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道尾秀介
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まったく事前情報なしで読み始めたこの作品、こんな小説があっていいのかと衝撃を受けた。途中嫌悪感さえ感じながらも最後どう収めるのかが気になり読了。終わって今でももやもやしている。ラストの展開は破壊的ではあるが、これはこれである意味完成度が高いのなとも思う。(作品の評価が思いのほか高いことを鑑みると)でも、氏の他の作品を読もうという気にはまだなっていない。 >> 続きを読む
2019/05/11 by Sprinter
重松清
久々に気持ちよく泣けた。 読後にこんなに清々しい気持ちになれるとは…。 テーマはタイトル通り『友だち』 『友だちとはなにか』…これがこの小説の宿題である。 小学校から中学校にかけて、 誰しも、学校だけが自分の世界だった。 友だちの放つ何気ない言葉一つで 性格を変えなければならない場面がたくさんあった。 それほどまでに思春期というのは不安定な時期なのだ。 この物語の主人公である恵美が言った本音。 「わたしは『みんな』って嫌いだから。 『みんな』が『みんな』でいるうちは、 友だちじゃない、絶対に。」 『みんな』に好かれようとして 『みんな』に嫌われてしまった子に向けた言葉だ。 どう在るのが正しいのかが大人になっても分からなくなる。 1人になりたくないが故にモラルに反する事もしてしまう。 でも、それも人格形成の一部なのだ。 『後悔』と『思い出』が今の自分を作っている。 子供達の目を通して、思い出させてもらった気がする。 >> 続きを読む
2019/01/28 by NOSE
J・K・ローリング , 松岡佑子
フィナーレ! ほぼ一気読みの勢いで読了した。充実さよ!!! さすが最後の2冊だけあって、どんより感ハンパなかった(笑)。 ハリーが絶対勝つという結末は知っていたので、エンディングについてはあまりハラハラはしなかったものの、ところどころの仕掛けや、今までのストーリーのヒントがどんどん繋がっていくのは面白かった。 個人的には、ハリーポッターはやっぱり1~3巻目あたりが面白いかな! まだファンタジー要素があって、軽い気持ちで楽しめる。 4冊目から一気にこじれていったので、読みながら心も重かった。 子供の頃読んでて分からなかった部分が今になって理解出来るのは楽しかった。 数年後に再読したらまた新しい発見があるかも? >> 続きを読む
2020/10/10 by Moffy
サマセット・モーム , 土屋政雄
ゴーギャンをモチーフにした小説。ある若手作家の視点で、他人とは異なった価値観を持つ天才画家、その家族との交流を通して、天才画家の中にあった思想、実現したかったことを探す。成人しかかった子供を含めた家族を捨て、支援者の妻を寝取った挙げ句に自殺を止めず、自らの芸術を完成させる理想郷としてタヒチに移り、現地の女性アタを都合の良い存在として扱う。人権など、彼の芸術の前では存在してないかのよう。癩病を患い、視力を失いながら人生のカウントダウンが進む中、人としての生活はほぼ破綻していながらも、アタの献身によって彼の芸術は完成する。それは「医師は絵のことを何も知らない。だが、ここの絵はそんな医師にも強烈に作用してきた。…(中略)…なんとこれは天才の業か…」と表現される。モームはこの部分をどう表現しようか相当に悩んだだろうが、言いたいことは日本人である私にも朧気ながら伝わった。そして、芸術も芸術家もわからないというのが、読後の感想だった。 >> 続きを読む
2019/08/04 by 兼好坊主
石井聖岳 , 楠茂宣
小学校1年生の男の子。家でも学校でも怒られてばかり。その子が七夕の短冊に書いた願いごと「おこだでませんように」(怒られませんように)私にも小学校1年生の男の子がいるのですが最近、夫が息子によく怒っていて、息子がこの表紙と同じような表情をしていることが多くあるため、夫に読ませる意味で、この絵本を買いました。大人から見ると、ただ悪いことをしているように見えても子供には子供の気持ちがあります。一方的に決めつけるのではなく、相手の気持ちも大切にしてあげること、その積み重ねが思いやりにつながっていくのかな、と感じました。とても心に響く絵本です。 >> 続きを読む
