こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


2004年7月発行の書籍

人気の作品

      13階段

      高野和明

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【巧妙に練られたミステリ】
        『日本の現代作家をもう少し読んでみようシリーズ』今回は高野和明さんの本作を選んでみました。
         これもネットではお勧めの作品として挙げられていましたので。

         ストーリーは、死刑確定囚の冤罪をはらすことを依頼された弁護士が、その調査を知人の刑務官の南郷に頼むところから始まります。
         刑務官という立場上、死刑囚の冤罪を晴らす調査をするというのは相当に抵抗があると思われるのですが、南郷は間もなく刑務官を退職することを決意しており、また、死刑制度や刑務所における処遇の在り方などについて疑問を抱いていたこともあってこの依頼を引き受けることにしました。

         南郷は、調査を進めるに当たり、その手伝いを三上という若い仮釈放者に頼みます。
        三上は傷害致死罪により2年の実刑に服していたのですが、満期3か月前に仮釈放になったのです。
         三上の家は、この事件の賠償で火の車であり金に困っていることが予想されたので、弁護士から申し出られた高額の報酬を折半しても三上に手伝わせたいと考えたのですね。
         南郷は、自分が刑務官をやめるに当たり、最後に見込みのある仮釈放者の更生を見届けたいという気持ちもあったのです。

         こうして南郷と三上による冤罪調査が始まるのですが、何とも奇妙な話ではあります。
         高額の報酬を出すことを約束して弁護士に調査を依頼してきた者は、自分の素性を隠すことを弁護士に要求しているのですが、何故そんなに冤罪であると確信できるのでしょうか?
         死刑囚は記憶喪失になっているということで、新たな情報と言っても最近思い出した「事件の時に階段を上った記憶がある」という位の事実しか無いのです。
         
         この作品は果たして本当に冤罪なのかどうか、冤罪だとすると真犯人は誰なのかというミステリになっているのですが、それだけが魅力の作品ではありません。
         この作品の中には、死刑制度をどう考えるべきか、犯罪被害にあった者やその遺族はどれだけ悲惨な思いをするのか、罪を犯した者の更生の困難さ等々がかなりの紙幅を取って描き込まれており、むしろそちらの方にウェイトがあるんじゃないかと思えるほどです。

         その様なテーマの作品を書くに当たり、作者は随分色々調べて書いているということがよく分かります。
         ただし、中には実際にはそういうことにはならないという部分もいくつかはあるのですけれど。
         重いテーマを伴ったミステリですが、なかなかに練り込まれている作品だと感じました。
         

        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2020/05/06 by ef177

    • 他12人がレビュー登録、 49人が本棚登録しています
      模倣の殺意

      中町信

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      2.8
      いいね!
      • 読んでいる内に時代背景がだいぶ前だと気付き、確認してみると40年も前に書かれた推理小説だった。書店チェーンの文教堂が無名の名作を平積み告知したところバカ売れしたらしい。
        内容としては出来過ぎで、同姓同名の若手小説家が1年おいた同日に自殺するところから始まるのだが、その二人の関わり方とその師匠との盗作疑惑が意外な形で絡んでいる事が明らかになるというもの。どちらの自殺者の事を書いているのか意図的に誤認させる事で複雑なストーリーとなっている。感想としては言葉遣いと構成がイマイチで書き方によってはもっと面白くなっただろうに。
        >> 続きを読む

        2017/12/28 by aka1965

    • 他5人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      苦海浄土 わが水俣病

      石牟礼道子

      講談社
      カテゴリー:公害、環境工学
      4.4
      いいね!
      • Wikipediaの純文学で例示されていた作品。水俣病に関する作品ということで、ネタバレした状態で読み始めたのだが、おそらく楽しい話ではないじゃん。読みにくい文体ではないのだが、お風呂読書しているとイライラしてくる。22ページで早々にドロップした。 >> 続きを読む

        2020/06/14 by 和田久生

    • 他3人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      片想い

      東野圭吾

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 毎年アメフトの同窓会で当時のメンバーと会っている哲郎。
        そこはプレイヤーの男だけでマネージャーは居なかった。
        しかしその年同窓会が終わった後店の外にある人物を見つける。
        それは10年ぶりにみたマネージャーの美月だった。
        懐かしい気持ちになり、話を聞こうと思ったが、様子がおかしい。
        取り敢えず自宅で話を聞くと美月からとんでもない告白をされる。

        自分はずっと男だった、哲郎たちと出会うずっと前から・・・
        そして更に自分は人を殺してきたと。

        突然の告白に戸惑う哲郎。
        妻の理沙子は美月を警察には渡さず、匿うという。。。

        ミステリー要素と性のテーマを融合させた作品でした。


        今回のテーマは「ジェンダー」
        今でこそ世間にも認知されてきたけど、それでもとてもデリケートで難しい事柄だと感じています。
        自分も知識も経験も無い為、迂闊な事を言えませんが、本作を読んでもとても安易に感想を言えるような事では無いと感じました。
        >> 続きを読む

