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池井戸 潤
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この物語は野球というスポーツ物であると同時に企業物でもあります。池井戸さんはおそらくサラリーマン生活(銀行員)をされていただろう、というリアリティあふれる臨場感あふれる企業の内実とその企業の実業団野球団の行方が交互に描きます。 中堅所の機械部品メーカー、青島製作所。不況のあおりを受けて、社長はじめ経営陣は大変な苦労の連続です。 そして、不況のせいでスポーツだけでなく企業がスポンサーとなるイベントなども減ってしまいますが、実業団野球部の存続も危ない。 また、実業団野球もいわば、強ければ企業宣伝になるけれどそこら辺が微妙なところ。アマチュア以上プロ以下。結局、弱ければ企業のお荷物で、経費を考えれば廃部もあり。 人員削減で仕事がふきだまってしまっているのに、呑気に野球かよ・・という不満の目も絶えずあります。 もう、全編、崖っぷちの綱渡りの連続で、企業の役員たちも、野球部員たちも、これでもか、これでもか、これでもか!と困難が襲いかかる。そのたたみかけが迫力であって、一難去ってまた一難どころか、十難くらいきちゃいます。 そのリアルさに胸を痛めつつ、共感というよりも、ため息をつく間もなく、それでも野球を続けるんだよ、それでも、会社は存続させるんだよ、とくぐりぬけていくところにはもう、読んでいて、はらはらはらはら・・・・泣いてしまいました。 胸の痛みを感じつつ、やはり、生き延びるサバイバルものの迫力というものがあり、一気に読ませる力はたいしたものです。 >> 続きを読む
2018/07/16 by 夕暮れ
小川 洋子
海外で反政府ゲリラに人質にされた8人の日本人。拉致されている間、それぞれの思い出を書いて朗読する会を始めた。8人の朗読内容が各章で紹介されている。内容そのものよりも、各8人が自分の過去の出来事について向き合い、拉致されるまで他人だった人たちに向かって朗読するという行為。体験したことはないから、本当に想像するしかない。実際に、最後は現地の政府軍兵士が、日本語がわからないのにかかわらず、この朗読会の意義について思いや考えを巡らせ掴もうとしている。設定はショッキングだが、静かな祈りのような雰囲気が漂う。(ef177さんのレビューを読んで興味を持って図書館で借りて読みました。) >> 続きを読む
2020/02/19 by かんぞ~
逢坂 剛
ドラマ化で話題をとった逢坂剛の「百舌の夜」を、ドラマは敢えて観ずに原作の方を読了。この作品はプロローグが三シーンある。殺し屋"百舌"が、ある男をつけ狙っているうちに、爆発事故に巻き込まれるシーン。新谷和彦という男が、仲間にどこか遠方の崖縁に連れ出され、殺されるシーン。正体不明の男が、異国で一東洋人が処刑されるありさまをTV画像で見入っているシーン。続いて本筋に入ると、崖から落ちて命はとりとめたものの、記憶を失った新谷が再び登場し、さらに爆発事故に居合わせた妻を失った、警視庁公安部の倉木尚武警部が登場する。新谷は、自分の過去を辿りつつ、かつての仲間たちに復讐していき、倉木は爆発事故を仕組んだのが新谷らしいことを聞き込み、彼を追い始めるのだった------。つまり、自分の過去を突き止めようとする新谷と、その彼を追う倉木の"二重の追跡劇"が本筋であり、そこに百舌や公安の女刑事などを絡ませ、やがて、そもそもの事の起こりとなった爆発事故=爆弾誤爆事件の真相へと物語を収斂させていく。かなり入り組んだプロットなんですね。読んでる側からすれば、先読みしたくても見当がつかないうえ、ややこしいプロットに、最初は悪態をつきたくなりましたが、じっくり読み込んでいくうちに、実はこのカットバックの手法を応用した実験的なプロットこそ、この作品の最大の仕掛けなんだと気づいたのです。この作品を執筆するにあたり、著者は完成までに三年半も費やしたそうですが、それはプロットの仕掛けに凝ったからだけではないと思う。この作品のモチーフに、著者・逢坂剛という作家のテーマでもある、"スペイン内戦"の誘因となった"ファシズムへの警鐘"が込められている点にも、三年半の理由があるだろうし、逢坂剛の小説のもうひとつの作風である"心理分析もの"の趣向を、いかに百舌のキャラクターに活かすか苦心した結果が、三年半とも推察できる。 >> 続きを読む
