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恩田陸
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10代は彼らのように繊細で傷つきやすかったと思い出しました。そして人と比べては根拠のないものを悟り、嫉妬や諦めをする。最近は大学いくのが普通になりつつあるし、学校は狭い社会だから仕方がないのだろう。今は図太くなった。いろんな世代のひとと会話をし、成長させていただいてるのかなと思いました。社会にでるといろんな人がいて大変だけど、脱落しないための、もし脱落しそうになったらどうしたらよいかのヒントを供給できる場が、学校カウンセラーの先生等が教えていってほしい。そうしたら引きこもりも減って、税金も確保できるのに。心療内科ができてもまだまだ日本は精神面への援助が遅れていると思う。 >> 続きを読む
2017/12/17 by nya
伊坂幸太郎
残念ながらあまり好きではなかった。映画レオンのような殺し屋は好きだけど、人が当たり前のように死んでいく小説は苦手かもです。また、物語の偶然性が過多な気がして入り込めなかった。ゴールデンスランバーは好きですけど。 >> 続きを読む
2016/02/27 by がーでぶー
尾瀬あきら
かなり前の作品ですドラマ化されて話題になっていた記憶があります私自身は下戸で日本酒のおいしさなどわからないままここまできてしまいました以前ワインの漫画を読みかけたことがあったのですが飲めない自分にとっては難易度が高く読み続けることができませんでしたこの作品が著わされて広く人々に読まれることにより今の日本酒に少なからず良い影響を与え日本酒回帰に繋がったに違いないと思わせる作者の情熱を感じさせられますまだ一巻しか読んでいませんがおいしい日本酒をほんの少しずつでもよいから飲んでみたいと思いました続けて読み進めます >> 続きを読む
2015/06/04 by dora
太宰治
戦時下という厳しい状況の中であるが、おそらく彼の生涯の中で一番平和で穏やかな時期に書かれた名作。冒頭では自身の作品を引用してその感想を言ってみたり、旅先での出来事を面白おかしく言ってみたり、まるで太宰と一緒に津軽旅行をしているかのような気分になる彼の作品の中でも特に大好きな作品だ。内省的で暗い作品が多いというイメージのせいで、気難しい人と思っていたが、意外とお茶目な部分があったり、すねてみたり、サービス精神旺盛だったりと、生身の太宰治を垣間見れた気がする。そして、月並みではあるが締めの言葉が壮快で何度もつぶやいてしまう。「さらば読者よ、命あらばまた他日。元気でいこう。絶望するな。では、失敬。」 >> 続きを読む
2015/07/04 by AKI
黒川伊保子
モノの名前、商品の名前の「音」が潜在的に人に与える影響について論じたもの。男の子が好きなものには、ゴジラ、ガメラ、ガンダムなど濁音が含まれるものが多いのはなぜか。カローラ、カマロ、セドリック等、売れる車にC音が多いのはなぜか。それらは「音」が人の意識下に影響を与えるためである、と著者は言う。個人的には著者の考えに対して、8:2くらいの割合で、「疑」と思った。きっかけは、本書の中で好意的にとりあげている研究者の名がひっかかったから。その研究者の名は「大和田洋一郎」氏。最初、全く別のトンデモさんと勘違いして調べたのだが、大和田氏は大和田氏で、賛否両論湧き起こすらしい。この本の著者、大丈夫か?という思いが湧き上がりつつも、読み続けた。モノの名前の「音」の響きが人の気持ちに影響を与えるのは間違いないと思う。「マツシタ」より「パナソニック」の方がより先端技術を扱っているような気がするし、「パナソニック」より「Panasonic」と表記した方が、世界的な企業という印象を受ける。ただし、あくまで主観でしかないが・・・。K音は○×感を、P音は△□感を人に与える、という点までは、実感もあるので、理解できるが、それがなぜ潜在意識にまで影響を与えるのかが分からなかった。入門編なので、そこまで立ち入ってないのかもしれないが。一番気になった点は、著者の「音」の分析は、一音一音ごとに行っている、という点。