        2020/05/18 by ヒデト

    • 他3人がレビュー登録、 28人が本棚登録しています
      銀行狐

      池井戸潤

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      2.8
      いいね!
      •  それぞれ独立した短編が5作おさめられています。
        銀行狐というタイトルですが、 
        警察官が主人公のストーリーもあります。

         それでもやはり、
        銀行の内面をよく知っている池井戸氏ならではの
        トリック設定や謎解きが随所にあり、
        期待にたがわず面白いです。
         
         ところで作品と直接的にかかわりはないのですが、
        本の帯のコメントが気になりました。
        『エスカレートする「狐」からの要求』とあるのですが、
        「銀行狐」に登場する犯人「狐」の犯行は
        たしかにエスカレートしていきますが
        具体的な要求は何もしてきません。
        きちんと読んでいない方がコピーを書いちゃったのかなぁ…。
        でもそれがチェックを通って売り物に巻かれちゃうのって
        どうなんでしょう?
        余談でした。
        >> 続きを読む

        2017/11/23 by kengo

    • 他2人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      青列車の秘密 クリスティー文庫)

      アガサ・クリスティ

      早川書房
      3.0
      いいね!
      • 【オリエント急行の裏返し……かな?/ポアロしらみつぶし5】
         青列車(ブルー・トレイン)車中で起きる殺人・宝石盗難事件をエルキュール・ポワロが解決するというミステリです。
         クリスティは、本作でなかなか凝ったトリックを用意してくれています。

         クリスティの傑作の一つに「オリエント急行殺人事件」がありますが、「ある意味では」本作は「オリエント急行」の裏返し的なところが無いとも言えないかもしれません。
         すみません、ミステリのレビューという性質上、ネタばれ厳禁なもので、どうしても奥歯に物が挟まったような言い方しかできなくて。

         本作は、ポワロ物ですが、残念ながら良き相棒のヘイスティングズは登場しません(一か所だけポワロの台詞中に出てきますが)。
         その代わりに、ポワロの相方的役割を少しだけ担ってくれるのが、ポワロが青列車の中で偶然に知り合ったキャザリン・グレイという女性です。

         キャザリンは、長年、セント・メアリ・ミードという田舎の村で、老婦人の家政婦として働いていた33歳の未婚女性なのですが、その老婦人が亡くなったことで莫大な遺産を相続したのですね。
         キャザリンは、これまで老婦人のお相手をして小さな村に籠もりっきりの生活だったため、一度はリヴィエラへ旅行してみようと思い立ち、青列車に乗ったわけです。

         青列車の食堂車の中で、たまたま相席になったポワロは、キャザリンが推理小説を持っているのに目を留め、話しかけたところ二人は知り合いになるのです。
         キャザリンは、ミステリのような刺激的なことは現実には起きないと言うのですが、ポワロは「そんなことはありませんよ。きっと起きます。」と言ったところ、まさに二人が乗り合わせていた青列車の車内で冒頭の殺人・盗難事件が発生したというわけです。
         ポワロは、キャザリンが聡明であることを見抜き、この事件は私とあなたの二人で解決しましょうとキャザリンに言うのでした。

         さて、この犯罪の目的を達するためだけなら、もっとシンプルな方法が可能だとは思うのですが、そこはそれ、ミステリですから。
         クリスティもその辺は気づいていて、ポワロの口を借りてやや苦しい言い訳をしています。

         また、この作品でポワロが真相にたどり着く手法として「心理」ということを強調しています。
         まぁ、人間のキャラクターということですね。
         証拠上いかに疑わしい人物であっても、そのキャラクターが犯行手口にそぐわなければ犯人ではないと言うのですね。
         まぁ、そういうこともあるかもしれませんが……(やや弱いかなぁ)。

         そうそう、この物語を通じて、もう一つの「謎」が仕組まれているんですよ。
         それは、キャザリンは結構モテまして、様々な男性からモーションをかけられるのですが、キャザリンの意中の人物は誰か?という「謎」です。
         これが、本来の中心的な「謎」と絡み合うように書かれています。

         そうそう、最後にもう一つ。
         今回、キャザリンが暮らしていた村として登場するセント・メアリ・ミード村ですが、後に、この村からミス・マープルが登場することになるのですよ。
        >> 続きを読む

        2020/01/27 by ef177

    • 他2人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      屋根裏の散歩者

      江戸川乱歩

      光文社
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 乱歩の初期短編集で非常に勉強になります。明智小五郎初の登場作品も有り面白いです。

        2016/03/22 by rock-man

      • コメント 1件
    • 他2人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      野性の証明

