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(株)光文社 (コウブンシヤ)

企業情報
企業名:光文社
こうぶんしや
コウブンシヤ
コード:334
URL: http://www.kobunsha.com
      舟を編む

      三浦しをん2011/08

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Tsukiusagi makoto yam caramel yana
      • アニメや映画にもなっているのでどんな話か知っている方も多いと思いますが、中型国語辞典の編纂にスポットをあてたお話です。女性ファッション誌の連載ということもあってライトで読みやすい語り口です。この本の魅力は専門的な仕事に対する知的好奇心が満たされるおもしろさや登場人物の生き様などはもちろんのこと、なんといっても日本語の奥深さを再認識できるところだと思います。

        舞台は大手総合出版社である玄武書房の辞書編集部。主人公の馬締は大学で言語学を学んでいて辞書編集の素養は十分、配属された時点でかなり完成度の高い人物です。強いて欠点をあげるなら対外交渉が苦手なことでしょうか。とはいえ変人だと言われつつもあっさりと綺麗な女性と結婚するなどやや恵まれすぎている印象でした。私はキャラクターとして一番良かったのは西岡かな、と思います。辞書を編纂していると「遊園地という言葉は知っているけれど実際の遊園地に行ったことはない」というような状況になりやすい中で、西岡は自由な発想や想像ができるのです。たとえば「西行」の項目に何を載せるかとなったときに、言葉を目や耳にした段階で能の演目だと分かる確率の高い「西行桜」でなく、富士見をする西行の絵が書かれたことから派生した意味である「不死身」の解説を載せるべきだという場面は西岡らしさが出ていたと思います。彼は馬締の仕事ぶりに圧倒される姿が多く書かれていましたが、きっと馬締も西岡のことを尊敬していたのではないでしょうか。

        辞書『大渡海』は15年もの歳月をかけて完成します。真っ白なパズルを形だけを頼りに埋めていくような、地道な努力を続けた人々の情熱が詰まった一冊は、その重さ以上の価値を感じずにはいられません。
        たとえば赤・黄・青を知っていれば3色に見える虹が、緑・紫を知ることで5色に見えて新たな美しさを発見することができるのが言葉のすごさだと思います。最近は辞書をひく機会が少なくなりましたが、言葉とともに世界を広げる楽しみを思い出すことができてよかったです。
        >> 続きを読む

        2017/12/10 by カレル橋

    • 他41人がレビュー登録、 145人が本棚登録しています
      和菓子のアン

      坂木司2012/10

      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! zunco kumpe
      • 高校卒業後、進路を決めあぐねていた杏子ことアンちゃんが働き出したデパ地下の和菓子屋。
        和菓子にまつわる謎が解ける度に、社会人として成長して行く様が素敵だ。
        甘いものを食べて幸せを感じる瞬間を大抵の人は持っているだろう。
        疲れている時、力が出ないとき、落ち込んでいる時、身体中の血液で駆け巡るブドウ糖が生理的でなく精神的に与えるファンタジックなエネルギー!
        更に豆の計り知れない包容力を持つ滋味によってもたらされる癒し。餡子のもつ魅力は正にアンちゃんそのものだ。
        周りの人たちも愛すべきキャラたちばかりだし、なんて優しいミステリーだろう。
        ここは我慢せず、宣言しよう!
        和菓子を買いに行くぞ!
        >> 続きを読む

        2017/11/01 by ももっち

    • 他20人がレビュー登録、 64人が本棚登録しています
      シンメトリー

      誉田哲也2011/01

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 竹内結子さん主演のドラマ「ストロベリーナイト」で観たことのある話ばかりだったのでスラスラ読めた。
        「東京」
        誉田哲也さんの人が人をいたぶる描写はどの作品を読んでも耐え難いえげつなさを感じる。
        「過ぎた正義」
        人間が正義を貫こうとすると犯罪者になる、といういい見本。個人の正義と法で定められた正義は違うものだし人間は正義だけでは生きていけない。
        「右では殴らない」
        犯罪の被害者である姫川にとっては犯罪の片棒を担いで平気な顔をしている人間や犯罪に巻き込まれる可能性に対して無頓着な人間は死ぬほど許せない存在なんだろうなと思った作品。
        「シンメトリー」
        姫川の殺人犯に同調できる感性がフルに行かされた作品その1。
        「左だけ見た場合」
        ミステリーというかホラー?
        「悪しき実」
        姫川の殺人犯に同調できる感性がフルに行かされた作品その2。
        「手紙」
        人間に自己愛がある限り本当に自分の罪を罪だと認めることは難しい。それが出来るきっかけをもらった人間は社会に許された人間よりも幸せだと思う。自分のしたことを自覚しないと人は変われない。
        >> 続きを読む

        2017/03/15 by kikima

    • 他7人がレビュー登録、 29人が本棚登録しています
      さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学

