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2016年8月発行の書籍

人気の作品

      罪の声

      塩田 武士

      3.9
      いいね! ooitee
      • テーラーを営む俊也は、自宅から幼い頃の自分の声が録音されたテープを見つけた。…それは、当時世間を騒がせた事件に使われた音声だった。

        物語はこの俊也と、未解決事件特集のため駆り出された新聞記者の阿久津の視点から描かれる。

        2人の視点から事件の概要が明らかになっていく。
        構成としてはありがちかもだが、ミステリとして充分面白かった。

        文章も面白く、説明が続いて疲れてくるころに風景の美しさだったり、人物の心情などうまく挟んであった。たまにフッと笑ってしまうような文章も。

        俊也が家族を守りつつも前に進んでいく姿や、やる気のなかった阿久津が自らこの事件の本質を考察していく姿には好感が持てる。

        難点をあげるとするなら、過去の事件を追うストーリー的に仕方ないかもしれないが、色んな人物の名前が出てくるが、会話文などがなくキャラが掴めないため覚えられないことかな。

        自分の頭が悪いだけだけど、しょっちゅう「この人誰だっけ!?」と頁を戻した。特に本を読む期間が開いてしまったらもうちんぷんかんぷんだった。
        あまり好きではないけど、関係図があれば楽しく読めそう。

        そして本書は日本で実際に起こった「森永グリコ事件」をもとに書いたフィクションらしい。
        恥ずかしながらその事件の事は知らず、題材があったことも知らず読んでいた。

        その事件でも子供の音声を犯行に使用したらしい。

        本書のテーマの1つであるだろう、子供が事件に利用されるという事、がうまく表現できていたと思う。

        森永グリコ事件で利用された子供は今何をしているのだろう。

        俊也みたいに何も知らずに普通の生活を送っているのか、事件が大きな障害となり凄惨な生活を送っているのか…。

        子どもがいる身としてはなかなか堪える描写もあった。

        そして装丁。よくできてるけど、子供が俊也のケースを考えると骸骨は…。
        うーん。なんか後味悪いとこがちょいちょいあるなぁ。
        大人って案外自分勝手だよなぁ。

        そういやコリンは結局日本に来たのかしら。エピローグぐらいで出てきてほしかったな(笑)

        映画化されたら映えそうだなーと思ったらされるみたい。
        キャストは…うん。イメージと違う。
        >> 続きを読む

        2019/07/26 by 豚の確認

      • コメント 2件
    • 他13人がレビュー登録、 25人が本棚登録しています
      危険なビーナス

      東野 圭吾

      2.9
      いいね!
      • できすぎる楓と牡蠣を食べる場面
        牡蠣は嫌いと言う明人を思いながら、魅惑的な女性が生牡蠣を食べる
        疑念も混じり、妖しく印象的な場面
        正直言って伯朗のタイプとは関わると至極面倒だ
        伯朗が周りを面倒に感じるように
        周り(特に女性性)も面倒に感じているように思える
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        2020/07/11 by kotori

    • 他5人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      望み

      雫井 脩介

      4.1
      いいね! ooitee
      • 雫井修介の「望み」は、二人の子供とともに暮らしていた、建築デザイナーと校正者の夫婦が主人公。

        ある日、高校生の息子が消息を絶ち、続いて息子の友人が殺害されたことを知らされる。
        果たして、息子は犯人なのか、それとも事件に巻き込まれて殺害されたのか?

        いくら待っても、息子と連絡が取れず、犯人ではないかという無責任な噂が、世間にどんどん拡散する中、息子の無実を信じ、彼は既に死んでいると主張する夫と、たとえ犯人であっても生きていることを望む妻は、対立を深めていく。

        それぞれの思いは、親心に基づくものであると同時に、世間体や今後の生活への不安なども入り混じっており、どちらの考え方にも筋が通ったところと、打算と頑迷さがある。

        読み進めるうちに、自分の子供が、被害者と加害者のどちらがましかという、究極の二者択一を迫られる気分になる恐ろしい小説だ。

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        2020/07/12 by dreamer

    • 他3人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      神様の裏の顔 (角川文庫)

      藤崎 翔

      3.4
      いいね!
      • 神様のように尊敬されていた元教師の坪井誠造が死んだ。
        その葬式の場に娘や元教え子に同僚教師などが揃う。
        だが会話をしていくうちに、教師の裏の顔が見えてくる。