モノの名前は全体的な言い方(音の強弱、高低、リズム)によって印象が変わるケースもあるのでは?と思ったから。また、以前、聞きかじった知識だが、音と音が繋がった場合、前の音の影響を受けるらしい。自動音声が、こちらの入力内容(数字)を読み上げた時、妙に不自然に聞こえるのは、この点が考慮されていないからだそうだ。要するにモノの名前の「音」を分析するならば、一音ずつの分析だけではなく、全体として分析しなければならないのでは、と思った。さらに挙げるなら、モノの名前の表記方法、その色などから受ける印象、ネーミングの由来に関わる物語などなど。「音」が全てなどとは著者も言っていないが、「音」に偏りすぎのような気がする。 >> 続きを読む
2014/09/13 by Tucker
稲盛和夫
・人格=性格+哲学・人生の結果=考え方×熱意×能力・自燃性の人間人生の方程式、色んな企業説明会で聞いた元ネタ?を知ることができて嬉しい。説明会では熱意が大切と話していたような気がしたけど、著者的には考え方も推していたような気がした。最初読んでてスピリチュアルで宗教チックな感じが漂って、おっと…と思ったけど、釈迦の話や三毒、六波羅蜜について興味深かった。自分だけの哲学を持つために宗教、というのは確かに効果的だなと。もう一度読み返したくなる本でした。【ここから内容とそれの感想】哲学と聞くと大学1年生のときに挫折した苦い思い出があるけど、要は「人間として正しいかどうか」ってこと。分かりやすい。内容も親から教わる基本的なこと。原理原則、人生観、理念、道徳とも言い。自分に子どもがいたら、自分も人として正しい姿を子どもに見せ、教えていきたい。自燃性の人間。燃え続けたら灰になりそう。燃え尽きないためにも定期的に「燃料」の補給をしないと。この場合の燃料ってなんだろうなって。【なるほどな】・吐いた時点で嘘だとしても、それを本当にしてしまえば真実になる。嘘を真にしてしまう、今いる自分より1段上を目指す。【仕事について】・一日一日を懸命、真剣、地道に生きる。安易に近道を選ばない。面白そうな道に飛び込む。・自分の作る製品に情熱と思い入れを持つこと。自分がやっていることをトコトン好きになって、誰よりも努力する。→好きになれない時は?とにかく打ち込んで一心不乱にやってみる!!◆何のために働くか?A.人格を磨くため。仕事の目的が時間とお金を交換するならば、なるべく楽して多くのお金を貰う方が合理的。『欧米諸国はもっと休暇を取っている、遊ばないと損だ』という風潮が生まれた。熱心に働くこと、勤勉であることの価値が下がってきた時代背景。確かに欧米の労働スタイルも否定しないけど、働く価値を下げる理由にはならないと思う。自分が死んだときに、孫たちに誇れる生き方をする。【利他の精神】とても崇高なものだと思っていたけど、・家族の喜ぶ顔が見たい・苦労をかけた両親に楽させてあげたいという気持ちが既に利他らしい。身近な人から少しずつ利他の輪を広げていく、それならできるかもしれない。注意!利他と利己は表裏一体。自分の家族さえ良ければ良い、というのは利己になる。良かれと思ってやっていたことが、実は利己になっていた、というオチにならないためにも、常に自分の行動を顧みたい。自分にとって、これまでの人生の『哲学』とは何だろうと思い返す。・ありがとうと言う・フライング上等・天網恢恢疎にして漏らさず、悪いことをするとバチが当たる・好きこそものの上手なれ・曲がった道をまっすぐ行く・年上に敬意を払う・ご飯は残さず食べる(米粒1つも残さない) >> 続きを読む
2016/10/17 by strsk
谷川流
そうか「消失」か。 いつもの学校・生活・日常、SOS団。 ある日小さな違和感、そしてクラスにハルヒの存在が元々なかった世界にいることに気づきパニックする。 ナンバリングは無いが、前巻までの話を踏まえているので、映画化されているようだけどその原作本としてこの本だけ読んでも楽しさは伝わらない。 映画がどう咀嚼しているのか観ていないから分からないけど。 あり得ない状況から必死でヒントを探し状況を把握して物語を進める主人公はしっかりサイエンスフィクションの方のSFをしていて好感。 一応クリスマス巻。 >> 続きを読む