2018/04/18 by dreamer
黒川 博行
直木賞受賞作!読もうと思ったらシリーズものなんですね?コレを読むために1作目を取り急ぎ読みました。まだ携帯の登場しない頃のオハナシでしたが本作は現代、しかも1作目から時間も経ってない設定であった(;´Д`)2作目の「国境」を読もうと思ってたけど図書館で予約してた順番がきてコレを読むことに。で、冒頭はその「国境」ネタがでてくるのでやっぱり読んどけばよかった~やはり関西の「しゃべくり系」の面白さをハードボイルドに合成した安定の面白さですわ(関西弁が伝染っとるゎ)ただ、今回も「そろそろ直木賞をくれといてやろうか」的な印象はあるわなぁ。劇中劇じゃないけどVシネマ程度のシリーズとちゃう?(amazon解説)映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪した詐欺師を追い、邪魔なゴロツキふたりを病院送りにした桑原だったが、なんと相手は本家筋の構成員だった。組同士の込みあいに発展した修羅場で、ついに桑原も進退窮まり、生き残りを賭けた大勝負に出るが―!?疫病神コンビVS詐欺師VS本家筋。予想を裏切る展開の連続で悪党たちがシノギを削る大人気ハードボイルド・シリーズの最高到達点!! >> 続きを読む
2018/09/01 by motti
これはおもしろい。本当に倉木は死んだのか?次作がたのしみです。
2016/03/17 by rock-man
藤井太洋
【4万機のオービタル・クラウド(軌道上の雲)を大気圏に叩き落せ!】 いやあ、面白かった! SFとしても高水準であるだけではなく、サスペンスものとしても十分に読ませる大変すばらしい作品でした。 最初に異変に気付いたのは、金に飽かせてセーシェルの小島に高性能私立天文台を作っちゃった天文マニアのオジーでした。 中国が打ち上げた宇宙ステーション『天宮2』が切り離した二段目のロケットの軌道がおかしい! ジョーク大好きなオジーは、「これは軌道上から質量を持った物体を投射する『神の杖』だ」というでっち上げの記事をネット上の天文サイトに投稿したのでした。 『神の杖』というのはB級SF映画に登場した軌道兵器なので、こんなものはすぐにジョークだと分かるだろうと踏んでのことでした。 この異変に気付いた者がもう一人いました。 日本人で、流れ星などが地球に落下する日時場所を予想してupしている『メテオ・ニュース』を個人で運営している木村和海(カズミ)と、彼をサポートしている天才的ITエンジニアの沼田明利(アカリ)でした。 役目を終えて切り離されたロケットだというのに、加速、上昇している。 あり得ない……。 実は切り離されたロケットを動かしていたのは北朝鮮が打ち上げたテザー宇宙機だったのです。 北朝鮮にテザーを開発する能力は無かったのですが、元JAXAの研究員でテザー研究を進めていた白石をヘッドハンティングし、イランの科学者の理論をもとに実現させた極めてローコストで推進剤もいらない小型宇宙機テザーを実用化させていたのです。 大体その本体はスマホの部品でまかなえちゃうんですよ。 それを北朝鮮から度々発射するミサイルに積み込んでせっせと大量に軌道上に打ち上げていたのでした。 白石らは、オジーがジョークででっち上げた『神の杖』を利用することにし、巧妙な工作を仕掛けたところ、北米航空宇宙防衛軍(NORAD)がこれに食いついたのです。 不審な動きをしているロケットが万一『神の杖』であるならば撃墜しなければならない! しかし、CIAのクリスとブルースは、持ち前の調査力を活かして和海の分析を知り、こちらが本命であると見抜き、北朝鮮の工作員に追われていた和海らに接触しました。 さてもう一つ。 今しも民間宇宙船が国際宇宙ステーションISSにドッキングするというプロジェクトが進行中でした(民間宇宙船とISSのドッキングは現実に成功しましたね)。 現在、ドッキング前のミッションとして、軌道ホテルが展開されているところです。 この軌道ホテルのままISSにドッキングしようという計画でした。 今や4万機ものテザーを自由に操っている白石は、ありもしない『神の杖』がこの軌道ホテルまたはISSを狙っているように見せかけるため、二段目のロケットをテザーではじきながら射程らしく見える位置に誘導し始めたのです。 