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有川浩
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この本は、主人公とヒロインの恋の物語...。読んだ方でただの恋愛ストーリーと感じる人は少ないと思います。障害という厄介者。簡単に解決しそうでしないこれはこの物語が簡単に進まない原因であり、読者が記憶に残る理由でもある思います。ヒロインは障害を理由に自分の殻に閉じこもり主人公はヒロインをその殻から出そうとしている。その中で、ヒロインの態度には少しイラッと感じた人もいるのではないでしょうか。私もその一人です。誰にだって隠したい秘密は一つぐらいあることでしょう。インターネットという画面上の自分と現実の自分が違う人もいるのではないでしょうか。ではもし、ヒロインのようにインターネットで知り合った人に実際に会ってみませんか。と言われたらあなたは勇気を出して「はい」といえますか? >> 続きを読む
2020/02/04 by 匿名
伊坂幸太郎
近い将来惑星が地球に衝突するという状況の中で、仙台の団地に住む人々の生活と葛藤が描かれた作品。8年前に激突することが判明してから5年が経ち、民衆のパニックが収まりやや落ち着いた中という、一風変わった設定が新鮮で興味深かった。各エピソードを読みながらも、そんな時自分はどう行動するのだろうと色々な考えが頭を駆け巡った。シェルターに避難のことは話の中に出ていたけど、大型宇宙船に分乗して月あたりに一時避難できないかとか、惑星の軌道を無理やり変えてしまう装置が開発できないのだろうか、等々空想が浮かんだ。読み終えた後、ストーリーより、状況設定の方がインパクト強くて印象に残ったというのが正直な感想。 >> 続きを読む
2020/01/13 by Sprinter
三浦しをん
【駆け抜けるランナーのようなスピードでページをめくらされてしまった】 本書も『スポーツものでお勧めの作品』ということで、塩味兄貴から勧められて読んでみた作品です。 お勧め作だけあって良い作品でした。 物語は竹青荘(通称アオタケ)という木造のオンボロアパートに住む寛政大学の学生たちが箱根駅伝を目指すというものです。 とは言え、アオタケの住人のうち、まともに陸上競技をやったことがあるのは2人だけ。 しかもそのうちの一人であるニコチャン先輩は、とっくに陸上競技を引退した大学5年目の学生で、現在はヘビースモーカーとなり、ちょっと肥満気味という状況です。 もう一人の陸上経験者清瀬灰二(通称ハイジ)は、4年生なのですが、足を故障したこともあり、強豪大学からの誘いもあったのにそれを蹴って陸上部があるとは言っても名ばかりの寛政大学に進学したのでした。 それは陸上競技からの決別のつもりだったのかもしれませんが、走ることに対する情熱は捨てきれず、何とかアオタケの住人たちで箱根を目指したいという気持ちを持ち続けていたのです。 とは言え、現時点ではアオタケの住人は9人だけで、全部で10区を走らなければならない箱根駅伝に必要なメンバー数すら揃えられない状態です。 そこで偶然見つけたのが高校陸上で名を轟かせた蔵原走(かける)だったのです。 ハイジは、走がコンビニで万引きをして逃げ出したのを見かけその走りを目にします。 「こいつが10人目だ!」と確信したハイジは、半ば強引に走をアオタケに連れ込んだのでした。 走は、優れた走者だったのですが、高校時代、監督の指導方法に納得できず、思わず監督を殴ってしまうという不祥事を起こしたため陸上界から消えていった男でした。 走は、走ることだけは続けていましたが、もはや競技に出る意思をなくしていたのでした。 アオタケの他の住人はと言えば、運動能力に優れた者や、陸上競技の適性がある者もいるとは言え、全員が陸上未経験者です。 そんなメンバーで、しかもギリギリの10人だけで箱根を目指すと言ってもそれは無理というものでしょう。 ハイジは熱っぽく箱根を走ることを誘うのですが、さすがにすぐには承諾する者などいません。 しかし、ハイジの粘り強く、半ば脅すような強引な説得により、結局は全員が箱根を目指すことに同意してしまい、以後、やったこともない陸上競技の世界に入っていくのです。 