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(株)みすず書房 (ミスズシヨボウ)

企業情報
企業名:みすず書房
みすずしよぼう
ミスズシヨボウ
コード:622
URL: http://www.msz.co.jp
      夜と霧

      FranklViktor Emil , 池田香代子2002/10

      4.5
      いいね! syuna
      •  多くの人に、時を越えて感銘を与え続けてきた一冊に対して、今新たに付け加えられることはほとんどない。「人生の意味」とは何か?という普遍的な問いに対して、むしろ人生そのものが、我々にこの問いを投げかけており、我々はそれに生きることで答えなければいけないという、発想のコペルニクス的転回は、今を生きる多くの人にとっても、苦しみを乗り越えるヒントになるだろう。
         苦しみの現在を乗り越えるために、人々が過去の記憶と、未来への期待とで、生きてきたことは、今後も語り継がなければならないことだろう。
        >> 続きを読む

        2018/03/02 by shinshi

    • 他18人がレビュー登録、 64人が本棚登録しています
      夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録

      霜山徳爾 , FranklViktor Emil1985/01

      4.2
      いいね!
      • ナチスの強制収容所に収容されたユダヤ系心理学者の体験記。
        敢えて悲惨さを強調せず、心理学者視点で収容所内での人間心理と、解放された後に来る精神不安について書かれている。夜と霧に紛れて連れ去られる人々を表した題名とのこと。
        以下、備忘録。
        被収容者から選ばれるカポー、良い人は帰ってこなかった、タバコを吸い始める収容者はまもなく死ぬ、恩赦妄想、ヤケクソのユーモアと好奇心、人はどこまでも慣れる、鉄条網に走る=高圧電気で自殺する事
        ・栄養不足で一度も歯も磨かず泥だらけの傷が出来ても病気にならなかった、アパシー感動の消滅、殴られても何ともなくなる不感無覚、飢餓浮腫
        ・幼児性への退行、胃袋オナニー、性欲が全くなくなる、政治と宗教・降霊術への関心、繊細な人の方が収容所生活によく対応した?収容所演芸会と芸術への関心、悲惨な環境で求める孤独な時間、脱走を試みた際の残していく仲間へのやましさ、諦めた際の心安らかさ、脱走直前の赤十字医療団到着で命を落とさなかった、テヘランの死神の逸話
        ・感情の消滅、振る舞いをするか決める精神的内なる自由がある意味がある苦悩なのか?
        ・被収容者が最も辛かったのはいつまで入っているか分からない事、無期限の暫定的存在、失業者も同じ心理。ごく少数が内面的勝利を勝ち取った
        ・研究対象として収容所生活を講演している様を想像して超然としていた、夢で見た開放日に死んでいった音楽家、苦しむ事は何かをやり遂げる事、言葉よりも模範、犠牲に意味はる
        ・収容所監視者の心理、収容所の下位からの選抜はサディストの選抜、2つの種族が混在している、解放後の精神の弛緩、開放の日に嬉しさは感じなかった、何時間も貪り食う、話し続ける、解放後の苦悩、等。
        >> 続きを読む

        2018/03/14 by aka1965

    • 他3人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      世界はうつくしいと 詩集

      長田弘2009/04

      カテゴリー:詩歌
      4.5
      いいね!
      • 見えないものをことばで表すって難しい。

        山を歩きながら、鳥見をしながら、庭の花を愛でながら、
        すべてが見えていた訳ではなかったんだと、長田さんの優しいことばで改めて気づかされる。

        「何ひとつ永遠なんてなく、いつか
        すべてが塵にかえるのだから、世界はうつくしいと」


        >> 続きを読む

        2018/02/17 by FUKUchan

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      「昭和」を送る

      中井久夫2013/05

      4.0
      いいね!
      • 敬愛する中井久夫先生のエッセー集。2013年刊本。

        昭和天皇観にまつわるエッセーがあるかと思えば、人間だけがもっている「笑い」に関する生物学的考察など内容は多彩。

        戦前生まれの先生が精神科医として多くの患者等に接してこられた中で、人心において戦争の占める割合は小さくなく、天皇崇拝を含め、昭和天皇をいかに思うかの問題は避けて通れぬ一大事で在り続けたように拝する。

        天皇制について言及された1989年の文中で、はっとさせられたのは、戦後の象徴天皇についての件りで、「皇太子のいかんが問題」との言。象徴を語るためには機能面を語るべしとの意である。

