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2015年02月の課題図書

今までの課題図書

2015年02月の課題図書


20世紀を代表する文学作家フランツ・カフカの代表作。

ある朝起きたら虫になっていた。
虫になりながらも、その原因には目もくれず、家族の経済状況の心配をする主人公。
グレゴールとは対照的に、経済的に自立し始める家族達・・・

1915年に発表され、いまなお読まれている小説です。
あなたも読んでみませんか。

Book Information

変身

3.6 3.6 (レビュー23件)
著者: フランツ カフカ
カテゴリー: 小説、物語
定価: 340 円

ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか...。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。

いいね! chao Minnie Outsider

    レビュー

    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 5.0

      ある朝ザムザが「なにか気がかりな夢から目をさますと」、自分が「一匹の巨大な虫に変っているのを発見し」ます。
      これ以上に衝撃的な書き出しの小説はないでしょう。

      固い甲羅、節のある腹、細いひょろひょろしたたくさんの足。強い顎と触覚。平べったく幅広い体。
      形状は比較的詳細に描かれているのにも関わらず、読者はカブトムシ、蜘蛛、芋虫、ムカデ、ゴキブリと自分の苦手な虫を想像する人が多数。
      どうやら自分が一番嫌いな虫の姿を思い描いてしまうのです。
      (わたしはワラジムシを想像しました)
      それはきっと、不条理にも虫に変身したことへのショックで読者が動揺した何よりの証拠でしょう。

      当のご本人は、なんということだ。困ったな。とは思いますが、嘆き悲しむことはしません。
      仕事にいけない、それはまずい。当座はそんなことばかりを思いわずらうばかりです。

      しかし虫でいることを本人が受け入れ、時間がたつにつれ、彼は本当に虫になっていきます。
      嗜好、思想、感情、もろもろの点で非人間的になってゆくのです。

      ザムザが虫になったのはなぜなのか?もとに戻る可能性はないのか?
      そもそも本当に虫になったのか?それは結局はわからず終いです。

      カフカはこれらの出来事を淡々と写生するようにクールに描き続け、ある意味ザムザに関しては、日常的なリアリティを持ち続けます。
      これが決してファンタジーでも悪夢でもない。そう読者は思わされるのです。
      一方、まわりの人間たちの非人間的なカリカチュアライズされた一面的な描かれ方がザムザの描写と相反し、異様さを増します。

      日常と非日常の連続性、あるいは不連続性。
      社会的な自己と内的自己の相克。
      自己の存在や可視的世界の実は証明不可能なまでの不確かさ。
      家族の役割という「幻想」と、父と子の愛憎など。
      様々なテーマが見え隠れし、私たちを迷わせてくれるこの短篇は、まちがいなく名作だと思います。

      自分がどの立場にいるかにより、この小説がどのような解釈をも持ち得るからです。

      ある人はひきこもりを、ある人にとっては障害を、思わせるものでもありえるといいます。
      しかし、ある一つの解釈に答えを求めるのは、意味がないと思います。
      これは、ひとつの小説であり、それがそのまま、文学というものだからです。


      私は最初にこの小説を読んだ高校生の頃は、この小説をとてもシュールな小説だと思いました。
      反応の異常さ、説明のなさ、結末の納得の行かなさ、それら全てが非常識なものに思えたからです。
      そしてごく一般的な解釈として「不条理」「阻害」という言葉を受け入れたものです。

      ところが、今回、この小説を読んでの感想は。
      「こういうことって、あるよなあ……」だったんですよ!

      虫になった外観を意識から取り払えば、この小説は家族の小説であり、
      個人と社会、職業を媒介につながっている世間というものの関係性を見つめた小説なのです。

      家族を始めとした人間関係というものは、「こうあるべき」という共同幻想から成り立っています。
      その幻想が暴力的に奪われたとき、生々しい対立が露わになります。
      一旦人間のしがらみという枠を外して、関係性を突き詰めていくなら、人と人、人と社会のつながりなどはあっけなく崩壊するものではないでしょうか。
      自分を重要だと考える自己というものも、自分が虫だと思えば、途端に存在意義は消失します。
      結局、人間の有用性や精神性の価値というものは、人が演じ、他人に信じさせている「役割」によるものに過ぎぬからです。

      一家の家長として生計を支える長男ザムザ。
      父母は年老いて衰え、妹は幼くか弱い、家族の命運は彼一人の肩にかかっていた。
      大嫌いなセールスマンという仕事も真面目に勤め、相応の評価は得ているのも愛する家族のため。
      自己犠牲的に生きている自分。

      ……のはずでした。

      しかし、「虫」になって「使い物にならなくなったグレゴール」に対して
      周囲の人々の対応は、どのように変化したでしょうか?