まあ、冷静に考えれば相当に無理のある設定ですよね。 物語では、アオタケの住人たちはどんどん力をつけていき、予選会も突破し、なんと、箱根駅伝に出場することになってしまうわけですが、実際には多くの大学が一生懸命練習を重ねてもなかなか箱根駅伝には出場できないわけで、これはもう荒唐無稽、夢物語としか言いようのない非常に無謀な展開です。 その辺りは作者ももちろん承知の上で書いているのでしょうから、読者としては、もう、作者が仕組んだ夢物語につき合うしかないではありませんか。 あとはもう一直線に物語の世界に突入するだけです。 アオタケの10人が、それぞれの思いを抱いてどんどん速く走れるようになっていくのに合わせて、ページをめくる速度もどんどん速くなって行きます。 最後の箱根駅伝のシーンなんて、完全に物語に入り込んでしまい、ページをめくる速度も加速しようというものです。 こういうところが本作の魅力であり、また、多くの人から高評価されている由縁なのでしょうね。 登場人物が疑問や悩みを抱き、それを解消していく場面などを読むと、「え~。そんな理屈で納得しちゃうの?」と思わざるを得ませんし、心理描写などがちょっと都合良すぎませんか?と感じたり。 いかにもという、分かりやす過ぎる嫌われキャラが出てきたり、盛り上げ必至のレース展開にしたりと、「見えやすいなぁ」と感じる部分も多々あるのですが、本作は眉間に皺を寄せて読むような作品ではないのですから、そこは大目に見るのが吉です。 非常に分かりやすく読みやすい作品で、また、泣かせにかかっているところで手もなく泣かされてしまうわけですが、それも良いじゃないですか。 スポーツものの気持ちの良さを堪能できる作品であることは間違いありません。 小難しいことを抜きにして、読者も積極的に楽しもうという姿勢で読むと良い作品だと思いました。読了時間メーター□□□ 普通(1~2日あれば読める) >> 続きを読む
2020/02/07 by ef177
佐宗鈴夫 , リチャード・バック
Illusion――幻影む~~。レビューがとっても難しい一冊です。小説としてはストーリーが薄い、哲学じゃない、自己啓発本としては半端、奇想天外さではSFに遠く及ばない。どうしようね。この本……。世界的大ベストセラーの「かもめのジョナサン」の著者が書いた第2作目。しかし、「新版・かもめのジョナサン」を読んでしまうと、この「イリュージョン」はなんとも中途半端で中身はほぼ一緒という結論に達してしまう。両方とも、空飛ぶ若者の元に突然救世主なり仙人なりの超存在が現れて、主人公を開眼させて、救世主の跡継ぎにするっていうお話しです。まあ、人間の物語にしたというところだけが新しいというか。さらに露骨にキリスト教くさくなったというか。もっと自由に生きようという方向性はわかります。堅牢で動かしがたいように見える現実世界だって、幻にすぎない。見方、考え方一つで世界は変化する。一人一人が異なった世界を持っていてそれを見る事ができ、自分の世界で生きることができるのだ。それもごもっともです。でもヴォネガットは「変えられないこともある」って言っています。捕虜という自由から最も遠い立場にいて、目前で大量虐殺が起こり、自分も死んだかもしれなくて、見るだけで他にどうすることもできなかった無力を心に叩きつけられる。そんな体験をした彼は、『世の中でできないことは何もない。できないとすればそう思いこんでいる自分のせいだ』と、能天気に歌い上げることはできなかったのです。私も頑固なのかもしれませんが、物理的に水の上を歩けるはずで、歩けないのは水に溺れるという思い込みのせいだ。赤ん坊は水の上に立てないと思っていないから水面を歩けるのだというのには文学表現の上のことであっても、賛成できません。じゃあなんで数センチの水たまりで溺死するんですか?交通事故で半身不随の車いすの男を「奇蹟」で健康にする。それも「彼が歩けると信じたから歩ける」という簡単な解決方法で。救世主は「その奇跡を起したかったから」そうするのが楽しいから起したのだと言います。貧乏暇無しを嘆く人もその人がそういう生き方を望んでいるからだし、死ぬのも納得の上?