こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


2014年2月発行の書籍

人気の作品

      ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)

      池井戸 潤

      講談社
      3.9
      いいね!
      •  この物語は野球というスポーツ物であると同時に企業物でもあります。
        池井戸さんはおそらくサラリーマン生活(銀行員)をされていただろう、というリアリティあふれる臨場感あふれる企業の内実とその企業の実業団野球団の行方が交互に描きます。

         中堅所の機械部品メーカー、青島製作所。不況のあおりを受けて、社長はじめ経営陣は
        大変な苦労の連続です。

         そして、不況のせいでスポーツだけでなく企業がスポンサーとなるイベントなども減ってしまいますが、実業団野球部の存続も危ない。

         また、実業団野球もいわば、強ければ企業宣伝になるけれどそこら辺が微妙なところ。アマチュア以上プロ以下。結局、弱ければ企業のお荷物で、経費を考えれば廃部もあり。

         人員削減で仕事がふきだまってしまっているのに、呑気に野球かよ・・という不満の目も絶えずあります。

         もう、全編、崖っぷちの綱渡りの連続で、企業の役員たちも、野球部員たちも、これでもか、これでもか、これでもか!と困難が襲いかかる。
        そのたたみかけが迫力であって、一難去ってまた一難どころか、十難くらいきちゃいます。

         そのリアルさに胸を痛めつつ、共感というよりも、ため息をつく間もなく、それでも野球を続けるんだよ、それでも、会社は存続させるんだよ、とくぐりぬけていくところにはもう、読んでいて、はらはらはらはら・・・・泣いてしまいました。
         
         胸の痛みを感じつつ、やはり、生き延びるサバイバルものの迫力というものがあり、一気に読ませる力はたいしたものです。
        >> 続きを読む

        2018/07/16 by 夕暮れ

    • 他8人がレビュー登録、 32人が本棚登録しています
      人質の朗読会

      小川 洋子

      中央公論新社
      3.7
      いいね!
      • 海外で反政府ゲリラに人質にされた8人の日本人。拉致されている間、それぞれの思い出を書いて朗読する会を始めた。8人の朗読内容が各章で紹介されている。内容そのものよりも、各8人が自分の過去の出来事について向き合い、拉致されるまで他人だった人たちに向かって朗読するという行為。体験したことはないから、本当に想像するしかない。実際に、最後は現地の政府軍兵士が、日本語がわからないのにかかわらず、この朗読会の意義について思いや考えを巡らせ掴もうとしている。設定はショッキングだが、静かな祈りのような雰囲気が漂う。
        (ef177さんのレビューを読んで興味を持って図書館で借りて読みました。)
        >> 続きを読む

        2020/02/19 by かんぞ~

    • 他7人がレビュー登録、 16人が本棚登録しています
      百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

      逢坂 剛

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • ドラマ化で話題をとった逢坂剛の「百舌の夜」を、ドラマは敢えて観ずに原作の方を読了
        この作品はプロローグが三シーンある。

        殺し屋"百舌"が、ある男をつけ狙っているうちに、爆発事故に巻き込まれるシーン。
        新谷和彦という男が、仲間にどこか遠方の崖縁に連れ出され、殺されるシーン。
        正体不明の男が、異国で一東洋人が処刑されるありさまをTV画像で見入っているシーン。

        続いて本筋に入ると、崖から落ちて命はとりとめたものの、記憶を失った新谷が再び登場し、さらに爆発事故に居合わせた妻を失った、警視庁公安部の倉木尚武警部が登場する。

        新谷は、自分の過去を辿りつつ、かつての仲間たちに復讐していき、倉木は爆発事故を仕組んだのが新谷らしいことを聞き込み、彼を追い始めるのだった------。

        つまり、自分の過去を突き止めようとする新谷と、その彼を追う倉木の"二重の追跡劇"が本筋であり、そこに百舌や公安の女刑事などを絡ませ、やがて、そもそもの事の起こりとなった爆発事故=爆弾誤爆事件の真相へと物語を収斂させていく。

