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森見 登美彦
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作者が自身の名前を出すのは大抵ミステリだが、この作品は小説内の小説を探し求めるメタ構造のような作り。「熱帯」の小説は始まりは一緒でも、ラストは皆知らないという感想。だからこそその謎を解き明かそうと、読んだ人間たちは右往左往する。1~3章までは物語のフリであり、その人物たちが「熱帯」を語る上でのキーになっていく。5章は「千一夜物語」や「アラビアンナイト」のような展開を見せるのだが、かなり不思議な物語である。着地点も不明なら、ファンタジーだとかでようやくできそうもない話。ただ最後まで読ませてしまう森見さんの筆力は流石だ。 >> 続きを読む
2020/05/24 by オーウェン
伊坂 幸太郎
最強の双子小説が誕生してしまったかもしれない…今作の主人公は見た目もそっくりな双子。常盤風我と常盤優我。結構設定が吹っ飛んでいるのは、彼らに1年に1回だけ使える特殊能力が備わっているから。それは1年に1回、誕生日にだけ2時間おきにお互いの体が入れ替わるというもの。まさしく夢にまで見た"瞬間移動"が使える双子なんです。だから、まぁある意味SFファンタジー小説とも言えるのかも。ただストーリーはファンタジーとはかけ離れてますねー。全体的に非常にヘビー。彼らが育ってきた家庭環境、学校で起こるイジメ、街で起こる非人道的な事件。それらが絡み合って物語の印象をより強く重たい冷たいものに感じさせる。それにしても伊坂さん、救いようも同情の余地もない『絶対的な悪』の人物を描くのに最近磨きがかかってきてる気がするなぁ……読んでて叫び出したくなるような。。圧倒的な無力感すら感じる。不快な気持ちになる人もいるんだろうな。あとは前からなんとなく思ってたことだけど、伊坂さんの描く兄弟(今作は双子だけど)がやっぱり好きなんだと再認識。暑苦しくない程度に、だけど確かな絆で結ばれている。『重量ピエロ』『魔王』しかり。バディっていう括りでもいいですね。『グラスホッパー』『マリアビートル』『残り全部バケーション』『AX』。息苦しさと切なさ、あとは双子が抱く希望や願いがMIXされた不思議な小説でしたね。個人的には伊坂幸太郎作品でいうとかなり好きな部類でした!あぁ、あとこの作品、2019年の本屋大賞にもノミネートされてましたが……この作品で大賞受賞はないですね。笑万人受けする作品ではないです(断言) >> 続きを読む
2019/08/30 by ねごと
森 絵都
「教育の大事さ」についてこんなに考えたのは初めてかもしれない。 戦後、日本の教育の指針が大きく揺れ、軍事教育から民主主義教育へ。 「正義のものさし」を簡単に変えた学校への不信から、昭和36年の当時は珍しかった「学習塾」を開こうと決意した千秋。 放課後、娘が通う小学校の用務室で、「授業についていけない子ども達」に勉強を教える用務員の大島吾郎に「天性の教える才能」を見出し、スカウトをすることから、物語が大きく動いていく。 塾経営の難しさ、文部省との対立、家族間でのすれ違いから千秋と吾郎の価値観の違いへ。 新しい事を始めていくためにはこれだけの馬力がいるものか、と思わせるほど次から次へと壁が立ちはだかる。 そんな中でじっくりじんわり育むさまざまな絆や、教育が人にもたらせる大事なコトに何度もホロっとさせられた。 『学校が「太陽」なら、塾は「月」のような存在でありたい』それが最後までこの話のキーワードになる。 塾の歴史と共に、家族の歴史を3代に渡って見届けられ、いつのまにか大島家への思い入れが深くなっていた。 なんだかずっと一緒に戦ってきたような心地よい疲労感が残る「良作」だ。 >> 続きを読む
2020/09/05 by NOSE
宮部 みゆき
