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2017年08月の課題図書


原爆投下から数年後の広島を舞台に、
原爆で生き残った負い目から、恋のときめきからも身を引こうとする美津江と、
そんな娘を思いやるあまり「恋の応援団長」をかってでて励ます父・竹造とのお話。

涙あり、でも笑いもたっぷりあり。

「わしの分まで生きてちょんだいよォー」
と願う父に、娘は・・・
苦しみから立上がり、前へ!

Book Information

父と暮せば

4.5 4.5 (レビュー6件)
カテゴリー: 戯曲
定価: 357 円

「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」愛する者たちを原爆で失った美津江は、一人だけ生き残った負い目から、恋のときめきからも身を引こうとする。そんな娘を思いやるあまり「恋の応援団長」をかってでて励ます父・竹造は、実はもはやこの世の人ではない―。「わしの分まで生きてちょんだいよォー」父の願いが、ついに底なしの絶望から娘をよみがえらせる、魂の再生の物語。

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    レビュー

    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 5.0

       「大切な人の分まで生きるということ」

       1945年の8月6日、午前8時15分、ほんの一瞬のあいだに広島の地が焦土と化し、多くの住民が無辜の民としてこの世を去った。その三日後には、長崎がおなじ憂き目にあう。
       この戯曲はあの惨劇から三年ばかり経った広島が舞台。登場人物は、原爆に被災した父と娘のみだが、父親のほうはあの惨劇で亡くなっており、亡霊となってあらわれた証拠に、料理や掃除ができるくせに飲み食いができない。
       父親が出てきたのは娘の美津江が恋をしたからで、お相手は彼女の働く図書館に原爆の資料を探しにくる青年。娘の胸のときめきから自分の胴体はでき、娘のためいきから手足ができ、娘の願いから心臓ができたと父親は言い張る。そして恋の応援団長になって、娘の幸せを切願する。
       しかし当の本人である娘は、わたしは幸せになってはいけないと自分に言い聞かせていて、その青年と鉢合わせになることすら避ける。美津江の生き残ったことへの罪悪感はつよく、自分よりあらゆる点で優れていた同級生が亡くなったことや、その同級生の母親からのキツイ一言、生きるために父親を置いて逃げたことなどを引きずっている。いつまでも尾を引くような、このわるい影から娘を守るため、
      「わしの分まで生きてちょんだいよォー」
      と、あの地獄の炎のなかでの別れ際の、最期の言葉をもう一度二人で思い出し、
      「(ひさしぶりの笑顔で)しばらく会えんかもしれんね」
      と美津江は前向きに生きることを父に誓う。

       ヘタなあらすじでまことに申し訳ないが、この戯曲は、喜劇に重点がある悲喜劇である。もちろん涙ぐみたくなる場面もあるけれど、その涙がヘンに濁らないのは笑いのおかげだ。原爆を材にとった芝居で、どうして笑いが出てくるのか不思議に思う人もいるかもしれないが、これは原爆によって亡くなった方々の願いを反映したもので、いつまでも悲痛に沈む姿は望まないはずである(この戯曲の父親は、死者のまなざしを代表する面もある)。
       生きていくための表情に笑顔は欠かせない。
       わたしたちが被曝した人たちと約束したことは、もう二度とこんな悲劇をくり返さない(くり返させない)ことと、たとえ過去の悲しみの上に成り立っている現在だとしても、生きている者はめいっぱい生き抜くこと。そしてこの二つこそ、この芝居の主眼であり、救いのある喜劇に込められた真意なのだ。


      追記
       今日は8月5日ですよ。携帯で確認したかしら(笑)。ちなみに今日投稿したのは、本日のお昼のプレミアムシネマで、この『父と暮せば』の映画が放送されるからです。もちろん、観ることはできませんが(笑)。
      >> 続きを読む

      2015/08/05 by

      父と暮せば」のレビュー

    • jhmさん、コメントありがとうございます。
      >こちらは戯曲なのですね。戯曲は読んだことがありませんが、興味のある戦争がテーマなら読みやすそうです。

       インターネットで「小説」と紹介するフレーズもやや見受けられますが、体裁としては戯曲ですね。台詞とト書で構成されてます。
       ふたり芝居なので、旦那さまと一緒に本読みされたらおもしろいかも (≡^∇^≡)ニャハハ

      >昨日テレビで戦争を池上さんが解説されていました。まだまだ知らないこともあり、勉強になりました。
      8月のような機会に、日本人がそれぞれ考えていかないといけないですね。

       偶然目にしたり、耳にしたりすることを考えるだけでもずいぶん違うと思います。急に猛勉強はできませんから。
      >> 続きを読む

      2015/08/05 by 素頓狂

    • 澄さん、コメントありがとうございます。
      >自分の母が終戦中に生まれ、父は終戦直後に生まれました。

       あれっすね、両親の世代は、ぼくと澄さんあまり変わらないようですね。澄さんとぼくは少なくとも10は離れていそうなので、ちょっとビックリしました。

      >母も兄妹達と一生懸命混乱の中苦学して看護学校に受かり後に看護師となりました。
       以前、澄さんのコメントのなかで、澄さんのお父さんが、お母さんと結婚することで運を使い果たしたと発言されていたことを、心のなかで思い出しながら読ませてもらいました。
       お父さんのお醤油どばどばエピソードもおもしろいね。でも料理をつくる人からすれば、ちょっと困りものだけどね。しかしこういう家族の逸話があるって素敵だし、ぼくも親父やお袋ともっと話せばよかったなあ~と、むずかしい言葉でいえば風樹の嘆をつよく感じています。
      >> 続きを読む