        なお、先生は1989年当時の文を本書収録にあたって、ながらく気力を失っていたとされる。時代の流れのなかで、その取り扱いを憂慮されたのであろうか。にもかかわらず、敢えて平成の今に、注釈を加えてでも再録された真意を重く受け止めたいと感じた。

        (それにしても、相変わらず難しい目次タイトルが並んでいますが、文章はいたって穏やかで読みやすい。食わず嫌いにならずに多くの人に読んで欲しいな。)

        笑いの考察では、先生らしい発想にうれしくなったりもした。「動物も笑えたらどんなにか楽な時があるだろうと私はひそかに思う。」
        >> 続きを読む

        2015/03/05 by junyo

      • コメント 1件
    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      夜・夜明け・昼

      WieselEliezer , 村上光彦1984/07

      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 第一部のレビューは別に書いたので、ここには第二部の『夜明け』について。

        とても重い作品だったが、心に残る作品だった。

        『夜明け』はヴィーゼルの自伝的三部作の第二部で、第一部の『夜』はホロコーストの過酷な体験が描かれ、主人公はそこで家族をすべて失いながら、自分は生き残る。
        この第二部では、生き残ったまだ少年の主人公が、当時はまだ独立しておらずイギリスの統治下にあったイスラエルの地に渡り、独立運動に身を投じている。

        イギリスからの独立のため、ユダヤ人の過激な独立運動組織は、武装闘争を繰り広げていた。
        その中で、ある時、仲間の一人が捕まり、死刑を宣告される。
        組織はイギリスに対抗するために、イギリスの軍人を一人誘拐して人質にし、もし仲間が死刑執行されれば人質を殺害すると宣言する。
        しかし、イギリス政府は、脅かしには屈しないと述べて、死刑を執行する。

        主人公は、組織から、その人質の殺害を命じられる。

        主人公は、人を一人殺すということに、思い悩む。
        もうすでに死んでいるはずの自分の父や母や友人たちの姿が幻となって現れて、本当に人を殺すのかと尋ねてくる。
        僕を裁くのか?とそれらの亡霊に問うと、裁きはしない、しかしお前は私たちの総和だ、お前がすることは、私たちもすることになるのだ、ということを語る。

        主人公は、仲間たちとしばらく雑談し、その中でホロコーストの過酷な体験なども話す。

        自分が今から殺す人質が、もし憎めるような人物で、かつてのナチスのような人々で、憎むことができるならば引き金も引けると思い、決められた時刻よりも前もってその部屋に行く。

        そのイギリスの軍人は、いたって優しそうで立派な人物で、主人公の年齢を聞くと、心の底から憐みをもって見つめて、自分の息子が同じ年齢だといった話をした。

        しかし、時間が来たので、主人公はその軍人を射殺する。

        ホロコーストでも神が死んだと思い、自分が死んだと感じていた主人公は、今度は全く立場を変えて、逆の立場で、神を殺し、そして自分も死んだと感じていた。

        あまりにも重いテーマだが、なんといえばいいのだろう、イスラエルのあまりにも過酷な運命と言えばいいのだろうか、業といえばいいのだろうか、とても考えさせられる、すごい作品だった。

        引き続き、第三部も読んでみたいと思う。


        (追記)

        『昼』は、ヴィーゼルの『夜』と『夜明け』に続く、三部作の三部目である。

        一部では、ナチスの強制収容所における主人公の過酷な体験が描かれ、二部では、独立前のイスラエルのレジスタンスに身を投じ、個人的には好感を持っているイギリス軍の将校を命令で銃殺しなければならない様子が描かれていた。

        この第三部では、それらとはうってかわって、アメリカのニューヨークで、新聞記者として、平和に暮らしている主人公の様子が描かれる。
        周囲が驚くほどの美しい若い恋人もいる。
        親友もいる。

        しかし、突然、主人公は交通事故に遭い、瀕死の重傷を負う。

        搬送された先の病院の医師は非常に誠実で優秀な医者で、恋人や親友の励ましもあり、奇跡的に主人公は命が助かる。

        しかし、わりと容態が回復し、まだベッドで身動きができないものの、落ち着いて話せる状態になった時に、その医師が、どうしてあなたは生きようとしないんですか?と主人公に尋ねる。
        普通は、医師の自分は患者と二人で手術室で死と闘う、しかし、あなたは意識を失っているとはいえ、全くそうではなかった、むしろ…、と。

