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川端康成
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数十年ぶりに読み返してみた。「いま長いトンネル抜けたよ。まっ白です。早く駒ちゃんに会いたいな」。もしスマホがある時代だったら、島村と駒子はLINEでやりとりをしていたかもしれない、なんて思いながら読んだ。東京在住、妻子ある金持ちおっさん(島村)が、北国で出会った若い芸者(駒子)が暮らす村を年一ペースで訪れ、逢瀬を繰り返す。ストーリーだけ追うと、若い娘とおっさんの切なく淡い不倫劇だが、情景や心象を映し出すおっさんの視点が高感度カメラでとらえた映像のように素晴らしく、雪の音まで聞こえてきそうな文章が映画以上に幻影的で叙情に満ちた映像美。この年齢になって読んだからか、全編に「縮まらない距離感」の美意識を感じた。男と女の距離感、都会と地方の距離感も今とまったく異なる時代。恋も旅も時間の流れが遅かったからこそ、雪国につながるトンネルはとても長く、その先にある風土、文化、歴史、愛人までも豊かな旅情を帯びる異文化世界としておっさんの目鮮明に写ったのではないだろうか。もしおっさんがスマホをいじりながら新幹線に乗って、駒子のもとへ通っていたなら、葉子の存在や鏡台に映り込むぼた雪など雪国の美しい移ろいにもにも気づかなかったかもしれないし、不朽の名作は生まれなかったかもしれない。本を閉じたあともクライマックスシーンの天の川の残像が不思議な余韻を残す。人と街の距離感が縮まったはずなのに、見えなくなってしまった日本の美質を映し出す鏡の残像のように美しい小説。流石、ワールドワイド文豪だぜ! >> 続きを読む
2019/01/19 by まきたろう
森見登美彦
たかだか半世紀前に米国から輸入されたクリスマス行事に右往左往する日本的カップル浮かれ聖夜現象が今年もやってくる。彼氏、彼女がいないことが年末の焦りに違和感と憤りを抱く熱き異性との関係無縁な男衆漂う心象語り口がサイコー! 妄想大学生たちの清き反乱「えいじゃないか」の珍テロ騒動に大笑いしたぜ!世の男子が通過する失恋の逆恨み感が半端ないエネルギーを帯びてゆく妄想感を描出する語り口が素晴らしい小説。そんなだらしない男衆の悲喜こもごもの青春臭さをぶっ飛ばす絶対的存在感を放つ岡本太郎の太陽の塔にシビれまくるヒロイン水尾さんに、女子の直感力が炸裂!浮世の流れにふらつく、世の男たちを超越して大地にドーンと居座る太陽の塔の違和感こそ異性が持つ理屈を超えた魅力なのかも。 >> 続きを読む
2019/11/30 by まきたろう
米澤穂信
小市民シリーズ第2弾で季節は夏。1作目でも結構2人の小市民になりきれない部分はあったが、今作は短編ではなく連作として最後に大きな衝撃が。まずは小佐内さんのスイーツセレクションがどれもこれも美味しそうと、気を取られているとすでに仕掛けに入っている。どう見ても単純な描写が実は意味を持っており、終章の推理で次々と明らかになる。そもそもが小佐内さんの本性は知られているし、小鳩くんの推理好きは分かっている。だから必然的に小鳩くんの推理も納得させてしまう。ラストはそこまでやるかという部分にまで言及しているが、これでよく秋編に続いたと思わせる締め方。物語としては完全に終わっているので、早く秋編が読みたくなってくる。 >> 続きを読む
2020/01/26 by オーウェン
村上春樹 , J・D・サリンジャー
ホールデンの持つ思春期特有の純粋すぎる価値観が、自分の黒歴史を見ているようで、ときどき手で顔を覆いたくなった。しかし、恥ずかしさを抱いてしまうということは、あの頃に忌み嫌っていた「大人」になってしまったということであり、読了後には「もう戻ることが出来ない時代」に対する様々な感情が沸き起こった。村上春樹の独特な言い回しに賛否両論あるけれど、むしろ春樹節全開の胡散臭い表現だからこそ、ホールデンの不安定な精神がよく表せているのではないかと思う。 >> 続きを読む
2019/09/21 by ちまき
野口嘉則