        かなり入り組んだプロットなんですね。
        読んでる側からすれば、先読みしたくても見当がつかないうえ、ややこしいプロットに、最初は悪態をつきたくなりましたが、じっくり読み込んでいくうちに、実はこのカットバックの手法を応用した実験的なプロットこそ、この作品の最大の仕掛けなんだと気づいたのです。

        この作品を執筆するにあたり、著者は完成までに三年半も費やしたそうですが、それはプロットの仕掛けに凝ったからだけではないと思う。

        この作品のモチーフに、著者・逢坂剛という作家のテーマでもある、"スペイン内戦"の誘因となった"ファシズムへの警鐘"が込められている点にも、三年半の理由があるだろうし、逢坂剛の小説のもうひとつの作風である"心理分析もの"の趣向を、いかに百舌のキャラクターに活かすか苦心した結果が、三年半とも推察できる。

        >> 続きを読む

        2018/04/18 by dreamer

      • コメント 1件
    • 他5人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      破門 (単行本)

      黒川 博行

      4.0
      いいね! kurobasu
      • 直木賞受賞作!

        読もうと思ったらシリーズものなんですね?
        コレを読むために1作目を取り急ぎ読みました。

        まだ携帯の登場しない頃のオハナシでしたが本作は現代、しかも1作目から時間も経ってない設定であった(;´Д`)
        2作目の「国境」を読もうと思ってたけど図書館で予約してた順番がきてコレを読むことに。
        で、冒頭はその「国境」ネタがでてくるのでやっぱり読んどけばよかった~

        やはり関西の「しゃべくり系」の面白さをハードボイルドに合成した安定の面白さですわ(関西弁が伝染っとるゎ)
        ただ、今回も「そろそろ直木賞をくれといてやろうか」的な印象はあるわなぁ。

        劇中劇じゃないけどVシネマ程度のシリーズとちゃう?

        (amazon解説)
        映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪した詐欺師を追い、邪魔なゴロツキふたりを病院送りにした桑原だったが、なんと相手は本家筋の構成員だった。組同士の込みあいに発展した修羅場で、ついに桑原も進退窮まり、生き残りを賭けた大勝負に出るが―!?疫病神コンビVS詐欺師VS本家筋。予想を裏切る展開の連続で悪党たちがシノギを削る大人気ハードボイルド・シリーズの最高到達点!!
        >> 続きを読む

        2018/09/01 by motti

    • 他4人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      砕かれた鍵 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

      逢坂 剛

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • これはおもしろい。本当に倉木は死んだのか?次作がたのしみです。

        2016/03/17 by rock-man

    • 他4人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      試着室で思い出したら本気の恋だと思う (幻冬舎文庫)

      尾形 真理子

      3.8
      いいね!
      • 『あなたといたい、とひとりで平気、をいったりきたり。』
        『悪い女ほど、清楚な服がよく似合う。』
        『可愛くなりたいって思うのは、ひとりぼっちじゃないってこと。』
        『ドレスコードは、花嫁未満の、わき役以上で。』
        『好きは、片思い。似合うは、両思い。』

        ルミネのキャッチコピーを元に描かれた、アラサー女子たちの短編集。
        恋する女子と、彼女たちに寄り添うセレクトショップの女性店員。
        あるよね、こういう恋。と思える、身近にありそうなお話が描かれています。
        彼女たちの気持ちに共感し、さらさらした文章に心地よさを感じながら読了しました。

        こういうキャッチコピーを考える仕事ってすごいなと思います。
        試着室以外のところで思い出すことの方が多いよ!と、本屋でタイトル見るたびに思ってごめんなさい。

        もう2、3年前に出会えていたら良かったと思った本でした。育児に奮闘している今では、恋の話は遠い昔のようだ。
        >> 続きを読む

        2019/03/17 by あすか

      • コメント 8件
    • 他4人がレビュー登録、 20人が本棚登録しています
      珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

