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海の本屋のはなし 海文堂書店の記憶と記録

著者: 平野 義昌

評価: 4.0

読了日: 2018/07/11

投稿日: 2018/07/11

阪神淡路大震災が起きる以前だった。仕事の関係で月に一度、宝塚市
に通っていた。1泊か2泊になるこが多く、空いた時間は自由に使えた。

よく神戸を散策した。書店を見掛ければふらっと立ち寄った。本書の
海文堂書店も、そんな書店のひとつ。多分、2~3回くらいしか訪れて
いないのだがブックカバーが素敵だったのと、海関連の書籍が充実し
ていたことが印象的な書店だった。

仕事をいくつか変わり、箱根の山を越えることもなくなって随分と
経過した頃、神戸在住の友人から海文堂書店閉店の報せが届いた。

本書は書店員の目線で海文堂書店の約100年の歩みとエピソード、
閉店の当日と「その後」が綴られている。

私は数回、ふらりと訪れた客に過ぎないが、本書を読むといかに地域
に根付き、愛された書店だったかが分かる。特に閉店が公表されてか
ら、同店を訪れた幾人もの客が「これからどこで本を買えばいいんだ」
と口にしている。

ふと、思い出したことがある。地元駅前には子供の頃から2件の新刊
書店があった。仮にA書店とB書店とする。売り場面積はB書店の方
が広かったのだが、私のひいきはA書店だった。

小学校高学年の頃、毎月母からもらった千円札を握りしめて図鑑を
1冊ずつ購入するのが楽しみだったし、長じてからは棚を眺めながら
面白そうな本に出会う楽しみを与えてくれた。

そんなA書店は駅前の再開発と共に街から姿を消し、再開発後は
B書店しか残らなかった。海文堂書店の常連客と同様に、私も
思った。「ああ、これからはどこで本に出会えばいいんだろう」
と。

当たり前にずっとそこにあって、これからもあるだろうと思っていた
ものがなくなってしまう寂しさ。きっと、海文堂書店の閉店を惜しんで
足を運んだ人たちも、私と同じような気持ちだったのではないか。

地域に根差した書店は遠くない将来、本当に絶滅してしまうのかも
しれない。本を愛した店員たちがいて、客に愛された書店があった。

こうやって、その足跡が書籍と言う作品として残る書店の方が少ない
のだろうが、きっとどの地域にも、誰にでも、海文堂書店のような
書店の記憶があるのではないかと思った。


    sashaさんの読書レビュー 「海の本屋のはなし 海文堂書店の記憶と記録」 | 読書ログ

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