では戦火の下で生きる子供達にも同じことを言えますか?ラストもドンの半端な退場で拍子抜けでした。ドンはいい奴かもしれない。でもなんとも気まぐれな救世主。第一、一人一人バラバラな世界で主人公になって、それで本当に満足ですか?人びとと世界を共有しないのなら、芸術は必要ない。悪いことは言っていないかもしれません。この本で心が軽くなる人がいればそれはこの本の効き目でしょう。でも、私についていえば、もっと心に響くことを言ってくれなくてはね。という感じでした。類は友を呼ぶ。君は奇蹟を行える人間だ。だから僕と出会った。これからは君が救世主のハンドブックで修行してごらん。ほら、あなたも救世主になれる。あなたの望むやり方で。で、リチャードはこの本を書いた。のだそうです。 >> 続きを読む
2015/12/03 by 月うさぎ
高田郁
これは引き込まれる物語だ。ひたむきさと暖かさと切なさに、胸が熱くなる。上方の、料理屋で修行したなら、江戸との嗜好の違いは大変な困難だろう。今の料理の技の礎とも言える、澪の試行錯誤に、つる屋での奮闘に一喜一憂しワクワクする。災害で家族を喪い、恩ある奉公先は焼け出され、頼った江戸の分店は人手にわたり、苦難続きの雲外蒼天の相。才能と努力と根性で切り開く蒼い空への道がなんとも清々しい。ご寮さんや種市との関わりに幾たびも泣きそうになる。生き別れた親友とは会えるのか?小松原?源斉?胸キュンの展開になるか?沢山の人が嵌まってしまう訳だ! >> 続きを読む
2017/11/09 by ももっち
GladwellMalcolm , 勝間和代
本書では、「選ばれるときに」、他の人よりちょっとでも優れている人が、選ばれることにより、良い環境が与えられ、さらに差が開くということを、様々な実例とデータを示して説明しています。 逆の言い方をすれば、「選ばれるとき」=チャンスが来てから努力してもダメで、やりたいことがあれば普段から努力して、チャンスが来た時には他の人より1歩でも半歩でも優っている状況を作ることが大事と言っているのかなと思います。 「本気をだせば~」とか「一預け」とか考えているとだめなのかも。 >> 続きを読む
2015/11/23 by liekk
米原万里
米原万里さんは、ただの本好きではなく「読書力」が人並みはずれて発達した人で、これは「私の読書日記」という本を中心とした日頃の事が前半、色々な所に書いた書評が後半となっています。 時代がアメリカが湾岸戦争、イラン・イラク戦争を始めた頃と重なっていて、米原さんの反米感情は並々ならぬものがあります。 そしてアメリカに追従する日本の政策にも怒りを感じています。政治に関する固い本、娯楽とは言えないハードな世界にも興味、関心を持って接しています。 米原さんはロシア語通訳が本業。それ故、ロシア、ソビエト関連の書籍が多くなっていますが、自分の仕事に誇りを持って、本から知識を得なければ成り立たない、範囲が広い、政治から文化、色々な産業まで知識がなけば(言葉を知らなければ)通用しない世界に対して実に貪欲に読書をしています。 病気になるとその関連図書を読みあさり、色々な医者や治療法を変え、医者に対して疑問と反論をして医者から嫌われてしまう、という経験もします。 本に対して、どう向き合うか、米原さんのような「強い読書力」は無理としても、この本を読んで、良かった本に対してどれだけねじりこんでいくか・・・を考えてしまいました。 本を読む気分、体調ではない時もある。本ばかり読んでいて机上の空論ばかりの地に足がついていない生活になっていないか? 米原さんの読んだ本を追いかけて読みたいよりも、本(ひいては好きな物)への対峙の姿勢を見せつけられたような気がします。 米原さんの興味、嗜好はわたしとは同じではない。しかし、読んでみたい、という気持にさせて引き金のような役目を果たすにはこれだけの強引さがないとダメであることを実感します。 ネットに情報はあふれているけれど、映画や本について他の人が書いたものを読んで(いわば要約)読んだ気分になり自分のものにしたような錯覚には警鐘を鳴らしてもいます。 >> 続きを読む
2018/06/18 by 夕暮れ
さだまさし
