こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


(株)緑風出版 (リヨクフウシユツパン)

企業情報
企業名:緑風出版
りよくふうしゆつぱん
リヨクフウシユツパン
コード:8461
URL: http://www.ryokufu.com
      東大闘争と原発事故 廃墟からの問い

      折原浩 , 三宅弘 , 熊本一規2013/08

      4.0
      いいね!
      • 以前、私の先輩・・・東京大学工学部都市工学科の先輩、明治学院大学教授の熊本一規さんとお互いの著作を献呈しあったことがあるのですが、私が2冊差し上げたことに鑑み、先方ももう一冊本を贈呈してくださいました。(海老で鯛を釣る、と言った感じですが)

         その本は「東大闘争と原発事故  廃墟からの問い」(緑風出版:2500円・2013.8月15日初版)で、4氏の共著になっています。私は小学生の頃、テレビで東大闘争の終盤、安田講堂の攻防戦を見て、「大学って、こんなくだらないことをやるんだ、大学には行きたくないな」、と思ったのですが、その大学に進学し、あまつさえ闘争の余韻を残していた自主講座に出入りするようになったのは、皮肉な事実です。

        それでこの本、1章は、教官として東大闘争を体験した折原浩さん、2章は闘争当時中学生だった人で法学部で学び、折原さんの活動を後輩の目から客観的に考察した清水靖久さん、3章は原発現場(大飯原発)の近くで育ち、法学部に進みながらも、貪欲に原子力工学科に出入りし、工学という物になみなみならぬ関心を持ち続けられた三宅弘さん、そして4章が工学と法学に詳しく、実際日本各地の反公害市民運動に関わられた熊本一規さん。

         この章立ては、思弁的な文科系的発想から、実際的な理科系的発想までの思考の流れを暗示するようです。折原さんの問題提起(起)、清水さんの客観化(承)、三宅さんの工学そのものの問題化(転)、熊本さんの工学のあり方についての示唆(結)・・・このように見事な起承転結の形式を持つ本です。

         その中から、1章、4章についてより深く見てみます。折原さんは全共闘の提起した「学問は誰のためのものか」「自己否定」「帝大解体」などのテーゼを誠実に自分の問題として、造反教官になり、当時就いていた教養学部助教授の仕事をボイコットし、替わりに公開講座を開きます。そしてこの1章では社会学者としてマックス・ヴェーバーの著作のなかに真理を見出そうと苦慮します。あの有名な言葉「西洋近代の資本主義を発展させた原動力を、主としてカルヴィニズムにおける宗教倫理から産み出された世俗内禁欲と生活合理化であるとした。」(wiki)・・・これは「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」のメインテーマですね。

         さて、折原さんは、この本のテーマに即して、つまり彼の専門分野から、東大闘争、原発事故の関連について、どのようなことを書かれているかと見るに、「まともな学者が出て行ってしまい、大学に残ったのは御用学者だけになってしまった」との趣旨のことを書かれています。それが例えば原子力工学科なわけですね。

         ところで、ちょっと意地悪なことを書くと、マックス・ヴェーバーを旗印として、どの程度原発事故のことに肉迫できるのか?という点です。例えば
        1)資本主義はプロテスタンティズムが産んだ
        2)原発は資本主義が産んだ
        3)よって原発はプロテスタンティズムが産んだ

        ・・・このような三段論法(?)はどうでしょう?もちろん、資本主義は資本家と無産階級の2者が分離した社会体制です。文科系的発想では、やはり科学技術のことには歯切れが悪くなるような気がします。

         そして4章。熊本さんは、都市工学科・計画コースの卒業生で、「ごみ問題」を主眼に長年反公害・市民運動に関わられてきた人です。その実務的な実力は特筆すべきものがあります。有名な宇井純さん、中西準子さんとはコースが違うので(この2氏は衛生コース、ちなみに私も衛生コース:現在は環境科学コース)、比較的独立に運動に励んできましたが、熊本さんは私がこの2氏に持つのと同様な人物評をお持ちでした。・・・すなわち、この有名な2氏は、必ずしも反公害運動の支援者ではない、ということ。

         それでも、特に宇井さんの場合は、住民運動、反公害運動において示唆的な発想を組み立てる名人でした。その点は熊本さんも心得られていて、宇井さんも言いそうなことですが、この4章で熊本さんは「土法科学」というものを提唱されています。

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

         土法科学というものを創りたいと思う。それは、一言でいえば、生活者の生きる知恵や生きる力を強めるような科学である。生活者自身の必要のために、生活者自身によって握られる科学である。
         
         土法科学の特徴は、官製科学のそれと正反対のものでなければならない。

        第一に、専門用語を駆使する官製科学とちがって、誰にでもわかるような言葉で誰にでもわかるように表現されなければならない。

        第二に、現実から理論を抽出してそれを再び現実に還元するという科学本来のありかたを取りもどさなければならない。

        第三に、現実の苦悩を自らのものとして受けとめ、それを解決しようとする立場からなされなければならない。

        第四に、被支配者の観点をもたなければならない。支配と被支配の社会関係の中で被支配者の立場から支配関係をとらえなければならない。
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

              254P
        どうでしょう?社会的事象を、法学と工学からとらえると、このような科学の妥当性も解る、というものです。

        最後に:この本、なかなか大部で値段も高い本ですが、図書館に入れてもらって読むことをおススメします。
        >> 続きを読む

        2014/01/01 by iirei

      • コメント 9件
    • 1人が本棚登録しています

【(株)緑風出版】(リヨクフウシユツパン) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(出版社,発行所)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本