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(株)早川書房 (ハヤカワシヨボウ)

企業情報
企業名:早川書房
はやかわしよぼう
ハヤカワシヨボウ
コード:15
URL: http://www.hayakawa-online.co.jp/
      アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

      フィリップ・K・ディック (1977/02

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! pasuta KEMURINO
      • 普段SF作品を読まないので、はじめは独特の世界観に馴染めずにいたが、中盤くらいからぐいぐい引き込まれていった。

        レイチェル、ガーランド、ミス・ラフト、レッシュ、次々と現れる魅力的な人物、あるいは「それ」と呼ばれるもの。

        彼らと比べると、主人公リック・デッカードは、これといって特徴のない男だ。人並みの虚栄心と、あまりうまくいっているとは言えない家庭をを持ち、アパートの屋上で電気羊を飼っている。彼の職業は賞金稼ぎ。それだけが彼の輪郭を際立たせる。

        人間とアンドロイドの違いとは、なんだろう。機械猫と「本物の」猫の見分けもつかないピンボケの男にさえわかった、何か。とびきりの知性と、高い自尊心と、短い一生の中で、アンドロイドには得られない何か。

        かわいそうなアンディ。悲しきエンパシー。人間とは。
        >> 続きを読む

        2017/12/12 by あやこ

      • コメント 2件
    • 他24人がレビュー登録、 70人が本棚登録しています
      わたしを離さないで

      土屋政雄 , カズオ・イシグロ2008/08

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 読んでいる途中、とても不思議な感じがした。

        まずは情報量の多さ。
        物語に必要な情報はもちろんだが、情景描写の綿密さに驚いた。行間も書いておくねってぐらい細かい。
        この情報は今後の展開で必要なのかなぁってところも多いし、そうかと思いきやさらっと衝撃的な内容が投下されるし…。
        ゴールに向かってしっかり進んでいるのかなぜかずっと不安だった。

        そしてヘールシャムの生徒たち。
        内容が内容なだけに、読み手が勝手に「かわいそう」とか、「もっとこうしたらいいのに」とかすっきりしない感情を持ちそうになる。
        けど、詳細に描かれた情景描写から伝わる、生徒たちの懸命に生きている様子が微笑ましくて、痛くて…誰がこの生徒たちに偉そうに人生を説くことができるのか…。

        少なくとも私はキャシーたちに対して、何も言葉にできない。何も。感想すら、言葉にできない。
        今も一文字一文字を注意深く、頭をフル回転させながら打っている。

        そしてラスト。
        ゴールに向かっているのかと思ったら、そうではなかった。
        あんなに細かい描写だったのに、結局物語の核心は読み手に託されていた。

        教わっているようで、実は教われていない。

        読み終わったけど、きっとまだ色々なことが理解できていないんだろうなぁ…

        ただ、個人的には情景描写が細かすぎて嫌気が差したのと、どうもこのテーマは心に負担が大きいので、再読は10年ぐらい見送りたい。
        >> 続きを読む

        2018/01/11 by 豚の確認

    • 他18人がレビュー登録、 50人が本棚登録しています
      そして誰もいなくなった

      アガサ・クリスティ , 青木久恵2010/10

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! chao sunflower tadahiko tomato Minnie napori
      • ミステリー界の王道である、この作品を、今更ですが読みました。

        今年の春に、二夜連続で放送されたドラマを見たのがきっかけです。

        犯行トリックがどうとか言うより、

        ・「犯人の動機」

        ・「一人、また一人と死んでいくその状況での、人間の心理」

        に着目した小説でした。
        >> 続きを読む

        2017/06/11 by ゆずの

    • 他17人がレビュー登録、 82人が本棚登録しています
      夏への扉

      福島正実 , ロバート・アンスン・ハインライン2010/01

      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! kimiyasu Tsukiusagi snoopo
      • 匿名

        最初は海外物ならではの翻訳の難しさがあったけども、後半に行くに連れて面白さが勝ってきました。面白すぎて集中しすぎて、電車を二駅程乗り過ごしてしまい学校に遅れるというエピソードが作られました。 >> 続きを読む

        2017/12/27 by 匿名

    • 他16人がレビュー登録、 59人が本棚登録しています
      アルジャーノンに花束を

      ダニエル・キイス , 小尾芙佐1999/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! momomeiai Minnie sunflower tadahiko Erika
      • 本棚にあったので読んだけど、童話のようで・・・好みではなぁったかな。映像化されても見る気になれなかったのは、キャストがいまいち好きになれなかったから。 >> 続きを読む

        2017/09/21 by umi

    • 他16人がレビュー登録、 68人が本棚登録しています
      虐殺器官

      伊藤計劃2010/01

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 伊藤計劃の生み出す世界観、内容の濃さに夢中になりました。破滅的な結末も愛する人々を守るゆえか。 >> 続きを読む