2017/07/20 by アスラン
金城一紀
内容紹介-------------------------------------------------------本当に愛する人ができたら、絶対にその人の手を離してはいけない。なぜなら、離したとたんに誰よりも遠くへと行ってしまうから――。最初で最後の運命の恋、片思いの残酷な結末、薄れてゆく愛しい人の記憶。愛する者を失い、孤独に沈む者たちが語る切なくも希望に満ちたストーリーたち。真摯な対話を通して見出されてゆく真実の言葉の数々を描いた傑作中編集。---------------------------------------------------------------中編集とあるが、短編といってもいいくらいの長さの物語が3つ。共通するのは、タイトルの通り、恋人との別離の話を主人公と登場人物の対話形式で紐解いていくこと。恋人との話に文章の多くを割いているが、主人公側にも登場人物側にももちろん物語はあり、どちらかの存在感が薄くなりすぎないという不思議な構成。「恋愛小説」☆☆☆☆☆大学生活最後の試験を終えた主人公は、同じ試験を受けた男から、ある不思議な話を聞かされる。その男は、親しくなった人間が必ず死ぬという。「本当に大切な事柄は、言葉にしてはいけないのだ。」という本文中の言葉を体現している。確かに語りすぎることで陳腐になり下がる例はたくさんあるけれども、「抽象さ」でこれだけロマンチックに仕立てることができるのか。恋人がささやく(恐らく)愛の言葉が書かれていないのに、ドキドキしてしまう。冒頭の主人公の初デートの女の子の話が好きだ。途中で「なんだ話が変わるのか」と落胆しかけたが、その後も物語の質は高いまま維持される。甘めのストーリーなので好みは分かれるかもしれないが、私は大好きだ。「会い続けた」物語だから、最高のバッドエンドだと思う。その結末は主人公に作用して、過去を後悔し、前を向く力になっている。「永遠の円環」☆☆Kの考えていることも、主人公の考えていることも、彩子の考えていることも、よくわからなかった。彩子は自由にふるまっていたくせに、あんな重い事情を受け止めろと言われても、僕には無理だ。Kはどうして元の世界に戻ったのだろう?ノコギリの目立て屋とは話が違うと思う。主人公が殺害を思い立ったのは理解できたが、それが果たされて生きる力になるというのは共感し難い。永遠の環とはいったい何なのだろう?「花」☆☆☆別れた妻との記憶を思い出すために、東京から鹿児島までの思い出の道をたどっていく。本作に限っては、鳥越氏に比べて主人公の存在感が薄かった。がむしゃらに生きようとしていた時はうまくいかず、(本人的には)逃避した先でうまくいってしまうというのは皮肉な話だなぁと思う。加えて、鳥越氏が妻のことを忘れてしまったのは悲しいことだ。しかし、別れていた期間でも二人とも目指すところは「鳥越家の伝説」にあった。鳥越氏は意図していなかったようだが、きっと心の奥底の正義感が二人に共通してあったのだと思う。「手を繋いでおくべきだった」物語。二人にやり直す機会があったらと願わずにいられない。 >> 続きを読む
2017/06/02 by しでのん
橋本紡
死んでしまった加地くんの元カノ奈緒子と友人巧くんが付き合いながら、加地くんをしのび思い出とともにいきていくことを決意していくというような、まったりしたお話。もうちょっとしっとり読めるとよいのだが、まあまあよかった。 >> 続きを読む
2019/12/10 by 和田久生
渡辺航
2020年29冊目@dブック。自分もたまに自転車で遠くの色々な所にフラフラ行ったりするが、往復90kmの距離をママチャリで行くのはちょっと…。この主人公、体育会系でないのに凄い素質だなと思う。次。 >> 続きを読む
2020/02/03 by おにけん
近藤史恵
