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(株)本の友社 (ホンノトモシヤ)

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企業名:本の友社
ほんのともしや
ホンノトモシヤ
コード:938429 89439
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      マオ2

      DeLilloDon , 渡辺克昭2000/05

      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      •  主人公は、J.D.サリンジャーを思わせる隠遁作家ビル・グレイ、ビルの熱狂的なファンでビルの居所を突き止め押しかけ秘書におさまったスコット、統一教会への入信と家族による奪還を経て2人のもとに転がり込んできたカレン、そして作家の肖像写真をテーマとする女性カメラマンのブリタ。素顔や実名といった一切のプライバシーを読者から遮断してきたビルが、ブリタの被写体となることにしたのは何故か、23年にもわたって書き続けているビルの未発表作の公表にスコットが反対するのは何故か、ビルの隠れ家を舞台とした4人の会話にひきこまれます。しかし、後半は様相が一転、ベイルートでテロリストの人質となっている詩人を救出するため、ビルは、スコットにもカレンにも行方を告げないまま旅立ち、ニューヨークからロンドンへ、さらにキプロスへと物語は動きます。

        「このところ僕は、小説家とテロリストはゼロサム・ゲームをやってるんじゃないかって気がするんだ」
        「面白いですな。そりゃまたどういうわけで?」
        「テロリストが肥え太れば、小説家は痩せ細るってこと。やつらが大衆の意識に影響を与えれば与えるほど、感性や思想の形成者としてのわれわれ小説家の影響力は低下する。やつらが具現化している危険性は、とりもなおさず僕たち小説家自身がもはや危険な存在じゃなくなったことの証なんだ」
        「つまり、恐怖をはっきりと目の当たりにすればするほど、芸術から受ける衝撃は減るってことですかね」
        「そういうことが推し測れるという限りにおいて、両者の関係は密接に絡み合っていると思うんだ」

         物語の直接的な背景になっているのは、最末期のレバノン内戦ですが、テレビのニュースを通じて、第二次天安門事件、アヤトラ・ホメイニ師の葬儀といった1989年の世界史的な出来事が重ねられます。
         そして、幾度かにわたって現代社会の象徴のように描かれるツインタワーのイメージからは、どうしても2001年の9.11の予兆を感じざるを得ません。

        ……東京で彼女は美術雑誌に複製されたある絵画を見た。パネルにはめこまれた「摩天楼Ⅱ」というタイトルのカンバスには、彼女がちょうど自分のアパートの窓から眺める角度で、しかも自分と同じ疎ましい気分で世界貿易センターが描かれていた。まさしくそれは、彼女におなじみの高層ビルだった。窓もなく屹立し、視野に入る空間を埋め尽くす二本の黒いラテックスの石版がそこにあった。

         デリーロが1997年に発表した「アンダー・ワールド」のカバーはツインタワーの写真ですし、2007年に発表した「墜ちていく男」はそのものずばり9.11をテーマにした小説のようです。読むのがとても楽しみです。
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        2013/09/12 by 弁護士K

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