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2018年1月発行の書籍

人気の作品

      口笛の上手な白雪姫

      小川 洋子

      3.0
      いいね!
      • 【とてもナイーヴな幻想短編集】
         小川洋子さんらしい、幻想的なテイストの短編を集めた一冊です。
         どの作品もナイーヴな味わいがありました。
         それでは、いつものように、収録作品からいくつかご紹介します。

        〇 かわいそうなこと
         主人公の少年は、ひそかにかわいそうなものをノートにつけ続けています。
         それは、例えばシロナガスクジラ、例えばツチブタ。
         何故それらがかわいそうなのかは、少年なりの理由があるのです。
         共感してしまったのは、雑誌に載っていた芸能人たちの集合写真です。
         写真の下に、映っている人たちのことが、「左から主演の〇〇、監督の〇〇……」などと紹介されているのですが、その中に「一人置いて共演の〇〇」という記載があったのです。
         その「置かれて」しまった人もかわいそうなもののノートに記されました。

        〇 仮名の作家
         ある作家を熱狂的に愛し、その作品をすべて暗記しているという一ファンの女性の物語です。
         偏執的で怖いのです、この女性。
         作家である小川さんは、こういうファンのことをどう思われているのかな、と、ちょっと考えてしまいました。
         あるいは、この作品は作家の立場として書かれたのではなく、小川さん自身が(ここまではしないにしても)ある作家に対してこのような熱心なファンなのだという、ファンの立場から書かれた作品なのだろうかとも考えてしまいました。

        〇 盲腸線の秘密
         いつ廃線になってもおかしくないような鉄道路線がありました。
         ある駅から盲腸のように、ちょっとだけ突き出している路線。
         主人公の子供とその曽祖父は、この路線が廃止されないように毎日乗り続けるのです。
         ちょうど真ん中の駅の近くに住んでいたことから、真ん中の駅から乗り、本線側に接続する一駅先まで行き、そこから折り返して2つ先の盲腸線の端まで行ってまた戻って来て真ん中の駅で降りるのです。
         いつも、二人はこの路程をたどる際に、秘密警察に追われているというような空想をしながら列車に乗っていました。
         そんな二人があるときウサギを見つけるのです。

        〇 口笛の上手な白雪姫
         この白雪姫は、公衆浴場の裏手にある小屋にいつからか住み着いているおばあさんなのです。
         おばあさんは、いつも公衆浴場の脱衣場の片隅にひっそり座っています。
         知っている人は知っており、また感謝もされているおばあさんなのです。
         お母さんが子供を連れて公衆浴場にやって来ると、まず子供の身体を洗ってあげます。
         その後、自分の身体を洗うわけですが、子供を何とか押さえながら洗わなければならないので大変です。
         ゆっくり湯船につかろうとしても、やはり子供のことがあるのでそうそうのんびりもできません。
         そんな時、脱衣場にいる白雪姫のおばあさんに子供を預けることができるのです。
         何も言わなくても、おばあさんは実に上手に子供の面倒を見てくれました。
         おばあさんは、小さな子供には口笛を吹いてあげているようなのですが、その音は誰にも聞こえませんでした。
         そうそう。
         この公衆浴場にも壁に絵が描かれていました。
         大変達者な森の絵で、人によっては森の中のキノコが大きくなっているなどとも言うのです。

         大変小川さんらしい小品だと思います。
         それぞれの作品は、「だから何なんだ?」と言われてしまうとそれまでなのですが、こういう作品の雰囲気を楽しめる方には気に入っていただけるのではないかと思います。


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        2020/10/02 by ef177

    • 他4人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      日本再興戦略 (NewsPicks Book)

      落合 陽一

      3.8
      いいね!
      • 面白い!
        今、起こっていること。
        これまでに起きたこと。
        これから起きるであろうことを踏まえて、新しい視点が盛り込まれている。
        同感する点が多い。
        コミュニテイという言葉が、印象に残る。
        それが一つの答えなのかもしれない。
        それと、技術進歩を踏まえた考え方。
        例えば、自動翻訳が素晴らしいレベルにあるので、英語ができなくても、きちんとつぃた日本語が大事。
        言葉を横流しする英語はすたれる。
        伝えるもの自体が重要・・・など。
        それと、本来の意味の百姓。
        ここから、イノベーションが始まる。
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        2020/03/04 by けんとまん

