが、あまりイメージ湧きません。 この牟礼田俊夫が残る3人の探偵役を集めて、いよいよ真相が判明か……と思ったら、意外な展開に。 牟礼田俊夫氏は思わせぶりなことを言いながら、結局は何事も言っていないのです。 他の人の推理を上から目線でダメ出しして、全員間違っていたとは判明するのですが、では真相はといえば、何も明らかにされていない。 聖母の園事件で焼死体が一つ多かった件についても、氷沼家と縁故のあるお年寄りでもう一人犠牲者がいて、誰か考えれば分かるはずだと言いながら明かさないし。 思わせぶり・知ったかぶりはいいけど、ではあなたの推理はどうなんですか、真相はどうなんですか。 テープに録音しておいたからもう一度聴いたら分かるとか言ってますが、そうなんでしょうか。 これでは全然納得いきません。 実は物語は前半が終わったところ。 後半に続きます。 http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20161015/p1 >> 続きを読む
2016/10/16 by 荒馬紹介
平四郎が養子にと考えている美少年弓之助の活躍が面白くて、上巻に比べると一気に読めた。謎が解き明かされていく過程も鉄瓶長屋を掘り返すところでピークに達したが、その後がなんだかすっきりしない。湊屋総右衛門が出てきて真相らしきことを語るのだが、そもそも八百富の太助を殺してまで大掛かりな芝居を仕組んだ理由がわからない。長屋の住人を追い出したいのなら金を積めばすむことだろうに。追い出したい理由も、長屋の下に葵の骨が埋まっているからではなく、跡地に屋敷を建てたいからというのがわからない。まだ謎解きはすべて終わっていないのか? 続編を読めばわかるのだろうか? もやもやが残る。 >> 続きを読む
松久淳 , 田中渉
内容紹介-------------------------------------------------さとしはアロハシャツの不思議なおっさんに誘われ、突然天国の本屋でアルバイトをすることになった。この店の売り物の、朗読サービスを受け持つことになったさとし。そして緑色の目を持つ少女ユイに恋心を抱く...。でも、ユイの心は、この世でできた大きな傷に塞がれていた―。--------------------------------------------------------再読。最初に読んだのは中学生の時で、図書委員の先輩に勧めてもらった。当時は図書委員のくせにあまり本を読む方ではなかったから、読書自体が新鮮だった。ページ数も文字も少ないのに、ずいぶん読むのに時間がかかったのを覚えている。15年も前の本だから、今読むとクサいセリフが多いと感じるところもあるが、心温まるいい作品だ。誰かに本を勧めてもらうと、当時のことを一緒に覚えていられる。『天国の本屋』みたいに、本というものは人を結びつけたり、人間関係を豊かにしてくれる。中学生の時は、ラストシーンを涙目になりながら読んで、次の日先輩にとてもおもしろかったですと伝えた。すると、次に勧めてくれたのが森絵都さんの『カラフル』だった。当時読書家だった先輩はいまどうしているだろうか。僕も本を読むようになったんですと、本の話をしてみたい。 >> 続きを読む
2015/10/11 by しでのん
乃南アサ
こわい。人間の業が、女の業がこわい。一つが50数ページの物語が読む者をどこへ連れて行くのかわからなくて、終わりに近づくにつれページをめくるのがこわい。書かれずに終わる「事件」を、読んだあとに想像するのがこわい。おそろしい短篇集だった。 >> 続きを読む
2017/09/03 by Kira
