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(株)早川書房 (ハヤカワシヨボウ)

企業情報
企業名:早川書房
はやかわしよぼう
ハヤカワシヨボウ
コード:15
URL: http://www.hayakawa-online.co.jp/
      アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

      フィリップ・K・ディック (1977/02

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! pasuta KEMURINO
      • 本作ではアンドロイド(今流行りで言えば人工知能)と人間の最大の違いは「感情移入」が出来るか否か、というスタンスである。
        しかし、人間もアンドロイド的な一面もあれば、アンドロイドも人間的な一面もある事を示唆している。
        アンドロイド達はtheyなのかitなのか。
        この「記憶」と「自我」は己自身のものか、洗脳されたプログラムなのか。
        ラストでは人口ヒキガエルに「感情移入」をする主人公。
        目まぐるしく人工知能のロボット工学が発展している21世紀初頭の現在。今一度、「人間」と「アンドロイド」の在り方を向き合う時かも知れない。
        >> 続きを読む

        2018/01/23 by 嶋村史緒

    • 他25人がレビュー登録、 80人が本棚登録しています
      わたしを離さないで

      土屋政雄 , カズオ・イシグロ2008/08

      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! KEMURINO
      • 限りなくフィックションの小説に何を求めて、本を買ったり、借りたりするのか? 

        それは、いまだ知り得ぬ世界を見れるかも? という勝手な期待感に尽きるんだ、という小説の面白さを改めて実感した個人的に記念すべき本に出会えた。

        これまで、著者の作品は3作読んだが、いつも頭の片隅にノーベル文学賞受賞者作品という余計な冠(情報)がつきまとっていた。

        今回は、その冠をまったく気せず、予測不能の物語の行方に翻弄され、読み進んだ。この吸引力こそ小説の楽しさだぜ!と実感。

        1990年代末、イギリスという設定で静かに始まる「です」「ます」調、主人公目線の手記タッチ。アンを思わせる、施設で暮らす思春期少女の成長記と思いきや、「提供者」「介護人」「保護官」という関係性が飲み込めない違和感に引っ張られながら、第20章あたりから、「えー!マジ! 聞いてないよ!」と驚愕。

        登場人物たちの言動、感情など、それまでめくってきた全ページが、歩に落ちる、物語構成に打ちのめされた。

        ノーベル文学賞ってSF、純文学、大衆文学なんていう狭いカテゴリーをはるかに超越した世界を創造できる人に与えられるんだぁ、と納得。映画もぜひ観たい。
        >> 続きを読む

        2020/09/15 by まきたろう

      • コメント 2件
    • 他23人がレビュー登録、 64人が本棚登録しています
      そして誰もいなくなった

      アガサ・クリスティ , 青木久恵2010/10

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! chao sunflower tadahiko tomato Minnie napori Tukiwami akino
      • あまりにも有名な作品ですが、読んだのは初めて(内容も知らなかった)。久々にミステリーを堪能しました。

        嵐で外部との連絡手段を断たれた孤島、姿を見せない屋敷の主、招待された互いに見知らぬ十人の男女・・・いまやミステリーの王道とも言える要素がてんこ盛りで、思わずテンションが上がりました。

        各自の部屋に飾られた童謡の歌詞、その歌詞の通りに一人ずつ殺されていく招待客。そして一人死ぬごとになくなっていく陶器の人形。否が応でも不安がかき立てられていく設定に、怖くてページをめくる手が止められない(矛盾?)。トリックや犯人捜しというよりは、皆が疑心暗鬼に陥り、徐々に追い詰められていく心理面の描写が面白い作品だと思う。怖かったけど・・・。

        >> 続きを読む

        2019/06/22 by asaki

    • 他20人がレビュー登録、 93人が本棚登録しています
      アルジャーノンに花束を

      ダニエル・キイス , 小尾芙佐1999/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! momomeiai Minnie sunflower tadahiko Erika
      • 知的障害者(主人公)の日記を通じて、手術前後の生活が分かるお話。
        本だからこそ表現できる、日記の「誤字」が良かったです。

        映画「レナードの朝」(1991年)に、お話が少し似ています。

        所有していた本でしたが、友達に貸して、戻ってきませんでした。
        2019年、図書館で借りて、再読しました。
        >> 続きを読む

        2020/02/08 by mirio3

    • 他17人がレビュー登録、 70人が本棚登録しています
      夏への扉

      福島正実 , ロバート・アンスン・ハインライン2010/01

      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね! kimiyasu Tsukiusagi snoopo HRJNK
      • 匿名

        最初は海外物ならではの翻訳の難しさがあったけども、後半に行くに連れて面白さが勝ってきました。面白すぎて集中しすぎて、電車を二駅程乗り過ごしてしまい学校に遅れるというエピソードが作られました。 >> 続きを読む