さだまさしさん、やっぱり裏切らない面白さでした。タイトルがちょっと冗談みたいな感じで、軽い話だと思ったら、大間違いでした。過去にある出来事から2度同級生を殺しかけた杏平が、遺品整理という仕事を通して、遺族や故人を偲び、人の命の重さについて考えるようになります。簡単に人の命を奪ってはいけない。どの命も重く尊いのは同じである、ということ。行きつけの居酒屋で働くゆきちゃんに出会って、彼女の過去も知ったことで、さらに命の重さについて感じ取る杏平。死から生を学び取って、前を向いて歩けるようになった杏平に、ホッとしつつ、ちょっと涙ぐんでしまいました。私も杏平と同じく、仕事を通して故人と真摯に向き合うCO-OPERSの人たちに胸を打たれました。 >> 続きを読む
2020/05/20 by taiaka45
太宰治
太宰のナルシスト具合は分かる作品。
2019/08/03 by ken0909
河野裕
今年の4月~9月まで2クールでアニメ化された「サクラダリセット」の原作1巻です。当初アニメが放送され、観た段階では原作を読もうとは思っていませんでした。正直いつ切ろうかなと思っていたくらいです。ですが、観ていくうちにだんだんと面白くなって来て、最終話を観る前にもう一度最初から観ようと思い、一周目を観終わった時に「原作読みたいっ!」と思い4巻まで購入。そして、1巻読了と相成った次第です。因みにアニメは二周目後半に突入しています。アニメを観ている時にも感じましたが、この作品の世界観、及びキャラクター達が話す言葉が凄く綺麗だなと。原作読んでいる時も滑らかで綺麗な雑味のない言の葉たちが物語を流麗に彩っていて静謐な気持ちになれます。まだ1巻なので、導入とキャラクター説明ですが、それでも十分に起伏があり且つアニメでは描ききれなかった細かい描写も読めてとても良い読書体験ができました。さて、また新たな物語の旅へ出たいなと思いレビューを締めさせて頂きます。 >> 続きを読む
2017/10/02 by 澄美空
塩野七生
〇塩と魚しかなく、土台固めの木材さえ輸入しなければならなかったヴェネツィア人には、自給自足の概念は、はじめからなかったにちがいない。しかし、この自給自足の概念の欠如こそ、ヴェネツィアが海洋国家として大を為すことになる最大の要因であった。(P66)〇私は、マキャヴェリの言葉に示唆されて、ヴェネツィアという国家を、一個の人格として取りあつかうつもりでいる。(P78)〇しばしば歴史には、イデオロギーを振りかざす人がいったん苦境に立つや、簡単にその高尚なイデオロギーを捨てて転向してしまう例が多いのを思えば、ヴェネツィア人の執拗さは興味あるケースである。自分にとって得だと思うほうが、こうあるべきとして考えだされた主義よりは、強靭であるかもしれない。西と東の強国のいずれにも決定的に附かず、独立と自由を守り抜いたことによって、ヴェネツィア人は、やはりずいぶんと得をしたのである。(P126)〇現実主義者が憎まれるのは、彼らが口に出して言わなくても、彼ら自身そのように行動することによって、理想主義が、実際は実にこっけいな存在であり、この人々の理想を実現するには、最も不適当であるという事実を白日のもとにさらしてしまうからなのです。(P144) >> 続きを読む
2017/03/01 by シュラフ
瀬尾まいこ
今年の本屋大賞受賞でお名前を知った作家さんの過去作品を初読み。わー占い師の仕事ってこんな感じなんだ…。20分3000円の現金商売。なかなかおいしい仕事だぜ! などと非日常的な稼業の舞台裏に興味を覚え、さくさく読める楽しい語り口が印象的。4つのエピソードで構成された新人占い師・ルイーズ吉田の成長物語。「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の占いに救いを求める人々が抱える諸問題を題材にした様々な人間模様を通して人生の普遍性をほっこりと描く、ゆるくてあたたかい作者のまなざしを感じた。個人的には朝から今日の運勢を見るのは好きではない。運気のよしあしは別として、自分に関係ないところで、今日一日の結果がすでに決まっているような(陰陽師に呪をかけらた感覚?)一方通行感を覚えるから。対面スタイルの占いは、対話があって成立する。当たりはずれも気になるところだが、胸の内を相談するだけで、気が晴れたり、ズバッと助言してくれたら、スカっとしたり。心の呪縛を解く役目も担っているんだろうな。いくら強運の持ち主でも「運」だけで生きていくのは不可能。気づかない間に、できた大事な人とのつながりがあるから占い師も陰陽師ま解けない呪縛も解き放ってくれる瞬間の積み重ねが人生なんだろうな。 >> 続きを読む
