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原田マハ
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【巧いなぁ!】 キュレーターの資格を持つ著者ならではの作品。 物語の中心になるのは、これまで世に出ていなかったルソーのマスター・ピ-スと思われる作品の真贋鑑定合戦ということになるのですが、この鑑定を任せられたのはMoMAのアシスタント・キュレーターであるティム・ブラウンと、当時新進気鋭の天才的研究者として売り出し中だった織絵の二人。 もっとも、ティムは、確かに自分の名前宛ての依頼状を受け取ってはいるのですが、どう考えてもMoMAのチーフ・キュレーターである、自分とは1文字違いのトム・ブラウンが指名されたとしか思えないわけで、このチャンスを活かすべく、トムの振りをして鑑定に参加するのでした。 まぁ、織絵の方も本来指名された世界的な権威の代理として参加しているのですが。この世界的権威は、既にこの絵画について真筆であるという証明書を発行しています。 この二人を指名したのは、件のルソーの絵を莫大な金で買い取った名画コレクターの大富豪。この大富豪は、本当にそんな名画コレクションを持っているのかという事自体が謎とされている伝説的な人物でした。 ところが、この鑑定の方法というのが奇妙なものなのです。 問題の絵そのものを鑑定するのではなく、7章からなるある物語を、二人がそれぞれ、毎日1章ずつ読み、その上で、7日目に講評をし合うというもの。 いずれか優れた講評をした者に、なんと、このルソーの絵の取扱権を進呈するというのです。つまり、鑑定の勝者はこの絵を好きにできるというのです。 何ともそそられる設定である上に、大変細かい点にまで注意が行き届いた作品で、非常に巧みに練り上げられていると感心しました。 よく、日本人が、外国人を登場人物とする小説を書くと、何とも言えない違和感が漂う場合が多いのですが、この作品はまったくそんなことを感じませんでした。 この辺りも巧いなぁと思わずにはいられません。 本作には鑑定合戦に使われる1冊の本の内容が織り込まれているのですが、それ自体が大変面白く、また、単なる鑑定合戦に止まらない、人間関係の深みもしっかり押さえられているので物語に奥行きが出ています。 非常に評判の良い本だったので手にしてみましたが、納得の面白さでした。 これは文句なしに名作でしょう! 「画家を知るには、その作品を見ること。何十時間、何百時間もかけてその作品と向き合うこと。そういう意味では、コレクターほど絵に向き合い続ける人間はいないと思うよ。キュレーター、研究者、評論家、誰もコレクターの足下にも及ばないだろう。ああ、でも---待てよ。コレクター以上に、もっと名画に向き合い続ける人もいるな。誰かって?---美術館の監視員だよ。」 >> 続きを読む
2020/01/26 by ef177
チャールズ・ディケンズ , 村岡花子
クリスマスも終わり、ようやく忙しさも落ち着いたのでたまった感想をボチボチまとめる。今年の感想は今年のうちに。クリスマスの準備に教会への行き帰りに毎年読むクリスマス・キャロル。今年は新たに村岡花子さんの翻訳でも読んでみた。少し古さを感じさせると聞いたことがあり避けていたけれど、実際読んでみるとそんなに古臭くなかった。寧ろ好み。改訂がなされているからかもしれない。小さい頃、テレビでクリスマス・キャロルのドラマを観た。とにかく泣いたことを憶えている。そして教会に行って司祭に自分の想いを喋りまくった。そのときの印象がずっと残り、いつしか待降節には欠かせない読み物になった。物語は簡単に言えば、守銭奴の老人が失ったやさしい心を取り戻して残りの人生を生き直すというもの。勿論、意外な展開も衝撃の結末もなし。ディケンズがクリスマス・キャロルを書いた時代背景や世相といったものから掘り下げて読むのも良いと思うけれど、そんな難しいことを考えて読まなくてもいい本もあると思う。クリスマスが近づいてきたら、わたしは自分の出来る範囲でひとを思いやりたいと思った昔の素直な自分を思い出したい。それだけだ。ひとは生きていくうちに多くのものを得ると共に、多くのものを失う。中には取り返しのつかないものもあるだろう。それでも、自分の心だけは自分次第で取り戻すこともできる。日常の煩雑さに、自分を思い出し見つめなおす機会はなかなかないかもしれないけれど、忙しくなりがちな年末に敢えてゆっくり人生を振り返り、残りの人生を考えなおしてみるのも悪くないと思う。毎年そうさせてくれるこの本が、わたしはやっぱり大好きだ。今年ももう少しで終わりますね。 >> 続きを読む
