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あさのあつこ
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不思議とこの巻から巧以外のキャラクターに興味を持つようになる。豪の深い一面、青波の願い、海音寺の熱い思い……それぞれの色が混ざりあって、とても熱い気持ちになれた。自信過剰な巧をやんわりと包み込むチームワーク。素敵だなぁ。巧のような「爆弾」を抱え込むのは危険で大変だけど、それを受け容れ、才能を発揮させることを含めてチームの強さがあるのかもしれない。 >> 続きを読む
2020/07/11 by Moffy
松本清張 , 宮部みゆき
松本清張ファンを自認する宮部みゆきが、責任編集を行なった「松本清張 傑作短篇コレクション」の中に収録されている作品の中で「地方紙を買う女」に魅かれましたね。この小説は、ミステリとして非常によく出来ているなと思いますね。バーのホステスをしている一人の女が、地方新聞の購読を申し込む。連載小説が面白そうだからというのである。係からそれを聞いて小説の作者は喜ぶが、一カ月足らずで"面白くないからやめる"と言って来たと聞いて、不愉快になると同時に、その読者の目的が自分の小説を読むために購読の申し込みをしたのではないことに気づくんですね。この女は、ピクニックに誘い出した男女を殺害し、それに関連する記事が地方新聞に出るのを読みたかったのだ。作家が、バーの客としてホステスをしている女に近づき、次第にその女の秘密に迫っていく経過も、実によく書けていると思いますね。女は、シベリアに抑留されている夫を待つ身だったが、たまたまデパートで買い物中に、誤って買い物袋の中に紛れ込んだ正札付きの手袋のために、それを見つけた警備員の男に脅され、身体ばかりか金まで貪られるのだ。夫が帰還する報せを受け、追い詰められた女は、ダニのように離れない男を殺してしまうのだ。浅慮にも道を誤り、同僚のホステスを道連れにさせて。だが、最後の最後まで、謎を孕んだままストーリーが進行していく。そして、ラストに至って、女の遺書によって真相が判るのですが、そこで、女の哀れさが一挙に迫って来るんですね。真相が判ってみると、何となく呆気ない感じのするミステリが多いものですが、そこは、さすが松本清張だけあって、この作品では、それまで謎に包まれていた女の一つ一つの行動が、改めて蘇って来るという感じで、作者の狙いは明らかに成功を収めていると思いますね。 >> 続きを読む
2018/05/06 by dreamer
桜場 コハル
このレヴューは、南家三姉妹の平凡な日常を描いた、漫画やアニメの感想を淡々と述べたものです。過度な期待はしないでください。繰りかえします、過度な期待はしないでください。 先日、一か月以上も先の誕生日のプレゼントとして、Wii Uといま話題の「スプラトゥーン」というゲームソフトを家内に贈った。もう20年近い付き合いなので、まあ欲しがっているものくらい分かります。しかしこれでゲームキューブ以外のゲーム機が、おおむね一堂に会することになり、各々のコントローラーが鳩首凝議しているよう。 で、いつもは漫画を読みながら見学ですが、これはすこしやってみました。ざっくり説明すると、陣取りによって勝敗を決するシューティングゲーム。けっこう面白いけれど、その分忙しいし慌ただしいです。 これらを買ったせいでしょうか? なぜか財布のなかのお金が少なくなりました。お小遣いなしでは人生がつまらないので、大急ぎで副業の翻訳をはじめ、この頃は家にいるときはつねに右手は鉛筆状態。右手の五指まで削りかねないくらい参っています。ということで、今日は心のゆくままこの「みなみけ」を語らせてください。 日常系のコメディー漫画で、三姉妹のそれぞれが高校、中学校、小学校へと通うため、学校に関するあるあるネタが多いです。そして、ほとんどのギャグは勘違いによって生じ、それらがパターン化していくという、ショート作品の王道といえる作風。独特の毒をもった台詞まわしというか、会話の妙にクスッとしちゃいます。 だけどね~、やっぱりキャラクターが魅力的なのよ。なかでも、なぜか両親不在の南家の、母親代わりの春香姉さま(長女)がぼくの好み。「おや、女神かな?」と思っちゃいます(笑)。 そのくせ長女が通う高校パートはあまり面白くなくて(ぶっ飛んだ先輩が一人いて、彼がこの漫画の顔ですが)、ぼく好みでない千秋(三女)の通う小学校パートになると胸躍ります。千秋の友だちの吉野と内田がいいんだ。ぼくは「苺ましまろ」も好きだから、自分で自分が心配になります(苦笑)。 おっと、夏奈(次女)に触れてなかった。この子は馬鹿です。テストで人間味あふれる点数しか取れないし、南家のトラブルはほとんど次女のせい。 でもね、この子がいちばん可愛いんだ(笑)。 (ちなみに、表紙の子が次女の南夏奈です) >> 続きを読む