二段目のロケットを取り囲んでいるテザーは、まるで軌道上の雲のように見えるではないですか。 もはや待っていることはできないと判断したNORADは、二段目のロケットを撃墜するミッションを発動してしまったのです。 しかし、これは完全な陽動であり、白石らの真の狙いは、4万機のテザーを使い、低軌道にある人工衛星を次々と破壊、墜落させ、そのデブリで軌道を封鎖してしまうというものでした。 大国が人工衛星を失い、次の衛星を打ち上げられずにいる間に、技術力、資金力に劣る北朝鮮やその友好国であるイランなどが追い付こうという作戦だったのです。 日本の政治家や官僚によりJAXAを追い出された白石は、自由に自分の能力を発揮できるこれらの国でやりたいことを思う存分やるためにこの作戦に乗ったのでした。 和海らはこの陰謀を見抜くことができるのか? そして軌道上に展開している4万機ものテザーを排除することは可能なのか? 本作に登場するテザーその他に関する理論は、私にも十分理解することはできませんでしたが、なんかそれらしいぞ~というリアルさは十分に伝わってきました。 SFとしては十分に楽しめるレベルの仕上がりだと思います。 その他の理系的描写も同様に大変リアルであり、まったく安っぽさを感じさせない高品質なものに感じました。 北朝鮮の陰謀をくじくという面ではサスペンス、アクション的要素もふんだんにあるのですが、それもそつなく書き切っており、エンタメ的にも大変楽しめる作品になっています。 アマチュアである和海や明利がおっそろしく優秀(過ぎる)きらいはありますが、特に鼻につくということもなく、これはこれでと割り切って読めました。 大変よくできているSFで、日本SF大賞を受賞したのも納得の一冊です。 とにかく面白いから読んでみて!読了時間メーター□□□ 普通(1~2日あれば読める) >> 続きを読む
2022/02/22 by ef177
尾形 真理子
『あなたといたい、とひとりで平気、をいったりきたり。』『悪い女ほど、清楚な服がよく似合う。』『可愛くなりたいって思うのは、ひとりぼっちじゃないってこと。』『ドレスコードは、花嫁未満の、わき役以上で。』『好きは、片思い。似合うは、両思い。』ルミネのキャッチコピーを元に描かれた、アラサー女子たちの短編集。恋する女子と、彼女たちに寄り添うセレクトショップの女性店員。あるよね、こういう恋。と思える、身近にありそうなお話が描かれています。彼女たちの気持ちに共感し、さらさらした文章に心地よさを感じながら読了しました。こういうキャッチコピーを考える仕事ってすごいなと思います。試着室以外のところで思い出すことの方が多いよ!と、本屋でタイトル見るたびに思ってごめんなさい。もう2、3年前に出会えていたら良かったと思った本でした。育児に奮闘している今では、恋の話は遠い昔のようだ。 >> 続きを読む
2019/03/17 by あすか
岡崎 琢磨
1回目の感想。2014.4.12購入したものを読了。あるきっかけからバリスタのコンテストに参加することになった美星さんがそこで起こった密室の謎を解決するのが今回のあらすじ。前2作とは異なり、人の死なない密室ミステリーになっている。ミステリー部分がメインになるので、今回はあまり楽しむことはできなかった。あと前作で美星さんから「愛の告白」同然のことを言われたのにはぐらかしているアオヤマがけしからん。なぜはぐらかすんじゃ。理由は次以降になるのかな。まあ、次の巻に期待するか。2回目の感想 2017.7.21再読2回目。バリスタコンテストに参加することになった美星さんが、そこで起こった異物混入による妨害事件の真相を解く話の筋。前2作よりも今回はミステリー色が強い文章になっている。改めて読むとミステリーとして読み応えがあるものに感じられ、前読んだ時は非常に肝心な部分を読み逃していた点を反省した。続きも引き続き読んでいきたい。 >> 続きを読む
2017/07/21 by おにけん
小手鞠 るい小路 幸也中田 永一宮木 あや子朱野 帰子沢木 まひろ原田 マハ宮下 奈都