近藤史恵の「ヴァン・ショーをあなたに」は、「タルト・タタンの夢」に続く、三舟シェフのシリーズ2作目の作品。相変わらずお料理は美味しそうですし、<パ・マル>の雰囲気もアットホームで、とても素敵です。今回は<パ・マル>を開店する前、フランスにいた頃の三舟シェフの物語も二つあり、そのうち表題作の「ヴァン・ショーをあなたに」では、前作「タルト・タタンの夢」で登場したヴァン・ショーを作るきっかけとなった出来事が語られています。全体的に謎解きとしては、少し小粒に感じられましたが、その分三舟シェフの素顔を見せてくれているようで、物足りなさは、それほど感じませんでしたね。前作のように、毎回謎解きの後にヴァン・ショーが登場するというわけではなかったのは、「ヴァン・ショーをあなたに」を際立たせるためだったのでしょうか。そして、前作のように高築視点だけの物語ではないのですが、それもまるで違和感を感じさせずにすんなりと読ませてくれていいですね。今回特に気に入ったのは、「ブーランジュリーのメロンパン」と「ヴァン・ショーをあなたに」の2編。どちらも家族の絆の大切さを感じさせるような作品でした。 >> 続きを読む
2021/04/19 by dreamer
有川浩
(登録前に読んだ本)みんなハッピーエンドの話なので安心して読めた。個人的には「めでたしめでたし」になる終わり方の話が好きなので。 >> 続きを読む
2016/09/27 by おにけん
山本文緒
脳梗塞入院本、7冊目。これは面白い作品だ、傑作だ。…と、思ったら、以前に読んでここへもレビューを載せていました。人生がきらきらしないように、明日に期待しないように、生きている彼らに、いつか。 自分の不行跡を恥じ、未知なる明日を受けいれる資格が果たしてあるのかを、悩む。急かされるように流されてきた場所で、途方にくれる。そうして、問題は資格があるのかないのかではなく、否が応でも向き会わねばならない明日の、その対し方であるということに気づく。生きていて、大病をして、このタイミングで、こんな本が手元に来る。午後9時が消灯の老人ばかりのリハビリ病院の病室。麻痺が残る右手でゆっくりとしたスピードで、懸命になって読んでいた。読んでいれば、とりあえず大丈夫だと思うことができていた。これは人様にオススメできる本です。 >> 続きを読む
2016/11/23 by 課長代理
吉田修一
吉田修一の「さよなら渓谷」は、新聞の三面記事の、あるエピソードをコラージュしたような構成になっている。まずは、秋田の幼児殺しを連想させる導入部。死んだ幼児の母親を見張るマスコミ。ところが、物語は幼児殺しではなく、容疑者の隣家へと移っていく。少年野球のコーチをしている男と、その美しい妻。何の問題もないように見える夫婦だが、新聞記者が彼らの過去を暴いていく。暴かれるのは、もうひとつの事件だ。何年も前に起きた、集団レイプ事件---これも三面記事的なモチーフだ。事件は、被害者女性の人生を、滅茶苦茶にしてしまうが、加害者の人生も狂っていく。謎が提示されて、それを解き明かしていくという流れ。探偵役を新聞記者にして、それも中年男と若い女という組み合わせにしたことなど、エンターテインメントの手法を存分に取り入れている。 >> 続きを読む
2020/02/02 by dreamer
楊逸
中国人として初めて芥川賞を受賞した楊逸の「時が滲む朝」を読み終えました。物語の始まりは、1988年の中国西北部。下放された元北京大学生の父と、貧農の娘である心優しい母のもとに育った梁浩遠は、厳しい競争をくぐり抜け、親友の謝志強とともに名門の秦漢大学の入学切符を勝ち取る。中央から流れてくる自由の香りに触れ、自然に学生運動に加わる二人。だが、運動は天安門で悲惨な結末を迎え、その手前で日常生活に戻された浩遠たちは、虚しさを埋めようと出かけた酒場で暴力事件を起こし、大学を退学になってしまう。後半は、中国残留孤児の娘と結婚した浩遠の日本での生活が描かれていく。中国から日本、国家のエリート候補生から外国人労働者、子供から父親へと、激しい変化を体験した浩遠だが、その瞳に映る世界は以前と変わらず美しい。