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苦海浄土

著者: 石牟礼道子

出版社:講談社 (2004/07)

評価: 5.0

読了日: 2018/05/16

投稿日: 2018/05/16

著者である石牟礼道子さんが亡くなったのは今年の2月。生憎と
私は入院中で、訃報がもたらされた時はテレビや新聞を見られる
状態ではなかった。だから、亡くなったのを知ったのは退院して
からだった。

『苦海浄土』を初めて読んだのは高校生の頃だったろうか。文庫
新装版である本書は発行後に購入していたのが、読む機会を逸した
まま積読本の山に埋まっていた。

気力・体力共に低下していたので、退院後もなかなか本書と対峙
出来なかったのだが5月1日に行われた水俣病犠牲者慰霊式のあと
にチッソ社長の「救済は終わった」発言に唖然として、本書と
対峙する決断がついた。

ノンフィクションでも、ルポルタージュでもない。いくつかの
事実は散りばめられているが、本書は水俣病患者とその家族を
見て来た石牟礼さんが創作した、水俣病犠牲者の心の声であり、
魂の叫びだ。

土地の言葉を活かした文章の向こう側に、有機水銀に汚染されな
がらも青さをたたえた水俣の海が広がる。その海が与えてくれた
豊富な魚介類が、まさか体と心を破壊してしまうとは誰も思いも
しなかっただろう。

そして、原因はチッソ水俣工場から排出される排水に含まれた
有機水銀であると、早い時点で特定されていたにも関わらず
救済を遅延させたチッソ及び行政の罪は重く、改めて怒りを
感じる。

「銭は一銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から
順々に、水銀原液ば飲んでもらおう。(中略)上から順々に、
四十二人死んでもらおう。奥さんがたにも飲んでもらう。胎児性
の生まれるように。そのあと順々に六十九人、水俣病になって
もらう。あと百人ぐらい潜在患者になってもらう。それでよか」

「あとがき」に書かれている言葉である。切なすぎるだろう。
加害企業として犠牲者に補償するのは当然だが、どんなに補償金
を積まれても、亡くなった人は戻って来ないし、有機水銀に害され
た体は元には戻らない。

チッソの現社長・後藤氏は、本書を百万遍読んだらいい。


    sashaさんの読書レビュー 「苦海浄土」 | 読書ログ

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