2015/12/27 by jhm
阿川佐和子
聞く、聴く。とてもわかりやすい文章で綴られているので、一気に読んでしまった。出てくる方たちも、それぞれのカラーがでていて、なかなかの強者揃いだなあ~と。頷き、相槌をはじめとして、相手の話に対して反応するというのが基本。それが、わざとらしくないのが一番。でも、なかなかその域にはと思うが、まあ阿川さんのように、一歩一歩だ。相手の話の中に種を見つけてひろげていく。ひろげていくというか、相手が拡げていくように、寄り添うのでいいのだろうと思う。 >> 続きを読む
2018/01/23 by けんとまん
坂木司
再読知り合いに貸すことになったので、貸すんだったらもう一度読んでからじゃないと、と思い、ぱらぱらめくっていたらいつの間にか読み終えていました(笑)内容は初読の時に書いたと思うので割愛します。再読してみて思ったのは、やはりこの作品は女性向けなんだろうけど、決して女性だけしか楽しめないということはないだろうなあということ。貸すことになった知り合いが女性で、しかも読書初心者だから、何がいいかなぁ…と本棚見てたらこの作品が目に留まり、その知り合いも、面白そうっすね!と言っていたので、そんならまた貸す前に読んでおかねば!と思い冒頭に至る…って感じ。内容は、まあ、うん。なんか、こう、上手く言えないんだけど、こういう世界も良いよな…と思うというか。日常の謎を解いていく感じなので、ホント、自分のためにあるような作品(笑)読んでて本当に心地よい。主人公のふたりも憎めないしなんか、新たな扉が開きそうで若干こわいです(笑)とにかく読み易い。さらさらと流れていく文体で本当に気持ちの良い読書でした。まあ、欲を言えば、もうちょっと女性キャラを出して欲しいかな(笑)やはりというかなんというか、この季節は本当に読書に向いて、適していますね。ほぼほぼノーストレスで読書に没頭できる…一年中ずっと秋だったらいいのに(笑)ちなみに前のレビューで、この作品に出てくる二葉に自分が似ているとおこがましくも言っていただきましたが、正直再読して、確かに…と思ってしまいました。自分も極度の怖がりで心配性なので、読んでいて、あれ?俺かな??と心の中で何度も突っ込んでしまいました(笑)あと、読書は不思議なもので、一番に読んでいる作品がなかなか進まない時に、違う作品をふと読み出すと止まらなくなってそのまま読み切る…という今回みたいなことがあるわけで。本当に不思議です…ただ、それも本を読む面白さ、楽しさなのかもなとも思いました。とりあえずこの勢いで色々な作品を楽しんで読んでいければいいなあとも思いました!今回も良い読書が出来ました! >> 続きを読む
2019/10/04 by 澄美空
田中慎弥
芥川賞の授賞式での著者のコメントが一番印象に残っているが、あまり中身に感銘を受けることはなかった。とにかく肉感的というか、性描写をかなり前面に押し出している。作者の文体が独特。父の暴力的なところと性癖を受け継いでしまい苦悩する息子。反面教師のはずが、そうなってしまう無力さ。ここがいまいち響かなかったのは残念。 >> 続きを読む
2019/01/25 by オーウェン
加藤シゲアキ
ナメてかかって丁度良い。ハードル下げた分キックバックがあり、そこそこ楽しめた。映画は未観。 >> 続きを読む
2020/10/28 by hiro2
北方謙三
激闘に次ぐ激闘。主要登場人物が次々に散る。とはいえ、水滸伝では、常に童貫に先手を取られていた感のあった梁山泊軍だが、今回は逆に押し気味で進めている。決着はもう間近だ。 >> 続きを読む
2017/10/12 by Raven
角田光代
短編集なのだが、どれもこれもひたすら恐ろしかった。次第に、タイトルの意味が分かってくると、さらに恐ろしくなる。ほとんど私にはオカルト的な恐怖。作者の想像世界の凄まじさよ。1日一編にしておかないと、心身に影響が出そうでした。合掌。 >> 続きを読む
2015/06/21 by umizaras
宮部みゆき
謎の事件を解明するストーリーだけでなく、タイトルどおりの名もなき毒が様々な場面で表されています。一番印象に残ったことは、人の発する言葉が毒になってその人間を苦しめるということです。物質的な毒は解毒剤がある場合があるけど、形を持たない言葉や強い思いのこもった毒はその人を想像以上に苦しめるものだと痛感しました。ちょうど読んでいる期間、程度の違いはありますが、同じようなことに自分も遭遇したからです。その描写が素晴らしいだけでなく、話の展開や終わらせ方もとても楽しめました。 >> 続きを読む