        2017/06/10 by hiro2

    • 他14人がレビュー登録、 60人が本棚登録しています
      悪童日記

      アゴタ・クリストフ , 堀茂樹2001/05

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! karamomo Fragment asuka2819 Shizu
      • すごいな…としか言えない←語彙力TT
        ああいう結末になったのは、なぜなのだろう。
        編も気になる。
        映画も観てみたい。
        >> 続きを読む

        2017/11/25 by pink-tink

      • コメント 2件
    • 他14人がレビュー登録、 29人が本棚登録しています
      アクロイド殺し

      アガサ・クリスティ , 羽田詩津子2003/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね! chao Minnie
      • 本書を読んだのは数十年前、僕がまだ20歳代のころ。

        いまでは数ヶ月前に読んだ本のストーリーさえ(ひどいときは読んだことさえも)思い出せないことが多いのに、本書に関しては忘れることは出来ません。

        その理由は本書の結末、そして事件の真相が当時画期的だったからであり"それでは、どこがどう画期的なのか"を書くことも出来ない、あるいはそのことを書けばかなりのルール違反者になるからです。

        とはいえ、僕はアガサ・クリスティ作品は本書と「邪悪の家」しか読んでいないので、果たして本書がクリスティの最高傑作なのか正直分かりません。

        ただ、本書を読んでいない、もしくはこれから読もうする人が羨ましいです。裏表紙のあらすじも読まず、すぐに楽しんで下さいませ。

        蛇足情報をひとつ・・・クリスティの別の代表作でもある「オリエント急行殺人事件」が戦前翻訳された時の邦題はネタバレそのもので、大ヒンシュクだったそうですよ。
        >> 続きを読む

        2017/11/10 by アーチャー

    • 他12人がレビュー登録、 39人が本棚登録しています
      一九八四年

      ジョージ・オーウェル , 高橋和久2009/07

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 「ニュースピークの諸原理」に代表されるような完璧で徹底した世界観の設定が圧倒的すぎる。 その中で語られる、「人間の壊し方」みたいな。 >> 続きを読む

        2017/10/27 by lafie

    • 他11人がレビュー登録、 37人が本棚登録しています
      ふたりの証拠

      アゴタ・クリストフ , 堀茂樹2001/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! asuka2819
      • 「死ぬほど辛い孤独の中で生き」ているリュカとクラウスの物語。
        読者をわなにかける。ミステリーにも似ただましの構造を持つ小説だった。
        第一部とされる「悪童日記」のエンディングの直後から物語は始まる。まるっきり続きのように。
        しかし小説のスタイルは全く異なっている。
        62章のタイトル付きのエピソードから成る一人称複数(Nous)が語る「悪童日記」と異なり、全8章+エピローグからなる3人称小説だ。
        そして双子をはじめ、登場人物に名前がついている。
        この国に残った双子の片割れはリュカ(LUCAS)。去って行ったのはクラウス(CLAUS)だそうだ。
        (アナグラムである。まずここで冗談かと思う)
        本屋にも女中にもみんなに名前がある。あのおばあちゃんでさえ、最後にマリア・Zという名前が明かされる。神父さま以外は…。いや、Monsieur le cure(司祭さん)からmon pere(神父さん)へと呼び名が変わっている。神父もリュカを「おまえ(Tu)」と呼び始める。ということはそれまではあなた(Vous)で呼びかけていたということになる。(「悪童物語」の日本語訳はおまえたちでしたが)そしてリュカも「そのほうがぼくもうれしいですよ」と親しみを打ち明けるのだ。
        「悪童日記」から双子を親しく知る司祭だけが名前を与えられない代わりに「父」(ペールは本来父を指す言葉だ)の座を与えられたということだ。
        神父とリュカの心の交流がこの物語の最高で唯一のまともな小説らしい部分だ
        「ぼくに感謝なんかしないでください。ぼくの内には、どんな愛も、どんな思いやりもありはしないんです。」
        「それはおまえの思いこみだよ、リュカ。私はその反対のことを確信しているよ。おまえは、かつて心に受けた傷がまだ癒されていないだけなんだ」
        「おまえは情熱的で苦悩しやすい性格だけに、重大な結果を招くところまで、引き返すことのできない旧知まで突っ走りかねない…。しかし私は希望を失いはしない」
        …にも関わらず神父さんは中盤で退場させられてしまう。
        国境の町でのリュカの日々の暮らしぶり、恋愛模様が描かれ一見普通の小説になったかのように、前作のファンはちょっと裏切られたようにさえ感じるかもしれないが、実際には「悪童物語」よりも人物たちのリアリティは薄い。そして神父の不在はそれに追い打ちをかけるものとなる。