        主人公は、その医師には、適当にごまかして答えるが、さまざまな思い出を思い出す。

        アウシュヴィッツの収容所で、あのようなひどい体験をした後は、自分はどこかで死んでしまっていて、もう生きたいという気持ちもどこかで失せていて、神はとっくに死んでいるし、この世に何の信頼も希望も持てないのだということを。
        自分だけでなく、そこで死んでしまった家族や友人たち、あるいは生き残っても自分のように全く信仰を失ってしまった知り合いのこと。
        そして、収容所を出てから、たまたま出会ったある女性が、その人も十二歳の時に収容所に入れられて、そこでナチスの将校を相手に慰安婦とされていたことを聞いたこと。
        などを思い出す。

        だが、主人公は、恋人との月日も思い出す。
        その恋人が、主人公の体験や思いを聞いてくれたこと。
        なんとか、生の側に引き戻そうと一生懸命努力してきたこと。
        一時期別れたが、またある時に寄りを戻したこと。

        主人公の親友は画家なので、俺が肖像画を仕上げるまで死ぬなと言って、事故直後から毎日見舞いにやって来ては、肖像画を描いてくれていた。
        その親友が、

        「神はおそらくは死んだんだろう。しかし、人間には友情がある。」

        と言うのは、なんとなく、ほろりとされた。

        また、「人間に苦悩が満ちていて、それを運命が何の人間に強いているというならば、人間が自分の意志で、たとえ一時間でも苦悩を止めて過ごすことができたら、それこそが人生や運命への勝利だ。」

        ということをその親友が言うシーンがあり、とても考えさせられた。

        結局、主人公は、事故から命が助かったが、心が本当に生の方に傾いたのかは、よくはわからないまま物語は終る。

        しかし、その恋人や、親友や、医師たちを通して、癒そう、癒そうとする力が、実は、神と呼ばれるものなのではないか、とも思う。

        もっとも、人生はそんなに簡単なものではなくて、この恋人自身も、主人公と別れていた間に金持ちと結婚して、その結婚が失敗して離婚し、主人公と寄りを戻してからもしばらくアルコール依存のようになっていた。

        結局、人は、大なり小なり、何か問題を抱えたり、苦しみを抱えたりしているのかもしれないし、そうであればこそ、お互いに支え合ったり、必要とし合うことで生きていくのだろう。

        主人公の心の傷が癒えることはないのかもしれないが、たとえ少しの時間の間でも、苦悩を止めて、人生を心から喜んだり楽しんだりする時間が、事故の怪我から治った後に、おそらくはかつてよりは増えるのではないか、増えて欲しい、と思った。

        三部作を通して、重いが、考えさせられる、読んでよかったと思わさせる、作品だった。
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        2013/08/06 by atsushi

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      T.S.エリオット

      武谷紀久雄 , AckroydPeter1988/07

      カテゴリー:
      4.0
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      • 邦訳で手に入るエリオットの伝記の中では一次資料。手堅い分、人物が人物であるせいで面白みに乏しい。 >> 続きを読む

        2015/10/14 by aaa

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      好き?好き?大好き?

      R.D.レイン (1978/02

      カテゴリー:
      4.0
      いいね!
      • R.D.レインは精神科医であり、1960年代にいわゆる「反精神医学」と今では呼ばれるようになった活動をした臨床家です。そんなラジカルな精神科医が、なぜか詩集を何冊か出しています。これが結構面白いのです。

         この詩集には、共通理解がずれてゆくさまを描いているという印象を受けています。わたしはアルツハイマー病の患者さんとよく接するのですが、「見当識(今がいつでここはどこで、なんのために自分はいるか、自分は何をしているか)」は失われているけど、人格や感情、そして言語能力や運動能力などは保たれている患者さまが多いものです。そして彼女たちのお話が一見まともである一方で、基盤となる共通理解の手がかりがつかめないことに対し、なんともいえないもどかしい感じをもつことがあります。


        父   あなたは手品師(マジシアン)でいらっしゃる
        息子  そうだよ
        父   わたしの息子のピーターは音楽家(ミュージシアン)でして
            あの子をごぞんじでしょうか?