      森村誠一

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 薬師丸ひろ子のデビュー作で有名な作品です。「人間の証明」よりどちらかと言うとこの作品の方が好きです。映画では、派手にヤッテますが原作は舘ひろし率いる暴走族とヤッテます。この本は読むのは、二度目ですが読む度に新しい発見があり非常に面白い。自分に関係ある地名が出てくる所が惹かれるわけかもしれません。 >> 続きを読む

        2019/06/22 by rock-man

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      誰だってちょっと落ちこぼれ スヌーピーたちに学ぶ知恵

      河合隼雄

      4.5
      いいね! Moffy
      • 深い………ピーナッツの世界は本当に深い。

        ピーナッツを知ったのは、子供の頃母がピーナッツのアニメDVDを買ってくれた時。
        パッケージもなんかやんわりとした感じで、興味を持てなかったのですが、しまいにはアニメの中で一番好きな作品になっていました。
        「あー面白かった」より、私の心にもっと重く働く力があって、充実感を覚えてしまう。
        特にチャーリーブラウン。彼の頑張りには何度励まされたことか。
        そして、完璧無欠でなくても、それが個性で、愛されることも。

        コミックはより吟味して読めるのでもっと味わいがある。
        ピーナッツのコミックは、味わって読むことが大事。ストーリーを追うより、セリフ一つ一つを噛み砕き、何度も読み直す………
        時折、詩集のようなものだと思ってしまう。
        >> 続きを読む

        2017/09/29 by Moffy

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      Death note

      小畑健

      集英社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
      いいね!
      •  2巻だけどあまりに有名な話なので基本構造は割愛。
         ライバル役にあたる捜査側の「L」との知恵比べがメインになってくるあたり。
         実際オカルトなわけだが、こうも簡単にそれを受け入れて推理する「L」は逆にポンコツなんじゃないかと思わなくもない。
         まぁ実際に法則がある以上、解明されていない何かしらの因果があるという前提で考えるのは、科学的の究極の姿かもしれないけど。

         今回思ったのは「名前」の定義って何だろう。
         「名前」なんてものは、個を区別するための道具でしかない。
         ノートに書かれた瞬間、ちょうどたまたま役場に婚姻届けを提出して受理されたとしたら、どう認識されるのだろうか。
         戸籍のない人物は殺せないのか。
         知人に戸籍上の名前と本当の名前が別の人がいる(戦後の混乱で死んだ姉の戸籍が自分に適用されてしまったらしい)この人の場合どちらの名前になるのか。
         顔と名前が一致すればいいのなら、偽名でも殺せる。
         偽名が通用しない以上、名前の定義が何かを把握する必要がありそう。

         や。まぁ今後そんなは展開もあるのかもしれないが。
         そんなこんな色々考えながら読めるのも楽しい。
        >> 続きを読む

        2020/10/14 by 猿山リム

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      ぶらんこ乗り

      いしいしんじ

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 例えば、「楽しい」とか「悲しい」と自分の気持ちを常に一言で言いきれるかというと、そうじゃないことの方が多い気がする。「楽しいけど・・・」「悲しいけど・・・」この「・・・」がうまく言葉にできない。この物語を読んだ感想がまさにそのもの。物語という舞台装置の中で登場人物が動いているという感覚ではなく、自由に動き回る姉弟に追い付くように、いろいろな言葉が紡がれる。そう、揺れているブランコのように留まってはいない生々しさがあふれる。ラストの夜のぶらんこのシーンはグッと来た。 >> 続きを読む

        2020/05/16 by かんぞ~

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      指揮官たちの特攻 幸福は花びらのごとく

      城山三郎

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      •  ここ数年、せめて8月ぐらいは「昭和戦争」関連の書物を読むことにしていますが、本書は「軍神」として称えられた関大尉、中津留大尉を中心に戦争という非常に息苦しい時代に生を受け、しかも命令一つで「特攻隊」として命を散らせていった人達とその家族達のドラマです。両大尉の生きざま(死にざま)もさることながら、関大尉の母、サカエさんの生きざま(死にざま)も非常に感動的でした。
         戦争が無い世界が理想ですが、現在も地球上の多くの人達が自分の意思に反して戦争に巻き込まれ、戦争に直面している現実です。このような平和な現在の日本に生を受けた一人として、ありがたい反面申し訳ない、という複雑な気持ちになってしまいますが、来年も少なくとも8月ぐらいは「昭和戦争」ものを読もうと思っています。
        >> 続きを読む

        2014/08/29 by toshi

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)

      イタロ・カルヴィーノ

      4.0
      いいね!
      • 【これは、地球の、宇宙の神話だねぇ】
         カルヴィーノの短編集なのですが、テーマは宇宙創成、地球の生い立ち、ある時代の生命体、そんなものたちです。
         連作短編的なところもあって、各話にはQfwfqというキャラクターが登場し、それぞれの物語を語るのです。
         まあ、それは壮大な法螺話とも言えるのですが。
         それでは収録作品の中から何作かご紹介しましょう。