        2017/12/27 by 匿名

    • 他16人がレビュー登録、 67人が本棚登録しています
      虐殺器官

      伊藤計劃2010/01

      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね!
      • 生物とマシンが融合進化した近未来で、世界中の開発途上国で起こるジェノサイド(大量虐殺)。それらの国に常に関わっているジョンポールという妻子をサラエボの核爆弾で亡くした元言語学者。ジョンポールをジェノサイドの仕掛け人と判定して、暗殺を命令されたアメリカの特殊工作員との世界をまたいだ追跡劇。
        なぜジョンポールがジェノサイドを仕掛けるのか?なぜ元言語学者にそんな事が出来るのか?そしてその思想は暗殺者へも影響を及ぼしていく。
        派手で異様なSF小説にとどまらず、人とはどんな種なのか、小集団では助け合いが起こるのに、大集団になると大殺戮を起こしてしまう複雑な仕掛けなど、人間そのものを深掘る会話が面白かった。
        >> 続きを読む

        2019/04/30 by aka1965

    • 他16人がレビュー登録、 64人が本棚登録しています
      日の名残り

      土屋政雄 , カズオ・イシグロ2001/05

      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね!
      • カズオ・イシグロの1989年度のブッカー賞受賞作品「日の名残り」を読了。

        この作品は、スティーブンスがコーンウォールへ車で旅行しながら、ダーリントン・ホールが華やかなりし頃の出来事を回想するだけの物語なのですが、とても美しい作品です。
        良い小説とは、こういった作品のことを言うのかもしれませんね。

        スティーブンスの執事としての誇り、執事に大切な品格の話なども興味深いですし、気さくにジョークを飛ばす新しい主人に戸惑い、もしやジョークを言うことも執事として求められている仕事なのかと真剣に考えてしまうスティーブンスの姿が微笑ましいです。

        ここには、慇懃でもったいぶっていて、少々頑固な、古き良き英国の執事の姿が浮かび上がってきます。
        20数年前、ダーリントン・ホールに来客が多かった時期の回想では、第二次世界大戦前から戦時中に行なわれた会議のことも大きく語られます。

        世界的に重要な人物たちを招いた晩餐での、スティーブンスの仕事振りは、実に見事です。
        慌しい中で冷静沈着に全てを取り仕切り、そのプロ意識は、父親の死さえ看取ることを彼に許さないほどなのです。
        回想ながらも、その緊迫感や、見事に仕事をやり遂げたスティーブンスの高揚感が十分伝わってきます。

        そして、一番面白かったのは、スティーブンスとミス・ケントンのやりとりですね。
        最初はことごとく意見が対立し、冷ややかなやり取りをする二人ですが、カッカしている二人の姿が、実に可愛いのです。

        美しい田園風景が続いたドライブ、そして最後の夕暮れの中の桟橋の場面に、スティーブンスの今までの人生が凝縮されて重ね合わせられているんですね。

        最高の執事を目指し、プロであることを自分に厳しく求めすぎたあまり、結局人生における大切なものを失ってしまったスティーブンス。
        老境に入り、些細なミスを犯すようになったスティーブンスは、恐らく今の自分の姿を父親の姿とダブらせていたことでしょうね。

        今や孫もいるミス・ケントンに対して、自分はあとは老いるだけだということも-----。
        もちろんスティーブンスの中で美化され、真実から少しズレてしまっている出来事も色々とあるのでしょうけれど、無意識のうちにそうせざるを得なかったスティーブンス自身に、英国という国の斜陽も重なって見えてきます。

        第二次世界大戦後のアメリカの台頭と英国の没落。ダーリントン・ホールの今の持ち主もアメリカ人。
        こうなってみると、戦前に行われた重要会議でのやりとりが、実に皮肉です。

        そして、英国では最早、本物の執事が必要とされない時代になりつつあるのです。
        そんな中で「ジョークの技術を開発」するなどと言ってしまうスティーブンスの姿が、切ないながらも可笑しいですし、作者の視線がとても温かく感じられます。

        >> 続きを読む

        2021/02/24 by dreamer

    • 他16人がレビュー登録、 35人が本棚登録しています
      悪童日記

      堀茂樹 , アゴタ・クリストフ2001/05

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! karamomo Fragment asuka2819 Shizu
      • 【良い子なの? 悪い子なの?】
         以前から読みたかった本をようやく読みました。
         戦時中、「大きな町」に母親と一緒に住んでいた2人の兄弟が、戦火を逃れるため祖母が住んでいる「小さな町」にやってくるところから物語は始まります。

         祖母は、野卑で不潔で吝嗇家で、以前、自分の夫を毒殺した疑いがかけられており、近所の住民からは「魔女」呼ばわりされているような人でした。
         母親は、「お金は定期的に送りますからよろしくお願いします。」と頭を下げ、兄弟を残して「大きな町」に帰って行きました。

         さて、この2人の兄弟が風変わりで、この年頃の子供達のように遊んだり泣いたりなどしません。
         自分たちで計画を立て、「勉強」をし、様々な「訓練」をします(例えば、飢えに耐える訓練、暴行に耐える訓練、動かない訓練などなど)。
         聡い子供達であることは間違いありませんが、やることすべてがどうにも子供らしくないのです。