    • 他3人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      風神の手

      道尾秀介

      3.8
      いいね!
      • 偶然が繋がっていく物語。
        それはほんの些細な出来事から。

        3章に分けられた物語の中で、1章は秘められた恋愛模様。
        掛け違いの末に訪れる結末。

        2章は同学年の友情。
        あだ名同士の二人が挑む勇気。

        3章は死を前にして告白した女性。
        それは前2章の人間たちが関わること。

        というわけですべての章は繋がっていたという解釈だが、冒頭の万引きや、火振り漁など、あらゆる事柄が伏線になっている。

        風は誰にでも当たるがその頻度は変わる。
        出会いの妙も同じことであると。
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        2018/10/01 by オーウェン

    • 他2人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      ミステリと言う勿れ 1 (フラワーコミックスアルファ)

      田村 由美

      4.8
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      • 久しぶりに月9ドラマを毎週見ている。同時進行で原作漫画も読み進め。

        ドラマは作品の世界観を基に違った解釈を見せながら視聴者を物語に惹き込んでいくゆく。ストーリの展開の緩急も良い。
        菅田将暉さんの整くんもとてもチャーミングである。
        絶妙なタイミングで流れるKing Gnuの主題歌もゾクゾクっとくる。

        もちろん原作がきっちりと読み応えのある本格ミステリしているからこそ出来る芸当なわけで。ドラマがもうすぐ終わるのはさみしい限りではあるが引き続き漫画を愉しみながら第2期やスペシャル放送を期待したいです。

        カレーが食べたい。
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        2022/03/14 by ybook

    • 他2人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      【2018年・第16回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 オーパーツ 死を招く至宝 (『このミス』大賞シリーズ)

      蒼井 碧

      2.7
      いいね!
      • 赤の他人なのに瓜二つ、を利用した設定。タイトルや表紙からの印象とは違って軽いノリだった。弟と同じ顔の相手にこんなつきあい方できるかな…と古城の姉に違和感。弟を溺愛してるのに構ってもらえないとかならともかく、ひどい扱いしてるのにそうそう別人として扱えるものかしら。
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        2019/06/02 by tomolib

    • 他2人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      笑う数学

      日本お笑い数学協会

      4.0
      いいね! Yoshinobu
      • なかなかのセンスの集合体。
        まさしく笑えるもの、クスッとくるもの、難解なもの・・いろいろ。

        それでも、数学の面白さが伝わってくる。
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        2020/03/22 by けんとまん

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      刑事の怒り

      薬丸 岳

      4.3
      いいね!
      • 薬丸岳の「刑事の怒り」は、「刑事のまなざし」に始まる夏目信人シリーズの第四弾。

        護が必要な、入院中の娘を抱える刑事・夏目が出会う事件の数々と、その裏に隠された、やるせない人間模様が読みどころだ。

        この作品の特徴は、社会的弱者と呼ばれる人々の問題を取り上げたミステリであるということだ。

        亡くなった母親の遺体を、スーツケースにしまって何年も過ごしていた女性、レイプ被害者、強盗致傷で逮捕された外国人労働者、寝たきりで人工呼吸器が手放せない息子を介護する親-------。

        今、我々の隣にある事件、と言ってもいい。
        現代社会に歴然と存在する、けれど当事者以外にとっては他人事の事件。
        いつ、自分が当事者になるかもしれないのに。

        夏目に入院中の娘がいるという設定は、彼を通して読者の当事者意識を喚起しているからに他ならない。

        個々の事件は解決しても、社会が孕む問題は解決しない。その無力感。
        けれど、それでも、誰も救えないよりは、一人救える方を選ぶ信念が物語に宿っている。

        読者に勇気を与えるシリーズだと思う。

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        2021/04/19 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      田園発 港行き自転車 上 (集英社文庫)