        各人の独白で始まっていき、その後に全員が集まっていきディスカッション形式になっていく。

        深刻めいたものになるかと思ったが、意外にもユーモアテイストになっており、テンポよく進んでいくから飽きずに最後まで見れる。
        語呂合わせの件とかは元お笑い芸人という作者の持ち味だろう。

        ただし解決したように見せてまだページが余っているので、予測できるのが惜しいところ。
        でも構成は悪くないし、神様が誰かということを最後に明かすのでスッキリできる。
        >> 続きを読む

        2020/09/04 by オーウェン

    • 他3人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      大人のための読書の全技術 (中経の文庫)

      齋藤 孝

      4.3
      いいね!
      • 2019年27冊目。速読と精読、どちらも大切だし、読む本のタイプによって、読み方を切り替えていくという点は目からうろこが落ちる思いだった。後は読書の重要性を繰り返し説いている。その点は非常に同意したいと思ったが、所々に入る自分が書いた本の宣伝をするという点は浅ましいかなとも思った。その点は脇に置いといて、素直にこの中で進められた本は自分の知識を増やすうえでいずれ眼を通していきたいなと思った。感想はこんなところです。

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        2019/03/26 by おにけん

    • 他3人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      殺人出産 (講談社文庫)

      村田 沙耶香

      3.8
      いいね!
      • 生きることはきれいごとで済まされないこともあるから少しはクレイジーな面もあるのは致し方ないとは思うけど異常すぎるとついていけないな。

        村田さんの文章は簡潔で読みやすいのが好きだけど今回の内容はぶっ飛びすぎ。でも結婚の考え方はその時代や男女の人権の違いによって色々変わる。母の時代と私の時もかなり違ってる。なので今が当たり前のことが理解されないときが訪れるかも。でも10人産んだら一人誰かを殺していいなんて法律は制度化されそうにないけど。

        この小説は「少子化対策特別賞」をもらってるのね。なぜか皮肉な気がする。
        >> 続きを読む

        2019/07/02 by miko

      • コメント 2件
    • 他3人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      九十歳。何がめでたい

      佐藤 愛子

      3.9
      いいね!
      • 「歳はとりたくないやね…」
        と、この一言に尽きるかも


        正直、面白いとは全く思えなかったんだけど、もう少し歳を重ねてから読むと、全く違って見えるんだろうなあ。
        >> 続きを読む

        2018/06/02 by koh

    • 他3人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      静かな炎天 (文春文庫)

      若竹 七海

      3.8
      いいね!
      • 若竹七海の「静かな炎天」は、不運にしてタフな探偵・葉村晶シリーズの短篇集。

        彼女が偶然居合わせた、交通事故の現場から消えたハンドバッグ、三十五年前に失踪した、人気作家をめぐる謎など、ヴァラエティ豊かな六つの物語が愉しめる。

        ミステリ専門書店や菓子など、コージー・ミステリ的な道具立てを取り揃えながらも、事件の真相も、探偵による調査もシビアで全く容赦がないという、まさに若竹七海らしさ全開状態の短篇集だ。

        葉村晶の四十肩の件を初めとする生活感も、主人公の造型のリアリティと魅力の演出として秀逸だ。

        この本の収録作は、どれも高水準をキープしているが、中でも、主人公が引き受けた調査が珍しくどれもこれも、とんとん拍子に解決していく表題作の「静かな炎天」が、コミカルさと謎解きの意外性が両立していて、頭一つ抜けた出来だと思う。

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        2020/06/13 by dreamer

    • 他3人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      「言葉にできる」は武器になる。

      梅田 悟司

      3.0
      いいね!
      • なるほど~の連続。

        嬉しかったのは、いくつか実践していることがあったこと。

        時間をおいてから、再度、見直してみる。

        あとは、推敲のしかたも少し。

        これは、キャッチコピーだけでなく、プレゼン資料や、文章全般にも通ずるものがある。

        これは、いい本だ。
        >> 続きを読む

        2018/04/15 by けんとまん

    • 他3人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      君にさよならを言わない 2 (宝島社文庫)