      果たして彼はあるべき人間だったのか?いてもいなくてもいい人間だったのか?
      いや、むしろ、自分の存在が家族を駄目にしていたのかもしれない。
      それを見せ付けられるのはとても恐ろしいことではないでしょうか。

      皮肉なことに彼を「存在」として認識する唯一の人物は、
      教養もなく情愛の欠片もない下働きの女性ただ一人でした。
      彼女だけが「虫であるグレゴール」をそのまま「虫であるグレゴール」として認め扱うのです。
      するとグレゴールは「虫である自分」を受けいれるのです。

      他との関係性が断絶した状況において、人はどうして自分を人間だと確信できるでしょうか?

      これは「グレゴール」の姿を借りて人間の存在を問うた物語なのです。

      この見たくない真実を描いているために、この小説は人々を衝撃と混乱に陥らせるのです。
      カフカの実存主義とは、サルトルが追い求めた物とは方向性が随分と違うもののようです。
      そして、全く哲学的ではないですが、おそらくは全く真実を描いているのです。

      かけがえのない愛情豊かな両親、愛し合っている妻や夫、いい子だと信じていた子ども、信頼されている職場…
      本当に自分が考えている通りの真実であると、あなたは100%自信をもって言い切れますか?

      言い切れる人こそ、この小説を読むべきでしょう。

      そして、自分が虫に変身してしまった朝を想像してみてください。


      【可視化について】
      蛇足かもしれませんが、カフカが主張していたことを一つだけ確認させてください。
      それは、この本の表紙や挿絵に実際の虫の姿を決して描かないでくれということでした。

      「彼はたとえば昆虫そのものを描こうとするかもしれないと、そう考えたわけです。
      それだけは駄目です。それだけはよくありません。
      …昆虫そのものを描くことはいけません。
      遠くのほうからでも、姿を見せてはいけません」

      絵で描かれた虫の姿形に読者が囚われることは決してあってはならない。
      それがカフカの強い意志でした。

      挿絵はおろか、「変身」の漫画化は小説を理解していないのみならず、カフカの意志に逆らう冒涜です。

      彼が本当に正真正銘、虫に変化していたのかどうか?それもどちらでもいいことです。
      ただ、カフカ自身がこの「変身」を出版する際に、挿絵についてこう懇願していることだけは
      頭の隅に置いておくべきだと思います。

      また、どう読むかは読者の勝手ですが、この小説には決してコメディの意図はないことだけは申し上げておきます。
      >> 続きを読む

      2014/06/08 by

      変身」のレビュー

    • こんにちは

      虫の挿絵を載せなかったのはカフカの勝ちですね。多和田葉子さんの翻訳では「虫」とさえ訳されずに、原語のまま「ウンゲツィーファー」とカタカナ表記になっているようです。なんだかこれはこれで想像力を掻き立てられます。

      さて、先日図書館で「カフカ事典」という本をみつけました。その本によると、カフカの作品背景として父親との個人的闘争や、結核に蝕まれるカフカ自身の心境みたいなことも影響があるようです。またその本では「変身」の解説として「ザムザの変身は彼自身の抵抗願望であると同時に、孤立願望·反抗願望に対する自己懲罰の表れでもある」という趣旨のことが書いてあって、これも興味深い内容でした。
      月うさぎさんが書かれている「自己犠牲的に生きている自分」から脱却したいという思いと、そうしたところでハッピーにはならないし、そんな願望自体が悪い、みたいな矛盾した感じでしょうか。

      カフカは権力闘争や共同体からの疎外感、あるいは不条理な実存というポストモダン的な感覚を、上記のような個人的問題と全く同じ地平で捉えていて、なおかつそれを物語で昇華させてしまった数少ない天才の一人なのではないか、と個人的に思いました。