2020/02/21 by 猿山リム
岩月謙司
初めから最後まで重苦しい内容で、読み終わってからも自分の周りにドヨンとした空気として絡みつくような本でした。とても大きな問題を取り扱っているので、内容はとてもディープで実際に起こっていることとして厳重に受け止める必要があると思います。ただあまりにも息子(または子供)をダメにする母親の行動や心理だけにフォーカスしすぎていて、そこからどうしていけばいいのかという具体的な部分がほとんど無く、希望の見えないトンネルの中に置き去りにされたような気分になってしまい、良い本なのになんだか読み終わった後に嫌な気持ちだけが残ってしまいました。でもマインドコントロールしている、またはされている関係者が読んだら、目が覚めるきっかけになるような本なのかもしれません。評価が良い本なので読みましたが、著者の語り口も怨念さえ感じられるような暗い責め口調で、申し訳ないのですが評価はなしで。 >> 続きを読む
2019/05/04 by Mika
藤沢周平
何度めかの再読。初めて読んだのは2004年で、映画化にともなって新装版が出たのか、『隠し剣孤影抄』とともに本屋に平積みされていたのを見つけてわくわくした。ちょっと変わった剣士の物語を含む武家もの九篇で、読み返すたびに夢中になる。今回の再読で、藤沢氏の剣技の描写はとても静かだと思うようになった。池波正太郎氏や佐伯泰英氏の描写はにぎやかで、まさにチャンバラだと思う。佐伯氏なんて、血が飛び散る様子まで擬音語で描写してくれる。それに比べると藤沢氏の描写は静謐そのもので、息詰まるような迫力に満ちている。そういうふうに見ると、「盲目剣谺(こだま)返し」が印象深かった。登場する剣士たちはいずれも浪人ではないので、宮仕えや武家社会の理不尽さに対する悲哀も感じた。上意討ちを逆恨みされる「孤立剣残月」は、気の毒だが哀しいユーモアに満ちている。いつも思うことだが、藤沢氏の作品はどれを読んでも味わい深い。 >> 続きを読む
2020/02/22 by Kira
光原百合
今年最初に読み終えた一作。甘ったるい恋愛ものかと思った十八の夏、途中でネタに気付いてしまったがヘタレな主人公と生意気な長男にほのぼのとするささやかな奇跡、とぼけた兄貴が笑えて同情を誘う兄貴の純情、女性の無邪気さ、恐ろしさが身にしみるイノセントデイズ。この作家さんの作品はおそらく初めてだが、色んな顔が見えてとても興味深かった。もう少し毒を薄めた感じのイノセントデイズテイストの作品も読んでみたい。 >> 続きを読む
2019/01/01 by aki
角田光代
何者かになろうとする何者でもない若者の話。こういう面、わたしも持っているな。と思い恥ずかしくなる。妊娠中の不安定な気分と、それを差し置いても無神経な義姉と夫。でも他人と一緒になるってそういうことだよなぁ。 >> 続きを読む
2016/09/12 by lilli
米原万里
歴史や政治の内容が多く絡んでおり、その部分はほとんど理解出来なかった……けど、やはりこれは小説というより、著者本人の体験に基づいた話だと思わせる。生々しい。壮絶すぎる程、一つ一つの体験がありありと書かれて、具体的な事情は分からなくとも、緊迫感はひしひしと心に迫った。人って、時代を負って……いや、時代を自分の血と肉に染み込ませながら生きていくんだなと、再び思えた。 >> 続きを読む
2017/10/27 by Moffy
宮部みゆき
PS2の同名ゲームを宮部みゆきがノベライズした本作品。ゲームは数年前にクリアしており、壮大なお城の中を少女と少年が手を繋ぎながらクリアするという今までに無い概念のゲームで驚いた記憶があるゲームの中では詳しい解説はほとんどされず(説明書もぺらっぺら)、その解釈はプレイヤーに委ねられていたそれをノベライズしたものだから、当時はいろいろな批判があったらしい。が、宮部みゆきが好きな私としては、純粋に楽しめた。どれくらい楽しめたかというと、もう手元になかったゲーム「ICO」を再度注文してしまう程。この物語を知った前と後で、違う視点でゲームをプレイできるのがとても楽しみである >> 続きを読む
2017/06/05 by highsee
InnocentiRoberto , ZeeRuth Vander , 柳田邦男