      七月 隆文

      3.8
      いいね!
      • 主人公は色々とこの世に未練のある幽霊を助けている点(なぜかすべて女性だが)は善行を積んでいると思うが、自分のことに対しては非常に朴念仁で残念。特に義理の妹の柚に対する態度は「豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ!!」と怒鳴りたくなるぐらい酷い。ただ、死んだ幼馴染が生まれ変わると聞いたときには、少し反省した態度が見られていいのかなとも思った。続きを読みたいとも思うが、続きがなさそうなのが残念。感想はこんなところです。

        >> 続きを読む

        2017/12/25 by おにけん

    • 他3人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      〆切本

      江戸川乱歩夏目漱石星新一藤子不二雄Ⓐ村上春樹野坂昭如など全90人

      3.4
      いいね!
      • 【みんな苦労しているんですね】
         大分前に図書館にリクエストしたのですが、大人気のようで、ようやく順番が回って来ました。
         内容はタイトルの通り、〆切にフォーカスした大変ユニークな本です。
         多くの作家による〆切を巡る、悶絶、阿鼻叫喚のエッセイ等集になります。
         いや、実に多くの作家さんが苦労されていることが手に取るように伝わってきます。

         思うに、芸術作品のうち、〆切が一番一般的に存在しているのは文筆業かもしれませんね。
         それは、定期的に出版、発行される雑誌、新聞などの存在、単行本や文庫本も出版スケジュールというようなものがあるのでしょうし、商業ベースに乗せて広げようとする以上、どうしようもないことなのでしょう。

         絵画、彫刻、音楽などの芸術分野も、商業性が強い場合(商品のパッケージデザイン、イベントのモニュメント、CMソングやコンスタントに新曲をリリースしなければならないアイドル等の楽曲)には〆切が存在するのだろうと想像はするのですが、芸術性が高いというか、商業ベースから離れれば離れるほど〆切は緩やかになり、あるいは存在しなくなるのかなとも思われます(極端な話、ピカソの制作には〆切は無かったのでしょう)。
         文筆業も基本的には同じことなのでしょうけれど、でも、絵画や音楽は、制作者が作ったそのものがオリジナルになり、場合によってはそのままの形で市場に出せることもあるのに対して、小説等はどうしても印刷して製本してというステップを経なければならないため、〆切はキツクなるようにも思われます。

         〆切が必要な理由もよくよく分かるのですが、他方で、創作活動、芸術なのですから、いくら期限を切られようとも、できない時はできないとも思ってしまうのですよねぇ(事務仕事とは違いますからねぇ)。

         作家のみなさん、〆切には大変苦労されているようですが、多くの方が言うには、〆切を守った方が編集者が助かることは間違いないけれど、編集者もマゾ的なところがあって、〆切を過ぎてギリギリのところで原稿をゲットした方がうれしがっている節があるとか、〆切を守って渡された原稿よりも〆切を過ぎてようやく出てきた原稿の方が内容が高く評価される傾向がある(それはギリギリまで頑張って書いたと思われるから)などという指摘もありました。
         こうなると律儀に〆切を守っている方がバカらしくなってもきます。

         もちろん、本書にも(少数派ではありますが)〆切をきっちり守るという作家さんも登場します。
         それは、自分は小心者だからとか、早めに片づけていかないと落ち着かないとかそういう理由があるようです。
         〆切を守る方は、夏休みの宿題なんかも最初にパーッと片づけてしまうタイプの方が多いのでしょうね。
         〆切を過ぎてしまう作家さんも、多くの方は申し訳なく思いながら期限を徒過しているわけなのですが……(とは言え、中には〆切が来るまで筆を取らないなんていう猛者もいらっしゃるようですが)。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2020/04/01 by ef177

    • 他3人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      死神もたまには間違えるものです。 (新潮文庫nex)

      榎田 ユウリ

      4.0
      いいね!
      • シリーズ第2弾。第1弾を読んでいなくても問題はなかった。
        この作者のBLや妖奇庵シリーズが面白いので本作にも期待していたが、いまひとつかなという気がしたまま読んだ。死神が何を間違えるのか知りたかったので、どんでん返しはさすがに面白く、最後にあるオチもなかなかブラックなユーモアだと思うが、なにしろ死神の台詞が軽すぎる。死に対する尊厳をもう少し感じさせてほしかったなと思う。
        まぁ、この作者もたまにはハズレるものです。
        >> 続きを読む

        2017/11/05 by Kira

    • 他2人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      何様

      朝井 リョウ

      3.8
      いいね!
      • 何様。朝井リョウ先生の著書。短編集なので読みやすくて、朝井リョウ先生の作品を読んだことのない初心者の方にもおすすめ。でも、何者を読んでから何様を読んだほうがより楽しさ倍増かも。 >> 続きを読む