中田永一(乙一)の作品が収録されていること、そして本にまつわる話のアンソロジーということで購入。しかし、朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」と沢木まひろ「時田風音の受難」以外はすべて『ダ・ヴィンチ』に掲載されたものだった。『ダ・ヴィンチ』に掲載される作品は結構クセがあるので苦手だ。案の定、この短編集も特徴的というか・・・。中田永一「メアリー・スーを殺して」おもしろかった。しかし、終盤にかけておもしろさが加速していくような他の乙一の作品と比べると、ややしりすぼみしている。あと、主人公の内面の話だと思ってたら外に向き始めたことにもやや違和感があった。「メアリー・スー」という理想像は、完全になくしてもいけないのだろうな。宮下奈都「旅立ちの日に」手紙に書かれた物語と、父からの本当のメッセージの間に飛躍を感じる。原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジエ」実話が元になっているようだが、小説としての見せ方が中途半端だ。ノンフィクションとして書くか、もっと飾り付けるかすればいい。小手鞠るい「ページの角の折れた本」どうして「あなた」という語りかけ口調なのか。ストーリーもなんだかよくわからなかったが、読み返す気にもならない。主人公みたいな女の人がとにかく苦手。朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」夫が情けないのは確かだとは思うが、主人公がすべて正しいような描き方が気に食わない。ラストの主人公にキレ方はスカッとしてよかった。沢木まひろ「時田風音の受難」おもしろい。官能小説は読んだことがないが、こういう感じの文章なのだろうか。主人公が女性編集者の百山に翻弄されるのと同じように、私も翻弄されていた。なおかつ、そうやって振り回されるのが心地良いのもよくわかる。小路幸也「ラバーズブック」素敵な話だと思う。しかし、アメリカっぽさを出しすぎで、押し付けがましい感じがする。宮木あや子「校閲ガール」校閲ってそんなところまで見てるのか、と勉強になった。ただ、やはり苦手な女の人が出てくる。全体的に、小説を読むというより、世間話を聞かされるような作品が多い。なので、あまり心に残らない。強い女の人ばかり出てくるのもひとつの特徴だと思う。『ダ・ヴィンチ』が女性向けだからだろう。掲載される作品は芸術ではなく商品であり、読んだ女性が快感を得られるようになっている。芸能界や海外といったキラキラ感も重要視している。そういう作品をうまく集めてくるのは、編集部が優秀でコンセプトが定まっているからだと思う。ただ、やはり男性にはうけないだろう。私が嫌悪感を抱いてしまうのも、器か小さいということ以上に、仕方ない面が大きいと思う。 >> 続きを読む
2015/06/17 by しでのん
mozuシリーズ第2弾。途中倉木が拉致され美希が助けに入りそこでエッチするか!そして倉木が頭の手術されて普通生きているか!でもおもしろい。 >> 続きを読む
夏川草介
一止が本庄病院を去り、新しい世界を切り開いていく決意が描かれています。きっかけは、北海道から赴任してきた女性医師・小幡からの言葉。彼女自身の覚悟が突き刺さり、過酷な現場をこなす自分の在り方について、改めて考えていきます。東西さんの過去、新加入の小幡先生の過去、正解のない大手術。変わらない「二十四時間、三百六十五日対応」の勤務体制。ますます壮絶な医療現場となっています。「栗原君には失望したのよ」と告げられた言葉に対し、「医師としての知識や技術。その不足を少しでも補いたい」という結論を得た一止は、迷いながらも前を向きます。今作は、医師としての強さをより感じさせてくれました。壮絶な日々を送る一止に、安らぎの場所を作って待っているハルの心遣いがいじらしい。御嶽があるから、妻がいるからこんな激務でも日々患者さんと向き合えているのだと感じます。ユニークなキャラクターの多い本庄病院を去るのは、読んでいる方も寂しくなってきます。東西さんとか進藤先生の出番減るのかな…。そのあたりに少し不安を感じながらも、新しい生き方を選択した一止の次の出会いを楽しみにしたいと思います。しかしこんなに忙しいのに、飲み会もしているその体力が信じられない。若さ、でしょうか。 >> 続きを読む
2021/07/08 by あすか
大沢在昌