      岡崎 琢磨

      宝島社
      3.0
      いいね!
      • 1回目の感想。2014.4.12
        購入したものを読了。あるきっかけからバリスタのコンテストに参加することになった美星さんがそこで起こった密室の謎を解決するのが今回のあらすじ。前2作とは異なり、人の死なない密室ミステリーになっている。ミステリー部分がメインになるので、今回はあまり楽しむことはできなかった。あと前作で美星さんから「愛の告白」同然のことを言われたのにはぐらかしているアオヤマがけしからん。なぜはぐらかすんじゃ。理由は次以降になるのかな。まあ、次の巻に期待するか。

        2回目の感想 2017.7.21
        再読2回目。バリスタコンテストに参加することになった美星さんが、そこで起こった異物混入による妨害事件の真相を解く話の筋。前2作よりも今回はミステリー色が強い文章になっている。改めて読むとミステリーとして読み応えがあるものに感じられ、前読んだ時は非常に肝心な部分を読み逃していた点を反省した。続きも引き続き読んでいきたい。
        >> 続きを読む

        2017/07/21 by おにけん

    • 他4人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫)

      小手鞠 るい小路 幸也中田 永一宮木 あや子朱野 帰子沢木 まひろ原田 マハ宮下 奈都

      3.5
      いいね! snoopo
      • 中田永一(乙一)の作品が収録されていること、そして本にまつわる話のアンソロジーということで購入。
        しかし、朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」と沢木まひろ「時田風音の受難」以外はすべて『ダ・ヴィンチ』に掲載されたものだった。
        『ダ・ヴィンチ』に掲載される作品は結構クセがあるので苦手だ。
        案の定、この短編集も特徴的というか・・・。


        中田永一「メアリー・スーを殺して」
        おもしろかった。しかし、終盤にかけておもしろさが加速していくような他の乙一の作品と比べると、ややしりすぼみしている。
        あと、主人公の内面の話だと思ってたら外に向き始めたことにもやや違和感があった。
        「メアリー・スー」という理想像は、完全になくしてもいけないのだろうな。

        宮下奈都「旅立ちの日に」
        手紙に書かれた物語と、父からの本当のメッセージの間に飛躍を感じる。

        原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジエ」
        実話が元になっているようだが、小説としての見せ方が中途半端だ。
        ノンフィクションとして書くか、もっと飾り付けるかすればいい。

        小手鞠るい「ページの角の折れた本」
        どうして「あなた」という語りかけ口調なのか。
        ストーリーもなんだかよくわからなかったが、読み返す気にもならない。
        主人公みたいな女の人がとにかく苦手。

        朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」
        夫が情けないのは確かだとは思うが、主人公がすべて正しいような描き方が気に食わない。
        ラストの主人公にキレ方はスカッとしてよかった。

        沢木まひろ「時田風音の受難」
        おもしろい。
        官能小説は読んだことがないが、こういう感じの文章なのだろうか。
        主人公が女性編集者の百山に翻弄されるのと同じように、私も翻弄されていた。
        なおかつ、そうやって振り回されるのが心地良いのもよくわかる。

        小路幸也「ラバーズブック」
        素敵な話だと思う。
        しかし、アメリカっぽさを出しすぎで、押し付けがましい感じがする。

        宮木あや子「校閲ガール」
        校閲ってそんなところまで見てるのか、と勉強になった。
        ただ、やはり苦手な女の人が出てくる。


        全体的に、小説を読むというより、世間話を聞かされるような作品が多い。
        なので、あまり心に残らない。

        強い女の人ばかり出てくるのもひとつの特徴だと思う。
        『ダ・ヴィンチ』が女性向けだからだろう。
        掲載される作品は芸術ではなく商品であり、読んだ女性が快感を得られるようになっている。
        芸能界や海外といったキラキラ感も重要視している。
        そういう作品をうまく集めてくるのは、編集部が優秀でコンセプトが定まっているからだと思う。
        ただ、やはり男性にはうけないだろう。
        私が嫌悪感を抱いてしまうのも、器か小さいということ以上に、仕方ない面が大きいと思う。