人生において何か非常に困った問題を抱えている方には その解決の一助になるかもしれない本です。 他人の考え方や行動を変えることはできません。 自分に変えることができるのは自分の考え方や行動だけです。 「だからなんだ」「そんなの分かっている」 とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうが、 本書が端的に教えてくれることは 現実に起こっていることはすべて自分の言動の結果である ということです。 ですから「非常に困っている問題」もおおもとを正すと、 自分ではまったく関係がないと考えていた なにかと深くつながっていることが往々にしてあるのです。 本書は特に、何かとても許せないことやものがある方、 誰かに対して根強い怒りをもっている方にオススメな本です。 思いあたる方は是非 読んでみてください。 宗教色はありませんので、その手の本が嫌いな方でも大丈夫です。 >> 続きを読む
2017/10/29 by kengo
宮部みゆき
アニメ未視聴。前々から気にはなっていた作品。実際読んでみたが、宮部さんらしいといえばらしい作品。(本題に入るまでの導入部分の描写にも文章を割いて記述している点で)ただ、今回の作品ではこれは必要なのかなと読んでいて疑問を感じた。冒険をする動機が離婚した両親を元に戻すという理由でも、そこまでに至る過程の描写は果たして必要なのかなと読んでいて思った。冒険に入ってからは、ファンタジーらしくなってきたなと思う。一応「ファンタジー」小説なので、これからのワタルがどうなるか読んでいきたいと思う。 >> 続きを読む
2017/12/07 by おにけん
乙一
この赤の中には残酷さもある、グロさもある、弱さもある。けれど人のやさしさと、どうしようもない残酷な赤の中でも希望を諦めない人のたしかな強さも詰まった、そんな赤。ひっさびさにおもうところあってSOふぁーが読みたくなり、ついに買いました。初めて読んだ時は中学生で、なんとなく血生臭かったという印象があったためあまり読み返していませんでした。なのでクリスマスイブに読むものとしてはどうなんだ(苦笑)とは思いましたが、結果は前述のとおり、読んでよかった。読みたかったSofarは、両親の喧嘩から出た嘘によって少年は母のいない世界の父と生きる僕、と父のいない世界に生きる僕に分離してしまう。最終的にどちらかを選ぶことによって彼は相手が見えなくなってしまう。そんな話。個人的な事情で、仲良かった人と疎遠になり、このままお互い会わなかったらそのうちすれ違っても気づかない、お互いがほんとに見えない存在になるのかなと思った時にこの話を思い出して手に取りました。読んでよかったです。二つの世界を繋ぎ留めたかった。少年のやさしさに触れます。初見と印象が異なりすごく感動したのはSEVENSROOM、初見は怖かったのですが、今回は怖さよりどんな残酷な世界でも希望をすてない強さとやさしさの話に感じました。それは私の大好きなカザリとヨーコとも通じるもの。最後まで何かを信じること、誰かを想う事、そしてどうしようもない現実にどんな手を使ってでも歯向かって生き延びて幸せを探す事、どちらもそんなことを感じます。表題作のOO は人の弱さを正面から描いた話なんだと感じました。時が経つと受ける印象が変わります。最後に陽だまりの詩。よかったなー。つらいけど、少し未来のSF 世界の優しく悲しい終わりの話。人とは心とはなんだろう、と誰かにそばにいてほしいという根本的な思いについて改めて考えます。少し悲しいクリスマスイブに思いがけずそっと寄り添ってくれた作品でした。 >> 続きを読む
2018/12/31 by kaoru-yuzu
2018/1 14冊目(通算14冊目)。冒険の旅の完結編。ワタルの願い事は「やっぱりね」という感じ。これだけ仲間ができて、自分の個人的な理由を押し通すことはできないなと考えていたからそれは予想通りの結果で良かったと思う。中・下巻が冒険ものとしてぐいぐい読ませる文章だったのでやっぱり上巻の第一部の現実パートは必要なのかなと思ったり。この作者の方の作品は「ソロモンの偽証」といい、本題に入る前の前フリが長いような気がします。それも良さと言えばそれまでですけど。機会があればアニメ版も鑑賞したいと思います。 >> 続きを読む
2018/01/24 by おにけん
石持浅海
那覇空港で起きたハイジャック。それは離陸する前であり、3人のハイジャック犯の要求は師匠の釈放。だが機内のトイレで死体が発見される。座間味くんシリーズの第1弾。当初関係のなかった単なる乗客のはずだったが、いつの間にか事件を解決する探偵のような役割に。機内の事件なので当然犯人も機内にいる。そこでどのようなトリックを施したのかが頭を使わせる。犯人に関しては関係者が少ないせいか予測はすぐにつく。ただしハイジャック犯たちの目的には急に現実離れした印象しか感じないけど。 >> 続きを読む