        (中略)

        息子  ぼくがそのあの子だよ
        父   ほう おまえがそのあの子なんだね
        息子  パパの息子のピーターだよ
        父   わたしの息子ピーターだね
            おまえにまた会えるなんて 思いもよらなかったぞ ピーター
            そいつはすばらしい いまの話をお聞きになりましたか?
            あの人がわたしの息子ピーターだそうですよ
        息子  ピーターという息子さんがいらっしゃったんですか?
        父   それがわたしのぼうずでしてな
        息子  ピーターのことをどう考えているの パパ?
        母   もうたくさん!

         (蕩児の帰宅 Ⅰ より)

         この詩には、かみ合っていないおかしさがあります。読者はいわゆる「神の視点」で見ているので、あちこちが見えておもしろいのですが、「父」が瞬間瞬間で揺れ動いているようで、「息子のこと」ただ一つを思う様子がもの悲しいです。またその瞬間にあわせて柔軟に形を変える息子の対応が、少しせつなく、読者としてはひやりとさせられます。

         この詩からはじまる詩集「好き?好き?大好き?」では、こういった共通理解のなさにまつわる文章が次々と展開してゆきます。
         
         よく考えると、患者さんの例を出すまでもなく、共通理解のなさというのは人間関係の大きなテーマなのでしょうね。わたし自身が結婚をしてみて、夫婦お互いがあまりに違うものを見ているということを実感しています。ほんとに人間関係というのは、ひとつの形に割り切れない・・・。自分の持っているフィルターの臆病なゆがみに気づいてびっくりすることもしょっちゅうです。

         この詩集はそんなわけで、破綻の楽しさ、のようなものを味わえるおすすめの詩集であります。
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        2016/07/18 by みやま

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      パワーズ・ブック

      柴田元幸2000/04

      カテゴリー:英米文学
      4.0
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      •  この本が出版された2000年4月までに、パワーズは6つの長篇を発表しています。
        「舞踏会に向かう三人の農夫」
        「囚人のジレンマ」、
        「The Gold Bug Variations(黄金虫変奏曲)」
        「Operation Wandering Soul(さまよえる魂作戦)」
        「ガラテイア2.2」
        「Gain」
         そのうち、この時点で翻訳されているのは「舞踏会に向かう三人の農夫」だけなのですが、そんなことお構いなしに全部紹介してしまうという大胆な企画。それだけパワーズが注目されていたということなんでしょうね。でも、当時、どんな人が買って読んだのだろう。英語の読める人かな(^_^;)
         それにしても未訳がまだ3つも残っているというのは楽しみなことです。そのあたりはざっとナナメ読みしておいて、翻訳が出版される日を待ちたいと思います。
        >> 続きを読む

        2013/07/04 by 弁護士K

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      舞踏会へ向かう三人の農夫

      PowersRichard , 柴田元幸2000/04

      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      •  ついに、ここに戻ってきました。
         この翻訳が出版されたばかりの頃、何度か読もうと試みたのです。でも、その頃は読めませんでした。そしていま、邦訳されているパワーズを全部読んだ上で、再挑戦。
         やっぱり、難物でした。どうやらパワーズは、作品を重ねる毎にリーダビリティーを獲得していった作家のようです。「ガラテイア」よりも「ディレンマ」、「ディレンマ」よりも、この「農夫」が難しい。まるで、トマス・ピンチョンを読んでいるような気分になります。考えてみれば、1980年代のアメリカで、しかも理系出身の若い作家が、ピンチョンに影響を受けていないとすれば、そちらの方が不思議であって、初期の作品ほどその匂いがするということかもしれません。

         ドイツの写真家アウグスト・ザンダーの撮影した一枚の写真を巡って展開するいくつかの物語は、エピローグに向けて収束するかのように思われますが、最後までぴったりと繋がることはなく、一定のズレを保ったまま重ね合わせられます。それは第一次世界大戦に巻き込まれていく三人の農夫の物語でもあり、戦争で死んだ恋人の面影を写真左端の農夫に見出した少女の物語でもあり、戦争を止めようと愚者の船を漕ぎだしたヘンリー・フォードの物語でもあり、結局のところ、この写真に出会った作家が紡いだ物語の物語による物語のための物語みたいな物語なのでした。
         翻訳しながら、これは僕の町が描かれた小説だという思うことはよくある、でも、これはいまこの小説を翻訳している自分に関する小説だと思ったのははじめてだ、という趣旨のことを柴田元幸が語っていました。なるほど、です。つまり、この小説は、まさにこの小説を読んでいるぼくに関する小説でもあるようです。

         我々はみな、目隠しをされ、この歪みきった世紀のどこかにある戦場につれていかれて、うんざりするまで踊らされるのだ。ぶっ倒れるまで踊らされるのだ。
        >> 続きを読む

        2013/07/02 by 弁護士K

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      夜間飛行

      山崎庸一郎 , サン・テグジュペリ2001/08

      カテゴリー:作品集
      5.0
      いいね!