2019/09/14 by ryoji
上野千鶴子
人間死ぬときは一人。誰もが迎えうる「おひとりさま」の老後ライフを充実させるための心得を説いた本。住居、おつきあい、介護、終末期の始末。単行本の初版は今から10年以上前で、その間類似テーマの本は数多く出版されており、それほど目新しい内容ではない。ただ、介護を「する方」ではなく「される方」の心得が挙げられているのはなるほど、と思った。コミュニケーションは双方向なので、当然「される方」の心得も必要なはずだが、意外にその目線からの本はないのではないだろうか。自分自身がどう生きていきたいのかしっかり考えること、お金も含めて実現に必要な準備をすること、コミュニケーションを大事にすること。「おひとりさま」でなくても、「老後」でなくても必要なことである。悔いのないよう、今から心しておこう。 >> 続きを読む
2020/08/23 by matatabi
日明恩
「BOOK」データベースよりその少年に目が留まった理由は、ただ一つだった。こぼれ落ちる涙を拭おうともせずに、立ち尽くしていたからだ。それもホラー映画の並ぶ棚の前で。しかも毎日。―ある事件がきっかけで、職を辞した元刑事の須賀原は、死者が見えるという少年・明生と、ふとした縁で知りあった。互いに人目を避けて生きてきた二人。孤独な魂は惹かれ合い、手を結んだ。須賀原と明生は、様々な事情でこの世に留まる死者たちの未練と謎を解き明かしていく。ファンタジック・ミステリー。 超能力の中でトップクラスに欲しくない能力。それがこの死者が見える能力でしょう。何しろ誰にも見えないのに自分にだけは訴えかけて迫ってくるのですよ。亡くなった時の姿のままで。。。もし自分に突然そんな能力が開花してしまったら1年生きる自信がありません。この物語の明生少年はこの能力を持ってしまったが為に周囲から疎まれ、心を閉ざして生きてきたのですが、ある少年を死なせてしまった事が有る元刑事の須賀原との邂逅によって、次第に心を開いて行きます。明生に触ると須賀原の目にも死者がさまよっている姿が見えます。彼らは何かを求めてさまよい歩き、自分の事が見える明生に詰め寄ってきます。こわい、こわいよ。事故で損傷した体で何かを訴えて詰め寄ってくるんですから。しかも他の人に言うと頭がおかしいのではないかと疑われるのですからあまりにも不憫。そんな中で彼の事を信じる須賀原の登場は彼にとって希望でした。一緒にさまざま霊の希望を叶えて前向きになって行く2人。そしていつしか須賀原の人生に大きな影を落としている或る事件に2人で向かい合う事になるのでありました。重ね重ね霊は見たくないですね。僕は昔、霊が沢山目撃されているという場所で仕事で一晩を過ごした事があります。霊感が強い人は絶対に帰りたいといいだすという評判の場所だったらしいのですが、何も知らなかったので何も感じずグースカ寝ておりました。翌日何か無かったのかと聞かれましたが何も見ないし聴こえなかったのでよかったです。 >> 続きを読む
2015/09/06 by ありんこ
法月綸太郎
久々の法月綸太郎作品は、交換殺人もの。だがこれが4人で行われたらという前例のないものに仕上がっている。それぞれの事情によって殺したい者がいる人間同士が集まって、交換殺人を行うと画策。それぞれの証としてトランプのエースとジャック、クイーンにキングのカードを1枚づつ持つことに。そして起こる殺人によって、法月警視と綸太郎が思案していく案件に。いかにして交換殺人を見抜くのか。また4人という関係をどうやって知るのか。犯人側との駆け引きでも楽しめるが、このシリーズにしてはライトな中身なのでさらっと読める。 >> 続きを読む
2019/10/09 by オーウェン
BenioffDavid , 田口俊樹
