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おひで―慶次郎縁側日記 (新潮文庫)

著者: 北原 亞以子

評価: 5.0

読了日: 2017/09/13

投稿日: 2017/09/13

慶次郎縁側日記第三集。初読みは2008年。
晃之助の活躍が増えていて、個人的にうれしい巻だった。

「ぬれぎぬ」:晃之助の女難はまだ続いている。女に逃げられた男にいわれなく恨まれて、晃之助はあやうく刺されそうになる。男ぶりがよすぎるのも考えものである。

「からっぽ」:「仏の慶次郎」が気に入らないからという理由で根岸の寮に盗みに入ろうとした女が、労咳持ちの男を仲間に誘うが...。

「おひで 一 油照り」:ヒモ男に貢いだあげくに他の女に男を横取りされて、おひでは出刃包丁を持ち出す。慶次郎は気の荒いおひでの面倒をしばらく見ることになる。

「おひで 二 佐七の恋」:孤独な者同士のよしみで佐七はおひでをかわいがるが、ふとしたいさかいでおひでは寮を飛び出してしまう。孤独ゆえのおひでの自傷行為の代償は若い命だった。佐七の心にも深い傷が残される。

「秋寂びて」:山口屋の女中おひさが主人の着物や台所の食べ物を盗んだ。駆けつけた晃之助が、おひさを諭す言葉に詰まるのが面白い。「仏の慶次郎」の養子もなかなか苦労している。

「豊国の息子」:人気絵師歌川豊国の息子で彫師の直次郎が晃之助を訪ねてくる。大物を父に持ってしまった者同士の昔語りに、晃之助の心情がにじむ。

「風のいたずら」:かつて山口屋の女中をしていたおそでとお梶の因縁。お梶を諭す慶次郎が、ふと三千代の自害を引き合いに出すのがせつない。

「騙し騙され 一 空騒ぎ」:老いの身で騙されて貸した金を返してもらえなくなった次郎佐衛門は思いあまって、根岸で驚くほどの美男を脅して追いはぎをしようとするが...。晃之助の魅力をたっぷり味わえる一編。

「騙し騙され 二 恵方詣り」:慶次郎の初孫、八千代初登場。花ごろもの女将お登世とねんごろになりたくても、歯止めがかかってしまう慶次郎。佐七の失恋がせつない。

「不惑」:隠居の名目で店を追われることになった大番頭の仁兵衛は、店の金二十七両を懐に隠すが...。リストラされる悲哀といった現代的なものを感じた一編。

「騙し騙され 三 女心」:お登世の幼なじみのお幾は言い交わした男に騙されているが、それを認めようとしたがらない。お登世と慶次郎の距離が近づくまであとわずか、という緊張感がいい。

「あと一歩」:あと一歩、もう少し辛抱していれば、盗みを働くようなことにはならなかったのに、と盗人は後悔する。成功するか失敗するかは、あと一歩の辛抱にかかっているのかもしれない。

巻末に故児玉清氏との対談がおさめられている。あらためて、お二人のご冥福を心からお祈りする。


    Kiraさんの読書レビュー 「おひで―慶次郎縁側日記 (新潮文庫)」 | 読書ログ

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