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道出版(株) (ミチシユツパン)

企業情報
企業名:道出版
みちしゆつぱん
ミチシユツパン
コード:944154 86086
      バタ-はどこへ溶けた?

      RipplewoodDean.2001/04

      カテゴリー:人生訓、教訓
      4.5
      いいね!
      • むかしむかし、あるところに森がありました。2匹のキツネ、マイケルとジョニー、2匹の猫ミケとタマとミケは協力しあいバターを探していました。
        精力的に捜索するキツネに対し、ネコってやつはどうも勤勉とは遠い飽きっぽい性質なようで…。

        「バターのほうからきてくれればいいのに」なんて思っていました。

        ベストセラー本「チーズはどこへ消えた?」のパロディ。
        著者名:Ripplewood Dean. とありますが日本人の変名です。

        人は変われる。
        状況に対応して素早く行動すべし。
        何もしないよりはしたほうがまし。

        このメッセージを否定し、まったく別の価値観を発信しています。
        自分らしくあれ
        形あるものは消えてなくなるのが当たり前
        財産でも名声でも永遠不滅なんてないのだ。
        日本人的ですなあ。
        …外国では売れないでしょうねえ。

        この本を書きたくなった気持ちが私にはとてもよ~くわかります。
        著者は物語はどのようにもつくれるものなんだよという事です。
        「チーズ」を読んだ時、真逆なストーリー作れるじゃんって、感じたのです。
        それと価値観の相違ですね。

        この本は老荘思想的な万物流転、有形霧消、色即是空の思想をノンビリ屋の猫のタマの姿に託しています。
        一方キツネはアメリカ的な上昇志向をもった野心家で腹黒な性格として表現されています。

        池のほとりのペンションの前に偶然置かれていた巨大なバター。
        それは彼らにとってとても幸せになれる何かの象徴なのですが、
        同じバターでもキツネにとってのバターとネコにとってのバターは意味の違うものだったのです。
        タマは思うのでした。
        「バターがなくても幸せ バターがあればもっと幸せ」


        「不安や怖れから逃げてはいけない」
        タマはキツネ達の言うこの言葉を耳にするたびに思います。
        ――そもそも彼らは、なぜ不安なのだろう。何を怖れるのだろう。
        勝ち取ったものを失う不安、奪い取ったものを奪われる恐怖なのではないか?
        幸福は自分でつかみとったのではなくて、だれかから与えられたと、偶然に出会っただけだと思えば、なくて当たり前と思えるようになるのに。

        ミケはキツネに影響を受け、タマと別れてバター探しに奔走しますが、ことごとく失敗
        「バターは生きがいだ そのためなら死んでもいい」とまで思いつめていきます。
        やがて気づくのでした。
        「バターを追いかけることは恐怖に追いかけられることである」

        マイペースのタマは考えます。
        「ネコであることが ネコの幸せである」
        「なんのわけもなく、なんとなく好きというのが
        きっと、いちばん好きということなのだろう」

        キツネとネコ、物語の最後に笑うのはどっちでしょうか?
        (結構ダークです)

        この話は人間心理的にもより深くより複雑でリアリティもあります。
        ネコのキャラもとてもいいです。

        【格言】
        たしかなものなどない
        心から楽しめ
        移りゆく物事のすばらしさを知れ
        バターはやがてなくなるからおいしいのである
        足をとめてしっかり自分を見つめよ
        自分らしくあれ
        清貧の志を持て
        欲望にはきりがない バターはいくらでもほしくなる
        ありふれた幸せに気づけ


        肝心なのはこの本が完全に「パロディ」だという点です。
        作者はなにもこれが人生の本質であり人はこう生きるべきだとは言っていないのです。
        「チーズはどこへ消えた?」に描かれない落とし穴を見せてくれようとしただけです。
        本編をあわせて読むことがある意味必至である類の本です。

        でなければ、ネコ好きな人にどうぞ。


        sarada3さんのレビューがきかっけでチーズとバターをいっしょに読んでみようとおもいました。
        ようやく課題クリアです。
        表紙のネコも挿絵のネコもとてもかわいいです。


        (余談です)
        「チーズ」の日本の出版社である扶桑社に出版販売等の差止めの訴訟を起こされています。
        結果は却下ですが、その判決が面白いんです。(以下抜粋)

        チーズ本対バター本事件:東京地裁平成13年(ヨ)22090号平成13年12月19日決定(却下)
        (株)扶桑社(債権者) 道出版(株)(債務者)
        出版販売等の差止めを請求した。


        「チーズ」と「バター」で共通するのは乳製品であるという点だけであり、語感やその意味する内容、それから連想されるものは大いに異なる。また、「消えた」と「溶けた」についても、「消えた」という表現からは物体として存在していたものがなくなったという観念が生ずるのに対し、「溶けた」という表現からは個体として存在していたものが液体になったという観念が生ずるものであり、両者の意味するところは異なる。

        (結論)書名が類似していない以上、読者において出版元同士の関連性を想起することは通常あり得ない。

         さらに、本の装丁についても、債権者出版物と債務者出版物を比べると、債権者の指摘するとおり、書名や著者の表記の順序や字体において類似していることが認められるが、他方で、疎明資料によれば、表紙から裏表紙に続く絵は、チーズとバターの個数や配置、登場するキャラクターの数や配置、色調などにおいて、読者に異なる印象を与えるものであることが認められる。

        (結論)両者が別の本であることは一見して明らかというべきである。

        出版業界ではベストセラーとなった本の類似本が出版されることは珍しくないこと、現に(株)廣済堂出版は債権者出版物の出版後に「チーズはここにあった !」という書名の本を出版したこと、が認められる。


        (さらに余談ですが)
        ご存じでしょうが、小説や楽曲のタイトルには著作権は存在しません。
        ですからもし同一タイトルの本であっても中身が全く別の小説だったり、装丁が全然ちがっていれば問題になりません。
        例えば「チーズはどこへ消えた?」というタイトルでチーズという名の女性に失恋した男の恋愛小説を書いてもいいのですよね。
        タイトルをいじった作品、やたら多いですよね。
        たとえば「世界の中心で愛をさけぶ」←「世界の中心で愛を叫んだけもの」(元ネタ)とか。
        >> 続きを読む

        2016/06/02 by 月うさぎ

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