        2018/06/29 by 香菜子

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      よっつ屋根の下

      大崎 梢

      4.0
      いいね! Moffy
      •  結局一緒に住んでいるだけで、家族はやっぱり他人。
         育った背景も、経験していることも、大事に思っていることも全部違う。

         一つのトラブルが引き起こすそれぞれの思いと苦しみも、全くと言って良い程バラバラだ。
         なかなか歩み寄れない。

         私の家も結構複雑なもので、長いこと家族のことを恨んできた。
         が、この一冊を読みながら色々考えさせられた。
         特に四人それぞれの視点で書かれているところが興味深かった。
         立場異なるだけで、見える世界はなんて違うんだろうと。

         そう考えると、なんだか家族のことも許せそうな気がした。
        >> 続きを読む

        2020/06/14 by Moffy

    • 他2人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      あきない世傳金と銀 2(早瀬篇) (ハルキ文庫 た 19-16 時代小説文庫)

      高田 郁

      4.2
      いいね!
      • 「あきない世傳2」夢中になって読んでいます!

        高田郁「みをつくし料理帖」が以前ドラマ化しましたが、「あきない世傳」もドラマ化してほしい!  

        「知恵は、何もないところから生まれしまへん。知識、いう蓄えがあってこそ、絞り出せるんが知恵出すのや。商いの知恵だけやない、生き抜くためのどんな知恵もそないして生まれる、と私は思うてます。せやさかい、盛大に知識を身に付けなはれ」
        「どないな時にかて、笑いなはれ、笑ろうて勝ちに行きなはれ」
        といった治兵衛の助言が後押しし、幸は少しずつ、商人として前進していきます。

        2巻では、幸が五鈴屋4代目徳兵衛の後添いになり、だめな亭主を毒づけるくらいになるのですが、その後、事態が急転。また、2巻の最後の章では、わくわく、キュンキュン、ほっこりする出来事が起こります。

        3巻では、幸は商才を発揮していくのでは。楽しみです。
        >> 続きを読む

        2020/04/16 by うらら

    • 他2人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      俗・偽恋愛小説家

      森 晶麿

      4.3
      いいね!
      • 実は森晶麿さんの作品に最初にはまったきっかけとなった偽恋愛小説家。
        夢宮先生の魅力にすっかりやられてしまったなかでの満を持して続編です。
        夢見がちな少女思考が抜けない私はおとぎ話がテーマの世界観が特に気に入っています。ただおとぎ話のロマンスのような描き方ではなく夢宮先生がおとぎ話のダークさ現実を紐解いていくところ、すごくよいです。今作も一生懸命追いかけている月子が可愛い。前回は夢宮先生が二人の間で揺れているようにもみえたのに今回は月子がというのが夢宮先生の色んな一面が見れて楽しかったです。おとぎ話ミステリー、続いてくれたら嬉しいな。
        >> 続きを読む

        2018/01/28 by kaoru-yuzu

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)

      クレア・ノース

      4.0
      いいね!
      • 【記憶を保ったまま何度も生まれ変わる人生って……】
         主人公のハリーは『死なない男』でした。
         いえ、死にはするのです。
         するのですが、多くの場合は(若い内に事故に遭うなどしなければ)、毎回同じように、同じくらい老齢になると癌にかかって死んでしまうのです。
        しかし、また、前回生まれたのと同じ年月日、同じ場所で、同じ状況下で生まれ直してしまうのです。
         しかも、これまでの人生の記憶を保ったままで。

         本作を読む以前、今の人生の記憶を保ったままもう一度生まれ変わって人生をやり直すことができたら、それは良いかもしれないなぁと考えたことがありました。
         でも、本作を読んだら、果たしてそれは良い人生と言えるのだろうか?と考えてしまいましたよ。

         2度目の生まれ変わりの時、1度目の人生の記憶を持ってはいるのですが、それが本当に自分の1度目の人生のことなのか納得するのは難しいことなのだろうと思います。
         確かに、将来起きることは分かるのです。
         しかし、自分が前の人生の記憶を保ったまま生まれ変わったのだということはにわかには信じることは困難でしょう。
         それが、3度、4度と繰り返される内に、どうやら自分は記憶を保ったまま何度も生まれ変わる運命にあるのだということをようやく納得できるのだろうと思います。

