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(株)早川書房 (ハヤカワシヨボウ)

企業情報
企業名:早川書房
はやかわしよぼう
ハヤカワシヨボウ
コード:15
URL: http://www.hayakawa-online.co.jp/
      アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

      フィリップ・K・ディック (1977/02

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! pasuta KEMURINO
      • 本作ではアンドロイド(今流行りで言えば人工知能)と人間の最大の違いは「感情移入」が出来るか否か、というスタンスである。
        しかし、人間もアンドロイド的な一面もあれば、アンドロイドも人間的な一面もある事を示唆している。
        アンドロイド達はtheyなのかitなのか。
        この「記憶」と「自我」は己自身のものか、洗脳されたプログラムなのか。
        ラストでは人口ヒキガエルに「感情移入」をする主人公。
        目まぐるしく人工知能のロボット工学が発展している21世紀初頭の現在。今一度、「人間」と「アンドロイド」の在り方を向き合う時かも知れない。
        >> 続きを読む

        2018/01/23 by 嶋村史緒

    • 他25人がレビュー登録、 76人が本棚登録しています
      わたしを離さないで

      土屋政雄 , カズオ・イシグロ2008/08

      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね!
      • こんなにも感情を抑えて物語が書けるのか。
        些細な事をものすごく細かく書いているのに、登場人物たちの内面にはあまり踏みこんで描かれていない。誰にも感情移入できず、なんだか突き放されたような、不安な気持ちにさせられる。

        あまりにも過酷な運命なのに、登場人物たちはそれを疑うこともなく、当たり前のこととして受け入れているように見える。どうして異を唱えないのか、あらがおうとしないのか。終盤で主人公が行動を起こす場面もあるが、それだってあまりにもささやかだ。こんなことが許されていいはずがないと思いつつ、いつか現実のものとなる日が来るのではないかと、空恐ろしい気持ちになった。

        最後の場面があまりにも悲しい。

        >> 続きを読む

        2019/05/19 by asaki

    • 他20人がレビュー登録、 59人が本棚登録しています
      そして誰もいなくなった

      アガサ・クリスティ , 青木久恵2010/10

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! chao sunflower tadahiko tomato Minnie napori Tukiwami
      • あまりにも有名な作品ですが、読んだのは初めて(内容も知らなかった)。久々にミステリーを堪能しました。

        嵐で外部との連絡手段を断たれた孤島、姿を見せない屋敷の主、招待された互いに見知らぬ十人の男女・・・いまやミステリーの王道とも言える要素がてんこ盛りで、思わずテンションが上がりました。

        各自の部屋に飾られた童謡の歌詞、その歌詞の通りに一人ずつ殺されていく招待客。そして一人死ぬごとになくなっていく陶器の人形。否が応でも不安がかき立てられていく設定に、怖くてページをめくる手が止められない(矛盾?)。トリックや犯人捜しというよりは、皆が疑心暗鬼に陥り、徐々に追い詰められていく心理面の描写が面白い作品だと思う。怖かったけど・・・。

        >> 続きを読む

        2019/06/22 by asaki

    • 他20人がレビュー登録、 90人が本棚登録しています
      夏への扉

      福島正実 , ロバート・アンスン・ハインライン2010/01

      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね! kimiyasu Tsukiusagi snoopo HRJNK
      • 匿名

        最初は海外物ならではの翻訳の難しさがあったけども、後半に行くに連れて面白さが勝ってきました。面白すぎて集中しすぎて、電車を二駅程乗り過ごしてしまい学校に遅れるというエピソードが作られました。 >> 続きを読む

        2017/12/27 by 匿名

    • 他16人がレビュー登録、 66人が本棚登録しています
      虐殺器官

      伊藤計劃2010/01

      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね!
      • 生物とマシンが融合進化した近未来で、世界中の開発途上国で起こるジェノサイド(大量虐殺)。それらの国に常に関わっているジョンポールという妻子をサラエボの核爆弾で亡くした元言語学者。ジョンポールをジェノサイドの仕掛け人と判定して、暗殺を命令されたアメリカの特殊工作員との世界をまたいだ追跡劇。
        なぜジョンポールがジェノサイドを仕掛けるのか?なぜ元言語学者にそんな事が出来るのか?そしてその思想は暗殺者へも影響を及ぼしていく。
        派手で異様なSF小説にとどまらず、人とはどんな種なのか、小集団では助け合いが起こるのに、大集団になると大殺戮を起こしてしまう複雑な仕掛けなど、人間そのものを深掘る会話が面白かった。
        >> 続きを読む

        2019/04/30 by aka1965

    • 他16人がレビュー登録、 64人が本棚登録しています
      アルジャーノンに花束を

      ダニエル・キイス , 小尾芙佐1999/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! momomeiai Minnie sunflower tadahiko Erika
      • 本棚にあったので読んだけど、童話のようで・・・好みではなぁったかな。映像化されても見る気になれなかったのは、キャストがいまいち好きになれなかったから。 >> 続きを読む