        年齢が詳しく語られているのも前作との違いだ。
        この物語の冒頭でリュカは15歳、この町に来たのは6年前、9歳の時。
        16歳の時にヤスミーヌ(18歳)とマティアス(0歳)に出逢い、アニェスと再会したのは9年後なので24歳、マティアスは7年と4カ月生きた。そしてリュカ30歳の時に失踪。
        クラウスが帰ってきたのは50歳。
        誕生日も秋から年内までの間と推定される。けれどそれがわざとらしいというか…。

        近親相姦によって産まれた不具の子どもマティアスとはクラウスの子供時代の象徴であろう。
        1歳になるかならないかで7~8歳並みの知力を持ち、嫉妬や皮肉に歪んた心を持ち精神障害的言動を繰り返す。孤独な上に心を愛憎に引き裂かれた悲しい少年として存在する。
        そしてリュカはマティアスを心の拠り所として偏愛する。不自然な程に。

        違和感は他にもある。
        そもそも冒頭で「父」の死体を確認するところからおかしい。
        国境警備兵も地元民も司祭も、誰も双子の片割れの失踪に「気づかない」異様さ。
        リュカは「さて、これからどうしようか?」「以前と同じようにする…。」
        と一人二役の独り言をつぶやくだけ。
        そして国境の外に去ったクラウスの外国での暮らしは全く語られないまま連絡も無く物語は進む。
        双子なんて初めからいなかったのだろう。という疑惑はペテールの言葉でほぼ確実となった…かと思いきや…?!
        最終章に突如登場する「本物のクラウス」とは誰なのか?
        そしてリュカの消滅。

        もはや物語にあったはずの透明感は消え失せ、茫洋とした姿へと変容していることに気づくだろう。

        「メタ・フィクション」の酩酊感を味わわせてくれるなんとも驚きの結末。
        (小説内でフィクションをフィクションであると暴くスタイルをメタ・フィクションと呼びます)
        そして読者はその続きを真相を求めて第3部を読まずにいられなくなる。

        「真実」は何?

        そんな読者の問いかけに、作者の含み笑いが聞こえてきそうだ。
        >> 続きを読む

        2017/03/02 by 月うさぎ

      • コメント 6件
    • 他9人がレビュー登録、 16人が本棚登録しています
      幼年期の終り

      アーサー・C・クラーク (1979/04

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • SFを語る上で外せない名作。宇宙人による地球人の管理という後世のSF及び全てのジャンルの創作のモチーフにされ、影響を与え続けている。
         注目できるのは、オーバーロードの総督であるカレルレンの地球人に対する態度である。前半はあくまで総督、管理者としての姿勢を崩さなかったが、後半は、自身らもオーバーマインドの支配下におり、メタモルフォーゼした人類に対して「きみたちにはいけるよ」といったような一種の諦念をみせているのが面白い。
         ハードSFとしての側面もありながら、文学としても優れたこの作品は、進化する地球人を描くことを通して、科学技術と倫理の問題、超自然的事象に対する解釈といった、様々なことを考えさせる。
         私は、文化圏に所属するというアイデンティティを失いたくはないと思うが、新たなアテネの住人になるのだろうか。それとも、与えられた余暇を与えられた娯楽で消費するのだろうか。選択の時は近いかもしれない。
        >> 続きを読む

        2017/05/17 by shinshi

    • 他8人がレビュー登録、 24人が本棚登録しています
      幻の女

      ウイリアム・アイリッシュ (1976/04

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 「顔を憶えるのが苦手な人間は、知らない相手を劇場に連れていったりしてはいけない」

        素晴らしいプロットと巧妙な構成。印象的なセリフと派手な小道具がちりばめられ、読者の興味を惹きつけ目を欺きます。
        そんなアイディアを凝らした技巧的な作品がお好きならこの小説はお勧め。
        前代未聞のトリックがなくても、ストーリーが多少乱暴でも人間的魅力が完全に描き切れていなくても、面白い作品になるのだと、うならされました。

        「幻の女」「パンプキンの帽子」「重要証言者の連続する死亡事故」「妻殺しの犯人とされた主人公の死刑までのカウントダウン」「兄弟のような関係の親友」「愛の無い結婚と若い愛人」などなど。色とりどりの要素が溢れています。
        一方で主要登場人物はとても少ないため、メインは犯人捜しではなく「無実の主人公を救う」お話しになっています。
        アリバイを証言できるはずの行きずりの女性は行方知れず、証言者はことごとく女の存在を否定するばかり。
        「幻の女」はいったい何者でどこへ行ったのか?

        「本当の友情には時間の制限(タイムリミット)なんてないんだよ」
        バージェス刑事の言葉によって旧友ロンバードが駆けつけてきます。
        刑事とロンバードとキャロルの3人の懸命な「幻の女」捜しは死刑執行日までに間に合うのか?