        >> 続きを読む

        2015/06/17 by しでのん

      • コメント 2件
    • 他3人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      麒麟の翼

      東野圭吾

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! ybook
      • 前作「新参者」が、各章がそれぞれ独立した短編のような作りになっていて最後に大きな謎が解き明かされるというスタイルで、斬新ではあったけれど、個人的にはリズムがブツ切れになってしまうところが気になったので、今作のずっしりとした長編の作りの方が面白く、飽きずに一気に読んでしまった。ということでこちらは星5つ。映画もよかった。 >> 続きを読む

        2019/07/09 by 室田尚子

      • コメント 1件
    • 他3人がレビュー登録、 33人が本棚登録しています
      幻の翼 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

      逢坂 剛

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • mozuシリーズ第2弾。途中倉木が拉致され美希が助けに入りそこでエッチするか!そして倉木が頭の手術されて普通生きているか!でもおもしろい。 >> 続きを読む

        2016/03/17 by rock-man

      • コメント 2件
    • 他3人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      オービタル・クラウド

      藤井太洋

      4.3
      いいね! Tukiwami

      • 藤井太洋の長編SF小説「オービタル・クラウド」は、ハードな宇宙開発SFのリアリティと波瀾万丈のハリウッド大作映画のスペクタクルを兼ね備えた、天下無双の一大エンターテインメント作品だ。

        時は2020年12月。主人公は、流れ星の予測サイトを運営する男。
        ちょっとした特殊能力を生かし、軌道上にあるデブリの不審な動きをいち早く察知した彼は、世界を揺るがす前代未聞の宇宙テロと闘うことに。

        なにせ、たった6日間の出来事なので、あれよあれよと言う間もない高速展開は、ほとんど笹本祐一の「妖精作戦」の大人版といった感じだ。

        相棒になる女性ITエンジニアが、スーパーハッカーだったり、投資家の大富豪とその娘が史上初の軌道ホテルに試験滞在中だったり、北朝鮮の女性特殊工作員が凄腕だったり、脇役も思いきり派手なのですが、細部がリアルなので嘘っぽく見えない。

        テロの主役となる軌道上の雲(オービタル・クラウド)の正体というガジェットを含め、宇宙SF的に冴えたアィディアも満載だ。
        そして、敵役の大胆にして綿密な計画が徐々に明らかになるあたりのスリルは、さしずめ宇宙版「シャドー81」といった感じなのだ。

        SF小説としてだけではなく、冒険小説としても読みごたえ十分の作品だと思いますね。

        >> 続きを読む

        2019/04/14 by dreamer

    • 他3人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      新宿鮫 長編刑事小説

      大沢在昌

      光文社
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 人気シリーズの第一作というので読んだ。警察小説は、内容が硬いのが多いけど、これは面白いな。30年も前に書かれた小説とは思えない。一気にストーリーが展開していく。キャラクターもユニークだし、読者を飽きさせない。どうなるんだろうと、ハラハラさせる。第二作も読んでみたい。時代小説もいいが、たまにはハードボイルド系のシリーズもいいな。 >> 続きを読む

        2020/04/09 by KameiKoji

    • 他3人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      しない生活 煩悩を静める108のお稽古 (幻冬舎新書)

      小池 龍之介

      幻冬舎
      カテゴリー:法話・説教集
      2.8
      いいね!
      • 最近読んだ本です。
        ときどき出てくる「おやまあ」という言葉で穏やかな気持ちを取り戻しつつ読み切れました。
        喝破する、という言葉が印象に残っています。人とぶつかりそうになったら、ブッダの言葉を思い出してぶつかる理由などないという事にたどり着く事を今後の目標にしていきたいと思いました。
        >> 続きを読む