         細かい記憶もよく保たれているのです。
         ですから、賭の結果や株の値動きなども前世で関心を持っていさえすれば、次の人生でも記憶に残されていますので、金を儲けることは容易いことでした。
         あるいは、手痛い失恋を繰り返すようなことは避けられるでしょうし、裕福な良い人生を送ることもできるようになるでしょう。
         しかし、やはり年老いると(数年の違いはあるにしても)癌にかかって死んでいくのです。

         でもまた同じように生まれ直してしまいますので、その意味では、ハリーは決して死ぬことができないのです。
         死ぬこと自体に対する恐怖は薄れていきました(だって、また生まれ直すのですから)。
         むしろ恐ろしいのは、自分の考えで自由に生きることができない幼少期でした。
         親等に言われるに従って生きなければならず、自分の判断で選べることは限られてしまいます。
         賭や株取引をして金を稼ごうにも幼少期にはそんなことはさせてもらえません。
         生まれた時代や環境によっては、結構辛い幼少期を耐えなければならないでしょう。
         前世の記憶を持っているだけにそれは辛い数年間になります。

         ハリーは、何度目かの人生を繰り返しているうちに、自分と同じように生まれ変わる人間が、この世界には少数ながら存在することを知ります(彼らはカーラチャクラと呼ばれていました)。
         また、カーラチャクラらにハリーの存在が知られて以降は、ハリーの苦しい幼少期に親元から引き離し、必要な経済的援助を与え、自立できるようにしてくれるという支援を受けられるようになりました。

         このように何度も生まれ変わる者たちは、同様の運命にある者を助けるために、長い年月を費やして『クロノス・クラブ』という組織を作り、極秘裏に世界中にその組織を広げていました。
         その目的は、同様の運命にある者をなるべく早く自立できるように支援することと、この世界を変えてしまおうとする者を阻止することにありました。

         クロノス・クラブの者たちは、リレー方式を使って過去の知識を未来に送り、未来の先端知識や技術を過去に伝えることができました。
        例えば、Aがあともうわずかで亡くなるという時期に、自分より後に生まれたまだ若いBに、Bが生まれていなかった頃の知識を伝えたとします。
         この過去の知識は、Bが亡くなる時にBよりさらに若いCに伝えられ……これを繰り返すことにより、時間はかかりますが、過去の正しい知識が、未来においては失われてしまったような知識が、確実に未来に送られるのです。

         この逆も可能ですよね。
         Aが死を迎える時、Aよりも若く、既に1度は生まれ変わっているBがAの死後に経験した知識や技術をAに伝えることができます。
         生まれ変わったAは、Bからもたらされた未知の知識や技術を、自分より年上のCに伝えれば、Cが自分の時代に生まれ変わった時に未来の知識を持って生まれ変わることが可能になるわけです。

         これを悪用する者が過去にいました。
         未来の知識を利用して歴史を変えようとしたのです。
         劇的に歴史が変わってしまえば、将来生まれるはずのカーラチャクラが生まれなくなるおそれがありますので、クロノス・クラブの者たちはそのような歴史改変を阻止しようとするのです。
         歴史は決して変えてはならないというのがクロノス・クラブの掟でした。
         そのために、クロノス・クラブは、歴史を変えようとするカーラチャクラに死を与えたのです。

         カーラチャクラは実質的には死ぬことができないのではないのか?
         一応はそうなのですが、それなりの死、そして絶対的な死を与える方法はありました。
         一つは、死ぬ前に様々な方法(電気ショックや薬物を使用します)によって記憶を破壊してしまうことです。
         そうしてしまえば、次の生まれ変わりの時にはそれより前に生きた記憶を持たずに生まれ変わることになりますので、カーラチャクラの記憶をリセットすることができます。
         もう一つの方法は根絶してしまうことです。
         つまり、カーラチャクラが生まれ出る前、まだ母親の胎内にいる間に殺害してしまうのです。
         そうすれば、そのカーラチャクラは二度とこの世界に生まれ出ることはできなくなります。
         歴史を変えようとしたカーラチャクラに対して、クロノス・クラブはこのような死を与えることにより歴史を守ってきたのでした。

