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2017年06月の課題図書

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2017年06月の課題図書


2017年6月の課題図書はG・ガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」です。

ガルシア・マルケス自身が最高傑作として発表した作品です。
1951年に起きた実際の事件がモデルとなっていて、
描写の精緻さ故に、事件の真相をしっているのでは?と当局に疑われたという逸話を持っているそうです。

今回は、コロンビア共和国初のノーベル賞を受賞したガルシア・マルケスに迫るため、
駐日コロンビア大使館全面協力のもと、「コロンビア特集 ~ガルシア・マルケスの故郷を辿って~」も同時公開。

是非、この機会にガルシア・マルケスについて、
歴史的な和平プロセスを歩み始めたコロンビアについて、
迫ってみてはいかがでしょうか。

Book Information

予告された殺人の記録

4.3 4.3 (レビュー8件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 420 円

町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた幻想とも見紛う殺人事件。凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。

いいね! Minnie

    レビュー

    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 5.0

      なんと濃密な世界なのだろう。150ページほどの短かい小説なのに、
      まるで長編のようにリアルでかつ象徴的、暗喩的な世界が展開されている。
      それでいて、簡単に読めるという驚くべき作品。
      作家の技量にはおそらく私の理解力をはるかに超えるスケールがあるに違いない。

      殺人事件が起こってしまった「過去」へと戻るという構成で
      殺されたサンティアゴ・ナサールの親友であった「わたし」が
      27年後に関係者を訪ね事件の足跡をたどる。

      サンティアゴ・ナサールは裕福階級に属し、アラブ系移民の父と由緒ある家柄の母を持つ
      敵はあるようだが、ハンサムで明るく穏やかで素直な性質の青年だった。

      最初に読者が知っているのは、彼が殺されたということと、
      その殺人は「みんなが知っていた」「充分予告された殺人」であった
      という奇妙な事実だ。

      当時の証言を「わたし」と共にたどることで、徐々に明らかになる真相。
      動機は?誰が?どのようにそれが実行されたのか?
      一体なぜ、防げなかったのか?
      そもそもその殺害の原因となった事件は本当だったのか?
      殺された男はどんな人物だったのか?

      少しずつ、少しずつ、真相にたどり着くその読書の道筋は
      自分も探偵のような、ミステリーにも似た興奮が味わえる。
      ラストの描写力にはただ息を呑むばかりだった。
      しばし、脱力。
      確かにこれは名作である。


      その上で、川沿いの閉鎖的な田舎町の閉塞感と古い宗教的な価値観と
      新しい文化の流入や移民の問題。そしてムラ社会の崩壊。
      社会が抱える問題の縮図を描き、人間の心の弱さや残酷さ、
      嫉妬や猜疑心や面目や名誉や貧富の差といったさまざまな感情を
      客観的で簡潔で言葉少なに書ききっている。

      男尊女卑や宗教上の倫理や価値感が人を縛り付ける。
      名誉や正義という言葉は簡単に人を殺す理由になり得るのだということも
      改めて恐ろしく思う。


      この物語の犠牲者は殺害されたサンティアゴだけではない。
      バヤルド・サン・ロマンも、古い価値の犠牲になった男だし、
      そしてアンヘラ・ビカリオも加害者であり被害者でもある。


      街全体がその事件に関わる当事者だったとして、多くの登場人物が出てくる。
      一瞬しか登場しない人物も名前やバックグラウンドが与えられており、
      実在感のある人物として物語に関わっている。
      その多くも加害者である。
      知りながら、何も手だてを取らなかった罪を負う。
      きっと事態は好転するだろうと自分に言い訳をして
      結果殺人を助けたのだ。
      殺された人だけではない、殺す人をも見捨てたのだ。