        ラストでついに現れた「幻の女」を追求するシーンはまさにサスペンスドラマのクライマックスです。
        ちょっとドキドキしちゃったことを告白しましょう。

        意外性とああやっぱり…のバランスがちょうどいい。
        だから名作として読み継がれているのですね。

        しかし、この作品、イマイチ納得できないのは人間性や人間心理についてむちゃくちゃな部分があるからです。
        人間というものは一貫した行動パターンがあるもので、殺人者にもそれが当てはまります。
        第1の犯罪が衝動殺人だとするならば綿密な偽装工作を必要とする第2第3の犯罪を即決で行えるものかどうか。
        容疑がかかることへの不安にかられてというならわかりますが、この場合は余計なお仕事をしているとしか…。

        最大の不満は妻を男の側から一方的に悪者に描いている点です。
        スコット32歳、妻マーセラ29歳、結婚歴5年
        キャロル とにかく妻よりもずっと若い愛人 
        「清楚で美しく彼を理解し献身的に愛してくれるいい女」
        まず、この三角関係があります。
        スコットは「正真正銘、本物の恋なんだ」「浮気ですませるなんて嫌だ」と、愛人と結婚するために妻に「隠しごとをしたくなかったから」打ち明け別れを切り出すが、
        妻は「結婚だけはさせてやらないわ」と、離婚を拒否…
        って、当たり前だと思いませんか???
        結婚した時、妻は24ですよ。
        今更あれは恋じゃなかっただって?
        何舞い上がっちゃってんの?馬鹿にするのもほどほどにしろ!
        って思いませんか?
        妻が変わってしまったのはスコットあんたのせいなんじゃないのか?
        最後二人でハッピーエンドってなったら、腑に落ちないと思いませんか?
        スコットがまた、どこが魅力的なのかさっぱりわからない男なんです。
        女扱いは下手、人を見る目もなさそうだし、超金持ちでもなければ人気者でもない、真面目でちょっと男前ではあるけれど、幼稚だし家庭的な男でもない。
        家では妻が子どもにするように面倒をみてくれるらしい。
        「あいつは――タオルをくれと言ったら出してくれたけど。しまってある場所は、今もぼくは全然知らないんです」だと~?!
        そんな男に
        「ぼくは妻が欲しかった。家にいる女は、本当の妻じゃなかった」
        などとのたまう資格があるものでしょうか?

        そんな男に殺人罪の容疑がかかって死刑を宣告されても最後の瞬間までつゆほども疑うことなく変わらぬ愛を持ち続けるけなげな女。
        ちなみに彼女は立派な女性なのでという理由で、最初から最後まで容疑は(共犯の疑いすら)全くかかっておりません。
        …男の妄想だな。この小説も。

        もう一つだめ押しのがっかりは「幻の女」の正体です。
        女の素性や行動の謎は結果的に曖昧なままです。
        「パンプキンの帽子」の謎も不発でした。
        歌姫に挑みかかった謎の行動にも意味がなかった?
        「ラテンの虱女!」とまで挑発していたのに?

        とまあ、いろいろアラはあるのに、夢中にさせる面白さはありました。
        >> 続きを読む

        2016/08/30 by 月うさぎ

      • コメント 10件
    • 他8人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      第三の嘘

      アゴタ・クリストフ , 堀茂樹2006/06

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! karamomo asuka2819
      • 国境を越えたリュカはクラウス(CLAUS)になった。
        「第3の嘘」は「私」を使った一人称小説に変っていた
        「悪童日記」と「ふたりの証拠」、それぞれの続きが交互に同時進行的に語られる第一部はクラウスが語る、亡命後の物語。
        4月22日、40年の不在ののち、私は子供の頃の思い出の小さな町に帰ってきた。
        亡命先の「豊かで自由な国」では死にたくないとの一心で。

        リュカの不運で哀しい生い立ち、父母の本当の姿。おばあちゃんの正体。
        親友のペテールもクララもK市ではなく亡命先での実在人物。
        国境越えで爆死したのは父ではなかったしリュカがクラウスと変名したのだとわかるし、悪童日記はリュカひとりの創作と判明
        そうかこれが真相だったのか…。
        「耐えがたい孤独に耐えるために自分が生み出した想像」?!
        なんと寂しい『真相』なんだ!

        第二部は双子の片割れの本物のクラウス(KLAUS)によって書かれた手記。
        リュカの孤独に負けない「心の孤独」が語られる。
        リュカのことしか頭にない狂った母との生活の悲惨。真実を知ることの残酷さ。
        リュカに対する愛は積年の恨みで恐怖と憎しみに変っていたのだろう。それは「母」を奪われたくないという一念によるものだ。
        なんと救いの無い人生なんだろう。

        ……と感じてしまった人はまたしてもアゴタの罠にはまっている。
        ちょっと待ってほしい、この小説のタイトルは「第3の嘘」なのだ。
        ここに書かれることも「嘘」なのだよという著者の宣言がこの題名なのではないかしら?