      山田真哉2005/01

      カテゴリー:経営管理
      3.1
      いいね!
      • 匿名

        読み物としては面白かったが、会計学につながるかは少々疑問

        2016/10/08 by 匿名

    • 他5人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      ルパンの消息 長編推理小説

      横山秀夫2009/03

      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! rock-man
      • 伏線、どんでん返し、意外性が詰まってます。
        警察のマニアックな描写ではなく、人間の心理や醜い部分も散りばめた作品です。
        推理小説の醍醐味も感じつつ、ハッピーエンドというわけではないけど、読み終えた後爽快感がありました。
        >> 続きを読む

        2017/11/30 by ryoji

      • コメント 1件
    • 他5人がレビュー登録、 16人が本棚登録しています
      クリスマス・キャロル

      チャールズ・ディケンズ , 池央耿2006/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね! Minnie Moffy
      •  心の底から「あの人に何かしてあげたい」という気持ちに満たされた時、もらうより何倍もの幸せに包まれますね:)
         ハッピーエンドで何よりでした。

         過去の辛い思いによって、人は願っていなくても残酷で冷たくなってしまうことが多いでしょうね。
         スクルージも、最初からそのような人になりたかった訳ではないはず。だから過去と向き合うことによって、心が変わるようになったのでしょう。そして、今の自分を反省し、未来に希望を持つ...
         もしかしたら、心に生じた歪みは、「過去との向き合い・現在の反省・未来への期待」で解決できるのかもしれません。

         また、思い当然のように周りの人の生活を評価しないこと。
         「どうせ...」と思っていても、意外と思っている以上に踏ん張って生きている。
         常にお互いに支え合うように心がけないといけないと思いました。
        >> 続きを読む

        2017/12/17 by モッフィー

      • コメント 1件
    • 他5人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      サクラ咲く (光文社文庫)

      辻村 深月 (2014/03

      カテゴリー:小説、物語
      4.7
      いいね!
      • 初めて読んだ辻村深月さんの作品でした!
        なんというか素敵な話だなぁ……と思いました
        青春100%!という感じの小説で、もともとが中学生向けにつくられているために
        共感を得るために青春!青春!という感じにしているのかもしれませんが
        純粋な感じがよかったです。
        タイトル通り桜咲いたわ~( ´∀` )という感じがしました。
        また違う辻村さんの作品も読んでみようかと思います!
        >> 続きを読む

        2017/05/13 by minase86

    • 他5人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      ストロベリーナイト

      誉田哲也2008/08

      カテゴリー:小説、物語
      3.4
      いいね! rock-man
      • 思わず物語に引き込まれる冒頭、強がりで感情的で惹かれる人間も嫌う人間もいるという人間らしいヒロイン、なんとも言えない美しさと醜さを併せ持つ犯人、悲しさと不気味さと重苦しさと一抹の希望が感じられるラスト。さすがはヒロインが萌えキャラでないにも関わらずドラマ化映画化したミステリー小説なだけあると感心しながら読んだ。ただラストで犯人が姫川玲子を助けた理由が「昔好きだった少女に似ていたから」というあたりは都合が良すぎるような気がした。 >> 続きを読む

        2017/03/12 by kikima

    • 他4人がレビュー登録、 42人が本棚登録しています
      シンデレラ・ティース

      坂木司2009/03

      カテゴリー:小説、物語
      4.7
      いいね!
      • 大学生の咲子は、母親の計略に引っかかって大嫌いだった歯医者でアルバイトをすることになるが、そこで色々な人に出会い、考え方に触れ成長していく話の流れ。人生観まで変わり、彼氏までできてしまうというまるでシンデレラみたいな話だが、咲子のキャラが文章を読み進めるごとに前向きなものに変わっていくのがすごく良い。その点は非常に評価できる。咲子がこの後どんな仕事に携わるのか?。まさに人生を変える夏の体験の物語だと思った。感想はこんなところです。
        >> 続きを読む

        2016/12/28 by おにけん

      • コメント 2件
    • 他4人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      ダイイング・アイ

      東野圭吾2010/12

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! mizukiyuno
      • 読み始めた最初の場面から、ショッキングな事故現場の描写が書かれており、そこからどのようにして物語が広がっていくのか、最初から最後までドキドキしっぱなしでした。
        ある登場人物の記憶の一部が事件の影響により欠けてしまうのですが、物語が進んでいくにつれてその欠けた部分の記憶が断片的によみがえってくる。その記憶を元に謎に迫っていくのですが、思い出しそうなのに思い出せない、もどかしい気持ちが読んでいるだけで伝わってきて、次は何処に繋がっていくのだろうと、ページをめくる手が止まりませんでした。
        最後の方に出てくる催眠術というのが、少しモヤモヤとした感じで残ったのですが、全体的にとても良かったです。
        >> 続きを読む