人気シリーズの第一作というので読んだ。警察小説は、内容が硬いのが多いけど、これは面白いな。30年も前に書かれた小説とは思えない。一気にストーリーが展開していく。キャラクターもユニークだし、読者を飽きさせない。どうなるんだろうと、ハラハラさせる。第二作も読んでみたい。時代小説もいいが、たまにはハードボイルド系のシリーズもいいな。 >> 続きを読む
2020/04/09 by KameiKoji
恩田陸
夢の映像を記録した「夢札」、それを解析する「夢判断」という職業。その職業に就いている主人公の浩章は、視界にありえない女性の姿を見つけます。十年以上前に死んだはずの、古藤結衣子。日本で初めて予知夢を見ていると認められた彼女と、各地の小学校で起こる謎の集団白昼夢。事件に関連性はあるのか。評価が難しい作品でした。ラストの清々しさを感じるほどのぶった切りは、皆さんどう思われたのでしょうか。普段なら「謎を明らかにし、きれいに作品を終えてほしい」派に属する私ですが、この作品に至っては…読了後も考えさせられています。夢判断ができるようになった影響で、夢と現実の境界線は世界的になくなりつつあるのか。古藤結衣子とのラブストーリーだったからあの場面で終わったのか。すべては浩章の夢札酔いなのか。どこまでが夢で、どこまでが現実か。恩田さんの筆力のすさまじさを感じました。読んでいるこっちが夢札酔いしそうでした。また古藤結衣子への感情は、浩章に奥さんがいて、家庭があってという設定もあり、複雑さが増していましたね。しかし、自分の夢まで解析されるって、怖いと思いませんか。誰も入ってこない自分だけのものが、他人から見れてしまうようになるなんて。寝ているときまでストレスを感じそうです…。dreamerさんのレビューのおかげで出会えた本です。ありがとうございましたm(__)m >> 続きを読む
2020/11/01 by あすか
木崎ちあき
野球チームのメンバーがウラでアレコレしてるお話で、話が1章・2章〜などではなく、1回表・1回裏・2回表・2回裏〜という形で進んで行くので、懐かしの「木更津キャッツアイ」を思い出してみたり。とはいえ、木更津は【ちょっとビターな唇泥棒】という犯罪とは程遠いメンバーだったけど、博多は【本物の殺し屋】たちなのが、全然違うところ。沢山いる殺し屋たちの所属と関係性に初めは戸惑ったけど、気にせず読み進めていっても、ちゃんと判って終われました。面白かったー!続きも気になります。 >> 続きを読む
2019/11/13 by koh
酒井順子
小説家って人達はどうして次々と金閣寺を燃やすのだろう?本書はその一つの答を提示してくれています。(が、読み終わってみるとメインテーマはそこじゃない気がするのです。)水上勉は『五番町夕霧楼』で、三島由紀夫はまさしく『金閣寺』で、金閣寺を燃やした。水上と三島の両作品を、作家の生い立ちまで遡って対峙させて論じた、新しい三島由起夫論の登場か。と思わせておいて、実はきわめて上質な水上勉論になっています。水上勉の小説『五番町夕霧楼』とさらに後年執筆の『金閣炎上』は、三島への挑戦であると同時に、実は水上自身が僧職経験者としてひきづりつづけた史実としての金閣寺炎上事件の総括的作品であることを教えてくれます。水上勉論としては、素晴らしい、凄い、と絶賛したいものです。これを読んでから、『五番町夕霧楼』を読むと味わいが深まるでしょうね。でも、物足りない点がいくつかあります。(1)三島の『金閣寺』誕生の背景。これについては三島自身の金閣寺創作ノートがありますし、やまほど三島論がある中できっと膨大な論考があると思いますが、樸個人としては小林秀雄さんが金閣寺の事件直後に書いた「金閣焼亡」という(小説じゃないよ)論考なんかを三島が読んでヒントにしたのかなと感じています。手元にあったのを読み返してみたんですが、狂人・厭人・狂気などについて語りながら、小林さんは彼の金閣寺放火容疑者(※)と「空しく美しい形を扱っている清君」を似た者として見、「二人とも人生への出口の見つからぬ閉された魂である。」と観ています。清君てのは、山下清さんのこと。 (※)三島は創作ノートの中でいろんなストーリーを模索していたようで、真犯人は別に居る物語も検討していたようです。(2)(これは、別の方のレビューにコメントとしても書いたんですが、)宗教との関係性でも両人の対比をきちんとしてほしいなと感じました。三島は金閣寺では宗教そのものには興味がなかったようですね。