物語は現代から始まります。アメリカ、フロリダで隠居生活をしている著者の祖父母は、ロシアからの移民。祖父の話を孫である著者が聞く、という形をとっています。 第二次世界大戦、ドイツ軍に900日にわたり包囲され、孤立したレニングラード(現・サンクトペテルブルグ)にいた祖父、レフはまだ17歳。ドイツ軍に完全に包囲されているため、物資はないどころか、人びとの生活は凄惨を極めています。 レフはささいな盗みで捕まってしまう。静粛も厳しい時代、レフは刑務所でコーリャという少し年上の青年脱走兵と共に軍の大佐に呼ばれる。 娘が結婚するのでウェディングケーキを作る。そこには卵が必要。卵1ダースを調達してこい、と命令される。 人と人が食べ物をめぐって殺し合い、奪い合う「包囲網」の中でどこに卵なんてものが・・・結局、この若い2人は捨て駒なのです。しかし、配給カードを取り上げられ、雪の中をひたすら卵を探すことになってしまう2人。 戦争の悲惨さを訴えたものはたくさんあるけれど、「卵もってこい」という実にばかばかしい使命に命かけなきゃならな、脱力ものの使命。正義の為でなく、卵。 そして、卵を探してレフとコーリャはあちこちをさまよう羽目になります。そこで経験した様々な悲惨な出来事。 しかし、コーリャとレフの珍道中になっているのは何が起きてもコーリャは、笑いとばし、軽口をたたき、冗談を言い、いざとなると頼りになるからです。 極寒の地でのサバイバル小説とでもいえるのですが、その底に戦争のむなしさをきちんと描いているし、正反対であるはずのコーリャとレフの友情物語でもあります。 救いとなるのは、祖父レフは生き延びて、アメリカで孫に語っているという設定が最初にあるので、レフは生き延びる、という安心の種をまいているところ。そして、小粋なラストの一言。 実際、著者デイヴィド・ベニオフはロシア系ではなく、資料や書籍に頼ってこの物語を書いたと後で書いているのですが、戦争ものを、悲惨なものを、笑い飛ばすだけの力強さ・・・そんなものに勇気づけられる結果となるのです。 >> 続きを読む
2018/06/23 by 夕暮れ
朝井リョウ
自分は何者か何者になりたいのか将来今恋夢友人感情の揺れや、考えや気持ちの表現ひとつひとつに共感得たり、懐かしさや切なさを思いはせました。今までの自分ではない何者になるかそのまま自分のままでいるのか今も何も変わらず同じことをしているのではないか。いろいろと考えさせられる本でした。 >> 続きを読む
2016/01/07 by -water-
太田光
「光」が書く「光」について?短編がいっぱい収録されてます。内容は「SF」である!そして微妙に関連性があるものもあってプロローグ~エピローグのようにまとめてある感じ。上手い感じは...ないですけどね(;´Д`)(amazon解説)地球、そして地球とは別の進化を成し遂げた星の過去と未来に秘められた謎。新たな文明へと踏み出すために動き始めた子供たち。果たして人類の行く末は生か死か? 絡み合うパラレルワールドが紡ぎ出す壮大な物語! 斬新なスタイルで描かれる太田光、渾身の書き下ろし小説。 >> 続きを読む
2018/08/13 by motti
近松門左衛門 , 角田光代
息もつかせぬ、という言葉が思い浮かんだ。ひどく熱を帯びた読書体験となりました。この角田光代の「曽根崎心中」は、著者初の時代小説だ。タイトルからもわかるように、この作品は近松門左衛門の原作を下敷きとしている。いつも著者の新作を読む時には、それが角田光代の小説であるということを、随所で確認するように味わっていくのだけれど、今回はそうではなかったですね。作者が誰であるとか、原作が江戸時代のものであるとか、そうした背景はどこかに置き去りにしたまま、ただ目の前にある物語に魅了され、取り憑かれたようにページを繰っていきました。だからといって、角田光代の小説としての意味が薄れているわけではないのが、やはり凄いところだ。流れるような文章も、繰り返されるフレーズのもたらす独特なリズムも、間違いなく彼女にしか書けないもので、読後に残る充足感は、紛れもなく、彼女の小説に触れた時の感覚だ。ストーリーだけを取り出してみれば、シンプル過ぎるとも思えるほどの恋愛小説なんですね。遊女であるお初と、醤油問屋の手代である徳兵衛が恋に落ちる。結婚を誓い合っていたのだが、友人に裏切られたことで借金を抱え、行く先のなくなった徳兵衛に対し、ともに死ぬことを決意するお初。二人は曽根崎の森で心中することとなる。それでも、このシンプルな物語には、紛れもない生々しさと温度が存在している。実際の事件を下敷きにしているからといった単純な理由とは別だ。鳥の鳴き声も、女たちのたわいない会話も、まるで実際に自分がそこにいて聞いているかのように錯覚させられる。女たちの、くすくすという笑い声が頭の中で響きわたる。とにかく、この小説は何もかも圧倒的だ。生も死も悲しみも嬉しさも、あらゆるものが渦巻いて、静かに遠ざかる。恐ろしく美しい小説だ。その恐ろしさも美しさも、恋そのものなのだ。 >> 続きを読む