        2015/12/09 by oyu

      • コメント 2件
    • 他4人がレビュー登録、 32人が本棚登録しています
      ジェイン・エア

      シャーロット・ブロンテ , 小尾芙佐2006/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.8
      いいね!
      •  シャーロット・ブロンデ、1847年、英国がヴィクトリア朝時代の作品です。
        光文社古典新訳文庫では上下巻です。

         ジェーン・エアという恵まれない生まれの女性主人公が、家庭教師として仕えるその家の主人と結ばれるまでの話です。

         まず読んでいて驚くのが、主人公のジェーンの生きていく姿勢です。
         両親を幼くして亡くしたジェーンは、伯父の家に引き取られます。しかしジェーンに対して理解のあった伯父は早くに帰らぬ人となります。
         伯母とその子達は、言わば家族ではないジェーンのことをイジメ倒しますが、ジェーンはそれに負けず、言い返しやりかえします。
         よくある孤児の物語だと(ある家に居候であれば)、いじめに堪え忍んで裏でシクシクと涙をながすのが常ですが、そうでないんです。
         そこにその時代から考えると珍しいであろう、自立した女性が描かれています。
         しかも18才になったジェーンはローウッドという40近い金持ちの家に家庭教師として住み込むのですが、そこに客としてくるローウッドのいい女(ひと)に対しても、"あんな人ローウッド様にはふさわしくないわ"と強気です。ジェーンは優れた美貌の持ち主でもないのですが、すごい自信なんです。

        上巻は家庭教師として赴任してまもなく、ローウッドに恋する所までの物語ですが、後半はどう描かれているのか、楽しみです。

        ちなみに、ディケンズと同時代のシャーロット・ブロンデですが、作品に描かれている生活文化が一緒なんで、"あー同じだ"とひとりほくそえんで読んでいます。
        登場人物がプディング食べていたりして。



        >> 続きを読む

        2017/12/31 by Reo-1971

    • 他4人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      インビジブルレイン

      誉田哲也2012/07

      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね!
      • 映画で一度見たからスラスラ読めた。姫川が牧田を気にし出した時の感想は映画館同様「やっぱりなー」だった。犯罪者の思考にシンクロし危険な事件が大好き?な姫川に菊田は似合わない。補佐役としては優秀だし姫川にとって必要不可欠な男性であることは確かなのだが、彼女の恋の相手になるには健全すぎるというか姫川の闇を理解しきれそうにないというか。牧田目線での姫川の容姿に対する感想が微妙過ぎる気がするが同性としては親近感が持てて良かった。昔からミステリー小説を読むたびに「そうそう警察官や警察関係者や探偵に美形がいてたまるか!」と思うことが多かったので。 >> 続きを読む

        2017/03/15 by kikima

    • 他4人がレビュー登録、 28人が本棚登録しています
      ブルーマーダー = Blue Murder

      誉田哲也2012/11

      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! kissy1986
      • 死体を肉の塊や物体や犯罪者にとってはただのゴミと普通に表現し、それを東尾に咎められても「これが勝俣のいう犯罪者に近い発想というやつか」と冷静に納得する姫川を見て、姫川はやはりこうでなくてはと思った。優しさと正義感と狂気が混在する危うい存在。それが彼女の魅力。
        菊田と梓の家庭での会話を読んで、やっぱり菊田と姫川は別の世界の人間だったんだなと思った。姫川はおそらく菊田が思っているように安らぎは必要としていない。(癒しを求めることはあるが)安らぎを必要としいいものだと思う人間は彼女と深く関わり付き合うことはできない。
        >> 続きを読む

        2017/03/19 by kikima

    • 他4人がレビュー登録、 18人が本棚登録しています
      ブル-タスの心臓 完全犯罪殺人リレ-

      東野圭吾1993/08

      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 最後のワンシーンにやっと、ブルータス登場・・・
        なぜこのタイトルにしたのか、良くわからないのは私だけでしょうか?

        最初に、完全犯罪の構想で盛り上げてみたものの、その構想以上に膨らみがなかったような気がします。
        かなり尻つぼみな印象になりました。
        >> 続きを読む

        2016/05/04 by きりちょん

    • 他3人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      密室の鍵貸します 長編推理小説

      東川篤哉2006/01

      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 最近集中的に読んでいる東川篤哉氏の「烏賊川市シリーズ」の第1弾。事件の過程における説明が長く、解決の手段がちょっとアッサリしすぎていると思うが、自分としてはその点はあまり気にならず面白く読むことができた。シリーズ化されているので他のシリーズも図書館で探して読んでいきたいと思う。感想はこんなところです。 >> 続きを読む