      宮本 輝

      4.0
      いいね!
      • なぜか、タイトルに惹かれて上下巻読了。東京、京都、富山の三都を舞台に暮らすなんの接点もなさせうな家族像が、点と点を結ぶように繋がってゆく物語構成が面白かった。

        ややスピリチュアルな運命の連鎖劇にも思えたが、人生の壁、転機、出会いは計算しがたいものであり、ささやかで慎ましい庶民の人生も小さなミステリーの繋がりと思えば、日常は全て奇跡なのかもしれない。

        それにしても特出すべきは、物語を彩る三都市のロケーション。まるで活字旅行といえるテイストで、風土、伝統、街の空気感まで旅情豊かに伝わってきた。

        滑川〜魚津〜黒部〜入善と海辺を結ぶ北陸本線沿いの街並みと自然美を読むだけで富山県へ行ってみたくなる。きっとキーワードとなる黒部川に架かる愛本橋も観光客が増えただろうな。

        人も木々や生き物と同じで、適合できる生活環境や仕事を栄養にして生きていくようにできているような気がした。
        >> 続きを読む

        2020/01/12 by まきたろう

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      田園発 港行き自転車 下 (集英社文庫)

      宮本 輝

      4.0
      いいね!
      • なぜか、タイトルに惹かれて上下巻読了。東京、京都、富山の三都を舞台に暮らすなんの接点もなさせうな家族像が、点と点を結ぶように繋がってゆく物語構成が面白かった。

        ややスピリチュアルな運命の連鎖劇にも思えたが、人生の壁、転機、出会いは計算しがたいものであり、ささやかで慎ましい庶民の人生も小さなミステリーの繋がりと思えば、日常は全て奇跡なのかもしれない。

        それにしても特出すべきは、物語を彩る三都市のロケーション。まるで活字旅行といえるテイストで、風土、伝統、街の空気感まで旅情豊かに伝わってきた。

        滑川〜魚津〜黒部〜入善と海辺を結ぶ北陸本線沿いの街並みと自然美を読むだけで富山県へ行ってみたくなる。きっとキーワードとなる黒部川に架かる愛本橋も観光客が増えただろうな。

        人も木々や生き物と同じで、適合できる生活環境や仕事を栄養にして生きていくようにできているような気がした。
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        2020/01/12 by まきたろう

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      ダーリンの東京散歩: 歩く世界

      小栗 左多里トニー ラズロ

      3.0
      いいね!
      • 安心して読めて楽しい。この感じはイラストエッセイだからこそ。九九のリズムとか、龍とドラゴンとかなるほどと思う小ネタもたくさん。 >> 続きを読む

        2018/04/26 by tomolib

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      鳩の撃退法 下 (小学館文庫)

      佐藤 正午

      4.0
      いいね! KEMURINO
      • 題名からは全く想像できない内容の小説だった。時間軸がくるくる変わって、語りの主体者が徐々に筆者に移り変わっていきつつ、TMI(多過ぎる情報)を避け、じれったさと混乱を意図的に引き起こしす構成で引き込まれてしまう。
        偽札事件・一家3人消失事件・本通り裏の謎の人物・小説家崩れのデリヘル運転手・元女優で夫以外の二人目の子を身籠る魅力的な女、等々が入り混じって、何だ分からない混沌の世界を見せてくれる。妙に面白かったし、再度読み返してしまいそうな本だった。
        >> 続きを読む

        2020/06/03 by aka1965

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      私の恋人 (新潮文庫)

      上田 岳弘

      3.0
      いいね!
      • Wikipediaの純文学で例示されていた作品。2回の生まれ変わりを記憶しているとか、運命の恋人がとか、とっつきにくい話が展開されて44ページでドロップ。 >> 続きを読む

        2020/03/28 by 和田久生

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      春待ち雑貨店 ぷらんたん

      岡崎 琢磨

      3.5
      いいね!
      • 長らく、本棚に寝かしてあった小説を、こうして読み終わる事が出来ました(笑)