20世紀末の政治経済の巨大なうねりと対比されながら、ユーモラスに語られる生活のささやかな場面。そこに見える浩遠の内面は「天安門」などの特殊な背景にかかわらず、恐らく浩遠と同世代の日本人のそれとほぼ同じだろう。だが、我々読者が本の中にみる、その生き生きとした心を、浩遠は実は中国語で語っているんですね。これに対し、彼の日本語はいかにも外国人の片言なのだ。現実には彼の内面は、日本人には見えにくいものであるに違いない。政治の波によっては消えなかった心が、母語を離れることで周囲の目に映らなくなり、やがて失われていく。片言の外国語の中で、母語に育まれた自分の感性、青春、一家の歴史が、徐々に消えていく。浩遠を通して見える、そんな予感に私は震えを覚えてしまいます。母語の外で自分であり続けることの意味と困難。国際化の進む現代において、この問題の傍観者ではなく、当事者となることを我々読者に要求する一冊だと思う。 >> 続きを読む
2018/09/07 by dreamer
田中芳樹
帝国の双璧が戦いあう9巻。ヤン亡き不正規隊のいるイゼルローン以外の宇宙を手に入れ、表立った敵のいなくなったラインハルト。しかし、自身が黙認してしまった貴族の核攻撃を恨んだ男に命を狙われてしまう。さいわい大事になることはなかったが、キルヒアイスの自らを貶めるのはお止め下さいという言葉を思い出し、動揺を隠しきれない。今まで隙らしい隙の無かったラインハルトだったが、支配者の孤独というのだろうか、精神的に追い詰められているようにも思える。さらに追い打ちをかけるように帝国の双璧の一人であり、旧同盟を管理しているロイエンタールが謀反を起こす。最終的にロイエンタールはラインハルトに反旗を翻しもう一人の双璧であり、旧友ミッターマイヤーと戦うこととなる。正反対の性格ながら頻繁に酒を交わすほどの仲だった二人の戦いは、ヤンとラインハルトとは異なる緊張感がある。歴戦の勇士でありながら繊細なロイエンタールの最期は言葉にできない。次巻で銀河英雄伝説は終わるが、銀河の歴史は最後に何を刻むのか。 >> 続きを読む
2015/05/01 by 冷しカレー
MadsenDavid , 池田真紀子
最高の料理を提供するシェフの話。その料理を口にした者は性的な興奮を覚え、身近にいる者との快楽に酔い耽ってしまう。しかも性別関係なく。そこまで客を興奮させてしまう料理の食材は、本のタイトルから推察できる通り。このくだりは映画「パフューム ある人殺しの物語」を連想してしまった。最高の料理を提供するためには、まず食材を入手する必要がある。その入手方法は非人道的なものであるため、最後には警察が嗅ぎ付けることとなる。一連の殺人に関する手法や経緯については、シェフ(オーランド・クリスプ)本人の手記や警察、医師の供述書という方法で語られる。それらを読むことでわかることは、彼が単なる異常快楽殺人者ではなく、あくまでもプロの料理人であるということ。SMプレイの最中に相手(食材)を殺した後、その食材を使った料理に「気難しい雄牛 苦痛の快楽風」と名付けるあたりがユーモラスでもある。これら一連の殺人のきっかけは、父親への憎悪と母親への絶対的な愛情。単純なエディプスコンプレックスであれば父親だけを殺せば済むことだが、オーランドには一流の料理の腕前と性的な魅力を持ち合わせていた。つまり彼の魅力に惹かれて食材が集まってくるのである。多くの食材を殺しておきながら、ある理由でオーランドは無罪となり、再びシェフに返り咲く。世界最高の料理を食べたい気持ちもあり、その食材を知るのが恐ろしい気持ちもあり。。。 >> 続きを読む
2021/06/27 by 匿名
山崎ナオコーラ