         他人の話をこっそり立ち聞きするまでは、まぁ、子供らしいと言えばそうも言えるのですが、2人は、立ち聞きした話をネタにして上品な口調で強請を働いたり、なかば強要のようにして商店から欲しい商品をせしめたり(勉強に使うためのノートや鉛筆なんですけれどね)、「訓練」の一環として身につけた曲芸などを披露して酒場で小銭を稼いだり……。

         2人の行動は徐々にエスカレートしていきます。
         戦争により、「大きな町」が陥落し、間もなく敵軍が「小さな町」までやってきそうな気配の時、ようやく母親が2人を迎えに来るのですが、母親は男連れで、赤ん坊まで抱いていました。
         2人の兄弟は、母親と一緒に行かない、ここに残ると言い出します。
         母親は必死に2人を連れて行こうとするのですが……その結果……。
         そして、最後には……。

         この2人の兄弟が戦争の犠牲であることは間違いないし、こういう子供らしくない、ある意味では歪んだ人間になっていくのもその影響があることはそのとおりなのですが、「だから戦争はダメでしょ?」って言う単純な反戦文学ではないのです。
         それはそうかもしれないけれど、それにしたって……ということです。
         この兄弟は、良い子なのか悪い子なのか段々分からなくなっていきます。

         本作には、「ふたりの証拠」、「第三の嘘」という続編があり、全体で「悪童日記」三部作と呼ばれているそうです。
         これは続編も読まなければ。
        >> 続きを読む

        2019/05/28 by ef177

    • 他15人がレビュー登録、 34人が本棚登録しています
      一九八四年

      高橋和久 , ジョージ・オーウェル2009/07

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Tukiwami
      • 【絶望的な未来社会】
         ディストピア小説の古典的名作をようやく読んでみました。
         舞台となるのは世界が3大国家により分割統治されている未来社会です。
         時代は……おそらく1984年。
         「おそらく」というのは、主人公が住んでいるここオセアニアでは、年代が故意にぼやかされているようで、実のところ何年なのかよく分からなくなっているのです。

         オセアニアは、党による独裁がしかれており、全体主義、社会主義国家になっています。
         主人公のウィンストンは、ロンドンで党外郭の人間の一人として真理省に勤務しています。
         ウィンストンがやっている仕事は過去の歴史の改竄です。

         党が将来の経済などを予測して発表するわけですが、そのとおりにはならないわけですね。
         そうすると、真理省が過去に発表した将来予測を書き換えてしまうのです。
         それだけではなく、都合の悪い過去はどんどん改竄され、最初からそういうものだったとされてしまいます。
         ですから、過去がどんな状態だったのか、今はいったいいつなのかなどが分からなくなってしまっているのです。

         そんなことをしても人間の記憶は消せないのだから無意味だと思いますよね。
         でも、オセアニアの人たちは、『二重思考』と呼ばれる現実隠蔽の考え方を叩き込まれており、実際のところがどうであれ、党が発表することが真実なのだと頭から思い込み、それに反する思考はすべて自分の中でシャットアウトするようになっているのでした。

         町中至る所に『テレスクリーン』と呼ばれる装置が設置されており、これは双方向のテレビのようなもので、人びとの姿や声は四六時中党によって監視されています。
         万一、党の方針に反するようなことを言ったり、党の指示に従わないような行動が見られた場合には、即座に『思考警察』がやってきて抹殺されてしまうのです。
         そう、もとからそんな人間などは存在しなかったものとされてしまうのですね。

         この世界を支えているのは人口の約85%を占める、プロールと呼ばれる下層民です。
         彼らは、劣悪な環境で、労働力としてだけ存在意義を認められており、党もプロールが何をしようがどんなことを考えようが、そんなことは知ったことではないのです。
         叛乱など起こさず、従順に労働さえすればそれでよろしい。

         世界は、もう何年も前から戦争状態が継続しています。
         しかし、一体どこの国と闘っているというのでしょう?
         昨日まではユーラシアと闘っていたはずなのに、ある日突然、敵はイースタシアであると党のアナウンスがあり、そうなんだとみんな頭から信じ込んでしまうというとんでもない世界です。

         この世界のリーダーは、『ビッグ・ブラザー』と呼ばれている人物なのですが、実在するのかどうかも不明です。
         ただ、町中に『ビッグ・ブラザー』の、じっと見つめるような肖像写真が貼られまくっているのですが。
         
         この様な世界に反対する勢力もいる……とかいないとか。
         かつて、エマニュエル・ゴールドスタインという党中枢にいた人物が、革命に反旗を翻し、世界のどこかに潜伏して反革命活動をしていると言われてはいるのですが。
         党は、人民に対して、ゴールドスタインを徹底的に憎むように教育しており、毎日『二分間憎悪』と呼ばれる、洗脳的なプログラムを強制しているのです。

         ウィンストンは、この様な社会の有り様に疑問を抱き始めています。
         党により過去の歴史が改竄されていくことが納得できず、日記をつけ始めてしまうのです。
         もし見つかりでもしたら、すぐに『思考警察』がやってきて抹殺されてしまうような危険な行為です。
         自分でも何のためにそんなことをしているのかよく分からないのですが、『テレスクリーン』から隠れるようにして日記をつけ続けてしまうのですね。