これが実話だとは凄いことだ。人間とは、本当に両面を持っているものだ。個としての存在、組織としての存在、それがいろんな現れ方をする。そして、いのちとは・・その根源的な選択を迫られた時、人はどう動くのか。物語だけでなく、絵もまた素晴らしく、その空気を伝えている。 >> 続きを読む
2014/08/06 by けんとまん
岩永 亮太郎
「戦災復興部隊」通称パンプキン・シザーズの面々が戦の中で臣民を救っていく、戦争の残り火を消していくお話。主人公は存在しない部隊「901 ATT]に所属していて、青い鬼火と共にやってくる、命を無視された兵隊の異名を持つランデル・オーランド伍長。ヒロインは貴族の令嬢という身分にもかかわらずパンプキン・シザーズの隊長を勤める、アリス・L マルヴィン少尉。主にこのふたりが隊を良くも悪くも引っ張って戦災の残り火を消し、民の為に復興を為し得ていく。その最中には悪い奴らも出てきて、その奴らと戦っていく。その戦いがカックイイ!ランデルも体が兎に角でかいが心は優しい、人一倍他人の気持ちをわかって優しさを持って接していく。アリスは直情型で堅物。ちょっと上から目線で居丈高な態度をとるけど臣民の為に一日でも早く戦災復興を成し得るという信念を持ち戦っていく。その様もカックイイ!!この作品は掘り出し物で、目っけもん。一応お試しで3巻まで買ったけど当たりかもね!次巻以降もゆっくりじっくり楽しんで読んでいきたいと思います(^^♪ >> 続きを読む
2017/08/17 by 澄美空
再読。シリーズ第四弾。前作から16年後、青江又八郎は出世して近習頭取という役職についている。その又八郎に、またしても密命が下される。江戸に出府の際、嗅足組の解散を通知せよという密命だったが、女嗅足佐知との再会を喜び合う間もなく、藩の秘密をめぐる死闘に巻き込まれる。シリーズ第四作は雰囲気が変わって、老いを意識したものとなっている。用心棒稼業に精を出していた若き日々は遠く、又八郎は中年太りを気にする年齢となった。それでも剣を抜けば、昔の感覚は身体によみがえってくる。かつての相棒細谷源太夫は仕官していたはずなのに、酒毒に冒された身体で用心棒稼業を続けている。口入れ屋の吉蔵は大病をして、面変わりするほどやつれている。変わらないのは佐知だけで、又八郎への想いは強まっていく。二人の老後を暗示するようなラストがとてもさわやかで、シリーズの最後にふさわしい。師匠の書くものは、やっぱりいいなぁと今回も思った。 >> 続きを読む
2021/06/17 by Kira
小川洋子
「博士の愛した数式」を読んで以来、現代文学の優れた作家のひとりとして、常に気になる存在の小川洋子の初期の長篇小説「余白の愛」を再読しました。突発性難聴を患った私は、古いホテルで行なわれた医療関係の座談会に出席し、速記者Yに出会う。人の声に寄り添って動く彼の特殊な指に魅せられる私。病気の再発、離婚----孤独と不安の中、再びYが現われる。静謐な佇まいで"指が記憶した"出来事を語るY。彼と過ごす時間に不思議な心地よさを感じるようになった私だったが、再び耳の異常が-----。しかし、その異常は、決して不快なものではなかった。そこで私がYに対して行なった奇妙な依頼とは------。事象や人の思いをありのまま記憶するYの指と、人には聞こえない音が聞こえる私の耳を仲立ちに、幻想的な絵画のような記憶たちが立ち現われ、行間から静かな音楽が聴こえてくるような美しい作品だと思う。主人公とYの関係は、通常の恋愛関係とは別種の透明なエロスを湛えていて、私の感性を限りなく刺激する。そして、そのエロスの背後には、過ぎ去っていってしまった時間と記憶への哀惜の念が色濃く漂っていると思う。読み終えてみて、深く静かな余韻にしばし忘我の境地にさせてくれる、優れた官能性を備えた作品だと思う。 >> 続きを読む
2018/03/16 by dreamer
アガサ・クリスティ , 加島祥造