        〇 月の距離
         地球と月の距離がうんと近かった時代が過去にあったという話です。
         それはものすごく近かったため、月が海にかかる時、船をこぎ出して月の下に入り込み、船に積んだ脚立に登れば月に触ることができる位なんです。
         漁師たちはいつも月が海面にかかる夜に船をこぎ出しました。
         そして、船に積んだ脚立に登り、月に触ると、トンボ返りの要領でぱっと飛び上がって月に着地するのです。
         でも、その後、月は地球から離れていってしまうのですが……。

        〇 ただ一点に
         宇宙の始まりは、ある一点からビッグ・バンが起き、広がっていったと考えられていますが、その始まりの時の物語。
         すべての物が一点に集まった状態を描いた一編です。
         そこには意識があるQfwfqをはじめとする多くの者たちがいたのですよ。
         もう窮屈なんていうもんじゃないんですが。

        〇 水に生きる叔父
         地球上の生物は海に生まれ、そこから陸に上がる種ができてきたわけです。
         今や、海から陸へと移動が行われた時でした。
         陸に上がった者たちは、まだ海に残り続ける叔父を何とか陸に上げようとするのですが、叔父は頑なにこれを拒否します。
         さて、陸に上がったQfwfqは、彼女ができるのですが、この彼女が変わり者で、海に残る叔父の話に魅入られてしまうのです。
         そう言えば、陸に上がった種から再び海に戻ったものもいたんでしたっけね。

        〇 恐龍族
         一時代を制覇した恐竜も絶滅の時を迎えます。
         地上にはあらたに哺乳類が生まれ、恐竜にとって代わろうとしていました。
         この物語の主人公は、生き残った一匹の恐竜なんですが、哺乳類たちのコロニーに混じり込んで生活していました。
         哺乳類たちは、彼をよそ者とは思うのですが、まさか恐竜だとは考えもしません。
         彼は、自分が恐竜の生き残りであることをひた隠しにしているんです。

        〇 光と年月
         Qfwfqは、今夜も強力な望遠鏡で夜空を眺めていました。
         すると、一億光年離れた星雲に『見タゾ!』と書かれたプラカードが掲げられるのが見えたのです。
         なんてこった!
         ということは、二億年前にしでかしたアレを見られたということなのか?
         宇宙はどんどん膨張していきます。
         ですから、プラカードを掲げた星雲と自分がいる場所はさらに離れつつあるというわけです。
         その後、あちこちを観測していると……。
         あちらこちらの星雲に『見タゾ!』と書かれたプラカードが掲げられるではないですか。
         それぞれの星雲との距離を計算してみると……アレも見られたということなのか?
         うわぁ。

         というわけで、こんな感じでこの世界の成り立ちに立ち会った(と言う)Qfwfqの話が続く作品なんですね。
         カルヴィーノには『柔らかい月』という短編集がありますが、あれは本作の続編として書かれたものなのだそうです。
         こんなカルヴィーノの『神話』をお楽しみあれ。


        読了時間メーター
        □□      楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)
        >> 続きを読む

        2021/10/25 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      エッジウェア卿の死 クリスティー文庫)

      アガサ・クリスティ , 福島正実

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 【このトリックは秀逸だ! この作品は推せますよ!/ポアロしらみつぶし企画9】
         奔放で自分の望むものは何でも手に入れてきた美人女優のジェーンは、エッジウェア卿と結婚していました。
         しかし、既に結婚生活は破綻しており、ジェーンは家を出ていたのです。
         ジェーンは、次の結婚相手として、裕福で地位も高いマートン公爵に狙いを定めていました(男性としてはつまらない男かもしれませんが、結婚すれば公爵夫人ですからねぇ)。

         ジェーンは、偶然知り合ったポアロに、何とかエッジウェア卿に離婚を承諾させて欲しいと依頼してきたのです。
         これまで弁護士などを通じて離婚を迫ってきたのですが、ことごとく拒否されてきたと言います。
         同席していたヘイスティングズ大尉は、ポアロがそんな離婚交渉などに乗り出すものかと思っていたのですが、何と!ポアロはこの依頼を引き受けてしまうのです。
         ポアロは何を考えているんだ?