         ある時、ウィンストンは同じ真理省に勤務するジューリアという女性からラブ・レターを密かに受け取ります。
         これも完全に反党的行為であり、見つかったら処刑されるでしょう。
         はじめは、ジューリアこそが思考警察であり、自分を罠にはめようとしているのではないかとの疑いをぬぐい切れませんでしたが、ジューリアも反党的な思想を持つ女性だということが分かったのです。
         二人は、人の目を避けるようにして危険な逢瀬を続けます。

         という、大変恐ろしい未来社会が描かれた作品です。
         そこには何の望みも、楽しみもなく、ただひたすら党に服従することだけが求められている世界です。
         物質的にも、わざと窮乏するような生産調整が行われており、党外郭の人間は、自分をプロールと比較することによって、幸せなのだという錯覚をして生きていくだけなのですね。
         あぁ、恐ろしい。
        >> 続きを読む

        2019/10/13 by ef177

    • 他15人がレビュー登録、 61人が本棚登録しています
      アクロイド殺し

      アガサ・クリスティ , 羽田詩津子2003/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね! chao Minnie shikamaru
      • 恥ずかしながら初めてアガサクリスティの作品を読みました。
        フェアかアンフェアか当時議論を呼んだとあり、ミステリー小説の歴史を感じます。
        ネタバレさせたくないのであまり書けませんが、イギリスでまさか麻雀をしてるなんて!ビックリしました。ひさしぶりに麻雀したいなあ。卓を囲んでおしゃべりするのが楽しいんですよね。だから負けてもいいのです笑
        >> 続きを読む

        2019/12/24 by たい♣

      • コメント 2件
    • 他14人がレビュー登録、 44人が本棚登録しています
      春にして君を離れ

      アガサ・クリスティ , 中村妙子2004/04

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! Minnie MissTerry chao bakabonn Tukiwami
      • 【クリスティだけどミステリではない。しかし、とても恐ろしい作品である。】
         以前、『アガサ・クリスティー完全攻略』という本をレビューしましたが、その本では著者がクリスティの邦訳されている全作品を読破した上で、ベスト10を選出していました。
         著者が選んだベスト10は、私の感覚とは異なるものではありました。
         ただ、その中には私が読んでいない作品が上位にランクされていたことから、「そんなに高評価ならば読んでみなくては」とも思ったのです。
         ということで、本作は第5位にランクインしている作品で、図書館にもありましたので借りてきてみました。

         さて、本作はクリスティの作品ではありますが、ミステリではありません。
         殺人などの何の事件も起きません。
         強いて言えばサスペンス的な要素を持っているとはいえるかもしれませんが、それもさほど強いものではなく、一般小説として読まれるべき作品でしょう。

         主人公のジョーンは、弁護士の夫と3人の子供を持った主婦で、これまでうまく人生を生きてきた、自分はあれこれのことに気を配り、子供を上手に育て上げ、幸せな家庭を築いてきたという自負を持った女性です。
         彼女は、結婚して嫁いでいった末娘が急病になったという知らせを受け、単身ロンドンを発って末娘家族が住むバグダッドへ行ってきた帰りでした。
         末娘の容体はそれほど案ずるほどのことでもなく、あれこれと世話を焼いてロンドンに帰るところなのでした。

         ジョーンは、帰路の途中で立ち寄った鉄道宿泊所で、偶然、女学生時代の同級生のブランチと再会します。
         ブランチは、女学生時代、生徒たちの憧れの的であり、家柄も良く、幸せな将来が約束されたような女の子だったのです。
         ところが、実際には、ブランチはろくでもない男に夢中になり、また、自分が生んだ子供の面倒をみることを放棄して別の男に走るなど、ジョーンからすれば散々な人生を歩んだ女性でした。

         今、こうしてブランチの姿を見ると、年齢の割にはすっかりくたびれ果てて老け込んでおり、服装もみすぼらしく思えました。
         それに比べて、鏡に映る自分の姿は、まだ若々しく、身なりもちゃんとしているではありませんか。
         結局、本当の幸せをつかんだのは自分なのだと思うジョーンでした。

         ジョーンを見かけたブランチは気さくに声をかけてきて、一緒にお茶を飲もうと誘ってくれました。
         ブランチは、自分の人生がどういうものだったかについてあけすけに語るのですが、どうも大して後悔もしていないようにジョーンには感じられました。
         あるいは露悪趣味?
         そんなブランチの姿を見るにつけ、ジョーンはつくづく自分はしっかりと生きてきたんだと安心するのでした。

         ジョーンは、ブランチに対して、自分は毎日毎日、地区病院の理事職、施設の評議員、ガールスカウトのリーダーその他もろもろの仕事で忙しくしているので、一週間でも良いから何もせずにぼんやり過ごしてみたいなどとも言うのです。