        2017/09/21 by k.k

    • 他16人がレビュー登録、 68人が本棚登録しています
      悪童日記

      堀茂樹 , アゴタ・クリストフ2001/05

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! karamomo Fragment asuka2819 Shizu
      • 【良い子なの? 悪い子なの?】
         以前から読みたかった本をようやく読みました。
         戦時中、「大きな町」に母親と一緒に住んでいた2人の兄弟が、戦火を逃れるため祖母が住んでいる「小さな町」にやってくるところから物語は始まります。

         祖母は、野卑で不潔で吝嗇家で、以前、自分の夫を毒殺した疑いがかけられており、近所の住民からは「魔女」呼ばわりされているような人でした。
         母親は、「お金は定期的に送りますからよろしくお願いします。」と頭を下げ、兄弟を残して「大きな町」に帰って行きました。

         さて、この2人の兄弟が風変わりで、この年頃の子供達のように遊んだり泣いたりなどしません。
         自分たちで計画を立て、「勉強」をし、様々な「訓練」をします(例えば、飢えに耐える訓練、暴行に耐える訓練、動かない訓練などなど)。
         聡い子供達であることは間違いありませんが、やることすべてがどうにも子供らしくないのです。

         他人の話をこっそり立ち聞きするまでは、まぁ、子供らしいと言えばそうも言えるのですが、2人は、立ち聞きした話をネタにして上品な口調で強請を働いたり、なかば強要のようにして商店から欲しい商品をせしめたり(勉強に使うためのノートや鉛筆なんですけれどね)、「訓練」の一環として身につけた曲芸などを披露して酒場で小銭を稼いだり……。

         2人の行動は徐々にエスカレートしていきます。
         戦争により、「大きな町」が陥落し、間もなく敵軍が「小さな町」までやってきそうな気配の時、ようやく母親が2人を迎えに来るのですが、母親は男連れで、赤ん坊まで抱いていました。
         2人の兄弟は、母親と一緒に行かない、ここに残ると言い出します。
         母親は必死に2人を連れて行こうとするのですが……その結果……。
         そして、最後には……。

         この2人の兄弟が戦争の犠牲であることは間違いないし、こういう子供らしくない、ある意味では歪んだ人間になっていくのもその影響があることはそのとおりなのですが、「だから戦争はダメでしょ?」って言う単純な反戦文学ではないのです。
         それはそうかもしれないけれど、それにしたって……ということです。
         この兄弟は、良い子なのか悪い子なのか段々分からなくなっていきます。

         本作には、「ふたりの証拠」、「第三の嘘」という続編があり、全体で「悪童日記」三部作と呼ばれているそうです。
         これは続編も読まなければ。
        >> 続きを読む

        2019/05/28 by ef177

    • 他15人がレビュー登録、 34人が本棚登録しています
      日の名残り

      土屋政雄 , カズオ・イシグロ2001/05

      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね!
      • 執事のスティーブンスは、新しい主人であるファラディがアメリカに5週間帰ることを機に、5~6日の休暇を与えられます。
        イギリスの田園風景の美しさを見ながら、長年仕えたダーリントン卿や父、女中頭との思い出を振り返り、スティーブンスの人生が語られていきます。

        この主人公の印象としては、一緒にいたら息がつまりそうになる程の真面目さ、頑固さを感じました。
        せっかくの休暇ですら、「偉大な執事とは」「執事の品格とは」と仕事のことばかり考えているのですから。
        仕事人間ですね。
        仕える主人が変わり、最大二十八人の召使が雇われていたダーリントン・ホールを四人で切り回す職務計画にも取り組んでいました。
        かなり悩ましい働き方改革だと思います。
        頑固だな、融通が利かないなと思いながらも、執事の品格を常に考え続ける彼にくすりとさせられました。

        ※以下、ネタバレのためご注意ください。





        そんな執事の人生を振り返る旅行記が最後まで描かれていると思っていたのですが、最後の最後でこの本の印象をひっくり返す仕掛けがありました!
        五日目の空白後の、六日目。
        仕事人間の旅の終わりは、実は長年仕えた主人に何もできなかったこと、私生活での失敗で自分を見返り、男泣きの姿が描かれていました。
        読了して読み返すと、初読の時とは違った目で彼を見るようになります。
        回想していた頑固で真面目なスティーブンスというより、旅先で垣間見えた不器用で滑稽な姿が再生されてしまいますね。
        印象ががらりと変わるっておもしろい。
        後悔はあるかもしれないけれど、それでもあなたがやってきた仕事は立派だったよ、と声をかけてあげたくなりました。

        初めてのカズオ・イシグロ作品、とても良かったです。
        続けて「わたしを離さないで」を読んでいます。
        読書ログでchaoさん、弁護士Kさんと語り合えたから読もうと思った本書。ありがとうございます!
        >> 続きを読む