         さっそくエッジウェア卿に面会に出かけたポアロは、ジェーンが離婚を望んでいることを切り出したのですが、何と、エッジウェア卿はこれをあっさり承諾したばかりではなく、離婚を承諾することについては既に半年前にジェーンに手紙で知らせていると言うではないですか。
         今度はポアロがあんぐりと口を開ける番でした。
         ジェーンは、そんな手紙は受け取っていないと言うのですが、何にせよエッジウェア卿の離婚承諾を取り付けてきたことには間違いないので、さすがはポアロだと褒めそやすのでした。

         これは一体どういうことなんだ?と首をかしげるポアロとヘイスティングズです。
         ところが、そんな騒ぎのすぐ後にエッジウェア卿が自宅で何者かに後頚部の急所を一突きされて殺害されるという事件が起きました。
         エッジウェア家の執事と秘書は、いずれも犯行推定時刻の少し前にジェーンが訪ねて来て、少しして一人で帰っていったと証言します。

        警察はジェーンが犯人だと決めつけ逮捕しようとするのですが、既にエッジウェア卿が離婚に承諾していたという事実を知っていたポアロは、ジェーンには動機が無いと指摘します。
         実際、ジェーンは、犯行推定時刻にはパーティーに出席していたという鉄壁のアリバイがあることが判明するのです。

         それでは執事と秘書が見たというジェーンは何者なのでしょうか?
         これはポアロの推理により、物真似を得意とする女優のカーロッタの変装であることが明らかにされます。
         しかし、カーロッタは所持していた麻薬の過剰摂取により死亡していたのでした。

         確かに、カーロッタの部屋からはジェーンの変装に用いたと思われる衣装なども発見されましたので、ポアロの推理通り、カーロッタが何らかの理由でジェーンに化けてエッジウェア卿を訪ねたのは間違いなさそうです。
         しかし、カーロッタの死亡が偶然の事故というのはあまりにもできすぎです。
         ポアロは、カーロッタに変装をさせた黒幕がおり、その黒幕がカーロッタの口を封じたのではないかと推理するのです。

         この後、もう一つの殺人事件が起きますが、本作のメインとなるのはご紹介したエッジウェア卿とカーロッタの死と言って良いでしょう(三番目の殺人は付け足し的であり、さほど重要なものではありません)。
         さて、本作には手紙に関するトリックが出てくるのですが、これは私にも分かりました。
         しかし、最も重要な、犯人が誰かという謎についてはクリスティーにしてやられてしまいました。
         なるほど、これは考えましたねという秀逸なトリックが用意されています。
         ただし、日本人にとっては動機はちょっと分かりにくいと言わざるを得ませんが。

         本作は、なかなか緊密な構成を備えており、ミステリとして隙の無い作品になっていると思います。
         犯人の意外性という点でも十分に合格点が与えられる作品です。
         以前ご紹介した『アガサ・クリスティー完全攻略』ではポアロ作品のベスト10圏外でしたが、私は、本作はもうちょっと評価されても良いのではないかと思います。
         なかなか優れたミステリだと思いますよ。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2020/10/22 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      ポアロ登場 クリスティー文庫)

      アガサ・クリスティ

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • ポアロの初期短篇を集めたクリスティ初の短編集。
        ヘイスティングズ、ジャップ警部も登場。
        簡単に内容のご紹介をしておきます。しつこいレビューでごめんなさい。

        【“西洋の星”盗難事件】
        The Adventure of "The Western Star” (The Sketch誌1923年4月11日号)
        〈西洋の星〉〈東洋の星〉と呼ばれる大粒のみごとな双子のダイヤモンドの盗難予告の手紙が送りつけられた。
        このダイヤは、もともと中国の寺院の神像の眼にはめ込まれていたという逸話があるという。
        ポアロはダイヤモンドを守ると受け合うが…。

        ヘイスティングズ相手にポアロがシャーロック・ホームズごっこをするという、パロディに近い作品。
        ダイヤの盗難ネタで、登場人物が映画スターと貴族の2組の有名人夫婦。
        犯人像に謎の「辮髪の中国人」まで登場し、短いながらクリスティの大好きなネタが盛りだくさんです。
        「スタイルズ荘事件」のメアリが話題として登場。

        【マースドン荘の悲劇】
        The Tragedy at Marsdon Manor (The Sketch誌1923年4月18日号)
        多額の保険金を掛けた直後に死んだ男の調査を請け負ったポアロ。
        医者は脳内出血と診断したが、保険会社は若く美しい妻に金を残すための自殺を疑っていたのだ。
        亡くなった男のそばにはカラス打ち用ライフルが残されていた。

        【安アパート事件】
        The Adventure of the Cheap Flat (The Sketch誌1923年5月9日号)
        ロンドンの一等地の贅沢なアパートが、相場380ポンドが80ポンドで貸し出されていた。

        ヘイスティングズがホームズ気取りでセリフの真似をしていますが、
        作品も「赤毛連盟」を下敷きにしていることは明白です。

        うまい話にゃ裏がある。もしかして幽霊が出るの?
        安い家賃で借主を探す本当の理由は何か?
        「日本人スパイ」も絡む国際的な陰謀の匂いがします。

        【狩人荘の怪事件】
        The Mystery of Hunter's Lodge (The Sketch誌1923年5月16日号)
        インフルエンザで休養中のポアロに変わって孤軍奮闘するヘイスティングズ。
        狩場の一軒家での殺害事件の犯人を追うが。

