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奥田英朗
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伊良部先生シリーズの3作目だ。相変わらずのノリに思わずニヤリとしてしまう。ふざけているのか真面目なのか。けれども、結局は無事に治してしまっているから可笑しい。オムニバス形式の話だが、3作目の町長選挙がいい。最後のシーンに思わず力が入る。気楽に読めて面白い。 >> 続きを読む
2019/04/27 by KameiKoji
浅倉久志 , カート・ヴォネガット
おもしろい!楽しい読書の時間を過ごすことができました。私、SFって大抵の作品で二度読み三度読みしてるんですよ。意外なことに、この作品の世界観は始めからすっと入ってきて、読み返しなしでいきました。コミカルでリズム良い会話が心地よくて。ストーリーもおもしろかったです。はちゃめちゃだけど(笑)主人公のマラカイ・コンスタントが、火星でラムファードの元妻との間に子をなし、水星、もう一度地球を訪ね、最後にタイタンでラムファードと会います。コンスタントの一生の物語であり、そして彼の物語を通して、様々な問題提起を投げかけられるように感じました。それは自由意志だったり、生きる目的だったり。 ボアズがハーモニウムを音楽を使って幸せにしたエピソードが忘れられません。違う星の異なる種族に対して傍で寄り添うことができるのに、武器を手に取り殺し合いもする愚かな人間たち。また、トラルファマドール星のある生物についての伝説で、『彼らの目的はいったいなんであるかを見出だそうとする試みで、ほとんどの時間を費やしていた』にドキッとさせられました。人間がどうであるか機械の目を通して淡々と描かれており、それがあまりに的確すぎて、居心地の悪さを感じてしまう。 と、こんなことを考えながら読了したのですが、この作品が総じて何を訴えているのか全くわからず、しばらく途方にくれました。メッセージはたくさんありましたが、結局作者は一番何を言いたかったのか自分の中で纏まらなくて。感想に困りながら訳者あとがきを読むと、だんだんすとんと落ちてきました。それぞれのエピソードで感じたことが、ヴォネガットのメッセージだったのだと。身近なテーマをおもしろいお話にしており、読みながら自然と自分のなかに入ってくる。すんなり受け入れることができすぎて、逆に違和感を覚えたのでした。なんだか不思議な読書体験。うんうん、良い物語でした。課題図書になったとき購入していてよかった。2年以上前の話ですが(^^ゞ >> 続きを読む
2020/01/05 by あすか
桜庭一樹
中学二年生である山田なぎさは、不幸な環境にいる自分が生き抜くために生活に必要なこと(彼女はそれを実弾と呼ぶ)だけに関心を持っていた。そして唐突にやってきた転校生、海野藻屑(うみのもくず)に振り回されるようになる。彼女は芸能人の両親を持ち、美貌もしっかり受け継いでいた。だが、片足を引きずって歩き、常にペットボトルの水を持ち歩き、自分のことを人魚だと言う変人だ。実弾を込めるのに一生懸命のなぎさと対照的に、藻屑は妄想癖のような言動(なぎさの兄は砂糖菓子の弾丸と呼んだ)をポコポコ打っている。この2人が物語のメインとなるが、読者が驚かされるのは1ページ目。新聞記事から始まるが、内容は海野藻屑がバラバラ死体となって発見された事。見た事がある構成で、なんとなく気落ちしたけど、この構成がすごくいい味を出している。奇想天外な言動を繰り返す藻屑に戸惑いつつも、藻屑という人間の危うさ、儚さのようなものに少しずつ心が惹かれていく。でも、どう足掻いても藻屑は殺されることは最初から決定されているのだから、物語が進むに連れて心がザワザワしてくる。最後のところまでこの本が何をテーマにしたいのか分からなかったが、分かった途端に今までの物語が切ないものに感じた。藻屑はなぜ砂糖菓子の弾丸を打ち続けていたのか。嵐が来るまでに友達を見つけないと海の藻屑になってしまう…。なぎさという友達ができたのに、やはり実弾になれなかったのか…。読後はやり切れない切なさがずっしり残った。他の登場人物についても感想を。