2019/06/12 by まきたろう
永倉新八
新撰組の生き残りの永倉新八が、大正になり、七十代半ばになってから、残した回想録である。新撰組モノの小説と若干異なる印象を受けるところがいろいろあって面白かった。たとえば、永倉をはじめとした新撰組の隊士の多くは、どうも尊王攘夷のつもりでそもそも新撰組に参加し、ずっとそのつもりでいたようであることである。それほど幕府に殉じるというつもりがはじめからあったわけでもなかったようである。そうしたら、いつの間にか、そのつど目の前に任務に一生懸命誠実に取り組んでいるうちに、完全に幕府側ということになり、会津と一体化していって、時勢の変化の中で賊軍ということになってしまったようである。永倉自身よくわからないまま、漠然とした考えで、なんだかよくわからないが新撰組のために命を張るというつもりで尽しているうちに、ああいう時の流れになったようである。また、永倉のこの回想録を読んでいてとても興味深かったのは、芹沢鴨のことを高く評価してとても惜しんでいたことである。だいたい世の新撰組モノの小説では、芹沢は近藤に倒されるなんだか脇役めいた扱いなのだけれど、永倉によれば欠点も含めてなかなか興味深い人物だったようである。真木和泉や平野國臣についても、新撰組からすれば敵であるのに、その立派な態度に感心しその死を惜しんでいるあたりに、永倉や新撰組隊士たちの懐の広さや純情さを感じた。ラストの方では、雲井龍雄も登場し、とても興味深かった。それにしても、結局、大正頃まで生き残った新撰組隊士は、永倉新八と斎藤一と尾形俊太郎ぐらいだったのだろうか。永倉のみまとまった回想を残してくれた点で、本当に貴重な一冊と思う。生き死にの不思議さを思うのと同時に、永倉の場合最後まで生きることができる限りは生き残ろうとし闘い続けた、その姿勢や意志が、やっぱり長寿の秘訣だったのかもなぁと思われた。 >> 続きを読む
2016/07/28 by atsushi
Meschenmoser, Sebastian , 関口裕昭
<ペンギンが空を飛ぶ。 そう、私だって空を飛べるのかもしれない。> 「ある日、散歩の途中、わたしは1羽のペンギンにひょっこり出くわした。」で始まる絵本。ペンギンは空を飛んできたのだという。でも他の鳥が飛ぶのを見て、自分は飛ぶようにはできていないのでは・・・と思ったら落ちてしまったのだと。「わたし」はペンギンの面倒を見、そして一緒に空の飛びかたを考えることにした。・・・・・・・・・・・・・・・・色鉛筆と水彩のラフなスケッチ画風なのに、なんと雄弁な優しい絵だろう。後ろ姿にいたるまで、ペンギンの表情の豊かなこと! 絵がうまいってすごいことだな・・・。全編に漂うユーモアもすてきだ。飛ぶ研究をするときにペンギンが読んでいる「専門書」が『スーパーマン』て(^^;)。ダヴィンチのパロディも絶妙。訳の雰囲気もいい。こんなかわいいペンギンが空から落ちてきたらいいな。いや、それよりも、正しいきっかけと動機さえあれば、自分だって空を飛べるのかもしれないよ。そう思わせてくれるラストである。 >> 続きを読む
2016/05/12 by ぽんきち