        2018/09/30 by あすか

      • コメント 8件
    • 他14人がレビュー登録、 33人が本棚登録しています
      一九八四年

      高橋和久 , ジョージ・オーウェル2009/07

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! Tukiwami
      • 5月の課題図書。

        第一部は世界観について書かれていて、掴むまで難解さを感じました。
        思い切って、第一部のみ二度読み。
        時間はかかりましたが、第二部からはストーリーの展開もありスピードが加速、いつの間にか難解さは消えていました。

        "ビッグ・ブラザーがあなたを見ている"
        ヘリコプターが人々の部屋の窓を覗きまわっている。
        テレスクリーンでは受信と発信が同時に行われ、終始監視されている可能性がある。
        本書の世界観は、“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。
        主人公のウィンストン・スミス自身も、歴史改ざんを仕事としています。

        この作品、非常に居心地の悪さを感じます。
        帯に『今の世界や日本に不安を感じている人へ。この本が現実になりそうです』
        と書かれているのですが、いやいやそんなことはないですよと、言い切ることができないことにゾッとします。
        その不安のせいか、本書を読んでいたときにビッグ・ブラザーに支配された世界の夢を何度見たことか・・・!

        ラスト一行まで不安な気持ちにさせてくれますが、
        一人の人間を「二足す二は五である」とするために、コストと時間がかかりすぎているような気がします。
        もしこの社会に綻びがあるとすれば、そこから崩れていくことにならないでしょうか。
        >> 続きを読む

        2018/07/09 by あすか

      • コメント 6件
    • 他14人がレビュー登録、 56人が本棚登録しています
      アクロイド殺し

      アガサ・クリスティ , 羽田詩津子2003/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね! chao Minnie shikamaru
      • 【推理小説史上に残る驚天動地のトリックがここにある】
         「アクロイド殺人事件」は、アガサ・クリスティが編み出した、推理小説史上に残る超名作です。
         推理小説のトリックは数多ありますが、この作品を越えるトリックって滅多にないんじゃないでしょうか。

         この作品が発表された時には怨嗟の声が巻き起こったそうです。
         さもありなん。
         ずるーい!って一回くらいは言いたくなるよね。
         でも、ここに気が付いたのは見事です。
         efは素直に脱帽して高く評価します。

         フェアな作品ですよ。少なくとも嘘は書いてありません。
         
         事件自体は非常にシンプルです。
         イギリスの片田舎、キングス・アボット村で殺人事件が発生します。
         殺されたのはこの土地の名士であるアクロイド氏。
         自宅の書斎で椅子に座った姿勢で胸をナイフで刺されて死んでいました。
         第一発見者は、この物語の語り手でもある医師のシェパードと執事のパーカーです。

         医師のシェパードは、事件があった夜、アクロイドから相談を持ちかけられ自宅に招かれます。
         物語の登場人物の何人かと夕食を共にした後、アクロイドに誘われて彼の書斎に行きます。
         そこでアクロイドからとある事実を打ち明けられるのですね。
         実は、アクロイドには愛人がいたのですが、その愛人が自殺してしまうのです。
         どうやら、愛人はその夫を毒殺したらしいというのです。
         愛人の夫の死亡を確認したのはシェパード医師だったため、アクロイドは「毒殺を疑わなかったか?」と尋ねるわけです。
         しかも、アクロイドが言うには、愛人は夫を殺した件で何者かに恐喝されていたというのです。
         それを苦にして自殺したのだと。

         シェパード医師にそんな話をしている最中に、執事のパーカーがやってきます。
         愛人から手紙が届いていると。
         開封して声に出して読み出すアクロイドですが、全てを読み終える前に「これは私信だから一人にして欲しい」と言い、シェパード医師を帰そうとします。
         シェパード医師は、真相を明らかにして欲しいという気持ちから全部読んで欲しいと頼むのですが、アクロイドはこれを拒否します。

         シェパード医師はアクロイド邸を辞去しますが、その庭先で何者かと出くわします。
         その時は誰か分からなかったのですが、後にそれは麻薬常習者であり、アクロイドの家政婦であるエリザベスの息子であるチャールズであることが判明します。

         シェパード医師が辞去した後、書斎からはアクロイドの声が聞こえていたという証言があります。

         自宅に戻ったシェパード医師ですが、間もなくして電話がかかってきます。
         アクロイド氏が死んでいるので至急来て欲しいという執事からの電話でした。
         急いでアクロイド邸にとって返したシェパード医師ですが、執事はそんな電話はしていないと言います。
         ですが、気になるので書斎を見たところ、アクロイドの死体が発見されたというわけです。
         これが大まかな事件概要ですが、色々と怪しい人物が登場しますよ。

         この作品、まともに読んだら、まず騙されるでしょう。
         その騙されることがこれほど快感だとは!
         素晴らしい書きぶりです。

         ef押しのクリスティの中では一、二を争う名作ではないでしょうか?
         クリスティのベストを決めろと言われたら本作を取るか、「ABC」を取るかかなぁ(個人的な趣味としてはそうなんですっ! 異論は認めません!)。