      コメディではない、という点では上記の本の中でトーマス·マンのカフカに対する評価の中に、こんなことが書かれていました。

      「カフカの絶望は人間の救済にたいする信仰に通じており、それゆえ彼の作品には、あらゆる絶望にもかかわらず、ある種のユーモアが表現されている。(中略)しかしこの笑い、より高次の理由から発するこの泣き笑いが、われわれの手元にあるもののうちの最良のものであることを考えてみれば、カフカの愛情に満ちた固着を、世界文学が生み出したもっとも読む価値のあるものの中に数えたくなるだろう」

      思うに、もちろん単純なコメディではなく、絶望しながら救済を望んでいる二律背反の「おかしさ」が、即ち我々の存在そのものであるような気がして、それこそがここで描かれる「虫」のおかしさなんだろうな、と思っています。
      >> 続きを読む

      2018/05/03 by lafie

    • lafieさん
      詳細なアンサーをいただき嬉しいです。どうもありがとうございました。
      私もカフカは最高の作家の一人だと思います。多層的・多義的で複雑な物語を面白く読ませてしまうという点では、ドストエフスキーと共通するものがあるようにも思われます。
      早すぎる死、完成作品の少なさが残念です。「城」はもっと先が読みたかった~。

      彼の作品には確かに独特のおかしみがあることは間違いないです。
      へんてこな展開や人々の異様な言動など、ユーモラスだと言えるでしょうが、
      私はそれを計画されたユーモアの表現だとはあまり思っていません。
      ごく真面目に書かれているからこそおかしい。現実と小説の間に裂け目やギャップのようなものがあるんですよね。
      小説というものは、受け手がどのように読んでもいいというものではありますが、
      レビューを通して同じ読み方をする人を見つけてうれしがり、まったく別の視点を教えられて感動し、再読しては別の感想を持ち、また語りたくなる。
      名作とはそのように読まれる小説を言うのではないかしら。
      今回lafieさんとお話しできたことこそまさに読書の醍醐味です!

      けれど一方で、ストーリーをざっと読み通して「変な話~(笑)」なんて具合にこの本を読んで欲しくないという気持ちもあります。
      だって仕立て方次第ではコントにできてしまう話ではありますから。
      それでついつい「5分で読める世界の名作」とか「漫画で読むカフカ」なんてものは出してほしくないな~と、思ってしまうんですね。

      しかしヨーロッパ人の「存在」へのこだわりって宿命なんでしょうか?
      名作といわれる小説のテーマが、ほとんど自己存在にかかわることですよね。
      >> 続きを読む

      2018/05/06 by 月うさぎ

    • 評価: 4.0

      ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変っているのを発見した。


      衝撃的な一文から始まります。
      グレーゴルがどのようなラストを迎えるのかが気になったのと、100頁ほどの短いストーリーというのもあり、一気に読み終えました。
      読むのはあっという間でしたが、様々な解釈ができ、考えさえられ・・・
      どちらかというと、読了後、感想を書くに至るまでの方が長くなりました。

      自分が巨大な虫に変身したのに、家族に姿を見られないように閉じこもり、出社することばかり考えるのが人間らしいと思いました。
      体だけ虫となってしまったグレーゴルでしたが、徐々に考え方も虫となっていき、状況判断もできないようになり、ある日事件を起こします。
      家族側の視点から見ると、グレーゴルに対して残酷なようですが、もし自分もそのような状況になったら巨大な虫と化した人を受け止めることは出来そうにない。
      家族の感情の変化も、ありえない話なのに妙にリアリティがあります。
      グレーゴルが虫となった結果、経済面で頼りきっていた家族がそれぞれの仕事を見いだし、自立していくんですよね。
      短いストーリーの中で、様々な変身を見せつけられたようです。

      虫嫌いなので、ぞわっとする描写が多いのが読んでいて困りました。
      >> 続きを読む

      2018/07/19 by

      変身」のレビュー

    • >虫嫌いなので、ぞわっとする描写が多いのが読んでいて困りました

      自分も正直これがネックで未だに手を付けられていないんですよね。
      凄く昔から気にはなっているのですが如何せん虫になるという・・・
      それも気持ちがあまり良くない系の。。。