        京都にあるハンドメイド雑貨店が、この小説の舞台です。

        店主「北川巴瑠」は、お店に来る常連さんや、初めての人でも大切にする、心優しい人。

        だから、ひとりひとりに寄り添って、接している。

        その為、お客さんの微かな変化にも気付く事が出来、お客さんが抱える謎を、解きほぐしていきます。

        そんな、この小説を読んでいたら、私も本当に「このお店に行きたい」と思えました。

        小説に感情移入するのは、「お店に行きたい」というだけではなく。

        それぞれの話で出てくる登場人物に、すごく私の気持ちまでのめり込んでしまいました。

        ネタバレになるので、詳しくは書きませんが。
        「あいつ、最低だなぁ」とか。
        「はやく、現実を見た方がいいのに」とか。
        「そんな、そこまで悩む必要あるのかなぁ」とか。

        いろんな感情を持ちながら、この小説を読みました。
        >> 続きを読む

        2018/03/27 by ゆずの

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      僕と彼女の左手 (単行本)

      辻堂 ゆめ

      3.3
      いいね!
      • 時田が大学で出会ったさやこ。
        彼女に大学入学の勉強を教えることになったが、さやこは右腕の機能がなく、左手のみでピアノを弾くことができた。

        青春恋愛ミステリとあったが、ミステリはあくまでも補助的なもの。
        恋愛ものとして2人が付き合っていく中で、お互いの隠していたことが明かされていく構成。

        冒頭の事件をいかにして超えていくかに焦点が当たる。

        後味も非常に爽やかだが、あまりにもストレートすぎるかも。
        >> 続きを読む

        2021/03/24 by オーウェン

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る (中公文庫)

      喜多 喜久

      4.0
      いいね!
      • 特殊清掃のバイトにより現場の死臭が食べ物の香りに感じられるようになった特殊能力が面白い。清掃の仕事をするには楽でも、副作用としてその食べ物から悪臭を感じてしまい、食べられるものが減っていくのは気の毒。科学者とともに警察の協力もするが、やっていることは警察犬と同じなので、捜査協力の部分よりは科学的な見解の部分が面白い。他人には悪臭に思えても彼にとってはいい匂いとなる成分の研究とか。 >> 続きを読む

        2018/05/06 by tomolib

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      護られなかった者たちへ

      中山 七里

      4.0
      いいね!
      • 生活保護の国の予算を申請者数が上回るために、切り捨てられる弱者。
        本当に必要な人たちすべてには回らない生活保護費。
        受け取らなくてもよい人も受け取っている現実。
        国からのお達しにより、どこかで線引きをして件数を抑えなくてはならない。

        2件の殺人事件が福祉保健事務所というつながりを持ち、怨恨の線を追ううちに、一人の男性が容疑者として浮かび上がる。

        あっと驚く真犯人。
        そういうことだったの?!という結末でした。

        保健福祉事務所等、実際に生活保護課のような部署に在籍する人には、実際こんなことは起こらない、と思えるようですが、貧困にあえぐ人たちのやるせなさはきっと実情もこうなんだろうな、とひしひしと伝わってきました。
        前科者、貧困者、生活保護を受けている人を色眼鏡で見てしまう人がいるのは、色んな意味で問題ですね。自分も気を付けなくては。
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        2020/04/23 by taiaka45

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF)

      アンディ・ウィアー

      3.5
      いいね!
      • 【SFではあるのですが、むしろハラハラ、ドキドキの冒険活劇的作品】
         図書館の貸し出しリクエストの順番がようやく回ってきて借りることができました(とはいえ、まだ下巻の順番は回ってこないのですが)。
         『火星の人』が人気を博しただけあって、本作も人気がありますね~。

         さて、物語の方ですが、月にアルテミスと呼ばれる5つのドームからなる月面都市が作られている未来が舞台になっています。
         主人公のジャズという女性は、6歳の時に地球からアルテミスに移住して来て、以来、月でずっと生活してきた女性。
         現在は、ポーターという荷物の配達係をして生計を立てていますが、もっと収入の良いEVA(屋外活動)をする仕事を得ようと考え、その試験を受け続けているものの未だ合格できずにいるという境遇です。