【白痴とは、イノセントということ】 以前、『罪と罰』(含む『罪と罰を読まない』)をレビューした際に頂いたコメントで、ドストエフスキーなら『白痴』を推すという声が多数ありました。 私、『白痴』は読んでいなかったのですね。 それならいつか読まなければと思っていたのですが、この度手に取ってみました。 『白痴』とされているのはムイシュキン公爵です。 彼は、時折発作を起こすということで(どうもてんかんのようですね)、スイスの病院で療養生活をしていましたが、その医療費を出してくれていた人が亡くなったため、それ以上の治療を継続することができず、ロシアに戻って来たのでした。 公爵ではあるのですが、実は無一文なんですね。 彼は純真無垢なんです。 子供たちが大好きで、人を疑うことをせず、誠実で隠し事をしませんでした。 ですから、世事に長けた人たちからみると何ともお人好しで、どこか足りない男なんじゃないかと思われ、また、彼も自分がスイスの病院で治療を受けていたことを自分から話してしまうようなこともあり、『白痴(ばか)』呼ばわりされるのです。 彼は、スイスから戻る車中でロゴージンなる無頼漢と知り合います。 ロゴージンは莫大な遺産を相続したばかりだということであり、また、ナスターシャという美貌の女性にぞっこんであることを知ります。 しかし、このナスターシャという女性には影がありました。 実は、彼女は幼い頃からトーツキイという富豪貴族の囲われ物に強引にさせられていた過去があったのです。 トーツキイの方もいつナスターシャに秘密を暴露されるかと恐れており、また、成人してがらっと雰囲気が変わり、美貌の女性になったナスターシャに驚いてもいたのです。 トーツキイは、知人のエパンチン将軍の娘との結婚を狙っており、その邪魔になるナスターシャの口を何とか封じようと考え、全てをエパンチン将軍に打ち明けたのでした。 将軍は、うまいこと娘をトーツキイに嫁がせれば莫大な金が手に入ると考え、トーツキイと共謀して、自分の所に出入りしているガーニャという男性秘書とナスターシャを結婚させてしまおうとします。 そのためにもし結婚すればナスターシャの持参金として7万5.000リーブルもの大金を用立ててやろうと持ちかけるのです。 こんな結婚話を用意してやればナスターシャもよもやトーツキイのことを悪く言うことはあるまいというわけですね。 確かにナスターシャは美人でしたが、ガーニャの本心は彼女と結婚などしたくはありませんでした。 しかし、その持参金に目が眩み、結婚話を進めたのです。 ムイシュキン公爵は、哀れみからナスターシャに同情し、ガーニャとの結婚に反対し、自分が嫁にもらいますと申し出もするのでした。 そこに乱入したのがロゴージンです。 彼は10万リーブルもの大金を一夜にして用意し、それを持参してナスターシャを娶りにやって来たのです。 ムイシュキン公爵の結婚の申し出は真摯なものだったかもしれませんが、無一文の白痴のもとに誰が嫁ぐというのでしょう。 みんなそう言ってムイシュキン公爵をからかうのでしたが、実はナスターシャだけはその心の真実に深く感謝し、また愛情を抱いたのです。 しかし、自分のような囲い物になった女と結婚すればそれはムイシュキン公爵のためにならないと考え、敢えてはすっぱな態度を取り、それまで結婚話を進めていたガーニャを袖にし、ロゴージンを選ぶと宣言するのでした。 ですが、実はムイシュキン公爵は莫大な遺産を相続することになっていたのです。 彼はこの修羅場で、遺産相続を証する手紙を公にし、自分は決して無一文ではないと言うのですが、ナスターシャはそれならなおさらのことムイシュキン公爵のもとへは嫁げないと考え、ロゴージンと共に立ち去ってしまうのでした。 その後も、ムイシュキン公爵をめぐって様々な出来事が起き、人々は徐々に、彼は本当は白痴などではないと気付き始めるのです。 ただただ純粋無垢な男性なのだと。 というのが上巻あたりまでの粗筋になります。 ナスターシャをめぐる騒ぎの他にも金絡みの事件が持ち上がり、かなり下世話な印象を受けました。 また、特にエパンチン将軍の妻であるリザヴェータが代表的ですが、登場人物が激情的で、何であんなに激するのかと思わざるを得ません。 さらに、カリカチュアなのだと思いますが、卑屈な者はとことん卑屈に描かれます。 その辺りがどうも読んでいてやるせない気持ちにさせられてしまいます。 さて、下巻でどういう展開になっていくのか。 ムイシュキン公爵は、最後はナスターシャと結ばれてめでたく終わるのでしょうか? 長い作品ですが、下巻を読んでみようと思います。 >> 続きを読む
2019/09/30 by ef177
出版年月 - 2004年4月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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