2015/06/15 by 素頓狂
川上弘美
一編が文庫3ぺージに収まる長さで、ほっと心が休まるエッセイ集。あ~そうですそうですと、思い当たるようなちょっとした出来事や、出先で見聞きしたことなどが書いてある。 中でも、読んだ本がうまく引用されて、読みたくなってしまう。 好きな食べ物は飽きるまで食べる、なんかそのこだわりが良く分かる。私も米粉パンを卒業して今は塩バターパンに凝っている。どこを読んでも、川上さんの人柄がにじみ出ている。拘らない楽そうな生き方や、作家で主婦でお母さんのゆったりした毎日が微笑ましい。 身近なものに向ける視線もユーモア含みのほっとする文章が短い中に納まっている。 織田作之助の「楢雄は心の淋しい時に蝿を獲った」にふれ、そうやって楢雄は自分の不器用な生をめいっぱい喜んでいたんじゃないだろうか、その人の奥底も知らずに、と思う。 少し淋しかったので風呂場に潜んでいた蚊を潰した。 言葉で書いてある「あやとり」をやってみる。 一一そして再び小説に、もどる。安らかさとは正反対のところにある営為に。正反対にあるからこそ、いっそのこと安らかなのかもしれない、営為に。 博物館に行ったり、古本屋をめぐったり、昼顔を見たり、漫画の欠けた巻が近所ではどこにもないので、電車に乗って探しにいく。 一一あてもなくのんびりと電車に乗って隣りの町に行くことを信条としている私の人生が、立った一冊のマンガによってすっかり血走ったものになってしまった。 一一「田紳有楽」という本を借りた。仰天したままその日のうちに本を読み終えた。「すごいね」とマリ子さんに言うと、マリ子さんはエヘへと笑った。以来私は「田紳有楽」という本を愛してやまないのだが、いまだにその全貌をうまく把握することができない。なんだかわからないけれど、小説ってものは、やはり凄いな、と私は思ったのだ。 数えてみれば全部で59編あった。218ページにそんなに入っているのに、楽しく暖かい。 最後に詩のように日々の生活から切り取った言葉が並んでいる。 (略)今まで言ったさよならの中でいちばんしみじみとしたさよならはどのさよならだったかを決める(決まったら心の中でゆっくりさよならをとなえる) 一一 連載エッセイを書いていて、最後の回になると、私はさみしくてたまらなくなってしまいます、表題作も欄さいの最後の回に書いた文章です。 辛い本もあればこんなにゆったり、ほっとする本もある。 >> 続きを読む
2014/10/02 by 空耳よ
森博嗣
なかなか面白かった。星の王子さまのパロディなんだろうけれど、これはこれでなかなか考えさせられるいろんな仕掛けに満ちている。考えてみれば、地球のような環境や大きさというのは、本当にありがたい希有なものなのかもしれない。 >> 続きを読む
2013/06/07 by atsushi
折原一
埼玉県の3世帯が同居する家で、4人が惨殺されるという事件が起こった。現場での生存者は娘一人。そして生き残った娘の弟にあたる、一家の息子が、事件直後から行方不明になっていた。その息子がこの事件を起こして逃げたのかと思われたのだが-------。また、池袋では一人の青年が、万引き事件を起こして逮捕されるという騒動が起こった。万引きだけならば、ありふれた事件なのだが、その青年は、事件を起こした事については認めたものの、名前など自分の身の上については一切語らなかった。それにより、青年の罪はどんどんと大きなものへとなっていくのだった-------。折原一の「沈黙者」では、一家皆殺し事件の捜査と共に、軽犯罪を犯した青年の裁判の様子を追いかけている。軽犯罪を犯した青年ということだが、ここでのポイントは、この青年が自分の名前については一切口にしないという事。それゆえに、大目に見てもらえそうな万引き事件が、大げさな自体へと発展していくものとなっている。この様相を見ていると、従来ならばありえないのでは? とか、実際にそういう事があったらどうなるのだろうと思っていたのだが、実はこれは、実際にあった事件を元に小説を描いたものであると解説に書かれていた。それがどのような結末を迎えたのかという事は読んでみてのお楽しみですね。あと最後に一つ付け加えると、解説として叙述トリックではなく、叙述テクニックと書かれているのには、なるほどと感心してしまった。 >> 続きを読む