【ポアロ、歯医者に行く/ポアロしらみつぶし21】 ポアロは半年に一度歯医者に行き、不具合が無いかどうか診てもらっているそうです。 しかし、ポアロと言えども歯医者は苦手なようで、今回も渋々モーリイ医師を訪ねたのでした。 苦手な治療を終え、ようやく気分も落ち着いて歯科医から出て来たポアロですが、すぐに病院に戻ることになります。 それは、知人のジャップ主任警部から、先ほどあなたが治療を受けたモーリイ医師が死んでいるので来て欲しいという連絡を受けたからでした。 モーリイ医師は診察室に倒れており、状況からするとどうやら拳銃でこめかみを打ち抜いて自殺したように見えます。 ジャップ主任警部から、治療を受けている時にモーリイ医師に変わったところはなかったかと尋ねられるポアロですが、特段おかしな様子はなく、ポアロの治療を終えてさほど時間が経っていないのに自殺するとはちょっと信じられない状況でした。 その後、ポアロが歯科医の待合室で見かけた男性患者が、宿泊先のホテルで死んでいるのが発見されます。 死因は、歯科医で用いられる麻酔薬の過剰投与と認められました。 内服ではなく、歯肉に注射されたのです。 この結果、モーリイ医師が麻酔薬の投与量を誤ったためその男性患者は亡くなったと思われ、これに自分で気づいたモーリイ医師は責任を感じて自殺した、と警察は見立てたのです。 でも、果たしてそうだろうか? モーリイ医師が持っていた拳銃は外国製の物で、そんな拳銃は持っていなかったはずだと家族は証言しているのですけれど。 警察は、どこかに旅行に行った時に密かに買ってくることはよくあることだと言うのですが。 その後、やはりモーリイ医師の患者だった中年女性が失踪するという事件が起き、その後、その死体が発見されます。 持ち物からその女性患者の死体だと思われたのですが、何故か顔が滅茶苦茶に潰されていたのです。 ……死体の身元を隠すために顔を潰したのだとしたら、何故身元が分かる持ち物をそのまま残したのだろうか? これは偽装で、これは別人の死体なのではないか? そう考えたポアロは、モーリイ医師のところに残されていたカルテを他の歯科医に見てもらい、間違いなくその女性患者の死体かどうか確かめさせたのです。 その結果、その死体はまったく別人の死体だということが分かったのでした。 それでは、女性患者はどこに行ってしまったのか? 女性患者がこの女性を殺したのだろうか? というのが今回の謎です。 トリック的にはなかなか凝ったものが用意されている作品で、そこはそれなりに評価できます。 ただ、私がどうしても引っかかってしまったのは、犯人はある目的があって殺人を犯しているわけですが、その目的を達するために人を殺さなければならない必然性はほとんどないように思えたことでした。 殺人など犯さなくても、懸案の問題はどうにでも片づけられるだろうにと思えてならなかったのですね。 また、クリスティものにはよくあるパターンなのですが、証拠らしい証拠がないのです。 ポアロの推理も、こういうことであれば説明がつくということに尽きるわけで、その推理を支えるものが全く示されないんですね。 そうなると、犯人はいくらポアロが真相はこうだと主張しようが、それを否認することは容易く、ポアロのこの推理だけで裁判で有罪にするのはほとんど無理だと思われます。 ところが……犯人は自白しちゃうんですけれどね。 まあ、犯人に自白させないことにはポアロの推理が正しかったのだということを読者に示せないのでこうするしかないのでしょうけれど、それにしても……。 また、今回のポアロの推理の一部は、完全に推測でしかないのです。 何の根拠もない話であり、その点について、クリスティはポアロの口を借りて「それは、たしかに、まったく当て推量ですが、その出来事は信じています」と言わせて片づけてしまっています。 ミステリとしてこれはどうですかねぇ。 もちろん、本作は読者に十分な手がかりが与えられていて、読者にも犯人やその動機が推理できるようなミステリでは全くないのです。 ということで、本作はミステリとしての評価はちょっと辛い点になってしまうのでした。読了時間メーター□□□ 普通(1~2日あれば読める) >> 続きを読む
2021/07/25 by ef177
アガサ・クリスティ , 恩地三保子