大学4年生の小笠原は、マンドリンサークルに入っている。未来になんて興味がなく、就職活動よりも、人間関係よりも、趣味のマンドリンに命をかけている。そして、とても好きな人がいる。あいたたた・・・。何かこう、心の色んなところがほんの少し、痛いというかむずがゆいというのか。単なる、“モラトリアム大学生の現実を直視しようとしない弱さの物語”と単純に、まとめてしまえそうな話なんですがそれでは、まとまらない。そこからはみ出る様な何かこぼれ落ちるような何かがあります。正直、オッサンになってしまった今の自分からすると「甘えたこと、言ってんじゃねーよ」とか「そんなこと大して重要なことじゃねーよ」とかも思うのですが・・・。著者の書く、すごく個人的な感覚が無視できないというのか。まぁ、本当にヒロインの小笠原の不器用さというのか、気負いというのか気丈なようで弱かったり全体的に無様な感じがたまりません。(注 ほとんど話の核心に触れます)“ときどきスーツを着ては地下鉄に乗り、セミナーだの面接だのに出かけていたが、自分が社会人になるイメージがまったく湧かない。小笠原の頭の中にはマンドリンの音しかない。「私以外はみんな、演奏にやる気がないんだよ」「本当にそう思っているの?」「ああ、高潔な音を出したいな」「ふうん」「ひとつひとつの音符を、気高い音で弾きたいな」みんなはそれを望んでおらず、音楽を極めることよりも、仲良く「友だち作り」をしたあと「思い出作り」をするのが目標なのだ。みんなという言葉は、小笠原にとってはいつも、自分を取り囲む厚い壁のように感じられた。みんなが「他人のいいところを見つけないと」「自分に自信があるだけじゃ、社会じゃやっていけないんだよ」「そんなんじゃ会社に入ったら、みんなと上手くやれないよ」等々と、まるで大学時代が社会に出るための訓練期間であるかのように注意してくるので、小笠原はだんだんと、田中以外の人には、マンドリンについての自分の考えをあまり話さないようになっていた。小笠原は将来のために音楽をやっているのではないのだ。たとえ趣味でも、芸術の問題なんだから、真剣にやろうよ、そう言いたい。でも田中以外には、上手く伝えられない。”そんな中で唯一と言ってもいいくらい特別な人間である田中に“「みんなと上手くつき合えたり、人に対する優しさを知っていたり、それぞれに気を配ることができたり、場を盛り上げたりすることができる人よりも・・・・・・田中が好きなんだ」”と告白をした田中との恋愛も(この告白の文章も結構、好きですね。リアルというか等身大というか、上手く言えませんがセリフに血が通っている気がします)“「私に対しては、初めから全部勘違いしてたの?」「そう」「恋愛感情は全然なかったの?」「うん」”というあんまりな結末を迎えます。その後で田中から(心ない)メールをもらった時の小笠原の反応もリアルというか。変なところが大人だったり、妙に印象的です。“(略)ぐしゃりと音がして体が潰れ、目から体液がほとばしり出たような気がした。だが電車内だったので、実際はクールな顔を保っていた。人前で泣けるほどの年ではなく、小笠原はもう二十三なのだ。それにしても、終わりを認識する感度を、人間はどのように身につけてきたのか。日本文学の授業で「小説や音楽のような、時間性のある芸術は、必ず終わりの予感があるのもである」と習ったが、小笠原には終わりの感覚が分からない。終わってない、全然終わってない。将来に繋がる就職活動よりも、先のないサークル活動に力を注ぐことがばからしいこととは小笠原には決して思えない。恋人ではない男の子と音楽を作ることが、ストイックで、刹那的で、高潔な活動で、今しかできない大事な事なのだと、と思う。小笠原は、週二回の練習で指揮者と意識を交し合うのが楽しくて生きているだけだった。残りの単位の取得や、卒論の準備や、将来の夢想は、マンドリン演奏に比べれば、余技でしかなかった。”その辺の本当にジタバタしている感じが何とも痛々しいというのかここまでなくても、サークル等、集団の中での熱意の濃淡というのかわかったような顔で諌められたり諌めたりしたことを思い出します。そんな中で、鮮やかなのはもはや、友達ですらない田中との別れのシーンや“足音というものは、いつまでも聞こえるものではない。去っていく足音は、最初の方しか、自分にはしない。いつしか聞こえなくなり、去った人の面影は失せる。”ラストでラーメン屋に入るシーン。“小笠原は人生で初めて、ひとりでラーメン屋に入ってみた。コートを脱ぐと、雪はたちまち水に変わり、布に吸い込まれた。好きな人とラーメンを食べたら、おいしいんだろうな。小笠原は好きな人とラーメンを食べたことがない、小笠原を好きな人がいない。小笠原を雇いたいと思っている人もいない。社会から必要とされていないのだ。小笠原は真剣にひとりっきり。今まで生きてきて、誰からも好かれたことがない。”この文章はスゴいと思います。自己憐憫もなく、乾いた筆致で書かれる“孤独”の姿。ある種のデッドエンドともいえるかもしれません。 >> 続きを読む