      自分はそうなるまい。と思う。
      無作為は罪の幇助に等しいのだ。


      ガルシア・マルケスはノーベル賞作家です。
      コロンビア出身でスペイン語文学なので、あまり日本ではメジャーではないかもしれませんね。
      魔術的リアリズムの旗手といわれるそうですが、
      この作品は、作家自身が書きたいと思ったことを書ききれた最高作と語っているそうです。


      【おまけ】
      この話にはモデルとなる事件が存在するそうです。
      1951年1月22日、カエタノ・ヘンティーレス殺害事件、犯人は某兄弟。
      マルケスは最初にルポルタージュとして考案し、聞き取りをしたところ
      家族の反対を受けて断念、その後30年後に小説として発表されました。
      ジャーナリズムとフィクションの融合として、新しい試みとして。

      立体交差的な感覚が非常に映画的。と思ったら実際に映画になっているそうです。
      >> 続きを読む

      2013/07/16 by

      予告された殺人の記録」のレビュー

    • 月うさぎさん

      >サンティアゴとサンチャゴは同じ名前です。

      なるほど!!
      勘違いしまくってました(笑)

      >サンティアゴとサンチャゴは同じ名前です。

      それは思い浮かんだのですが、それでもなお同じ名前とは思いませんでした…。
      サンチャゴと聞いたとたんにサンティアゴがいきなり「老人と海」の小舟に乗った細いおじいさんの姿に変換されて私の中で爆笑だったのです。。。
      >> 続きを読む

      2013/07/29 by chao

    • chaoさん
      外国人のファーストネームって決まりきった名前が多いですね。
      日本人の名前は(特に今時は)すごく多様なのに。

      キリスト教文化圏では聖人ゆかりの名前が圧倒多数ですが、
      驚くことにスペインではヘスースという名の男性がとても多いとか。
      ヘスースってイエス(ジーザス)つまりキリストです。
      「やあ、イエス、おはよう」なんて友達としゃべるの。
      だからたぶん「聖☆おにいさん」はスペインではギャグになりません。
      >> 続きを読む

      2013/07/29 by 月うさぎ

    • 評価: 5.0

      みなさんのレビューを読んだら再読したくなり、さっそく読み返しました。

      この本は大好きな本なのですが、実は子供(学生?)の頃はあまり好きではありませんでした。
      緻密すぎる描写が淡々としているように思ったのかもしれません。

      大人になってふと読み返してみた時に、計算されつくした構成の巧みさに鳥肌が立ちました。

      結末を知っていても読むのを止められない、マルケスの傑作です。
      >> 続きを読む

      2013/07/29 by

      予告された殺人の記録」のレビュー

    • みなさんコメントありがとうございます。

      なんでこの本を読んだのかは思えていないんです(笑)
      家に本が沢山あったので、手当たり次第読んでいた気がします。
      あと図書館に入り浸っていました。
      だからきっとこの本を読んだのもたまたまですね。
      >> 続きを読む

      2013/07/29 by Minnie

    • >結末を知っていても読むのを止められない、マルケスの傑作です。

      結末を知っていてもまた読みたくなるってことは
      かなり面白いんでしょうね!!

      起こることが分かっていても止められない殺人というのが
      どんなものなのか想像できません。。

      僕も読んでみようと思います(^^)
      >> 続きを読む

      2013/09/09 by matsu

    • 評価: 4.0

      たった150ページの本とは思えない濃さ!

