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クォヴァディス

著者: 木村彰一 , SienkiewiczHenryk

出版社:岩波書店 (1995/03)

評価: 4.0

読了日: 2016/05/25

投稿日: 2019/10/09

【ゆるゆると幕を開けるローマの物語】
 時は、ローマの絶対皇帝、暴君ネロの治世。
 ローマの軍団将校であるウィニキウスは、戦いを終えてローマに戻って来ました。
 彼は、戦傷を癒すために逗留していた老将軍アウルスの家でリギアという娘に出会い、一目惚れしてしまったのです。
 それはもう身を焦がすような想いで、どうあってもリギアを我が物にしたいという一念に取り憑かれてしまいました。

 ウィニキウスは、知恵者として名高く、ネロの覚えもめでたい叔父のペトロニウスにリギアに対する思いを打ち明け、何とか力になって欲しいと相談を持ちかけたのでした。
 ペトロニウスも甥っ子を可愛く思っていたこともあり、ここは一肌脱いでやることとし、ウィニキウスには安心して待っていろと言うと密かに手を回したのでした。

 その後、ウィニキウスがアウルスの家を訪れたところ、何と、リギアが皇帝の命により宮殿に連れ去られたというのです。
 リギアは、そもそもローマの周辺蛮族であるリギ族の王女でした。
 リギ族が蛮族同士の戦いに臨んだ際、その戦火がローマに広がらないことの保障として、リギアが人質としてローマの将軍に預けられたのです。
 その後、リギアの身柄は老将軍アウルスに委ねられたのですが、アウルスもリギアを実の娘のように可愛がり、リギアも幸せに暮らしていたのです。

 ところが、ネロは突然アウルスの家に百人隊長を送り、「これまでリギアの面倒を見てもらって苦労をかけたが、これ以上負担をかけるわけにはいかない。そもそもリギアはローマ帝国に差し出された人質なのだから皇帝直々に庇護するのが筋である」などという都合の良い口実をつけてリギアを連れ去ったというのですね。

 これを聞いて怒り心頭に達したウィニキウス(短気なのですよ)は、「約束が違う!」と激怒してペトロニウスの家に怒鳴り込んだのです。
 しかし、これはすべてペトロニウスの策略だったのですね。
 ペトロニウスは、先ほどのような口実を設けてリギアをアウルスの家から連れ出し、一旦は宮殿に置いた後、翌日には囲い者としてウィニキウスに与えることをネロに約束させていたのでした。
 今夜の宴会にはリギアも出席することになっているから、その隣にお前も座れとペトロニウスに諭され、ウィニキウスは天にも昇る気持ちになったのでした。

 さて、その夜の宴会でウィニキウスはリギアの隣に席を占め、熱烈に口説き始めたのです。
 実はリギアも美貌の将校であるウィニキウスに惹かれるところもあり、ウィニキウスが真摯にその想いを語っている内はその熱意にもほだされかかっていたのですが、酒が回って来るにつれてウィニキウスは単なる酔っ払いの助平おやじと化してしまったのです。
 強引にリギアの唇を奪おうとするなどしたため、リギアの熱は一気に醒めてしまいます。
 まあ、当時のローマ貴族にとってはそんなのは当たり前のことだったのでしょうけれど。
 しかも、悪いことに、自分とペトロニウスの計略によりリギアをアウルスの家から連れ出したこと、明日の夜には自分の家に来ることになっていることなどをペラペラとしゃべってしまうのです。

 事の真相を知ったリギアは、ウィニキウスにすっかり愛想を尽かしてしまい、王宮に伴った巨漢の配下の手助けによって宴席から抜け出してしまったのです。
 そしてその夜、リギアは決意したのです。
 このままではあの嫌らしいウィニキウスの囲い者にされてしまう、そんな目に遭うのなら逃げてやると。

 王宮でリギアの面倒を見ていたアクテ(かつてネロの寵愛を受けた女性です)は、リギアに対してもっと冷静になりなさいと諭します。
 もし、リギアが逃亡してもすぐに見つけ出されてしまうでしょうし、逃げてしまえば間違いなくアウルスが疑われ、アウルス一家は皇帝によって滅ぼされてしまうでしょうと言うのです。
 それならとにかくウィニキウスの下へ行き、自分を正妻に娶ることを要求しなさい、そうすれば堂々とアウルスと会うこともできるし裕福な生活も保障されるじゃないですかと。

 アクテの言うことはごもっともなのですが、リギアは聞く耳を持ちません。
 実は、リギアはキリスト教に帰依しており、その教えのこともあり、ローマの放蕩貴族のような生活は耐えられないとも考えていたのです。
 キリスト教は徐々にローマにも浸透し始めてはいたものの、まだよく知られていませんでした。
 何だか分からない淫祠邪教ではないかと誤解もされていたのです。
 しかし、ローマにも着実に信者を増やしていたので、リギアはキリスト教徒達に頼めば自分を救い出してくれるだろうと考えたのです。
 その後、貧しい生活を送らなければならなくなっても神への信仰に生きる分には何ほどの苦労だろうかというのですね。
 そして、その計略通り、翌夜、ウィニキウスの家に送られる途中でキリスト教徒達により奪還されたのでした。

 怒り狂ったのはウィニキウスです。
 ペトロニウスにも責任の一端はあるとしてその協力を求め、配下の奴隷を要所要所に張り付けてリギアがローマ市内から脱出できないようにし、ローマ中をくまなく探すのですがどうしてもリギアを見つけることができずにいました。
 そんなところへ姿を現したのはギリシャ人の自称哲学者と名乗るキロンという胡散臭い老人でした。
 キロンはリギアを探し出して見せると豪語し、高額の報酬を要求するのでした。

 こんな感じで幕を開ける本作は、全3巻という大作で、上巻(約350ページ)では、ウィニキウスがキロンの助けを得てリギアを見つけ出し、強引に奪い返そうとするところまでが描かれます。
 この先まだまだ長いですね~。
 全体の展開がまだ見えないので何とも言えないのですが、気持ちゆっくりとしたスタートのように感じました。

 沢山の人物の名前があちこちで出てきますので、ちょっと面倒かなとも感じますが、でも主要な登場人物はそれほど多くはないので、色んな人の名前が出てきてもさらっと流して読んでしまっても概ね大丈夫です。
 この作品は、某書評サイトで『徹夜小説』と激賞されていたので読み始めたのですが、さて、この先どうなりますか。
 随時レビューしていく予定ですので、よろしくおつきあい願います。


    ef177さんの読書レビュー 「クォヴァディス」 | 読書ログ

    プロフィール
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    幻想文学、ミステリ、SF、美術なども含めて怪しいものが大好きです。
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