         推理小説史上に残る、大変「ひきょー」と言われるトリックを味わってみませんか?
         だって、だって、あの人が犯人だなんて……
        >> 続きを読む

        2019/02/27 by ef177

    • 他13人がレビュー登録、 42人が本棚登録しています
      ふたりの証拠

      堀茂樹 , アゴタ・クリストフ2001/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! asuka2819
      • 【誰もが悲しみを抱えている】
         「悪童日記」の続編です。
         読もう、読もうと思いながら先延ばしになっていたのですが、ようやく読めました。
         大変衝撃的な内容でした。
         一つひとつのエピソードもさることながら、全体の構成に打ちのめされました。

         本作は、「悪童日記」の主人公であった、「ぼくら」と表記されていた二人の幼い兄弟のうちの一人の「その後」を描いたものです。
         「悪童日記」をまだお読みになっていない方のために、詳しいことははしょりますが、兄弟のうち一人は外国に行ってしまい、もう一人はそれまで住み続けた家に残りました。
         その残った方の名前は「リュカ」。
         本作は、基本的に「リュカ」のその後を描いています。

         「リュカ」は周囲の人々から「白痴」と呼ばれていましたが、実は大変聡く、やさしい男性なのです。
         彼のまわりには様々な人々が現れ、彼と関わりをもっていきます。

         本作は、第二次世界大戦終結間もない、混沌とした世界を舞台にしていますが、戦争の傷跡は深く、様々な形で、すべての人が傷を負い、悲しみを抱えているのでした。
         それはもちろん、「リュカ」だって同じ事なのですが。

         「リュカ」は、しばらくはこれまで兄弟、そしてその前は祖母とも一緒に暮らしていた国境近くの小屋のような家で一人で生活していました。
         自給自足の生活で、夜になると酒場に出かけ、ハーモニカを演奏し、酒をおごってもらい(12歳の頃から酒を覚えたと言っています)、いくばくかのお金を稼いでいました。
         「リュカ」は、いつか帰ってくると信じている兄弟に宛てて、日記のような文章をノートに書いては削りを繰り返し、書きためていました。

         そんな「リュカ」は、ある日、川に赤ん坊を投げ捨てようとしているヤスミーヌという女性を見かけます。
         「リュカ」は、ヤスミーヌと赤ん坊を家に連れて帰り、以後、二人の面倒を見ることにしました。
         ヤスミーヌは、赤ん坊を川に投げ捨てた後、国境を越えてどこかへ行ってしまおうと考えていたというのですが、国境付近は地雷原であり、そんなことをすれば確実に爆死したことでしょう。
         それでも構わないのだと言うのです。
         何故そうなのかは……ご自身でお読み下さい。

         その他にも、「悪童日記」にも登場した、「ぼくら」がノートや鉛筆を手に入れていた書店兼文具店の店主、この店の向かいの家に住む不眠症の男、一時は「ぼくら」に強請られていた神父、終戦後この町を支配することになった共産党の幹部などの登場人物が「リュカ」との関わりの中で描かれていくのですが、あぁ、何てみんな悲しいのでしょう。

         「悪童日記」のシリーズは三部作です。
         最終巻の「第三の嘘」も近いうちに読んでレビューしたいと思います。
        >> 続きを読む

        2019/05/28 by ef177

    • 他10人がレビュー登録、 18人が本棚登録しています
      幼年期の終り

      アーサー・C・クラーク (1979/04

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      •  異星人との接触で人類は成功を約束されたと思いきや、実はそんな事は些細なことであり人類の未来は全く違っていたという題名通り、壮大な物語。オーバーロードの謎と動向を楽しく考えながら一気に読めます。謎は全て解けて満足。再読するとオーバーロード視点でまた別の感じを(悲哀)受けそうなので後で読もうと思います。
        >> 続きを読む

        2018/08/02 by pasuta

    • 他9人がレビュー登録、 25人が本棚登録しています
      第三の嘘

      堀茂樹 , アゴタ・クリストフ2006/06

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! karamomo asuka2819
      • 【これは一体どう解釈すればいいのだろうか……】
         「悪童日記」三部作の最終巻です。
         第一部「悪童日記」では、「ぼくら」と表記されている双子の兄弟の物語だったのですが、弟二部「ふたりの証拠」では、主としてその兄弟の片方、「リュカ」のその後の生活が描かれました。
         ですが……。もしかしたらもう一人の兄弟の「クラウス」などという者は存在せず、ただ一人の頭の中だけで生み出されたものではないのかという強烈な疑いが色濃く描かれていました。

         ところが、第三部の本作に入り、またもや大きくひっくり返されてしまうのです。
         これまで語られてきた「リュカ」と「クラウス」の物語は一体何だったのでしょう?