2021/11/21 by dreamer
桐野夏生
主人公のカスミは旦那の仕事仲間、石山と不倫中。 ところが、石山に招かれた別荘で5歳の娘が失踪し、 罪悪感にさいなまれながら、カスミは1人で探し続ける。 そして次第に、周囲の人間達が抱えてる深い感情が 浮き彫りになってくるのだ。 このミステリーは、“犯人が誰なのか”という事に 重きを置いていない。そこが新鮮だった。 “強さと脆さ”、“信念と妥協”、“後悔と希望” そういった人間の表裏一体である複雑な心理を、 最後まで追求しているのも見どころがある。 しかし、あまりに深いテーマを引っ張りすぎて、 カスミの自問自答がクドくなってる気がする。 重い話が好きな私ですら少し疲れてしまった… >> 続きを読む
2019/02/07 by NOSE
2019/01/28 by NOSE
和田誠 , 宮沢賢治
子どもの頃に読んでとても印象に残っている一冊。それまで子どもが好きそうな楽しい、みんな仲良くよかったね!的な絵本が多かったので初めてこれを読んだとき衝撃を受けたのを覚えています。怖いというよりも、面白いの一言。この本を面白いと形容してしまう小学生の私の精神はどうだったんだろう?今でも変わらず面白いと思ってしまうんだけれど。「面白い」という表現が適切なのかはわかりませんが。「あれ?なんだか変だぞ?もしかして。。。」と思いながら読み進めて、うわあああ!みたいな。それがとても心揺さぶられて、惹かれて、今の好きな本やジャンルにも影響を及ぼしている気がします。久しぶりに読み返してみたら、やっぱり良かった。おかしいと思いながらも自分たちで正当化する理由をあれこれ見つけて信じ込んでいく様も興味深かったです。どうして私たちは何もかも自分の都合のいいように解釈し、自分の行動に対して理由をつけていくんでしょうね。 >> 続きを読む
2014/01/23 by Rie
山崎ナオコーラ
恋の最中は、太さの違う剛毛や目尻のシワやぽっこりした下腹部までも、普通は幻滅するような部分も宝物のパーツになる。この時期が過ぎて、空気になって、空気が当たり前であったり、重苦しくなって辛くなったり、場合によっては毒が混じったり。途中で終わると切ないけれど綺麗なまま。磯貝くんは途中で一方的に断ち切られこの状態。ユリは空気を既に持っていて、少しその綺麗なモノが欲しくなったんだろう。ズルい。でも羨ましい。恋の終わりはなかなか癒えない傷。そうだね。「会えなければ終わる、そんなものじゃない」 >> 続きを読む
2017/11/12 by ももっち
東野圭吾
湖畔にある別荘で行われている子供たちの受験勉強。それぞれの親も保護者として帯同するが、そこに一人の無関係者が。それは夫の隠していた愛人であり、さらには妻が愛人を殺してしまうという告白をする。場所が場所なだけに関係者でしか知りえないこと。よって殺人を亡き者にしようとするのだが、そこには裏が。閉じられた場所だから連続殺人とはならない。むしろその状況に起こりうる犯人や原因が特定されている。だから真相にも無理がなく、驚きもある。しかしドロドロしてる奴らばっかだなあ(笑) >> 続きを読む
2019/02/17 by オーウェン
遥洋子
東京大学で上野千鶴子先生から学んだ遙洋子先生による著書。議論、ディベートする意味や正しい議論、ディベートの仕方、議論、ディベートの勝ち方を学べます。日本社会がいかに男性優位社会、女性蔑視社会で、女性が過酷な状況に置かれているかも学べます。素晴らしく勉強になる良書で、女性はもちろん、男性にも読んで欲しい一冊。上野千鶴子先生のような能力も信念もあって、かつ明朗快活な女性が増えると、日本社会もきっと変わるはず。 >> 続きを読む
2017/11/23 by 香菜子
わくはじめ , ルイス・キャロル , SabudaRobert.