        「私は確信しているんだよ、リュカ。全ての人間は一冊の本を書くために生まれたのであって、ほかにはどんな目的もないんだ」

        アゴタはまさにこの通りのことを実際に成し遂げた。
        双子の物語は祖国を失ったアゴタの心の物語だった。
        主人公は<K市>すなわちクーセグの町であったかもしれない。

        二人が子どもの頃<K市>で、それと知らずにニアミスした機会がたった一度だけあった。
        貧しさから、夜中居酒屋をハーモニカを吹きながらはしごして日銭を得ているリュカは窓の中に4人の「家族」の姿を見たかもしれないし、
        「あの子は町じゅうの庇護のもとに、そして神の庇護のもとにあるんだ」と語られたリュカを、クラウスは「あの子、きっと幸せなんだ」「きっとそうだ」と暖かい家の中から眺めて羨む
        視点が変わっただけで幸せの姿が変わる。
        真実なんて所詮こんな程度の移ろいやすい物なのだ。

        作者が描きたかったのは不在の証明であり、不在は決して証明できないという点こそが真理なのだ

        人間は移ろって行ってしまう。存在するのは町だけだ。
        多くの人生がそこを通り過ぎ、命が生まれ散っていくのを見守っている町だけが…。

        そして「嘘」とはすなわち「小説」を指す。
        なんてことはない。第3の嘘とはストレートに3作目の「小説」であるという意味に過ぎない。
        小説=フィクションとはすべて「嘘」なのだから。

        「自分が書こうとしているのはほんとうにあった話だ。しかしそんな話はあるところまで進むと、事実であるだけに耐えがたくなってしまう。そこで自分は話に変更を加えざるを得ないのだ」

        作者の実体験や心情が語られていようとも、文字にしたものは全て書かれた途端に嘘になる。
        一度でも小説を書こうとしたことのある人ならこの感覚はリアルにわかるに違いない。
        事実を描こうとすればするほど、表面に描かれるのは嘘の物語にならざるを得ないということを。
        なれば嘘の物語に本当を込めるのだ。
        優れた小説とはそういうものであり、それができるのが真の作家なのだ。

        「一冊の本は、どんなに悲しい本でも、一つの人生ほど悲しくはありません」
        こう書いたアゴタの悲しみとはいったいどんなものだったのか。
        それは本書を読み終えた後、反芻して想像するしかない。
        >> 続きを読む

        2017/03/08 by 月うさぎ

      • コメント 4件
    • 他8人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      日の名残り

      土屋政雄 , カズオ・イシグロ2001/05

      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 初読。遠い昔の英国が舞台だが、久しぶりに川端や谷崎を味わっているような文学の美しさを堪能。

        最近「品格」を問う出来事が後を絶たないが、経済、国勢が傾くと、品は二の次になるようだ。

        英国のように歴史、文化、伝統が成熟し切った国でも「品格」が揺らいだ時代性と、人生の終焉へ向かうの主人公の心境がシンクロするラストの日の名残りが実にほろ苦く、美しかった。
        >> 続きを読む

        2017/11/24 by まきたろう

    • 他7人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      ゲイルズバーグの春を愛す

      ジャック・フィニイ (1980/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「タイムトラベル小説」というジャンルがあります。
        日本で有名なのは、筒井の「時をかける少女」とハインラインの「夏への扉」ではないでしょうか。
        「夏への扉」の話がでるとヤングの「たんぽぽ娘」が引き合いに出され、
        ヤングの話がでると本作「ゲイルズバーグの春を愛す」が話題になるのです。
        なぜなのか?
        今回の課題図書はきっとハインラインだヤングだと年中言っている私への読書ログさんの挑戦ね。
        そんな気がして手に取った本作でした。

        思い出や「古き良き時代」に関した短篇小説が並びます。
        大甘なSF?いいえ、SFという訳でもありませんでした。
        短篇小説作家として評価するなら悪くないです。
        だとしてもO.ヘンリーやサリンジャーやらジャック・リッチーやらもっと読むべき妙手がおりますし…。
        ヤングは少なくとも(書かれている内容はともかく)精神は確かにSFだったのです。
        これはファンタジー…いやむしろロマンティックな怪奇小説というべきなのではないかしら。
        不思議な事どもについての合理的な説明も、センス・オブ・ワンダーもないからです。
        登場人物がみつめているのは未来ではなく過去への郷愁(ノスタルジー)です。

        フィニイの魅力はなんといっても19世紀末~1950年代のアメリカの風景や建物の描写です。
        しかし日本人にとっては原風景としてはイメージの中に全くない情景なのですよね。
        映画だったならどれだけ助かるだろうと思いながら想像力を駆使して読みました。

        この本の表紙は内田善美氏の美麗で緻密なイラストで飾られています。
        (これはおそらく「愛の手紙」を表現したのですね)
        70年代の少女漫画ファンにとっては彼女の絵と出会えたことは
        本小説以上にタイムトラベル的な驚きを感じました。
        ...( - -)遠い目