2019/01/13 by オーウェン
伊坂幸太郎
再読。前半は4人それぞれの短編。リンクするのが醍醐味でもあるけど、なんて狭い世の中だと思わなくもない。今回は久遠の活躍がよかった。成瀬はできすぎ。 >> 続きを読む
2016/10/30 by tomolib
Le GuinUrsula K , 清水真砂子
荒涼感がたまらない。師匠の野山を探索する日々とか。海をづっと進むのに酔いそうになるけど。。 >> 続きを読む
2017/03/16 by Matching
土屋政雄 , カズオ・イシグロ
カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」の語り手は、優秀な介護人キャシー・H。彼女は提供者と呼ばれる人々の世話をしています。キャシーが育ったのは、ヘールシャムという全寮制の施設。介護人として働きながら、キャシーはヘールシャムのことを思い出します。図画工作といった創造性の高い授業に力を入れたカリキュラム。毎週の健康診断。保護官と呼ばれる教師たちが、時に見せる奇妙な言動。生徒たちの優秀な作品を展示館に集めている、マダムと呼ばれる女性。恩田陸の学園ものの雰囲気に似たミステリアスな寄宿生活を送る中、キャシーは知ったかぶりのルースや、癇癪持ちのトミーと友情を深めていくのだが-------。ヘールシャムは、どんな目的で運営されているのか?提供者と介護人の関係は?そうした、早々に我々読者に明かされてしまう幾つかの謎なんか、実はどうでもいいのです。大切なのは、例えばこんなエピソードです。子供時代、一本のカセットテープに収録された「わたしを離さないで」という曲が気に入って、繰り返し聴いていたキャシー。ある日、何者かによって盗まれてしまったそのカセットテープと、キャシーは後年、トミーと共に再会することになるのです。この物語の感情的なキーポイントとなる、特別な場所で。この曲の歌詞は、物語の終盤でトミーのこんな言葉と呼応し合うんですね。「おれはな、よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついてる。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される。おれたちって、それと同じだろ?」この作品は、為す術もなく人生を奪われる"人間の存在理由"を描いて、厳しい物語だ。流れの速い川の中で、互いに「わたしを離さないで」としがみつくような愛を育んでも、否応なく引き裂かれるしかない運命を描いて、切ない恋愛小説だ。そして、子供時代をノスタルジックに描いて、その夢心地の筆致ゆえに残酷なビルドゥングスロマンになっているのだと思う「なぜ、彼らは理不尽な運命に逆らわないのか」という疑問を抱く人もいるかもしれません。けれど、この小説の舞台は、現実とは異なる歴史を持つ、もうひとつのあり得たかもしれない世界なんですね。今此処にある当たり前が、当たり前として通用しない世界に、今此処の常識を当てはめるのはフェアな態度ではないと思う。ラストシーンがもたらす深い悲しみと苦い読後感-----、いつまでも余韻を引きずりながら、心に残ります。 >> 続きを読む
2019/02/10 by dreamer
岡田淳
この本が児童書の推薦図書として紹介されていて、読んでみました。1番になれたら確かにうれしいと思ってきたけれど、そもそも、それってなんの意味があるのか、と、考えてしまいました。主人公の始(はじめ)は、父親が仕事を必死に頑張り抜いた末に倒れて亡くし、母親に「あなたには父親のように頑張っては欲しくない」と言われ、転校先の慣れない環境でやる気をなくします。そんな時、教室でびりっかすという、小さな羽の生えたおじさんに会うのです。どうやらびりっかすは、最低点を取った人に見え、話ができるようになるということが分かった始は、またびりっかすさんに会いたいがために最低点を取ろうとします。どんな展開になっていくのか、ビリを肯定していいのか?果たしてビリに明るい未来はあるのか?と不思議に思いながらも、ぐいぐいと物語に引き込まれていきました。1番とか、ビリとか、競争(確かに時には競争も必要かも知れないけれど)に意味はあるのか、本当に大切なことは、一人一人が持っている力を出し、本気で出し切ることなのではないかと感じ取れました。 >> 続きを読む