ある時から引きこもりになり、人格が変わってしまったなぎさの兄。滝嘔吐は面白かったけど、なぎさの安定剤のような彼の人格変化の謎については明かされず謎のまま。クラスメートの花名島。彼と藻屑の最後の応酬はちょっと不気味だった。お互い精神状態ギリギリのラインで頭が麻痺したとしか…。それを見て淡い恋心がキレイに消えたなぎさが冷静で面白かった。担任。物語にいなくても良さそうなのに変なインパクトだけ残していた。まぁ子供の味方になろうとしてくれる大人もいるっていうことなのだろうか。なんか、2日で読み切った短い小説だったけど、色々衝撃を受けたいい小説だったな。短い小説が読みたくて、本屋でタイトル買いをしたけど、久しぶりのヒットだった。評価を4にしたのは理由がちょいちょいあるけど、細かいことなので最後に箇条書きにて。・苦手な文章がちょいちょい。「すこぅし」って何だ。・サイコパスクイズを利用して異常者を浮き立たせる意味があった?・物語的にウサギを殺す必要性があった?・なぜ海の藻屑ではなく、山の中にバラバラ死体? >> 続きを読む
2019/08/31 by 豚の確認
米澤穂信
夏季限定からどうやって展開させるのかと思っていた秋季限定。なんとお互い彼氏彼女を作り、別のパートとして進んでいく。それが次第に放火事件と新聞部という形で繋がっていく。小鳩くんは彼女が出来ても相変わらず推理癖が抜けず、小市民になりきれない日々。一方小佐内さんは後輩の瓜野くんと付き合うが、こちらもあっさりした空気感は変わらず。ラストでは小鳩くんに関するある情報がもたらされ、下巻へと。 >> 続きを読む
2020/01/26 by オーウェン
山崎 豊子
第二次世界大戦を満州で終えた旧日本陸軍参謀壱岐正は、未曽有の戦禍に一般市民を巻き込んだ責任を感じ、自決を思い立つが、上司である谷川大佐に強く止められる。“生きて歴史の証人となれ、それが残ったものの責任である” 11年間、“不毛地帯”シベリアで戦犯として抑留、強制労働を課せられ、幾多の拷問にも己の信念を通して耐え抜き、帰国した。そこに、総合商社近畿商事からスカウト。“商社も戦争も同じ、稼ぐことで国益たる”という社長の信念で入社した。業務を国益と信じ、商社業務に邁進したが、そこは強烈な商社マン、政治家、官僚の意地、嫉妬が渦巻く伏魔殿のような組織であった。敵対する東京商事の鮫島常務の妨害になやまされながら、F-Xの壮絶な獲得競争で勝利したも、かつての戦友の自殺という結末、自動車企業の国際合併事業では副社長の嫉妬からの横やりで失敗、第二次世界大戦の開戦を決意させた石油利権を国益と信じ、ついに不正資金からの贈賄にまで手を染める。最後は自分をスカウトした社長の嫉妬から首をきられようとする。。。上司であった谷川元大佐、かつての恩人の息子で出家した秋津清輝らとの対話で揺り動かされるが、まさに精神的な不毛地帯に、底なし沼のように引き込まれていく。泥にまみれた自分も自覚し、最後は社長とともに、近畿商事を去り、谷川大佐の後を継ぎ、シベリア抑留者の同門会の会長を手弁当で引き受ける。第二次世界大戦後、長い不毛地帯からようやく脱した・・・ シベリア抑留、F-Xの獲得競争、千代田自動車―フォーク自動車合弁事業、石油掘削権獲得と石油が出るまでの描写は、著者の丹念な取材でダイナミックな描写がなされる。そして、闇の深いビジネスの世界で泥をかぶりながら生きる、つまりはシベリアという、“不毛地帯”から、ビジネスという“精神的な不毛地帯”で生きる壱岐と、シベリアという“不毛地帯“から脱し、自らの世界を生きる谷川元大佐、フィリピン戦でたくさんの戦死者を出し、終戦に至ったというこれまた”精神的な不毛地帯“から脱し、出家という道を選んだ秋津清輝の生きざまの違い。“岩もあり 木の根もあれど さらさらと たださらさらと 水の流るる”という歌に込められた思い、それが人間らしくいきる、ということなのだろう。ただ、同じビジネスの世界に飛び込みつつも、“水の流れる間々に生きている”(と思われる)インドネシアの華僑や、他の商社の石油マンたちとの対比がなされれば、より商社の世界の闇の深さが見えたであろう。 >> 続きを読む
2018/03/04 by DDMM11
東野さやか , HartJohn.