         双子の兄弟は、それぞれがノートに日記風(?)の文章を大量に綴っていたわけですが、それは事実なのか虚構なのかと問われると、「事実を書いているのだけれど、ある程度のところまで行くと、事実を書いているだけに書き続けられなくなり、話に変更を加えざるを得ないのだ」と答えます。
         では、どこまでが事実でどこからが虚構なのでしょうか?

         いやいや、そんなレベルの話ではないのです。
         弟二部までは、辻褄が合わない点が多々見られ、あるいは「リュカ」と「クラウス」は結局同一人物(というかそもそも一人しかいない)のではないかという「虚構」だったわけですが、それでも根本的なところではそれほど大きくは食い違っていなかったのです。
         ところが、本作に入り、根底からこれまでとは全く違う話になっているではありませんか。
         しかも、ところどころ、「リュカ」と「クラウス」が入れ替わっているのではないのか?と思わせるようなところもあったりします。

         これは一体どう解釈すれば良いのでしょうか?

         いずれにしても、この作品は三部作全てを順番に読む必要があります。
         そして、その混沌の中から何をくみ出すかは、それはおそらく読者それぞれに委ねられていることではないだろうかと感じました。
         おそらく、「正解」というものは無いのではないでしょうか?

         読む前にはこんな作品だとは思ってもみませんでした。
         意表を突かれただけに、大変強いインパクトを受けました。
         恐れ入りました。
        >> 続きを読む

        2019/05/28 by ef177

    • 他9人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      春にして君を離れ

      アガサ・クリスティ , 中村妙子2004/04

      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! Minnie MissTerry chao bakabonn Tukiwami
      • 久しぶりの読書。
        良妻賢母、幸せに生きてきたと語る主人公のジョーン。しかし、体調の悪い娘に会うためバクダッドへ旅をし、帰り道列車が遅れたため何日も足止めに。何もすることがない砂漠の街で、人生を振り返ると、次々に彼女にとって悪い考えが浮かぶ。


        全てをコントロールしていたはずの自分が実は何も知らなかった。向き合う勇気を持ち合わせず、夫や子供たちを理解していなかった。新しい自分に気がつき、帰国するジョーン。不思議とそんな彼女を応援する気持ちが芽生えるのだが、、、結末は、、、。

        救いは結局ジョーンのみならず、夫ロドニーや子供たちも彼女と向き合う勇気がなかったことかな。彼女だけのせいではない。そう考えているうちに、影の主役はレスリーではと思ったりも。

        女性向けの本何でしょうか。その辺はわかりませんが、夢中になり一気読みでした!
        >> 続きを読む

        2018/05/21 by fraiseyui

    • 他9人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      幻の女

      ウイリアム・アイリッシュ (1976/04

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 「顔を憶えるのが苦手な人間は、知らない相手を劇場に連れていったりしてはいけない」

        素晴らしいプロットと巧妙な構成。印象的なセリフと派手な小道具がちりばめられ、読者の興味を惹きつけ目を欺きます。
        そんなアイディアを凝らした技巧的な作品がお好きならこの小説はお勧め。
        前代未聞のトリックがなくても、ストーリーが多少乱暴でも人間的魅力が完全に描き切れていなくても、面白い作品になるのだと、うならされました。

        「幻の女」「パンプキンの帽子」「重要証言者の連続する死亡事故」「妻殺しの犯人とされた主人公の死刑までのカウントダウン」「兄弟のような関係の親友」「愛の無い結婚と若い愛人」などなど。色とりどりの要素が溢れています。
        一方で主要登場人物はとても少ないため、メインは犯人捜しではなく「無実の主人公を救う」お話しになっています。
        アリバイを証言できるはずの行きずりの女性は行方知れず、証言者はことごとく女の存在を否定するばかり。
        「幻の女」はいったい何者でどこへ行ったのか?

        「本当の友情には時間の制限(タイムリミット)なんてないんだよ」
        バージェス刑事の言葉によって旧友ロンバードが駆けつけてきます。
        刑事とロンバードとキャロルの3人の懸命な「幻の女」捜しは死刑執行日までに間に合うのか?

        ラストでついに現れた「幻の女」を追求するシーンはまさにサスペンスドラマのクライマックスです。
        ちょっとドキドキしちゃったことを告白しましょう。

        意外性とああやっぱり…のバランスがちょうどいい。
        だから名作として読み継がれているのですね。

        しかし、この作品、イマイチ納得できないのは人間性や人間心理についてむちゃくちゃな部分があるからです。
        人間というものは一貫した行動パターンがあるもので、殺人者にもそれが当てはまります。
        第1の犯罪が衝動殺人だとするならば綿密な偽装工作を必要とする第2第3の犯罪を即決で行えるものかどうか。
        容疑がかかることへの不安にかられてというならわかりますが、この場合は余計なお仕事をしているとしか…。