      2015/08/05 by 素頓狂

    • 評価: 4.0

      被爆した見津江とその父親とのやりとりの戯曲。
      100ページほどのとても短い本だったけど、胸がいっぱいになった。

      広島に原爆が落ちたのは1945年8月6日午前8時15分。
      今日はその日から1日1日と、積み重なって続いている1日。
      たった70年しか経っていないのに、私たちは忘れかけているのではないか。

      小さなことで不平不満を言ってみたり、イライラしたりしてしまうこともあるけれど、自分も大切な家族や友達たちも元気で笑って生活できている、それがどれだけ幸せなことか。

      あらすじも読まずに読んだので、見津江が原爆が落ちたその日のことを思い出してしゃべるシーンはホント泣けた。
      おとったん、そういうことだったんだ、と。

      この本がもっと多くの人に読まれて欲しいと思った。
      >> 続きを読む

      2017/08/21 by

      父と暮せば」のレビュー

    • あすかさん
      井上ひさし作品も初だったし、戦争ものということで私も重めの作品を想像したのですが戯曲ならではの読みづらさはあったものの、予想外の明るい雰囲気で意外でした。でも途中からじわじわくるんですよね(T T)

      「赤毛のアン」も読まれているんですね~♪「赤毛のアン」とっても良い本なのですが、なかなかの厚さですからね笑。どちらもレビュー待ってます♪
      >> 続きを読む

      2017/08/22 by chao

    • 月うさぎさん
      戦争はよくない。誰がなんと言おうとよくない。ずっとそう思ってはいますが、娘が産まれた今ほど真剣に平和を願ったことはありません。

      亡くなった方がどれだけ無念だったろうと思うと考えるだけでも言葉になりませんが…生き残った人が罪悪感に苛まれて生きるということもまたなんて悲しいことでしょうか。

      >当時を知る方が戦争の風化を危惧して重い口を開いていますね。

      その方たちの言葉に耳を傾け、2度と同じ過ちを繰り返さないようにしたいです。
      >> 続きを読む

      2017/08/22 by chao

    • 評価: 5.0

      久しぶりのレビューです。
      会社の仲の良い先輩がとても良い本だと言っていたので、私も読みました。

      被爆した主人公のふとした日常を切り取った戯曲ですが、主人公のことを思うととても泣けてきました。ドラマチックなエピソードとかでなく、日常に染み込んだような苦しみ、悲しみだからなおさらです。原爆で亡くなった方々だけでなく、生き残った方がその後を考えるとやるせない思いでいっぱいです。

      戯曲をほとんど読んだことがなく最初は戸惑いましたが、慣れたら全く気になりませんでした。

      とても薄い本でしたが、忘れられない一冊になりました。
      >> 続きを読む

      2015/04/18 by

      父と暮せば」のレビュー

    • >月うさぎさん
      言われて気づきました
      私もひさしと靖、間違ってたみたいです

      2015/04/19 by ki-w40

    • fraiseyuiさん
      そうですね。先輩に感謝です。

      ki-wi40さん
      本当に台本みたいなんですよ。舞台設定や表情の指示も書き込まれていて。初めてだったので新鮮でした。

      月うさぎさん
      井上ひさしさんの本は初めてでした。そういえば靖さんと似ていますね。靖さんの本も読んだことないので、やすしさんの本を読んだくせに私も今の今までごっちゃになってました…
      >> 続きを読む

      2015/04/19 by caramel

    • 評価: 4.0

      ひさしぶりに読書ログの課題図書を読みました。

      8月といえば原爆、終戦記念日。

      戦争を経験した方々が少なくなる中、
      原爆の悲惨さや、その時代に生きた人達の苦悩を
      (いい意味で)暗過ぎない空気で伝えてくれる良い1冊だと思います。

      図書館で働く主人公、美津江。
      自分は幸せになる資格がない、
      かと言って自殺する勇気もないから、命が尽きる日までただ生きている、と。

      なぜ?なぜ幸せになってはいけないのか、と問う亡霊の父に対し、
      自分ではなく、親友や父がピカ(原爆)で亡くなった事、
      父を見捨てて自分だけ逃げたこと、と告白する。

      原爆が投下された時のほんの一瞬の動作で生死が分かれた現実。
      残された多くの人たちがどれほど
      あの日あの場所にいなければ
      あの時ああしていれば
      と後悔したか分かりません。

      今、生きていること。
      家族や友人が元気に過ごしていること。
      当たり前の事を、もっと大切にしたくなりました。




      戯曲がどうしてもなじめないためのマイナス1。
      ごめんなさいっっ。
      >> 続きを読む

      2017/08/08 by

      父と暮せば」のレビュー

    • 評価: 5.0

      文学、演劇など芸術には程遠い人生を歩んできました。難しいことはわかりません。

      なんのために生かされとるんじゃ
      伝えるのがおまいの仕事じゃろが

      心に響きました。
      隣国の核開発に対して、経済制裁しかできないのでしょうか。日本人ができること。英語で語らずとも、日本語で伝えれば良い。心の豊かさに勝るものはありません。世界は変われる、変えようと思えば。そんな気持ちになりつつ、読書ってええなー。 >> 続きを読む

      2017/08/08 by

      父と暮せば」のレビュー

    • 政治的、戦略的、まさに経済的とかいう言葉で、個人の幸不幸をぶった切る権利が誰にあるというのか、、私達はそんな現実に正直に向き合えるし、知能もある。もう少し、ゆっくりと他の人や国と話し合える余裕はありますよね。 >> 続きを読む

      2017/08/09 by nomura

    • ゆっくりと向き合う時間、そのための心のゆとりが必要ですよね。

      2017/08/09 by fraiseyui

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