        完璧に「安楽椅子探偵」のスタイルのお話し。
        ヘイスティングズとの電報のやりとりだけで犯人を当ててしまいます。
        犯人は証拠不十分となるも…。
        現代の捜査なら100%立証できますけれど。

        【百万ドル債券盗難事件】
        A Million Dollar Bond Robbery (The Sketch誌1923年5月2日号)
        百万ドルもの自由公債が輸送中の船で盗難に合い売られてしまった。
        密室空間の船内では公債は発見できず。

        ポアロが、がっかりするほど単純な事件という通り。簡単すぎ。

        【エジプト墳墓の謎】
        The Adventure of the Egyptian Tomb (The Sketch誌1923年9月26日号)
        古代エジプトのメンハーラ王の墳墓の発掘に関わる人が立て続けに死亡する事件は王の呪いだと世間を騒がせた。
        護身を依頼されたポアロは真相解明に乗り出す。
        王の呪いは本物なのだろうか?

        エジプトで砂やラクダに悩まされるポアロに笑いつつ、
        オカルト的な味わいも楽しめる異色作。
        これは短編ではもったいなく、長編にすべき内容だと思うのですが。
        「迷信」は信じていないが「迷信の力」は信じているというポアロの言葉は名言だと思います。

        【グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件】
        The Jewel Robbery at the Grand Metropolitan (The Sketch誌1923年3月14日号)
        見栄張りの富豪が集まるブライトンの有名ホテルで、非常に高価な真珠の首飾りが盗まれた。
        その場に居合わせたポアロは真珠の奪回に乗り出す。
        一見密室に見えたホテルの客間での盗みのトリックとは?

        【首相誘拐事件】
        The Kidnapped Prime Minister (The Sketch誌1923年4月25日号)
        名実ともに英国のリーダーである首相が重要な国際会議出席のため、フランスへ渡った直後に姿を消した。
        国際的陰謀の解決を依頼されたポアロは時間までに首相を無事に発見しなければならない。

        【ミスタ・ダヴンハイムの失踪】
        The Disappearance of Mr. Davenheim (The Sketch誌1923年3月28日号)
        銀行家、ダヴンハイム氏がある日忽然と姿を消した。
        家の金庫は荒らされ、池には彼の衣服が投げ入れられ、指輪が質入れされていた。
        彼の生死は?生きているとしたら、どこに?

        「木の葉を隠すなら森の中」ってのは、ブラウン神父でした。

        【イタリア貴族殺害事件】
        The Adventure of the Italian Nobleman (The Sketch誌1923年10月24日号)
        高級アパートの一室で起こった殺人事件。
        死の間際に医者に助けを求める電話がかかり、ポアロと医者が駆けつけると…

        意外な犯人と密室殺人のミックス。
        これも種明かしが忙しい感じで、中編くらいのボリュームが欲しい。
        ポアロの殺人事件ものには短編は向かないといわれるのは、
        彼女のプロットではトリックと人物描写が複雑なため、
        慌ただしい解決になってしまうからでしょう。

        【謎の遺言書】
        The Case of the Missing Will (The Sketch誌1923年10月31日号)
        財産家の男がなくなり、隠されたもう一通の遺言状の存在を匂わせる不思議な遺言を姪に残した。

        短編として楽しい。こういう殺人モノ以外の活躍が読めるのは短篇ならでは。
        ラストの台詞も気が利いている

        【ヴェールをかけた女】
        The Veiled Lady (The Sketch誌1923年10月3日号)
        やんごとなき身分の美女が悩み事を依頼に訪れる。
        昔書いた恋文をネタに高額の金銭を要求されているという。

        面白い。ふざけすぎ、とも言える。
        ポアロが暇すぎて、自分が犯罪者なら一流の犯罪者になって荒稼ぎできるのに、自分は道徳心がありすぎる。なんて考えていたちょうどそのタイミングだったので、
        違法な家宅侵入を嬉々としてやったりします。
        真相を知ったら誰でも唖然とするでしょう。

        【消えた廃坑】
        The Lost Mine (The Sketch誌1923年11月21日号)
        中国人実業家が殺され、ある重要な書類が奪われた。

        アヘン窟に潜入したりってところが、ちょっと珍しい。

        【チョコレートの箱】
        The Chocolate Box (The Sketch誌1923年5月23日号)
        荒天の夜に暖炉にあたりつつの昔話はベルギー警察の刑事課にいたころのポアロの大失敗の物語。

        心臓麻痺で急死した大物政治家の死因を不審に思う家族の一人からの依頼で
        休暇中のポアロが単独で調査を開始する。
        何もなさそうに思えたが、故人が好きだったチョコレートの箱が目に留まり、事件性を確信。
        調べを進めると不審な人や出来事が浮かび上がる。

        この話はその後のシリーズの中に何度となく、ポアロの口から「チョコレートの箱の件」として話題にのぼるので、
        この短編集の中で最重要かつ有名なお話しです。

        彼にとって、この失敗は「戒め」であり「思い出」なのです。
        ポアロが敬虔なカトリックというのは、意外な事実でした。(本当~?)