         翌朝、ジョーンはブランチと別れて一人で自動車で鉄道駅へ向かうのですが、生憎の雨のため旅程が遅れてしまい、駅に着いた時には乗るはずだった列車は既に出発してしまっていました。
         仕方なく、駅の宿泊所に泊まることになったのです。
         列車は週に三便しかありません。
         宿泊所周辺は良い天気なのですが、その他の地域では雨が降り続いているらしく、列車は遅れに遅れていて、いつ到着するか分からないというのです。

         それなら、ブランチに話したような、何もすることがない時間が望み通り手に入ったのだからと考え、ジョーンは宿泊所近くで無為な日々を過ごし始めたのです。
         最初のうちは、こういう何もしなくても良い時間は良いものだなどとも考えもしましたが、すぐに飽きてしまいました。
         持ってきた本もすべて読んでしまい、何もすることが無くなってしまいます。

         ジョーンは有り余る時間を潰すために色々なことを回想し始めるのです。
         ところが、思い出すことは不愉快なことばかり。
         幸せな人生を歩んできたはずの自分なのに、何故こんなに嫌な事ばかり思い出してしまうのだろう?
         それとも、自分の人生というのは本当は幸せなものではなかったのだろうか?

         子供たちはみんな良い子で、私を愛してくれていたのに、幸せじゃないなんていうことはあり得ない。
         でも……、あの時、あの子が言った言葉の意味は、本当は……。
         私は、愛する夫をしっかりと支え、夫がろくでもない農園を経営したいなどと言い出した時も、しっかり引き留めてちゃんと弁護士事務所に勤めさせた良い妻ではないか。
         でも、本当は、夫は……。

         ジョーンは、徐々に、自分の人生が本当に正しかったのか、自分は良い妻だったのか、自分は幸せだったのか等について疑いを抱くようになっていきます。
         自分一人だけが何も分かっていなかったのではないか、と。

         これまで確固たるものと信じていたことが、突然根底からぐらつき始めるというプロットは、クリスティはミステリの中で使ったことがありましたが、本作は、それを何の犯罪も起きない一般小説の中で語っているのです。
         これは、大変恐ろしいことではないですか。

         さて、本作についてどう評価するか。
         まず、ラストがどうなるのかが読んでいる途中から気になり始めました。
         あっちへ持っていくのか、それとも……。
         そして、読み終えた後、最後に書かれているエピローグは必要だったのだろうかとも考えました。
         もちろん、エピローグを書いた方がクリスティの意図は明確になるでしょう。
         ですが、私は、あるいはエピローグは不要だったのではないかとも思えました。

         大変恐ろしい、また、読んでいて辛さを伴う作品だったと思います。
         本作に高い評価を与える読者がいることも理解できるところです。
         ただ、私がこの作品を好むかというと……。

         なお、蛇足ですが、文庫版の表紙に描かれている女性(これってジョーンですよね?)って、何故ビーサンのようなサンダルを履いているんでしょうか?
         私、どうもそこが気になってしまって、気に入らない点の一つなんですが……。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2020/10/13 by ef177

    • 他11人がレビュー登録、 25人が本棚登録しています
      ふたりの証拠

      堀茂樹 , アゴタ・クリストフ2001/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! asuka2819
      • 【誰もが悲しみを抱えている】
         「悪童日記」の続編です。
         読もう、読もうと思いながら先延ばしになっていたのですが、ようやく読めました。
         大変衝撃的な内容でした。
         一つひとつのエピソードもさることながら、全体の構成に打ちのめされました。

         本作は、「悪童日記」の主人公であった、「ぼくら」と表記されていた二人の幼い兄弟のうちの一人の「その後」を描いたものです。
         「悪童日記」をまだお読みになっていない方のために、詳しいことははしょりますが、兄弟のうち一人は外国に行ってしまい、もう一人はそれまで住み続けた家に残りました。
         その残った方の名前は「リュカ」。
         本作は、基本的に「リュカ」のその後を描いています。

         「リュカ」は周囲の人々から「白痴」と呼ばれていましたが、実は大変聡く、やさしい男性なのです。
         彼のまわりには様々な人々が現れ、彼と関わりをもっていきます。

         本作は、第二次世界大戦終結間もない、混沌とした世界を舞台にしていますが、戦争の傷跡は深く、様々な形で、すべての人が傷を負い、悲しみを抱えているのでした。
         それはもちろん、「リュカ」だって同じ事なのですが。

         「リュカ」は、しばらくはこれまで兄弟、そしてその前は祖母とも一緒に暮らしていた国境近くの小屋のような家で一人で生活していました。
         自給自足の生活で、夜になると酒場に出かけ、ハーモニカを演奏し、酒をおごってもらい(12歳の頃から酒を覚えたと言っています)、いくばくかのお金を稼いでいました。
         「リュカ」は、いつか帰ってくると信じている兄弟に宛てて、日記のような文章をノートに書いては削りを繰り返し、書きためていました。

