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(株)弘文堂 (コウブンドウ)

企業情報
企業名:弘文堂
こうぶんどう
コウブンドウ
コード:335
URL: http://www.koubundou.co.jp
      「甘え」の構造

      土居健郎1991/10

      5.0
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      • 精神科医土居健郎の『「甘え」の構造』続『「甘え」の構造』『「甘え」さまざま』『「甘え」雑稿』を読んだ。「甘える」という言葉が日本語にしか存在しないということに着目し、日本人の精神構造を「甘え」というキーワードで解くという論です。ただ筆者は何度も断っているとおり、「甘える」という現象が日本にしか存在しないと言っているわけではなく、その現象を「甘える」という言葉に概念化しているのが日本語だけだと言っています。この部分は多くの人に理解されがたかったようで、たくさんの批判に何度も答えている。「甘え」概念の発見は筆者のアメリカ留学経験におけるカルチャーショックに起因する。同時代の中根千枝の「タテ理論」にも何度か触れているが、日本人の集団性と西欧の個人主義の違いを肌身に深く感じたということだろう。

         筆者は「甘え」の基礎を母子の関係に置く。母子が完全に一体化している時期を「甘えている」とは言わない。母を自ら求めるようになると「この子はもう甘える」と周囲から評される状態になる。つまり甘えは分離を契機とする。年齢を重ねるごとに甘えはいつでも満たされるわけではなくなってくる。その葛藤がさまざまな心の状態を引き起こす。筆者は「甘え」の語彙として「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」「うらむ」「ふてくされる」「やけくそになる」という「甘え」が受け入れられない場合に相手に起こる感情。「たのむ」「とりいる」は甘えさせてほしいという気持ちがあり、「こだわる」「気がね」「わだかまり」「てれる」は甘えたいがそれを素直には表現できない場合に現れる。また、「すまない」は「済まない」ということで、するべきことをしていない(済んでない)から相手に迷惑をかけたと思うことへのわびの気持ちが生ずる。親切な行為をしてくれた相手へその行為が相手に負担になったであろうというところから、親切への言葉に「すまない」が使われる。ここにはわびないと相手が非礼を感じるのではないか、相手の好意を失うのではないかという「甘え」が潜んでいると筆者は洞察する。筆者はアメリカへ留学した時、自分の指導医の親切に「I am sorry.」と言って、相手を当惑させた自分の経験を語っている。ちなみに筆者が留学したのは1950年で、今と同じように考えるべきではない。

         筆者の「甘え」理論の面白いところは、精神科医らしく臨床経験に「甘え」を応用するにとどまらず、社会現象、文芸解釈、歴史解釈などにも多くの発言をしていることである。そのいちいちを挙げられない。どれも一般向けのやさしい語り口の本なので誰でも読める。駅の書店などでベストセラーになっているいわゆる啓発本の類を読むよりはだいぶ有益であると思う。

         文学作品では特に漱石の作品に多くの発言をしていて、『こころ』を「甘え」で読み解いた部分は大変面白い。「先生」と学生である「私」の関係、「先生」と「K」の関係を同性愛的だとする指摘に対して「甘え」理論で明快に説明している。またいち早く西洋の個人主義、近代化の行き詰まりを見通していた漱石の慧眼についてかなり詳しく論じている。甘えたいのに甘えられないという状態がさまざまな精神疾患を生むことになると筆者は考えているが、それは日本だけの話ではなく、近代人というのはおしなべてそういうものだといえるのかもしれません。筆者はもっと丁寧に説明していて、こんな乱暴な議論はしていませんが。

         お互いに傷つくことを怖れて、微温的な「やさしさ」に包まれながら孤独を感じている、つながりたいけれど、深く関わることを怖れるそういう現代のあり方をすでにいち早く見通していた土居健郎。見える人には見えているいつでも。
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        2013/08/20 by nekotaka

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      人材紹介のプロがつくった発達障害の人の就活ノート

      石井京子2010/07

      カテゴリー:労働経済、労働問題
      3.0
      いいね!
      • この本は発達障害者当人や周囲の人だけの本じゃない。就活に関わるすべての人、ひいてはすべての日本人(日本にくらす人みんな)に読んで欲しい。

        わたしは健常者だから関係ない、なんて思っている就活人間は必ず読みたまえ。

        就職って何なんだろう、と改めて考えます。
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        2014/12/04 by junyo

      • コメント 1件
    • 1人が本棚登録しています
      人材紹介のプロが答える発達障害の人が働くためのQ&A

      石井京子 , 池嶋貫二2013/02

      カテゴリー:労働経済、労働問題
      4.0
      いいね! kentoman
      • 発達障害という言葉に出会ってから、まだそんなに経っていないが、関心のある言葉の一つ。
        自分の職務上、知っているべきことかもしれない。
        読み進めるうちに、これは、発達障害の方云々ではないと思い始めたし、自分自身もその可能性があるのではと思ったりもしている。
        ここに書かれていることは、日常的によく耳にすることで、しかも、相談内容への回答として書かれていることは、広く仕事をするために必要な基礎的なことが多い。
        装丁にもあるとおり「働くって・・」というスタンスでちょうどいい本。
        みんなが読んでいい本だと思う。
        >> 続きを読む

        2014/09/05 by けんとまん

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      田中角栄の真実 弁護人から見たロッキード事件 弁護人から見たロッキード事件

      木村喜助2000/09

      カテゴリー:刑法、刑事法
      4.0
      いいね!
      • 5を付けてもいい。

        こちらの方は田中元総理と榎本敏夫元秘書の弁護人として、最初から最後まで関与した一人。
        この方は、今でも事件についての再審を求めたい気持ちを持っている。
        田中元総理は、丸紅側から請託を受けたり、賄賂を受け取ったことを捜査、公判を通じ
        一貫して否認された、が有罪にされた。

        田中元総理は、その上告審に係属中の平成五年十二月十六日に逝去され、
        死亡により最高裁判所は「控訴棄却」の決定を行い裁判は終結した。
        有罪・無罪の裁判でなく、死亡により控訴(検察官の起訴)を無効するという裁判。
        したがって、田中元総理に対する有罪判決は無くなった。

        弁護士との会話で、田中株が上がる
        田中先生は「どんな人に対しても、真面目に対応し、人を小馬鹿にするような態度を決して見せなかった」

        マスコミと世論
        公判の開始:新聞をはじめとするマスコミは、田中有罪志向が強く、弁護人に有利な証言やその他の証拠については報道せず、不利益材料ばかり報道していた

        公判心理とマスコミ報道
        「アリバイは凄いですね、特に三回目は無罪でしょうね」というので
        「何でそれを書かないんだ」と聞くと
        「いや、デスクが通らないんです」との答えが返ってきた

        世論の反応
        法治国家とは言えない現象まで現れた
        一審の論告当夜に政党首脳が先頭に立ち「角栄御用だ」と提灯行列



        大久保利通も孫のことで泣いているだろう(麻生さん方面じゃないよ)

        ロッキード事件の法廷にどれほどの不備があったか
        興味があったら読んでいただきたい。
        角栄さんの人柄は変わらぬまま。
        >> 続きを読む

        2016/07/23 by ゆのき

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