        雑誌連載時の日付を添えておきました。
        本の順番は連載順にはなっていませんので、
        連載順に読むのも一興かと思います。
        >> 続きを読む

        2012/10/04 by 月うさぎ

      • コメント 8件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      悪いうさぎ

      若竹七海

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 葉村晶、31歳。数年前から長谷川探偵事務所と契約している晶に、東都総合リサーチからの指名の仕事が入る。

        仕事の内容は、家出中の17歳の女子高校生・平ミチルを家に連れ戻すというもの。
        晶が待ち合わせの場所に行くと、そこにいたのは、東都総合リサーチのベテラン・桜井肇と先月入ったばかりの新人・世良松夫。

        3人は、早速、平ミチルが現在住んでいるという、宮岡公平のマンションへと向かう。
        最初は抵抗したものの、ミチルは、晶が一緒に部屋の中に入ることを合意。

        しかし、世良がでしゃばったため、事態は混乱。
        晶は、公平に果物ナイフで刺され、世良に踏まれた右足にはヒビが入り、2週間の入院生活を余儀なくされる。

        そして、退院した晶を待っていたのは、またしても、17歳の女子高校生探しの依頼だった。
        ミチルの同級生・滝沢美和を探すという仕事に、晶が指名されたのだ。

        美和がいなくなったのは10日前。そして、葉村晶の最悪の9日間が始まるのだった-------。

        この「悪いうさぎ」は、「プレゼント」「依頼人は死んだ」に続く、若竹七海の"葉村晶シリーズ"の第3弾で、葉村晶、初の長編。

        やはり長編は、読みやすいですね。
        長編らしく、メインとなる事件については、じっくりと書かれていますし、しかも、晶を襲うトラブルの数々は、連作短編集の時とは段違い。

        スピーディな展開には息をつかせず、合間には、アルマジロの尿のようなコミカルな部分も。
        しかし、次から次へと起きるトラブルには、葉村晶って、いつも大変だなと、思わず苦笑してしまいます。

        しかし、タイトルの「悪いうさぎ」の本当の意味が分かった時には、驚きました。
        これでもし、この物語の舞台がアメリカなら、まだ対岸の火事のように読んでいられると思うのですが、これは強烈ですね。

        しかし、相当キツイ毒ではありますが、「プレゼント」の時の滲み出てくるような悪意とはまた違うので、私としてはとても読みやすかったですね。

        それに作品ごとに、晶の性格も少しずつ変わってきているように感じます。
        最初の頃の、人を寄せ付けないガードの強さが、少し柔軟になってきているような。

        相変わらず取っ付きは悪そうですし、人格が丸くなったということもないのですが、何も言わないうちに、排除されてしまいそうな厳しい部分は薄れたような気がします。

        また、長谷川探偵事務所の同僚・村木や、家主の光浦功がいい味を出していますね。
        しかしその分、嫌な人物も、まるで見本市のように沢山登場するんですね。

        このシリーズは、引き続き、追いかけていきたいと思っています。

        >> 続きを読む

        2021/06/01 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      あさ

      吉村和敏 , 谷川俊太郎

      アリス館
      カテゴリー:詩歌
      5.0
      いいね!
      • 朝には、独特の瞬間がある。

        1日が切り替わる時間帯が、それ。

        それを、この本からも感じ取れる。

        自分で、畑仕事をするようになって、そんな時を感じることがあり、いのちを感じるようになった。
        >> 続きを読む

        2018/05/13 by けんとまん

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      水源―The Fountainhead

      アイン・ランド

      4.5
      いいね!
      • 【建築を巡る二つの人生の物語】
         本書は、超大作です。
         上下2段組で1000ページを超します。
         でも、全米のなんたらアワードで2位に入ったとかいう作品だそうです。

         物語は、ハワード・ロークという天才肌の建築家志望の若者の学生時代から始まります。
         建築家には名門のスタントン工科大学で光る才能を示してはいたのですが、教授達が求める課題にことごとく反抗し、退学を選びます。
         大学で教えようとすることは、ロークの考える建築とは異なっていたということなのでしょうね。

         ロークは貧しく、同級生のピーター・キーティングの家に下宿していました。
         ええ、ピーターもこの時代は別に裕福でもありませんでした。
         彼も、抜群に…ある意味で…優秀でした。
         キーティングは、教授達の課題にも如才なく答え、主席でスタントン工科大学を卒業します。