        最大の不満は妻を男の側から一方的に悪者に描いている点です。
        スコット32歳、妻マーセラ29歳、結婚歴5年
        キャロル とにかく妻よりもずっと若い愛人 
        「清楚で美しく彼を理解し献身的に愛してくれるいい女」
        まず、この三角関係があります。
        スコットは「正真正銘、本物の恋なんだ」「浮気ですませるなんて嫌だ」と、愛人と結婚するために妻に「隠しごとをしたくなかったから」打ち明け別れを切り出すが、
        妻は「結婚だけはさせてやらないわ」と、離婚を拒否…
        って、当たり前だと思いませんか???
        結婚した時、妻は24ですよ。
        今更あれは恋じゃなかっただって?
        何舞い上がっちゃってんの?馬鹿にするのもほどほどにしろ!
        って思いませんか?
        妻が変わってしまったのはスコットあんたのせいなんじゃないのか?
        最後二人でハッピーエンドってなったら、腑に落ちないと思いませんか?
        スコットがまた、どこが魅力的なのかさっぱりわからない男なんです。
        女扱いは下手、人を見る目もなさそうだし、超金持ちでもなければ人気者でもない、真面目でちょっと男前ではあるけれど、幼稚だし家庭的な男でもない。
        家では妻が子どもにするように面倒をみてくれるらしい。
        「あいつは――タオルをくれと言ったら出してくれたけど。しまってある場所は、今もぼくは全然知らないんです」だと~?!
        そんな男に
        「ぼくは妻が欲しかった。家にいる女は、本当の妻じゃなかった」
        などとのたまう資格があるものでしょうか?

        そんな男に殺人罪の容疑がかかって死刑を宣告されても最後の瞬間までつゆほども疑うことなく変わらぬ愛を持ち続けるけなげな女。
        ちなみに彼女は立派な女性なのでという理由で、最初から最後まで容疑は(共犯の疑いすら)全くかかっておりません。
        …男の妄想だな。この小説も。

        もう一つだめ押しのがっかりは「幻の女」の正体です。
        女の素性や行動の謎は結果的に曖昧なままです。
        「パンプキンの帽子」の謎も不発でした。
        歌姫に挑みかかった謎の行動にも意味がなかった?
        「ラテンの虱女!」とまで挑発していたのに?

        とまあ、いろいろアラはあるのに、夢中にさせる面白さはありました。
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        2016/08/30 by 月うさぎ

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      ゲイルズバーグの春を愛す

      ジャック・フィニイ (1980/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 【ノスタルジックな幻想譚】

         ジャック・フィニイの作品は、SFに分類されることも多く、本短編集に収録されている作品のいくつかも、いわゆるタイムスリップ物ですので確かにSF的要素はあるのですが、全体的な印象としては、むしろファンタジー色の方が強いかもしれません。
         そう、たとえば、ブラッドベリなんかに近いかもしれませんね。
         あるいは、本短編集に収録されている作品のうちいくつかは、O・ヘンリーやサキ(それほど毒はないですが)のようなテイストもあります。
         それでは、収録作からいくつかご紹介。

        ○ ゲイルズバーグの春を愛す
         表題作です。
         イリノイ州のゲイルズバーグという町を舞台にしたタイムスリップ物。
         この町では、時々過去と現在が交錯することがあるようです。
         ゲイルズバーグという町がどういう町なのかは知らないのですが、きっとそんなことがあっても不思議じゃないような雰囲気を持った町なのかもしれませんね。

        ○ 悪の魔力
         とあるマジック・ショップで売っていた奇妙な品物に思いがけない魔力が込められていたというお話です。
         この物語に出てくる素通しの眼鏡は、それをかけると女性の衣服が透けて下着姿が見えるというもので(魔力がそれ程強力ではないため、下着までは透けないようです)、主人公の男性は大喜びしてしまうのです。
         ……でも、ということは男性だってそういう姿に見えるんじゃないの?

        ○ クルーエット夫妻の家
         家の中には、住人を喜ばせようとして快適に過ごさせてくれる家があるのだそうです。
         設計事務所に新築家屋の設計を依頼しにやって来たクルーエット夫妻が選んだのは、古い設計図に描かれたヴィクトリア朝時代の家でした。
         何もこの家に住むというつもりではなく、商売でやっているヨット販売のために、客の目をひくような建物であれば良いということで選んだのですが、いざできあがってみると……。

        ○ 時に境界なし
         ちょっと犯罪小説テイストのあるタイムスリップ物です。
         主人公である物理学教授は、警察が追っている犯人を過去の時代に逃がしてやっていました。
         これに気付いた警部は、何としてでも現代に呼び戻せと教授に迫るのですが、既に過去の時代に行ってしまった犯罪者と接触する術はなく、それは不可能なことでした。
         しかし、執念の固まりの警部は、犯人を逮捕するある方法を思いつきます。
         その方法とは? そしてその思惑通りになるのか?