         そんな「リュカ」は、ある日、川に赤ん坊を投げ捨てようとしているヤスミーヌという女性を見かけます。
         「リュカ」は、ヤスミーヌと赤ん坊を家に連れて帰り、以後、二人の面倒を見ることにしました。
         ヤスミーヌは、赤ん坊を川に投げ捨てた後、国境を越えてどこかへ行ってしまおうと考えていたというのですが、国境付近は地雷原であり、そんなことをすれば確実に爆死したことでしょう。
         それでも構わないのだと言うのです。
         何故そうなのかは……ご自身でお読み下さい。

         その他にも、「悪童日記」にも登場した、「ぼくら」がノートや鉛筆を手に入れていた書店兼文具店の店主、この店の向かいの家に住む不眠症の男、一時は「ぼくら」に強請られていた神父、終戦後この町を支配することになった共産党の幹部などの登場人物が「リュカ」との関わりの中で描かれていくのですが、あぁ、何てみんな悲しいのでしょう。

         「悪童日記」のシリーズは三部作です。
         最終巻の「第三の嘘」も近いうちに読んでレビューしたいと思います。
        >> 続きを読む

        2019/05/28 by ef177

    • 他10人がレビュー登録、 19人が本棚登録しています
      幼年期の終り

      アーサー・C・クラーク (1979/04

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      •  異星人との接触で人類は成功を約束されたと思いきや、実はそんな事は些細なことであり人類の未来は全く違っていたという題名通り、壮大な物語。オーバーロードの謎と動向を楽しく考えながら一気に読めます。謎は全て解けて満足。再読するとオーバーロード視点でまた別の感じを(悲哀)受けそうなので後で読もうと思います。
        >> 続きを読む

        2018/08/02 by pasuta

    • 他9人がレビュー登録、 26人が本棚登録しています
      幻の女

      ウイリアム・アイリッシュ (1976/04

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 【どうして誰も覚えていないんだ!】 
         アイリッシュの古典的名作です。
         主人公のスコットは妻との関係が冷え切っており、離婚を申し出ています。
         ところが妻がなかなか承知しないため、今夜は一緒に食事に行って、ショーでも見て、ちゃんと話をしようと思っていたのですが、妻は一向に出かけるそぶりをみせません。

         頭に来たスコットは、捨てぜりふを残して家を飛び出るや、適当なバーに入り、そこで見かけた見ず知らずの女性を食事とショーに誘います。
         二人は互いに深入りしないことを約束し、名前も教え合わずに食事とショーを楽しんで分かれます。

         スコットが家に戻ってみると、何と、妻が殺されているではありませんか。
         状況からしてスコットが犯人と疑われます。
         スコットは、自分にはアリバイがある、バーで知り合った女性と一緒にいたと主張するのですが、何故か、バーテンダーもレストランの従業員も、途中で乗ったタクシーの運転手もスコットのことは記憶しているのに、連れの女性などいなかったと口を揃えます。なんで~?
         ついにスコットは裁判にかけられ、死刑を宣告されてしまいます。

         本書の各章の見出しは、スコットの死刑執行までの残り時間が記されています。
         誰も知らないというその「幻の女性」を見つけ出さないことには無実の罪で死刑になってしまいます!

         最初はスコットを逮捕した警察官も、徐々に疑問を持ち始め、あるいはスコットが言っていることが正しいのではないかと考えるようになり、スコットに面会して、力になってくれる親友に助力を頼むように助言します。

         そこで表れたのがスコットの親友のジャック。
         彼はスコットの無実を信じ、「幻の女」の捜索に乗り出してくれます。
         が、しかし、良いところまで追い詰めると途端にその手がかりが途切れてしまうことの繰り返し。
         スコットの死刑執行までの残り時間はあとわずかです。
         ……そうして、最後の大どんでん返し!

         トリックがやや都合良すぎで、そんな風になるかなぁと思うところはあるものの、楽しく読める作品であることは間違いありません。
         本書は、江戸川乱歩が相当に高く評価して我が国に紹介したことでも有名な作品です。
         古い作品ですので、やや時代がかったところがあるのは致し方ないにしても、古典的名作であることは間違いないと思います。
        >> 続きを読む

        2019/09/28 by ef177

    • 他9人がレビュー登録、 20人が本棚登録しています
      第三の嘘

      堀茂樹 , アゴタ・クリストフ2006/06

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! karamomo asuka2819
      • 【これは一体どう解釈すればいいのだろうか……】
         「悪童日記」三部作の最終巻です。
         第一部「悪童日記」では、「ぼくら」と表記されている双子の兄弟の物語だったのですが、弟二部「ふたりの証拠」では、主としてその兄弟の片方、「リュカ」のその後の生活が描かれました。
         ですが……。もしかしたらもう一人の兄弟の「クラウス」などという者は存在せず、ただ一人の頭の中だけで生み出されたものではないのかという強烈な疑いが色濃く描かれていました。

         ところが、第三部の本作に入り、またもや大きくひっくり返されてしまうのです。
         これまで語られてきた「リュカ」と「クラウス」の物語は一体何だったのでしょう?

         双子の兄弟は、それぞれがノートに日記風(?)の文章を大量に綴っていたわけですが、それは事実なのか虚構なのかと問われると、「事実を書いているのだけれど、ある程度のところまで行くと、事実を書いているだけに書き続けられなくなり、話に変更を加えざるを得ないのだ」と答えます。
         では、どこまでが事実でどこからが虚構なのでしょうか?