悪意によって壊された人生に対峙する「私立探偵」を描いた、宮部みゆきの杉村三郎シリーズの一篇で、三作を収めた中篇集「昨日がなければ明日もない」を読了。白い生地につけられた黒いしみ。暴力とはそのようなもので、他人の心を、日々の幸せを、いともたやすく壊し、奪ってしまう。そうした残酷な事実を物語として描くため、著者の宮部みゆきは、杉村三郎という主人公を生み出した。私立探偵である彼は、人々が負わされた、心の傷を間近で見つめ続ける。平凡な会社員だった杉村は、いくつかの事件に関わったことがきっかけで、私立探偵の道を選んだ。前作「希望荘」では、ついに探偵事務所の看板を掲げることになった。一本立ちした彼が、この作品で最初の試練を迎えるのだ。巻頭の「絶対零度」で依頼人になるのは、自殺未遂をして入院した娘と連絡が取れずにいる女性だ。娘の夫が頑強に面会を拒むのだという。調査を開始した杉村は、事態の背景に醜い人間関係があることを知る。次の「華燭」では、事務所の大家である竹中夫人に頼まれた杉村が、結婚式に付き添いとして出席することになる。そこで一行を待ち受けていたのは、困惑して立ち尽くす参列者たちという、おめでたい会場にはふさわしくない光景だった。いずれの話でも杉村は、悪意によって壊された人生を目撃することになる。三つの暴力についての作品集だとも言えるだろう。目に見える形で振るわれるもの、無自覚、もしくは心の未熟さゆえに、相手を傷つけてしまう行為など、その種類は様々だ。各話とも巻き込まれるのが、女性という共通点がある。巻末に置かれた表題作は、私の胸に重いものを残していく。若い女性から依頼を受けることになった杉村は、ある人物が心ない振る舞いを続けたために、こじれ切った家族の形を目の当たりにする。それによって彼は、人の心を救う難しさを知るのだ。不気味に口を開けた人生の陥穽を前に、探偵は立ち尽くす--------。 >> 続きを読む
2021/03/16 by dreamer
長岡 弘樹
長岡弘樹は短篇小説の名手だと、あらためて思わせてくれるのが「救済SAVE」で、残酷な世界にひとすじの光が射すような作品集だ。震災を生き延びた男が、奇妙な経験をさせられる「三色の貌(かたち)」。不始末を犯した弟分を、兄貴分が始末しなければならない「最期の晩餐」。元警察官が見事な証拠隠滅を行なう「ガラスの向こう側」。介護職の青年が施設長の依頼に応えようとする「空目虫(そらめむし)」。窃盗犯が同じ家に再び侵入する「焦げた食パン」。小学六年生男子の一風変わった友だちが、放火の容疑をかけられる「夏の終わりの時間割」。収録された作品は、登場人物の職業、物語の舞台や状況などがいずれも違っており、シリーズものではない。だが、一冊にまとまったものを読むと、緩やかな統一性がうかがえる。この本のテーマはタイトル通り、救いだ。自身ではどうすることもできない境遇や体を抱えた人物が、それぞれの短編に登場し、彼らの属性が出来事のあり方に関わっている。仮に属性をトリックに利用するだけならば、後味の悪い読み物になったかもしれない。本人にはどうすることもできないことをネタにするのは、残酷なことだから。しかし作者は、それでは終わらせない。いずれの物語の結末でも、意外な真相が明かされるとともに、がんじがらめの属性を生きる人物にまつわる情が、浮かび上がるようになっている。不幸な中にも救いが感じられる展開なのだ。だから、心地いい余韻が残る。長岡弘樹は、意外性を演出するための計算と、人情味が感じられる心理、動機のバランスをとるのが実に巧い。冷静さとあたたかみのある両立が、彼を短編小説の名手にしたのだと思う。 >> 続きを読む
2020/05/19 by dreamer
朝井 リョウ
主に日常生活を舞台にし、その中で現実でも有り得るかもしれない奇妙な物語5作。どの話も本当に有り得そうで、且つ最後にどんでん返しもあります。これもまたぶっ飛んでる訳ではなく、有り得そうで怖い・・・ホラー的ではなくじわじわと上がってくる恐ろしさがありました。と言うかタイトルが凄く良い、凄く惹かれます。 >> 続きを読む
2019/10/20 by ヒデト
古内 一絵
人はたくさんの顔を持つ。だからこそ、生きていけるのだと思う。無理をせず、受け入れることも必要。そんなところに、想いを馳せることができるかどうかなんだろうな。 >> 続きを読む