      • 「星の王子様」と並んで、サン=テグジュペリの代表作である「夜間飛行」を読了。

        この作品にて著者は、ここに古典的ともいえる高い完成度の文体と構成によって、飛行事業にたずさわる者たちの一夜を書いた。時に三十一歳。

        皮膚の下に力こぶがグリグリと動くような文章だ。
        例えば、若き飛行士が、アンデス山脈の上でサイクロンによる猛烈な乱気流に巻き込まれ、峰々から雪が噴き上げるのを見るところ。

        それは「雪の火山さながら」だった。
        「すべての峰が、ひとつまたひとつと、なにか目に見えぬ奏者によってつぎつぎに点火されるように燃えあがったのだ」。
        同時に、周囲の山々が、乱気流とともに揺らぎはじめる。岩石から、雪から、「怒り」がほとばしる。

        この夜空を行く飛行士と対比的に書かれるのが、あくまでも地上にいて夜間飛行をコントロールする航空会社の冷厳な支配人だ。
        「愛されるには同情しさえすればよい。わたしはほとんど同情しない。-----配下の者たちを愛してもいい。ただし、それらを彼らに言ってはならんよ」。

        無言のまま、死に向かって乱気流の中を上昇していく飛行士と、雄弁だが、するどい孤独をただよわせながら郵便飛行事業の成功をめざす支配人と。

        二人の動きを中心にした展開を読むにつれ、夜の暗黒というものが人間にとって、かくも冷たく厳しく、かくも美しく、かくも親密で、かくも平安に満ち、かくも戦慄的なものであったかと思わせられる。

        第二次世界大戦末期、著者のサン=テグジュペリは、あたかも、この小説の飛行士のように、機体もろとも未帰還となる。時に四十四歳。

        >> 続きを読む

        2018/10/28 by dreamer

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      私、ジョージア

      長田弘 , WinterJeanette2001/11

      4.0
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      • 画家のジョージア・オキーフの人生を描いた絵本。

        小さい頃から、自分自身をしっかり持ち、描きたい絵を描こうとし続けた生涯。

        人間、自分が本当に実現したい美しいことを誠実に追い求めていくと、本当に美しいものが紡ぎだされていくのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2013/06/07 by atsushi

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      人生の最初の思い出

      長田弘 , MoserBarry , MacLachlanPatricia2001/11

      4.0
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      • 小さい頃に住んでいた場所や景色というのは、ふしぎと心に残るものだ。

        特に、引っ越した場合には、それらは特別なものとなる。

        この絵本は、そうした感覚をとてもよく描いていた。

        「人生の最初の思い出は、いつでも、自分とずっといしょにあるんだよ。たとえ自分では、すっかり忘れてしまってもね。」

        父親が主人公に語るこの言葉は、そのとおりだと思うし、また忘れないようにしていくことも大事なのだと思う。

        きっと、小さい頃の思い出というのは、その人にとって魂の最も中心をなす部分なのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2013/01/19 by atsushi

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      子どもたちに自由を!

      MorisonSlade , PotterGiselle , MorrisonToni , 長田弘2002/01

      4.0
      いいね!
      • 考えさせられる絵本だった。

        結局、意のままにならない子どもの自由を奪ったり、何かの形を押し付けているのは、大人の側なのだろう。 >> 続きを読む

        2013/06/07 by atsushi

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      リンカーンゲティスバーグ演説

      長田弘 , McCurdyMichael2002/04

      4.0
      いいね!
      • リンカーンのゲティスバーグ演説の絵本。
        とても良い本だった。


        長田弘の訳も、マイケル・マカンディの絵も、とても良かった。
        あらためて、リンカーンのメッセージに胸を打たれる。


        「私たちがここで何を語ろうと、世界はさして注意をはらわないでしょうし、末永く思い出にとどめることもしないでしょう。しかし、勇気ある人たちが、この地でなしたことが、忘れ去られることは決してないのです。