        2015/05/21 by おつまみ

      • コメント 1件
    • 他3人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      博多豚骨ラーメンズ

      木崎ちあき

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      2.8
      いいね!
      • 野球チームのメンバーがウラでアレコレしてるお話で、話が1章・2章〜などではなく、1回表・1回裏・2回表・2回裏〜という形で進んで行くので、懐かしの「木更津キャッツアイ」を思い出してみたり。
        とはいえ、木更津は【ちょっとビターな唇泥棒】という犯罪とは程遠いメンバーだったけど、博多は【本物の殺し屋】たちなのが、全然違うところ。

        沢山いる殺し屋たちの所属と関係性に初めは戸惑ったけど、気にせず読み進めていっても、ちゃんと判って終われました。
        面白かったー!
        続きも気になります。
        >> 続きを読む

        2019/11/13 by koh

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      金閣寺の燃やし方

      酒井順子

      講談社
      カテゴリー:日本文学
      3.8
      いいね!
      • 小説家って人達はどうして次々と金閣寺を燃やすのだろう?
        本書はその一つの答を提示してくれています。(が、読み終わってみるとメインテーマはそこじゃない気がするのです。)

        水上勉は『五番町夕霧楼』で、三島由紀夫はまさしく『金閣寺』で、金閣寺を燃やした。水上と三島の両作品を、作家の生い立ちまで遡って対峙させて論じた、新しい三島由起夫論の登場か。と思わせておいて、実はきわめて上質な水上勉論になっています。

        水上勉の小説『五番町夕霧楼』とさらに後年執筆の『金閣炎上』は、三島への挑戦であると同時に、実は水上自身が僧職経験者としてひきづりつづけた史実としての金閣寺炎上事件の総括的作品であることを教えてくれます。

        水上勉論としては、素晴らしい、凄い、と絶賛したいものです。
        これを読んでから、『五番町夕霧楼』を読むと味わいが深まるでしょうね。

        でも、物足りない点がいくつかあります。
        (1)三島の『金閣寺』誕生の背景。
        これについては三島自身の金閣寺創作ノートがありますし、やまほど三島論がある中できっと膨大な論考があると思いますが、樸個人としては小林秀雄さんが金閣寺の事件直後に書いた「金閣焼亡」という(小説じゃないよ)論考なんかを三島が読んでヒントにしたのかなと感じています。手元にあったのを読み返してみたんですが、狂人・厭人・狂気などについて語りながら、小林さんは彼の金閣寺放火容疑者(※)と「空しく美しい形を扱っている清君」を似た者として見、「二人とも人生への出口の見つからぬ閉された魂である。」と観ています。
        清君てのは、山下清さんのこと。
         (※)三島は創作ノートの中でいろんなストーリーを模索していたようで、真犯人は別に居る物語も検討していたようです。

        (2)(これは、別の方のレビューにコメントとしても書いたんですが、)
        宗教との関係性でも両人の対比をきちんとしてほしいなと感じました。
        三島は金閣寺では宗教そのものには興味がなかったようですね。でも後年、「暁の寺」執筆のころには仏教心理学の核心ともいうべき唯識にのめり込んでいたと聞きます。つまり、金閣寺のころは(極論すれば)仏教はたまたま材料であっただけですが、次第に禅的なもの、唯識の世界に吸い寄せられていった経緯があります。
        反対に水上さんは出発点が仏教への反撥みたいなところがあったのですから、両人はそれぞれ聖俗の両極から世の中を観ていたのに次第に対極へとシフトしていった。その起点となったのはともに金閣寺放火事件だったということでしょうか。

        もしも、最後まで読んでくれた人がいたら謹んで深謝します。
        本書の感想としては、まず、三島由紀夫は凄い小説家なんだなあと今更ながら感歎し、もう一度『金閣寺』と『五番町夕霧楼』を読ませてくれた著者ならびに、樸にレビューを書きなさいよと下命してくれたお方に感謝です。