2020/03/14 by けんとまん
ナディア・ムラド
THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―。ナディア・ムラド先生の著書。2018年にノーベル平和賞を受賞されたナディア・ムラド先生の実体験を綴った一冊。罪のない一般市民に対してこれほどまでに残虐で傲慢、傍若無人な振る舞いをイスラム国兵士たちへの怒りを覚えるし、イスラム国が一日も早く壊滅されることを願います。ノーベル平和賞の名にふさわしい一冊。 >> 続きを読む
2019/05/23 by 香菜子
ヨシタケ シンスケ
そうそう、そんなわけないよね。もっと、いろんな考え方があるよね。元気になるこころの持ちようが大切だと実感。思考とこころの柔軟性だ。 >> 続きを読む
メンタリストDaiGo
心理学について興味を持ち、この本を読み始めました。今、その判断をするのが正しいことなのかどうかということは、今後10か月先、10年先と未來を考えたうえで行動することで、その時の最善の選択をすることができるということが書かれていてなるほどなと感じました。また、人の判断にはタイプがあり自分がどのタイプなのかによって合理的な判断をするためにするべきことが変わるということが書かれており、非常に興味深い内容でした。機会があれば、著者のほかの作品も読んでみたいと思います。 >> 続きを読む
2019/09/22 by GLAY
殆ど死んでいる
淡々としたギャグでそれなりに面白い。
2019/03/18 by iiiityan16
タチバナ ロク
うん。分かっていた。今回も分かってはいたんだよ…3巻で完結…やはり打ち切りなんだろうなぁ…確かにハッピーエンドでめでたしめでたし…なんだろうけど、なんかモヤモヤが残るというか、これで大団円とは言えないよなぁ……ラストだって、え?いや、説明が無いから分かんねーよ!って心の中で叫んじゃったもんね(^^;確かに整合性は取れてるのだろうけど色々と省き過ぎというか無理矢理な力技でこの結末に持っていった感が否めない。ZGXさんが仰っていた通り折角盛り上がって来たところだったので残念…また新連載に期待!という感じかな。話もキャラクターも凄く良かったからまた新たな物語を描いて楽しませてもらえればなあと強く、強く!思います!うーん…決め台詞、どうしよう…今回は普通の読書ができました。(かえすがえすも残念です(><)) >> 続きを読む
2019/01/15 by 澄美空
吉田 修一
映画化された「楽園」の方を先に見ていたので、5つの中編のうち2つを合わせたものと知った。「青田Y字路」幼女誘拐事件が起きた村で、解決しなかった事件。それに関わっていた紡と、外国からやってきたが村に全く馴染めていない豪士。ラストに複雑な余韻を残すが、敢えてぼかしているのは映画と一緒。「万屋善次郎」閉じられた集落で養蜂家として働く善次郎だが、次第に村からつま弾きにされていき、事件が起こる。どちらの話も閉じられた田舎では、信頼が失われると何もできなくなるということだ。 >> 続きを読む
2021/06/21 by オーウェン
和久井 健
ヤバい😱ちょー面白い…‼️あっという間に読み終わっちゃったよ😂ナンバリング通り読もうかと思っていたのだけど、アニメの続きが気になり過ぎてこの巻から読んじゃった(*´▽`)ノノ結果は、ものすごく良い読書時間を過ごせました٩(ˊᗜˋ*)وただ、ほんとにあっという間だったので、自分がタイムリープの逆で、未来に飛んじやったのか、と思っちゃいましたよ(笑)あの衝撃的なラストからの続きなんですが、なるほど、そう来ましたか!と唸るしかないですねヽ(•̀ω•́ )ゝマイキーがおかしくなったのにもちゃんと理由があって、それを正そうとする奴らもちゃんと居て。悪夢の中を延々と彷徨い続けるタケミチの背中を押すのはやはりアイツしか居ないわけで。もう何度目かわからないタイムリープの果てで、タケミチを気にいったのがまさかのアイツで…複雑怪奇に絡まり合っている東京卍會の謎を解き明かすべく立ち向かうタケミチの生き様に幸あれ‼️それにしても、キャラクターみんなかっこいいよね。これは人気が出るのもほんとにわかりますよ、はい!今回も良い読書が出来ました✌️ >> 続きを読む