        ○ 愛の手紙
         この作品集の中で私が一番好きな作品です。
         この度再読したわけですが、再読する前からこの作品は記憶に残っていました。
         物語は、若い男性が骨董品店で買ってきた古い机のお話です。
         その机には隠し引き出しがあり、その中にこの机を使っていたであろう、昔の女性が書いた手紙、しかも出されなかった手紙が入っていたのです。
         それは恋人に愛を告げる手紙でした。
         主人公は、この手紙の主に惹かれ、隠し引き出しに入っていた古い便せんに古いインクを使って返事を書きました。
         そして、コレクションしていた古切手を貼って、この手紙の主が生きていた頃から町にあった古い郵便局に行ってその手紙を投函したのです。
         1週間後、2番目の隠し引き出しを開けたところ、何と、あの女性からの返事が届いているではないですか。
         隠し引き出しはもう一つだけあります。
         あと、もう一度だけ手紙のやり取りができるはず。
         これもタイムスリップ物ですね。

         作家には、その作家特有の雰囲気、文体、味があります。
         私も、ジャック・フィニイにはそんな独特の味を感じます。
         というのは、これも大分以前の事なんですが、早川書房から出ている『異色作家短編集』というシリーズの一冊、『レベル3』という本を読んだ時、本作のことはすっかり忘れていたのですが、どうもどこかで読んだような味わいだと感じたのです。
         そして、『レベル3』の巻末解説を読んだところ、「あ!あの『ゲイルズバーグの春を愛す』の著者だったんだ!」と初めて気がついたという次第。
         すごく納得しました。
        >> 続きを読む

        2019/04/20 by ef177

    • 他7人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      オリエント急行の殺人 クリスティー文庫)

      アガサ・クリスティ , 中村能三2003/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね!
      • 再読。
        この小説は私が初めて読んだ本格ミステリである。
        クリスティの代表作であるが、本格ミステリを読んだことがない人は、初めて読む本格ミステリとして、本書と「アクロイド殺し」は避けていただきたい。
        なぜかというと「全ての本格ミステリの犯人はこのパターンなのか」と誤解する可能性があるからである(そのせいで僕は本書を読了後しばらく本格ミステリを読まなくなった苦い思い出がある)。
        本書と類似のトリックとして、森博嗣の某作品や清涼院流水の某作品が挙げられる。
        第二部の証言(関係者の証言シーン)に100ページ以上(全体の三分の一以上)のボリュームを割いており、これを丁寧と見るかまどろっこしいと見るか意見が別れるだろう。
        登場人物の一人のクリスチャン・ネームが「ハーマイオニ」なのは笑った。
        クリスティの作品は、誰の訳でも読みやすく、何を読んでも面白く(今のところ)、まさにミステリの女王である。


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        2019/06/01 by tygkun

    • 他7人がレビュー登録、 24人が本棚登録しています
      あなたの人生の物語

      浅倉久志 , テッド・チャン2003/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! Tukiwami

      • 8つの宝石に輝く冠と言えばいいだろうか。

        ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞といった錚々たる賞を受賞した8つの短篇を収録した作品集の「あなたの人生の物語」を再読。

        SFにあまり詳しくない方は、これらの賞はノーベル文学賞みたいなものだと考えてもらえばいいと思います。
        そういう人にも、是非、読んでみて欲しいと思いますね。

        もし神が始終この世に現われるようになったら?
        容姿の美貌に無関心になる装置ができたら?
        呪文が実在する社会があれば?
        どんな事柄も一個の文字にしてしまう言語があったら?

        そんな「もし」から、一つ一つの作品は始まります。
        それは言ってみれば、SFの定石通りではあるのですが、その「もし」を小道具にした冒険やファンタジーの物語ではないんですね。

        著者のテッド・チャンが描くのはむしろ、その「もし」が実現された仮想世界そのものであり、それを鏡にして、そうでない私たちの世界の本当の姿を映し出したんですね。

        例えば、神がいないことで、不平等が個性でもあることによって、あるいは過去を凍らせることで、この世界は成りたっているのだ、と。

        なかでも表題作の「あなたの人生の物語」は、特に美しい。
        あらゆる事柄を一つの文字で表わす異星人との出会いが語られるのですが、欧米人よりむしろ、日本人の方がなじめるのかもしれません。

        この文字では、既存の文字を組み合わせて、どんどん新たな文字がつくられる。
        いわば、漢字のスペシャル版なんですね。

        だが、その奇抜さがこの作品のテーマではないと思う。
        「もし」こんな文字があれば、それは因果とは別の形で世界を表現できる。

        そんな仮想の中で、言語の本質や「私とあなた」をめぐる深く鋭い思惟が、物理法則の可逆性の問題と見事に溶け合いながら、一人の母から娘への手紙へ流れ込み、人の"生と死の意味"を塗りかえていく。