資源に恵まれないヴェネツィアのような国家には、失政は許されない。だからこそ彼らは現実的であり、合理的なものの考え方をする。例えば、聖遺物信仰についても生きた聖者に信仰を捧げて牛耳られないようにするものだ、と塩野七生は指摘する。なるほどと思う。塩野七生のこういうものの見方というのは大変に勉強になる。西欧とイスラムの対立の中、統治能力の優れた政府を持つ必要があったヴェネツィアが選んだ政体は共和制。共和国国会のメンバーを世襲制にして政治のプロ階級をつくることで個人の野心と大衆の専横を抑え込んだ、という。【このひと言】〇芸術家は、史実に忠実でなければいけないと言っているのではない。出来栄えさえ見事であれば、それで十分なのである。〇マルコ・ポーロの幸運は、大旅行を終えて後に、この時期しばしば起っていたヴェネツィアとジェノヴァの戦いに巻き込まれ、ジェノヴァの捕虜になり、牢の中で暇をもてあましていた時に、彼の話を聞き、それを書きとめておく気になった男に恵まれたことである。〇簿記の記入に不可欠なアラビア数字がヨーロッパにもたらされたのは、1200年代はじめのピサ人の功績による。はじめのうちは、憎っくき異教徒の産物ということで、教会関係者をはじめとする人々から、少なからぬ抵抗を受けたらしい。しかし、ローマ数字と比べれば、便利なことでは比較にならない。書きちがい読みちがいも少なくなるうえに、0という観念もある。それで、現実的な商人の間では、教会の妨害にもかかわらず拡まっていった。〇信者には信仰の対象が必要だ。それを信仰することによって、彼らは、心の平安を得るだけでなく、天国の席の予約もしたつもりになれるのである。この場合の信仰の対象が、聖者の骨ということになっている骨の一片や、キリストが架けられたという十字架の切れはしであったりすれば、これらはいかに信仰を捧げられても、その人々を扇動しようとはしないから実害はない。聖遺物購入に費用がかかっても、これならば安い代価である。一方、合理的と自認していたフィレンツェ人には、聖遺物信仰はなかったが、それだけに生きた聖者に信仰を捧げ、彼らによって牛耳られることがたびたび起った。〇資源に恵まれないヴェネツィアのような国家には、失政は許されない。それはただちに、彼らの存亡につながってくるからである。都市国家や海洋国家の生命が短いのは、この理由による。 >> 続きを読む
2017/03/04 by シュラフ
地中海の覇権をめぐり、ヴェネツィアとジェノヴァとの戦いが苛烈を極める。航海技術などはジェノヴァのほうが上回っていたようであるが、ジェノヴァの欠点は個人主義的で天才型であるがゆえに、まとまりがなく内紛がたえない。結局、ジェノヴァは政局混乱のうえに消滅していく。ジェノヴァの自滅と、ヴェネツィアの勝利。勝利を決した要因は双方の国家の社会組織能力ということ。ジェノヴァの個人主義放任の害が国家に不利益をもたらしたと、塩野七生は指摘する。個人の利益と国家の利益をどちらを優先すべきか、それは間違いなく国家である。【このひと言】〇国力が昇り坂にある時は、個人主義放任も害を及ぼさない。それどころか、良い結果を生むことが多い。〇エリートは、修道僧の僧が神のために無償の奉仕をするように、与えられた名誉のためだけに奉仕すべきである、と言う人がいるが、このように言う人々は、まったく人間の本性に対して盲目であると言うしかない。修道僧には、神がいるのである。死後に天国での第一等の席も、保証されている。まあ、保証されていると信じることが彼らにはできるのだ。一方、キリスト教徒であっても、神に奉仕を誓ったわけでもない俗界のエリートたちには、無償の奉仕をするほどの理由はない。やはり、能力には、それにふさわしい報酬が与えられてこそ、彼らも、その才能をより以上に発揮する気持になるというものである。〇現実主義は、人間の理性に訴えるしかないものであるところから、理性によって判断をくだせる人は少数でしかないために、大衆を動員するためにはあまり適した主義とは言えない。〇戦争は悲惨なものである。しかし、その戦争にも、一つだけ積極的な意味がある。各人の欲望を単純化するという効能である。<解説>〇保守であれ、リベラルであれ、極端なイデオロギーのもとに「理想の追求」を急ぐときに大きな災いがもたらされることは、歴史の証明するところである。バーリンは、キリスト教を絶対視することなく、人間性の現実を冷徹に直視することを唱えたマキアヴェリを高く評価しているが、それはまさにこうした理由によるものであって、決して権謀術数的な政治手法の擁護にあるのではない。塩野さんがマキアヴェリを敬愛する理由も根源的には近いのではないかと私は推測している。 >> 続きを読む
2017/03/05 by シュラフ
道尾秀介