2021/10/24 by 澄美空
藤岡 陽子
海。島。潮の香。山とは違う色合いがある。そんな島でのものがたり。いろんな時間が凝縮されて熟成される。そんな思いは、伝わり、明日への希望につながる。そんなことを、押しつけがましくなく感じ取れる。 >> 続きを読む
2020/03/15 by けんとまん
ビートたけし
ビートたけしの著書は相変わらずだけどタイトル通りで本作は少し「老齢」への心構えや、友人を失う「かなしさ」などに対する考えを述べていらっしゃるところが読みところ...大先輩のお話を伺う てい で読む、ちょっと可笑しくてありがたいお話をいただけました。(Amazon)老い、孤独、そして独立--すべてを語る。 天才・たけしが「老い」と「孤独」をテーマに男の生き方について語る。世間に迎合せず生きるための「さみしさ」との付き合い方とは。自らの独立騒動や、大杉漣氏、松方弘樹氏、漫画家・さくらももこさんなど友の死についても深く語る。「ニッポン社会も、老化が止まらない」の章では、小学館新書の前作『テレビじゃ言えない』同様のタブーなき社会事象も展開。高齢化社会の欺瞞と矛盾をえぐり出す。 【編集担当からのおすすめ情報】 相変わらずの毒舌・ブラックユーモアは健在! 今回の天才・たけしは、高齢化社会のウソと欺瞞を真っ向からぶった切りながら、自分の中にある「孤独」や「死生観」と向き合います。なぜこの男は70代になっても「不良少年」でありつづけられるのか。その答えが余すところなく記されています。 >> 続きを読む
2019/04/26 by motti
津村 記久子
面白かった~☆5でもよかったんだけども、表紙のデザインなどで★4にしたよ。(海外翻訳の本もっているが、デザインがナイスなのよね!ピンクと水色の配色とかね!)でも内容は★5でもよかった。まさにタイトル通りの内容だったと思う。かなり深い、深かったと思う。結局仕事をしていると、こちらに書かれていた経験から感じる感覚というか感情とか思考の本質的な部分には、大小あれど皆ぶつかるんじゃないかとは思う。仕事していればね。それに、乗っかるのか、かわすのか、無視するのか、戦うのか、やり過ごすのか、逃げるのか、工夫するのか、そもそもそこに気づかないのか(笑)はわからないけども・・・そう思う。そんな内容だったと思う。短編集と思いきやつながっていたよね。短編的にも読めるけど、けっしてお笑いエンターテインメントな作品だとは思わないね。このブラックユーモア的な描写もなかなか苦笑的感情受けたよ。最後の森林公園はなんかどこか幻想的で、クレヨンでその風景を描いてみたい衝動に駆られたな~ナイスはすこし不思議な読書体験でしたね! >> 続きを読む
2022/02/16 by ジュディス
原田 マハ
【マハさんお得意のアートものなんですが、日常性がねぇ……】 本書は6編からなる短編集です。 いずれも一枚の絵画をモチーフにして、主人公の女性の生き様が語られるという構成になっています。 原田さんと言えばやはりアートものが有名で、その評価も高いと思います。 私も、『ジヴェルニーの食卓』、『楽園のカンバス』その他のアートものを楽しんで読んできました。 本作はタイトルからしてアートものだと分かるので、これも楽しめるかなと思って読み始めました。 が……。 確かにアートものですし、悪くはないのですが、どうしてもひっかかる部分が残ってしまいました。 というのは、主人公の日常性が鼻についてしまったのです。 『ジヴェルニーの食卓』などは、あまり日常性を感じさせず、モネの生涯やその後を語っていましたので、本作とは明らかにテイストが違います。 その他の、マハさんの(私が良いなと思った)アートものも大体同じようなテイストだったと思うのです。 ところが、本作ではアート作品よりも各話の主人公の女性の生活感の方が色濃く漂っているのです。 例えば、それは、メトロポリタン美術館の職員でもある日本人女性が、緑内障のために将来視力を失うと宣言され、そんな自分とメトロポリタン美術館で新規に始めた障碍者の子供のための企画をダブらせた作品(『群青』)とか、父親や母親の介護の話とか(『デルフトの眺望』、『マドンナ』)なんです。 