戦時中、資産家のゴードン・クロードは、屋敷が爆撃されたことにより死亡する。莫大な財産は、結婚したばかりの若き未亡人ロザリーンが、相続することになった。ゴードンの親族たちは、生活をゴードンに頼りきりの状態であったため、困惑することに。彼らはロザリーンに助けを求めるものの、彼女の兄のデイヴィッド・ハンターにより妨げられる。そうしたなか、ロザリーンとデイヴィッドの兄妹にとある疑惑が持ち上がる。そして、騒動はやがて殺人事件へと発展する。この事件が起きる前に、とある噂を聞きつけていたポアロは、興味を抱きつつ、捜査に乗り出すことになるのだった-------。オープニングで、どうでもよさそうな男による、どうでもよさそうな話が語られているのだが、実はこれが何気に重要なんですね。危うく読み飛ばすところでした。ポアロが登場する作品ではあるのだが、当のポアロは、最初に少し登場したきりで、以後は事件後の中盤から、本格的な活動になる。その事件に至るまでが退屈だなと思いつつも、これこそクリスティー流のいつもの作風といったところ。くどいくらいに、しっかりと人間関係の相関図を描き上げたうえで事件が発生する。この作品では、予期せぬ出来事で富豪となってしまった、お人好しの娘ロザリーンと、しっかり者と嫌われ者の狭間をいく、怪しげなその兄デイヴィッドの二人が物語の中心となる。そして、富豪の財産になんとかありつけないかと、亡くなった富豪の世話になって生活してきた親類たち。その親類たちの中に婚約中でありながらも、デイヴィッドに心が傾いていく娘リンの存在も交えつつ、徐々に不穏な空気が漂っていくことに。その後、ロザリーンの過去を知るという恐喝者が現れ、事態は急展開を迎えることになる。殺人事件が発生してから、我らがポアロの出番となるのだが、そのポアロは、この不可解極まりない事件を"自殺が一つ、事故死が一つ、他殺が一つ"と位置付ける。そして語られる真相は、意外なミスリーディングを誘ったものが明らかになり驚かされることに。これは、なかなかうまく出来た作品だと思いつつも、最後の結末の付け方と、恋の行方に関しては、こんなのでよいのかと首を傾げてしまいました。 >> 続きを読む
2022/03/21 by dreamer
斎藤純
斎藤純の「銀輪の覇者」は、戦前を舞台にした冒険小説の傑作だ。自転車のロードレースといえば、フランスを一周するツール・ド・フランスが有名だが、日本でも明治から昭和の初期にかけて、一般道を走行するロードレースが盛んに行なわれ、国民的スポーツといっていいほどの人気を集めていた。この作品は、その自転車ロードレースを舞台にした、文字通り、手に汗握る冒険小説だ。戦争の足音が聞こえ始めた昭和9年(1934年)5月、荷台の大きな商業用自転車を使用した前代未聞の本州縦断レースが、下関をスタートした。個人優勝二千円、チーム優勝二万円という高額賞金につられて集まった選手は三百人。背広にパナマ帽の紳士もいれば、ランニングシャツにステテコ姿の男もいて、さながら自転車仮装行列。なぜかドイツ人チームも参加している。なかでも異彩を放ったのは、元チェロ奏者にして紙芝居の響木健吾をリーダーとするチーム門脇の四人組。噺家くずれの越前家平吉、小判鮫こと小松丈治、筋肉マンの望月重治。いずれも胸に一物、すねに古傷を秘めた怪しい男たちだが、この臨時編成の寄せ集めチームが、精鋭を揃えた企業チームを相手に、山陽道から中山道へと死闘を繰り広げるのだ。そして、怪しいのは選手ばかりではなかった。大会委員長はどうやら食わせ物らしく、当初からレースの成立自体が危ぶまれていた。自転車部隊の創設をもくろむ陸軍、自転車競技のアマチュア化とオリンピック出場を命題とする帝都輪士会、思想犯を追う特高警察までが潜入して、レースそこのけの謀略合戦を展開していく。著者の斎藤純は、酒・音楽・オートバイ・テニスなどに造詣が深く、センスと切れ味のいいミステリ作家としてつとに知られた人だ。その小説巧者が、この作品では戦前の自転車ロードレースという好素材を得て、冒険小説に歴史小説と社会派ミステリの風味を加えた新しい世界を切り拓いてくれたと思う。 >> 続きを読む
2019/04/14 by dreamer
出版年月 - 2004年6月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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