        この地で闘った人たちが、気高く、これほどまでに前進させながら、まだ完了していない仕事に、今、身をささげること。それこそ、私たち、生きてあるもののなすべきことです。」


        このメッセージ、今の日本にも、とても響くメッセージだと思う。


        この本の解説の中で解説者の人が、「理想主義ほど役にたつものはない。理念こそ問題である。言葉は武器よりもずっと大事だ。」ということを、リンカーンはこのたった三分間の短い演説で鮮烈に示したと述べている。


        本当にそうだろう。

        そして、そのようにこの演説を受けとめ、長く語り継いできたアメリカの
        人々が、またすごいと思う。


        それに比べて、日本では、たとえば菅さんが総理の時に脱原発について重要な演説をしても、「個人的な思い」だと嘲笑し、冷笑し、ろくに耳も傾けなかった。
        「理想主義ほど役にたつものはない。理念こそ問題である。言葉は武器よりもずっと大事だ」ということを理解しないし受けとめることができない国民は、やはり「人民の、自民による、人民のための」政治を実現することは難しいのだろう。

        このリンカーンの演説を大切にしているアメリカ国民は、やはりたいしたものだと思う。
        >> 続きを読む

        2013/01/08 by atsushi

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      ガラテイア2.2

      若島正 , PowersRichard2001/12

      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  パワーズの第5長篇になります。
         リチャード・パワーズというスランプに陥った作家が、人工知能にこの世界を学習させるという物語。「ガラテイア」というのは、「ガラテア人の手紙」の「ガラテア」のことかと思って読み始めたら、実はギリシャ神話に登場するピグマリオンの妻のことみたいです。これを題材にしたストーリーでよく知られているのは、オードリー・ヘップバーンの「マイ・フェア・レディ」ですが、つまり主人公からトレーニングされるヘレンという人工知能を、イライザ(つまりガラテイア)に擬えているわけですね。
         それまでの「舞踏会に向かう三人の農夫」、「囚人のジレンマ」、「The Gold Bug Variations」(未訳)といった彼の作品の執筆経過が語られるフィクショナルな自伝でもあり(アーヴィングの「ガープの世界」を思い出しました)、かつ、人間というものがいかにして成り立っているものかを掘り下げる「エコー・メイカー」、「幸福の遺伝子」に直接繋がっていく作品でもあります。
         最終盤、「テンペスト」の一節を題材にした試験へのヘレンの反応には、目頭が熱くなりました。
         これ以前の作品を読み終えた後、また、執筆順に読み直してみたいものです。
        >> 続きを読む

        2013/06/07 by 弁護士K

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      谷譲次テキサス無宿/キキ

      出口裕弘 , 谷譲次2003/06

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      •  1919年からはじまった禁酒法時代の亜米利加。
         反骨の気風を腹に抱えて無宿の日本人が亜米利加の世を流れていく様を語る。

         ガヤガヤとした酒場の円卓で聞いているかのようないい話である。フィクションとノンフィクションの間の話らしいが、もう今の時代では禁酒法は絵の中にしか存在しないために全てが良き時代のアメリカの一部に思える。どこの町に行っても日本人の「めりけんじゃっぷ」が居て、居るのだから集い、何某かの生計を経て、もちろんそうなったならばそこには顔役がいて、まず町に着いたのならば一番に顔役に挨拶に行くこととなるのが通例である、と書くといかにも裏社会的なと思うかもしれないが話はそう明確でもなく、ちょっと悪いことをする奴もいるぐらいの話である。何せ拳銃が出てこない!ちらちらとその影が出てくることはあるものの、そこが一つの驚きであった。ユダヤ人や中国人と違い、日本人の移民は店を構えること、自分で商売をすることはまれで人に使われるのを一義とする、だから顔役に紹介してもらってウェイターポーターバトラーなどの使われる商売を転々としながら町から町へと流離う。そうして「めりけんじゃっぷ」達は方々で生活をしている訳だ。
         歴史的な視線を見れば第一次大戦後の禁酒法時代で、もう何歩か歩けば第二次世界大戦なのだから、この「めりけんじゃっぷ」達は全員収容所にぶち込まれる運命なのだろう。だからこその古き良きアメリカの威風があるこの本は面白い。知らない顔を見れたのだからもちろん損をした気分にはならない。
         アルカポネなどのギャングの話は一つもなかったのだから、禁酒法にも前期中期後期という分かれ方が出切るのかもしれないが、まだ禁酒法時代の系統だった本を読み込んでいないために判断が付かない。それともギャングはアメリカ人向けで移民には手を出さなかったのだろうか、いやそれじゃあギャングじゃないな、などとも思える。そう思えるのがいい本という証拠ではなかろうか。
         余談だが、この中に「キキ」という短編があるが、ガンスミスキャッツを思い出した。