ひいてはバツイチの中年女性がある初老の金持ちを自称する男性に魅かれ、まんまと詐欺にひっかかる話だったり(『薔薇色の人生』)、金持ちの男と不倫をしている主人公がそこから離れる話(『豪奢』)だったりもして(この作品、ラストは男を吹っ切るために、男からもらった高価なミンクのコートを置き去りにするという、非常に鼻につくものになっています)、この辺りになると、物語として読んでいて気分があまり良くない話になってしまっているのです。 こういう日常性というか、生々しいいやらしさ(それほど生々しく描写されているわけでもないんですけれどね)から離れた、アートを中心とした別世界を描いてくれた方が、私としては好きですし、本作のような世界に持っていってしまうと、ただアートを出汁に使っただけの作品と感じられてしまうのです。 コアになっているのは、結構沢山ある、女性を主人公にした身の丈の話(いや、それよりも悪いことに、各話の女性はそれなりに社会的に成功していて、結構大きな金を動かしていたり、名声をもっていたりするから余計にいやらしいのかもしれません)というだけに感じてしまったのですね。 原田マハさんのアートものには、私はそういうものは期待していないのです。 というわけで、本作は私の好みからすると他のアートもの作品よりは好きではないということになってしまいました。 久しぶりの原田マハさんのアートもの作品だっただけに、ちょっと残念でした。読了時間メーター□□ 楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK) >> 続きを読む
2021/03/01 by ef177
ペーター・ヴォールレーベン
樹木たちの知られざる生活: 森林管理官が聴いた森の声。ペーター・ヴォールレーベン先生の著書。林業の専門家で森林管理の専門家のペーター・ヴォールレーベン先生のお話は納得できます。森や樹木や森林への理解や思いを深めることができる良書。人間は森や樹木や森林に支えられて生きているのだから森や樹木や森林をもっと知らないと。森や樹木や森林と会話するつもりで森や樹木や森林と接することが大切。森や樹木や森林への支配欲や支配願望を持つのは傲慢で天罰がくだること。 >> 続きを読む
2021/11/28 by 香菜子
古市 憲寿
主人公の生活、キャラがどうしてもテレビの中にいる著者に重なってしまった。平成の終わりを機に安楽死を遂げようと目論む主人公に振り回されながらも、寄り添うヒロイン目線で描かれる現代の東京生活は、もはや近未来SFの世界観を超えてしまった都市生活の現実感がムンムン漂う作品。スマホ、パソコン、スマートスピーカー、Uber、キャッシュレス、ネット通販、拡張現実、AIなどなど、さまざまなハイテクノロジーが社会システムと個人の生活様式を大きく変えてしまった現代。人間そのものの自我もアップデートしている訳で、服を脱がずにセックストイを使う主人公カップルの死生観、人生観、恋愛観は人と違って当然なのかもしれない。主人公が奇異な存在というより、昭和からアップデートしないまま秩序と安定を保とうとしてきた政治、経済、教育、行政、家、宗教、冠婚葬祭、コミュニティが時代とフィットしづらくなっている社会の実像にも見えた。半世紀前、ドラッグ、フリーセックス、ロックに自我をスパークさせながら、時代の先端を生きていた『限りなく透明に近いブルー』の主人公の発する熱量より、無機質で冷めたキャラながら、平成くんも古い社会システムの亡霊に違和感を覚えながら、自我の鼓動を確かめているのかも? 著者が今後のどのような小説世界を描くのか注目だ。 >> 続きを読む
2021/06/05 by まきたろう
出版年月 - 2018年11月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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