【飛び散るトランプ!】 いわゆる『飛び出す絵本』のアリスです。 私が持っているのは大分昔に買った英語版なのですが、その後、日本語版も出たのですね(英語版は検索で出ないのですよ)。 私が買った当時は、相当に凝った造りの『飛び出す絵本』で、これは子供が楽しむのも良いけれど、大人にだって十分楽しめる!と思って思わず購入しちゃった本でした。 アリスの名場面が取り上げられていますが、私が一番好きなのは、トランプがパーッと広がるページです。 立体的にたくさんのトランプが飛び散るのですよ。 お店(確か東急ハンズだったと思う)では、そのページがディスプレイされていて、それを見た途端にやられてしまいました。 いや、見事です。 なかなか繊細な造りになっているので、乱暴に扱うと傷んでしまいそうです。 その意味では子供が自由に開いて楽しむのはちょっと大変かも。 今では日本の飛び出す絵本も本書のように非常に凝った造りのものも多く出ているようですが、当時はこの本の飛び出し方は画期的だったように思います。 大人のための『飛び出す絵本』という感覚で速攻買いをしてしまった一冊なのでした。 >> 続きを読む
2021/12/03 by ef177
桜庭一樹
ラノベ風なイラストの本の割に内容は重く、非常に考えさせられるというか痛々しい気持ちになる作品。自分は大人側の視点でこの物語を読んだので、救われなかった少女に対する虚無感と日頃から少女に暴力をふるっていた父親に対するいら立ちが同時に沸き上がった。読後は非常に複雑な気分になった。そういう風に思わせる点ではよくできている作品だなと思う。でもミステリーではないなと同時に思った。感想はこんなところです。 >> 続きを読む
2016/05/14 by おにけん
ニキリンコ , 藤家寛子
だいたいにおいて自閉症スペクトラムの人の手記は分かりづらいのだけど、進行役の定型発達者がいるせいか、言語能力の高い当事者を選んだせいなのか、かなり読みやすかった。ニキリンコさんの発達障害はある意味身体障害である、という説は「なるほどなあ」だった。神経過敏や感覚鈍麻や運動音痴や表情筋の硬さや姿勢の維持の難しさは確かにある意味身体障害だ。花風社の発達障害シリーズは目からウロコどころか眼窩から眼球が落っこちて顎が外れて髪の毛が抜けそうな内容で面白い。雑誌やネットでよく見る発達障害に対する見解や対処法とかなり毛色が違うので戸惑うのだが、なんとなく花風社シリーズ執筆陣の方が正解に近いような気がする。本当になんとなく、なのだけど。うまく言えないのが残念なのだが「ああそう考えればしっくりくる!」みたいな。 >> 続きを読む
2018/05/25 by kikima
E.L. カニグズバーグ
この作品を愛する読者の方もきっといらっしゃるので、ここまで低評価をするのは申し訳ないですが、私は、この一冊の考えはいただけません。子供も、いい年の大人も、全員揃った「大反抗期」。自分勝手なわがままを押し通す為に騒いでいるような、そんな感じのお話しですね。一定のルールがあるからこそ、自由というのは保証されるものです。秩序無い世界がどれぐらい混乱するのかを、この主人公達は知らないのでしょうか。私も大衆の意見に流されずに、自分の芯を貫くことは大事だと思っていますし、ステレオタイプにならずに、個性はあった方が良いと思います。ただ、それは自分の願いが通らないならば、お構いなしに誰かを傷つけ、卑下したりしていいということではないでしょう。それは自由ではありません。ただの自分勝手です。 >> 続きを読む
2019/05/22 by Moffy
乃南アサ
ひったくりを繰り返し人生の意義を見失っていた主人公がとあるど田舎で人間味あふれる人たちに出会い、更生する話。 >> 続きを読む
2017/04/25 by konil
田辺聖子