      ある村の殺人事件を描いているのだが、今まで読んだことのあるミステリーとは全く違う展開。

      犯人はありとあらゆる人に殺人を予告して街中の人が殺人が起こることを知っていた。
      なのになぜ殺人は行われてしまったのか。

      殺人事件を描いていながらも、そのむごさよりも登場人物1人1人のとった行動や、その1人1人の行動によって全体として起こったことの描写が興味深いし面白い。

      ただとにかく登場人物が多く、名前を覚えるのが大変すぎたので-☆1だけども、、
      無駄を一切省いた緻密な描出が読ませる!
      >> 続きを読む

      2013/07/27 by

      予告された殺人の記録」のレビュー

    • >さっそく「百年の孤独」を調べてみたのですが文庫本ないっぽい…?もう少し調べてみます。

       そうですね。文庫化されたという話は聞きません。
       もうそろそろ文庫化してくれてもよさそうなものですけどね。

      >あとカラマーゾフは新潮文庫と光文社のでどっちが良いとかあるのでしょうか。悩み中です。

       ぼくが読んでいるのは新潮文庫の原卓也訳です。
       光文社の古典新訳シリーズの亀山訳「カラマーゾフ」は、かなり話題になりましたし、また相当に売れたようです。「これまで何度挑戦しても挫折したカラマーゾフがやっと読めた!」と言った友人もいます(結構な読書家なんですが)。ただ、誤訳批判もずいぶんあるようです。
       ぼくはこのシリーズがやや苦手で、読んでません。時々、岩波の米川正夫訳を読んでみたいと思うことはあるのですが、亀山訳を読もうと思ったことはありませんね。

       翻訳というのは、その時代の言葉、文体に翻訳すべきなので、一般的には、できるだけ新しい翻訳で読むべきだということになるのだと思います。とはいえ、新旧とは別に、読者と訳者との相性という要因も大きいので、ぼくは、複数の翻訳が出ている本については、書店で最初の数頁を立ち読みして、どちらが自分にとってしっくりくるかを比較することにしています。
       
       「カラマーゾフ」について、個人的には新潮文庫をお薦めしたいのですが、光文社古典新訳シリーズが苦手なのはぼくの感覚が古いからなのかもしれませんので(^_^;)、chaoさん、ぜひ書店に足を運んで立ち読みしてみて下さい。
      >> 続きを読む

      2013/07/28 by 弁護士K

    • makotoさん
      登場曲、ロッキーのテーマとかでいいですか(笑)?

      Shimadaさん
      装飾なしに綴られているからこそ浮き彫りになる感じなのです。
      Shimadaさんもぜひ^^

      弁護士Kさん
      ご丁寧に色々ありがとうございます!!
      百年の孤独は文庫化待ちしつつ、カラマーゾフ、本屋でチェックしてみます!
      >> 続きを読む

      2013/07/29 by chao

    • 評価: 5.0

      自分が殺される日、サンティアゴ・ナサールは、司教が船で着くのを待つために、朝、五時半に起きた。

      6月の課題図書は、印象的な書き出しから始まる作品でした。
      閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた殺人事件を、他人の想い出の断片を集めることによって、全貌を明らかにします。

      150頁に満たないのですが、とても濃密な作品です。
      登場人物が多いので読み込むため、二度読みしました。再読は展開がわかっている分余裕があり、この作品のもつ素晴らしさを堪能することができました。
      きっと三回読んでもおもしろいのでしょう。
      過去と現在が要所要所で変わる、緻密なプロット。
      全てが明らかにならないのですっきりはしないのですが、なんだかすごいものを読んでしまった・・・!
      そんな不思議な読後感にさせてくれます。

      ビカリオ兄弟が名誉回復のためにサンティアゴ・ナサールを殺害する計画は、町中に知れ渡っていました。
      にも関わらず、サンティアゴ・ナサールが殺されるように展開されていきます。
      そこには様々な要因があり、不運も重なり。
      彼が殺害されたシーンは生々しく、読み手にまで血生臭さが伝わってきます。
      とにかく圧倒されました。

      6月過ぎてのレビューとなってしまいましたが、ぜひたくさんの方に読んで頂きたい名作です。
      >> 続きを読む

      2017/07/03 by

      予告された殺人の記録」のレビュー

    • 月うさぎさん
      すべてがつながり、そしてあの殺害シーン。圧倒されましたね~。
      新感覚の読書でした!
      計算されつくされ、完璧なはずなのに何か不思議で。
      おすすめした方と一緒に、ずっと不思議ーって言っていました。笑