殺人の濡れ衣を着せられた5年後アダムは故郷に帰ってきた。その理由は親友のためだが、父との勘当や、継母との軋轢などがのしかかる。そして新たな殺人が。ハートの作品はミステリやサスペンスではあるが、家族に帰結する物語でもある。二転三転する展開も魅力だが、何よりもアダム自身の過去が清廉潔白であるかどうかの真相が隠された状態で進んでいく。ここを踏まえたうえで、ラストの犯人が明かされていく。 >> 続きを読む
2019/07/07 by オーウェン
クラフトエヴィング商會
実際ないのだけれど、ものの名前が付いた日本語って色々ある。鬼に金棒、とか、左うちわ、舌鼓、とか、堪忍袋の緒とか。「ないもの、あります」は、空想的商品カタログっていうか。ひとつひとつの商品に付いたイラストを見るのもまた楽しい。こんなところに目を付けるとは、クラフト・エヴィング商會らしいな。クラフト・エヴィング商會の世界観が好きな人には楽しめる。電車での移動中など、ちょっと読むのにちょうどいい。 >> 続きを読む
2017/07/21 by achiko
松下政経塾 , 松下幸之助
近所に松下政経塾があるのですが、広大な敷地の奥にある塔しか見えません。ここは一体なんなんだ!と思っていたのですが、この本を読んでいるうちに、あの屋敷の中でどんな事が行われているのか少しのぞけたような気がして、楽しかったです。内容としては、松下政経塾の初代塾長である松下幸之助氏が塾生に向かって話している講和の内容。経験に基づく格言ばかりで、リーダーのみならず、人としての基本を教えてくれます。====================================================「何事も基本となるのは、熱意である」基本は熱意や。単なる知識や小手先で考えたらいかん。====================================================まわりにはわりとクールな若手が多いのですが、やっぱりここは大切ななんだ!と勇気を与えてもらいました。 >> 続きを読む
2017/01/20 by アスラン
有川浩
昔、三匹の悪ガキと言われた60を超えたおっさんが今度は様々な困りごとを解決していく話。軽妙なストーリー展開、面白さに加えて気分爽快にさせてくれる。やはり有川浩はいい! >> 続きを読む
2017/04/25 by konil
西加奈子
主人公の百合は、32歳。実家が裕福で、いまだ親のクレジットカードを使って買い物をし、月12万の家賃を親に払ってもらっている、いい歳してちょっと甘ちゃん。その百合が、職場で些細なことでたしなめられたことで、泣き崩れ、その場から動けなくなる。ただの世間知らずのわがままな行動だけではなく、百合の心は、壊れかけていたのだ。彼女はいつも「自分自身」というものを持てなかった。彼女はいつも「誰かから見た私」を意識して、自分の感情が持てなかった。。心は壊れかけているけれど、このままではダメだ。と、最後の力を振り絞って、豪勢な4泊5日の旅に出る。もちろん、親の金を使ってだが…そのホテルで知り合ったバーテンダーと、旅行客マティアスとの交流がきっかけで、彼女は徐々に、今まで押さえつけ、誤魔化し、随分と意地悪してきた自分の心に、耳を傾けるようになる。旅の行きと帰りでは、同じ景色でも、見え方も感じ方も違ったはず。ラストは主人公と一緒になって、清々しい気分になれた。 >> 続きを読む
2016/01/25 by shizuka8
角田光代
エッセイだが、面白かった。原田宗典の女性版といった所か。(原田さんの作品のファンで、違うわ!という人がいたらごめんなさい)。でも、しょうもない事を、よくもここまで膨らませて話を面白くできるものだ。庶民的というか、赤裸々というか、ちょっと人には隠しておきたいハズカシ~って事も面白おかしく書いてあり、夜中に大爆笑。 >> 続きを読む
2017/05/02 by チルカル
津村記久子
どんな状況にある人物であっても、それが文章化されることでその人の生活や人生は、間違いなく価値のあるものに思えてくるなぁと感じられるお話で、私も、地味であっても良いじゃない、の元気をもらえました。生活しているだけで物語として成立する、それはナガセの心の中のつぶやきから感じるものでもあったし、文章のさらっと静かで楽観も悲観もしていない雰囲気から感じられるものでもありました。良かったです。 >> 続きを読む
2014/12/29 by yuko1510