小倉百人一首を一首ずつ、意味だけでなく、作者の生涯,日本語の美しさ,名所・名産品などを交えて分かりやすく解説している。生徒役のサダ子さん(乙女チック優等生)とイエ太くん(くいしん坊万才)も重要な萌えポイントである!百人一首と聞くと、取っつきにくいイメージがあるかもしれない。けれども、中を覗けば恋愛小説や少女漫画やラブソングと同じ。要は「恋しちゃったんだ」系の歌ばかりを集めた、EXILE顔負けの「恋うたベストアルバム」だと思えばよろしい。(笑)めちゃくちゃキザでドヤ顔まる出しの歌や、「ダジャレじゃねぇか!」ってツッコミたくなる歌とか色々あるので、興味のある人は自分の好きな歌を探すところから始めると良いだろう。というわけで、自分の好きな歌を一首 ↓<君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな> 藤原義孝(ふじわらのよしたか)【オメェの為なら、オレのライフゲージが0になっても構わねぇと思ってた。 だが気が変わった! オレは生き延びてやる!! そして・・ オ、オメェとその・・・ ずっと一緒に居てやっても良いんだぜ!!】 :とらの翻訳 >> 続きを読む
2014/01/19 by ウサギ
十文字青
壮大な物語の始まりの1冊。私の大好きなシリーズです。1冊目からこの世界の独特な世界観が見え隠れしています。主人公:マリアローズは非常に美しい侵入者(クラッカー)で、仲間と共にアンダーグラウンドにもぐりこみ、金目の物を稼いでいきます。マリアの仲間はとても強いですが、マリア自身は決して強くなく、むしろ身体的に「弱い」です。本人もしっかりそのことは自覚しており、時折いじけたり、落ち込んだり、でも最後には立ち上がって、冒険を進めていきます。1巻は物語の説明みたいなものですから、1巻だけでは物足りなく感じる人も多くいると思いますが、その方はぜひ次の巻も読んでいただきたいです。少しずつ成長していくマリアを一緒に応援してほしいなと感じます。 >> 続きを読む
2014/12/01 by しずか
HouellebecqMichel , 中村佳子
仕事の合間のおしゃべりで「世間と馴染んでる感覚を持ったことがない」と冗談めかして語った同僚に、お勧めの本は?と尋ねたところ、真っ先に出てきたのがミシェル・ウェルベックの「ある島の可能性」。全く知らなかったが、著者はフランスの有名な小説家らしい。近所の図書館にはこの本自体はなかったが、処女作の「闘争領域の拡大」が置いてあったのでこちらから読んでみた。現代という性と金しか価値基準がない時代で、金はあれども女性関係には縁がない主人公。理性的にはそれを諦めているが、さらに絶望的な状況にある友人を眺めていくことで、他に価値を向けるべきものがない自分の姿と直面せざるをえなくなり。。。淡々とした文体で身も蓋もない話や露骨な性表現をしているため、落ち着いて不快さを堪能できた(笑)ネット上に、資本主義による自由化が経済だけでなく様々な領域に及び、性も勝ち取らなければいけなくなってしまった現代へのアイロニーとそこでの弱者へのシンパシーといった書評があった。個人的には、人間が今まで培ってきた文化が全て性に付随するものではないと信じることにしているので、著者が性の問題を全ての根本にしている部分とは相容れない。また、現代の脅迫観念的な性的要請に対するポジティブな処方箋は提示しておらず、絶望することしか救いがないことを見せつけてラストを迎えている(と、思う)ので、甘えを許さないお話だと思う。フランス文学の素養は皆無に等しいので、そういう意味での文脈判断はできないまま読んだが、自分としてはもっと誤魔化して生きられるんじゃないかと感じた。とはいえ、もはや誤魔化して救われる世界じゃないんだよというメッセージと受け止めると、それなりの重さを持ってくる。何にせよ「ある島の可能性」は読んでみようと思わされた。 >> 続きを読む
2012/04/05 by Pettonton
出版年月 - 2004年11月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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