        でも背景の風景は当作品世界とは違う気がします。
        石造りの建物、狭い石畳の街路、高くそびえる塔。
        これはヨーロッパの風景であってアメリカの標準的な都市の町並みではないのです。

        ペンキで明るい色に塗られた木造のゆったりした建物が芝生の庭をもった広い敷地に点在し、路地もなく塀もなく、巨木の並木が真っ直ぐな街路をトンネルに変える。
        フィニィによればそれがアメリカの田舎町なのですから。

        フィニィは「古き良き時代」に撞着し現実拒否をしている作家なのだそうです。
        この時代のアメリカ人の気分を表した、時代の作家でもあるようです。
        60年代の日本は高度経済成長真っ盛りで懐古趣味に浸っていた人はほぼ皆無だったでしょうね。
        戦争に勝ったアメリカが先行きに悩み落ち込んでいた。皮肉な話ですね。


        【内容】
        1.ゲイルズバーグの春を愛す
          (I Love Galesburg in the Spring-Time)
         イリノイ州の小都市ゲイルズバーグはノックス大学を擁する美しい町。リンカーンゆかりの歴史ある町でもある。
         しかし近代化の流れは容赦なく、町の姿を変えようとしていた。
         新聞記者のオスカーだけは気づいていた。
         この町で不思議な事件が頻発していることを。

        この小説に出てくる家ってきっとこんなイメージでしょう。
        http://www.visitgalesburg.com/uncategorised/galesburg-historic-home-tour/queen-anne-residence-built-1894.html
        Queen Anne houses(1894築)

        http://www.visitgalesburg.com/uncategorised/galesburg-historic-home-tour/william-browning-house-built-1868.html
        The Browning Mansion(1868年築)

        ミステリーやホラーになりがちなこのテーマをきれいな作品に仕上げている。
        自分達の身の回りだって時の流れの中に消えていくものの何と多いことか…。

        2.悪の魔力 (Love, Your Magic Spell is Everwhere)
         散歩がてらに立ち寄った店には本物の「魔法の品」が売られていた!
         服が透けて見える眼鏡、相手を奴隷のように操れるエジプトの腕輪…。

         男の妄想ですね( ̄ー ̄)  最後はラブ・ポーションでわなにかかる。
         この作品、好きな人が多いみたいです。
         けれど私は女性の立場からしてこの男はちょびっとヒドイと思うのである。
         テッド、あんたはフリーダとお似合いよ。

        3.クルーエット夫妻の家(Where the Cluetts Are)
         建築家ハリーに接待用の邸宅の設計を依頼してきたクルーエット夫妻は、偶然に見つけた旧時代の邸宅の設計図を見て気に入り、それを再建したいと言い出した。
         完成した家に住み始めた二人の暮らしぶりは時代がかって奇妙な様子にハリーには思われた。
         やがて邸はかつてそこに住む家族が現存した時の幸せな記憶と一体化し時空さえも越え…。

        ロマンではあるけれど。本当ならこれはホラーだわ。

        4.おい、こっちをむけ!(Hey, Look At Me!)
         書評家とその友人の作家マックス・キンジェリー。
         処女作のみを残し無名のまま没した彼の幽霊が現れて。

        一見ホラーだけれどこれはブラックコメディ。
        作家の自意識を茶化した作品。

        自分の生きた証を残したい。どんな形であっても…。
        そういう満たされない思いをもって生きている人は多いでしょう。
        ブックレビューなんてやっているのもそういう気持の一環かもしれません。

        5.もう一人の大統領候補
          (A Possible Candidate for the Presidency)
         こちらもゲイルズバーグの町が舞台。
         大統領候補にまで上り詰めた男の幼少期の武勇談…
         サーカスから脱走した虎が目の前に!

        悪賢いいたずら少年。と思いきや意外にダークな裏話。
         「私」って男は…!!

        6.独房ファンタジア(Prison Legend)
         死刑執行が一週間後に迫った元画家の囚人ルイス・ペレスは
         画筆と絵の具を取り寄せてもらうと、監房の壁に一心不乱に絵を描き始めた。
         それはあまりにもリアルな「扉」の絵だった。

        7.時に境界なし (Time Has No Boundaries)
         若き才能ある物理学者ウェイガン教授は時間移動についての理論を確立していた。
         イリーン警部は犯罪者を過去に送っていたに違いないと断定し、証拠を突き付け問い詰めるが…。

         刑事の執念はジャベール並み。異常だわと思ったらなるほどのオチ。

        8.大胆不敵な気球乗り(The Intrepid Aeronaut)
         手作り気球で夜のサンフランシスコを空中散歩。
         空に漂う気球の描写は映像的でファンタジック。
         同行の女性と連れだっての一夜の冒険はまさに夢そのもの。

         空を飛ぶ思いを描いた小説ならサン=テグジュペリの熱き心とリアリティには遠く及びません。
         むしろサンフランシスコの景色を描きたかったのでは?