         しかし、再び、ヴィンセントという男が未来技術をどんどん前倒しにして過去に実現させることを始めてしまったのです。
         ヴィンセントの目的は、自分が生きられる時代に、この世界の過去から未来までを理解できる量子ミラーという技術を確立することでした。
         そのために、ヴィンセントはどんどん未来の技術や知識を過去に送り続けていたのです。

         ヴィンセントは、自分の目的がクロノス・クラブに知られれば目的を阻止されてしまうと理解しましたので、逆にクロノス・クラブを壊滅させる行動に出ました。
         ヴィンセントの何度もの生まれ直しを通じて、クロノス・クラブの主要メンバーに次々と攻撃をしかけ、その記憶を失わせあるいは根絶してしまったのです。
         それを繰り返すことにより、世界中のクロノス・クラブはすっかり衰退し、地下に潜ってしまったのです。

         何度目かの人生を生きていたハリーは、ある時、まだ若いカーラチャクラから、「未来において人類は滅亡する。それは避けられないけれど、その滅亡が早まっている。」というメッセージを、例のリレー方式により受け取りました。
         これがきっかけで、ヴィンセントが未来技術や知識をどんどん過去に送り、爆発的に技術革新を進めていることを知り、その野望を阻止することを決意します。
         果たして、ハリーはヴィンセントの野望を阻止することができるのか?というのが本作の物語になります。

         ところで、歴史を変えるようなことをした場合、この世界はどうなるのでしょう?
         この作品では、パラレル・ワールドを使って説明しています。
         例えば、ヴィンセントが未来技術や知識を前倒しして過去に実現させた場合、ヴィンセントが生きている世界はもとの世界から分岐しパラレルワールドに進み、その世界で歴史が変わるとされます。
         そして、ヴィンセントが死ぬと、ヴィンセントはもとの世界に生まれ直すので、大本の世界だけは歴史は変わらないということになるのですが、ヴィンセントが生まれ変わる度に歴史を変え続ければ(しかも、過去の何度もの人生の知識を全て持って生まれ変わりますのでその改変速度は加速度的に速まっていきます)、毎回歴史が書き換えられたパラレルワールドに分岐してしまうということになるわけですね。

         非常に巧妙な設定を使ったSFだと思います。
         何度も同じ人生を繰り返さなければならないという『リセット』物の作品はいくつも書かれていますが、本作はそういう中でもかなり凝った作品になっていると思います。
         上手いこと書いたなぁと感心した作品でした。
        >> 続きを読む

        2019/09/17 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      深泥丘奇談・続々 (幽BOOKS)

      綾辻 行人

      3.5
      いいね!
      • 終始、奇妙な世界観だった、この「深泥丘奇談」シリーズ。

        第三巻で、完結編を迎えました。

        始まった頃からずっと奇妙で、分からず仕舞いな話だった、この小説ですが、今読み終わると、そこがこの小説の魅力だったんだなと思います。

        どの話も奇妙だったけれど、私個人的には。
        一番奇妙だったのは、作中に登場する【深泥丘病院】の「石倉医師」と「咲谷看護師」だったんじゃないかって思います。
        >> 続きを読む

        2019/07/01 by ゆずの

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      校閲ガール (角川文庫)

      宮木 あや子

      3.7
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      • 匿名

        主人公のサバサバ感がたまらない。本当はファッション雑誌の編集になりたかったけれど、全然関係のない校閲部署に配属になり、でもそこでも一生懸命に仕事をする。オシャレも手を抜かない。女子の憧れだと思う。 >> 続きを読む

        2018/04/19 by 匿名

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      悪いものが、来ませんように (角川文庫)

      芦沢 央

      3.5
      いいね!
      • 紗英と奈津子は同じように育児に悩む同士。
        紗英は夫の処遇に悩んでおり、ある日その夫が失踪し後に殺害されていたことが分かる。

        その殺人の前後を描いており、犯人が誰かという答えはすぐに出る。
        描くのはこの紗英と奈津子の結びつき。

        仕掛けは後半ぐらいで分かるのだが、問題はそれを素直に納得できるかだ。
        あの人をそんな風にという思いが一向に拭えないままラストに突入。

        ラストに判明する真相こそ、この仕掛けの重要さに意味がある。
        だからこそ仕掛けを補足させる納得が欲しい。
        普通はそんなこと絶対にないのだから。
        >> 続きを読む

        2020/08/19 by オーウェン

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出版年月 - 2016年8月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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