2018/11/21 by dreamer
柚木麻子
超サイコーな柚木ワールド!! ドはまり!!女子のツボ完全におさえてる!!後半の日記にあの人が登場してるのがウレシい(^з^)-☆ >> 続きを読む
2013/06/13 by ata-chu
高野和明 , 阪上仁志
主人公・来生夢衣は心理カウンセラーですが、特殊能力を持っています。 何と、他人の夢の中に入っていけるのであります! クライエントを催眠誘導で眠らせた後、自己催眠で自分も眠り、クライエントの夢の中に入って心理的問題の原因を探ることができるのです。 こんなことが可能になれば、カウンセリングが効率的に進みますね。 本書には、4つの事件が収録されています。 第一話で夢衣は、麻生健介刑事のカウンセリングを行います。 そこで親密になった麻生刑事とのつながりから、3つの事件に巻き込まれていくのであります。 物語は、夢衣が出会う4つの事件を中心に、夢衣と麻生刑事との関係・夢衣や麻生刑事の過去の問題などが縦糸となって紡がれています。 事件の真相も面白いのですが、クライエントが見る夢を解釈していく過程が面白いです。 支離滅裂で意味の分からない夢の断片の意味が分かっていくのはカタルシスです。 実際のカウンセリングや夢分析もこんな風に行われているのでしょうか。 第4話は、夢衣の記憶にない父親の過去や、麻生刑事の忘れていた過去の問題に夢衣と麻生刑事の関係の進展など、クライマックスにふさわしい急展開でした。 これで、全て解決されたのでしょうか? まだ何か残っているような気がしますが。 非常に映像向きのテーマであるし、実際に映像的な物語です。 ドラマ化されなかったのでしょうか? 今後も続編は出ないのでしょうか? タイトルが地味だと思います。 「ドリームカウンセラー夢衣の事件簿」シリーズ、というのはどうでしょうか? (どうせ私の言うことだから、聞き流して下さい。) 第4話では、夢衣の父親は、会社の不正の責任を負わされて逮捕されたことが示唆されます。 そのことが、第4話で扱う事件と相似形を持っているのです。 事件に深入りした夢衣が、暴力団の殺し屋チームに捕まって処刑されそうになります。 物語では当然、間一髪で救助されるのですが、現実の社会では、このような幸運が起こるとは限りません。 現実の社会では、悪の組織によって善人が人知れず闇に葬られることも多いのでしょうね。 特に、民主主義体制が崩壊に向かい軍事独裁制に向かいつつある現代日本では、今後そのようなことが増えていくのではないかと、寂しいことをふと思いました。何を読んでも暗い予想に結び付くマイナス思考の私です。 本書では、大矢博子という方が巻末に解説を書かれています。 エンタメ系の文庫本の解説というのは、解説というより筆者の身辺雑記やエッセイのようなのも多く、脱力させられることも多いのですが、本書の解説はなかなか読ませました。 本作品の「解説」が手際よくされた上で、著者・高野和明の他の作品について端的に「解説」されていて、他の作品にも興味を持たされました。 文庫本の解説はこんな風に書いてほしい、という一つのお手本・型だと思います。 http://sfclub.seesaa.net/article/411040326.html >> 続きを読む
2014/12/21 by 荒馬紹介
火坂雅志
豊臣秀吉に仕えた二人の天才軍師、竹中半兵衛と黒田官兵衛の生き様を描いた小説。 「悪くなれ」 目標にしていた竹中半兵衛に言われたこの言葉の意味を、一生を終えるまで考え続けた黒田官兵衛。 答えが出た時に、初めて自分の才能の在り処がわかる。 そこに辿り着くまでの葛藤についつい引き込まれ、調略や裏切りが当たり前の時代に、竹中半兵衛との間に芽生えた絆にも胸が熱くなった。 ラストシーンでの2人のやり取りだけでこの小説を読んだ甲斐があったように思う。 軍師目線での豊臣秀吉や徳川家康の印象も面白く、壮絶な戦国時代の話にもかかわらず、火坂さんの文章は優しいので入り込みやすい。火坂さんの小説は全て読破したいな。 >> 続きを読む
2019/01/30 by NOSE
火坂 雅志
2019/02/07 by NOSE
出版年月 - 2011年12月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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