中村文則
読んで楽しい話ではない、中村さんの今までの作品から感じられる、心の底の暗部が露呈したような特殊な日常が、今回では明確な形になって、人物や、境遇に見出される。人なり仕事なりに具体性があり、読みやすく実在を感じることが出来る。すこし今までと印象が変わってはいるが、テーマはやはり、重い感じに閉じ込められてしまうような作品になっている。 施設育ちで、刑務官になった僕。同じ施設育で育った真下が自殺し、そのノートが送られてくる。 家族も兄弟もなく自分の求める小さな幸福の当てもなく、真下の持つ憂鬱や混沌が彼を水に誘う。僕は水に入り流された真下の心情が理解できる。 僕も施設で身を投げようとした過去があった、だが、施設長によって心身ともに救われて成長する。本や音楽をあたえられ人生の深さや広がりを感じるようになっていく。しかし、いまでも僕の心の底には暗い川が流れている。 交代制で収監者を看、罪について語るのを聴きながら、自分をもてあます事もある。 山中と言う一月の差で、少年法が適用されなかった男が入ってくる。二人の男女を意味もなく殺害した罪で、二週間後に処刑されることになっていた。説得してもがんとして控訴をしないと言う。 今まで生きてきて虐待にはなれてはいたが、ついに逃げ出して熱が出て倒れ、夜空の月を見たとき、深い深い孤独を感じた。気がついたとき二人の人を意味なく殺した。彼は死にたかった。殺した後は「死ぬのが俺の役割だ、なるべく早く」と刑務官に言っている。 僕は、「控訴をして心情を話せ」と言う。彼の死刑は変わらないが。今ある命というものについて、お前は使い方を知らない、お前は知るべきだ。控訴してみるべきだ。死刑は変わらなくても。 僕は、何も知らない彼に、昔施設長が貸してくれた 本や音楽や映画のことを話しかった。彼は何も知らないまま死ぬ。 死刑という制度とは別に自分に与えられた命について考えて欲しかった。 遺族と死刑囚の間にある死刑制度について、刑務官も考える。そして囚人も考える。刑務官と言う仕事は、命の重みにじかに接する仕事である。 控訴した山中から手紙が来る、本を読み音楽を聴き、罪について考えをめぐらし始めていることを知る。そして自分と殺した人たちの本当に人生について考えるのが遅かったが、やはり罪は死で購いたいという気持ちは変わらないと書いてあった。 私の大雑把な書き方では表しきれない、僕と真下の関係、何も持たない身軽さとそれゆえに孤独に死を求めた真下と、命の世界の重みと広がりを施設長から受け取った僕。 何も持たないどん底で虐げられて生きてきた山中の孤独。時に闇の世界に迷い込みそうになる僕の夜。本書は特殊な世界でありながら、人の持つ自分だけの命を生き続ける寂しさや、支えられている周りの人々との繋がりが、ありふれた生活の中に潜んでいることを考えさせられる、名著だと思った。 >> 続きを読む
2015/02/09 by 空耳よ
野島伸司
友達にプレゼントされた。テンポの良い作品。映画っぽいかんじ。最後にほろり。かんぺい。。。 >> 続きを読む
2017/06/17 by keisan
使ったお金がその人の一部を作るっていうのに、確かにと納得してしまいました!角田さんのエッセイ、ほんとーにおもしろいですね!!!なんか読んでると安心してしまう。角田さんの性格、考え方とかが好きだからこんなにハマってしまうのかも! >> 続きを読む
2017/06/07 by asa_chann
本谷有希子
自我の暴走、破壊、奇行の抑制が効かないメンヘラ主人公女子と3年も同棲している草食系男子との感情の交わらなさがおもしろかった。何者とも100%理解しあい、繋がれない不安定な時代。ツンデレ、ヤンデレなど愛情の多様性の中、また一つ新種の恋愛を見せつけられたような生命力みなぎる物語。ちょっぴり演劇的な登場人物たちも本作の魅力に感じた。同時収録作『あの明け方の』のプチ家出リセット感も、なかなか心地よい掌編だ。 >> 続きを読む
2016/05/08 by まきたろう
巽孝之 , エドガー・アラン・ポー
学生の時ゴシックとはなんぞや? と思い教授に話をしたところ、これを読みなさいと言われた本です。ゴシックについては建築とファッションのイメージが強かったのですが、小説として言語化(?)すると地下と言うか、湿り気と真っ暗というわけではない暗さというか、そういった印象を受けました。 >> 続きを読む
2015/02/15 by シシギリ
絲山秋子