      いつかがあるかわかりませんが(そのときはたぶん虫嫌いが治っているかマシになっているときかだと思いますが)勇気を出して読んでみたいと思います。

      しかし、突然朝起きたら虫になっているとは凄い発想といいますか着想ですよね。
      そういうことって確かに考えたりしないでもないですがそれをひとつの作品にしちゃうという・・・まあ、こういうことができるのがやはり有名作家といいますか世界で支持される作家さんなんだなぁと改めて思いました。

      因みにこの作品の表紙絵良いですね!
      なんか、かっこいいなぁーとぼーっと魅入ってしまいました(^^♪

      >> 続きを読む

      2018/07/19 by 澄美空

    • 友人も、虫の表現が嫌で途中やめしていました。
      私の場合、虫嫌いだけどそれ以上に続きが気になっちゃって。100頁くらいだったので、勢いで読んでしまいました。
      説得力のある表現をされているので、無理はしないでね><

      私もこの表紙、かっこいいなと思いました!
      持っているのは、今年の夏のスペシャルカバー版なんですけどね(^^;)
      こちらもかっこいいですよ~~
      >> 続きを読む

      2018/07/22 by あすか

    • 評価: 4.0

      2月の課題図書。

      なんとなくのイメージで、もっと分厚い本かと思っていました。

      ずっと、「何の虫だろう」という疑問が頭の中に…

      始めはテントウムシみたいなものを想像していたのですが、途中、ゴキブリか…!?となってぞわぞわ感が増しました。

      虫になったグレーゴルの言葉が通じなかったり
      家族の態度が変わっていったり
      切ないというかやりきれないというか、、、

      ラストも衝撃的でしたが、
      このラストしかないか、とも思いました。

      >> 続きを読む

      2015/02/17 by

      変身」のレビュー

    • >「何の虫だろう」という疑問が頭の中に
      とってもキュートな疑問ですね。

      2015/02/17 by 素頓狂

    • 私はワラジムシを想像していました。
      でもカミュは決して可視化しないでくれと言っていました。
      挿絵厳禁!!!です。
      読者が想像するのが大事なんじゃないでしょうか。
      >> 続きを読む

      2015/02/17 by 月うさぎ

    • 評価: 評価なし

      2月の課題図書をやっと読みました。
      以前、森山未来さん他が舞台で演じられているのをテレビで拝見、
      でも何故か途中までしか観ていなかった。
      なので、最後まで読めて良かったです。
      こんな結末だったんだ。
      この本もまた更に年を重ねた時に読むと、また違う感想を抱くんだろうなぁ。

      2015/03/11 by

      変身」のレビュー

    • cojiさん

      コメントありがとうございます!
      結末は確かにびっくりですね。
      私は「夢だった」で終わるのかと勝手に想像していたのですが。

      舞台は衝撃でした。
      森山未来さんと満島ひかりさんの
      『100万回生きたねこ』のミュージカルの後に『変身』だったのでそのギャップにびっくりしました。
      >> 続きを読む

      2015/03/11 by すもも

    • 月うさぎさん

      コメントありがとうございます!
      宮本亜門さんも演じられていたのですね。
      またイメージも違うことでしょう。
      そちらも観てみたいものです。
      本を読み終えたのでまた改めて演劇観賞をしたいです。
      >> 続きを読む

      2015/03/11 by すもも

    • 評価: 4.0

      起きたら虫になっていた、というあらすじは知っていたものの、初めて読んでみました。

      普段は外国の作家さんの本はあまり読まないのですが、挑戦。
      訳がかなり古くて、読みづらかったです。
      今だともうちょっと親しみやすい訳がでてるようです。

      主人公の内面の変化が、場面場面できっちり計算されて描かれてるように思いました。

      他の方のレビューを読んでも色んな解釈の仕方があって、面白い小説でした。
      >> 続きを読む

      2015/10/12 by

      変身」のレビュー

    • 他の方のレビューろ読むと色々考え方とかも違って、面白いですよね!

      2015/10/13 by coji

    • >cojiさん
      ちゃんと読んだ本ほど、他の方の自分とは違った考え方がすごい興味深いですね >> 続きを読む

      2015/10/13 by shiki

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