      読書ログではすでに皆さん一緒に読んでいるかんじでしたね~!
      課題図書になってくれてよかったです!
      また一冊、出会えてうれしい本となりました♪
      >> 続きを読む

      2017/07/04 by あすか

    • 美空さん
      >殺人が予告されていたら警察とか探偵がめっちゃ仕事楽になりますね
      >殺人が予告されていたら標的にされた人めっちゃ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル状態にすげー早い段階でなるから大変ですよね
      そうそう、そう思うでしょ!?
      それにも関わらず、殺人は行われてしまったんです。
      美空さんのコメント読んで、ますます不思議に思いました!なぜあのような事件が起こってしまったか、読み手としてその経緯を追ったはずなのに、このような読後感になってしまうなんて。
      と改めて思わせて頂きました。
      美空さんすごいー!
      >> 続きを読む

      2017/07/04 by あすか

    • 評価: 4.0

      町中の人間が殺されることを知っていたにも関わらず起こってしまった殺人事件。作者ガルシア・マルケスの故郷がモデルと言われる、ジャーナリズムと創作が入り交じった小説と言われています。私はガルシア・マルケスをあまり知らないのでそうした作者の背景的な読みはできませんでしたので、作品を虚心に読んだ感想を。

       すでに殺人が起こってしまって30年も後、語り手の「わたし」がこの事件の真相を探るべく様々な関係者に取材をしてまわる。それでいて読者は殺人の起きた日とその前日の婚礼の日に居合わせるような臨場感を感じることができます。この辺は作者の力量を感じます。中編の小説でそんなに長くはないですが、次がどうなるんだろうという期待感からページは次々と進みます。

       殺されるサンティアゴ・ナサールはアラブ人系の移民で、若くして莫大な財産を受け継いだ人物として周囲に羨ましがられ、妬まれてもいるようです。彼は殺される時に無闇にキリストのイメージが重ねられています。殺人者であるペドロ・ビカリオ、パブロ・ビカリオの兄弟の名前にも使徒を思わせるものがあります。「予告された」ということでいえば、キリストくらい予告(予言)されて死んだ人もいません。妬みが理由で殺されたのだとすれば、これもキリストと重なります。残念ながらそのモチーフが何を意味しているかまだ考えが深まっていませんので、もう少し考えてみます。

       バヤルド・サン・ロマンという役割のよくわからない人物が出てきますが、彼とアンヘラ・ビカリオが結婚し、純潔でなかったことを理由にその日のうちに離縁されるという話があります。アンヘラ・ビカリオがなぜ自分を汚した相手はサンティアゴ・ナサールだと言ったのかという謎は最後まで残ります。サンティアゴ・ナサールが殺される話と、もう一つの柱はアンヘラ・ビカリオが母から自立して本当に生きることになる話がありますが、ここが死と復活の話として結びついているのかもしれません。なかなかいろいろなモチーフが重ねられていて深読みすればいくらでも深読みできる面白いテキストです。
      >> 続きを読む

      2013/08/13 by

      予告された殺人の記録」のレビュー

    • 〉深読みすればいくらでも深読みできる面白いテキストです。
      名作ってほとんどがそういう読み方に耐える作品であるように思います。

      キリスト教の影響がものすごく強いことは、間違いないですよね。
      サンティアゴがキリストかというとそうは思いませんでしたが。
      〉キリストくらい予告(予言)されて死んだ人もいません。
      確かに。とても興味深い考察だと思いました。

      彼の他の作品も読みたいと思っています。
      でも文庫じゃ出てないんですよねえ。
      >> 続きを読む

      2013/08/13 by 月うさぎ

    • 誰でも死ぬことが決まっているという点では、人は誰でも死が予告されていると言えるのかも知れませんねー >> 続きを読む

      2013/08/13 by makoto

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    ヨコクサレタサツジンノキロク 
    よこくされたさつじんのきろく

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