        2016/06/03 by おにけん

    • 他3人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      ソウルケイジ

      誉田哲也2009/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • ドラマ版を見たときにも思ったけれど、これはミステリーというよりもミステリー要素のある人間ドラマのような気がする。(褒め言葉)家族や親子の定義とは何なんだろうとか家族や親子はいつ家族や親子という関係になるんだろうとかそういうものを考えさせられた。
        「家族もの」にしては母親ではなく父親に焦点が当てられているのがちょっと珍しいなと思った。「家族もの」ではたいてい母親と子供に焦点が当てられるというイメージがあるので。高岡賢一の耕介に対する愛の深さ、玲子の敵討ちをしようと思って包丁を手にして泣く忠幸、登校拒否の息子を抱えながらも家庭から目を背けまいと踏ん張る日下。みんな完璧な人間ではないかもしれないけれど、読んでいる最中ずっと彼らの子供達が羨ましくて仕方なかった。
        >> 続きを読む

        2017/03/12 by kikima

    • 他3人がレビュー登録、 28人が本棚登録しています
      ラットマン

      道尾秀介2010/07

      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • まあまあ

        2015/07/26 by kurobasu

    • 他3人がレビュー登録、 21人が本棚登録しています
      田村はまだか

      朝倉かすみ2010/11

      カテゴリー:小説、物語
      3.4
      いいね!
      • タイトルが気になってしまって、読んでみた。
        読んでみて、札幌ススキノが舞台と知る。
        文学賞受賞作品だということも知る。

        第一章を読んでみて、心つかまれず、途中で読むのやめようかなーとも思ってしまったけど、知っている街が舞台だと地名や看板(ニッカウィスキー)に親近感を持ってしまい読み進める。最後に待ち受ける感動っていうのも何か気になる。

        小さなバーでなかなか現れない田村を待ちながら、同級生5人が自分の人生を回想しながどんどん夜は更けていく。

        選評にある、「心の内側のヒダを爪でひっかいてくるような感触」はなんとなくわかるかも。
        保健室の先生の「まだ34歳。しかしこの「まだ」は高校生には通じない」とか「おばさんでありながら、胸の奥に「まだ」という気があることを見透かされている」とか、なかなかグサグサきますね・・。

        設定、雰囲気は好きでしたが、ひとつひとつの話にいまいち心が動かなかったかな。

        >> 続きを読む

        2016/11/07 by もんちゃん

      • コメント 1件
    • 他3人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      チヨ子

      宮部みゆき2011/07

      カテゴリー:小説、物語
      3.4
      いいね!
      • 幽霊、神、この世ならざるものが登場するが、それらが怖いというのとはちょっと違う。
        まさかの結末、温かさ、人の怖さ……それぞれ異なったテイストで読み止められない。
        一番は「聖痕」。これが好きで二読したほど。本当に衝撃の展開。そして「神」「言葉」「信仰」に迫ったものとしても興味深かった。もう一読したいし、暫く経ってまた読み直したくなりそう。
        >> 続きを読む

        2017/01/30 by ashita

    • 他3人がレビュー登録、 20人が本棚登録しています
      ちいさな王子

      サン・テグジュペリ , 野崎歓2006/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! Fragment mariak1994
      • 有名な「星の王子さま」の新訳。
        この作品ははじめて読んだ。

        けれども、あまりピンとくるところがなかった。
        少年少女はこの作品を読んでどう感じるのだろうか。
        そういう部分がとっくに鈍麻してしまっている自分にはわからない。

        私にとっては、サン=テグジュベリといえば、やはり「夜間飛行」や「人間の土地」のサン=テグジュベリだ。

        たとえばこういう文章。

        「リヴィエールには、自分が、長いあいだ、重い物体を差上げ続けてきたような気がする。いわば、休む間もなければ、果てる希望とてもないこれは努力なのだ。「僕は老いてきた……」行動自体のうちにかれが自分の糧を見いださないということは老いた証拠のように思われた。いまだかって、ただの一度も思ったこともないような、こんな問題に心を労している自分にふと気づいて、彼は驚いた。それにもかかわらず、彼がこれまで絶えず押し退けてきた、やさしいものの集まりが、目に見えない大洋のように、憂欝な響きを立てて、彼に向かって押寄せて来るのであった。「それらのものが、かくまでに身近に迫っているのか?……」彼は、今思い知った、自分が、すべて人間の生活を優しくしてくれるものを、老後の方へ、「やがて自分に余暇のできるとき」へと、少しずつ押しやってきていたのだと。なにか、実際に、やがていつの日か、自分に余暇ができ、一生の終りに近く、自分が想像しているような幸福な平和が得られでもするかのように。ところが、平和はいつになってもこないはずだった。勝利もないかもしれないのだ。なぜかというに、あらゆる郵便物が、ことごとく到着し尽くすということは絶対にないはずだから。」
        (「夜間飛行」堀口大學=訳 新潮文庫p22)
        >> 続きを読む

        2017/12/02 by Raven

    • 他3人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています

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