         いやいや、そんなレベルの話ではないのです。
         弟二部までは、辻褄が合わない点が多々見られ、あるいは「リュカ」と「クラウス」は結局同一人物(というかそもそも一人しかいない)のではないかという「虚構」だったわけですが、それでも根本的なところではそれほど大きくは食い違っていなかったのです。
         ところが、本作に入り、根底からこれまでとは全く違う話になっているではありませんか。
         しかも、ところどころ、「リュカ」と「クラウス」が入れ替わっているのではないのか?と思わせるようなところもあったりします。

         これは一体どう解釈すれば良いのでしょうか?

         いずれにしても、この作品は三部作全てを順番に読む必要があります。
         そして、その混沌の中から何をくみ出すかは、それはおそらく読者それぞれに委ねられていることではないだろうかと感じました。
         おそらく、「正解」というものは無いのではないでしょうか?

         読む前にはこんな作品だとは思ってもみませんでした。
         意表を突かれただけに、大変強いインパクトを受けました。
         恐れ入りました。
        >> 続きを読む

        2019/05/28 by ef177

    • 他9人がレビュー登録、 18人が本棚登録しています
      あなたの人生の物語

      浅倉久志 , テッド・チャン2003/09

      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! Tukiwami KEMURINO
      • 先日 DVD で「メッセージ」を見て気になって本を読みましたが、私には理解不能な難しい内容の連続で途中で読むことを諦めました。ラジオで今世紀最高のSF 作家と聞いたので期待したのでもう少し面白いと思ったが残念です。凡人には無理でした。 >> 続きを読む

        2020/08/23 by rock-man

    • 他8人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      タイタンの妖女

      浅倉久志 , カート・ヴォネガット2009/02

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! Tukiwami
      • おもしろい!楽しい読書の時間を過ごすことができました。私、SFって大抵の作品で二度読み三度読みしてるんですよ。意外なことに、この作品の世界観は始めからすっと入ってきて、読み返しなしでいきました。コミカルでリズム良い会話が心地よくて。ストーリーもおもしろかったです。はちゃめちゃだけど(笑)

        主人公のマラカイ・コンスタントが、火星でラムファードの元妻との間に子をなし、水星、もう一度地球を訪ね、最後にタイタンでラムファードと会います。コンスタントの一生の物語であり、そして彼の物語を通して、様々な問題提起を投げかけられるように感じました。それは自由意志だったり、生きる目的だったり。

        ボアズがハーモニウムを音楽を使って幸せにしたエピソードが忘れられません。違う星の異なる種族に対して傍で寄り添うことができるのに、武器を手に取り殺し合いもする愚かな人間たち。また、トラルファマドール星のある生物についての伝説で、『彼らの目的はいったいなんであるかを見出だそうとする試みで、ほとんどの時間を費やしていた』にドキッとさせられました。人間がどうであるか機械の目を通して淡々と描かれており、それがあまりに的確すぎて、居心地の悪さを感じてしまう。

        と、こんなことを考えながら読了したのですが、この作品が総じて何を訴えているのか全くわからず、しばらく途方にくれました。メッセージはたくさんありましたが、結局作者は一番何を言いたかったのか自分の中で纏まらなくて。感想に困りながら訳者あとがきを読むと、だんだんすとんと落ちてきました。それぞれのエピソードで感じたことが、ヴォネガットのメッセージだったのだと。身近なテーマをおもしろいお話にしており、読みながら自然と自分のなかに入ってくる。すんなり受け入れることができすぎて、逆に違和感を覚えたのでした。
        なんだか不思議な読書体験。

        うんうん、良い物語でした。課題図書になったとき購入していてよかった。2年以上前の話ですが(^^ゞ
        >> 続きを読む

        2020/01/05 by あすか

      • コメント 10件
    • 他7人がレビュー登録、 29人が本棚登録しています
      ゲイルズバーグの春を愛す

      ジャック・フィニイ (1980/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【ノスタルジックな幻想譚】

         ジャック・フィニイの作品は、SFに分類されることも多く、本短編集に収録されている作品のいくつかも、いわゆるタイムスリップ物ですので確かにSF的要素はあるのですが、全体的な印象としては、むしろファンタジー色の方が強いかもしれません。
         そう、たとえば、ブラッドベリなんかに近いかもしれませんね。
         あるいは、本短編集に収録されている作品のうちいくつかは、O・ヘンリーやサキ(それほど毒はないですが)のようなテイストもあります。
         それでは、収録作からいくつかご紹介。

        ○ ゲイルズバーグの春を愛す
         表題作です。
         イリノイ州のゲイルズバーグという町を舞台にしたタイムスリップ物。
         この町では、時々過去と現在が交錯することがあるようです。
         ゲイルズバーグという町がどういう町なのかは知らないのですが、きっとそんなことがあっても不思議じゃないような雰囲気を持った町なのかもしれませんね。

        ○ 悪の魔力
         とあるマジック・ショップで売っていた奇妙な品物に思いがけない魔力が込められていたというお話です。
         この物語に出てくる素通しの眼鏡は、それをかけると女性の衣服が透けて下着姿が見えるというもので(魔力がそれ程強力ではないため、下着までは透けないようです)、主人公の男性は大喜びしてしまうのです。
         ……でも、ということは男性だってそういう姿に見えるんじゃないの?