         キーティングの前途は洋々です。
         N.Y.最高の建築事務所に迎え入れられ、そして……彼の上昇志向、どんな手をつかっても成功をつかみ取るという強い意志が、数々の世間に評価される建築物を造る地位に上り詰めます。
         これも建築家としての一つの生き方なのでしょう。

         一方のロークは、過去には評価されたこともあったけれど、今となっては誰にも見向きもされない、アル中になったとある建築家のもとを訪ねます。
         そこで、彼は、彼自身を理解してもらうことができ、落ちぶれた建築事務所に入ります。
         ロークが考えるところの建築を体現していたのが、アル中になってしまった老建築家だったのでしょうね。
         ですが、仕事など何もなく、金もない生活です。

         ……というのがほんのさわりのお話。
         天才肌のロークと、ビジネスとして建築をやっていくキーティングという二軸を対立させ、そこにロマンスも絡めながら生き様を綴っていきます。
         読み応えのある大作です。
        >> 続きを読む

        2021/06/08 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      ジス・イズ・ニューヨーク

      松浦弥太郎 , SasekMiroslav

      ブルース インターアクションズ
      4.5
      いいね!
      • ニューヨークの街を描いた絵本。

        本当にいろんな人種や民族が集まっている、世界の縮図のような大都会なのだろう。

        いつか行ってみたい。
        ブルックリン橋も見てみたいものだ。
        >> 続きを読む

        2013/04/11 by atsushi

      • コメント 5件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      六世笑福亭松鶴はなし

      戸田学

      岩波書店
      カテゴリー:大衆演芸
      4.0
      いいね!
      • 鶴瓶がインタビューする米朝、文枝、春団治などの証言により、
        六代目松鶴の、芸に寄せる真摯な想いが明らかになる。

        一言で云うと、豪放磊落でありながら、上方落語の復興に果たした功績は、
        図り知れぬものがある。

        その中で、落語の芸と題し、松鶴と越智治雄氏との対談が興味深くおもしろい。

        「らくだの演出」についてと、松鶴がネタおろしする前のメモ書きがある。

        枕・・・・千日の火屋
        時・・・・夏。それも残暑の厳しい頃とする。昼過ぎから夕方。
        場所・・長屋の造り。豆腐屋(表通り)。大家。月番(コグチから二軒目)

        遊び人のこしらえから入っていく。
        ・・・・・カスの遊び人だが、なりはしっかりしている。
        紙屑屋の性格
        ・・・・・酒と博打で身をすったのは嘘。酒だけ。嫌にになっている。
        ・・・・・最初の一声から描き方を変える。今迄の、初め愛想笑いをしていて、
        最後にやくざのようになるのは演出の謝り。-暗い感じ、重い口、上品なところのある言葉。

        酒の呑み方
        ・・・・・やけくそになって紙屑屋は呑んでいる。一升徳利三本をうまく空けなければならない。
        勿論紙屑屋の方が強い。・・・荒い事を言わず凄みをきかせる。一合茶碗、一息で呑める。
        箸が乱れてくる。おかずはあまり食べない。」・・
        ・・・・・・・箸の置き方まで、最初は小皿、次は左手で受けながら、ぼちぼちじか箸に、
        きっちり前に置いた箸が、だんだんぞんざいになりお膳の上にポンと落とすようになる
        ・・なんて細かいことまで、留意されているのか、米朝さんならいざ知らず、六代目の口から
        発せられるのが、驚き。・・豪放磊落に見せながら、いかに細かい計算があったのか、感動。

        らくだをただ怖がるのはいけない。
        水滸伝の人間のように大きな事ばかり言ってもいたらくだ。
        先ず最初の月番の所へ行く。泣き笑いの祝儀。
        返事を聞かんと困ると言われて、気軽に荷物を預ける。
        大家の所へらくだを背負って行く。「豚と相撲とった夢見て、らくだ背負う」
        ・・・別のくすぐりに変える(実際は、豚をまめだに変更)。長屋の人間の扱い。
        びっくりして香奠を持ってくる。
        家主・・“かんかんのう”・・・死骸を見てすぐ謝る。・・・小文冶さんの演出。
        “ちっとは嫌がられている家主”やと言った手前、踊らせる迄強がっている。
        桶・・・八百屋ではいけない。

        西日の中を歩いていく。(20分位の道)約1時間・・・・。

        私たちは、舞台の落語を聴いて、単にあははと笑っているだけですが、
        噺家さんの高座には、演者としての、深く緻密な計算された演出があるんですな。

        このあと、「市助酒の酔い」、「噺の変幻」、「言葉の深さ」、「呼吸のむずかしさ」と
        六代目が真正面から語る、芸談は、日頃聴いている噺だけに、読み応えがありまっせ。

        是非、笑福亭ファンは図書館でも、手にされることをお勧め致します。
        >> 続きを読む

        2013/06/07 by ごまめ

      • コメント 3件
    • 1人が本棚登録しています

出版年月 - 2004年7月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本