でも後年、「暁の寺」執筆のころには仏教心理学の核心ともいうべき唯識にのめり込んでいたと聞きます。つまり、金閣寺のころは(極論すれば)仏教はたまたま材料であっただけですが、次第に禅的なもの、唯識の世界に吸い寄せられていった経緯があります。反対に水上さんは出発点が仏教への反撥みたいなところがあったのですから、両人はそれぞれ聖俗の両極から世の中を観ていたのに次第に対極へとシフトしていった。その起点となったのはともに金閣寺放火事件だったということでしょうか。もしも、最後まで読んでくれた人がいたら謹んで深謝します。本書の感想としては、まず、三島由紀夫は凄い小説家なんだなあと今更ながら感歎し、もう一度『金閣寺』と『五番町夕霧楼』を読ませてくれた著者ならびに、樸にレビューを書きなさいよと下命してくれたお方に感謝です。<おまけ>水上の『金閣炎上』は完全にノンフィクションであると思います。水上論としては欠かせませんが、小説として見たら、ちっとも面白くないです。 >> 続きを読む
2015/10/25 by junyo
東野圭吾
前作「新参者」が、各章がそれぞれ独立した短編のような作りになっていて最後に大きな謎が解き明かされるというスタイルで、斬新ではあったけれど、個人的にはリズムがブツ切れになってしまうところが気になったので、今作のずっしりとした長編の作りの方が面白く、飽きずに一気に読んでしまった。ということでこちらは星5つ。映画もよかった。 >> 続きを読む
2019/07/09 by 室田尚子
瀬尾まいこ
春、戻る。タイトルに惹かれた。瀬尾さんらしい温かみのある文章で、スイスイと読みながらも、不思議さも感じつつ、最後のオチを想像。人は、忘れておきたいことも、たくさん抱えながら生きていく。でも、それは、大切な何かを置き忘れたままになるのかもしれない。それに気づきながら、でも、避けて通るみたいな。人は、いろいろな人に包まれているのだということ。だからこそ、明日に向かっていく勇気もでてくる。そこが、重要なファクターになっている和菓子のようなものかもしれない。 >> 続きを読む
2017/10/17 by けんとまん
小野 不由美
Episode8ようやくここまでやってきました。今回は十二国記の勢揃いです。蓬莱(日本)での魔性の子と同じ時、異国(十二国)での泰麒を探すお話。やはり私の好きな陽子を頼り、陽子の決意、陽子が動くと各国の王、麒麟が動く。そんな陽子の魅力満載の作品。今まで出てこなかった国もわかりとても面白かった。でもこのエンディング18年も待ったなんて・・・続けて読めるなんてラッキーです。 >> 続きを読む
2020/02/19 by わくさん
本谷 有希子
映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」「乱暴と待機」などから辿りついて文字のほう(笑)初めて読んでみました。マルチな方のようですが、小説としては「ゆれる」「ディア・ドクター」の西川美和さんなんかよりずっとおもしろい!女性視点の一人称がおもしろい。たぶんこの女性は見た目にかわいらしいが中身は無さそうな感じなんだろうなと思うのだが、こう考えているとしたら非常におもしろい。この小説の作者は鋭才なかたでしょうからこういう小説になりますが、はたしてどうなのか...。さしずめ、文章が「ぬるい毒」なんですな。なるほど! >> 続きを読む
2018/07/29 by motti
道尾秀介
リサイクルショップのカササギで働く2人の日常。推理をすることに目ざとい華沙々木と、それを肯定するため動く日暮。疑問に思う事柄に対し、華沙々木が推理を披露しようとすると、日暮がちょっと待てと時間を取らせて真実を構築するため準備を。華沙々木の推理が正しいとさせるのは、すべては菜美のため。真実=正しいとは限らない。そういうことを見せるドラマであり、あくまでも華沙々木と日暮にとっての真実である。冒頭に出てくる強欲なヤクザ和尚が意外と味を出しており、ラストの章には違う顔も見せてくるのが楽しい。 >> 続きを読む
2020/03/25 by オーウェン
出版年月 - 2014年2月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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