        9.コイン・コレクション (The Coin Collector)
          パラレルワールドもの。一見SF…中身は男の妄想爆発のファンタジーでした。
          誰しも思うだろう。「あの時、あっちを選択していたら?…」
          その可能性の世界を見られるものならみてみたいのは当然の心理。
          結婚4年で倦怠期真っただ中のアルが迷い込んだ世界では昔別れた女が妻になっていた。

          別世界への鍵がその時代のコインというところがお手軽でフィニイ流。
          でも、その世界の『私』はどこいってしまったの?
          パラレルワールドのジレンマは無視なんですね~。
          あっちの女に飽きたらこっちの女と交換してそれにも飽きたら…って┐(´-`)┌
         フィニイがフェミニストでもブラックユーモアの持ち主でもないことは確かですね。

        10.愛の手紙 (The Love Letter)
          タイムトラベルもの。といっても主人公がタイムリープする訳ではありません。
          過去とつながる次元ホールを通して文通するお話。
          ロマンティックでこの短篇集の一番の人気作。
          確かに品があって文学的でステキ。


        これらのプロットはいくらでもホラー仕立てにできそうですし、ブラックな終わり方にもできそうです。
        でもそうならないので恐い話が嫌いな方にも安心してお勧めできると思います。

        私は短篇に関してはもっとキレがある作品や、深い哲学など価値観が共有できる作品のほうが好きみたいです。
        フィニイは、どこか小さくまとまっていてあまり肌に合わないかも。フィニイが気に入った方にはぜひレイ・ブラッドベリは読んでみてもらいたいものです。
        >> 続きを読む

        2016/04/27 by 月うさぎ

      • コメント 17件
    • 他6人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      ハーモニー

      伊藤計劃2010/12

      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね! gens
      • ちょっとした機会があって、再読。何度読んでも名作。
        この結末がハッピーエンドかバッドエンドか、人によって変わるのだろうか?バッドエンド以外の何物でもない気はするが。

        何を書いてもネタバレになるので何も書きません。
        映画も観たし、よくまとまっていたけど、やっぱり原作の迫力はすごいな。
        >> 続きを読む

        2017/11/26 by ワルツ

    • 他6人がレビュー登録、 35人が本棚登録しています
      know

      野崎まど2013/07

      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! gens
      • ぼくも齢十時の女の子とあれやこれやしたい

        2017/07/15 by sainey

    • 他6人がレビュー登録、 16人が本棚登録しています
      タイタンの妖女

      カート・ヴォネガット , 浅倉久志2009/02

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • ご無沙汰しております。
        久しぶりに読書ログを見たら、9月の課題図書がヴォネガットのこれ。爆笑問題の太田光がこの作品が好きで事務所の名前も「タイタン」にしてるらしく、、、読んでみた。

        ラムファードはブッダ(解脱した、悟った人ということ。お釈迦様は最初のブッダ。キリスト様もブッダだったんじゃないかと思ったりしてます、ワタシ。)なのか?

        火星、水星、地球と輪廻し修行していくのか?(火星は阿修羅界なのか?アンテナで操られてる人間たち。水星は瞑想修行の場所なの?仙人のようになっていくアンク。コレハチノウテストダヨ。アタマヲツカエ(バカダナ)。ボアズはイカナイデ(人間らしい愛着という執着、)を選ぶ、、、それも選択のひとつだけどね。)

        タイタンは”悟りの境地(涅槃、ニルヴァーナ)”なのか?解脱への道なの?などと、読みながらワクワクしてましたが、、、違うんかい!(いや、そうなのか、そういうことなのか?)

        地球は宇宙の中の小さな一つの星に過ぎないということを忘れている(知らない?)人間。宇宙(火星)から攻撃されなければ(”敵”がいなければ?)、仲よく助け合えない人間。争うことの無意味さに気がつけないでいる人間。

        自己中で強欲な”人間”(サピエンスね)の愚かさは憐れで哀しいけど、皮肉たっぷりに?シニカルなユーモアで描かれてます。絵本をよんでるみたいな感覚がしました。

        ラムフォードの言葉など、あちこちに真理を示唆するというかそうそう、って思える言葉がいっぱい。ラインを引きまくりながら、次が気になります。

        〈徹底的に無関心な神の教会〉・・・そうだね。そうなのよ。
        人類に必要なのは愚かな無関心ではなく、慈悲・慈愛に満ちた無執着。

        それと、”そうなろうとする万有意志”

        進歩(プログレス)=食べ物・けつ(プログ・アース)^^;