        最後の数行を読み終わった時、私はただゆっくり息をすることしかできなかった。

        著者のテッド・チャンは、中国系のアメリカ人。
        文字や言語への鋭い感性は、その出自と無関係ではないだろう。

        いずれにしても、この作品は、言葉が持つ可能性の深さを教えてくれる、優れて知的で刺激的な作品だと思いますね。

        >> 続きを読む

        2019/01/31 by dreamer

    • 他6人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      タイタンの妖女

      浅倉久志 , カート・ヴォネガット2009/02

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! Tukiwami
      • 「作者さんの実体験からくる、無慈悲とシニカル感覚、それに慈愛。」

        それを

        「宇宙空間にある時間等曲率漏斗に突っ込んだ結果、歪んだらせんの内部で波動的存在になった。」

        という表現で抽象(観念思考)と具象(現実感覚)のすり合わせと融合を上手く宇宙の観方(みかた)として、現実と観念をこすり合わせるというよりは、ふわふわ漂う、地球での重力の感覚を起点に観念の宇宙遊泳を愉しむ感覚で表現しているという感じでしょうか?

        「殺してしまった事も、死ぬときにはトラルファマドール星人のサロのかけた後催眠幻覚の力などで、登場人物たちはそれぞれに自分達の生きる場所を見つけ、人生を思い残すことなく全うしていく」様で、人の業や観念の上手な扱い方も感じられそうです。

        また、「読書の本質についても正しい認識の持ち主である太田光さんの愛のある書評」も楽しみです。

        私は、

        「私はなんのために生きているのだろうか?」

        という観念の道草をたま~にひとりですることはありますが、生きる動機が「死にたくないから」という弱~いものですし、「その答えは示さないまでも、答えの存在を感じさせてくれる」という「分けわからん、でも感じ取れそう」な感覚を感じて「人生の一冊になりうる本だと思」われた様に、その「答えが実際に感じられる感覚」が私には宝物になりそうで、

        この『タイタンの妖女』に乗り込んだほうが宇宙遊泳を愉しめそうです。

        読後、「淋しかったり悲しかったり」はしそうですが虚しくはならなそうで、『タイタンの妖女』独特の美しさを自分に滲ませてみたいです。


        以上、皆さんのレビューやコメントを読んでの気持ちをしたためてみました。
        >> 続きを読む

        2019/01/10 by 月岩水

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      火星年代記

      小笠原豊樹 , レイ・ブラッドベリ2010/07

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 『今夜の大気には時間の匂いがただよっていた。トマスは微笑して、空想をかけめぐらせた。ひとつの考え。時間の匂いとは、どんなものだろう。

        埃や時計や、人間に似た匂いか。時間の音とはどんな音か。暗い洞窟を流れる水の音か、泣き叫ぶ声か、うつろな箱の蓋に落ちる土くれの音か、雨の音か』
        (2033年8月『夜の邂逅』)

         レイ・ブラッドベリのこの『火星年代記』を初めて読んだのは中学生の時です。
        フレドリック・ブラウンのブラックなユーモア短篇とSFというよりロマンチックな文学であるレイ・ブラッドベリと出会ったことはとても大きい。
        ブラッドベリ好きは、たくさんいて特にこの『火星年代記』は有名でしょう。

         たくさんの幻想的SF小説を書いたレイ・ブラッドベリ。その原点とも言えるのがこの『火星年代記』です。
        「新訳」となっているのは、年代。各章は1950年に書かれた時は「未来」は1999年だったのが、この新訳では2030年になっています。

         しかし、年代を31年先にしたからといって、この物語の詩情性は全く失われず、当時、中学生だったわたしが今の年になって再読しても十分、生きている。

         ブラッドベリはロマンチックで幻想的で、そして宗教的です。
        宇宙=アメリカ、となりがちなSFの世界で、これだけ古典を大事にしているSF小説をわたしは知りません。

         特に、2036年の『第二のアッシャー邸』は、エドガー・アラン・ポーの世界の忠実な再現であり、オマージュです。古典や詩を大事にしている世界には、いつでも過去と未来が同居しています。

         新しいものだけに目が行くのではなく、過去をしっかり見据えた上で、未来がある、というレイ・ブラッドベリのまなざしがよくわかるようです。

         地球から火星へ・・・まるで植民地化するように、人間は愚かな支配をはじめる。
        しかし、時が経つ内に同じ歴史を繰り返すむなしさを実感する人びとも出てくる。

         地球と火星・・・となっていますが、これは、アメリカと他の国となぞらえてもいいのではないでしょうか。『夜の邂逅』で描かれる火星人と地球人の一夜の邂逅が現しているように、出会いはいつも突然で、そして理解はいつもほど遠い。
        火星を地球化する事が、この小説の目的ではありません。

         古き良きものを、忘れない・・・新しい者は昔からいた者を大事にしなければならない、古きしきたりや異文化を自分たちの価値観で一刀両断してはいけない、しかし、それはとても難しいことなのです。
        >> 続きを読む

        2018/06/03 by 夕暮れ

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