なんて、カッコいいタイトルなんだろう。装丁も超Cool またひとつ読み逃していた刺激的な本と出会えてラッキー! 総合職とがジェンダーとか行政用語にふりまわされながら奮闘している女性たちの熱量が男より男前。組織に蔓延する不倫やセクハラ、パワハラの男社会構図すら、凌駕してしまうサバサバした女子力の進化。色恋なしで男と女が認めあい、渡り合える新たな社会図に拍手! 自身も死ぬ前にハードディスクをどう処分しようか?マジ考えた。他2収録作もスカッと痛快!パンクな読後感! >> 続きを読む
2018/03/18 by まきたろう
歌野晶午
歌野晶午さんのミステリ短編集。『放浪探偵と7つの殺人』と異なり、探偵役も舞台もバラバラです。本作品に収録される4編は、『事件の解決+αの仕掛け』がひとつの共通点かなと思います。犯人当て、トリックの解明、その先にもう一つ!って展開で最後まで楽しませてくれます。個人的には『そして名探偵は生まれた』がイチオシ!キャラクター、展開、オチ、最初から最後まで楽しく読めます。笑若干メタ的でユーモラスな雰囲気も独特なものがあります。読みおわったときにタイトルの意味も分かりますよー笑『生存者、1名』は孤島でのパニックミステリーとしてかなり楽しめるのですが、オチが今一歩。。といった印象ですね。途中までの展開はハラハラドキドキなので、その落差があるかもしれません。他の2作品もそれぞれ違ったテイストで最後まで楽しませてくれます!1話ずつのボリュームもちょうどいいので、寝る前に少しずつ読んでいくのもオススメです。 >> 続きを読む
2020/05/04 by いんせくと
FollettKen , 戸田裕之
ヒトラーは、連合国軍がノルマンディに上陸するとみていた。しかし、英国に潜入したスパイたちから送られてきた情報によれば、連合国軍の上陸予定地はカレーだった。ヒトラーは、信頼するディ・ナーデル(針)の情報をひたすら待った。「針」と呼ばれるフェイバーは、戦前からロンドンでスパイ活動を行なっていた。しかも、単独で。「針」は、カレー上陸が連合国軍の偽装作戦であることを見破った。その証拠写真を持って、ヒトラーが待つドイツへ帰るつもりだった。しかし今、彼は英国陸軍情報部MI5から追われている。追う者と追われる者の必死の攻防、知恵比べ、騙し合い。アメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞を受賞した、ケン・フォレットの「針の眼」は、秋の夜長に愉しめる小説で、非常にうまく出来た、スパイ・スリラーの傑作だと思う。一説によると、ドイツのスパイは、1939年のクリスマスまでに全員検挙され、英国には当時一人も残っていなかったという。また、ドイツが連合国軍のカレー上陸というトリックに、疑念を抱いたことも事実だと言われている。そこで、著者のケン・フォレットは、「針」という冷酷にして優秀なスパイを、歴史的なノルマンディ上陸作戦に絡ませたのだ。「針の眼」は、その大芝居であって、それがものの見事に成功していると思う。もっとも、事実の上に築かれた壮大な虚構の世界は、この作品が初めてではない。ジョン・ル・カレの「寒い国から帰ってきたスパイ」がそうであったし、フレデリック・フォーサイスの大ベストセラー小説「ジャッカルの日」もそうであった。読者が手に汗握りながら、現実と虚構の狭間で、騙されて喜ぶ小説なのだ。英国人のケン・フォレットが、「針の眼」を書いたのは、29歳の時だ。つまり、第二次世界大戦を全く知らない若者が、歴史的事実を随所に散りばめながら、「針」を初めとする様々な人物たちの、追いつ追われつのスパイ・スリラーを書いたのだ。ただ、少し気になったのは、追う側と追われる側が「ジャッカルの日」に似ていることで、特に「針」のキャラクターの造形は、ジャッカルにそっくりだという点だ。「針の眼」は、ドイツのスパイが全員、捕まったわけではなく、一人、それも不死身のスパイが、英国本土に残っていたという仮定から生まれた、途方もない小説だ。そして、出来上がった小説は、手に汗握る、ハラハラ、ドキドキの連続の、まさに波瀾万丈の物語なのだ。 >> 続きを読む
2020/06/22 by dreamer
出版年月 - 2009年2月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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