2014/02/20 by きみやす
舞城王太郎
内容紹介-------------------------------------------------------愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。「恋愛」と「小説」をめぐる恋愛小説。---------------------------------------------------------------あらすじというか、この本に何が書かれているのかといわれても、はっきり答えることができない。「愛ってなんだ?」というあたりなのだが、ぴったりそれということでもなくて。構成とか改行の少なさは、読みづらい。文章自体も、口語なのだが独特のリズムで、慣れないと読みづらい。短編形式でいくつかの物語が書かれているが、共通するのは恋人に先立たれた(あるいは先立たれる)男の独白。語り手は淡々としていて恋人の死を受け入れているようではあるが、諦めたわけではなくて、死と愛についてひたすら考えている。「きっと愛は永遠ではないけど、今はとにかく好き。」という態度は、割り切っているわけでも、とりあえず今だけを見ているなんていう単純なことではないように感じた。永遠に彼女を愛していたいけれど、もしかしたらそれが続かないんじゃないかという恐怖を感じていて、将来もしそうなったときのための予防線を張っているように思える。それでいてきっと、何十年か後もやっぱり彼女のことが好きで、彼が死ぬ間際になって、「結局ずっと好きだったな」って振り返るんだと思う。はっきり言って難しい。「ニオモ」なんかはわかりやすいのだが。衝撃的、感動的な展開がある話ではないのだが、何かやわらかい文章を読んだな、という感想が残る。冒頭の世界中の人への愛とか、知らない人への愛というのは、作品と結びつかないように気がして、よくわからなかった。タイトルは批判されがちだが、僕にはこれ以外ないように思える。 >> 続きを読む
2017/05/27 by しでのん
小山宙哉
おもろい
2014/11/20 by DaNi
湯本香樹実
多分、初湯本香樹実作品。読書ログのレビューを読んで、図書館でリクエスト。酒井駒子さんの表紙が素敵。お隣とギクシャクしてる家族の中で、受験に失敗した小6のお姉ちゃんのトモミと、図鑑好きの弟テツの話。角田光代さんの解説にもあるけど、おばさんの言葉がスゴイ「おばさん、どうしようもないことってあるね」「うん」「だけど、テツ、がんばってよかったんだよね」 おばさんは大きく息を吸いこんだ。それからいつものガラガラ声をいっそう太くして、「どうしようもないかもしれないことのために戦うのが、勇気ってもんでしょ」読んでいて、子供の頃の「自分ではどうしようもなかった感」を思い出して泣けた。 >> 続きを読む
2015/05/30 by kucoma
池井戸潤
シリーズ2作目も痛快だ!半沢の話と出向してる同期の話が語られていく。2つの話が繋がっていくのわかっていてもおもしろい!老舗ホテル再建に役人に常務取締役との対決、同期はいや〜みな社長や部下とやり合いながら自信を取り戻していく。地元の銀行も合併につぐ合併してたとこあるからそこもこんな内部事情あるのかしら?と思ったりw少しばかりちょっと都合いいとこあるけどまぁいいかと思えるくらい面白い。前作のラストはそれで終わってOKだったけど今作は続いていくのね!とわかる終わり方でした。次作も楽しみー >> 続きを読む
2016/03/24 by 降りる人
出版年月 - 2008年6月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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