2019/03/29 by taiaka45
2018/1 2冊目(通算2冊目)。現実世界から幻界へと話の舞台は移り、いよいよ冒険譚らしくなってきた中巻。ワタルが酷い目に遭ったり、宝玉を見つけるために活躍したりと話はまるでRPGをプレイしているかのよう。ゲームが好きな人は面白いかも。幻界はファンタジーな世界観ながらどこか現実的な思想を元に舞台が作られているような感じがする。ワタル自身の希望を叶えるために幻界の人々を犠牲にしなければいけない展開に最後はどうなるんだろうとハラハラしながら読んでいる。下巻も読んでいきたいと思う。 >> 続きを読む
2018/01/05 by おにけん
森絵都
少年たちの飛び込みに対する思いや葛藤が爽快に書かれていて、読むのが楽しかった。読んでいて私も少年時代に戻りたくなってしまった。 >> 続きを読む
2016/02/11 by kanetaku
乙一さんの作品の中では珍しく、少し笑えるような作品が収録されていました。得に面白かった話は飛行機の話で、電車の中でニヤニヤしながら読んでいました。登場人物が魅力的で私はセールスマンが好きです笑ハッピーエンドというわけでもありませんが乙一さんの話では珍しく心が落ち着く(この表現であっているのかはわかりませんが)ような話でしたクローゼットの話も展開が面白く、伏線も回収されていて良かったです。 >> 続きを読む
2015/08/18 by iatt
浅野いにお
いい漫画でした。絵で言葉で表されるユーモアに「ふふっ」と笑ったり、種田さんのお父さんの芽衣子さんを想う、やさしさに涙したり。。みんな、しあわせになぁれ。今回はレンタルで借りたけれど、買おうかな。って思っています。 >> 続きを読む
2017/04/28 by pippi
今邑彩
息子と本屋に行ったら、ちょっと財布を出しているすきに、本作品をがじがじかぶりついていました…-.-;そんな経緯で購入した本作。事前情報0の状態で読みましたが、面白かったです!わかり易い展開と軽快なテンポにぐいぐい引き込まれて一気に読み終えました。私は気負わず読めたのでとても面白かったですが、ミステリとしては薄味かも。人によっては物足りなさを感じるかもしれません。が、私はまんまと引っ掛かりました。笑自分の推理が間違っていると気がついた時のドキドキ感ったら!今思えばわかりやすくキーワードが散らばっていたのになぁ。。モノローグ4に関しては、前置きの段階で想像をふくらましてしまったせいか、それほどの衝撃はありませんでした。読み終えた今、タイトルと表紙が意味深いです。 >> 続きを読む
2014/01/16 by ∵どた∵
松浦理英子
Wikipediaの純文学で例示されていた作品。ある日、右足の親指がペニスになった若い女性のお話で、盲目の男の子と付き合ったりとなかなか面白い。いまは生殖器に関わるフリークスたちの集団に加わって見世物ショーのツアーに出てるんだけと、下巻の展開に期待だなあ。 >> 続きを読む
2020/05/25 by 和田久生
久坂部 羊
久坂部羊さん作品を連続して読んでます。どれも濃くてボリュームありますが、それを読ませる上手さがあります。本作品の焦点の一つは刑法第39条。心神喪失者の行為は罰しない。何となくしか知らなかったこの法律。関わる人にとっては最大の防御となったり、壁となったり、悪用の対象となったりする法律。久坂部さんならではの少しエグいくらいの描写でこの法にまつわる問題が浮き彫りにされています。また、久坂部さんの作品で共通して主張されているのは、医師、医療は万能ではないということ。お医者さんに縋る患者の心をリアルに表現してます。なんというか、身につまされる思いになることもしばしばです。面白かったのですが、軸になっている殺人事件に関する展開が今ひとつピンとこない感がありました。真相が解明されても納得しきれない、というか。その点だけ少し残念です。 >> 続きを読む
2015/04/18 by pechaca
出版年月 - 2006年4月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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