        ○ クルーエット夫妻の家
         家の中には、住人を喜ばせようとして快適に過ごさせてくれる家があるのだそうです。
         設計事務所に新築家屋の設計を依頼しにやって来たクルーエット夫妻が選んだのは、古い設計図に描かれたヴィクトリア朝時代の家でした。
         何もこの家に住むというつもりではなく、商売でやっているヨット販売のために、客の目をひくような建物であれば良いということで選んだのですが、いざできあがってみると……。

        ○ 時に境界なし
         ちょっと犯罪小説テイストのあるタイムスリップ物です。
         主人公である物理学教授は、警察が追っている犯人を過去の時代に逃がしてやっていました。
         これに気付いた警部は、何としてでも現代に呼び戻せと教授に迫るのですが、既に過去の時代に行ってしまった犯罪者と接触する術はなく、それは不可能なことでした。
         しかし、執念の固まりの警部は、犯人を逮捕するある方法を思いつきます。
         その方法とは? そしてその思惑通りになるのか?

        ○ 愛の手紙
         この作品集の中で私が一番好きな作品です。
         この度再読したわけですが、再読する前からこの作品は記憶に残っていました。
         物語は、若い男性が骨董品店で買ってきた古い机のお話です。
         その机には隠し引き出しがあり、その中にこの机を使っていたであろう、昔の女性が書いた手紙、しかも出されなかった手紙が入っていたのです。
         それは恋人に愛を告げる手紙でした。
         主人公は、この手紙の主に惹かれ、隠し引き出しに入っていた古い便せんに古いインクを使って返事を書きました。
         そして、コレクションしていた古切手を貼って、この手紙の主が生きていた頃から町にあった古い郵便局に行ってその手紙を投函したのです。
         1週間後、2番目の隠し引き出しを開けたところ、何と、あの女性からの返事が届いているではないですか。
         隠し引き出しはもう一つだけあります。
         あと、もう一度だけ手紙のやり取りができるはず。
         これもタイムスリップ物ですね。

         作家には、その作家特有の雰囲気、文体、味があります。
         私も、ジャック・フィニイにはそんな独特の味を感じます。
         というのは、これも大分以前の事なんですが、早川書房から出ている『異色作家短編集』というシリーズの一冊、『レベル3』という本を読んだ時、本作のことはすっかり忘れていたのですが、どうもどこかで読んだような味わいだと感じたのです。
         そして、『レベル3』の巻末解説を読んだところ、「あ!あの『ゲイルズバーグの春を愛す』の著者だったんだ!」と初めて気がついたという次第。
         すごく納得しました。
        >> 続きを読む

        2019/04/20 by ef177

    • 他7人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      ハーモニー

      伊藤計劃2010/12

      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね! gens
      • 伊藤計劃さんの小説はワクワクしながら読めます。この本もまさにワクワクしてドキドキしてあっという間に読み終わってしまう本でした。

        かなり前に『虐殺機関』を読んだことがあります。細かなストーリーは忘れてしまいましたが、その本も読んでるうちにのめり込んでしまう話でした。この本も同様のドキドキが味わえます。

        特に中盤のあのシーンは本当に最高でした。それが何かを言ってしまうのがもったいないと思うほど好きなシーンです。
        >> 続きを読む

        2020/01/02 by esa

    • 他7人がレビュー登録、 36人が本棚登録しています
      オリエント急行の殺人 クリスティー文庫)

      アガサ・クリスティ , 中村能三2003/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね!
      • 再読。
        この小説は私が初めて読んだ本格ミステリである。
        クリスティの代表作であるが、本格ミステリを読んだことがない人は、初めて読む本格ミステリとして、本書と「アクロイド殺し」は避けていただきたい。
        なぜかというと「全ての本格ミステリの犯人はこのパターンなのか」と誤解する可能性があるからである(そのせいで僕は本書を読了後しばらく本格ミステリを読まなくなった苦い思い出がある)。
        本書と類似のトリックとして、森博嗣の某作品や清涼院流水の某作品が挙げられる。
        第二部の証言(関係者の証言シーン)に100ページ以上(全体の三分の一以上)のボリュームを割いており、これを丁寧と見るかまどろっこしいと見るか意見が別れるだろう。
        登場人物の一人のクリスチャン・ネームが「ハーマイオニ」なのは笑った。
        クリスティの作品は、誰の訳でも読みやすく、何を読んでも面白く(今のところ)、まさにミステリの女王である。


        >> 続きを読む

        2019/06/01 by tygkun

    • 他7人がレビュー登録、 25人が本棚登録しています

【(株)早川書房】(ハヤカワシヨボウ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(出版社,発行所)

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