        <おまけ>
        水上の『金閣炎上』は完全にノンフィクションであると思います。水上論としては欠かせませんが、小説として見たら、ちっとも面白くないです。
        >> 続きを読む

        2015/10/25 by junyo

      • コメント 2件
    • 他2人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      春、戻る

      瀬尾まいこ

      集英社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 春、戻る。

        タイトルに惹かれた。

        瀬尾さんらしい温かみのある文章で、スイスイと読みながらも、不思議さも感じつつ、最後のオチを想像。

        人は、忘れておきたいことも、たくさん抱えながら生きていく。

        でも、それは、大切な何かを置き忘れたままになるのかもしれない。

        それに気づきながら、でも、避けて通るみたいな。

        人は、いろいろな人に包まれているのだということ。

        だからこそ、明日に向かっていく勇気もでてくる。

        そこが、重要なファクターになっている和菓子のようなものかもしれない。
        >> 続きを読む

        2017/10/17 by けんとまん

    • 他2人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      神様のカルテ

      夏川草介

      小学館
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • シリーズ3作目。新しく本庄病院に赴任してきた女性医師の存在が一止の医者としての考え方を変えるきっかけになる巻。その考えが明らかになるまでの過程が読んでいて良かった。心に残ったのは大学病院へ赴任すると決めた一止の送別会でサシで飲んだ大狸先生の「何があっても医者を続けなさい」の一言。辛いことがあっても何かを続けるという意味が大切だという点で読んでいて心に染みた。上手くまとまりませんが感想はこんなところです。 >> 続きを読む

        2016/12/10 by おにけん

    • 他2人がレビュー登録、 14人が本棚登録しています
      黄昏の岸 暁の天 十二国記 (新潮文庫)

      小野 不由美

      新潮社
      4.2
      いいね!
      • Episode8ようやくここまでやってきました。
        今回は十二国記の総ぜろいです。
        莱(日本)での魔性の子と同じ時、異国(十二国)での泰麒を探すお話。
        やはり私の好きな陽子を頼り、陽子の決意、陽子が動くと各国の王、麒麟が動く。そんな陽子の魅力満載の作品。今まで出てこなかった国もわかりとても面白かった。
        でもこのエンディング18年も待ったなんて・・・続けて読めるなんてラッキーです。
        >> 続きを読む

        2020/02/19 by わくさん

    • 他2人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      ぬるい毒 (新潮文庫)

      本谷 有希子

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」「乱暴と待機」などから辿りついて文字のほう(笑)初めて読んでみました。
        マルチな方のようですが、小説としては「ゆれる」「ディア・ドクター」の西川美和さんなんかよりずっとおもしろい!

        女性視点の一人称がおもしろい。
        たぶんこの女性は見た目にかわいらしいが中身は無さそうな感じなんだろうなと思うのだが、こう考えているとしたら非常におもしろい。
        この小説の作者は鋭才なかたでしょうからこういう小説になりますが、はたしてどうなのか...。
        さしずめ、文章が「ぬるい毒」なんですな。
        なるほど!
        >> 続きを読む

        2018/07/29 by motti

    • 他2人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      カササギたちの四季

      道尾秀介

      光文社
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! Tukiwami
      • リサイクルショップのカササギで働く2人の日常。
        推理をすることに目ざとい華沙々木と、それを肯定するため動く日暮。

        疑問に思う事柄に対し、華沙々木が推理を披露しようとすると、日暮がちょっと待てと時間を取らせて真実を構築するため準備を。
        華沙々木の推理が正しいとさせるのは、すべては菜美のため。

        真実=正しいとは限らない。
        そういうことを見せるドラマであり、あくまでも華沙々木と日暮にとっての真実である。

        冒頭に出てくる強欲なヤクザ和尚が意外と味を出しており、ラストの章には違う顔も見せてくるのが楽しい。
        >> 続きを読む

        2020/03/25 by オーウェン

    • 他2人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています

出版年月 - 2014年2月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本

#9(ナンバーナイン)