添木田蓮と楓の兄妹。そして溝田圭介と辰也の兄弟。何も関係なこの二組が絡むある事件にまつわるミステリ。トリックとしてそこまで驚くという類いではないが、当人が思い描く予想とは悉く違うというスタンスはよく出来ている。惜しむらくは登場人物が少ないので、事件の先読みは見抜けるかも。二組とも過去の出来事に囚われており、それが事件を通じて少しずつ光が射していく。結局のところ思い込みや誤解が招いた悲劇なのである。 >> 続きを読む
2018/03/27 by オーウェン
住谷春也 , 池沢夏樹 , 大久保昭男 , EliadeMircea , MoraviaAlberto
この前は「恋」の話だったので、次は「愛」でも語ろうか。なーんてこんな気障な台詞、わたしには似合いませんね。わたしらしく、池澤夏樹さんの世界文学全集についてから。 いささか機を逸する感じになりましたが、ようやく、ふだん行く二つの図書館でも全巻揃うようになりました。2、3年くらい前までの歯抜け状態から、煎餅が食べられるていどに落ちつき、先約の心配をしないで借りることができます。ただ、いつも『ハワーズ・エンド』はお留守番をしている。きっと日本人は全員読んだのだろう、気にしない気にしない。いくらわたしがフォースターびいきでも、この中から三冊選ぶとして、やっぱり『ハワーズ・エンド』は落ちる。ボフミル・フラバルの『わたしは英国王に給仕した』、ヴァージニア・ウルフの『灯台へ』、バルガス=リョサの『楽園への道』、もちろんすべては読んでいませんが、この三冊はだれが読んでもガッカリしないと思う。おすすめ。 それはさておき、今日取り上げるのは、宗教学者で有名なミルチア・エリアーデの『マイトレイ』。エリアーデ自身がインドで経験した初恋の話を、これまでかとばかり初心に、そして神秘的な小説へと膨らませた。正真正銘の恋愛小説。ここでまた断らなくてはならない、わたしは恋愛には疎いのだ。映画『恋愛小説家』が好きなんだから仕様がない。「メルヴィン待って、メルヴィン待って」「黙れ、ガキ共」恋愛至上主義者にはこんな感じの叱責をしたいくらいだ。 しかし、恋愛がない人生は寂しいですよ、多分。クリーム抜きのシュークリームですね。でもね~、スペックが高くないと恋愛は楽しめないでしょう(これ、使い方合ってます?)最近、若い人が「スペックが~」と会話していたから、パソコンの話かな? とそば耳を立てていたら、人間について話していたと分かり驚いた。機械文明の弊とどまるところを知らず。 話が脇道に逸れました。エリアーデの『マイトレイ』、おもしろいですよ。しかし、初恋ってこんなに深刻なものかしら。うまく思い出せないんだよなあ、わたしのマイトレイ(あ、マイトレイってヒロインの名前ね)。なにしろ容姿を除いて、どういう女性が好きなのか未だに分かってないのだから(口うるさくない、頼りになる、この二つは大事かな~。「おまえは女か」って兄貴みたいなことは言わないで)。そんなわたしには刺激がつよすぎた。この本にはモラヴィアの『軽蔑』も入っています。 >> 続きを読む
2015/03/28 by 素頓狂
古荘純一
児童精神科医で小児科医、医学博士である古荘純一先生の著書。子どもの自尊感情を低下させるような教育システムの日本。これからの時代、自分に自信を持って自尊感情を持つ人間でないと国際社会では通用しない。児童教育に関わっている人には参考になる点が多いと思います。 >> 続きを読む
2017/08/20 by 香菜子
益田 ミリ
理不尽だが心底嫌いになれない父親を、娘である作者が観察した愛ある記録。たぶん、話を盛っていない実話のエピソードでしょうが、十分笑えます。「自慢したくてしょうがない」「誉められたい」「面倒くさいけど退屈はキライ」「テレビに向かってしゃべる」・・・ちょっと待って、これって、50歳過ぎてからの自分やん! そうなんです、このオトーさんは、実は日本のどこにでもいるフツーのオヤジなんですよ。 >> 続きを読む
2020/11/22 by かんぞ~
出版年月 - 2009年5月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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