         禁酒法、古き良きアメリカ、めりけんじゃっぷという単語に興味を引かれたら読めば十分面白い。古い亜米利加労働英語なども知れるし、世知辛さも無宿人の良さも詰まっているという興味深い本である。
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        2016/08/22 by ginhai

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      小さな王子さま

      山崎庸一郎 , サン・テグジュペリ2005/08

      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 2005年5月読破。

        2015/12/17 by Y96

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      リンさんの小さな子

      ClaudelPhilippe , 高橋啓2005/09

      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 静謐な時間が流れる中、頭の中の映像がモノクロームになっていく。

        読み始めてすぐに、小さな子がわかった。

        そこに込められた想い、生きる糧、言葉を超えたもの。

        そこに至るには、困難も辛さもいろいろある。

        ただ、その先にある微かな光明が見いだせるか否か。

        それになるうるか否か。

        深い1冊。
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        2018/01/11 by けんとまん

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      芸術人類学

      中沢新一2006/02

      カテゴリー:芸術理論、美学
      4.0
      いいね!
      • 20代中頃に読んでから、長いこと人間に対する見方のフレームになっていた本。ちょっと人生狂わされた(笑)と思うくらい。

        文化人類学や考古学と大脳生理学や心理学を橋渡しし、現生人類に初めて生まれた脳の働き、つまり、ある出来事に適応するための思考(=論理思考)達を縦横に飛び越える働きこそ「心」の本質だとしている。そしてラスコーの壁画からみる芸術の発露の秘密や非論理的とみなされる神話が持つ「対称的」な世界観から、「心」の本来の動きや特徴を読み解いている。

        若い頃にチベットで仏教の修行を積み、心の深い層まで分け入っていくという方法で仏教という宗教を実体験してきた人間なので、この人の発言にはいつも「反社会性」が付きまとう。つまり社会を形成する仕組みや道徳が人間を圧迫するものになっていくことに言及し、心の基層となる生の部分をそのまま出せる世の中を作っていこうというのが一貫した行動原理。
        グローバリズムや価値相対化、リバタリアンやコミュタリアン、経済至上主義や地球に優しく等など、様々なことがドグマ化することで新たな問題や苦しみを作っていると考えていた若かりし日の自分にとって、そういったことへのカウンターとして信じるに足る考えを見つけたと有頂天になったものだった(笑)。


        ただ、今回読み直したところ、この人は文章が柔らくうまいので検証しないままふわっと頭に入ってしまう恐さがあって、その人たらし的な要素を自覚的に使っているのを意識しておかないと危ないだろうと感じた。
        チベット時代の修行を書いた本がオウム真理教のテキストにされていたり、麻原を宗教者として評価したということで世間に大変なバッシングを受けたこの人だが(世間の叩き方は的を射ていなかったと思うが。。)、自分の考えを広めるためにオウムを利用していた面があったかもしれないとも思うようになった。

        マルキストとしての要素を持っている人ながら、左右どちらのテキストを利用することも厭わずうまく統合してくすぐってくる辺り、今の自分は対峙するのを躊躇してしまう。
        とはいえ今回もふわっと高揚させられたことは否めないけれど。
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        2011/09/14 by Pettonton

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      エミリ・ディキンスン家のネズミ

      長田弘 , SpiresElizabeth2007/09

      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Moffy
      • 暖かい気持ちになれました:)
        こういう友情もあるのですね。
        友情は心の繋がりで結ばれていると聞いたことがありますが、この「二人」(?)の友情は確かにそうであることを教えてくれます。
        互いに顔あわせたことでさえ、なかったでしょうに、その繋がりは互いに勇気とインスピレーションをもたらし……人生の動きに働きを与えました。
        短い期間であったけど、それでもなお尊さ溢れるこの関係に、何か考えさせられるものがありました。
        >> 続きを読む

        2017/11/02 by deco

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