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小人の巣

著者: 白河 三兎

評価: 3.0

読了日: 2017/08/13

投稿日: 2017/08/13

内容紹介-------------------------------------------------------
中学の屋上から飛び降りる寸前、私は「小人の巣」というサイトを教えられた。
そこでは、シャーマンと名乗る人物が安楽死の方法を伝授してくれるらしい。いったい誰が、何のために?
教室で虐げられていた私は、シャーマンの提示する条件を満たし、指定された病室を訪ねる。
だがそこには……。「死」に引き寄せられる人々の運命を変えていく連作五篇。
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人が死にたくなる瞬間って結構そこらへんに転がっているものかもしれない。
いじめ、就職活動、将来への不安、恋愛、身近な人の死……。

実際日本の自殺者数は多く、作中では年間3万人以上、WHOの基準にならって変死者数の半分を含めると(遺書がないと変死扱い)10万人以上になると書かれている。
3分に1人が死を選んでいることになる。

本書は2015年10月発行なので、現在の自殺者数だけを見てみるとやや減少傾向にあり、2016年には2万1千人となっている。
しかし、これでも多い。

連作となる5つの短編の主人公たちも自殺を考えていて、「小人の巣」という自殺サイトにたどり着く。
サイトを運営するシャーマンの正体は病に伏せる10歳の少女で、「楽に死ねる薬を譲る代わりに臓器を提供してほしい」と頼まれる。

白河三兎の作風と物語の流れからして、登場人物たちが自殺をあきらめる方向になるというところは予想がつく。
あとはそのきっかけをどう描くかが見どころになるのだが、ちょっとインパクトが弱かった。
そのせいで、どうもきれいごとにしか思えなくなってくる。

ただ、5編の中では「アリとキリギリス」が考えさせられる内容だったと思う。
主人公は大学卒業後、ある計画を立てた。
10年間働いて会社を辞め、貯金で15年間悠々自適に生きてから妻と心中する。
それに妻も同意し、計画通り生きてきた。

そんな考えに思い至ったのは、事故や病気、老後の不安、そして働き続けていると妻との時間を確保できないといった理由からだった。
束縛されて不自由なまま不安を抱えて長く生きるよりも、短くあっても自由に生きることを選んだ。

私も生きるために働いているのか、働くために生きているのかわからなくなることがあって、ちょっと生き方について考えさせられた。
現代社会に生きる日本人にとっては、このエピソードが一番リアルに感じられるのではないだろうか。
ラストは、登場人物のこういった不安とはまた違う複雑な思いも見えてきてよかった。

作品全体でみると、著者の作品に多いラストの衝撃的な展開が今回はパンチが弱かった。
見せ方は相変わらずうまいなと思ったが。

お決まりの芯のあるヒロインもいたが、登場人物の視点から語られることはあっても交流が多くないので、あまりヒロインの内面に迫れなかった気がする。
それと10歳にしては達観しすぎ。

著者の作品を読むのは5作目になるが、その中では5番目。
とはいえ私の中では打率の高い作家なので、引き続き他の作品を読みたい。
文庫化されていない作品が多いのが金銭的に痛いところ。


    ともひろさんの読書レビュー 「小人の巣」 | 読書ログ

    プロフィール
    ニックネーム:ともひろ
    本棚登録件数: 240 冊
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    自己紹介:
    札幌在住25歳男。
    マンガもよく読みますが、小説のレビューのみ書きます。
    レビューではなるべくネタバレはしません。
    内容に触れないと感想をかけないような場合は、必ず冒頭に注意書きを入れます。

    【好きなジャンル】
    ライトSF
    青春・恋愛もの

    【好きな作家】
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