        仏教では、すべては(人生も)因果法則であり、”全知全能”の神によって創られたり決められたりするものではない、人生は自分でどうにかする(よりよく変える)ことが可能なのだといいます。目的をもって明るく生きていきたいものです。ワタシタチもコンスタントのように宇宙のさすらい人なのでしょうね。仏教的な作品だと思いました。

        >「お母さんとお父さん」と彼は叫んだ。「ぼくに生命の贈り物をありがとう。さようなら!」彼は去り、鳥たちも彼とともに去った。・・・・・「息子はつぐみの仲間にはいったよ」「それはよかった!」

        また読みたいと思える作品でした。ヴォネガットさん、いいね!
        >> 続きを読む

        2017/09/26 by バカボン

      • コメント 4件
    • 他5人がレビュー登録、 25人が本棚登録しています
      火星年代記

      小笠原豊樹 , レイ・ブラッドベリ2010/07

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 住めなくなった地球、住みたくなくなった地球を捨て、住む場所・(自分達だけの?)希望を求めて「平和な火星人の住む火星」に移住・・・・、いや移住ではなく「友好的に侵略」しようとした?地球人。

        火星人(相手)の文化を無視し、地球(自分)の文化を押しつけていることに気がつかない。友好的な押しつけも「侵略」である。平和に共存するにはどうすればいいのか。

        愚かな人間は、どこに行っても愚かな人間のままなのか。火星人は言語が無くてもテレパシーで会話できる。けれど、地球の音声言語しか知らない地球人は相手の文化や立場を「理解」できない。

        >「いや、べつに知りたいわけじゃない」と、厚いくちびるを突き出して隊長は言った。「もう知ってるんだから」(二〇三〇年 地球の人々)

        ワタシたちは地球から初めて火星にやって来たんだから、火星人に祝って欲しいだって?
        救いようのないバカ。ああ、地球人って・・・ゴーマンで、憐れ^^;

        この物語(寓話)からは大事なことが学べる。希望は、学ぶことにのみある。

        火星の話、SFだからこそ、客観的に冷静に観る(学ぶ)ことができる。

        人間としてとても反省させられ、示唆に富んだ、それに味わい深い物語。しみじみ寂しい(侘びしい?哀しい?)お話でした。二度三度読んで、じっくり味わいたいと思います。(多分書ききれない)

        ほんと、人間はこのままでは(人間を改めないと)マジやばいと思う。

        >「何をそんなに一生懸命、見ているの、パパ?」
        「パパはね、地球人の倫理や、常識や、良い政治や、平和や、責任というものを、探していたんだよ」「それ、みんな地球にあったの?」「いやいや、見つからなかった。もう地球には、そんなものはなくなってしまったんだ。・・・・・」(二〇五七年十月 百万年ピクニック)

        何万年何百万年と輪廻を繰り返しながら学んでいくしかないのかな。その前に地球は人間に破壊されてなくなってるかもね。
        ワタシは次はどこに生まれるのでしょうか・・・
        >> 続きを読む

        2017/10/04 by バカボン

    • 他5人がレビュー登録、 14人が本棚登録しています
      オリエント急行の殺人 クリスティー文庫)

      アガサ・クリスティ , 中村能三2003/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • --ムッシュー、私の経験から申しますと、敵を持つ立場にある人間は、たいてい、敵が一人では済まないものです--

        映画を以前に見ていたので驚きは無く読んだのですが、伏線の張り巡らし方や回収の仕方、登場人物の演技のさせ方等々、やはり巧いなあ、、、と感嘆でした。

        京極の塗仏も似たような設定で、全く無関係と思われた10数人の登場人物が、実はとある小村落の生き残り住民で、共通の一つの事件があってと。

        アガサクリスティは幼少期文盲だったせいなのか分からないのですが、話の構成は巧いのだけれど文章力が今ひとつです。ので、Who done it?の観点を抜いたら読む気が起きないのが残念な点で、この点、京極は文章力や話力が素晴らしいですから、純粋に読んでいて面白いのです。

        ただ一方で、さすがアガサクリスティは作品の構成力は別格だなあと、京極比較でも思わせるものでして、塗仏では、共通項のあった10数人の行動は全てある人物にマインドコントールされて操り人形のように動かされていたから、という、若干詰まらない設定でしたし、共通の事件というのも単に悲惨な1事件でしかなく、落ちも哀しいだけの結末。

        その点オリエント急行では、登場人物はみな意思をもって複数犯を演じましたし、それを行うにたる経緯や正義の説明がしっかりなされている点は凄いと思います。
        落ちも爽やかで清々しく、読後感は非常にすっきりします。

        推理モノって、トリックと犯人の意外性だけにポイントがあるように思われがちですが、同等に大事なのが、ストーリー背景や結末における明るさや正義感だと思うんですよね。

        アガサクリスティの作品にはそれがあるので、本当に好きです。
        >> 続きを読む

        2017/08/19 by フッフール

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