         最初、ジャズというのはなんだかダメダメな女性なんじゃないかという印象を受けたのですが、物語が進んで行くにつれて、これは頭の回転の速い、結構デキる女なんじゃないかと印象が変わってきました。
         ただ、詰めが甘いというか、結構大胆(無謀?)というか、必ずしも規範意識が高くないというか、運が悪いというか、そんな巡り合わせから、人生うまく行っていないタイプと思われます。

         ジャズは、今は安宿で甘んじて貧乏生活をしているのですが、将来の生活の向上を強く願い、ポーターの収入だけではそんな境遇から抜け出せないこともあって、裏で密輸の仕事をしているのです。
         でも、彼女が密輸に手を出しているということはアルテミスの治安維持を担当している男性には薄々感づかれてはいるんですけれどね。

         そんなジャズなのですが、密輸業のお得意様から巨額の報酬と引き換えにある仕事を請け負ってしまいます。
         お得意様は富豪なのですが、事業の拡大を狙って、ある月面企業の乗っ取り的買収を考えています。
         そのために、その企業が月面で鉱石採取に使っている4台の採取車の破壊をジャズに持ち掛けてきたのです。

         もちろんそんなのは完全な違法行為であり、もし犯行が発覚したらジャズは地球に強制送還されてしまいます。
         子供の頃から月で生活してきたジャズですので、重力の重い地球での生活などまともにできるはずもなく、そんな事態だけは避けたいところ。
         だったらそんな違法行為に手を出さなければ良いものを、金に目がくらんで引き受けてしまったのです。

         さて、ではどうやって破壊工作をするのか?
         ジャズは綿密な計画を立て、遂に実行に及ぶのですが……。
         それがきっかけでジャズは抜き差しならない事態に陥ってしまい、月での逃亡生活を送らざるを得ない状況に追い込まれていくというのが上巻までのストーリーになります。

         『火星の人』もそうでしたが、作者は本質的にユーモラスな作風を得意とするのでしょう。
         本作でも、ジャズの行動が愉快に描かれていきます。
         ジャズがやっていることは実は結構エグいのですが、ユーモアたっぷりに描かれるため、それほどジャズを憎めず、むしろ彼女の行動が楽しくさえ思えてきます。
         翻訳も上手いのか、ジャズの一人称の語りが飄々としていて、可笑しかったりもするのです。
         この文体だけでも結構楽しめてしまいます。

         さて、ご紹介した通り、本作は紛れもなくSFであり、月での生活やジャズの行動の科学的な面などもちゃんと書き込まれているのですが、全体の雰囲気としてはそれほどSFを意識しなくても読めてしまう楽しいお話という感じを強く受けました。
         比較的ライトでユーモラスな小説、あるいはピカレスク系の犯罪小説と捉えて読んでも十分イケるのではないかと感じるのです。
         少なくとも、「SFってなんだか難しそう」と考えて敬遠している方でも、簡単に楽しめてしまう作品になっているのではないでしょうか。

        下巻でのジャズの様子も気になるところではありますが、図書館の順番が回って来るまでしばし我慢です。
         ところで、この本、結構薄いですし(上巻279ページ)、中身の詰め込み度もハヤカワSF文庫なのでそれほど文字がぎっしり詰まっているというわけでもありません。
         十分に一冊にまとめられそうに思うのですが、何で上下二分冊にしたんですかねぇ。
         最近の若い読者に読了の達成感を味わってもらうためにやっているなんていう話を聞いたこともあるのですが、そういうことをする必要はあんまり無いように思えるのですけれど。


        読了時間メーター
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        2020/09/26 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      アルテミス(下) (ハヤカワ文庫SF)

      アンディ・ウィアー

      3.5
      いいね!
      • 【26歳の小娘の活躍に声援を送りたくなる】
         ようやく下巻が図書館から回ってきました(上巻を読み終えてから結構長かったなぁ)。
         間が空いてしまいましたが、本さえ手に入ればこっちのもの(何だそりゃ?)。
         一気読みしてしまいましたよ。

         さて、上巻では月で手広く事業を拡大している実業家がさらなる企業買収を企み、彼にそそのかされ、金のためにある企業の破壊工作を請け負って失敗してしまった主人公ジャズの姿が描かれました。
         実はこれ、相当にヤバい話だったのです。
         ジャズに破壊工作を持ち掛けた実業家は殺されてしまいます。
         どうやらジャズが破壊工作を仕掛けた企業は経済マフィアが裏で糸を引いているようなのです。

         しかも、そこには巨額の利益が絡むとんでもない話があったのですね。
         殺し屋は今度は実行犯であるジャズを付け狙いはじめます。
         裏事情に気付いたジャズは、アルテミスの統治官に直談判を申し入れますが、そこでアルテミス経済の仕組みを諭されてしまうのです。
         統治官は表立った支援はしないものの、ジャズの活動を黙認し、ある結果になることを望んでいたのです。

         これはもう金とかそんなレベルの問題ではない!
         自分が育ったアルテミス社会を守るためにはやるっきゃない!
         ということで、ジャズは一世一代の作戦行動に出ることを決意します。
         
         そのためには主義には反するけれど今回はさすがに助力が必要。
         ということで、まぁ個性豊かで魅力的な仲間たちがジャズを助けるために結集します。
         そこには、何と、これまで不仲だった(でもお互い愛していた)父親の姿まで!

         ということで、ジャズは最後の作戦に打って出るのですが、これがすんなり成功するわけがありません。
         恐るべき絶体絶命のピンチを招いてしまうのですが……。

         と、まあ、下巻に入ってもテンポの良さは健在であり、ジャズの破天荒とも言うべき奮闘が続きます。
         ジャズの一人称の語り口が大変面白いのは上巻から引き続きです。
         ジャズのやってることはかなりとんでもないことなのですが、それでもやはり声援を送りたくなってしまうではありませんか。
         あっという間に読了してしまえる、理屈抜きに楽しめる作品だと思います。
         

        読了時間メーター
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        2020/09/27 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      噂は噂 壇蜜日記4 (文春文庫)

      壇 蜜

      5.0
      いいね!
      • いい感じに力が抜けていて達観と諦観の境地にいるがだからといって流されるままではない女、という壇蜜さんの人柄がうかがえる。

        試験に受かるにはテキストだけではなく補助テキストを買い漁る意地汚さと金だ、とか心理学者が本当に人の心を完璧に分かったらもっと儲けてる、という話を読んだ時は、試験や心理学以外の世界でも多かれ少なかれそういうトコロがあるんだろうなあと思った。

        「悪気はなかったのだから」は、許す側が許す前置きに使う言葉だ(2016/11/20)や耐えるにも、やり過ごすにも金がいる(2017/5/7)には思わず頷きながら読んでしまった。
        それあんたの立場の人間が言うことじゃないでしょと言いたくなるようなことを言う人間の多いこと。じっとしてるだけでも結構な額の金がかかるということを理解してくれない人間の多いこと。

        壇蜜さんが銃の所有資格を取ったことと睡眠導入剤や安定剤を服用している事実には驚き。しかし努力して「頭良くないくせに知識人ぶった短足下品ババア」を演じている苦労を考えれば当然か。

        それにしても壇蜜さんが定期的に抱かれている男性とは誰なのだろう?
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        2018/02/18 by kikima

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      日本現代怪異事典

      朝里 樹

      4.3
      いいね!
      • 私がよく立ち寄る書店の入り口に平積みされている本書。ということは、売れ行きもそれなりに良いのだろうと想像できます。

        自分で買っておきながら、こんなことを書くのはどうかと思いますが、一体どんな人がこの本を買うのかなという疑問が湧きます。

        こっくりさんやトイレの花子さん系の怪異が日本全国な存在することに驚かされますが、そういったデータを事細かく収集し、本書をまとめた著者の努力に、私のようなオカルトファンの多くは狂喜したに違いありません。

        巻末に収録された五十音別索引、都道府県別、使用凶器、出没場所などの資料もかなりの充実度ですが、自分が住んでいる近所に怪異があることを知り、かなり引き込まれました。

        でたらめを記載している広辞苑なんかより、本書の方がはるかに役立つ書籍だと思いますよ。まあ、あくまでも個人的な意見ですがね・・・。
        >> 続きを読む

        2018/04/15 by アーチャー

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